JP3756052B2 - 光磁気記録媒体の再生方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光磁気記録媒体の再生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光磁気ディスクは高密度記録媒体として知られており、外部磁界の印加とビーム光の照射とを用いて媒体上にサブミクロン単位の記録信号(ビット)を形成する。これにより、フレキシブルディスク,ハードディスクのようなこれまでの外部記録媒体と比較して格段に記録容量を増大することが可能である。近年、急速に発展するマルチメディアの中で、増大する情報量に伴い光磁気ディスクの大容量化の要望が高まっている。
【0003】
このような光磁気ディスクの記録容量を増大させる、即ち記録密度を高めるためにはビットをさらに縮小化すると共に周方向のビット間隔を詰めることが必要である。しかしながら、光磁気ディスクへのビットの記録再生は照射されるビーム光のスポット径によって制限される。スポット径以下の周期を有する小さなビットを再生するためには、ビームスポットを小さく絞れば良いが、ビームスポットは光源の波長λと対物レンズの開口数NAとで制約され、その微細化には限界がある。
【0004】
そこで、媒体のスポット内での温度分布を利用し、スポット内の特定温度領域からビットの読み出しを行なうことにより、スポット径以下の周期を有する小さなビットを再生できる磁気超解像(MSR)再生方式が提案されている。
【0009】
本願出願人は、特開平7−244877号公報において、基板上に積層された再生層,中間層及び記録層の3層の磁性層で構成されるMSR媒体を提案している。ここで提案された光磁気ディスクでは、夫々の層の材料組成,膜厚及び磁気特性を特定することにより、1 kOe以下の外部磁界(再生磁界)の印加でのMSR再生を可能としている。本願発明者らはこのMSR媒体に付いてその磁気特性を測定した。その結果を以下に示す。図20は、この光磁気ディスクの各磁性層間の交換結合力の温度特性を示すグラフである。縦軸は交換結合力を示し、横軸は温度を示している。
【0010】
再生層と中間層との間の交換結合力(以下第1交換結合力という)は温度の上昇に従って弱くなり、記録層と中間層との交換結合力(以下第2交換結合力という)は温度の上昇に従って強くなる。これにより再生時には、高温領域(略180 ℃以上)及び低温領域(略100 ℃より低い領域)で第1及び第2交換結合力を越える程度の共通の外部磁界が印加され、光磁気ディスクの低温領域では第2交換結合力が切れて中間層の磁化方向が外部磁界の方向に揃ってマスクを形成する。また、高温領域では、第1交換結合力が切れて再生層の磁化方向が外部磁界の方向に揃ってマスクを形成するようになっている。
【0011】
この光磁気ディスクの再生方式によると、高分解能での再生が可能であり、且つ外部磁界は数百Oeで十分となる。これにより、再生磁界の印加のみでMSR再生が可能となり、再生装置の小型化が図られる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
このようなMSR媒体を再生する際には、数百Oeの外部磁界を常時印加する必要がある。このような外部磁界を電磁石を用いて印加した場合には、記録再生装置の消費電力のうちで再生時の消費電力が占める割合が大きいという問題があった。
【0014】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、所定の磁気特性を有する第1、第2及び第3磁性層を備えることにより、再生磁界を印加することなく、1 kOe以下の初期化磁石による外部磁界の印加でMSR再生が可能となり、これにより再生時の消費電力を低減できる光磁気記録媒体の再生方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る光磁気記録媒体の再生方法は、磁気的に結合した少なくとも第1磁性層,第2磁性層及び第3磁性層をこの順に備え、第1磁性層と第2磁性層との間の第1交換結合力が温度の上昇に伴って弱くなり、第2磁性層と第3磁性層との間の第2交換結合力が温度の上昇と共に強くなる磁気特性を有し、第1磁性層は希土類磁化優勢の垂直磁化膜であり、第2磁性層はキュリー温度まで補償点が見られない希土類磁化優勢の面内磁化膜であり、第3磁性層は遷移金属磁化優勢の垂直磁化膜であり、第1,第2及び第3磁性層との相対移動を伴うビーム光照射で生じる媒体内温度分布における低温の領域で、第2交換結合力は第1磁性層の保磁力以下の大きさを有し、前記低温の状態における、そのカー回転角のヒステリシスループが、記録方向の磁界を印加した後に、印加する磁界を零に戻してもカー回転角を維持するヒステリシスを有する光磁気記録媒体での前記媒体内温度分布における中間温度の領域で、第3磁性層の磁化方向を第1磁性層に転写して、第1磁性層に転写された磁化方向を読み出す光磁気記録媒体の再生方法であって、前記ビーム光が照射される位置よりも相対移動の前方側に適宜距離離隔して配置されている永久磁石を