JPH11139069A - ボールペン - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 低粘度のインキを使用したボールペンであっ
て、インキの誘導が制御可能であり、インキの直流及び
逆流と筆記掠れを防止可能とする。 【構成】 チップの前方内孔部にブッシュが密嵌され、
チップの後方からその内孔にスプリングが前方に附勢さ
れるよう内挿されると共にスプリングの前端に押し体が
配設されて、その押し体の前方に設けた棒軸部が上記ブ
ッシュに設けた軸心孔を貫通し、その棒軸部の先端がチ
ップ先端部に回転自在に抱持された先端ボールの背面を
押圧して、先端ボールがチップのボール抱持部の内縁に
密接されてインキの流出が阻止されると共に、上記押し
体の棒軸部とブッシュの軸心孔との間に毛管作用によっ
てインキを誘導可能とする誘導孔が形成されるよう構成
されてなる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、低粘度のインキが充填
されて成るボールペンの改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、高粘度のインキを使用した所謂油
性ボールペンと繊維状の中綿にインキを内蔵させ、ボー
ルペンのチップまでインキ誘導芯を介してインキを誘導
するようにした所謂水性ボールペンが知られている。夫
々、幾つかの欠点を有しているが端的な欠点として、油
性ボールペンはインキが高粘度が故にボテや筆記濃度が
薄いという欠点がある。又、水性ボールペンはインキを
内蔵させる中綿を使用するが故に部材費が掛かりコスト
高になることと、インキの消費が判らないという欠点が
ある。又、そのような状況下で夫々の欠点を改良する目
的で静的には高い粘性を示し、筆記時のボールの回転で
粘性が低下してインキが流出される剪断減粘性を有する
水性インキを使用したボールペンも知られている。しか
しながら、剪断減粘性を有する水性インキを使用したボ
ールペンは、インキが蒸発し易い性質と、インキの流出
量が多く（筆記濃度を上げるため）インキ収容管の径を
太くしてインキの搭載量を多くしている。又、インキの
粘度は油性ボールペンのインキに比べて小さいのでイン
キ収容管に対する流動抵抗は小さい。従って、インキの
自重や温度の変化によりインキ収容管の後端にインキが
漏れ出す逆流問題やチップ側を下向きにした場合に先端
ボールとチップ抱持部の隙間が生じるとインキが滲みで
る直流問題がある。その為に、通常はインキの後端にイ
ンキの蒸発を防止すると共に筆記時のインキの消耗に追
随して移動し、インキの逆流を抑制するグリース状のフ
ォロアが設けられている。しかしながら、フォロアを設
けても上向き筆記をした時にはチップの先端ボール背面
のインキが無くなると、インキのヘッドが直に加わる為
に顕著な逆流が生じることと、チップ先端からのインキ
の直流が防止できない問題がある。従って、筆記具の軸
筒内を汚すと共に軸筒に設けた通気孔からインキが漏れ
て手や衣服を汚す危険がある。その状況は油性ボールペ
ンで生じる状況の比ではない。又、先端ボールを抱持す
るチップ先端の抱持部は微小且つ薄肉状に形成されてい
る為に、無理な筆記や落下衝撃で変形や磨耗により先端
ボールが脱落する事故がある。その場合、インキが直流
して周囲を汚す危険がある。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、低粘
度のインキ（通常の低粘度水性インキあるいは筆記時の
先端ボールの回転で粘性が低下してインキが流出される
剪断減粘性を有する水性インキ又は低粘度の油性インキ
など）を使用したボールペンの改良であって、ボールペ
ンの上向き筆記や衝撃によって生じるインキの逆流とチ
ップ側を下向きに置いた時の直流を防止可能とし、ボー
ルペンの軸筒内や手、衣服の汚損を防止可能とする。
又、上向き筆記、衝撃が加わった時の先端ボール背面の
空気巻き込みに伴うインキ切れで起きる筆記掠れを防止
することと、先端ボールとチップ抱持部の内縁とのシー
ル不完全に伴う乾燥で起きる筆記掠れの防止を可能とす
る。又、無理な筆記や落下衝撃で変形や磨耗により先端
ボールが脱落する事故が生じた場合でもインキ直流を阻
止可能とする。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を達
成する為に以下の構成を有する。先ず、請求項１に記載
の発明に係るボールペンは、先端にボールペンのチップ
を、後方にインキ収容管を有して、インキ収容管には低
粘度のインキが充填されて成るボールペンに於いて、チ
ップの前方内孔部にブッシュが密嵌され、チップの後方
からその内孔にスプリングが前方に附勢されるよう内挿
されると共にスプリングの前端に押し体が配設されて、
その押し体の前方に設けた棒軸部が上記ブッシュに設け
た軸心孔を貫通し、その棒軸部の先端がチップ先端部に
回転自在に抱持された先端ボールの背面を押圧して、先
端ボールがチップのボール抱持部の内縁に密接されてイ
ンキの流出が阻止されると共に、上記押し体の棒軸部と
ブッシュの軸心孔との間に毛管作用によってインキを誘
導可能とする誘導孔が形成されるよう構成されてなる。

