JP3754940B2 - ゴム組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に自動車におけるグラスラン等のソリッドゴムに用いられるゴム組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エチレン−α・オレフィン非共役ジエン共重合体から成るゴム組成物は、耐熱性,耐オゾン性,耐候性等の諸特性に優れており、ソリッドゴムとして特に自動車のグラスラン,ドアシール等のシール部材に広く使用されてきた。
【0003】
従来のグラスランの場合、自動車に取り付けた状態で長時間経過すると、当接部材との摺動機能を保ちながらシール機能を果たす薄肉状のシールリップ(以下、リップと称する)が、当接部材と反対の方向、すなわちシール反力が弱まる方向へ変形(以下、へたりと称する)し、例えば窓ガラスのバタツキや風音(自動車走行中に、リップのへたった部分から進入する風の雑音)を抑制する性能が悪化してしまう恐れがあった。また、グラスランの摺動性を高めるために、前記ゴム組成物に対して表面処理コート等の処理が施されていたが、この処理を施すことによるコストアップや、表面処理コート等の劣化による摺動性の低下等を起こす恐れがあった。
【0004】
このため、グラスランを高剛性化(例えば、JIS−Aの硬度が80±5程度)し十分な耐久性(耐へたり性等)を長期間維持できると共に、表面処理コート等を施さなくとも十分な摺動性が得られるようなゴム配合物が求められていた。また、ゴム組成物としての性能の他に、グラスランの生産性を考慮して、良好な加工性(ゴム配合物の混練加工性,ロール加工性,押し出し成形性等)が求められていた。
【0005】
例えば、特開平10−195259号公報では、主成分(ポリマー)としてエチレン低含有率のエチレン−α・オレフィン−非共役ジエン共重合体(以下、共重合体−Aと称する)と、エチレン高含有率のエチレン−α・オレフィン−非共役ジエン共重合体(以下、共重合体−Bと称する)とを用い、前記共重合体A/共重合体Bの重量比(wt%)が30/70〜70/30となるように混合(ブレンド)して得たゴム配合物が開示されている。
【0006】
また、特開2002−12721号公報では、主成分としてエチレン/プロピレンの重量比が70/30〜90/10でエチレン結晶融点が30℃以上のEPDM(エチレン−プロピレンジエン共重合体;以下、EPDM−1と称する)と、エチレン/プロピレンの重量比が40/60〜70/30のEPDM(以下、EPDM−2と称する)とを用い、前記EPDM−1/EPDM−2の重量比が5/95〜30/70となるように調製して得たゴム配合物が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記の特開平10−195259号公報や特開2002−12721に示すようなゴム配合物は、低温雰囲気下(例えば、100℃未満)において流動性が低くなってしまう。すなわち、前記のゴム配合物を比較的低い吐出温度(例えば、押し出し成形機のヘッドの温度が100℃未満)で押し出し成形してグラスラン等を作製する場合、例えば押し出し成形機に大きな負荷がかかると共に、その押し出し成形機の内壁(シリンダー,ヘッド等の内壁)面とゴム配合物とにおいてスティックスリップ現象が起こり、ゴム配合物の流動性が悪化してしまう。
【0008】
その結果、前記ゴム配合物を押し出し成形する際の吐出量の安定性が低下、および押し出し成形物の表面(押し出し肌)状態が悪化し、ゴム組成物の製品の歩留まり等が低下してしまう。
【0009】
