JP3751735B2 - コンクリートスラブおよび構築物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はコンクリートスラブおよび構築物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄筋コンクリート造の建物のスラブは、ほとんどがプレキャストコンクリート板で構築されている。このコンクリートスラブに各種配管のための凹部を構築するには、図17の(1)〜(3)に示すように、一方のプレキャストコンクリート板20を下側にずらして段差部21を形成し、ここを補強するためにあばら筋22を配筋したり、あるいはコンクリートスラブのスラブ筋23をベンド筋にしたりしていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のような段差部における配筋は複雑であるため、現場における鉄筋加工や施工に大変な手間がかかって作業効率が悪かった。また、このような煩雑な配筋作業を必要とするため凹部の形成箇所が制約されて任意の箇所に形成することが困難であった。
【0004】
本発明はこれらの問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、コンクリートスラブに凹部を形成する際に、現場における鉄筋加工をなくして作業効率の向上を図るとともに、任意の箇所に凹部が簡単に形成できるコンクリートスラブおよび構築物を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するための手段は、コンクリートスラブが、平面矩形のコンクリート板上面の角部のエリア、短辺側部のエリア、長辺側部のエリア、中央部のエリアのいずれかに背の低いトラス筋が上部を突出させて適宜間隔ごとに配筋され、これらのエリア以外の他のエリアには背の高いトラス筋が上部を突出させて適宜間隔ごとに配筋され、これら背の高いトラス筋間には軽量型枠が配設され、この背の高いトラス筋と背の低いトラス筋との端部が上下に重ね合わせ配筋された薄肉プレキャストコンクリート板が形成され、これら薄肉プレキャストコンクリート板が少なくとも2枚以上任意に組み合わされたものと、コンクリート板の上面に背の高いトラス筋のみが上部を突設させて適宜間隔ごとに配筋された中空薄肉プレキャストコンクリート板とが梁間に設置され、これらの薄肉プレキャストコンクリート板と中空薄肉プレキャストコンクリート板との上面にトップコンクリートが打設されて背の高いトラス筋と背の低いトラス筋との高低差により床の角部、長辺側部、短辺側部、中央部のいずれかに凹部が形成されたことを特徴とする。また薄肉プレキャストコンクリート板と中空薄肉プレキャストコンクリート板とには予めトップコンクリートが打設され、薄肉プレキャストコンクリート板には段差部が形成されていることを含むものである。
また構築物は、上記のコンクリートスラブを備えたことを特徴とする。
【0006】
コンクリート板の角部、または短辺側部、または長辺側部、または中央部に段差部を形成せしめるプレキャストコンクリート板を任意に組み合わせることにより、コンクリートの所定箇所、すなわち角部、または短辺側部、または長辺側部、または中央部に任意の大きさの凹部が形成される。
【0007】
また、任意の箇所に凹部が形成されたコンクリートスラブを備えた構築物となる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のコンクリートスラブおよび構築物の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1はプレキャストコンクリート板の平面図、図2の(1)は図1の(2)のA−A線断面図、同図の(2)は同B−B線断面図、図3はコンクリートスラブの平面図である。
【0009】
図1の(1)および(2)は角部に平面長方形の段差部が形成されるプレキャストコンクリート板(以下、薄肉PC板という)1を示し、平面矩形のコンクリート板2と、トラス筋3、4とから構成されている。
【0010】
薄肉PC板1は所定の大きさおよび所定の厚さを備えたものであり、これを二つのエリア5、6、すなわち二つの領域に分割し、そのうちの一方のエリア5には背の高いトラス筋3がコンクリート板2の長辺方向に沿って適宜間隔ごとに配筋されている。
【0011】
このトラス筋3は、三角形状に配置された一本の上弦筋(トップ筋)7と二本の下弦筋(下端筋)8とが波形のラチス筋9で接合された三角トラスであり、前記下弦筋8がコンクリート板2内の曲げ補強筋10に接合されているとともに、上弦筋7側がコンクリート板2の一面から突出している。
【0012】
これら背の高いトラス筋3間には、軽量型枠11が適宜間隔ごとに配設され、この軽量型枠11は背の高いトラス筋3よりもやや低く形成されている。軽量型枠11としては打設されるコンクリートによって圧壊しないものが用いられ、例えば、発泡ポリスチレンのようなビーズ型内発泡成形による合成樹脂発泡成形品が使用される。しかし、この他にもエチレン系樹脂、プロピレン系樹脂等からなる発泡成形品を使用することも可能である。なお、軽量型枠11の材質としては、コンクリートに対する軽量部材であれば特に限定するものではなく、中空鋼管にすることもできる。