【０００５】請求項２に記載の発明に係るボールペン
は、請求項１に記載のボールペンに於いて、押し体の棒
軸部の後端に当接部が設けられ、又、ブッシュの軸心孔
の後端に段部が設けられて、棒軸部の先端が先端ボール
の背面を押圧した状態に於いて、誘導孔にインキ流入可
能な隙間が形成されるように上記段部に対して当接部が
対峙され、万一、先端ボールが脱落した場合に押し体が
前進してその当接部がブッシュの段部に液密状に当接す
るように構成されてなる。

【０００６】請求項３に記載の発明に係るボールペン
は、請求項１及び２に記載のボールペンに於いて、継ぎ
手の先端にボールペンのチップを、後方にインキ収容管
を有してなるボールペンであって、継ぎ手の軸心にチッ
プの後端に対峙して、後方に弁体を遊嵌した弁室と、弁
室とインキ収容管を連通する導孔が設けられ、弁室の後
部にテーパー状又は球面状の弁体受け座が設けられて、
チップ側が上向きの時に、上記弁体が弁室後部の弁体受
け座に密接すると共に導孔が密閉されて、インキの逆流
が阻止されるように構成されたことを特徴とする。

【０００７】

【実施例】図１乃至図５は本発明の実施例１を示してい
る。先ず、図に示すように、ポリプロピレン樹脂製のチ
ューブよりなる内部にインキ１７が充填されたインキ収
容管１６の内径筆記部側に固着される後軸部８とチップ
１が圧入固着される内孔１０を有する継ぎ手６には、内
部の略中央に導孔１４を持つテーパー状又は球面状の弁
体受け座１２を設け、チップの軸方向後端と弁体受け座
１２とによって形成される弁室１１内に遊嵌されたボー
ル状の弁体１５によって、通常の筆記時にはインキ収容
管１６から筆記部となる先端ボール２までを連通する構
造（概説すると、弁室がチップの軸心に対し適宜偏心し
て設けられており、チップ下向きでボール状の弁体がチ
ップ後端部に偏心して当接し、溝１３等を介してインキ
がチップ内に流入可能となる。）とした上で、上向きで
は弁体１５が継ぎ手６の弁体受け座１２に密接すること
によってインキの逆流を防止した構造のボールペンであ
って、当該ボールペンは通常は筆記軸となる軸筒（図示
せず）に挿着して使用される所謂ボールペンのリフィー
ル形態を示したものである。

【０００８】このボールペンでは、インキ１７は中綿や
コレクターと呼ばれるインキ流量調節機構等を利用した
ボールペンに使用されるインキと同様の低粘度水性イン
キ、あるいは静的には高い粘性を有し、筆記時の先端ボ
ール２の回転によりインキの粘性が低下してインキがス
ムーズに流出される剪断減粘性を有した水性インキ（以
下中粘度インキと呼ぶ）又は低粘度の油性インキが充填
され、更にインキ収容管１６のボールペン軸方向後方に
は、インキの揮発防止と流れ出し防止のためのグリース
状のフォロア１８と経時安定性と耐落下性能向上のため
のフォロア棒１９が設けられている。

【０００９】図２には、本発明のボールペンの筆記先端
部であるチップ１及びその内部を示している。チップ１
には筆記部である先端ボール２がカシメ等により形成さ
れるボール抱持部１ｃとインキの導通を確保するチャン
ネルを有した受け座面１ｄとの間に遊嵌されている。
又、チップ１の前方内孔部１ｆにブッシュ３が密嵌さ
れ、チップ１の後方からその内孔にスプリング５が前方
に附勢されるよう内挿されると共にスプリング５の前端
に押し体４が配設されて、その押し体４の前方に設けた
棒軸部４ａが上記ブッシュ３に設けた軸心孔３ｂを貫通
し、その棒軸部４ａの先端がチップ先端部に回転自在に
抱持された先端ボール２の背面を押圧して、先端ボール
２がチップ１のボール抱持部１ｃの内縁に密接されてイ
ンキの流出が阻止されると共に、上記押し体４の棒軸部
４ａとブッシュ３の軸心孔３ｂとの間に毛管作用によっ
てインキを誘導可能とする誘導孔が形成されるよう構成
されている。