用いて初期化磁界を記録方向に印加して、第2磁性層を初期化磁界の磁化方向に、第1磁性層の磁化方向を前記第1交換結合力により初期化磁界と逆方向にそれぞれ揃えて前記低温の領域でのフロントマスクを得、前記ビーム光が照射される前記中間温度の領域では、温度の上昇に伴って強くなっている第2交換結合力により、第3磁性層の磁化方向が第2磁性層に転写され、温度の上昇に伴って弱くなっている第1交換結合力により、第2磁性層の磁化方向が第1磁性層に転写されて、第3磁性層の磁化方向の読み出しを行い、前記中間温度の領域よりも前記相対移動の後方側の、前記ビーム光が照射される高温の領域では第1交換結合力が温度の上昇に伴って更に弱くなっていることにより、第1磁性層の磁化方向を総て記録方向と逆方向に揃えてリアマスクを得ることを特徴とする。
【0016】
例えば光磁気ディスクのような光磁気記録媒体にビーム光を相対移動を伴って照射した場合に、光磁気ディスクの周方向に温度分布が形成される。情報が読出される温度領域は、ビーム光が照射されたスポット内で前記第1,第2及び第3磁性層の膜組成に応じて特定される。再生時に、ビーム光が照射されるスポットから適宜距離離隔した位置に備えられた永久磁石により初期化磁界を記録方向に印加することにより、情報読出しの領域の温度よりも光磁気ディスクの低温側の領域に磁界を印加したときには、まず第2磁性層が初期化磁界の向きに揃い、第1交換結合力により第1磁性層の磁化方向が揃う。この領域が再生用ビーム光の照射スポット近傍に近づくまでの時間の経過と共に、その磁化方向は元の状態に戻り易くなる。第1発明にあっては、情報読出しの領域の温度よりも低温側で、第1磁性層の保磁力が第2交換結合力以上の大きさである、換言すれば第2交換結合力は前記ビーム光の照射される所定領域までの低温領域で第2磁性層の磁化が前記第1磁性層との間の交換結合を維持するように第1磁性層の保磁力よりも小さくしてあるので、第1磁性層の磁化方向は時間の経過と共に元に戻ることはなく、照射スポット位置まで揃った状態を維持できる。これにより、低温領域で第3磁性層の磁化方向がマスクされる。
【0017】
そして、情報が読出される温度領域即ち中間温度領域では第2交換結合力が強くなっているので第3磁性層の磁化方向が第1磁性層に転写され、これが読出される。中間温度領域よりも高温領域では、第1交換結合力が更に弱くなって切れるために第1磁性層の磁化方向はビット周辺の第1磁性層の磁化に揃い、再び第3磁性層の磁化方向がマスクされる。これにより、ビーム光の照射スポット近傍に再生用の磁界を印加しなくとも、低温領域及び高温領域にマスクが形成され、中間温度領域から情報を再生することができる。このように、本発明の光磁気記録媒体の再生方法では、低温領域に印加する磁界を永久磁石を用いて発生させるので、消費電力を低減することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の光磁気ディスクの再生時の磁化状態を示す図であり、図2はこの光磁気ディスクの膜構成を示す図である。光磁気ディスク10はガラス製の基板11上にSiNからなる膜厚70nmの下地層12、GdFeCoからなる膜厚40nmの再生層13(第1磁性層)、GdFeからなる膜厚40nmの中間層14(第2磁性層)、TbFeCoからなる膜厚50nmの記録層15(第3磁性層)及びSiNからなる膜厚60nmの保護層16をこの順に積層して構成してある。なお、再生層13は希土類磁化優勢(以下REリッチという)の垂直磁化膜であり、中間層14はキュリー温度まで補償点が見られないREリッチの面内磁化膜であり、記録層15は遷移金属磁化優勢(以下TMリッチという)の垂直磁化膜である。なお、図1では基板11,下地層12及び保護層16は省略して示している。
【0029】
各層はDCスパッタ法により順次形成される。スパッタ条件は、SiN層を成膜する場合はガス圧0.3 Pa,投入電力0.8 kWであり、各磁性層を成膜する場合はガス圧0.5 Pa,投入電力1.0 kWである。成膜はチャンバ内で、到達真空度5×10-5Pa以下で行なった。基板11上に下地層12,再生層13及び中間層14を連続積層した後に、ベルジャー内にて略30分間放置し、その後、記録層15及び保護層16を積層した。ベルジャー内での放置は、中間層14の記録層15側の表面を酸化処理し、中間層14と記録層15との間の交換結合力を弱めるために行なった。
【0030】
以上の如き構成の光磁気ディスク10の記録層15に形成されたビットを再生する場合には、光磁気ディスク10の基板11側から再生用レーザ光を照射する。図3は、本発明の光磁気ディスクを再生する際の光ヘッド及び初期化磁石の配置を示す説明図である。図中、18は光ヘッドであり、再生用レーザ光を出射するレーザ光源と光磁気ディスク10への照射のための光学系とを備え、光磁気ディスク10の面に対向し、基板11側からレーザ光を照射すべき位置に配されている。また、光磁気ディスク10の中央を挟んで、レーザ光の照射スポットSと180 °をなす位置に初期化磁石17が配されている。初期化磁石17はBaフェライトからなる一般的な永久磁石である。
