JP2573070Y2 - ボールペン - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、インクの逆流防止機構
を備えたボールペンの改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】同出願人は実公平４ー５２０６７号でボ
ールを遊嵌した弁室を設けたボールペンのインクの逆流
防止機構を開示している。此のものは、合成樹脂製の口
プラでボールを遊嵌する弁室内にボールを抜出不能とす
る突条を所要数設けて、筆記時には突条と突条との間に
形成される隙間を連通してチップにインクが流動される
ように成されている。又、従来高粘度のインクを使用し
た所謂油性ボールペンと繊維状の中綿にインクを内蔵さ
せ、ボールペンチップまでインク誘導芯を介してインク
を誘導するようにした所謂水性ボールペンが知られてい
る。夫々、幾つかの欠点を有しているが端的な欠点とし
て、油性ボールペンはインクが高粘度が故にボテや筆記
描線の濃度が薄いという欠点がある。又、水性ボールペ
ンはインクを内蔵させる中綿を使用するが故に部材費が
掛かりコスト高になることと、インクの消費が判らない
という欠点がある。又、そのような状況下で夫々の欠点
を改良する目的で静的には高い粘性を示し、筆記時の先
端ボールの回転で粘性が低下してインクが流出される剪
断減粘性を有したインクを使用したボールペンも知られ
ている。しかしながら、剪断減粘性を有したインクを使
用したボールペンは、インクの流出量が多く（筆記濃度
を上げるため）インク収容管の径を太くしてインクの搭
載量を多くしている。又、インクの粘度は油性ボールペ
ンのインクに比べて小さいのでインク収容管に対する流
動抵抗は小さい。従って、ノックや落下衝撃等によりイ
ンク漏れ（インク収容管の後端にインクが逆流する）が
生じやすい。その為に、通常はインクの後端に筆記時の
インクの消耗に追随して移動するがインクの自重や衝撃
に対してインクの逆流を抑制するグリース状のフォロア
が設けられている。しかしながら、フォロアを設けても
上向き筆記をした時にはチップの先端ボール直下のイン
クが無くなると、インクのヘッドが直に加わる為に顕著
な逆流が生じる。又、インク収容管の内径や長さを大き
くしてインクの充填量を増やすと衝撃に対する逆流現象
を支えきれない問題がある。逆流を生じると筆記不能と
なり、軸筒内を汚すと共に軸筒に設けた通気孔からイン
クが漏れて手や衣服を汚す問題が起きる。インクの逆流
現象は油性ボールペンでも生じるが、剪断減粘性のイン
クを使用したボールペンは顕著に生じる。又、本考案の
実施例に係わるノック式のボールペンは実公平４ー５３
９８７号公報で概ね開示している。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】本考案の目的は、静的
には高い粘性を示し、筆記時の先端ボールの回転で粘性
が低下してインクが流出される、所謂剪断減粘性を有し
たインクを使用したボールペンリフィールを搭載して、
軸先端口から筆記先端部を出没可能とするボールペンで
あって、ノックや落下衝撃、上向き筆記に対してインク
の逆流を防止して軸内や手、衣服等の汚損を防止せんと
するものである。

【０００４】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成する為に
案出された本考案のボールペンは、軸筒の回転操作、カ
ーンノック機構で良く知られたノック操作、ノック時に
クリップ先端に係止して筆記先端部を突出状態となし、
クリップを胸ポケットに差した時に係止が解除されて筆
記先端部が軸内に没入する安全機構を備えたノック機構
など、筆記具の軸筒にボールペンリフィールを搭載し
て、軸筒に対しボールペンリフィールを軸推移して軸先
端口から筆記先端部を出没可能とするものであって、ボ
ールペンリフィールは先端にボールペンのチップと後方
にボール受け座とボール弁を遊嵌する弁室でインクの逆
流を防止する機構部を有して、静的には高い粘性を有
し、先端ボールの回転で粘度が低下する所謂剪断減粘性
を有したインクとインクの消耗と共に追随するグリース
状のフォロアが充填されたインク収容管が設けられて構
成され、ボテが無く、筆記描線の濃いボールペンを衝撃
や上向き筆記でインクが逆流しない状態に提供可能とす
る。

【０００５】

【実施例】図１乃至図５は本考案の実施例を示してい
る。先ず、図１及び図２は本考案に使用されるボールペ
ンリフィール１を示している。継ぎ手２は鍔状の段部４
の前方に前軸部３が、後方に後軸部４が形成され、前軸
部３の先端で内孔１１には先端ボール１３を抱持したチ
ップ１２の圧入軸部１４が固着されている。

