JP3758723B2 - ノック式筆記具 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、後端のノック棒を押圧することによって筆記体であるリフィ−ルを突出させて筆記する所謂ノック式筆記具における、ポケットに収納する時には内筒と軸筒内部の係止部が解除されてリフィ−ルが収納されるため服を汚す事が無い安全機構を改良したノック式筆記具に関するものである。特に安価な構成とした場合のやや太めのリフィールを搭載しても細身にできる外観の向上や動作の確実性や操作性の向上をめざしたノック式ボールペンの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から存在する操作性の点で容易かつ操作感の優れているノック棒の押圧を繰り返すだけでリフィールの突出と収納を繰り返す所謂ダブルノック式の筆記具でセーフティー機構を搭載したものが望まれていたが、軸径が太くなったり、動作が不安定であったりと、優良な筆記具が存在しなかった。キャップ脱着を不要としたキャップレスのノック式ボールペンでは軸の前端面が開孔しており、ノック棒を押すことでリフィ−ルを突出させて筆記する構造であるが為に、ポケットへの収納時にリフィ−ルを収納し忘れてしまうとリフィ−ルが軸外へ突出したままとなり、ポケットをインクで汚す事故が存在していた。この問題を解決するためにクリップの係止玉と軸内部の突起とを係止させる事でポケットへ筆記具を差す時には必ずリフィ−ルが収納される構造の考案や軸に窓を設けてクリップの玉部分に係止部を設けて同様の作動とする考案が提案されてきた。しかし、これらには金属製のクリップに窓や係止部の加工が必要で高価で加工性に問題があったり、クリップのバネ性の耐久性を犠牲にしたり、部品数が多くなる等の欠点が存在していた。特に、ノック式で服を汚す事を防止するセーフティー機構では、ノック棒を押圧してリフィールを突出させた後収納する場合にはクリップの後端側を押してクリップ玉部を持ち上げることで係止を解除してリフィールを収納するものが一般的に採用されているが、この場合にはクリップのバネ性付与部分には係止と解除の繰り返し耐久性を考慮して強いバネ性を持たせているために解除に要する力が必要となって使いやすい荷重に設定されることが困難であったことと、特に直液式のリフィールを搭載した場合には、解除時のリフィールにかかる衝撃によってリフィール内部のインクがずれたり、漏れだしたり、先端部に空気を巻き込んで筆記カスレを生じる危険性をかかえているため、リフィールに耐衝撃性の機構が必要であるなどの欠点が存在している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、主に普及型のボールペンの改良を目的としており、リフィールの突出動作や収納動作の場合のスムーズな作動や、筆記を阻害することなく、ポケットへの収納時の服を汚す事故を未然に防止すると共に、リフィールの突出と収納をやりやすい機構として、特にごく安価な部品形状と構成とすることでコストの問題と同時に外観や組立て性の問題も解決する事が望まれている。またクリップを樹脂製とした場合でもクリープしにくい弱いバネ性での確実な作動を確保させたいという要望や操作感の良い確実な動作を保証できる構成としたいという要望や、さらには、リフィールにかかるノック衝撃が少なくしたいという要望などを満たすノック式筆記具を提供する、という課題を解決する。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する為に、本発明のノック式筆記具は先端に筆記部を有するリフィールとそれを後方へ付勢するスプリング6とリフィールに連動して軸筒1より突出するノック棒5を有し、そのノック棒5を押圧してリフィールを軸筒1の前部から突出させることによって突出状態となり、内筒2の係止玉2−aが回転子3の係止リブ3−aに係止することで突出状態を保持する様な所謂ダブルノック機構を有して、内筒2には軸筒1内に挿入固定される円筒部2ーIの前端にカム2ーcが設けられるとともに軸筒1の内面にはカム面を設けず、回転子3にはリフィールの突出と収納の動作のために内筒2のカム2ーcと連動して移動または回転するカム突起3ーbを有する。
