JP3758139B2 - トロイダル型無段変速機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車用の変速機として用いるトロイダル型無段変速機に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば自動車用変速機として用いるダブルキャビティ式トロイダル型無段変速機は、図3及び図4に示すように構成されている。
ケーシング1の内側には入力軸2が回転自在に支持されている。入力軸2の外周には円管状の伝達軸3が入力軸2を同心に入力軸2に対する相対回転を自在に支持されている。
【0003】
伝達軸3の両端寄り部分には第1と第2の入力ディスク4,5が互いに内側面4a,5aを対向させた状態で、それぞれボールスプライン6を介して支持されている。したがって、第1と第2の入力ディスク4,5はケーシング1の内側に互いに同心にかつ互いに同期して回転自在に支持されている。
【0004】
伝達軸3の中間部の周囲には、第1と第2の出力ディスク7,8がスリーブ9を介して支持されている。スリーブ9は中間部の外周面に出力歯車10を一体に設けたもので、伝達軸3の外径よりも大きな内径を有し、ケーシング1内に設けた支持壁11に一対の転がり軸受12により伝達軸3と同心に回転自在に支持されている。
【0005】
第1と第2の出力ディスク7,8はスリーブ9の両端部にそれぞれの内側面7a,8aを互いに反対に向けた状態にスプライン係合されている。第1の入力ディスク4と第1の出力ディスク7は互いに内側面4a,7aを対向させ、第2の入力ディスク5と第2の出力ディスク8は互いに内側面5a,8aを対向させた状態に回転自在に支持されている。
【0006】
入力軸2と第1の入力ディスク4との間にはローディングカム式の押圧装置45が設けられている。この押圧装置45は入力軸2の中間部にスプライン係合すると共に軸方向に亘る変位を阻止された状態で支持されて、入力軸2と共に回転するカム板46と、保持器47に転勤自在に保持された複数のローラ48とを含んで構成している。そして、入力軸2の回転に基づいて第1の入力ディスク4を第2の入力ディスク5に向け押圧しつつ回転させる。
【0007】
図4に示すように、ケーシング1の内面で第1と第2の出力ディスク7,8の側方位置には、両ディスク7,8を両側から挟む状態で一対のヨーク13a,13bが支持されている。一対のヨーク13a,13bは鋼等の金属のプレス加工あるいは鍛造加工により矩形状に形成されている。そして、ヨーク13a,13bの四隅には後述するトラニオン14の両端部に設けた枢軸16を揺動自在に支持するため、円形の支持孔18が、幅方向の中央部に円形の係止孔19が設けられている。
【0008】
一対のヨーク13a,13bはケーシング1の内面で互いに対向する部分に形成した球面形状の支持ポスト20a,20bに若干の変位自在に支持されている。これら支持ポスト20a,20bはそれぞれ第1の入力ディスク4の内側面4aと第1の出力ディスク7の内側面7aとの間部分である第1キャビティ21、第2の入力ディスク5の内側面5aと第2の出力ディスク8の内側面8aとの間部分である第2キャビティ22にそれぞれ対向する状態に設けられている。したがって、前記ヨーク13a,13bは各支持ポスト20a,20bに支持された状態で、各ヨーク13a,13bの一端部が第1キャビティ21の外周部分に、他端部が第2キャビティ22の外周部分にそれぞれ対向している。
【0009】
第1と第2のキャビティ21,22は同一構造であるため、第1キャビティ21のみについて説明すると、一対のトラニオン14が設けられている。トラニオン14の両端部には同心的に枢軸16が設けられ、これら枢軸16は一対のヨーク13a,13bの一端部に揺動及び軸方向に亘って変位自在に支持されている。すなわち、ヨーク13a,13bの一端部に形成した支持孔18の内側にラジアルニードル軸受26によって支持されている。
トラニオン14の中間部に変位軸31が配置されている。変位軸31はそれぞれ互いに平行でかつ偏心した支持軸部33と枢支軸部34を有している。
