JP3751854B2 - 軽量盛土工法におけるコンクリート床版とh型鋼との固定に用いる支持金具 - Google Patents

軽量盛土工法におけるコンクリート床版とh型鋼との固定に用いる支持金具 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、軽量盛土工法におけるコンクリート床版とH型鋼との固定に用いる支持金具に関する。
【0002】
【従来の技術】
軟弱地盤や地滑り地などでの盛土工法と一つとしてEPS工法のような軽量盛土材を用いた軽量盛土工法が知られている。この工法は、地盤改良にかかる経費の節減、工期の短縮、耐震性の向上などにおいて優れた効果を発揮することから、種々の土木工事において広く採用されている。図6は、軽量盛土工法を道路の拡幅工事に用いる場合の一例を示す断面図であり、軽量盛土材として発泡スチロールブロック(EPSブロック)を使用している。
【0003】
図示のように、中腹部に既存の道路1が作られている既存地山の斜面側にH形鋼2を立設し、H形鋼2と支持地盤3との間にEPSブロック4を積み上げて所定高さの盛土部を形成する。その後、積み上げたEPSブロック4の上面に所定厚さにコンクリートを打設してコンクリート床版5を形成する。またコンクリート床版5およびEPSブロック4が水平方向の位置ズレまたは転倒を起こさないように、支持地盤3に埋設固定したアンカー6の先端をコンクリート床版5に一体形成したアンカーヘッド5aに固定する。一方、立設したH形鋼2が側圧により外側に傾倒しないように、上位のコンクリート床版5(あるいは中間のコンクリート床版)に一端側を埋設したアンカー部材30の他端側をH形鋼2のフランジに係着させる。その後、H形鋼2を利用して軽量コンクリート板のような壁面保護材7が取り付けられ、さらに、仕上げ施工としての路盤8やアスファルト舗装9などが施工される。
【0004】
ところで、EPSブロックのような樹脂発泡体ブロックは弾塑性体である。従って、コンクリート床版5の上に仕上げ施工として路盤8やアスファルト舗装9を積み上げるとEPSブロック4がわずかに沈下する。そのために、H型鋼2と樹脂発泡体ブロック4とを相互に非拘束状態とし、かつ、コンクリート床版に一端側を埋設したアンカー部材30の他端側に支持金具30Aを取り付け、この支持金具30Aに設けた係合部をH型鋼2のフランジ2aに上下方向に摺動可能に係合させておくことにより、樹脂発泡体ブロック4およびコンクリート床版の下方への沈み込みを許容することが行われる(例えば、特開平8−27819号公報、特開平11−209999号公報など参照)。
【0005】
図7は、その一例を示すための平面図であり、この支持金具30Aは、断面ハット状に形成された基板部分31と、該基板部分30の両側に対向した状態で取り付けられる一対の断面コ字形をなす係止片32、32とから構成されている。基板部分31と各係止片32とはボルト、ナット33により一体に組み付けられており、該一対の係止片32、32の間にH型鋼2のフランジ2aが入り込むことにより、支持金具30AとH型鋼2とは上下方向に摺動可能な状態で一体化される。一方、基板部分31は中央に凹陥部34を有しており、その底部に形成した取り付け孔35に、一端をコンクリート床版に埋設したアンカー部材30の他端を差し込んでねじ止めすることにより、支持金具30Aとアンカー部材30とが連結されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記支持金具30Aを用いた軽量盛土工法におけるコンクリート床版5とH型鋼2との固定構造では、樹脂発泡体ブロック4およびコンクリート床版5の下方への沈み込みにつれて、支持金具30AがH型鋼2のフランジ2aに沿って下降していくことができるので、H型鋼2への支持部位への応力集中を回避することができ、安定した軽量盛土構造体が得られる。
【0007】
しかし、コンクリート床版5に埋設されたアンカー部材30との作用点が1ヶ所、すなわち、基板部分31における凹陥部34の底部に形成された取り付け孔35の1ヶ所であり、そこに応力が集中することから、さらに、基板部分31も金属板の曲げ加工により形成されていることから、大きな側圧が作用したときに基板部分31の凹陥部34近傍が変形しやすいという欠点がある。
【0008】
また、一対の断面コ字形をなす係止片32、32もやはり金属板の曲げ加工により形成されており、肉厚に限界があることから、強度に限界があり、大きな側圧が作用したときに、係止片32にも変形が生じやすい。さらに、基板部分31に対して各係止片32をボルト、ナット33により固定している関係から、H型鋼2のフランジ2aと基板部分31との間の距離がどうしても大きくなり、H型鋼2のフランジ2aの背面側からのバックアップが不十分となり、フランジ2aに変形が生じるのを避けられない。
【0009】
そのようなことから、支持金具30AとH型鋼2のフランジ2aとの間の摺動可能な係合態様が不安定になりやすく、樹脂発泡体ブロック4およびコンクリート床版5の下方への沈み込みに対する支持金具30Aの上下方向の移動が追従性を消失してしまい、H型鋼への支持部位に応力集中が発生することが往々にして生じている。
【0010】
