JP3561383B2 - ボールペン - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、静的には高い粘性を有し、筆記時のボールの回転で粘性が低下してインキが流出される、所謂剪断減粘性を有した水性インキ又は低粘度の油性インキを使用したボールペンの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、筆記時の先端ボールの回転で粘性が低下してインキが流出される、所謂剪断減粘性を有した水性インキ又は低粘度の油性インキを使用したボールペンが知られている。そのようなインキを使用したボールペンは、インキの流出量が多く(筆記濃度を上げるため)インキ収容管の径を太くしてインキの搭載量を多くしている。又、インキの粘度は油性ボールペンのインキに比べて遙かに小さいのでインキ収容管に対する流動抵抗は小さい。従って、インキの自重や衝撃によりインキ漏れ(インキ収容管の後端にインキが逆流する)が生じやすい。その為に、通常はインキの後端に筆記時のインキの消耗に追随して移動するが、インキの自重や衝撃に対してインキの逆流を抑制するグリース状のフォロアが設けられている。しかしながら、フォロアを設けても上向き筆記をした時にはチップの先端ボール背面のインキが無くなると、インキのヘッドが直に加わる為に顕著な逆流が生じて手や衣服を汚す危険がある。又、インキの粘度が低く流出量が多いが故に、チップ側を下向きにした場合に先端ボールとチップ抱持部の隙間が生じるとインキが滲みでる(直流)問題が存在する。
又、先端ボールを抱持するチップ先端の抱持部は微小且つ薄肉状に形成されている為に、無理な筆記や落下衝撃で変形や磨耗により先端ボールが脱落する事故がある。その場合、インキが直流して周囲を汚す危険がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、筆記時の先端ボールの回転で粘性が低下してインキが流出される剪断減粘性を有した水性インキ又は低粘度の油性インキを使用したボールペンの改良であって、ボールペンの上向き筆記や衝撃によって生じるインキの逆流とチップ側を下向きに置いた時の直流を防止可能とし、ボールペンの軸筒内や手、衣服の汚損を防止可能とする。又、上向き筆記、衝撃が加わった時の先端ボール背面の空気巻き込みに伴うインキ切れで起きる筆記掠れを防止することと、先端ボールとチップ抱持部の内縁とのシール不完全に伴う乾燥で起きる筆記掠れの防止を目的とする。又、無理な筆記や落下衝撃で変形や磨耗により先端ボールが脱落する事故が生じた場合でもインキ直流を阻止可能とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成する為に本発明のボールペンは、 継ぎ手の軸心にチップの後端に対峙して、後方に弁体を遊嵌した弁室と、弁室とインキ収容管を連通する導孔が設けられ、弁室の後部にテーパー状又は球面状の弁体受け座が設けられて、前記チップ内孔にスプリングが内挿されてスプリングの捲線部の後端がチップ後端に設けられた段部に係止されて抜出不能に設けられると共に段部の後面に受け座面が設けられて、捲線部後端の更に後方に設けた棒軸部がチップ後端の通孔から突出状態に設けられ、又、スプリングの捲線部先端の更に先方に設けた棒軸部の先端がチップ先端部に回転自在に抱持された先端ボールの背面を押圧して、先端ボールがチップのボール抱持部の内縁に密接されてインキの流出が阻止され、チップ側が上向きの時に、前記弁体が弁室後部の弁体受け座に密接して、導孔が密閉されてインキの逆流が阻止され、チップ側が下向きの時に、弁体が前記チップ後端から突出したスプリングの棒軸部の後端に当接されると共に、導孔、弁室を通じてチップ内にインキが流入可能となる。
又、先端ボールが万一脱落した場合には、チップ下向きで、スプリング先方の棒軸部がチップ先端から突出すると共にスプリングがチップ内孔の先方に移動して、スプリング後方の棒軸部がチップ後端より内部に没入し、弁体がチップ後端の受け座面に密接してインキの直流が阻止可能となる。
【0005】
【実施例】
