本発明は、概して筆記用具などのアプリケータに関する。特に、本発明は、非使用時に先端ボールが先端を実質的に閉じ、使用時に流体が先端から先端ボールの周りを流れるのを可能にするように、アプリケータの先端ボールを偏らせるポイント組立体における位置決め用の先端ボールプッシャを含むポイント組立体に関する。
筆記用具やボールペンのような従来のボールポイントアプリケータは、アプリケータポイントの先端に位置するボールを含んでいる。ポイントは、先端ボールが抜けるのを防止するように変形する。先端ボールは、非使用時に先端ボールをポイントの開口部に押し付けるばねによって偏らさせられる。空気がアプリケータの内部機構に接触するのを軽減または防止し、かつ流体の漏れを軽減するため先端ボールを偏らせてポイントの開口部に押し付けるのが望ましい。流体が揮発性である場合、開放先端は流体を蒸発させることもあり、その結果、アプリケータ内の流体が無駄になる。使用時に、書く力によって、先端ボールが、それを偏らせるばねの力に抗して先端開口部との接触から離れる。これによって、インクを排出させ、先端ボールの周りを流れさせて表面に堆積させるかまたは表面に移すことができる。
アプリケータの先端ボールを偏らせる多数の技術が公知である。たとえば、ヨーロッパ特許出願第0858911A1号は、回転部材、すなわちボールがペンの先端に位置させられるポイント組立体を有する筆記用具を開示している。ボールは、コイルばねによって偏らされペンの先端の内側前端縁部に接触させられる。ばねは直接ボールに当たる。この種のポイント組立体では、ばねが先端ボールを摩擦するかまたはこすることによってボールの回転が妨たげられることがある。
Okamoto等への米国特許第5277510号は、アプリケータのポイント組立体のくぼみに位置するボールを利用する修正液アプリケータを開示している。可動部材の一方の端部はボールに当たり、他方の端部はばねに結合されている。可動部材は、ボールに直接接触するステムと、可動部材を偏らせてボールに接触させるばねに当たるフランジとを含んでいる。一実施形態では、可動部材は、ポイント組立体からアプリケータのホルダ内まで延びる部分を有する長いステムを含んでいる。ステムは、不規則断面を有しており、より小さい断面部分は先端ボールに接触する。他の実施形態では、可動部材は、ポイント組立体内に位置し、ボールに直接当たるステムと、ばねに隣接するフランジとを含んでいる。
ばねはポイント組立体からホルダ内まで延びている。この実施形態では、ステムは、実質的に一定の直径を有し、フランジは円筒形である。フランジは、インクが可動部材の周りを流れるようにポイント組立体の内部チャンバよりも小さい直径を有している。このような寸法の1つのありうる欠点は、可動部材が横方向に移動し、したがって、それほど安定しないことである。フランジは、ばね内まで延びてばねに連結される突起も含んでいる。ばね内まで延びている可動部材の1つのありうる欠点は、(先端ボールの回転時の)可動部材の横方向への移動がばねに加えられ、内部が不安定になり、不均一な磨耗が生じることである。さらに、可動部材およびばねとして互いに嵌りあうものを選択しなければならず、したがって、部品の互換性が低く、場合によっては製造コストが高くなる。
Matz等への米国特許第5516223号は、アプリケータのポイント組立体内のばねと先端ボールとの間に位置するソケット部材を含む修正液アプリケータを開示している。ソケット部材は、部材の両側から延びる複数の軸方向リブを有している。各リブの一方の側はボールに接触し、かつ他方の側はばねに接触する。
Taubeへの米国特許第2719314号は、先端ボールを使用し、かつ先端ボールとばねとの間に固定された弾性仕切りを含む香水ディスペンサを開示している。McAuleyへの米国特許第5810495号は、高揮発性・低粘度の液体を供給する液体アプリケータを開示している。この液体アプリケータは、弾力性の助けになるばね形状を含むように一体的に形成された弁プラグによって偏らされた先端ボールを使用している。Colvinn等への米国特許第3523628号は、接着剤を塗布するディスペンサについて説明している。このディスペンサは、米国特許第5810495号に開示されたのと同様な、弁部材によって偏らされる先端ボールを使用している。この弁部材は、その弾力性の助けになるばね形状を含むように一体的に形成されている。