本発明の目的は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、コンクリート床版に埋設されたアンカー部材とH型鋼との接合部位に大きな側圧が作用した場合でも、アンカー部材先端に取り付けた支持金具およびH型鋼のフランジの双方に変形が生じるのを回避することができ、それにより、両者間の摺動可能な係合態様を常に安定な状態に維持できるようにした、軽量盛土工法におけるコンクリート床版とH型鋼との間の固定に用いられる改良された支持金具を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための本発明による支持金具は、立設したH型鋼の背面側に盛土用のブロック材を多段に積み上げ、その上面にコンクリート床版を配置し、該コンクリート床版をH型鋼に対して上下方向に移動可能に固定するための軽量盛土工法におけるコンクリート床版とH型鋼との間の支持金具であって、該支持金具は、H型鋼のフランジに上下方向に摺動可能に係合される一対の係合部を備え、各係合部の近傍には、一端をコンクリート床版に埋設した一対のアンカー部材の他端側が固定可能とされていることを特徴とする。
【0012】
好ましい態様では、上記一対の係合部は、矩形状の基板と該基板の両側に対向して位置する一対の係止片とにより形成され、基板と係止片とは別部材とされていて、両者は適宜の固定具により一体に組み付け可能とされている。また、他の態様では、一対の係合部は分離した2つの部材として形成されており、使用時に一つに組み合わされて用いられる。
【0013】
本発明の支持金具では、H型鋼のフランジへの係合部の近傍に、一端をコンクリート床版に埋設したアンカー部材の他端側が固定されるようになっており、しかも、該アンカー部材は一本でなく、2本すなわち対として用いられる。そのために、側圧が掛かったときの力点(アンカー部材への固定箇所)と作用点(係合部のH型鋼のフランジへの衝接位置)とが接近しているとともに、力点は2ヶ所に分散することから、従来の支持金具と比較して、支持金具に変形が生じるのを抑制することができる。
【0014】
また、左右の係合部の近傍にアンカー部材の他端側を固定するようにしたので、アンカー部材の一端を支持金具に固定するための空間を支持金具の中央部分に設けることが不要となり、結果として、支持金具をH型鋼のフランジに取り付けたときに、H型鋼のフランジと支持金具の基板との間の距離を狭いものとすることができる。それにより、フランジの背面側を支持金具の基板によりバックアップすることが可能となり、フランジ自体に変形が生じるのも回避できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明による支持金具のいくつかの実施の形態をその使用方法とともに説明する。図1は支持金具の第1の実施の形態であり、図1aは組み立て前の状態を、図1bは組み立て後の状態を示している。この例において、支持金具20は全体が鋼材から作られており、矩形状の基板21と、左右一対の係止片22、22とを備える。基板21は、左右の両側に沿って、固定用ネジ23のための貫通孔24、24と、後記するアンカー部材30の一端を通過するための貫通孔25とが形成されている。係止片22は基部26とフランジ部27とを有し、基部26には、前記基板21に形成した3個の貫通孔24、25、24に対応する貫通孔24a、25a、24aが、それぞれ形成されている。
【0016】
基板21に対して、左右一対の係止片22、22を、そのフランジ部27を互いに対向させ、かつ各貫通孔同士が一致するようにして、基板21の両側に配置し、各貫通孔24、24aに固定用ボルト23を通した後、ナット28で締め付けることにより、支持金具20は図1bに示すように組み付けられる。
【0017】
図2は、軽量盛土工法において、図1に示した支持金具20を用いて、地中に立設したH形鋼2に対してコンクリート床版5が上下方向に移動できるように一体に連結した状態を示している。施工に当たっては、軽量盛土材として所定高さに樹脂発泡体ブロック(図示を省略している)を積み上げ、その上面位置よりわずかに高い位置におけるH型鋼2の背面側フランジ2aの裏面に、基板21を押し当てる。その状態で、左右一対の係止片22、22を、基板21とフランジ部27との間にH型鋼2のフランジ2aを挟み込むようにして位置させ、各貫通孔24、24aに固定用ボルト23を通してナット28で締め付ける。それにより、基板21と左右一対の係止片22、22とは一体に固定され、支持金具20はH型鋼2のフランジ2aに上下方向に摺動可能な状態で装着される。
【0018】
その状態の支持金具20における左右の貫通孔25、25aのそれぞれにアンカー部材30、30を通し、一端を係止片22、22の表面側で固定する。固定はボルト止めによる固定でもよく、圧壊や溶着などによってもよい。その後、通常工法に従い、所定厚さにコンクリートを打設してコンクリート床版5を形成し、さらに所要の路盤8やアスファルト舗装9などの仕上げ施工を行うことにより、軽量盛土構造物は完成する。なお、支持金具20にアンカー部材30を一体に固定するための作業手順は、上記の手順に限られない。
【0019】