図1乃至図3は本発明の一実施例を示している。先ず、図に示すように、ポリプロピレン樹脂製のチューブよりなる内部にインキ17が充填されたインキ収容管16の内径筆記部側に固着される後軸部10とチップ1が圧入固着される内孔11を有する継ぎ手7には、内部の略中央に導孔14を持つテーパー状又は球面状の弁体受け座13を設け、チップの軸方向後端と弁体受け座13とによって形成される弁室12内に遊嵌されたボール状の弁体15によって、通常の筆記時にはインキ収容管16から筆記部となる先端ボール2までを連通する構造としたうえで、上向きでは弁体15が継ぎ手7の弁体受け座13に密接することによってインキの逆流を防止した構造のボールペンであって、当該ボールペンは通常は筆記軸となる軸筒(図示せず)に挿着して使用される所謂ボールペンのリフィール形態を示したものである。
【0006】
このボールペンでは、インキ17には静的には高い粘性を有し、筆記時の先端ボール2の回転によりインキの粘性が低下してインキがスムーズに流出される剪断減粘性を有した水性インキ(以下中粘度インキと呼ぶ)又は低粘度の油性インキが充填され、更にインキ収容管16のボールペン軸方向後方には、インキの揮発防止と流れ出し防止のためのグリース状のフォロア18と経時安定性と耐落下性能向上のためのフォロア棒19が設けられている。
【0007】
図3には、本発明のボールペンの筆記先端部であるチップ1及びその内部を示している。チップ1には筆記部である先端ボール2をカシメ等により形成されるボール抱持部1eとインキの導通を確保するチャンネルを有し、先端ボール2を受ける受け座面1fを有することによって遊嵌してあり、更に内部には、先端ボール2の背面に接し、後端面にはチップ1の軸部1a後端の段部1bが当接することによってスプリング3が内部に遊挿されており、このスプリング3はその後端側をチップ1後端側内径に対し僅かに小さい径としてチップ1に挿入された後、スプリング後端側をチップ1に押しながらチップ1の後端面を塑性変形させて段部1b及びその後面に受け座面1cが形成されている。
【0008】
又、チップ1の内孔面にスプリング3の捲線部6が接触してバネ作用の動きが疎外されないため、組み立て時の挿入や向きの検知をやりやすくするため、チップ1の最小径となる中心孔1gを貫通して先端ボール2を押圧する直線状の棒軸部4を極力チップ1の中心から伸ばすため、更にチップ1は、通常中心部の内径が後端部の内径よりも小さくなるのでスプリング3もその略中央を後端側よりも小径とするか、または全体が十分に小さいスプリング外径とする必要がある等を考慮して、スプリング3の捲線部6の先端には小径部3aを、捲線部6の後端には大径部3bが設けられている。又、小径部と大径部との間はスプリング3のバネ性を有する部分であり、その部分はテーパー形状または段付きの形状と成されている。又、大径部3bの後端に直線状の棒軸部5が延設されている。
【0009】
以上で、棒軸部4の先端が先端ボール2の背面に押圧状に当接され、先端ボール2は、その押圧でチップ1のボール抱持部1eの内縁に密接状態と成される。尚、前記棒軸部5は、前記捲線部6の大径部3bより小径の捲線部と成した棒軸部とすることも可能である。
【0010】
図4は、チップの他の実施形態を示すものである。
このチップ30は、筒部30aの先端にホルダー31を圧着して構成されている。ホルダー31は、筆記部である先端ボール2をボール抱持部31c(カシメにより形成)で抜止め支持され、先端ボール2を受ける受け座面31dによって回動自在に遊嵌されている。又、ホルダー31後端の圧入部31bには筒部30aが圧着されて、内部には先端ボール2に先端を接し、後端には筒部30aの後端の段部30cによってスプリング3が内部に固定されている。
尚、この構成によれば、上述した図3に示されるチップに対して、筒部30a後端の段部30c、受け座面30eの形成は容易且つ精度良く形成可能となるものである。
【0011】
ところで、上記継ぎ手7とインキ収容管16は一体の樹脂成型品とすることも可能である。又、継ぎ手7とインキ収容管16を直接筆記具の軸体とすることも可能である。