ヨーロッパ特許出願第810103号は、ボールに接触する部分と、リブ状フィンを備えた後方の表面と、インクが流れるようにする大きい切欠き部分とを有する筆記用具ボールプッシャを開示している。インクの流れおよび漏れの問題のみが対処されており、ボールのこすれならびにプッシャおよび可動部材の動きを軽減する問題は述べられていない。
筆記用具または他のアプリケータの先端ボールを偏らせる公知の技術を改良することが望ましい。
本発明は、アプリケータ、典型的には流体アプリケータのポイント組立体に関する。本発明は、アプリケータのポイントにボールを使用するいかなる種類のアプリケータに有用であるが、簡単のために、以下の議論は、主として本発明が標準的な既存のゲルインクポイント組立体に容易に追加できるため本発明が特に適しているゲルインクペンのような、図の例示的な実施態様と同様な筆記器具のポイント組立体における本発明の使用に関する。しかし、本発明は、ペン用のポイント組立体に限定されない。
本発明は、アプリケータのポイント(以下では<<先端ボール>>)内に位置するボールと、先端ボールを偏らせてポイント組立体の先端開口部に入れる偏らせ部材との間でアプリケータのポイント組立体内に位置する中間部に関する。以下の開示では、この偏らせ部材をコイルばねとして示す。しかし、他の種類の偏らせ部材またはばねが有用であると考えられ、本発明はそれほど限定されない。本明細書では<<プッシャ>>または<<ボールプッシャ>>とも呼胴部中間部は、とりわけ、先端ボールがばねの偏らせ力に抗して回転できる低摩擦面を形成するのに使用される。
図1を参照すると、ボールプッシャ10が示されている。ボールプッシャ10は、図2および3に示されているように、ペンなどのアプリケータのポイント組立体20内に配置される。ボールプッシャ10は、先端ボール36と偏らせ部材38との間に配置されている。本発明のポイント組立体20は任意の種類のアプリケータと一緒に用いてもよく、アプリケータの種類およびアプリケータの内部機構は本発明にとって重大ではない。ボールプッシャと偏らせ部材はどちらもポイント組立体内に配置されるため、ポイント組立体のハウジングがすべての部材を含む働きをするので、レフィル(refill)の組立てはずっと容易である。
図1を参照すると、ボールプッシャ10は、接触部材14に連結された支持部材12を含んでいる。支持部材12は、ほぼ平面状(図1では円板状)であり、前方の面16と後方の面18とを含むことが好ましい。前方の面16および後方の面18は、平坦であると示されているが、これは本発明にとって重要なことではない。望むならば表面に輪郭を形成してもよい(たとえば、凹状、凸状、溝付きなど)。輪郭は、流体が支持部材12の周りを流れるのを助ける。しかし、以下に詳しく説明するように、支持部材12は、ポイント組立体20の他の部分に横方向の移動(先端ボールが接触部材14に接触して回転する際に生じるような移動)を加えないような形状および構成を有することが好ましい。
ボールプッシャ10の接触部材14は、前方の面16からほぼ垂直に延びている。接触部材14は、支持部材12の直径よりも小さい直径を有している。これは、先端ボール36のこすれを最小限にする助けにもなる。というのは、これによって、接触部材14が先端ボール36に接触する表面積が小さくなるからである。
接触部材14は、ポイント組立体20の前方部分で、ポイント組立体20の中央長手方向軸に沿って先端ボール36に接触し、かつ先端ボール36が回転するときの先端ボール36のこすれまたは摩擦を最小限に抑えるように構成されていることが好ましい。接触部材14の押込み端部52は、先端ボール36の形状に一致するように構成されていてもよい。
さらに、接触部材14は、支持部材12の中央部分または領域22から垂直に延びていてもよい。接触部材14の中央部分(すなわち、長手方向軸15と同軸であり、また先端ボール36の中央に揃い、したがって、先端ボール36の最上部に接触する部分)は、先端ボール36の平面状突起の中央領域の所で接触を可能にし、先端ボール36に対する横方向の力が弱くなるため先端ボール36に対するこすれを最小限に抑える働きをすることができる。コイルばねの長手方向に延びる自由端部から形成された真っ直ぐなピンを使用する際、この真っ直ぐなピンを先端ボールの平面状突起の中央領域に備えるのはより困難になる。なぜなら、ばねの各コイルは、先端ボールの平面状突起の円周と同心であるが、長手方向軸と同軸ではないからである。したがって、コイルばねを用いた場合、真っ直ぐなピンは先端ボールの中央からずれ、先端ボールに横方向の力がかかり、先端ボールのこすれが増大する。