【００１０】毛管作用によってインキを誘導可能とする
誘導孔の形態は図４，図５に示されている。図４は第１
の形態で、ブッシュ３の軸心孔３ｂに微小の隙間を有し
て押し体４の棒軸部４ａが嵌挿しており、更に軸心孔３
ｂの周壁の要所にＶ溝３Ｃが形成されている。図５は第
２の形態で、ブッシュ３の軸心孔３ｂに微小の隙間を有
して押し体４の棒軸部４ａが嵌挿し、更に棒軸部の外周
部４ｃの要所にＶ溝４ｄが形成されている。尚、上記Ｖ
溝はインキの誘導を適正化するもので形状はＶ溝に限定
されるものではなく、インキの性能に適合して寸法、形
状、設置個所が設定される。

【００１１】又、スプリング５はその後端側をチップ１
後端側内径に対し僅かに小さい径としてチップ１に挿入
された後、スプリング後端側をチップ１に押しながらチ
ップ１の後端面を塑性変形させてスプリング５が抜け止
めされるように係止段部１ｂが形成されている。又、チ
ップ１は、通常中心部の内径が後端部の内径よりも小さ
くなるのでスプリング５もその略中央を後端側よりも小
径とするか、または全体が十分に小さいスプリング外径
とする必要がある等を考慮して、スプリング５の捲線部
の先端には小径部５ａを、捲線部の後端には大径部５ｂ
が設けられている。又、小径部と大径部との間はスプリ
ング５のバネ性を有する部分であり、その部分はテーパ
ー形状または段付きの形状と成されている。それは、チ
ップ１の内孔面にスプリング５の捲線部が接触してバネ
作用の動きが疎外されないため、組み立て時の挿入や向
きの検知をやりやすくするためである。

【００１２】ところで、押し体４の棒軸部４ａの後端に
は、一例としてテーパー状又は球面状の当接部４ｂが設
けられ、又、ブッシュ３の軸心孔３ｂの後端に上記当接
部４ｂと対応するやはりテーパー状又は球面状の段部３
ａが設けられて、棒軸部４ａの先端が先端ボール２の背
面を押圧した状態に於いて、誘導孔にインキ流入可能な
隙間が形成されるように上記段部３ａに対して当接部４
ｂが対峙され、万一、先端ボール２が脱落した場合に押
し体４が前進してその当接部４ｂがブッシュ３の段部３
ａに液密状に当接するように構成されている。

【００１３】又、図６は実施例２を示している。当該実
施例は基本的には上述した実施例１と同じであり、イン
キ１７の後端にインキの消耗と共に追従する例えばシリ
コンゴム等の従動体２０を設けたものである。又、従動
体２０の周面にはインキ収容管１６の内周面に液密状に
周接する突部が形成されている。

【００１４】

【作用】図１はチップ１を下向きにした筆記前の状態を
示しており、その時、弁体１５はチップ１の後端に当接
状態となり導孔１４が開放される。インキ収容管１６か
ら導孔１４を経て弁室１２に入ったインキ１７は先端ボ
ール２の背面まで誘導される。尚、この状態では、押し
体４の棒軸部４ａの押圧で先端ボール２がチップのボー
ル抱持部１ｃの内縁に密接されるのでインキの直流が防
止される。又、筆圧により先端ボール２が微小に後退す
るので隙間を生じてインキが流出可能となる。

【００１５】尚、先端ボール２の背面には受け座面１ｄ
（チップ内孔に向かって貫通したインク流入溝を複数箇
所に有した先端ボールの受け座）があり受け座面１ｄの
中心孔１ｅには棒軸部４ａの先端が貫通している。又、
チップ１内のインキはブッシュ３の軸心孔３ｂと押し体
４の棒軸部４ａとの間に形成される誘導孔を介して、チ
ップのインキ流入溝及び中心孔１ｅと棒軸部４ａの間の
隙間を通じて先端ボール２背面に誘導されるので極めて
低粘度の水性インキであってもインキの流出が適正に制
御可能となる。

【００１６】又、チップ１を上向きにした状態では、弁
体１５が弁室１１の弁体受け座１２に密接して導孔１４
を密閉するので、上向き筆記で先端ボール２背面のイン
キがなくなってもインキが逆流しない。従って、チップ
１を下向きにした時にインキが即流出可能となり、筆記
で掠れが防止される。（因みに弁体を有しない構造で
は、上向き筆記でインキが逆流方向に作用するのでチッ
プ内に空気を巻き込み、下向き筆記で即インキが追随せ
ず掠れが生じる。又、上向き筆記の繰り返しで空気の巻
き込みが累積される。）

【００１７】又、先端ボール２は常時チップ抱持部の内
縁に密接しているので先端部位の乾燥で筆記掠れが防止
される。又、先端ボール２と弁体１５の共同作用で上向
き筆記や衝撃が加わっても空気の巻き込みが防止される
ので筆記掠れが防止される。