又、上記実施例の弁体はボール状で示しているが、弁体は軸状で両端面がテーパー状又は球面状に形成され、必要によって側面にインキ誘導のための溝が形成されるように構成することも可能である。
【0012】
【作用】
図1はチップ1を下向きにした筆記前の状態を示しており、その時、弁体15はスプリング3の棒軸部5の後端に当接状態となり導孔14が開放される。インキ収容管16から導孔14を経て弁室12に入ったインキ17は先端ボール2の背面まで誘導される。尚、この状態では、スプリング3の棒軸部4の押圧で先端ボール2がチップ抱持部の内縁に密接されるのでインキの直流が防止される。又、筆圧により先端ボール2が微小に後退するので隙間を生じてインキが流出可能となり、筆記により先端ボール2の回転で粘性が低下してインキが流出され、ボテが無く、濃度の高い筆記が可能となる。
尚、当該実施例は、弁体15とチップ1の後端との間が自由な空間を有するように構成されるのでインキ流通を阻害することがない。
【0013】
尚、先端ボール2の背面には受け座面1f(チップ内孔に向かって貫通したインク流入溝を複数箇所に有した先端ボールの受け座)があり受け座面1fの中心孔1gには棒軸部4が貫通する。チップ1内のインキはインキ流入溝及び中心孔1gと棒軸部4との間の隙間を通じて先端ボール2背面に誘導される。
【0014】
又、図2はチップ1を上向きにした状態を示しており、その時、弁体15が弁室12の弁体受け座13に密接して導孔14を密閉するので、上向き筆記で先端ボール2背面のインキがなくなってもインキが逆流しない。従って、チップ1を下向きにした時にインキが即流出可能となり、筆記で掠れが防止される。(因みに弁体を有しない構造では、上向き筆記でインキが逆流方向に作用するのでチップ内に空気を巻き込み、下向き筆記で即インキが追随せず掠れが生じる。又、上向き筆記の繰り返しで空気の巻き込みが累積される。)
【0015】
又、先端ボール2は常時チップ抱持部の内縁に密接しているので先端部位の乾燥で筆記掠れが防止される。又、先端ボール2と弁体15の共同作用で上向き筆記や衝撃が加わっても空気の巻き込みが防止されるので筆記掠れが防止される。
【0016】
ところで、無理な筆記や落下衝撃の影響で、万一、先端ボール2が脱落する事故が生じた場合には、チップ下向き状態で、チップ1の先端孔からスプリング3棒軸部4の先端が突出すると共にスプリング3がチップ内で前方に移動して、スプリング3後端の棒軸部5がチップ後端孔内に没入し、弁体15がチップの受け座面1cに密接してインキの直流を防止可能とする。尚、ボールペンのリフィールの製造時に於いて、インキ収容管にインキを充填した後、脱泡とともにインキが先端ボールの背面まで充填されるように先端ボールを押圧した状態で遠心するが、その際、弁体15が棒軸部5を押圧してスプリング3が圧縮前進されても弁体15の前端と前記受け座面1cとの間に適宜隙間が形成されるようにスプリング3の寸法形状が設定されている。(例えば、スプリングの捲線部が全圧縮状態で隙間が形成される。)
【0017】
【発明の効果】
本発明のボールペンの構成及び作用は以上の如くであり、弁室内に遊嵌する弁体により上向き筆記や衝撃によってインキの逆流が防止可能となり、又、筆記時以外は先端ボールがチップ抱持部の内縁に密接するので、下向きに置かれた時に直流が防止され、軸筒内や手や衣服等を汚す事故が防止される。又、上向き筆記や衝撃後にインキが即追随するので掠れが防止される。又、乾燥による筆記掠れも防止される。又、無理な筆記や落下衝撃の影響で、万一、先端ボールが脱落する事故が生じた場合でもインキの直流が防止可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例であるボールペンの縦断面図で、チップを下向きにした状態を示している。
【図2】実施例であるボールペンの縦断面図で、チップを上向きにした状態を示している。
【図3】実施例であるボールペンのチップ及びその内部構成を示した断面図である。
【図4】チップの他の実施形態を示した断面図である。
【符号の説明】
1 チップ
1a 軸部
1b 段部
1c 受け座面
1d 通孔