本発明は前記課題に基づいてなされたものであり、ソリッドゴム等のゴム組成物において、低温雰囲気下での流動性,押し出し成形性,吐出量安定性,動的粘弾性が良好なゴム配合物から成り、耐久性(耐へたり性等),摺動性に優れたゴム組成物を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題の解決を図るために、請求項1記載の発明は、エチレン/1−ブテンの重量比(wt%)が70/30〜90/10のEBDM(エチレン結晶融点が30℃以上のEBDM)と、エチレン/プロピレンの重量比(wt%)が40/60〜70/30のEPDMとを用い、前記EBDM/EPDMの重量比(wt%)が5/95〜30/70となるように調製したゴム配合物を架橋して成ることを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記ゴム配合物は形状変化率が20%以下とし、該ゴム配合物を架橋することにより、放冷圧縮永久歪率を30%以下、放冷引張り永久歪率を40%以下にしたことを特徴とする。
なお、前記の形状変化率,放冷圧縮永久歪率,放冷引張り永久歪率は、それぞれ以下に示す測定条件により得られる。
(形状変化率)
まず、前記のゴム配合物を用いて未加硫ゴムから成る円柱状の成形体(厚さ12.7±0.13mm、直径29.0mm)を作製し、温度100℃の雰囲気下にて、前記成形体の一端面方向から1kgの負荷を10分間掛け、その負荷解放後における成形体の厚さh 1 を測定する。そして、下記式により算出される厚さ変化率を形状変化率とする。なお、下記式において、h 0 は負荷を掛ける前における成形体の厚さを示すものである。
「厚さ変化率」=((h 0 −h 1 )/h 0 )×100……(A)
(放冷圧縮永久歪率)
まず、ゴム配合物を用いて円柱型(厚さ12.70±0.13mm、直径29.0mm)の成形体を加硫成形により作製し、その成形体を圧縮用の治具に固定(セット)すると共にスペーサーを用いて25%圧縮(成形体の両端面方向から圧縮)し、温度80℃の雰囲気下で48時間の加熱処理してから、その圧縮した状態で室温下にて3時間放置する。その後、前記の治具から成形体を取り外して圧縮解放し、その成形体の厚さH 1 を測定する。そして、下記式により算出される前記成形体の厚さ変化率(%)を放冷圧縮永久歪率とする。なお、下記式において、H 0 は治具に固定する前の試験片の厚さ、H 2 はスペーサーの厚さを示すものである。
「厚さ変化率」=((H 0 −H 1 )/(H 0 −H 2 ))×100……(B)
(放冷引張り永久歪率)
まず、ゴム配合物の加硫成形シートを用いて、JIS規格のダンベル1号型(厚さ2mm)の成形体(成形体の中央部には、間隔L 0 (40mm)を隔てて2本の標線が記されているものとする)を作成する。次に、前記成形体を伸長率5,10,20%で伸長(図1中矢印A,B方向に伸長)させて治具に固定し、温度80℃の雰囲気下で48時間の加熱処理してから、その伸長させた状態で室温下にて3時間放置する。その後、前記の治具から成形体を取り外して伸長を解放し、各伸長率における各標線間の長さL 1 をそれぞれ測定し、下記式により算出される前記成形体の長さ変化率(%)を放冷引張り永久歪率とする。なお、下記式において、L 0 は治具に固定する前(伸長させる前)における成形体の各標線間の長さを示し、L 2 は伸長時における成形体の各標線間の長さを示すものである。
「長さ変化率」=(L 1 −L 0 )/(L 2 −L 0 )……(C)
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記ゴム配合物は、温度60℃での複素粘性率η * は3.5×105Pa-s以下,構造粘性指数nは0.16〜0.21の範囲内であり、温度80℃での複素粘性率η * は3.0×105Pa-s以下,構造粘性指数nは0.19〜0.24の範囲内であることを特徴とする。
なお、前記の複素粘性率η * (温度60℃,80℃),構造粘性指数nは、それぞれ以下に示す測定条件により得られる。
(温度60℃,80℃での複素粘性率η * )
粘弾性測定機(米国アルファテクノロジーズ社製のRPA2000)を用い周波数1rad/s,歪14%で測定する。
(構造粘性指数n)