上記の軽量盛土工法におけるコンクリート床版5とH型鋼2の固定態様では、積み上げた樹脂発泡体ブロック4およびコンクリート床版5の下方への沈み込みにつれて、支持金具20はH型鋼2のフランジ2aに沿って下降していくことができ、H型鋼2への支持部位に応力集中が発生することはない。さらに、本発明による固定構造では、支持金具20のH型鋼2のフランジ2aへの係合部(基板21とフランジ部27との間の空間)のわずか外側における2ヶ所において、一端をコンクリート床版5に埋設したアンカー部材30の他端側が固定されているので、大きな側圧が作用した場合でも、支持金具20、特にその力点および作用点近傍に変形が生じることはない。
【0020】
さらに、支持金具20の平板である基板21をH型鋼2のフランジ2aに平行してかつ近接して位置させることができるので、支持金具20の基板21はH型鋼2のフランジ2aに対してバックアップ材として機能することができ、フランジ2a自体に変形が生じるのも回避できる。また、全体が、別部材である基板21と左右一対の係止片22、22とで構成されるので、施工時にH型鋼2のフランジ2a部に組み付ける作業も容易である。すなわち、軽量盛土工法におけるH型鋼2は、図3の施工後の側面図に示されるように、その上端面に覆い板2bを溶着したものが用いられることが多いが、その場合でも、支持金具20の取り付け取り外しは支障なく行うことができる。
【0021】
図4は、前記図2に相当する図であり、用いている支持金具20Aの形状が図2のものと相違している。第2の形態である支持金具20Aは、係止片22が一体成形品でなく、フランジ部を構成することとなる第1の板材27aと、該第1の板材27aと基板21との間に介装される幅の狭い第2の板材27bとの2部材で構成されている点で、支持金具20と構成を異にしている。この支持金具20Aでは、第2の板材27bの厚みおよび幅を変えるのみで、異なった寸法およびフランジ厚みのH形鋼2に対しても装着することができる利点がある。
【0022】
図5は、さらに他の支持金具20Aを使用した前記図2に相当する図であり、この第3の形態である支持金具20Bは、左右に分離した2つの部材201、201とで構成される。各部材201、201は一体成形品であり、互いに対向する位置に係合凹溝202がそれぞれに形成され、また、該係合凹溝202のわずかに外側には、アンカー部材30の一端を通過させるための貫通孔25のみが形成されている。この支持金具20Bは、一体成形された左右の2つの部材201、201で構成されることから、H形鋼2に対する取り付けが特に容易であるとともに、異なったフランジ幅のH形鋼2に対してもそのままで装着できる利点がある。
【0023】
【発明の効果】
上記のように、本発明による支持金具では、軽量盛土工法においてH型鋼への支持部位に応力集中が発生するのを回避できることに加えて、大きな側圧が作用した場合でも、支持金具の力点および作用点近傍に大きな変形が生じることはない。さらに、支持金具の基板部分はH型鋼のフランジに対してバックアップ材として機能することから、H型鋼のフランジに変形が生じるのも回避できる。そのために、軽量盛土構造体におけるH型鋼と支持金具との摺動可能な係合態様を常に安定な状態に維持することができ、軽量盛土構造体の安定性が長期間にわたり確保される。
【図面の簡単な説明】
【図1】支持金具の第1の実施を示す図。
【図2】軽量盛土構造体における図1に示した支持金具の使用状態を説明する図。
【図3】軽量盛土構造体の要部を示す側面図。
【図4】他の形態の支持金具の使用状態を示す、図2に相当する図。
【図5】さらに他の形態の支持金具の使用状態を示す、図2に相当する図。
【図6】軽量盛土工法による構築物を説明するための図。
【図7】軽量盛土構造体における従来の支持金具の使用状態を説明する図。
【符号の説明】
2…H型鋼、2a…H型鋼のフランジ、4…軽量盛土材(盛土用のブロック材)、5…コンクリート床版、20…支持金具、21…基板、22…左右一対の係止片(係合部)、26…基部、25…アンカー部材のための貫通孔、27…フランジ部、30…アンカー部材

Claims (3)

  1. 立設したH型鋼の背面側に盛土用のブロック材を多段に積み上げ、その上面にコンクリート床版を配置し、該コンクリート床版をH型鋼に対して上下方向に移動可能に固定するための軽量盛土工法におけるコンクリート床版とH型鋼との間の支持金具であって、該支持金具は、H型鋼のフランジに上下方向に摺動可能に係合される一対の係合部を備え、該一対の係合部は、H型鋼のフランジの横幅よりも広い横幅であり係止時にH型鋼のフランジに平行してかつ近接して位置することとなる矩形状の基板と該基板の両側に対向して位置する一対の係止片とにより形成されており、各係合片におけるH型鋼のフランジの外側部位には、一端をコンクリート床版に埋設した一対のアンカー部材の他端側が固定可能とされていることを特徴とする支持金具。
  2. 前記矩形状の基板と前記係止片とは別部材とされていて、両者は適宜の固定具により一体に組み付け可能とされていることを特徴とする請求項1記載の支持金具。
  3. 前記基板が2つの分離した部材として形成されており、前記一対の係止片は各基板のそれぞれに対向するようにして形成されており、使用時に一つに組み合わされて用いられることを特徴とする請求項1記載の支持金具。
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