【0031】
次に、図1に示す光磁気ディスク10の再生時の磁化状態について説明する。まず、光磁気ディスク10のレーザ光に対して前方側である低温領域(略100 ℃よりも低い領域)では中間層14及び再生層13のビットが夫々同方向に揃っており、記録層15に記録されたビットをマスクしている(フロントマスク)。図4は光磁気ディスク10の記録層15と中間層14との間の交換結合力(第2交換結合力)の温度依存性及び再生層13の保磁力の温度依存性を示すグラフである。縦軸は交換結合力であり、横軸は温度を示している。
【0032】
グラフから明らかなように、略100 ℃より低い温度において、
第2交換結合力 ≦ 再生層13の保磁力
が成り立つ。これにより、初期化磁石17を通過時に再生層13の磁化方向が一方向に揃えられ、この領域の磁化方向がレーザ光スポットS内に移動するまで維持されてフロントマスクを形成する。例えば上記の大小関係が逆になっている場合は、一方向に揃えられた磁化方向は、初期化磁石の磁界が作用しない領域に移動した時点で元に戻り、フロントマスクが形成されない。なお、再生層13の遷移金属磁化が優勢になるほど保磁力発散の温度が低温側に移行し、光磁気ディスク10の低温側で上記の大小関係が成り立たなくなり、フロントマスクの形成が困難になる。
【0033】
このように、低温領域において中間層14の磁化方向を定める初期化磁石の磁化方向は記録層15の記録方向と同方向である。図5は、光磁気ディスク10の低温状態において記録層15の保磁力よりも小さい外部磁界内で測定したカー回転角θkのヒステリシスループと、そのヒステリシスループにおける磁化状態とを示す図である。縦軸はカー回転角を示し、横軸は外部磁界で、右側は消去方向を左側は記録方向の磁界を示している。なお、記録層15において磁化方向が上向きである部分が記録したビットに対応する。図から判るように、外部磁界を記録方向に印加してマスクが形成されている状態から外部磁界を零にした場合にマスク状態は維持されている。しかしながら、外部磁界を消去方向に印加してマスクが形成されている状態から外部磁界を零にした場合には転写状態になることが判る。これにより、初期化磁界によって揃った磁化方向が、初期化磁界が作用しない領域まで移動しても揃った状態を維持するためには、初期化磁界を記録方向に印加する必要があると言える。
【0034】
そして図1に示す中間温度領域(略100 ℃〜略180 ℃の領域)では、第1及び第2交換結合力により、記録層15の磁化方向が中間層14を介して再生層13に転写され、この開口部からビットが再生される。
【0035】
また、高温領域(略180 ℃より高い領域)は中間層14のキュリー温度を越えた領域であり、第1交換結合力が切れている。これにより、再生層13の磁化方向はビット周辺の再生層13の磁化方向に揃い、一方向に揃ってリアマスクを形成する。
【0036】
以上の如き光磁気ディスク10に、線速6m/s,記録用レーザ光のパワー7mW,記録磁界250 Oeの条件で0.36μmのビットを記録し、異なる大きさの再生磁界を印加して夫々の再生磁界で、600 Oeの初期化磁界を印加した場合と初期化磁界が零の場合とのキャリア,ノイズを夫々測定した。図6はその結果を示すグラフである。縦軸はキャリア及びノイズを示し、横軸は再生磁界で正方向が記録方向、負方向が消去方向を示している。グラフから、600 Oeの初期化磁界を印加した場合は、再生磁界を印加しなくても、従来の再生磁界を印加した場合と同じ程度のキャリアが生じていることが判る。このときCN比は48dBであった。これに対して初期化磁界を印加しない場合は、再生磁界を零とするとキャリアがほどんど生じておらず、記録方向及び消去方向に400 Oe以上の再生磁界を印加することにより、初期化磁界が600 Oeの場合と同程度のキャリアを生じている。なお、初期化磁界が600 Oeの場合も初期化磁界が零の場合もノイズは同程度であった。
【0037】
また、初期化磁界の大きさを異ならせて、上と同様の条件にて光磁気ディスク10のキャリアを測定した。図7はその結果を示すグラフである。縦軸はキャリアを示し、横軸は再生磁界で正方向が記録方向、負方向が消去方向を示している。グラフから、初期化磁界が300 Oe程度までは、再生磁界を印加しない場合にキャリアは生じていないが、初期化磁界が600 Oe以上の場合に再生磁界を印加しなくても安定してキャリアが生じていることが判る。
【0038】
このような第1の実施の形態の比較例として、再生層13にTMリッチの垂直磁化膜を用いた光磁気ディスクを作成し、同様の条件にてキャリアを測定した。図8はその結果を示すグラフである。縦軸はキャリアを示し、横軸は再生磁界で正方向が記録方向、負方向が消去方向を示している。グラフから、600 Oeの初期化磁界を印加した場合も、初期化磁界を印加しなかった場合も同じ結果であり、再生磁界を零とするとキャリアは生じなかった。このように実施の形態1の光磁気ディスク10では、再生磁界を印加しなくても、600 Oe以上の初期化磁界を印加することによりMSR再生が可能であることが判った。
【0039】