ノック棒5の前方のリフィールとの間に回転子3を設けてあり、このノック棒5と回転子3はそれぞれに対応したカム斜面であるノック棒カム5−aとノックカム3ーcをそれぞれ有して軸方向前方へのノック動作によって回転子3が所定角度ずつ一定方向にのみ回転するように構成される。回転子3は所定の角度で回転して、ある時点で(実施例では2回セットのノックで)1周して、動作を繰り返す。
さらに、ローコストに組立する為や部品を省略する為に、内筒2と一体に成形した突起2−fと軸筒1のストッパー溝1ーcとが係止することで軸の内部機構の後退規制とした場合には、スナップフィットで組立が挿入動作のみで可能になり口先を省略したローコストかつスリムな外観の良いノック式筆記具と出来る。また、軸筒1を透明にした場合にはカム面や内筒を視認してメカニックな動きの見える外観とできる。
【0005】
【実施例】
以下、図示した実施例について詳説する。図1から図8は本発明の実施例を示している。図に示すように透明または半透明樹脂製のチューブの内部にインクを保蔵するリフィ−ルのチューブ先端側には継手が圧入されており、内部の略中央にインク導入孔を持つボール受け座を設けチップの軸方向後端と受け座によって形成される弁室内に遊嵌された逆止ボールによって通常の筆記時にはインク収容部から筆記部となるボールまでを連通する構造としたうえで上向きでは逆止ボールが受け座に密接することによってインクの逆流を防止した構造のボールペンリフィ−ルを持つ、所謂中粘度ボールペンリフィールを内蔵するノック式筆記具である。
【0006】
このリフィールには 特に収納時の衝撃が問題となりやすい、中粘度インクを収容した直液式リフィールである。擬塑性といわれる剪断減粘性を付与した中粘度インクとリフィール後方には揮発しにくいグリス状のフォロワーとフォロワーに浮遊するようにフォロワーと略同等の比重を有するPPやPE等の樹脂製のフォロワー棒とを内蔵し、筆記部となる筆記ボールを保持するチップには内部に筆記ボールを円周状のカシメ部によって抜け止めされとともに、約1gから40gの荷重で押圧するチップスプリングを内蔵して、ボールとのシール面となる円周状のカシメ部と筆記ボールとによってボールバルブ機構を形成して耐衝撃性アップやインクの揮発防止やインクの逆流を防止させる。このチップスプリングは通常はφ0 . 3mm〜φ1 . 2mmのごく小さい筆記ボールを直接押圧する為に、先端部に直線部を一体に設けたスプリングとして有り、その抜け止めのためにチップの後端部はカシメによって抜け止めして有る。輸送中のペン先保護や揮発防止を目的として先端に80℃から150℃にて溶融するホットメルトタイプの先端シール剤16を付着させた場合には長期保存性のアップやユーザーまでの輸送によるトラブルが防止できる。
【0007】
このノック式筆記具では、先端に筆記部を有するリフィールとそれを後方へ付勢するスプリングと、リフィールと連動可能に回転子と軸筒の後端より突出するノック棒とを有している。そのノック棒を押圧してリフィールを軸筒の前部から突出させることによって突出状態となり、この時には内筒の係止玉が軸筒内部の回転子の係止リブと係合して突出状態を保持する。ノック棒の前方のリフィールとの間には回転子を設けて、内筒との回り止めを有するノック棒と回転子はノック動作によってリフィールと連動される様に適宜遊嵌されると共に、後退方向へは内筒の受け部によって所定のノックストローク内のみで稼働できるように規制されている。
【0008】
このノック棒と回転子はそれぞれに対応したカム斜面であるノック棒カムとノックカムをそれぞれ有して軸方向前方へのノック動作によって回転子が所定角度ずつ一定方向にのみ回転するように構成される。さらにノック動作後の押圧を止めたときにはリフィールはスプリングによって常に後方へ附勢されており、回転子のカム突起とそれに対応した内筒のカムによって前述のノック棒と回転子による回転と同一方向へ回転させる。つまり、回転子は所定の角度で回転し、ある時点で(実施例では2回のノックで)1周して、動作を繰り返す。これらの動作に必要な内筒のカムは軸筒内部に挿入される円筒部の前端にむき出しの状態でカム斜面を形成して有るので、軸径を従来の物よりも細くすることができる上に外部からカム面を視認できる。ここでリフィールが突出した状態では内筒のカムと回転子のカム突起は係止しておらず(通常のカーンノック式ではこれらが係止している)、回転子に設けられた係止リブが内筒と一体に設けられたクリップ部の係止玉と係止している。