1e ボール抱持部
1f 受け座面
1g 中心孔
2 先端ボール
3 スプリング
3a 小径部
3b 大径部
4 棒軸部
5 棒軸部
6 捲線部
7 継ぎ手
8 前軸部
9 鍔部
10 後軸部
11 内孔
12 弁室
13 弁体受け座
14 導孔
15 弁体
16 インキ収容管
17 インキ
18 フォロア
19 フォロア棒
30 チップ
30a 筒部
30b 軸部
30c 段部
30d 通孔
30e 受け座面
31 ホルダー
31a 先部
31b 圧入部
31c ボール抱持部
31d 受け座面
31e テーパー部
31f 中心孔
【産業上の利用分野】
本発明は、静的には高い粘性を有し、筆記時のボールの回転で粘性が低下してインキが流出される、所謂剪断減粘性を有した水性インキ又は低粘度の油性インキを使用したボールペンの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、筆記時の先端ボールの回転で粘性が低下してインキが流出される、所謂剪断減粘性を有した水性インキ又は低粘度の油性インキを使用したボールペンが知られている。そのようなインキを使用したボールペンは、インキの流出量が多く(筆記濃度を上げるため)インキ収容管の径を太くしてインキの搭載量を多くしている。又、インキの粘度は油性ボールペンのインキに比べて遙かに小さいのでインキ収容管に対する流動抵抗は小さい。従って、インキの自重や衝撃によりインキ漏れ(インキ収容管の後端にインキが逆流する)が生じやすい。その為に、通常はインキの後端に筆記時のインキの消耗に追随して移動するが、インキの自重や衝撃に対してインキの逆流を抑制するグリース状のフォロアが設けられている。しかしながら、フォロアを設けても上向き筆記をした時にはチップの先端ボール背面のインキが無くなると、インキのヘッドが直に加わる為に顕著な逆流が生じて手や衣服を汚す危険がある。又、インキの粘度が低く流出量が多いが故に、チップ側を下向きにした場合に先端ボールとチップ抱持部の隙間が生じるとインキが滲みでる(直流)問題が存在する。
又、先端ボールを抱持するチップ先端の抱持部は微小且つ薄肉状に形成されている為に、無理な筆記や落下衝撃で変形や磨耗により先端ボールが脱落する事故がある。その場合、インキが直流して周囲を汚す危険がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、筆記時の先端ボールの回転で粘性が低下してインキが流出される剪断減粘性を有した水性インキ又は低粘度の油性インキを使用したボールペンの改良であって、ボールペンの上向き筆記や衝撃によって生じるインキの逆流とチップ側を下向きに置いた時の直流を防止可能とし、ボールペンの軸筒内や手、衣服の汚損を防止可能とする。又、上向き筆記、衝撃が加わった時の先端ボール背面の空気巻き込みに伴うインキ切れで起きる筆記掠れを防止することと、先端ボールとチップ抱持部の内縁とのシール不完全に伴う乾燥で起きる筆記掠れの防止を目的とする。又、無理な筆記や落下衝撃で変形や磨耗により先端ボールが脱落する事故が生じた場合でもインキ直流を阻止可能とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成する為に本発明のボールペンは、 継ぎ手の軸心にチップの後端に対峙して、後方に弁体を遊嵌した弁室と、弁室とインキ収容管を連通する導孔が設けられ、弁室の後部にテーパー状又は球面状の弁体受け座が設けられて、前記チップ内孔にスプリングが内挿されてスプリングの捲線部の後端がチップ後端に設けられた段部に係止されて抜出不能に設けられると共に段部の後面に受け座面が設けられて、捲線部後端の更に後方に設けた棒軸部がチップ後端の通孔から突出状態に設けられ、又、スプリングの捲線部先端の更に先方に設けた棒軸部の先端がチップ先端部に回転自在に抱持された先端ボールの背面を押圧して、先端ボールがチップのボール抱持部の内縁に密接されてインキの流出が阻止され、チップ側が上向きの時に、前記弁体が弁室後部の弁体受け座に密接して、導孔が密閉されてインキの逆流が阻止され、チップ側が下向きの時に、弁体が前記チップ後端から突出したスプリングの棒軸部の後端に当接されると共に、導孔、弁室を通じてチップ内にインキが流入可能となる。
