JP3759208B2 - アルミナ粒子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗料用無機顔料、特にパール顔料の基材や化粧品用体質顔料やセラミックス原料等に適した板状アルミナ粒子を水熱合成処理により効率的に製造する方法である。
【0002】
【従来の技術】
従来よりアルミナ粒子の製造方法としてはいろいろな方法が知られている。特に高純度アルミナ粒子の製造において顕著であり、その代表的なものとしては、アンモニウム明ばんの熱分解法、有機金属の加水分解法、エチレンクロルヒドリン法、アルミニウムの水中火花放電法、アンモニウムアルミニウム炭酸塩(AACH)熱分解法、改良バイヤー法、気相酸化法等がある。又、工業的な大量製造法としては通常のバイヤー法が最も一般的である。高純度アルミナの製造方法の特徴は、合成されたアルミナ粒子は4N、5Nと高純度なものが得られるが、コストの低減が課題である。一方、バイヤー法の特徴は大量製造法であるためコスト的には安価であるが、高純度のものが得にくく、又、微細粒子を得るためにはボールミルや媒体撹拌ミル等の機械的な手段を用いなければ得られず、粉砕工程からの汚染も課題である。一般に上記の各種製法で得たアルミナ粒子は微細粒子であるが、その粒子形状は粒状や不定形になりやすいという問題がある。
板状アルミナ粒子の製造方法としては、例えば特公昭35−6977号公報に見られるように、原料の仮焼工程で弗化アルミニウム等の鉱化剤を添加する方法が知られている。又、水熱合成法によるアルミナ粒子の製造方法としては、例えば特公昭37−7750号公報に記載のものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記板状アルミナ粒子の製造方法において、鉱化剤を添加する方法(特公昭35−6977号公報)および水熱合成法(特公昭37−7750号公報)では、製造されたアルミナ粒子の粒径制御が難しく、特に板状粒子の厚みを薄肉化する制御が非常に困難である。一般にこの様なアスペクト比(板状粒子の直径/厚み)の小さい板状粒子を塗料用顔料、特にパール顔料用の基材として、又は化粧品用体質顔料等の用いると粒子の配向性が悪く、前者においては光の反射が一定でなくパール感が発現されにくく、又、化粧品等の体質顔料として用いた場合には、肌への付着性やのびが悪くなる。よって本来の板状粒子の特性が発現されにくいという問題がある。
そこで、本発明は板状粒子の厚みを薄く制御する方法、すなわち、アスペクト比の大きな板状アルミナ粒子を効率的に製造できる製造方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の板状アルミナ粒子の課題を解決すべく水熱合成法を用いて鋭意研究した結果、水酸化アルミニウム又はベーマイト等のアルミナ水和物を水熱合成する方法において、添加剤を含む製造条件を制御することによって板状粒子の厚みを薄く、すなわちアスペクト比の大きな板状粒子を効率的に製造できることを見出して本発明に至ったものである。
本発明は、水酸化アルミニウム又はアルミナ水和物に少なくともリン酸イオンを含む結晶抑制剤を添加し、昇温速度が5℃/分から0.3℃/分の範囲で、温度350℃以上、圧力50気圧から200気圧の範囲で水熱合成し、結晶構造がα−アルミナの単結晶で六角板状形を有するアルミナ粒子を製造することを特徴とするアルミナ粒子の製造方法である。
【0005】
出発原料である水酸化アルミニウム又はベーマイト等のアルミナ水和物は予めボールミルや撹拌媒体ミル等で粉砕して粒度調整を行い、粒径0.1〜5.0μm好ましくは0.3〜3.0μmの原料粒子のものを用いる。原料粒径は合成後のα−アルミナ粒子の粒径に関係し、目的とする粒径に制御するためには上記原料粒径のものを用いなければならない。
