JP3813718B2 - プレキャストコンクリート板、コンクリートスラブおよび構築物 - Google Patents

プレキャストコンクリート板、コンクリートスラブおよび構築物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はプレキャストコンクリート板、コンクリートスラブおよび構築物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄筋コンクリート造などの建物は、ほとんどがプレキャストコンクリート板でスラブを構築しており、このプレキャストコンクリート板を軽量にするために、図12に示すように、トラス筋21間に軽量型枠22を配設したプレキャストコンクリート板23が多く使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このようにトラス筋および軽量型枠が等間隔ごとに配筋されたプレキャストコンクリート板を、梁間に隣接状態で設置すると、長辺方向の接合部にトラス筋が近接状態で配筋されるため床全体としては、長辺方向の一方向だけが補強されたアンバランスな配筋状態になるという問題があった。
【0004】
本発明はこれらの問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、軽量型枠が配設されたプレキャストコンクリート板を使用してコンクリートスラブを構築する場合に、長辺方向および短辺方向の2方向(縦方向と横方向)にバランスのとれた配筋ができるプレキャストコンクリート板、コンクリートスラブおよび構築物を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するための手段は、プレキャストコンクリート板が、所定の大きさのコンクリート板にトラス筋が適宜間隔をもって配筋され、該トラス筋の一部が前記コンクリート板の一面から突出し、該突出したトラス筋間に軽量型枠が適宜間隔をもって配設され、前記コンクリート板の長辺方向の両側部には複数のトラス筋が近接して配筋され、該複数のトラス筋と、これに隣接したトラス筋との間には他の軽量型枠よりも横幅の狭い小型軽量型枠が配設され、これらの軽量型枠のトラス筋に沿った側の配設間隔のうちの少なくとも一列に他の軽量型枠のトラス筋に沿った配設間隔よりも広い配設間隙部が形成されたことを特徴とする。またコンクリート板の長辺方向の両側部に近接して配筋された複数のトラス筋のうちのいずれかが他よりも短いことを含む。また軽量型枠の長辺方向の長さがトラス筋の配筋間隔以下であることを含むものである。
またコンクリートスラブが、所定の大きさのコンクリート板にトラス筋が適宜間隔をもって配筋され、該トラス筋の一部が前記コンクリート板の一面から突出し、該突出したトラス筋間に軽量型枠が適宜間隔をもって配設され、前記コンクリート板の長辺方向の両側部には複数のトラス筋が近接して配筋され、該複数のトラス筋と、これに隣接したトラス筋との間には他の軽量型枠よりも横幅の狭い小型軽量型枠が配設され、これらの軽量型枠のトラス筋に沿った側の配設間隔のうちの少なくとも一列に他の軽量型枠のトラス筋に沿った配設間隔よりも広い配設間隙部が形成されたプレキャストコンクリート板が、梁間に隣接状態で複数配設され、これらプレキャストコンクリート板の広い配設間隙部により形成されたスラブ全体の広い配設間隙部の全長に、プレキャストコンクリート板の接合部における近接したトラス筋に対応した連結筋が、これらのトラス筋と直交して配筋されたことを特徴とする。また複数のトラス筋のうちのいずれかが他よりも短いことを含む。また軽量型枠の長辺方向の長さがトラス筋の配筋間隔以下であることを含むものである。また構築物は、上記のコンクリートスラブを備えたことを特徴とする。
【0006】
コンクリート板の長辺方向の両側部に複数のトラス筋を近接して配筋したことにより、プレキャストコンクリート板同士の接合部の強度をスラブの必要強度に応じて補強できる。
【0007】
複数のトラス筋のうちのいずれかが他よりも短いことにより、スラブの部分的に異なる強度に応じた配筋ができる。
【0008】
軽量型枠の長辺方向の長さがトラス筋の配筋間隔以下であることにより、コンクリート板の横方向に配筋される鉄筋の配筋間隔に応じた小割の軽量型枠が配設ができる。
【0009】
