JP3752530B2 - アルコールおよび炭酸エステルの混合物を用いるケイ素のアルコキシドの製造方法 - Google Patents
アルコールおよび炭酸エステルの混合物を用いるケイ素のアルコキシドの製造方法 Download PDFInfo
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【産業上の利用分野】
本発明は,ガラスや無機機能性材料の原料として、低コストな製造法が求められているケイ素のアルコキシドを、ハロゲン化物の生成等のプロセスを経ずに、酸化物から直接合成する方法に関するものである。
また本発明は廃ディスプレイや液晶パネル,電子部品など、酸化ケイ素を含む無機廃棄物から有価成分をアルコキシドとして選択的に回収する方法として有用である。
【0002】
【従来の技術】
従来、金属アルコキシドの製造法としては、これらの酸化物等をいったんハロゲン化合物とした後、アルコールと反応させる方法が一般的である。
しかしこの調製プロセスは、有毒なハロゲン化合物を使用する上、酸化物の還元やハロゲン化の際に高温下での反応を必要とする場合が多かった。たとえばケイ素の場合を例にとると、ケイ酸原料を炭素還元してケイ素としたのち塩化水素を作用させて四塩化ケイ素とし,これをアルコールと反応させてアルコキシドを得ている。
【0003】
一方、下記の反応によりケイ素とアルコールを直接反応させてアルコキシドを製造する方法も知られている。例としてシリカとアルコールの場合の反応式を挙げると以下のとおりになる。
MOx/2 + xROH → M(OR)x + x/2 H2O
(ここでM=Siである。)
この反応が進行するためには生成する水の除去が必要であり、既にいくつかの方法が示されている。たとえば、特公昭33−1776号公報においては上記の反応でシリカからケイ素アルコキシドを合成する際、分留塔の上部から水蒸気のみをパージする方法で水を除去している。また特公平7−10871号公報では、シリカゲルから上記反応でケイ素アルコキシドを製造する際、アルカリ金属アルコキシド添加することにより副生する水を除去している。しかし前者では煩雑な装置と操作を必要とし、後者ではアルカリ金属水酸化物が副生するためその処理を別途必要とする。
【0004】
【発明が解決しようとする問題】
本発明は,ケイ素の酸化物とアルコールの直接反応によりケイ素のアルコキシドを生成する際、副生する水を効率的に除去可能であり、かつ装置が単純で、有害な副生成物を生じない手法を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため種々検討した結果、炭酸エステルとアルコールの混合物を高温高圧条件でケイ酸と反応させることにより、上記反応により副生する水が炭酸エステルとの反応によって効率的に除去されるため,高効率でアルコキシドの生成が可能であることを見いだし、本発明を完成するに至った。本発明での反応は以下の2式で表される。
MOx/2 + xROH → M(OR)x + x/2 H2O
x/2 H2O + x/2(RO)2CO → xROH + x/2 CO2
(ここでM=Siである。)
理論的には炭酸エステルのみでアルコールを用いない反応も可能であるが、ケイ素の酸化物の溶解力が乏しいため、実際の反応ではアルコールの存在が不可欠である。
【0006】
これらの反応で生成するのはアルコキシドとアルコール、および二酸化炭素の混合物である。生成物を常圧に戻すことにより、二酸化炭素は気化するため、特段の分離プロセスを必要とせずに、アルコキシドとアルコールの混合溶液が得られる。 これからアルコキシドを精製することも可能であるが、この溶液がアルカリ成分等、ゾルゲル反応に影響する成分を含まないため、そのままゾルゲル法による各種製品の原料に用いることも可能である。
また、別途分離精製過程が必要となるが、難溶解性の成分に対してはアルカリ、
キレート剤等の添加により、溶解および反応の速度を増加させることも可能である。
【0007】
この発明におけるアルコールの種類は、金属酸化物との反応性によって適宜選択すればよく、特に限定されない。具体例を挙げると、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどが挙げられる。
シリカの場合はメタノールとの反応性が他のアルコールと比較して著しく高いのでメタノールが適している。
【0008】
この発明における炭酸エステルはアルコールの種類、あるいは合成しようとするアルコキシドの種類に応じて選択すればよく、特に限定されない。炭酸エステルの添加量は、ケイ素の酸化物に対しては等モル以上で、アルコールに対しては5〜50vol%であることが望ましい。
たとえばメタノールを使用する場合に炭酸ジメチルを用いると、シリコンメトキシドのみが生成する。炭酸エステルの添加量が多すぎるとアルコールとケイ素の酸化物の反応性が低下する。
【0009】
また、アルコールとケイ素、金属の反応は個々の物質によってその反応性が異なっており、さらにアルコールの種類によっても大きく影響を受ける。
このため、本発明によるアルコキシド製造法は、複数の成分を含む酸化物から、特定の成分のみをアルコキシドとして回収するプロセスとしても利用可能であり、ガラスや電子部品など、複雑な組成をもつ無機系廃棄物からの有価成分回収法としても極めて利用価値が高い。
【0010】
【本発明の実施の形態】
本発明の実施の形態をまとめると、以下の通りである.