【0009】
リフィール突出状態で、リフィール収納を忘れてポケットへ差そうとすると、内筒係止玉を上方へ持ち上げる事で回転子の係止リブと内筒の係止玉が離されて係止が解除されるのでリフィールは収納方向へ移動する。回転子のカム突起と内筒のカムによって、回転子は回転しながら後退して軸方向としては後方の後退規制位置に後退して回転子と連動するリフィールが収納される。この時に回転子は回転方向にも初期状態と同様の位置にセットされており、再度ノック棒の押圧すると突出方向の動作を開始可能となる。
また、内筒に一体に成形または圧入などによって固定した突起を設けて、この突起と軸筒のストッパー溝によって内筒およびノック棒や回転子、リフィールなどの内蔵物を後退規制して取り付けると組立時に挿入作業によるスナップフィットのみで組み立て可能になったり、ユーザーが突起を鋭利な突起物で押して機構部およびリフィールを取り出し可能となりリフィール交換が可能となって、口先を省略した安価な製品展開も可能となる。
【0010】
本発明のその他の実施例としては通常のノック式ボールペンのみならず、筆記部がむき出しになるとポケットが汚れてしまう筆記具に応用できる。上述の説明したものに加えて、インクが通常の水性でインク吸蔵体には繊維束である中綿を使用した所謂水性ボールペンや、通常よりも粘性をやや低くした油性のインクを使用した油性ボールペンや、ペン先に繊維束または内部に毛細管現象を利用した所謂サインペンやマーカーなどのリフィ−ルを使用したノック式筆記具や、内筒のバネ性をさらに補強するために金属製のバネ板を内筒に追加した物などが適宜採用できる。これらの実施例の物でも本発明の同様の効果が期待される。
【0011】
【作用】
実施例に於いて、本発明の作用を説明する。軸後方に突出するノック棒を押圧することによって筆記体であるリフィ−ルを軸の先端から突出させて筆記可能となるノック式ボールペンにおいては、クリップ部の係止玉と回転子の係止リブとが係止することでリフィールの突出状態を保持するため、クリップ部を持ち上げた時点でクリップ部の係止玉と回転子の係止リブとの係止が解除されてリフィールが自動的に収納されるのでペン先が出たままポケットに差して服を汚すことが防止できる。また従来よりも軽いクリップ部の押圧力に設定可能であるため、操作感が向上できると共に、係止リブが軸外へ突出することがないため、容易にポケットへの抜き差しが可能となる上、内筒のクリップ部分のクリープを防止することが可能となり、もしクリープしたとしても係止リブが回転動作で軽く動作するために機能上の問題が発生することもなくなるうえに、リフィールがやや太いものでもスリムな筆記具とできたり、軸を透明にした場合には動作の視認が可能でメカニックな他にはない外観にできる。さらにはノック棒のみの動作で突出と収納が繰り返されるためユーザーに特殊な操作説明が必要なくなり、操作性が向上できるばかりでなく、リターン時の衝撃はカム斜面によって回転力へ変換され、かつノック棒はユーザーの指に接触している事によってかなり弱められるため、従来は不可能であった中粘度式のリフィールの搭載なども可能となる。
【0012】
【発明の効果】
本発明のノック式筆記具の構成及び作用は以上の如くであり、スリムな外観や他とは差別化された外観の筆記具が提供される上、服を汚すなど重大な事故にはならない効果がある、安全性の高いノック式筆記具の機能を満足させるだけではなく、ユーザーの使用が簡便に行える使いやすい筆記具を提供することが可能となる。さらにクリップのクリープ現象の影響を軽減することが可能となる上にクリープしたとしても係止リブが回転動作で軽く動作するため、機能上の問題が発生することもなくなる。部品構成が簡略化されるだけでなく、安価で機能性の良い長期の耐久性を考慮された安定した製品を提供できる。そのうえポケットへの抜き差しやノック動作の操作感やコスト安価な満足のいくノック式筆記具を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例である筆記具の全体を示す縦断面図である。