【0013】
一方、他方のエリア6には、背の低いトラス筋4がコンクリート板2の長辺方向に沿って適宜間隔ごとに配筋され、その先端部が背の高いトラス筋3に重ね配筋されている。この重ね配筋は少なくともラチス筋9の2山以上を重ね合わせている。この重ね合わせはトラス筋3、4同士を横に添わせる以外に、図2の(3)に示すように、上下に重ね合わせることもできる。このことにより重ね合わせ部における強度をさらに強めることができるとともに、トラス筋3、4同士を互いにずらして配筋する手間も省ける。
【0014】
また背の低いトラス筋4は、背の高いトラス筋3と同一の構成であるが、高さが背の高いトラス筋3の半分程度であり、その下端筋8がコンクリート板2内の曲げ補強筋10に接合されているとともに、上端筋7側がコンクリート板2の一面から突出している。このように背の高いトラス筋3が配筋されたエリア5と、背の低いトラス筋4が配筋されたエリア6との間には高低差があり、これをもってトップコンクリート12が打設されて段差部13を形成せしめている。
【0015】
これら背の高いトラス筋3と背の低いトラス筋4の高さは、段差の大きさに応じて決定され、例えば、段差が大きい場合には、背の高いトラス筋3がさらに高くなる一方、背の低いトラス筋4がさらに低くなる。
【0016】
また、背の高いトラス筋3と背の低いトラス筋4の長さも、段差部13の大きさに応じて決定され、例えば、面積の大きな段差部13を構築する場合は背の低いトラス筋4の長さがさらに長くなる一方、背の高いトラス筋3の長さがさらに短くなる。したがって、これらのトラス筋3、4の重ね配筋の長さにより段差部13における強度が自在に調節される。
【0017】
次に、図1の薄肉PC板によって形成された凹部を備えたコンクリートスラブを図3〜図5に基づいて説明する。
【0018】
図3は共同住宅における中間における一住戸のコンクリートスラブ14を示したものであり、長尺梁15と短尺梁16の間に配設された2枚の薄肉PC板1と、これらの両側に配設された中空薄肉PC板17とから構成されている。
【0019】
前記薄肉PC板1とは、背の高いトラス筋3と背の低いトラス筋4が配筋された図1のものをいい、中空薄肉PC板17とは、背の高いトラス筋3のみが配筋された図4のものをいう。
【0020】
前記コンクリートスラブ14の長尺梁15側に、洗面設備などの水回り設備が設置される凹部18が形成されている。この凹部18は、背の高いトラス筋3と背の低いトラス筋4との高低差をもってトップコンクリート12が打設されて形成され、薄肉PC板1を、背の低いトラス筋4が配筋された箇所を向かい合わせるように組み合わせている。また薄肉PC板1と中空薄肉PC板17とにわたって連結筋19が配筋され、これによって薄肉PC板1と中空薄肉PC板17とがそれぞれ接続されている。このように段差部13を形成せしめる薄肉PC板1を組み合わせて配設することにより、コンクリートスラブ14の任意の箇所に凹部18が簡単に形成できる。
【0021】
図6は角部に凹部18が形成されたコンクリートスラブ14であり、図7の(1)および(2)の薄肉PC板1を組み合わせて形成したものである。前記(1)の薄肉PC板1は短辺側部に背の低いトラス筋4が配筋された段差部13が形成されるものであり、同図の(2)は角部に背の低いトラス筋4が配筋された段差部13が形成されるものである。
【0022】
また図8は中央部に凹部18が形成されたコンクリートスラブ14であり、図9およびの図10の薄肉PC板1を組み合わせて形成したものである。図9の薄肉PC板1は略中央部に背の低いトラス筋3が配筋された段差部13が形成されるものであり、図10の(1)および(2)は長辺側部に背の低いトラス筋4が配筋された段差部13が形成されるものである。
【0023】
また図11〜図13は、共同住宅の妻側における一住戸のコンクリートスラブ14を示したものであり、図11は図3と同じように長尺梁15側に凹部18が形成されたものであり、図12は中間の住戸と隣接する角部に凹部18が形成されたものであり、図13は図12と反対側の角部に凹部18が形成されたものであり、これらも前記と同様の薄肉PC板1と中空薄肉PC板17を組み合わせて形成したものである。
【0024】
また図14および図15は、共同住宅の中間における二住戸のコンクリートスラブ14を示したものであり、図14は長尺梁15側に凹部18を備えた住戸と、角部に凹部18を備えた住戸の組み合わせである。また図15は反対側の角部に凹部18を形成した住戸同士の組み合わせである。これも前記と同様の薄肉PC板1を使用して形成したものである。
【0025】
さらに、図16は図14と図15とは異なる位置に凹部18を形成した二住戸のコンクリートスラブ14を示したものであり、(1)〜(5)は中間部における二住戸のコンクリートスラブ14であり、(6)および(7)は妻側における二住戸のコンクリートスラブ14を示したものであり、これらのいずれも前記と同様の薄肉PC板1を使用して構築したものである。
【0026】
なお、本発明は上記のような組み合わせに限らず、任意の箇所に段差部を形成した薄肉PC板を任意に組み合わせることにより、コンクリートスラブの任意の箇所、すなわち長尺梁側、または短尺梁側方向、または角部、または中央部に凹部を形成することができる。