ボールプッシャ10は偏らせ部材38とは別に形成されるため、先端ボール36に対する接触部材14のこすれを軽減するのに最適な材料を使用してもよい。たとえば、テフロン、ポリプロピレン、および他のプラスチック、金属、ガラス、他の物質のような様々な種類の材料が、先端ボール36に対する接触部材14のこすれを最小限に抑えるうえで有用であると考えられる。しかし、接触部材14は、先端ボール36の材料と比べて小さい摩擦係数を有する材料を使用することによって、先端ボール36が接触して回転できる低摩擦面を形成できることが望ましい。ボールプッシャの接触部材がコイルばねから形成された真っ直ぐなピンであるとき、どちらも不十分な摩擦係数を有する先端ボールとばねのスチール端部とが直接接触する。さらに、本発明のボールプッシャ10と一緒に使用してもよい単純なつる巻きばねは、真っ直ぐなピンを有するコイルばねよりも廉価である。
さらに、経済的な理由で、コイルばねを用いてボールプッシャを形成する際、ばねの端部は単に切断され、整形されることも研磨されることもなく、したがって、先端ボールのこすれが増大する。このように、従来技術と同様に、コイルばねの長手方向に延びる部分を用いて先端ボールを押し付けて本発明のボールプッシャと偏らせ部材の両方に最適な材料および形状を選択される。このことは、これらの部材がそれぞれの異なる機能を果たし、通常それぞれの異なる最適な材料を必要とするため特に有用である。ボールプッシャおよび偏らせ部材の最良の形状は、先端ボールおよびボールプッシャの材料ならびに流体の特性に依存することがある。
図1の実施形態では、支持部材12は4つの切欠き部分24を含んでおり、各切欠き部分24は、支持部材12の前方の面16と後方の面18との間を延び、流体が支持部材12を通って流れるのを回避するのに十分な寸法を有している。図1の実施形態の切欠き部分24は同じ寸法を有し、支持部材12の周囲26に沿って等間隔に配置されることが好ましい。これによって、流体は支持部材12を通って滑らかにかつ均一に流れることができる。図1に示されている切欠き部分24はほぼ三角形であり、支持部材12がほぼX字形または十字形になるように支持部材12の周囲に等間隔に配置されている。
したがって、この実施形態では、支持部材12のブレード(非切欠き部分)の幅は、半径方向に中央領域22から周辺26の方へ大きくなる。この実施形態では、支持部材12の後方の面18の非切欠き面は、偏らせ部材38を適切に支持するのに十分な大きさを有している。切欠き部分の他の形状、位置、構成などを本発明と一緒に使用してもよく、かつ切欠きが流体の流れを可能にするのに十分な大きさを有するかぎり本発明が切欠きの特定の形状、位置、構成などに制限されないことに留意されたい。これらの形状には、円、くさび、または長穴を含めることができるが、それらに限らない。さらに、設ける切欠き部分の数は4つよりも少なくても多くてもよい。さらに、図示されている切欠き部分24は、支持部材12の中央領域、すなわち中央部分22から支持部材12の周辺26まで延びている。切欠き部分24は、実際には支持部材12の周辺26の一部を除去することによって作られる。支持部材12の周辺26まで延びない穴のような他の種類の切欠きを本発明と一緒に使用してもよい。したがって、切欠き部分24の寸法、数、および形状と、切欠き部分24の位置は、本発明にとって重大ではないと考えられる。支持部材のブレード(非切欠き部分)の寸法、数、および形状は、切欠き部分の寸法、数、および形状に依存し、やはり、ブレードが支持部材および偏らせ部材を安定させるようになっているかぎり様々であってよい。