【図2】本発明の実施例である筆記具の後端部を示す縦断面図である。
【図3】本発明の実施例である筆記具の先端部を示す縦断面図である。
【図4】本発明の実施例である内筒部品の外観図である。
【図5】本発明の実施例である内筒部品の下方外観図(A矢視)である。
【図6】 本発明の実施例である内筒部品の外観詳細図(係止玉)である。
【図7】本発明の実施例である回転子の外観図である。
【図8】本発明の実施例である筆記具のカム斜面の展開概略図である。
【図9】本発明の実施例である筆記具のカム斜面の動作概略図である。
【符号の説明】
1 軸筒
1−a 窓
1ーb ガイド溝
1ーc ストッパー溝
1ーd 軸平坦部
2 内筒
2−a 係止玉
2ーb ガイド溝
2ーc カム
2ーd 回り止め溝
2−e 起立部
2ーf 突起
2ーg 段差
2ーh 玉平坦部
2ーI 円筒部
3 回転子
3ーa 係止リブ
3ーb カム突起
3ーc ノックカム
3ーd 流通路
3ーe 鈍角カム面
3ーf 鋭角カム面
4ーa アンダーカットA
4−b アンダーカットB
4−c アンダーカットC
5 ノック棒
5−a ノック棒カム
5ーb 回り止め
5ーc 鈍角カム面
5ーd 鋭角カム面
6 リターンスプリング
7 尾栓
8 フォロワー棒
9 フォロワー
10 チューブ
11 インク
12 継手
13 逆止ボール
14 チップ
14−a 筆記ボール
14ーb カシメ部
15 チップスプリング
15ーa 直線部
15ーb バネ部
16 先端シール剤

Claims (3)

  1. 先端に筆記部を有するリフィールとそれを後方へ付勢するスプリング6と、リフィールと連動可能に回転子3と軸筒1の後端より突出するノック棒5とを有し、ノック棒5を押圧してリフィールを軸筒1の前部から突出させて突出状態を保持し、さらにノック棒5を押圧することで係止が解除されてリフィールを収納する様な所謂ダブルノック機構を有するノック式筆記具に於いて、内筒2には、軸筒1内に挿入固定される円筒部2ーIの前端にカム2ーcが設けられるとともに軸筒1外部に径方向へ撓み可能なクリップ部とその前方に係止玉2−aが一体に設けられ、また、回転子3には係止リブ3−aとカム突起3ーbが設けられ、さらに、この回転子3とノック棒5にはそれぞれ対応したカム斜面であるノックカム3−cとノック棒カムが設けられて、内筒2と回り止めされたノック棒5のノック動作によって回転子3が所定角度ずつ一定方向に回転するように構成され、ノック動作を止めたときに、回転子3はそのカム突起3−bと対応した内筒2のカム2ーcによって前記ノック棒5と回転子3による回転と同一方向へ所定の角度で回転し、ノック棒のノック動作を繰り返すことで回転しながらリフィールの突出と収納のために軸方向に移動可能となり、リフィールの突出にはクリップ部の係止玉2−aと回転子3の係止リブ3−aとが係止することでリフィールの筆記部の突出状態を保持し、また係止玉2−aが持ち上げられるとリフィールが収納されるようにセーフティー機構が構成され、さらにリフィールの突出時には回転子3のカム突起3ーbは内筒2のカム2ーcとは係止しないように構成された事を特徴とするノック式筆記具。
  2. 内筒2には軸筒1のストッパー溝1ーcに係止することで軸方向長手の移動を規制して固定される径方向に撓み可能な梁部を持つ突起2ーfを一体に設けると共に、内筒2の回転止めとなる起立部2ーeが軸筒1のガイド溝1ーbに挿入されていることを特徴とする請求項1に記載のノック式筆記具。
  3. 軸筒1を透明な樹脂で成形し、内筒2のカム面2ーcおよび回転子3が外部から視認出来るようになしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のノック式筆記具。
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