又、先端ボールが万一脱落した場合には、チップ下向きで、スプリング先方の棒軸部がチップ先端から突出すると共にスプリングがチップ内孔の先方に移動して、スプリング後方の棒軸部がチップ後端より内部に没入し、弁体がチップ後端の受け座面に密接してインキの直流が阻止可能となる。
【0005】
【実施例】
図1乃至図3は本発明の一実施例を示している。先ず、図に示すように、ポリプロピレン樹脂製のチューブよりなる内部にインキ17が充填されたインキ収容管16の内径筆記部側に固着される後軸部10とチップ1が圧入固着される内孔11を有する継ぎ手7には、内部の略中央に導孔14を持つテーパー状又は球面状の弁体受け座13を設け、チップの軸方向後端と弁体受け座13とによって形成される弁室12内に遊嵌されたボール状の弁体15によって、通常の筆記時にはインキ収容管16から筆記部となる先端ボール2までを連通する構造としたうえで、上向きでは弁体15が継ぎ手7の弁体受け座13に密接することによってインキの逆流を防止した構造のボールペンであって、当該ボールペンは通常は筆記軸となる軸筒(図示せず)に挿着して使用される所謂ボールペンのリフィール形態を示したものである。
【0006】
このボールペンでは、インキ17には静的には高い粘性を有し、筆記時の先端ボール2の回転によりインキの粘性が低下してインキがスムーズに流出される剪断減粘性を有した水性インキ(以下中粘度インキと呼ぶ)又は低粘度の油性インキが充填され、更にインキ収容管16のボールペン軸方向後方には、インキの揮発防止と流れ出し防止のためのグリース状のフォロア18と経時安定性と耐落下性能向上のためのフォロア棒19が設けられている。
【0007】
図3には、本発明のボールペンの筆記先端部であるチップ1及びその内部を示している。チップ1には筆記部である先端ボール2をカシメ等により形成されるボール抱持部1eとインキの導通を確保するチャンネルを有し、先端ボール2を受ける受け座面1fを有することによって遊嵌してあり、更に内部には、先端ボール2の背面に接し、後端面にはチップ1の軸部1a後端の段部1bが当接することによってスプリング3が内部に遊挿されており、このスプリング3はその後端側をチップ1後端側内径に対し僅かに小さい径としてチップ1に挿入された後、スプリング後端側をチップ1に押しながらチップ1の後端面を塑性変形させて段部1b及びその後面に受け座面1cが形成されている。
【0008】
又、チップ1の内孔面にスプリング3の捲線部6が接触してバネ作用の動きが疎外されないため、組み立て時の挿入や向きの検知をやりやすくするため、チップ1の最小径となる中心孔1gを貫通して先端ボール2を押圧する直線状の棒軸部4を極力チップ1の中心から伸ばすため、更にチップ1は、通常中心部の内径が後端部の内径よりも小さくなるのでスプリング3もその略中央を後端側よりも小径とするか、または全体が十分に小さいスプリング外径とする必要がある等を考慮して、スプリング3の捲線部6の先端には小径部3aを、捲線部6の後端には大径部3bが設けられている。又、小径部と大径部との間はスプリング3のバネ性を有する部分であり、その部分はテーパー形状または段付きの形状と成されている。又、大径部3bの後端に直線状の棒軸部5が延設されている。
【0009】
以上で、棒軸部4の先端が先端ボール2の背面に押圧状に当接され、先端ボール2は、その押圧でチップ1のボール抱持部1eの内縁に密接状態と成される。尚、前記棒軸部5は、前記捲線部6の大径部3bより小径の捲線部と成した棒軸部とすることも可能である。
【0010】
図4は、チップの他の実施形態を示すものである。
このチップ30は、筒部30aの先端にホルダー31を圧着して構成されている。ホルダー31は、筆記部である先端ボール2をボール抱持部31c(カシメにより形成)で抜止め支持され、先端ボール2を受ける受け座面31dによって回動自在に遊嵌されている。又、ホルダー31後端の圧入部31bには筒部30aが圧着されて、内部には先端ボール2に先端を接し、後端には筒部30aの後端の段部30cによってスプリング3が内部に固定されている。