FEM(有限要素法)による流動解析で利用されている流動方程式(POWER LOW MODEL;)を適用して、前記動的粘弾性測定機により周波数1〜200rad/s(例えば、後述の実施形態では、周波数1,10,100,200rad/s)におけるせん断速度γを測定すると共に複素粘性率η * をせん断粘度ηとして測定し、流動方程式η=Kγ n-1 (Kは比例定数)中の構造粘性指数n(POWER LOW INDEX)を以下に示す方法により算出する。すなわち、まず、前記流動方程式のηを複素粘性率η * として取り扱うと共に対数表示することにより、下記式が得られる。
Log 10 η * =(n−1)Log 10 γ+Log 10 K……(D)
この(D)式の「Log 10 η * 」,「Log 10 γ」をそれぞれ1次関数のY軸,X軸の変数とすると、その1次関数の傾きaは「n−1」で表すことができる。したがって、前記粘弾性測定機により得られた測定値を前記(D)式に代入し、最小二乗法で線形近似して得られた1次式の傾きaを求めることにより構造粘性指数n(n=a+1)を算出することができる。
【0013】
前記のEBDMは、低温雰囲気下におけるゴム配合物の流動性(動的粘弾性,吐出量安定性,押し出し成形性等)の改良およびゴム組成物の高硬度化に寄与する成分である。また、前記EPDMは、高温および低温における圧縮永久歪,引張り強度の改良および押し出し成形時の形状保持性等に寄与する成分である。なお、前記ゴム配合物には、必要に応じて架橋剤,添加剤,軟化剤等が配合される。
【0014】
前記ゴム配合物中のEBDMの含有率が5wt%未満になると、その吐出量安定性(例えば、吐出温度60±5℃での吐出量安定性)等が低下し、ゴム組成物において十分な硬度が得られなくなる。また、前記EBDMの含有率が30wt%超になると、混練加工性,ロール巻付き性,形状保持性,吐出量安定性(例えば、吐出温度80±5℃での吐出量安定性)等が低下してしまう。
【0015】
また、前記放冷圧縮永久歪率が30%を超え、放冷引張り永久歪率が40%を超えると、例えばグラスランのリップの耐へたり性が悪化してしまう。さらに、前記形状変化率が20%を超えると、押し出し成形時の形状保持性が悪化してしまう。
【0016】
さらに、ゴム配合物において60℃,80℃での複素粘性率η*(例えば、粘弾性測定機(米国アルファテクノロジーズ社製のRPA2000)を用い、周波数1rad/s,歪14%に設定した際の複素粘性率η*)がそれぞれ3.5×105Pa-s超,3.0×105Pa-s超であると、特に低温雰囲気下における押し出し成形性,吐出量安定性等が悪化し、例えば押し出し成形機のモータに対する負荷が高く不安定となり、得られるゴム組成物の肌等が悪化してしまう。
【0017】
さらにまた、ゴム配合物において60℃,80℃での構造粘性指数n(例えば、粘弾性測定機(米国アルファテクノロジーズ社製のRPA2000)を用い、周波数1〜200rad/sに設定した際の構造粘性指数n)がそれぞれで0.16〜0.21の範囲外,0.19〜0.24の範囲外である場合も、押し出し成形性,吐出量安定性等が悪化し、例えば押し出し成形機のモータに対する負荷が高く不安定となり、得られるゴム組成物の肌等が悪化してしまう。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態におけるゴム組成物を図面等に基づいて詳細に説明する。
【0019】
本実施の形態では、EBDM(エチレン−1−ブテンジエン共重合体)が低温雰囲気下において良好な流動性を有しゴム組成物を高剛性化することと、EPDMが高温および低温雰囲気下におけるゴム組成物の圧縮永久歪,引張り永久歪,押し出し形状保持性を良好にすることに着目し、従来のようにポリマー(ゴム組成物の主成分)として単に2種類のEPDMを用いるのではなく、EBDMとEPDMとを種々の割合で配合してゴム配合物をそれぞれ作製し、それらゴム配合物の加工性(押し出し成形性,混練加工性,ロール巻付き性,粘弾性)を調べると共に、それらゴム配合物を架橋して成るゴム組成物の耐久性(放冷圧縮永久歪,放冷引張永久歪,形状保持性)を調べることにより、ゴム配合物の低温雰囲気下での流動性,吐出量安定性,押し出し成形性を良好にしてゴム組成物の生産性を向上させると共に、そのゴム組成物において十分良好な耐久性(耐へたり性等),摺動性,シール性を長期間維持させることを検討した。