また、第1の実施の形態の他の例として再生層13に補償組成の垂直磁化膜を用いた光磁気ディスクを作成し、同様の条件にてキャリアを測定した。また、初期化磁界17の位置を異ならせてこの光磁気ディスクのキャリアを測定した。図9はこのときの初期化磁界17の配置位置を示す図である。初期化磁石17は、光磁気ディスク10の中央を挟んで、レーザ光の前方側に照射スポットSと60°をなす位置に初期化磁石17が配されている。その他の構成は図3と同様であり、その説明を省略する。この初期化磁石17の配置により、180 °の位置に配された場合よりも、低温で第2交換結合力が弱い領域にて磁化方向を揃えることができる。これにより、上述したような交換結合力と保磁力との上下関係を満たす温度範囲が低温側にシフトした磁気特性を有するような光磁気ディスクを再生する際に、フロントマスクを形成し易くなる。
【0040】
図10は、初期化磁石17が180 °配置及び60°配置の結果を示すグラフである。縦軸はキャリアを示し、横軸は再生磁界で正方向が記録方向、負方向が消去方向を示している。図10から、初期化磁石17が180 °配置の場合は、600 Oeの初期化磁界を印加した場合でも、初期化磁界を印加しなかった場合でもキャリアが生じていないことが判る。これに対して、初期化磁石が60°配置の場合は、600 Oeの初期化磁界を印加した場合に、再生磁界を印加しなくても安定してキャリアが生じていることが判る。これにより、再生層13が補償組成の場合でも、初期化磁界の位置を調整することにより、再生磁界を印加せずにMSR再生することができる。
【0041】
実施の形態2.
上述した光磁気ディスクを実施の形態1とは製造の手順を異ならせて作成し、第2交換結合力を実施の形態と異ならせた。以下に示す如く製造手順が異なる他は、膜構成,材料組成,膜厚及びスパッタ条件等は実施の形態1と同様であり、ここでは説明を省略する。なお、再生層13はREリッチの垂直磁化膜を用いた。
【0042】
DCスパッタ法により、基板11上に下地層12,再生層13及び中間層14を連続して積層する。その後ベルジャー内に窒素を導入し、窒素雰囲気中に所定時間放置した。その後、中間層14上に記録層15及び保護層を積層した。窒素雰囲気中での放置は、中間層14の記録層15側の表面を窒化処理し、第2交換結合力を弱めるために行なった。この窒化処理の窒素流量に対する第2交換結合力の低下の程度を調べた。図11はその結果を示すグラフであり、縦軸は第2交換結合力を示し、横軸は温度を示している。グラフから明らかなように、窒素流量が大きくなるに従い交換結合力が低下するが、30sccm/5min を越えると殆ど低下は見られなくなり、50sccm/5min とほぼ同程度の交換結合力を示している。図11の結果に基づき、中間層14表面に30sccm/5min 流量で窒化処理を行なって光磁気ディスク10を作成した。
【0043】
以上の如き手順にて製造された光磁気ディスクに、実施の形態1と同様の条件にて記録層15にビットを形成し、初期化磁界及び再生磁界を異ならせて光磁気ディスクに生じたキャリアを測定した。なお、初期化磁石17は180 °配置にし、記録方向の初期化磁界を印加して測定した。図12はその結果を示すグラフであり、縦軸はキャリアを示し、横軸は再生磁界で正方向が記録方向、負方向が消去方向を示している。グラフから判るように、300 Oe以上の初期化磁界を印加した場合は、再生磁界を印加しなくてもキャリアが生じている。400 Oe以上の初期化磁界を印加した場合は、再生磁界を印加しなくてもCN比が48dBであった。また、200 Oe以下の初期化磁界を印加した場合又は初期化磁界を印加しない場合は、記録方向及び消去方向に300 Oe以上の再生磁界を印加することにより安定したキャリアが生じている。
【0044】
また、第2の実施の形態の他の例として再生層13に補償組成の垂直磁化膜を用いた光磁気ディスクを作成し、同様の条件にてキャリアを測定した。図13はその結果を示すグラフである。縦軸はキャリアを示し、横軸は再生磁界で正方向が記録方向、負方向が消去方向を示している。図13から、500 Oeの初期化磁界を印加した場合は、再生磁界を印加しなくてもキャリアが生じていることが判る。この場合に46dBのCN比が得られた。これに対して初期化磁界を印加しない場合は、300 Oe以上の再生磁界を印加することによりキャリアが生じていることが判る。中間層14の記録層15側の表面を窒化することにより、再生層13が補償組成の場合でも、再生磁界を零にし、180 °配置の初期化磁石17により初期化磁界を印加してMSR再生することができる。
【0045】
このように、実施の形態2の光磁気ディスクでは、再生磁界を印加しなくても、400 Oe以上の初期化磁界を印加することによりMSR再生が可能であり、実施の形態1よりも小さい初期化磁界の印加で良いことが判る。これは、窒化処理により、実施の形態1と比較して実施の形態の方が第2交換結合力が低下したためであると考えられる。
【0046】
以下に、第2交換結合力を弱めて外部磁界を低減できる光磁気ディスクについて詳述する。
実施の形態3.