また、変位軸31の枢支軸部34が各支持軸部33に対して偏心している方向は、第1と第2の入力ディスク4,5及び第1と第2の出力ディスク7,8の回転方向に関して同方向としている。また、偏心方向は入力軸2の配設方向に対して略直交する方向としている。
【0010】
トラニオン14の一端部には駆動ロッド42が結合され、駆動ロッド42の中間部外周面に駆動ピストン43が固着されている。この駆動ピストン43は駆動シリンダ44内に油密に嵌装されている。そして、駆動ピストン43がトラニオン14を軸方向に変位させるためのアクチュエータを構成している。
前述のように構成されたトロイダル型無段変速機の運転時、入力軸2の回転は押圧装置45を介して第1の入力ディスク4に伝えられ、第1の入力ディスク4と第2の入力ディスク5とが互いに同期して回転する。第1の入力ディスク4及び第2の入力ディスク5の回転はパワーローラ36を介して第1と第2の出力ディスク7,8に伝えられる。第1と第2の出力ディスク7,8の回転は出力歯車10により取り出される。
【0011】
入力軸2と出力歯車10との間の回転速度比を変える場合には、制御弁(図示しない)の切替に基づいて第1と第2のキャビティ21,22に対応してそれぞれ一対ずつ設けられて駆動ピストン43を各キャビティ21,22毎に互いに逆方向に同じ距離だけ変位させる。
【0012】
これら駆動ピストン43の変位に伴って一対ずつ合計4個のトラニオン14がそれぞれ逆方向に変位し、一方のパワーローラ36が下側に、他方のパワーローラ36が上側にそれぞれ変位する。この結果、各パワーローラ36の周面と第1と第2の入力ディスク4,5の内側面4a,5a及び第1と第2の出力ディスク7,8の内側面7a,8aとの当接部に作用し、接線方向の力の向きが変化する。そして、その力の向きの変化に伴ってトラニオン14がヨーク13a,13bに枢支した枢軸16を中心として逆方向に揺動する。この結果、パワーローラ36の周面と第1と第2の入力ディスク4,5及び第1と第2の出力ディスク7,8との当接位置が変化し、入力軸2と出力歯車10の間の回転速度比が変化する。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、一般にFR方式の車両の場合には、車内の居住スペースを確保できるようにケーシング1の上部形状をコンパクトに形成しなければならない。すなわち、図4に示すように、ケーシング1を軸方向から見た形状が凸型をなしてケーシング上部1aの内側スペースが、ケーシング下部1bの内側スペースより狭くなっている。
【0014】
前述した従来のトロイダル型無段変速機は、トラニオン14の上部及び下部が、ケーシング1の内側に支持ポスト20a,20b及びヨーク13a,13bを介して揺動自在に支持されているので、変速の際に上部のヨーク13aが支持ポスト20aを中心に揺動できるように(図4の破線で示すヨーク13の揺動動作)、ケーシング上部1aの内側スペースを十分に確保する必要があるが、上述したようにケーシング1の上部形状をコンパクトに形成しなければならない場合には、ケーシング上部1aの内側スペースを確保することができない。
【0015】
また、トラニオン14の上部及び下部の枢軸16が、ケーシング1の内側に支持ポスト20a,20b及びヨーク13a,13bを介して揺動自在に支持されていると、部品点数が増大して部品製作、部品管理、組立作業が面倒になるという問題もある。
また、上部のヨーク13aは、図4の番号49で示す軸方向規制部材で規制されたラジアルニードル軸受26を介してトラニオン14の上部の枢軸16に連結しているが、トラニオン14の上部の枢軸16が揺動する際に、枢軸16の軸方向規制部材49及びラジアルニードル軸受26に当接する部分に応力が集中してしまい、枢軸16の耐久性の面で問題がある。
【0016】
そこで、例えば、特開2000−9200号公報のトロイダル型無段変速機に記載されているように、全てのヨークをケーシングの内側に直接固定するとともに、トラニオンの両端部に設けられた枢軸をボールスプラインを介して前記ヨークに上下方向に移動自在に支持した構成のものが開発された。
しかしながら、前述した特開2000−9200号公報のトロイダル型無段変速機は、全てのヨークをケーシングの内側に直接固定することで、部品点数が減少し、ケーシングの内部スペースを確保しなくて済むが、変速の際に全てのトラニオンの上下方向移動の同期を機械的に保証システムが無く、不安定になるという問題がある。