軽量型枠の配設間隔のうちの少なくとも一列を他の配設間隔よりも広くしたことにより、この両側には軽量型枠が均等に配置された軽量型枠群が形成される。また広い配設間隔にはトラス筋に対応した鉄筋が配筋できる。
【0010】
コンクリート板の長辺方向の両側部のトラス筋を複数にしたことにより、プレキャストコンクリート板の接合部におけるスラブの強度が補強できる。
【0011】
軽量型枠の広い配設間隙部にはトラス筋に対応した鉄筋が配筋できるので、コンクリートスラブ全体として縦横2方向にバランスがとれた配筋となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のプレキャストコンクリート板の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1はプレキャストコンクリート板の平面図、図2は図1のa−a線断面図、図3は同b−b線断面図である。
【0013】
図1はプレキャストコンクリート板1を示し、平面矩形のコンクリート板2と、トラス筋3と、軽量型枠4とから構成されている。
【0014】
プレキャストコンクリート板1は所定の大きさおよび所定の厚さを備えたものであり、長辺方向に沿ったトラス筋3が短辺方向に適宜間隔をもって配筋され、コンクリート板2の長辺方向の両側部には2本のトラス筋3、すなわち内側のトラス筋3aと、外側のトラス筋3bとが近接して配筋されている。これらのトラス筋3、3a間には軽量型枠4が適宜間隔ごとに配設され、両側部における近接したトラス筋3a、3bと、これに隣接したトラス筋3との間には他の軽量型枠よりも横幅の狭い小型軽量型枠4aが配設されている。
【0015】
これらの軽量型枠4はトラス筋3とほぼ同じ高さであり、長辺方向の長さがトラス筋3の配筋間隔、すなわち図3におけるaの間隔以下である。軽量型枠4としては打設されるコンクリートによって圧壊しないものが用いられ、例えば、発泡ポリスチレンのような合成樹脂発泡成形品が使用される。しかし、この他にもエチレン系樹脂、プロピレン系樹脂等からなる発泡成形品を使用することも可能である。なお、軽量型枠の材質としては、コンクリートに対する軽量部材であれば特に限定するものではなく、中空鋼管にすることもできる。
【0016】
またトラス筋3、3a、3bは、三角形状に配置された一本の上端筋5と二本の下端筋6が波形のラチス筋7で接合されたトラスであり、上端筋5側がコンクリート板2の上面から突出しているとともに、下端筋6がコンクリート板2内に埋設されてスラブ下端筋8に接合されている。なお、トラス筋3は上記のようなものに限定されず、一本の上端筋と一本の下端筋を波型のラチス筋で接合したトラスであってもよい。
【0017】
図4は他のプレキャストコンクリート板1を示し、(1)は近接して配筋された2本のトラス筋3a、3bのうちの内側のトラス筋3aが半分の長さで、かつコンクリート板2の片側にだけ配筋されたものである。また同図の(2)は、前記とは反対に外側のトラス筋3bが半分の長さのプレキャストコンクリート板1である。このような配筋は、例えば段差部を形成する場合に、そこを補強することができるので必要な強度に応じた配筋ができる。
【0018】
図5は他のプレキャストコンクリート板1を示し、(1)は近接して配筋された2本のトラス筋3のうちの内側のトラス筋3aが半分の長さで、かつコンクリート板2の両側にそれぞれ一本ずつ配筋したものである。また同図の(2)は、これと反対に外側のトラス筋3bが半分の長さのものである。上記の(1)および(2)も前記と同様に必要な強度に応じた配筋にできる。
【0019】
また図6は、図1のプレキャストコンクリート板1の軽量型枠4および小型軽量型枠4aの中央部におけるトラス筋3に沿った側の配設間隔を、他の軽量型枠4および小型軽量型枠4aのトラス筋3に沿った配設間隔よりも広くしたプレキャストコンクリート板1である。この広い配設間隙部9は、複数の丸鋼またはトラス筋が近接して配筋できる間隔を備えており、これを中心にしたコンクリート板2の両側には軽量型枠4が均等に配設された軽量型枠群10が形成されている。
【0020】