【００１８】ところで、無理な筆記や落下衝撃の影響
で、万一、先端ボール２が脱落する事故が生じた場合に
は、図３に示すようにチップ１の先端孔に押し体４の棒
軸部４ａの先端が突出すると共に、押し体の当接部４ｂ
がブッシュ３の段部３ａに密接してインキの直流が防止
可能となる。

【００１９】

【発明の効果】本発明のボールペンの構成及び作用は以
上の如くであり、筆記時以外は先端ボールがチップ抱持
部の内縁に密接するので、インキの直流や逆流が防止さ
れ、軸筒内や手や衣服等を汚す事故が防止される。又、
乾燥による筆記掠れも防止される。又、弁室内に遊嵌す
る弁体を併設することで、先端ボールとチップ抱持部と
の密接不完全状態や、上向き筆記や衝撃による過酷なイ
ンキの逆流状態が保証される。又、極めて低粘度の水性
インキであってもブッシュと押し体との間にインキの毛
管作用を伴う誘導溝を形成することでインキ流出の制御
が可能となる。又、無理な筆記や落下衝撃の影響で、万
一、先端ボールが脱落する事故が生じた場合でもインキ
の直流が防止可能となる。特に、当該ボールペンを筆記
先端部がキャップオフとなる例えばノック式の筆記具の
リフィールとして使用する場合には重要となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例１であるボールペンの縦断面図
で、チップを下向きにした状態を示している。

【図２】実施例１のボールペンのチップの縦断面図であ
る。

【図３】チップ先端から先端ボールが脱落した時の状態
を示した要部の断面図である。

【図４】図２のＡ−Ａ断面図で、誘導孔を形成する第１
の形態を示している。

【図５】図２のＡ−Ａ断面図で、誘導孔を形成する第２
の形態を示している。

【図６】実施例２であるボールペンの縦断面図で、チッ
プを下向きにした状態を示している。

【符号の説明】

１ チップ １ａ 軸部 １ｂ 係止段部 １ｃ ボール抱持部 １ｄ 受け座面 １ｅ 中心孔 １ｆ 段部 ２ 先端ボール ３ ブッシュ ３ａ 段部 ３ｂ 軸心孔 ３ｃ Ｖ溝 ４ 押し体 ４ａ 棒軸部 ４ｂ 当接部 ４ｃ 外周部 ４ｄ Ｖ溝 ５ スプリング ５ａ 小径部 ５ｂ 大径部 ６ 継ぎ手 ７ 前軸部 ８ 後軸部 ９ 鍔部 １０ 内孔 １１ 弁室 １２ 弁体受け座 １３ 溝 １４ 導孔 １５ 弁体 １６ インキ収容管 １７ インキ １８ フォロア １９ フォロア棒 ２０ 従動体

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 先端にボールペンのチップを、後方にイ
   ンキ収容管を有して、インキ収容管には低粘度のインキ
   が充填されて成るボールペンに於いて、 チップの前方内孔部にブッシュが密嵌され、チップの後
   方からその内孔にスプリングが前方に附勢されるよう内
   挿されると共にスプリングの前端に押し体が配設され
   て、その押し体の前方に設けた棒軸部が上記ブッシュに
   設けた軸心孔を貫通し、その棒軸部の先端がチップ先端
   部に回転自在に抱持された先端ボールの背面を押圧し
   て、先端ボールがチップのボール抱持部の内縁に密接さ
   れてインキの流出が阻止されると共に、上記押し体の棒
   軸部とブッシュの軸心孔との間に毛管作用によってイン
   キを誘導可能とする誘導孔が形成されるよう構成されて
   なることを特徴するボールペン。
2. 【請求項２】 押し体の棒軸部の後端に当接部が設けら
   れ、又、ブッシュの軸心孔の後端に段部が設けられて、
   棒軸部の先端が先端ボールの背面を押圧した状態に於い
   て、誘導孔にインキ流入可能な隙間が形成されるように
   上記段部に対して当接部が対峙され、万一、先端ボール
   が脱落した場合に押し体が前進してその当接部がブッシ
   ュの段部に液密状に当接するように構成されてなる請求
   項１に記載のボールペン。
3. 【請求項３】 継ぎ手の先端にボールペンのチップを、
   後方にインキ収容管を有してなるボールペンであって、
   継ぎ手の軸心にチップの後端に対峙して、後方に弁体を
   遊嵌した弁室と、弁室とインキ収容管を連通する導孔が
   設けられ、弁室の後部にテーパー状又は球面状の弁体受
   け座が設けられて、チップ側が上向きの時に、上記弁体
   が弁室後部の弁体受け座に密接すると共に導孔が密閉さ
   れて、インキの逆流が阻止されるように構成されたこと
   を特徴とする請求項１及び２に記載のボールペン。