【0027】
さらに、上記の実施の形態は薄肉PC板、すなわちトップコンクリートを打設することによりコンクリートスラブを構築する、いわゆるハーフPC板を使用したコンクリートスラブについて説明したが、この他に予めトップコンクリートが打設された、いわゆるフルPC板を使用したコンクリートスラブにも適用できるものである。この場合は前記薄肉PC板と同じ箇所に予め段差部が形成されたフルPC板を、長尺梁と短尺梁の間に連続的に配設して、これらをそれぞれ接合することにより形成するものである(図示せず)。
【0028】
また図3、図6、図8、図11〜図16のコンクリートスラブ14を使用して鉄骨造、鉄筋コンクリート造および鉄骨鉄筋コンクリート造の構築物を構築すると、任意の箇所に凹部が形成されたコンクリートスラブを有した構築物となる。
【0029】
【発明の効果】
コンクリート板の任意の箇所に段差部を備えたプレキャストコンクリート板を組み合わせることによりコンクリートスラブの任意の箇所、すなわち角部、長尺梁側、または短尺梁側、または中央部に凹部を形成できる。
【0030】
背の高いトラス筋と、背の低いトラス筋を長さ方向に重ね配筋したプレキャストコンクリート板を使用することにより、トップコンクリートを打設するだけで凹部のあるコンクリートスラブが簡単に形成できる。
【0031】
予めトップコンクリートが打設された、いわゆるフルPC板を使用すると、これを長尺梁と短尺梁との間に連続的に配設して、これらを接合することにより凹部のあるコンクリートスラブが簡単に形成できる。
【0032】
薄肉PC板において、背の高いトラス筋と背の低いトラス筋の重ね配筋した箇所の強度を大きくできる。
【0033】
背の高いトラス筋と、背の低いトラス筋を長さ方向に重ね配筋したことによりプレキャストコンクリート板に段差部が容易に形成できる。
【0034】
任意の箇所に凹部が形成されたコンクリートスラブ12を備えた構築物が簡単に構築できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(1)および(2)は薄肉PC板の平面図である。
【図2】(1)は図1の(2)のA−A線断面図、(2)は同B−B線断面図、図3はトラス筋の重ね配筋の断面図である。
【図3】コンクリートスラブの平面図である。
【図4】中空薄肉PC板の平面図である。
【図5】(1)は図3のC−C線断面図、(2)は同D−D線断面図である。
【図6】コンクリートスラブの平面図である。
【図7】(1)および(2)は薄肉PC板の平面図である。
【図8】コンクリートスラブの平面図である。
【図9】薄肉PC板の平面図である。
【図10】(1)および(2)は薄肉PC板の平面図である。
【図11】コンクリートスラブの平面図である。
【図12】コンクリートスラブの平面図である。
【図13】コンクリートスラブの平面図である。
【図14】コンクリートスラブの平面図である。
【図15】コンクリートスラブの平面図である。
【図16】(1)〜(7)はコンクリートスラブを示す概略図である。
【図17】(1)〜(3)は従来のコンクリートスラブの段差部の断面図である。
【符号の説明】
1 薄肉PC板
2 コンクリート板
3 背の高いトラス筋
4 背の低いトラス筋
5 一方のエリア
6 他方のエリア
11 軽量型枠
12 トップコンクリート
13 段差部
14 コンクリートスラブ
Claims (3)
- 平面矩形のコンクリート板上面の角部のエリア、短辺側部のエリア、長辺側部のエリア、中央部のエリアのいずれかに背の低いトラス筋が上部を突出させて適宜間隔ごとに配筋され、これらのエリア以外の他のエリアには背の高いトラス筋が上部を突出させて適宜間隔ごとに配筋され、これら背の高いトラス筋間には軽量型枠が配設され、この背の高いトラス筋と背の低いトラス筋との端部が上下に重ね合わせ配筋された薄肉プレキャストコンクリート板が形成され、これら薄肉プレキャストコンクリート板が少なくとも2枚以上任意に組み合わされたものと、コンクリート板の上面に背の高いトラス筋のみが上部を突設させて適宜間隔ごとに配筋された中空薄肉プレキャストコンクリート板とが梁間に設置され、これらの薄肉プレキャストコンクリート板と中空薄肉プレキャストコンクリート板との上面にトップコンクリートが打設されて背の高いトラス筋と背の低いトラス筋との高低差により床の角部、長辺側部、短辺側部、中央部のいずれかに凹部が形成されたことを特徴とするコンクリートスラブ。
- 薄肉プレキャストコンクリート板と中空薄肉プレキャストコンクリート板とには予めトップコンクリートが打設され、薄肉プレキャストコンクリート板には段差部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリートスラブ。
- 請求項1または2に記載のコンクリートスラブを備えたことを特徴とする構築物。
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- 1998-01-19 JP JP00737098A patent/JP3751735B2/ja not_active Expired - Fee Related
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