図14は実施の形態3の光磁気ディスクの膜構成を示す図である。光磁気ディスク20は、ポリカーボネート製の基板上にSiNからなる膜厚70nmの下地層、Gd26Fe61Co13からなる再生層23(補償温度:60℃,ドミナント:RE,膜厚:40nm)、Gd32Fe68からなる中間層24(キュリー温度:220℃,補償温度:−,ドミナント:RE,膜厚:40nm)、Tb24Fe56Co20からなる記録層25(キュリー温度:260℃,ドミナント:TM,膜厚:50nm)、及びSiNからなる膜厚60nmの保護層16をこの順に積層して構成してある。中間層24の記録層25側の界面に窒化処理が施され、窒化膜26が形成されている。なお、図14には基板,下地層及び保護層は省略して示している。
【0047】
各層はDCスパッタ法により順次形成される。図15は光磁気ディスク20の製造の手順を示すフローチャートであり、これに基づいて各層の形成の方法を説明する。スパッタ条件は、SiN層を成膜する場合はArとN2 の混合ガスを用い、各磁性層を成膜する場合は順Arガスを用いる。成膜はチャンバ内で、到達真空度5×10-5Pa以下で行なった。基板上に下地層を形成した後(ステップS11)、再生層23(ステップS12)及び中間層24(ステップS13)を連続積層する。その後チャンバ内にN2 ガスを5分間導入して中間層24の表面に窒素分子を拡散せしめて窒化膜26を形成する(ステップS14)。このときチャンバ内は1.2 Paである。N2 ガス導入後、窒化膜26上に記録層25(ステップS15)及び保護層(ステップS16)を連続積層する。ステップS14の窒化処理は中間層24の記録層25側の面に窒化膜を形成し、中間層24と記録層25との間の交換結合力を弱めるために行なった。
【0048】
以上の手順にて製造された光磁気ディスク20の記録再生特性を調べた。まず、消去用レーザ光をパワー8mWで照射し、上向きの消去磁界を500 Oe印加して光磁気ディスク20の全面を消去する。そして光磁気ディスク20を線速6m/sで回転させつつ、記録用レーザ光をパワー7mWで照射して下向きの記録磁界を400 Oe印加して、周波数7.5MHz,duty50%の記録を行なう。ビットの周方向の長さは0.4 μmである。なお、レーザ光の波長は680nmである。
【0049】
この光磁気ディスク20を再生する場合には、再生用のレーザ光を照射しつつ、上向きの再生磁界を印加する。再生パワーが2.5 mWのレーザ光を照射したとき、ダブルマスクが形成されてMSR再生が可能になった。図16は、光磁気ディスク20の再生時の磁化状態を示す図である。図16に示すように、ビームスポットS前方の低温領域(略100 ℃よりも低い領域)では、印加された再生磁界Hrが第2交換結合力を越える大きさであるために、中間層24が再生磁界Hrと同方向に揃えられ、フロントマスクを形成している。ビームスポットS内の開口部となる中間温度領域(略100 ℃〜略180 ℃の領域)では第1及び第2交換結合力が働いて記録層25のビットが再生層23に転写される。そして、ビームスポットS後方の高温領域(略180 ℃の領域)では、再生磁界Hrが第1交換結合力を越える大きさであるために、再生層23が再生磁界Hrと同方向に揃えられ、リアマスクを形成している。なお、消去磁界,記録磁界及び再生磁界は、何れも電磁石を用いて印加している。
【0050】
このときの再生磁界Hrは200Oeであった。磁性層に窒化を施さない従来のMSR媒体を再生する場合には、再生磁界Hrは450Oe程度が必要であることから、実施の形態3では再生磁界Hrを200Oe以上低減することができた。また実施の形態3の光磁気ディスク20を再生した際のCN比は49dBであり、従来の光磁気ディスクと同程度で転写性は良好であった。このように、中間層24の記録層25側の面に窒化処理を施して第2交換結合力を弱めることにより、再生磁界Hrを低減できることが判った。
【0051】
また、実施の形態3と同様の光磁気ディスク20を、窒素導入時間を15分に延長して作成した。この光磁気ディスクは、200Oeの再生磁界の印加によりMSR再生が可能となり、実施の形態3と同様の結果を得た。これにより、第2交換結合の大きさは、中間層24の表面の窒化処理時間の長さに依存しないことが判った。
【0052】
実施の形態4.