【0020】
まず、一般的な方法(例えば、特開2002−12721号公報に示す方法)の重合により、エチレン/1−ブテン重量比が80/20のEBDMとエチレン/プロピレン重量比が53/47でエチレン高含有率かつ結晶性を有するEPDM−2とを用い、それらEBDM/EPDM−2重量比が下記表1に示すように2/98〜50/50の範囲内となるように配合して種々のポリマーを得た。なお、前記EBDMは、DSC測定(示唆走査熱量計測定)によるエチレン結晶融点が30℃以上であるものとする。
【0021】
その後、前記の各ポリマー100phrに対し、それぞれ添加剤としてSRF級カーボンブラックを170phr、パラフィン系オイルを70phr、重質炭酸カルシウムを20phr、亜鉛華を3phr、ステアリン酸を1phr配合し混練することにより、ゴム配合物S1〜S7を作製した。
【0022】
また、前記ゴム配合物S1〜S7の比較例として、主成分としてエチレン/プロピレンの重量比が75.5/24.5でエチレン結晶融点が30℃以上のEPDM−1を前記EBDMの替わりに用い、EPDM−1/EPDM−2重量比が10/90となるように配合してポリマーを得、前記ゴム配合物S1〜S7と同様に各添加物を配合し混練することによりゴム配合物Pを作製した。
【0023】
【表1】
【0024】
次に、硫黄を1phr,3種類の促進剤(チアゾール系促進剤,チウラム系促進剤,スルフェンアミド系促進剤)を合わせて5phr用いて成る加硫促進剤と、前記表1に示した各ゴム配合物S1〜S7,Pとを用いて、一般的な方法の架橋によりゴム組成物の成形体(試験片)をそれぞれ作製した。
【0025】
そして、前記の各成形体の硬度(JIS−A),一般的な圧縮永久歪性試験(JIS−K6262)による圧縮永久歪率(温度70℃の雰囲気下で22時間および200時間)を測定することにより、常態物性を調べた。また、実車に組付けられたグラスランとの相関が取れる条件、すなわち下記の(a),(b)に示すような方法により、耐へたり性の評価試験(放冷圧縮永久歪性,放冷引張り永久歪性)を行った。さらに、ゴム組成物の生産性を調べるため、下記の(c)〜(g)に示す方法により、加工性の試験(ゴム配合物(未加硫)状態での特性評価試験;ミキサー混練加工性,ロール巻付き性,形状保持性,押し出し成形性,吐出量安定性,低温雰囲気下における動的粘弾性測定)を行った。
【0026】
(a)放冷圧縮永久歪性の評価
実車におけるガラスのバタツキ制御性能(自動車における窓ガラスの半開〜全閉状態でのバタツキ制御性能)の代用評価試験を行うために、まず前記の各ゴム配合物S1〜S7,Pを用いて円柱型(厚さ12.70±0.13mm、直径29.0mm)の試験片を加硫成形により作製した。次に、前記の各試験片は、それぞれ圧縮用の治具に固定(セット)すると共にスペーサーを用いて25%圧縮(試験片の両端面方向から圧縮)し、温度80℃の雰囲気下で48時間の加熱処理してから、その圧縮した状態で室温下にて3時間放置した。
【0027】
その後、前記の治具から試験片を取り外して圧縮解放し、その試験片の厚さH1を測定した。そして、下記式により算出した前記試験片の厚さ変化率(%)を放冷圧縮永久歪率として、前記の各ゴム配合物S1〜S7,Pから成る試験片の放冷圧縮永久歪性の評価をそれぞれ行った。なお、下記式において、H0は治具に固定する前の試験片の厚さ、H2はスペーサーの厚さを示すものである。
【0028】
「厚さ変化率」=((H0−H1)/(H0−H2))×100 …… (1)
(b)放冷引張り永久歪性の評価
グラスランリップ部における耐へたり性の代用評価試験を行うために、まず前記の各ゴム配合物S1〜S7,Pの加硫成形シートを用いて、図1に示すようなJIS規格のダンベル1号型(厚さ2mm)の試験片10をそれぞれ作製した。なお、前記試験片10の中央部には、間隔L0(40mm)を隔てて2本の標線11,12を記す。