【0017】
この発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、トランスミッションの車両搭載性を良好とするためにケーシングをコンパクトな形状とし、しかも、変速の際に全てのトラニオンの上下方向移動の同期保証を向上できるトロイダル型無段変速機を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のトロイダル型無段変速機は、ケーシングと、このケーシングの内側に互いに同心に、かつ互いに独立して回転自在に支持された入力ディスク及び出力ディスクと、前記入力ディスク及び出力ディスクの中心軸の方向に対して直角方向となる捩れの位置に存在する、互いに同心もしくは平行な偶数本の上部及び下部の枢軸を有し、これら枢軸を中心として揺動する複数個のトラニオンと、これらトラニオンの内側面から突出する変位軸と、これら変位軸に回転自在に支持された状態で、前記入力ディスク及び出力ディスクの内側面同士の間に挟持された複数個のパワーローラと、前記トラニオンの上部の枢軸及び下部の枢軸を支持する上部支持手段及び下部支持手段を備えたトロイダル型無段変速機において、前記上部支持手段及び前記下部支持手段のうちの一方を、前記ケーシングに直接固定し、他方を揺動自在に支持し、FR方式(フロントエンジン・リアドライブ方式)の車両に搭載し、前記上部支持手段を前記ケーシングに直接固定し、前記下部支持手段を揺動自在に支持したトロイダル型無段変速機である。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のトロイダル型無段変速機の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、従来と同一構成部分は同一番号を付して説明を省略する。
ケーシング1の内面で第1と第2の出力ディスク7,8の側方位置に、両ディスク7,8を両側から挟む状態で上部のヨーク50及び下部のヨーク13bが支持されている。
【0021】
上部のヨーク50は、ケーシング1の内壁(ケーシング上部1aの内壁)に固定部材53を介して固定され、下部のヨーク13bは、ケーシング下部1bの内側スペースで揺動自在に配設されている。
【0022】
上部のヨーク50の四隅の支持孔18には、ニードルベアリング52が設けられ、このニードルベアリング52が支持孔18の内周に接する球面ベアリング54で支持されることで、トラニオン14の上部の枢軸16が軸方向(上下方向)と傾転方向に変位自在に支持されている。
【0023】
上記構成のトロイダル型無段変速機によると、上部のヨーク50をケーシング上部1aの内壁に固定したことで、従来装置のようにヨークが揺動するためのスペースを取る必要がなくなる。したがって、FR車のように車内の居住スペースを確保できるようにケーシング1の上部形状をコンパクトに形成しなければならない場合、すなわち、図1に示すようにケーシング上部1aの内側スペースが、ケーシング下部1bの内側スペースより狭くなっているケーシング1に最適の構造となる。
【0024】
また、上部のヨーク50をケーシング上部1aの内壁に固定したことで、部品点数が減少し、部品製作、部品管理、組立作業を容易に行うことができる。
また、ケーシングの下方は寸法の制約はなく、本実施形態のようにケーシング下部1bの内側スペースに揺動式の下部のヨーク13bを装着することができることから、全てのヨークをケーシングの内側に直接固定した特開2000−9200号公報のトロイダル型無段変速機よりも、変速の際の全てのトラニオン14の上下方向移動の同期を保証することできる。
【0025】
また、ヨークは4つのパワーローラ36からかかるスラスト力をヨーク内でキャンセルする機能をもつので、できるだけ厚く、大きくする必要があるが、上部のヨーク50をケーシング1に固定したことで支持ポストが不要となり、この支持ポストを無くした部分をヨーク50の厚さを増大することにあてることができる。これにより、上部のヨーク50の耐久性を向上させることができる。