実施の形態3では、中間層24を形成した後に窒素を導入して中間層24に窒化処理を施しているが、実施の形態4では記録層25の中間層24側に窒化処理を施した光磁気ディスク20を作成し、その再生特性を調べた。図17は、実施の形態4の光磁気ディスク20の膜構成を示す図である。膜材料組成は、記録層25の中間層24側の所定膜厚分に窒化膜26が形成されている以外は実施の形態3と同様であり、その説明を省略する。
【0053】
実施の形態4の光磁気ディスク20を作成する際には、基板上に下地層,再生層23及び中間層24を連続積層した後、ArとN2 との混合ガスを用いて記録層25の窒化膜26部分を形成する。このときチャンバ内は3.6 Paである。窒化膜26を所定膜厚だけ成膜した後、N2 を排気し、Arガスのみを用いて再び記録層25を積層する。窒化膜26形成の他の手順は図15に示したフローチャートと同様であり、ステップS14のN2 ガスのみを導入する処理の代わりに混合ガスを導入して窒化膜26を形成する処理を行なう。
【0054】
以上の如き構成の光磁気ディスク20を、窒化膜26の膜厚を0.5 nmと2nmとに異ならせて夫々作成し、これらの記録再生特性を調べた。記録再生条件は、実施の形態3と同様である。その結果、いずれの光磁気ディスク20もダブルマスク再生が可能であったが、窒化膜26が2nmのものではCN比が36dBしか得られなかった。窒化膜26が0.5 nmのものについては十分な値のCN比が得られた。これにより、窒化処理された膜厚が厚すぎる場合は第2交換結合力が弱まり過ぎ、開口部での転写性が劣化するために、CN比が低くなると考えられる。このように、記録層25の中間層24側に所定膜厚の窒化膜26を形成して第2交換結合力を弱めることにより、再生磁界Hrを低減できることが判った。
【0055】
実施の形態5.
図18は実施の形態5の光磁気ディスクの膜構成を示す図である。本実施の形態5の光磁気ディスク30は、中間層24と記録層25との間に珪素(Si)からなる制御膜27を介在してあり、制御膜27は第2交換結合力を制御するはたらきを有する。なお制御膜27は、Siのような半導体膜若しくはSiの窒化膜又は酸化膜であっても良いし、Al,Ti,Cu,Au若しくはこれらの窒化物又は酸化物からなる非磁性膜であっても良いし、Crのような反強磁性膜であっても良い。なお、その他の膜構成及び膜組成は実施の形態3と同様であり、その説明は省略する。
【0056】
このような構成の光磁気ディスク30を作成する際には、基板上に下地層,再生層23及び中間層24を連続積層した後、RFスパッタ法によりSiからなる制御膜27を形成する。制御膜27を所定膜厚だけ成膜した後、再びDCスパッタ法により記録層25を積層する。制御膜27形成の他の手順は図15に示したフローチャートと同様であり、ステップS14のN2 ガスのみを導入する処理の代わりに制御膜27を形成する処理を行なう。
【0057】
以上の如き構成の光磁気ディスク30を、制御膜27の膜厚を0.5 nmと1.0 nmとに異ならせて夫々作成し、これらの記録再生特性を調べた。記録再生条件は、実施の形態3と同様である。その結果、制御膜27が0.5 nmのものは、200Oe程度の再生磁界HrでMSR再生が可能であり、転写性も劣化していなかった。これに対して制御膜27の膜厚が1.0 nmのものでは記録層25のビットが転写されず、再生できなかった。これにより、半導体,非磁性体又は反強磁体からなる制御膜27の膜厚が厚すぎる場合は第2交換結合力が弱まり過ぎ、開口部での転写性が劣化するために、CN比が低くなると考えられる。このように、中間層24と記録層25との間に交換結合力を弱める所定膜厚の制御膜27を形成して第2交換結合力を弱めることにより、再生磁界Hrを低減できることが判った。
【0058】
実施の形態6.