【0029】
次に、前記試験片10を図中矢印A,B方向に伸長率5,10,20%で伸長させて治具に固定し、温度80℃の雰囲気下で48時間の加熱処理してから、その伸長させた状態で室温下にて3時間放置した。その後、前記の治具から試験片10を取り外して伸長を解放し、各伸長率における標線11,12間の長さL1をそれぞれ測定した。そして、下記式により算出した前記試験片10の長さ変化率(%)を放冷引張り永久歪率として、前記の各ゴム配合物S1〜S7,Pから成る試験片10の放冷引張り永久歪性の評価をそれぞれ行った。なお、下記式において、L0は治具に固定する前(伸長させる前)における試験片の標線11,12間の長さを示し、L2は伸長時における試験片10の標線11,12間の長さを示すものである。
【0030】
「長さ変化率」=(L1−L0)/(L2−L0) …… (2)
(c)ミキサー混練加工性,ロール巻付き性の評価
前記の各ゴム配合物S1〜S7,Pおよび各添加物を一般的なミキサーによりそれぞれ混練し、その混練した際のいわゆる「ブツ」,「ゲル」の発生の有無を観察することにより、ミキサー混練加工性を調べた。また、前記のロールとして外径250mmのものを用い、それらロールの表面温度を50±5℃,ロール間隙を2±0.1mmに設定し、そのロール間に前記の各ゴム配合物S1〜S7,Pを通過させた際のロール巻付き性を観察することにより、ロール巻付き性を調べた。
【0031】
(d)形状保持性の評価
形状保持性の代用評価試験を行うために、まず前記の各ゴム配合物S1〜S7,Pを用いて、それぞれ未加硫ゴムから成る円柱状の成形体(厚さ12.7±0.13mm、直径29.0mm)を作製した。次に、温度100℃の雰囲気下にて、前記成形体の一端面方向から1kgの負荷を10分間掛け、その負荷解放後における成形体の厚さh1を測定した。そして、下記式により算出した厚さ変化率を形状変化率として、前記の各ゴム配合物S1〜S7,Pから成る未加硫ゴムの形状保持性の評価をそれぞれ行った。なお、下記式において、h0は負荷を掛ける前における成形体の厚さを示すものである。
【0032】
「厚さ変化率」=((h0−h1)/h0)×100 …… (3)
(e)押し出し成形性の評価(感性的評価)
押し出し成形性の代用評価試験(ガーベイダイ評価方法;ASTMD2230A法)を行うために、まず前記の各ゴム配合物S1〜S7,Pを用いて、所定のダイにより図2に示すように断面ガーベイダイ状の成形体20を押し出し成形した。なお、前記の押し出し成形においては、前記の各ゴム配合物S1〜S7,Pの吐出温度を60±5℃(スクリュー温度30℃,シリンダー温度40℃,ヘッド温度60℃),80±5℃(スクリュー温度40℃,シリンダー温度50℃,ヘッド温度80℃),100±5℃(スクリュー温度40℃,シリンダー温度70℃,ヘッド温度100℃)に設定して行った。
【0033】
そして、前記の成形体20におけるスウェル,エッジ(図2中の符号21),肌,コーナー(図2中の符号22)の状態を1段階(押し出し成形性が悪い)〜4段階(押し出し成形性が良好)で評価した。なお、前記評価の合計が15段階以上になることを、前記押し出し成形性の目標とした。
【0034】
(f)吐出量安定性の評価
吐出量安定性の代用評価試験を行うために、前記の押し出し成形性の試験(吐出温度60±5℃,80±5℃,100±5℃)において、成形体20を押し出し成形する際に前記の各ゴム配合物S1〜S7,Pの1分間の吐出量を連続で50回測定し下記式により吐出量変化率(%)を算出して、吐出量安定性の評価をそれぞれ行った。
【0035】
「吐出量変化率」={(「最大吐出量」−「最小吐出量」)/「平均吐出量」}×100 …… (4)
(g)動的粘弾性の評価(定量的評価)
前記のガーベイダイ評価方法は押し出し成形性の評価試験として一般的に利用されているが、感性的に評価する方法であるため(定量化された評価方法ではないため)、誤差(個人差)が生じる場合がある。