本発明に用いるリン酸イオンは一般にリン酸水溶液が好ましい。勿論水溶性を示す化合物でもよく、例えばナトリウム塩、カリウム塩の様なアルカリ金属塩やアンモニウム塩などのオルトリン酸塩又はこれらの脱水縮合などによって得られるヘキサメタリン酸塩やオルトメタリン酸塩のような各種の縮合リン酸塩でもかまわない。
【0006】
本発明にしたがって、薄板状でかつ単結晶のα−アルミナ粒子を得るためには、上記した添加剤を水酸化アルミニウム1モルに対してリン酸イオンを3.0×10-3から2.5×10-2モルの範囲において、好ましくは5.0×10-3から1.2×10-2モルの範囲で添加することが必要であり、この範囲をはずれた量を添加しても目的とする薄板状のα−アルミナ粒子を得ることができない。詳しくは、リン酸イオンの添加量が少ない場合、得られるα−アルミナ粒子は厚肉の粒子形状を示す。又、添加量が多い場合、反応速度が遅くα−アルミナ粒子の収率が悪くなる。
本発明による水熱合成処理は、上記出発原料と添加剤を含み、水を混合したスラリーを作成する。このスラリー濃度は1〜60重量%で、好ましくは20〜50重量%の範囲である。これを圧力容器に充填し、合成温度は350℃以上、好ましくは450〜600℃の範囲で、合成圧力は50〜200気圧好ましくは75〜150気圧の範囲である。合成時間は、5分〜10時間で好ましくは30分〜4時間の範囲である。
【0007】
水熱合成における温度、圧力の条件は、Al2O3−H2O系状態図で、α−アルミナの安定な領域でなければならない。温度350℃以上とするのは、350℃未満ではα−アルミナを得ることができないためである。特に上限については限定していないが、装置に係るもので経済性を考慮した範囲が好ましい。
又、圧力50〜200気圧とするのは、この範囲を外れた低圧力で合成しても目的とする薄板状のα−アルミナの結晶構造が得られず、多くはγ−アルミナの結晶構造の粒子である。又、200気圧を越える圧力では、α−アルミナの結晶構造の粒子であるが、その形状は粒子厚みが大きく薄板状のものが得られないためである。
又、昇温速度を5℃/分から0.3℃/分とするのは、昇温速度が大きい程生成されるα−アルミナ粒子は微細化されるためである。又、この範囲を上下にはずれてもその効果は少なく、工業的に前述の範囲が好ましい。
【0008】
本発明の製造方法により、結晶が六方晶でC軸に直交した面が平板状に成長したα−アルミナ粒子を得ることができる。さらにこの粒子は直径が0.2〜15μm、アスペクト比15〜50のものとすることができる。
かかるα−アルミナ粒子は、塗料用無機顔料、特にパール顔料の基材や、化粧品用の体質顔料やセラミックスの成形分野において粒子配向性を発現するアルミナ原料として使用できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の態様を実施例並びに比較例によって具体的に説明する。
【実施例】
実施例1
出発原料である水酸化アルミニウムを予めボールミル等で粉砕し、0.4μmに粒度調整を行った。これと水を混合し50重量%のスラリーを作成する。そのスラリー中にリン酸アンモニウムを水酸化アルミニウムに対してリン酸イオンとして1.0×10-2モル添加しよく混合溶解した。
【0010】
上記原料を圧力容器に充填し、電気炉にて昇温速度5℃/分で600℃、75気圧で3時間保持を行った。容器冷却後生成物を純水で水洗、濾過を充分に行い100℃の乾燥器で12時間乾燥して白色の粒子粉体を得た。
ここに得られた粒子粉体は粉末X線回折の結果、図1に示すようにα−アルミナの回折ピークのみであった。又、この粒子を電子顕微鏡で観察したところ図2に示すように平均粒径0.4μm、平均厚さ0.013μm、アスペクト比30であり、形状は六角板状であった。
【0011】
実施例2
実施例1において、出発原料の水酸化アルミニウムの粒径を1.0μmのものを用い、リン酸ナトリウムを水酸化アルミニウムに対してリン酸イオンとして5.0×10-3モル添加した。昇温速度1.6℃/分、100気圧で実施例1と同様の処理をして白色の粉末を得た。