上述のように、ボールプッシャ10用の例示的なハウジング30は図2および3に示されている。ボールプッシャ10はポイント組立体20のハウジング30内に位置している。ハウジング30は、先端32および後方の端部34を含んでいる。先端ボール36は、ポイント組立体20の先端32内に位置している。先端ボール36は球状として示されているが、他の形状の本発明の範囲内である。ポイント組立体20の先端32は、インクなどの流体が通って流れる先端開口部28を含んでいる。ボールプッシャ10の接触部材14は先端ボール36に当たり、偏らせ部材38はボールプッシャ10の支持部材12に当たる。支持部材12の前方の面16は先端32に面し、一方、支持部材12の後方の面18はハウジング30の後方の端部に面している。偏らせ部材38は、図2および3ではコイルばねとして示されているが、当業者に知られた他の種類のばねを使用してもよい。偏らせ部材38は、それがボールプッシャ10を先端ボール36の方へ偏らせるように張力をかけられることが好ましい。したがって、先端ボール36は、偏らせ部材38によりボールプッシャ10を介して先端32の方へ偏らされて先端開口部28を閉じ、望ましくない流体流が先端開口部28を通るのを妨げる。筆記中に、先端ボール36が表面に押し付けられると、先端ボール36もボールプッシャ10および偏らせ部材38の方へ押され、先端ボール36と先端開口部28との間にわずかな隙間ができ、所望の量の流体が先端開口部28から流出することができる。
図2に示されているように、ハウジング30は内側胴部40を含んでいる。内側胴部40は、先端32の所の前方部分42と、後方の端部34の所の後方部分44と、前方部分42と後方部分44との間に位置する中央部分46とを含む少なくとも3つの部分に分割できる不規則断面形状を有している。前方部分42は、先端ボール36を受け入れる形状および寸法を有している。前方部分42の先端32に開口部28が設けられており、通路49が前方部分42を通って延び、中央部分46で通路50と交わっている。中央部分46は、外側に後方部分44の方へ向かって先細になっており、したがって、前方部分42に隣接する狭い部分43と、後方部分44に連結された広い部分45とを有する実質的に外側に広がる円錐状である。後方部分44はほぼ円筒状である。ボールプッシャ10の接触部材14は中央部分46に位置し、接触部材14の押込み端部52が通路50を通じて先端ボール36に接触するようにハウジング30の長手方向軸に沿って延びている。ボールプッシャ10の支持部材12は後方部分44に位置している。
支持部材12と後方部分44は、支持部材12の周辺26が後方部分44内の支持部材12を安定させるように構成されている。支持部材12は、支持部材12をハウジング30の長手方向軸に沿った変位および長手方向軸の周りの回転に実質的に制限し、横方向の移動を完全には無くさないとしても、著しく軽減するようにさらに構成してもよい。したがって、ボールプッシャ10の横方向の移動は目立たない(すなわち、ポイント組立体20の機能や磨耗に悪影響を与えない)ことが好ましい。偏らせ部材38は、後方部分44に位置し、一方の端部で、支持部材12の後方の面18に当たっている。
支持部材12は、横方向では偏らせ部材38に接触しない。これによって、支持部材12を偏らせ部材38とは独立に構成することができ、したがって、支持部材12および偏らせ部材38をより容易に製造することができる。偏らせ部材38の後方の端部60は、ポイント組立体の内側に突き出る当接部(不図示)に接触するように位置させるか、またはポイント組立体20内またはポイント組立体20の外側に固定してもよく、偏らせ部材38の後方の端部60の固定は本発明にとって重要ではない。
本発明を筆記用具に関して論じたが、本発明が、流体を表面に塗布するアプリケータまたはペンのポイントにボールを使用するあらゆる種類のアプリケータを含む、あらゆる種類のボール先端アプリケータに対して有用であることを理解されたい。さらに、本発明を筆記用具に関して論じたが、本発明が、修正液、接着剤、または他の物質のような、様々な種類の媒体用の他の種類のアプリケータに適用できることも理解されたい。したがって、本発明は筆記用具に限定されない。
さらに、上記の説明および図面は、本発明の好ましい実施形態を表しているが、本発明の趣旨および範囲内で好ましい実施形態に様々な追加、修正、および置換を施してもよいことが理解されよう。特に、本発明の範囲から逸脱せずに、本発明を他の特定の形態、構造、構成、割合で実施することができ、かつ他の部材、材料、および構成部材と一緒に実施できることが当業者にとって明らかになろう。当業者には、本発明を実施する際に使用される構造、構成、割合、材料、および構成部材の、特に本発明の範囲から逸脱せずに特定の環境および動作要件に適応させられた多数の修正例と一緒に、本発明を使用できることが理解されよう。したがって、ここに開示されている実施形態は、すべての点で例示的であり、限定的なものとみなされるべきではない。