【0026】
次に、図2に示すものは、トラニオン14の上部の枢軸16を支持する他の実施形態を示すものである。本実施形態は、上部の枢軸16を、上部のヨーク50の支持孔18にラジアルニードル軸受60及びこのラジアルニードル軸受60の外周に配置したボールスプライン62とで揺動変位、軸方向(上下方向)自在に支持している。 上記構成によると、トラニオン14を上部の枢軸16の軸方向に円滑に変位させることができる。
【0027】
なお、図1及び図2で示した実施形態は、上部のヨーク50をケーシング1に固定し、下部のヨーク52を揺動式としたが、例えばケーシング1の下方のほうが寸法の制約が大きい場合には、上部のヨークを揺動式とし、下部のヨークをケーシング1に固定する構造として寸法の制約から逃れるようにすると、前述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0028】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によると、上部支持手段及び前記下部支持手段のうちの一方を、前記ケーシングに直接固定し、他方を揺動自在に支持したことで、部品点数が減少し、部品製作、部品管理、組立作業を容易に行うことができる。
【0029】
また、パワーローラからかかるスラスト力を支持手段内でキャンセルする機能をもつので、できるだけ厚く大きくする必要があるが、上部支持手段及び前記下部支持手段のうちの一方をケーシングに固定したことで支持ポストが不要となり、この支持ポストを無くした部分を支持手段の厚さを増大することにあてることができる。ケーシングに固定した支持手段の耐久性を向上させることができる。
【0030】
また、上部の支持手段をケーシングの内壁に固定したことで、従来装置のように支持手段が揺動するためのスペースを取る必要がなくなる。したがって、FR方式の車両のように車内の居住スペースを確保できるようにケーシングの上部形状をコンパクトに形成しなければならない場合には、ケーシング上部の内側スペースが、ケーシング下部の内側スペースより狭くなっている最適な構造となる。
【0031】
さらに、FR方式の車両であると、ケーシングの下方は寸法の制約はなく、ケーシング下部の内側スペースに揺動式の下部の支持手段を装着したことから、変速の際の全てのトラニオンの上下方向移動の同期を保証することできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のトロイダル型無段変速機の縦断面図である。
【図2】トラニオンの上部の枢軸を支持する構造を示す図である。
【図3】トロイダル型無段変速機の概要を示す図である。
【図4】従来のトロイダル型無段変速機の縦断面図である。
【符号の説明】
1 ケーシング
1a 上部ケーシング
1b 下部ケーシング
4,5 入力ディスク
7,8 出力ディスク
13a 下部のヨーク(下部支持手段)
14 トラニオン
16 枢軸
31 変位軸
36 パワーローラ
50 上部のヨーク(上部支持手段)

Claims (1)

  1. ケーシングと、このケーシングの内側に互いに同心に、かつ互いに独立して回転自在に支持された入力ディスク及び出力ディスクと、前記入力ディスク及び出力ディスクの中心軸の方向に対して直角方向となる捩れの位置に存在する、互いに同心もしくは平行な偶数本の上部及び下部の枢軸を有し、これら枢軸を中心として揺動する複数個のトラニオンと、これらトラニオンの内側面から突出する変位軸と、これら変位軸に回転自在に支持された状態で、前記入力ディスク及び出力ディスクの内側面同士の間に挟持された複数個のパワーローラと、前記トラニオンの上部の枢軸及び下部の枢軸を支持する上部支持手段及び下部支持手段を備えたトロイダル型無段変速機において、
    前記上部支持手段及び前記下部支持手段のうちの一方を、前記ケーシングに直接固定し、他方を揺動自在に支持し
    FR方式の車両に搭載し、前記上部支持手段を前記ケーシングに直接固定し、前記下部支持手段を揺動自在に支持したことを特徴とするトロイダル型無段変速機。
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