ここに得られた粒子粉体は粉末X線回折の結果、α−アルミナの回折ピークのみであった。又、この粒子を電子顕微鏡で観察したところ平均粒径2.5μm、平均厚さ0.05μm、アスペクト比50であり、形状は六角板状であった。
【0012】
実施例3
実施例1において、出発原料の水酸化アルミニウムの粒径を3.0μmのものを用い、リン酸水溶液を水酸化アルミニウムに対してリン酸イオンとして5.0×10-3モル添加した。昇温速度0.3℃/分で、150気圧で実施例1と同様の処理をして白色の粉体を得た。
ここに得られた粒子粉体は粉末X線回折の結果、α−アルミナの回折ピークのみであった。又、この粒子を電子顕微鏡で観察したところ、図3に示すように平均粒径10μm、平均厚さ0.33μm、アスペクト比30であり、形状は六角板状であった。
【0013】
実施例4
実施例2において、リン酸水溶液を用いた以外は、全く同様の処理をして白色の粉体を得た。ここに得られた粒子粉体は粉末X線回折の結果、α−アルミナの回折ピークのみであった。又、この粒子を電子顕微鏡で観察したところ、平均粒径2.5μm、平均厚さ0.05μm、アスペクト比50であり、形状は六角板状であった。
【0014】
比較例1
実施例2において、水熱処理時の合成圧力を45気圧で行い、それ以外は全く同様の処理をして白色の粉体を得た。ここに得られた粒子粉体は粉末X線回折の結果、α−アルミナの回折ピークは弱くほとんどがγ−アルミナの回折ピークであった。
【0015】
比較例2
比較例1において、水熱処理時の合成圧力を300気圧で行い、それ以外は全く同様の処理をして白色の粉体を得た。ここに得られた粒子粉体は粉末X線回折の結果、α−アルミナの回折ピークのみであった。又、この粒子を電子顕微鏡で観察したところ、平均粒径2.0μm、平均厚さ0.4μm、アスペクト比5であり、形状は丸みをおびた粒状粒子であった。
【0016】
【発明の効果】
本発明によれば、従来の板状アルミナ粒子には見られない、極めて薄板状の粒子を効率的に製造することができる。特にα−アルミナの単結晶からなる粒子で、直径が0.2から15μmで、アスペクト比15から50の粒子を製造できる。この粒子を塗料用の無機顔料特にパール顔料用の基材として、化粧用体質顔料として、セラミック用原料として、樹脂材料等に充填するフィラーとして用いると、粒子が容易に配向するため、その効果を大いに発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた粒子粉体のX線回折結果を示すグラフである。
【図2】実施例1で得られた粒子の結晶構造を示す電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例3で得られた粒子の結晶構造を示す電子顕微鏡写真である。
Claims (4)
- 水酸化アルミニウム又はアルミナ水和物に少なくともリン酸イオンを含む結晶抑制剤を添加し、昇温速度が5℃/分から0.3℃/分の範囲で、温度350℃以上、圧力50気圧から200気圧の範囲で水熱合成し、結晶構造がα−アルミナの単結晶で六角板状形を有するアルミナ粒子を製造することを特徴とするアルミナ粒子の製造方法。
- リン酸イオンの添加量が水酸化アルミニウム又はアルミナ水和物1モルに対して3.0×10−3から2.5×10−2モルの範囲である請求項1記載のアルミナ粒子の製造方法。
- 水酸化アルミニウム又はアルミナ水和物の粒径が0.1μmから5.0μmのものを用いる請求項1記載のアルミナ粒子の製造方法。
- アルミナ粒子の直径が0.2μmから15μmであり、アスペクト比(直径/厚み)が15から50である請求項1記載のアルミナ粒子の製造方法。
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