尚、この構成によれば、上述した図3に示されるチップに対して、筒部30a後端の段部30c、受け座面30eの形成は容易且つ精度良く形成可能となるものである。
【0011】
ところで、上記継ぎ手7とインキ収容管16は一体の樹脂成型品とすることも可能である。又、継ぎ手7とインキ収容管16を直接筆記具の軸体とすることも可能である。
又、上記実施例の弁体はボール状で示しているが、弁体は軸状で両端面がテーパー状又は球面状に形成され、必要によって側面にインキ誘導のための溝が形成されるように構成することも可能である。
【0012】
【作用】
図1はチップ1を下向きにした筆記前の状態を示しており、その時、弁体15はスプリング3の棒軸部5の後端に当接状態となり導孔14が開放される。インキ収容管16から導孔14を経て弁室12に入ったインキ17は先端ボール2の背面まで誘導される。尚、この状態では、スプリング3の棒軸部4の押圧で先端ボール2がチップ抱持部の内縁に密接されるのでインキの直流が防止される。又、筆圧により先端ボール2が微小に後退するので隙間を生じてインキが流出可能となり、筆記により先端ボール2の回転で粘性が低下してインキが流出され、ボテが無く、濃度の高い筆記が可能となる。
尚、当該実施例は、弁体15とチップ1の後端との間が自由な空間を有するように構成されるのでインキ流通を阻害することがない。
【0013】
尚、先端ボール2の背面には受け座面1f(チップ内孔に向かって貫通したインク流入溝を複数箇所に有した先端ボールの受け座)があり受け座面1fの中心孔1gには棒軸部4が貫通する。チップ1内のインキはインキ流入溝及び中心孔1gと棒軸部4との間の隙間を通じて先端ボール2背面に誘導される。
【0014】
又、図2はチップ1を上向きにした状態を示しており、その時、弁体15が弁室12の弁体受け座13に密接して導孔14を密閉するので、上向き筆記で先端ボール2背面のインキがなくなってもインキが逆流しない。従って、チップ1を下向きにした時にインキが即流出可能となり、筆記で掠れが防止される。(因みに弁体を有しない構造では、上向き筆記でインキが逆流方向に作用するのでチップ内に空気を巻き込み、下向き筆記で即インキが追随せず掠れが生じる。又、上向き筆記の繰り返しで空気の巻き込みが累積される。)
【0015】
又、先端ボール2は常時チップ抱持部の内縁に密接しているので先端部位の乾燥で筆記掠れが防止される。又、先端ボール2と弁体15の共同作用で上向き筆記や衝撃が加わっても空気の巻き込みが防止されるので筆記掠れが防止される。
【0016】
ところで、無理な筆記や落下衝撃の影響で、万一、先端ボール2が脱落する事故が生じた場合には、チップ下向き状態で、チップ1の先端孔からスプリング3棒軸部4の先端が突出すると共にスプリング3がチップ内で前方に移動して、スプリング3後端の棒軸部5がチップ後端孔内に没入し、弁体15がチップの受け座面1cに密接してインキの直流を防止可能とする。尚、ボールペンのリフィールの製造時に於いて、インキ収容管にインキを充填した後、脱泡とともにインキが先端ボールの背面まで充填されるように先端ボールを押圧した状態で遠心するが、その際、弁体15が棒軸部5を押圧してスプリング3が圧縮前進されても弁体15の前端と前記受け座面1cとの間に適宜隙間が形成されるようにスプリング3の寸法形状が設定されている。(例えば、スプリングの捲線部が全圧縮状態で隙間が形成される。)
【0017】
【発明の効果】
本発明のボールペンの構成及び作用は以上の如くであり、弁室内に遊嵌する弁体により上向き筆記や衝撃によってインキの逆流が防止可能となり、又、筆記時以外は先端ボールがチップ抱持部の内縁に密接するので、下向きに置かれた時に直流が防止され、軸筒内や手や衣服等を汚す事故が防止される。又、上向き筆記や衝撃後にインキが即追随するので掠れが防止される。又、乾燥による筆記掠れも防止される。又、無理な筆記や落下衝撃の影響で、万一、先端ボールが脱落する事故が生じた場合でもインキの直流が防止可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例であるボールペンの縦断面図で、チップを下向きにした状態を示している。