図7は、図4のプレキャストコンクリート板1の中央部における軽量型枠4および小型軽量型枠4aのトラス筋3に沿った側の配設間隔を、他の軽量型枠4および小型軽量型枠4aのトラス筋3に沿った配設間隔よりも広くしたものである。さらに図8は、図5のプレキャストコンクリート板1の中央部における軽量型枠4および小型軽量型枠4aのトラス筋3に沿った側の配設間隔を他の軽量型枠4および小型軽量型枠4aのトラス筋3に沿った配設間隔よりも広くしたものである。これらも図6のプレキャストコンクリート板1と同様の効果を達成することができる。
【0021】
次に、図1、図4ないし図8のプレキャストコンクリート板(以下これらを中空プレキャストコンクリート板という)のうちのいくつかを使用して構築したコンクリートスラブを図9〜図11に基づいて説明する。図9はコンクリートスラブの平面図、図10は図9のそれぞれの断面図である。
【0022】
図9は、図8の(1)の中空プレキャストコンクリート板1と複合プレキャストコンクリート板11とを梁12間に交互に隣接して敷設したコンクリートスラブ13であり、前記のプレキャストコンクリート板1、11上にスラブ上端筋14が配筋され、その上にトップコンクリート15が打設されている。
【0023】
この中空プレキャストコンクリート板1と隣接した複合プレキャストコンクリート板11は、分割された二つのエリア16、17のうちの一方のエリア16に背の高いトラス筋3が長辺方向に沿って配筋されているとともに、他方のエリア17に背の低いトラス筋18が適宜間隔ごとに配筋されて、その端部が背の高いトラス筋3と重ね配筋されている。
【0024】
これらの背の高いトラス筋3間には、長辺方向の長さがトラス筋の配筋間隔a以下である軽量型枠4が適宜間隔ごとに配設されている。よって、これらの背の高いトラス筋3と背の低いトラス筋17とには高低差があり、これをもってトップコンクリート15が打設されて段差部19を形成せしめている(図10)。
【0025】
そして、前記段差部19と隣接した中空プレキャストコンクリート板3には2重のトラス筋3a、3bが配筋されて、段差部19との接合部を補強している。
【0026】
また、各軽量型枠4間にはトラス筋3に対応した、丸鋼等の連結筋20が配筋されるとともに、プレキャストコンクリート板1、11の広い配設間隙部9により形成されたスラブ全体の広い配設間隙部9の全長に掛けては、接合部における近接したトラス筋3、3bに対応した一対の連結筋20が配筋されて、スラブ全体として縦横2方向にバランスのとれた配筋となっている。
【0027】
このように段差部19との接合部は2重のトラス筋3a、3bにより補強され、かつ全体としても縦横2方向にバランスのとれた配筋のコンクリートスラブ13が構築されている。
【0028】
図11は、図6のプレキャストコンクリート板1を梁12間に敷設したコンクリートスラブ13であり、これも前記と同様に軽量型枠4間にトラス筋3と対応した連結筋20が配筋されるとともに、プレキャストコンクリート板1の広い配設間隙部9により形成されたスラブ全体の広い配設間隙部9の全長に掛けては、接合部における近接したトラス筋3a、3bに対応した4本の連結筋20が配筋されている。これも前記と同様に縦横2方向にバランスがとれた配筋とすることができる。
【0029】
また図1、図4、図5および図7などの中空プレキャストコンクリート板1を使用して、図9や図11とは別のコンクリートスラブを構築することができる(図示せず)。これらいずれのコンクリートスラブも、縦横2方向にバランスのとれた配筋とすることができる。
【0030】
また図9、図11のコンクリートスラブ13のほか、図1、図4、図5、図7のプレキャストコンクリート板1によるコンクリートスラブを使用して鉄骨造、鉄筋コンクリート造および鉄骨鉄筋コンクリート造の構築物を構築すると、段差部が補強され、かつ全体としてバランスのよい配筋のコンクリートスラブを備えた構築物が構築できる。
【0031】
【発明の効果】
隣接したプレキャストコンクリート板同士の接合部における強度を大きくすることができる。
【0032】
コンクリート板の長辺方向の両側部に複数のトラス筋を近接して配筋したことにより、プレキャストコンクリート板同士の接合部の強度をスラブの必要強度に応じて補強できる。
【0033】
複数のトラス筋のうちのいずれかが他よりも短いことにより、スラブの部分的に異なる強度に応じた配筋ができる。
【0034】
軽量型枠の長辺方向の長さがトラス筋の配筋間隔以下であることにより、コンクリート板の横方向に配筋される鉄筋の配筋間隔に応じた軽量型枠が配設ができる。
【0035】