(1)アルコールとの反応によりアルコキシドを形成するケイ素の酸化物を、高温高圧のアルコールおよび炭酸エステルの混合物中で処理し、アルコールと金属成分との反応によりケイ素のアルコキシドを生成させると共に、この反応により副成する水を炭酸エステルと反応させて除去することを特徴とするケイ素のアルコキシドの製造方法。
(2) 高温が150℃以上であり、高圧が13気圧以上である上記(1)に記載したアルコキシドの製造方法。
(3) 炭酸エステルの添加量が、金属酸化物に対しては等モル以上で、アルコールに対しては5-50vol%である 上記(1)又は(2)に記載したアルコキシドの製造方法。
(4) アルコールとの反応によりアルコキシドを形成するケイ素の酸化物を粉砕して微粒子状とし、反応に供する 上記(1)ないし(3)のいずれかひとつに記載したアルコキシドの製造方法。
(5) ケイ素の酸化物が廃棄ガラスである上記(1)に記載のケイ素アルコキシドの製造方法。
(6) 廃棄ガラスが他の金属酸化物を含んでいる上記(5)に記載のケイ素アルコキシドの製造方法。
【0011】
【実施例】
以下に、この発明の具体的な実施例および比較例を示すが,本発明はこれらによって何ら限定されるべきものではない。
【0012】
<実施例1>
市販特級メタノール15mlおよび炭酸ジメチル5mlとシリカゲル(和光純薬製Wakogel G)0.5gを内容積50mlのステンレス製圧力容器に密閉し、4℃/minで室温より250℃まで昇温したのち、この温度を24時間保持した。
24時間経過後、温度を保持したまま圧力容器より溶液成分を流出させ、冷却して回収した。また同時にガス成分をサンプリングバックに捕集した。生成した溶液についてガスクロマトグラフにより有機成分の組成分析を、カールフィッシャー滴定法により水分量の定量を行った。ガス成分についてはメタナイザーを装備したガスクロマトグラフにより二酸化炭素成分の分析を行った。残存する固体成分は冷却後圧力容器から秤量した。
【0013】
<比較例1>
参考のために実施例1において、メタノールと炭酸ジメチルの代わりにメタノールのみを20ml使用した以外は、すべて実施例1と同様にして実験を行って、比較例1とした。
【0014】
実施例1において,昇温終了時の圧力は100気圧で、24時間後には120気圧まで増大した。一方比較例の場合,到達圧力は同様に100気圧であるが,実験中ほとんど変動が見られなかった.実施例においてガス成分を分析したところ,極めて高濃度の二酸化炭素を含むことがわかった。
【0015】
表1に、ガスクロマトグラムより求めた。反応後の溶液の有機物組成(炭素量換算)を示す。
【表1】
【0016】
表1より、実施例1においては、比較例1の3倍以上の濃度でテトラメトキシシランが生成したことがわかる。なお実施例1においてはジメチルエーテルが副生するが,常温常圧では気体となるため除去は比較的容易である.
【0017】
表2にカールフィッシャー滴定法で測定した。溶液中の水分量の測定結果を示す。
なお実験に使用したメタノール,炭酸ジメチルの含水分量は600ppm以下である。
【表2】
【0018】
表2より、実施例1においては、比較例1と比較して含水量が非常に少ないことがわかる。この結果から炭酸ジメチルによる水の除去効果が機能していることが証明される。
【0019】
表3に処理前後でのシリカゲルの重量変化を示す。
【表3】
【0020】
表3より、実施例1においては、比較例1よりシリカゲルの溶解が著しく、アルコキシドの生成反応がより進行したことがわかる。
【0021】
【発明の効果】
この発明により、ケイ素の金属アルコキシドを、ハロゲン化物等を使用せず、酸化物とアルコールの反応により直接高効率で合成することが可能となる。
また、アルコールとケイ素の反応性が個々の物質で異なることを利用して、廃棄物等、複数の成分を含む酸化物から特定の成分を回収するプロセスの構築が可能となる。
Claims (6)
- アルコールとの反応によりアルコキシドを形成するケイ素の酸化物を、高温高圧のアルコールおよび炭酸エステルの混合物中で処理し、アルコールと金属成分との反応によりケイ素のアルコキシドを生成させると共に、この反応により副成する水を炭酸エステルと反応させて除去することを特徴とするケイ素のアルコキシドの製造方法。
- 高温が150℃以上であり、高圧が13気圧以上である請求項1に記載したアルコキシドの製造方法。
- 炭酸エステルの添加量が、金属酸化物に対しては等モル以上で、アルコールに対しては5-50vol%である 請求項1又は2に記載したアルコキシドの製造方法。
- アルコールとの反応によりアルコキシドを形成するケイ素の酸化物を粉砕して微粒子状とし、反応に供する 請求項1ないし3のいずれかひとつに記載したアルコキシドの製造方法。
- ケイ素の酸化物が廃棄ガラスである請求項1に記載のケイ素アルコキシドの製造方法。
- 廃棄ガラスが他の金属酸化物を含んでいる請求項5に記載のケイ素アルコキシドの製造方法。
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