【0036】
そこで、本実施の形態では、低温雰囲気下(60℃,80℃)の押し出し成形性において定量的な代用評価試験を行うために、粘弾性測定機(米国アルファテクノロジーズ社製のRPA2000)を用いて周波数1rad/s,歪14%での複素粘性率η*(Pa-s)を測定した。また、FEM(有限要素法)による流動解析で利用されている下記の流動方程式(POWER LOW MODEL)を適用して、前記動的粘弾性測定機により周波数1〜200rad/s(周波数1,10,100,200rad/s)におけるせん断速度γを測定すると共に複素粘性率η*をせん断粘度ηとして測定し、流動方程式中の構造粘性指数n(POWER LOW INDEX)を以下に示す方法により算出した。なお、下記式においてKは比例定数を示すものである。
【0037】
η=Kγn-1 …… (5)
前記構造粘性指数nの算出において、まず前記(5)式のηを複素粘性率η*として取り扱うと共に対数表示することにより、下記式が得られる。
【0038】
Log10η*=(n−1)Log10γ+Log10K …… (6)
前記(6)式の「Log10η*」,「Log10γ」をそれぞれ1次関数のY軸,X軸の変数とすると、その1次関数の傾きaは「n−1」で表すことができる。すなわち、前記粘弾性測定機により得られた測定値を前記(6)式に代入し、最小二乗法で線形近似して得られた1次式の傾きaを求めることにより構造粘性指数n(n=a+1)を算出することができる。
【0039】
以上示したように測定した前記の各ゴム配合物S1〜S7,Pから成るゴム組成物の成形体における常態物性,耐へたり性の評価試験、および前記の各ゴム配合物S1〜S7,Pの加工性の試験結果を下記表2に示した。なお、下記表2中の各記号において、「◎」は極めて優れていた場合,「○」は良好であった場合,「△」は一般的であった場合,「×」は劣っていた場合を示すものとする。また、下記表2には、各試験における目標値を示した。
【0040】
【表2】
【0041】
前記表2に示すように、ポリマーとして2種類のEPDMを用いたゴム配合物Pにおいては、優れた常態物性,耐へたり性,ミキサー混練加工性,ロール巻付き性,形状保持性が得られると共に、吐出温度100±5℃にて良好な押し出し成形性,吐出量安定性が得られた。しかし、温度60℃,80℃での動的粘弾性が低いため(60℃,80℃での複素粘性率η*がそれぞれ3.5×105Pa-s超,3.0×105Pa-s超)、吐出温度60±5℃,80±5℃での押し出し成形性,吐出量安定性が悪化してしまったことを読み取れる。
【0042】
また、ポリマーとしてEPDMと少量(5wt%未満)のEBDMとを用いたゴム配合物S1においては、優れた圧縮永久歪性,耐へたり性,ミキサー混練加工性,ロール巻付き性,形状保持性が得られると共に、吐出温度100±5℃にて良好な押し出し成形性,吐出量安定性が得られた。しかし、ポリマー中に含まれるEBDMの割合が少なすぎるため、温度60℃,80℃での動的粘弾性が低く(60℃,80℃での複素粘性率η*がそれぞれ3.5×105Pa-s超,3.0×105Pa-s超)、吐出温度60±5℃,80±5℃での押し出し成形性,吐出量安定性が悪化し、ゴム組成物の硬度が下がってしまったことを読み取れる。
【0043】
さらに、ポリマーとしてEPDMと多量(30wt%超)のEBDMとを用いたゴム配合物S6,S7においては、優れた常態物性が得られると共に、温度60℃での動的粘弾性が高いため(60℃での複素粘性率η*,構造粘性指数nがそれぞれ3.5×105以下,0.16〜0.21の範囲内)、良好な押し出し成形性,吐出量安定性が得られた。しかし、ポリマー中に含まれるEBDMの割合が多すぎるため、ミキサー混練加工性,ロール巻付き性,形状保持性が低く、温度80℃での動的粘弾性が悪化(特に、温度80℃での構造粘性指数が0.19〜0.24の範囲外)し吐出量安定性が低くなってしまったことを読み取れる。