軽量型枠の配設間隔のうちの少なくとも一列を他の配設間隔よりも広くしたことにより、該広い配設間隔部にはトラス筋に対応した鉄筋が配筋できる。また広い配設間隔部の両側には軽量型枠が均等に配置された軽量型枠群が形成される。
【0036】
コンクリート板の長辺方向の両側部のトラス筋を複数にしたことにより、プレキャストコンクリート板の接合部におけるスラブの強度を補強できる。
【0037】
軽量型枠の広い配設間隙部にはトラス筋に対応した鉄筋が配筋できるので、コンクリートスラブ全体として縦横2方向にバランスがとれた配筋となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】プレキャストコンクリート板の平面図である。
【図2】図1のa−a線断面図である。
【図3】図1のb−b線断面図である。
【図4】(1)および(2)は他のプレキャストコンクリート板の平面図である。
【図5】(1)および(2)は他のプレキャストコンクリート板の平面図である。
【図6】プレキャストコンクリート板の平面図である。
【図7】(1)および(2)はプレキャストコンクリート板の平面図である。
【図8】(1)および(2)はプレキャストコンクリート板の平面図である。
【図9】コンクリートスラブの一部切欠平面図である。
【図10】(1)は図9のc−c線断面図、(2)は同d−d線断面図、(3)はトップコンクリートを打設した断面図である。
【図11】コンクリートスラブの一部切欠平面図である。
【図12】従来のプレキャストコンクリート板の平面図である。
【符号の説明】
1 プレキャストコンクリート板
2 コンクリート板
3、3a、3b トラス筋
4 軽量型枠
5 上端筋
6 下端筋
7 ラチス筋
8 スラブ下端筋
9 広い配設間隙部
12 梁
13 コンクリートスラブ
15 トップコンクリート
20 連結筋

Claims (7)

  1. 所定の大きさのコンクリート板にトラス筋が適宜間隔をもって配筋され、該トラス筋の一部が前記コンクリート板の一面から突出し、該突出したトラス筋間に軽量型枠が適宜間隔をもって配設され、前記コンクリート板の長辺方向の両側部には複数のトラス筋が近接して配筋され、該複数のトラス筋と、これに隣接したトラス筋との間には他の軽量型枠よりも横幅の狭い小型軽量型枠が配設され、これらの軽量型枠のトラス筋に沿った側の配設間隔のうちの少なくとも一列に他の軽量型枠のトラス筋に沿った配設間隔よりも広い配設間隙部が形成されたことを特徴とするプレキャストコンクリート板。
  2. コンクリート板の長辺方向の両側部に近接して配筋された複数のトラス筋のうちのいずれかが他よりも短いことを特徴とする請求項1に記載のプレキャストコンクリート板。
  3. 軽量型枠の長辺方向の長さがトラス筋の配筋間隔以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のプレキャストコンクリート板。
  4. 所定の大きさのコンクリート板にトラス筋が適宜間隔をもって配筋され、該トラス筋の一部が前記コンクリート板の一面から突出し、該突出したトラス筋間に軽量型枠が適宜間隔をもって配設され、前記コンクリート板の長辺方向の両側部には複数のトラス筋が近接して配筋され、該近接した複数のトラス筋と、これに隣接したトラス筋との間には他の軽量型枠よりも横幅の狭い小型軽量型枠が配設され、これらの軽量型枠のトラス筋に沿った側の配設間隔のうちの少なくとも一列に他の軽量型枠のトラス筋に沿った配設間隔よりも広い配設間隙部が形成されたプレキャストコンクリート板が、梁間に隣接状態で複数配設され、これらプレキャストコンクリート板の広い配設間隙部により形成されたスラブ全体の広い配設間隙部の全長に、プレキャストコンクリート板の接合部における近接したトラス筋に対応した連結筋が、これらのトラス筋と直交して配筋されたことを特徴とするコンクリートスラブ。
  5. 複数のトラス筋のうちのいずれかが他よりも短いことを特徴とする請求項4に記載のコンクリートスラブ。
  6. 軽量型枠の長辺方向の長さがトラス筋の配筋間隔以下であることを特徴とする請求項4または5に記載のコンクリートスラブ。
  7. 請求項5のコンクリートスラブを備えたことを特徴とする構築物。
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