上述した実施の形態3,4では、中間層24と記録層25との界面を窒化することにより、第2交換結合力を低下せしめることを説明しているが、低温領域で面内磁気異方性が大きく、中間温度領域では垂直磁気異方性が大きくなるような磁性層を中間層24と記録層25との界面に形成することによっても、再生磁界を低減することができる。以下、このような構成の光磁気ディスクについて説明する。
【0059】
図19は、実施の形態6の光磁気ディスクの膜構成と再生時の形態の磁化状態を示す図である。実施の形態6の光磁気ディスク30は、ポリカーボネート製の基板上にSiNからなる膜厚70nmの下地層、Gd26Fe61Co13からなる再生層23(補償温度:60℃,ドミナント:RE,膜厚:40nm)、Gd32Fe68からなる中間層24(キュリー温度:220℃,補償温度:−,ドミナント:RE,膜厚:40nm)、Gd33Fe38Co29からなる制御膜27(キュリー温度:>400℃,補償温度:220℃,ドミナント:RE,膜厚:5nm)、Tb24Fe56Co20からなる記録層25(キュリー温度:260℃,ドミナント:TM,膜厚:50nm)、及びSiNからなる膜厚60nmの保護層16をこの順に積層して構成してある。中間層24と記録層25との間に介在する制御膜27は第2交換結合力を制御する目的で形成してある。なお、図19では基板,下地層及び保護層を省略して示している。
【0060】
このような構成の光磁気ディスク30を作成する際には、基板上に下地層,再生層23及び中間層24を積層した後、5nmの膜厚の制御膜27及び記録層25を連続積層する。制御膜27形成の他の手順は図15に示したフローチャートと同様であり、ステップS14のN2 ガスのみを導入する処理の代わりに制御膜27を形成する処理を行なう。
【0061】
図19に示すように、ビームスポットSの前方側の低温領域(略100 ℃より低い領域)では制御膜27の磁化方向が面内方向を向いており、第2交換結合力を弱めている。このために、制御膜27が介在しない膜構成の場合よりも小さい再生磁界Hrの印加で中間層24及び再生層23がフロントマスクを形成する。また、ビームスポットS内の開口部(略100 ℃〜略180 ℃の領域)では、制御膜27の磁化方向が垂直方向となり、記録層25と中間層24との間で第2交換結合力を強めるはたらきをする。また、ビームスポットSの後方側の高温領域(略180 ℃より高い領域)では同様に第2結合力を強めているが、第1交換結合力が切れた再生層23が磁化方向を再生磁界Hrに揃え、リアマスクを形成している。
【0062】
以上の如き構成の実施の形態6の光磁気ディスク30と、中間層24,制御膜27の組成を異ならせた比較例A,B,Cの光磁気ディスクとを作成し、これらの記録再生特性を調べた。各組成及び記録再生特性の結果を表1に示す。また、中間層24及び制御膜27に用いられた希土類−遷移金属合金の磁気特性を表2に示す。なお、記録再生特性の結果は、従来よりも小さい再生磁界でダブルマスクが形成できたものには‘Hr’の欄に‘○’を、できなかったものには‘×’を付し、再生特性が良好なものには‘C/N’の欄に‘○’を、劣化しているものには‘×’を付している。
【0063】
【表1】
Figure 0003756052
【0064】
【表2】
Figure 0003756052
【0065】
表1から判るように、実施の形態6の光磁気ディスク30では、200Oeの再生磁界HrでMSR再生が可能であり、49dBのCN比が得られた。これに対して、比較例Aでは再生磁界Hrを低減することはできたが、CN比が低く、転写性が劣化した。比較例B及び比較例Cでは十分なCN比を得ることができたが、再生磁界Hrを低減することはできなかった。表2に示すように、比較例AのGd34Fe66はGd32Fe68よりもGd組成が高いために交換結合力が弱い。比較例Aの転写性が劣化したのは、中間層24の交換結合力が低温領域と中間温度領域との両領域で弱いためにSN比が低くなって再生性能が劣化したためと考えられる。また比較例B,Cでは、制御膜27の垂直磁化方向となる温度範囲が中間層24のキュリー温度よりも低温側に大きく広がっているために低温領域で第2交換結合力が強められてしまい、小さい再生磁界Hrではフロントマスクが形成されないからと考えられる。
【0066】
これに対して実施の形態6では、制御膜27の垂直磁化方向となる温度範囲が中間層24のキュリー温度近傍であるので、光磁気ディスク30の低温領域では第2交換結合力を弱め、開口部では第2交換結合力を強める。これにより小さい再生磁界Hrが印加された場合でもフロントマスクは形成され、且つ転写性も良好となる。このように、制御膜27が略100 ℃以下の室温でREリッチの面内磁化膜であり、制御膜27が垂直磁化膜となる温度範囲が転写温度領域、即ち中間層24のキュリー温度近傍である場合に、この制御膜27を中間層24と記録層25との間に介在させることにより、再生特性を劣化させることなく再生磁界Hrを低減できることが判った。
【0067】
なお、実施の形態6の制御膜27を5nm以上の膜厚で積層した光磁気ディスクを作成し、同様に記録再生特性を測定したところ、小さい再生磁界でダブルマスクは形成されたが再生信号振幅及びSN比が低下していた。このように、制御膜27の膜厚が5nmよりも厚い場合は、第2交換結合力が低温領域と中間温度領域との両領域で弱まるために、再生特性が劣化すると言える。
【0068】