【0044】
一方、EBDMとEPDMとをEBDM/EPDM=5/95〜30/70の範囲内で用いたゴム配合物S2〜S5においては、常態物性,耐へたり性,加工性の全てにおいて優れた結果が得られたことを読み取れる。
【0045】
なお、エチレン/1−ブテン重量比が70/30〜90/10の範囲内であるEBDMと、エチレン/プロピレン重量比が40/60〜70/30の範囲内であるEPDMとを用い、それらEBDMとEPDMとをEBDM/EPDM=5/95〜30/70の範囲内で配合したポリマーから成るゴム配合物によれば、前記ゴム配合物S2〜S5を用いた場合と同様な作用効果が得られることを確認できた。
【0046】
また、前記のゴム配合物S2〜S5のように形状変化率を20%以下に保ち、それらゴム配合物から成るゴム組成物の放冷圧縮永久歪率を30%以下,放冷引張り永久歪率を40%以下に保つことにより、例えばグラスランとして十分高剛性化されたゴム組成物が得られ、良好な耐へたり性,摺動性を付与できることを確認できた。
【0047】
さらに、温度60℃でのゴム配合物の複素粘性率η*を3.5×105Pa-s以下,構造粘性指数nを0.16〜0.21に設定し、温度80℃でのゴム配合物の複素粘性率η*を3.0×105Pa-s以下,構造粘性指数nを0.19〜0.24に設定することにより、各々の温度雰囲気下においてゴム配合物の吐出量安定性を良好にすることができ、ミキサー混練加工性,ロール巻付き性,形状保持性,押し出し成形性等の加工性を向上できることを確認できた。
【0048】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲内で多様な変形及び修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形及び修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【0049】
【発明の効果】
以上示したように本発明によれば、ソリッドゴム等のゴム組成物において、高い常態物性(硬度,圧縮永久歪性等)を確保できると共に、耐へたり性(放冷圧縮永久歪率,放冷引張り永久歪率等)を良好にすることができる。また、低温雰囲気下においても高い動的粘弾性が得られ、優れた加工性(ミキサー混練加工性,ロール巻付き性,形状保持性,押し出し成形性,吐出量安定性等)が得られる。
【0050】
ゆえに、ゴム組成物(例えば、自動車に用いられるグラスラン等のシール部材)の生産性を向上させると共に、そのゴム組成物において十分良好な耐久性(耐へたり性等),摺動性,シール性を長期間維持できることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】放冷引張り永久歪の評価で用いた試験片の概略図。
【図2】押し出し成形性の評価で用いた成形体の概略図。
【符号の説明】
10…試験片
20…成形体
11,12…標線
21…エッジ
22…コーナー
Claims (3)
- エチレン/1−ブテンの重量比が70/30〜90/10のEBDMと、エチレン/プロピレンの重量比が40/60〜70/30のEPDMとを用い、前記EBDM/EPDMの重量比が5/95〜30/70となるように調製したゴム配合物を架橋して成ることを特徴とするゴム組成物。
- 前記ゴム配合物は、形状変化率が20%以下とし、
該ゴム配合物を架橋することにより、放冷圧縮永久歪率を30%以下、放冷引張り永久歪率を40%以下にしたことを特徴とする請求項1記載のゴム組成物。 - 前記ゴム配合物において、
温度60℃での複素粘性率η * は3.5×105Pa-s以下,構造粘性指数nは0.16〜0.21の範囲内であり、
温度80℃での複素粘性率η * は3.0×105Pa-s以下,構造粘性指数nは0.19〜0.24の範囲内であることを特徴とする請求項1または2記載のゴム組成物。
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