【０００６】継ぎ手２は合成樹脂等により一体成形で構
成されており、前記内孔１１の後方に弁室６が設けられ
ている。弁室６の後部には円錐状のボール受け座７が設
けられている。又、弁室６は、上記内孔１１の内周に収
まる状態で、弁室６の孔の軸心を内孔１１の軸心に対し
適宜偏心させると共に弁室孔の一側に溝部８が設けら
れ、弁室６内にはボール弁１０が遊嵌される。又、弁室
６の後方にはボール受け座７と連通する導孔９が形成さ
れている。尚、上記に於いて、遊嵌するボール弁に対し
てインクが流入するチップ１２の後端孔が適宜偏心した
状態に設けられればよい。

【０００７】又、継ぎ手２の段部４の後方には後軸部５
が延設されている。後軸部５の外周には筒状のインク収
容管１６がその先端を段部４の後端に当接して圧入固着
されインク収容管１６の内径部が継ぎ手２の導孔９に導
通している。又、インク収容管１６内には静的には高い
粘性を有し、筆記時の先端ボールの回転で粘性が低下し
てインクが流出可能となる剪断減粘性を有したインク１
７が充填され、更にインク１７の後端にインクの消耗と
共にインク面に接触して追随して移動可能なグリース状
のフォロア１８が充填されている。尚、上記インク収容
管１６は例えば透明のＰＰ樹脂成形品等が使用される。

【０００８】一方、図３乃至図５は実施例であるボール
ペンのノック式を示している。基本的には前記の実公平
４ー５３９８７号公報のノック式筆記具と同じなので、
以下要点と相違点に付いてのみ説明する。

【０００９】軸筒２０にはクリップ２１と対向する側面
にスリット３０と、該スリット３０の両側に接続してス
リット３０に連通する溝２３を備えた取付け脚部２２を
有したクリップ２１が一体に設けられ、クリップ２１の
先端部には玉部２４が形成され、玉部２４には鉤状に係
止段部２５と側壁２６が設けられている。クリップ２１
は後述するノック体３１の係止突起３３と係止段部２５
との係合を解除し得る距離だけ横方向に弾性変位可能に
なされている。又、軸筒２０の側面には上記スリット３
０とは別に窓孔２７が設けられている。軸筒２０は以上
が一体となったポリエステル樹脂を含む透明な樹脂成形
品で成形される。

【００１０】又、ノック体３１はその側面に係止突起３
３と、同軸線上にストッパー片３２が、係止突起３３と
は別の軸線上に弾性変位可能な状態の係止突起３４が設
けられている。

【００１１】軸筒２０の内孔に前記段部４にコイルスプ
リング３５の後端を当接させた状態でボールペンリフィ
ール１が挿入され、コイルスプリング３５の先端が軸筒
の内面段部２８に当接され、軸筒２０の後端からボール
ペンリフィール１の後方部を収容する状態でノック体３
１が装着される。ノック体３１の係止突起３３とストッ
パー片３２は溝２３を通過して係止突起３３がスリット
３０に貫出し、ストッパー片３２は取付け脚部２２内の
溝２３に位置する。又、その時、係止突起３４が軸筒の
窓孔２７の後端部に貫出してノック体３１が後方に附勢
された状態に抜け止めされる。

【００１２】

【作用】図１及び図２はチップ１２を上向きにした状態
を示しており、その時ボール弁１０は弁室６のボール受
け座７に位置して導孔９を密閉するので、上向き筆記さ
れてチップの先端ボール１３直下のインクがなくなって
も、インクにヘッドが掛かり逆流することがない。又、
チップ１２を下向きにした筆記状態に於いては、ボール
弁１０がチップの後端部１５の一方に偏った状態に当接
し、他方にはチップ１２内にインクが流入可能な溝部８
が構成され、インク収容管１６から導孔９を経て弁室６
に入ったインク１７は溝部８を通り、チップ１２の先端
ボール１３まで誘導される。インクは静的には高い粘性
を示しているが、チップの先端ボール１３の回転で粘性
が低下してインクが多量に流出され、ボテが無く、描線
の濃い筆記が可能となる。

【００１３】又、図３はボールペンリフィール１を軸筒
２０に収容した状態を示しており、ノック体３１の後端
をノックして前進させると、係止突起３３がクリップの
係止段部２５に係合して図４に示すようにチップ１２の
先端が軸先端口２９から突出状態となる。この状態か
ら、クリップ２１の先端部を側壁２６の有る側で横方向
に弾性変位させると、係止突起３３が係止段部２５から
外れて再び図３の状態に復帰する。又、図４の状態でク
リップ２１を胸ポケット等に差すと、係止段部２５が上
に押し上げられるので係止突起３３との係合が外れチッ
プ１２は軸先端口２９から軸筒内に没入する。従って、
チップを突出させたまま誤ってポケット等に差しても服
を汚すなどの心配がない。又、ボールペンリフィール１
を新しいものと交換する場合には、ノック体３１の係止
突起３４を内方に押し込めば係止突起３４と軸筒の窓孔
２７との係合が外れ、ノック体３１と共にボールペンリ
フィール１を取り出すことが可能である。