なお、上述した実施の形態にて中間層24と記録層25との間に形成された窒化膜26は、これに限るものではなく、酸化処理された酸化膜であっても良い。上述した窒素導入量と同程度の酸素量を導入することにより、中間層24と記録層25との界面を酸化処理することにより、第2交換結合力が弱められて同様の効果が得られる。
【0069】
また、上述した実施の形態の磁性層の組成,膜厚等はこれに限るものではなく、一例を記載したに過ぎない。
【0070】
【発明の効果】
以上のように、従来の光磁気記録媒体の再生時には電磁石を用いて再生磁界を印加していたが、本発明では初期化磁石である永久磁石を再生磁界の発生にも兼用するようにしたので、従来に比して光磁気記録媒体の再生装置の全体としての消費電力を大きく削減することが可能になる。このことは無駄な発熱を抑制する効果も併せて発揮するので、光磁気記録媒体が熱により変形する虞が少なくなり、再生結果もより高品質となる。
【0071】
さらに、第2交換結合力を弱める制御層を設ける場合は低温領域で第2交換結合力が弱まるので、初期化磁界の記録方向への印加でマスクを容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光磁気ディスクの再生時の磁化状態を示す図である。
【図2】本発明の光磁気ディスクの膜構成図である。
【図3】本発明の光磁気ディスクの再生装置の光ヘッド及び初期化磁石を示す図である。
【図4】第1の実施の形態の光磁気ディスクの第2交換結合力と再生層の保磁力との関係を示すグラフである。
【図5】第1の実施の形態の光磁気ディスクの低温状態におけるカー回転角のヒステリシスループと磁化状態を示す図である。
【図6】第1の実施の形態の光磁気ディスクの再生磁界依存性を示すグラフである。
【図7】第1の実施の形態の光磁気ディスクの再生磁界及び初期化磁界依存性を示すグラフである。
【図8】比較例の光磁気ディスクの再生磁界依存性を示すグラフである。
【図9】本発明の光磁気ディスクの他の再生装置の光ヘッド及び初期化磁石を示す図である。
【図10】第1の実施の形態の他の光磁気ディスクの再生磁界依存性を示すグラフである。
【図11】第2の実施の形態の光磁気ディスクの第2交換結合力の温度依存性を示すグラフである。
【図12】第2の実施の形態の光磁気ディスクの再生磁界依存性を示すグラフである。
【図13】第2の実施の形態の他の光磁気ディスクの再生磁界依存性を示すグラフである。
【図14】 第3の実施の形態の光磁気ディスクの膜構成図である。
【図15】 第3の実施の形態の光磁気ディスクの製造の手順を示すフローチャートである。
【図16】 第3の実施の形態の光磁気ディスクの再生時の磁化状態を示す図である。
【図17】 第4の実施の形態の光磁気ディスクの膜構成図である。
【図18】 第5の実施の形態の光磁気ディスクの膜構成図である。
【図19】 第6の実施の形態の光磁気ディスクの膜構成と再生時の磁化状態を示す図である。
【図20】特開平 7-244877 号公報の光磁気ディスクの各磁性層間の交換結合力を示すグラフである。
【符号の説明】
10,20,30 光磁気ディスク
11 基板
12 下地層
13,23 再生層
14,24 中間層
15,25 記録層
16 保護層
26 窒化膜
27 制御膜

Claims (1)

  1. 磁気的に結合した少なくとも第1磁性層,第2磁性層及び第3磁性層をこの順に備え、第1磁性層と第2磁性層との間の第1交換結合力が温度の上昇に伴って弱くなり、第2磁性層と第3磁性層との間の第2交換結合力が温度の上昇と共に強くなる磁気特性を有し、
    第1磁性層は希土類磁化優勢の垂直磁化膜であり、第2磁性層はキュリー温度まで補償点が見られない希土類磁化優勢の面内磁化膜であり、第3磁性層は遷移金属磁化優勢の垂直磁化膜であり、
    第1,第2及び第3磁性層との相対移動を伴うビーム光照射で生じる媒体内温度分布における低温の領域で、第2交換結合力は第1磁性層の保磁力以下の大きさを有し、
    前記低温の状態における、そのカー回転角のヒステリシスループが、記録方向の磁界を印加した後に、印加する磁界を零に戻してもカー回転角を維持するヒステリシスを有する光磁気記録媒体での前記媒体内温度分布における中間温度の領域で、第3磁性層の磁化方向を第1磁性層に転写して、第1磁性層に転写された磁化方向を読み出す光磁気記録媒体の再生方法であって、
    前記ビーム光が照射される位置よりも相対移動の前方側に適宜距離離隔して配置されている永久磁石を用いて初期化磁界を記録方向に印加して、第2磁性層を初期化磁界の磁化方向に、第1磁性層の磁化方向を前記第1交換結合力により初期化磁界と逆方向にそれぞれ揃えて前記低温の領域でのフロントマスクを得、
    前記ビーム光が照射される前記中間温度の領域では、温度の上昇に伴って強くなっている第2交換結合力により、第3磁性層の磁化方向が第2磁性層に転写され、温度の上昇に伴って弱くなっている第1交換結合力により、第2磁性層の磁化方向が第1磁性層に転写されて、第3磁性層の磁化方向の読み出しを行い、
    前記中間温度の領域よりも前記相対移動の後方側の、前記ビーム光が照射される高温の領域では第1交換結合力が温度の上昇に伴って更に弱くなっていることにより、第1磁性層の磁化方向を総て記録方向と逆方向に揃えてリアマスクを得ることを特徴とする光磁気記録媒体の再生方法。
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