【図2】実施例であるボールペンの縦断面図で、チップを上向きにした状態を示している。
【図3】実施例であるボールペンのチップ及びその内部構成を示した断面図である。
【図4】チップの他の実施形態を示した断面図である。
【符号の説明】
1 チップ
1a 軸部
1b 段部
1c 受け座面
1d 通孔
1e ボール抱持部
1f 受け座面
1g 中心孔
2 先端ボール
3 スプリング
3a 小径部
3b 大径部
4 棒軸部
5 棒軸部
6 捲線部
7 継ぎ手
8 前軸部
9 鍔部
10 後軸部
11 内孔
12 弁室
13 弁体受け座
14 導孔
15 弁体
16 インキ収容管
17 インキ
18 フォロア
19 フォロア棒
30 チップ
30a 筒部
30b 軸部
30c 段部
30d 通孔
30e 受け座面
31 ホルダー
31a 先部
31b 圧入部
31c ボール抱持部
31d 受け座面
31e テーパー部
31f 中心孔
Claims (3)
- 継ぎ手の先端にボールペンのチップを、後方にインキ収容管
を有して、インキ収容管には静的には高い粘性を有し、筆記時の先端ボールの回転で粘性が低下してインキが流出される、所謂剪断減粘性を有した水性インキ又は低粘度の油性インキが充填されて成るボールペンに於いて、
継ぎ手の軸心にチップの後端に対峙して、後方に弁体を遊嵌した弁室と、弁室とインキ収容管を連通する導孔が設けられ、弁室の後部にテーパー状又は球面状の弁体受け座が設けられて、前記チップ内孔にスプリングが内挿されてスプリングの捲線部の後端がチップ後端に設けられた段部に係止されて抜出不能に設けられると共に段部の後面に受け座面が設けられて、捲線部後端の更に後方に設けた棒軸部がチップ後端の通孔から突出状態に設けられ、又、スプリングの捲線部先端の更に先方に設けた棒軸部の先端がチップ先端部に回転自在に抱持された先端ボールの背面を押圧して、先端ボールがチップのボール抱持部の内縁に密接されてインキの流出が阻止され、チップ側が上向きの時に、前記弁体が弁室後部の弁体受け座に密接して、導孔が密閉されてインキの逆流が阻止され、チップ側が下向きの時に、弁体が前記チップ後端から突出したスプリングの棒軸部の後端に当接されると共に、導孔、弁室を通じてチップ内にインキが流入するように構成されたことを特徴とするボールペン。 - スプリングの捲線部先端の更に先方に、先端ボールに当接す
る直線状の棒軸部を設け、捲線部先端を小径部とし、又、捲線部の後端を大径部と成して、その大径部をチップ後端の段部に当接させてスプリングが抜け止めされると共に、大径部後端の更に後方に直線状の棒軸部を設けて、その棒軸部が段部後端から適宜突出状態に設けられて成る請求項1に記載のボールペン。 - チップは、先端に先端ボールを抱持したホルダーと、スプリ
ングの後端が当接して抜出不能とする筒部とが圧着されて成ることを特徴とする請求項1及び2に記載のボールペン。
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JP35582696A JP3561383B2 (ja) | 1996-12-25 | 1996-12-25 | ボールペン |
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JP35582696A JP3561383B2 (ja) | 1996-12-25 | 1996-12-25 | ボールペン |
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-
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- 1996-12-25 JP JP35582696A patent/JP3561383B2/ja not_active Expired - Fee Related
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