【００１４】

【考案の効果】本考案のボールペンの構成及び作用は以
上の如くであり、チップとインク収容管を連通する中間
部に弁室を設けて、弁室内に遊嵌するボール弁を、又、
インクの後端にグリース状のフォロアを設けたことによ
りノック衝撃や上向き筆記でインクが逆流しないように
構成できるので、筆記先端部を軸先端口から出没可能と
するボテの無い、描線の濃いノック式等のボールペンが
提供可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案に使用するボールペンリフィールの全体
を示す縦断面図で、チップを上向きした状態を示してい
る。

【図２】図１に於ける要部拡大の断面図である。

【図３】本考案の実施例であるボールペンの全体を示す
要部断面の縦断面図で、筆記先端部を没入した状態を示
している。

【図４】本考案の実施例であるボールペンの全体を示す
要部断面の縦断面図で、筆記先端部を突出した状態を示
している。

【図５】図３に於ける上面図である。

【符号の説明】

１ ボールペンリフィール ２ 継ぎ手 ３ 前軸部 ４ 段部 ５ 後軸部 ６ 弁室 ７ ボール受け座 ８ 溝部 ９ 導孔 １０ ボール弁 １１ 内孔 １２ チップ １３ 先端ボール １４ 圧入軸部 １５ 後端部 １６ インク収容管 １７ インク １８ フォロア ２０ 軸筒 ２１ クリップ ２２ 取付け脚部 ２３ 溝 ２４ 玉部 ２５ 係止段部 ２６ 側壁 ２７ 窓孔 ２８ 内面段部 ２９ 軸先端口 ３０ スリット ３１ ノック体 ３２ ストッパー片 ３３ 係止突起 ３４ 係止突起 ３５ コイルスプリング

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平６−171290（ＪＰ，Ａ) 実開 昭51−110637（ＪＰ，Ｕ) 実公 昭62−28454（ＪＰ，Ｙ２) 実公 昭61−26077（ＪＰ，Ｙ２) 実公 平４−53987（ＪＰ，Ｙ２) 実公 平４−52067（ＪＰ，Ｙ２) 特公 昭53−11888（ＪＰ，Ｂ２) 特公 昭55−18474（ＪＰ，Ｂ２) 実用新案登録2538086（ＪＰ，Ｙ２) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) B43K 7/02 B43K 7/12 B43K 24/08

Claims (3)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 ボールペンリフィールを搭載して、軸筒
   に対しボールペンリフィールを軸推移して軸先端口から
   筆記先端部を出没可能とするボールペンに於いて、当該
   ボールペンリフィールには、先端にボールペンのチップ
   と後方にボール受け座とボール弁を遊嵌する弁室でイン
   クの逆流を防止する機構部を有して、更に静的には高い
   粘性を示し、先端ボールの回転で粘度が低下する所謂剪
   断減粘性を有したインクとインクの消耗と共に追随する
   グリース状のフォロアが充填されたインク収容管が設け
   られて構成されたことを特徴とするボールペン。
2. 【請求項２】 ノック式のボールペンに搭載されるボー
   ルペンリフィールであって、ボール受け座とボール弁を
   遊嵌する弁室が一体に設けられた継ぎ手と、継ぎ手の前
   方にボールペンのチップと後方にインク収容管が設けら
   れ、継ぎ手の外周部に段部が形成され、段部と軸筒の内
   面段部との間にコイルスプリングが設けられてボールペ
   ンリフィールが常時後方に附勢されて構成されたことを
   特徴とする上記請求項１記載のボールペン。
3. 【請求項３】 クリップの先端部に係止部を設けると共
   にノック体にも係止部を設けて筆記先端部が軸先端口か
   ら突出した状態で前記の係止部が互いに係合し、この係
   合状態を解除するとコイルスプリングによって筆記先端
   部が軸内部に没入するように構成され、クリップの先端
   部を横方向に係合を解除し得る距離だけ弾性変位可能と
   なし、軸筒にはクリップと対向する側面にスリットと、
   スリットの両側に接続してスリットに連通する溝を夫々
   一体に備えて、ノック体はその側面に突起を備えた係止
   部とスリットに貫出して移動自在なストッパー片が夫々
   一体に設けられたノック式のボールペンに於いて、軸筒
   の側面にはスリットとは別に窓孔が穿設されて、軸筒は
   ポリエステル樹脂を含む透明な樹脂で成形され、上記ノ
   ック体は樹脂製で、上記係止部とは別に弾性変位可能な
   係止突起を設けて軸筒の窓部に係脱可能に貫出するよう
   に設けたことを特徴とする上記請求項２記載のボールペ
   ン。