JP3749614B2 - 4サイクルエンジンのオイル供給装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、携帯用作業機等に用いられる4サイクルエンジンのオイル供給装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、チェンソー、芝刈り機、草刈り機等の携帯用作業機に用いられる駆動用エンジンには、構造が簡単でしかも軽量である等の理由から2サイクルエンジンが採用されるのが一般的である。ところが、2サイクルエンジンの場合、大気に放出される排気ガス中のCO,HC量が多いという問題があり、これが排気ガス浄化、環境保全を図る上でネックとなっている。
【0003】
これに対し、4サイクルエンジンの場合は2サイクルエンジンに比べて排気ガス中のCO,HC量が少ないことから、大気汚染経の影響を回避する点で有利である。このため、最近では、チェンソー、草刈り機等の携帯用作業機においても、4サイクルエンジンの採用が検討されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
チェンソー、草刈り機等は、その用途からして作業姿勢が大きく変化し、これに伴いエンジン姿勢も前後、左右、上下逆さまに大きく変動することになる。
【0005】
このようなエンジン姿勢の変動は、2サイクルエンジンではあまり問題がないものの、4サイクルエンジンでは被潤滑部に対するオイルの供給に支障を来たすという問題がある。つまり、エンジンの姿勢変動に応じてオイル貯留室内のオイル溜りの位置が大きく変動すると、オイル溜りからオイルを吸い込む吸入パイプのオイル吸入口がオイル面から離反してしまうことがあり、この場合にはオイルを被潤滑部に供給することができなくなってしまう。
【0006】
特開平9−228816号公報には、オイル貯留室内のオイル溜りからオイルポンプによってオイルを強制的に吸い込むオイル供給装置であって、オイル溜りからオイルを吸い込む吸入パイプのオイル吸入口がエンジンのクランク軸周り及びクランク軸に直角の軸周りに回動自在に支持され、そのオイル吸入口がオイル吸入口近傍に取り付けられた錘によって常に鉛直下方位置に付勢されるようにした発明が開示されている。ところが、このようなオイル供給装置では、オイル吸入口を二方向に回動させる機構が必要となり、また、このような機構をオイルパン内で密閉的に支持するためのシール機構も必要となり、したがって、構造の複雑化、部品点数の増大、装置の大型化、装置の重量増加等の様々な不利益が生ずる。特に、装置の大型化及び重量増加は、携帯用作業機に適用した場合に作業者の負担を増強させる。
【0007】
本発明の目的は、エンジンがどのように傾いてもオイル貯留室内のオイルを確実にエンジン各部に送油することができるオイル供給装置を簡単な構造で実現することである。
【0008】
本発明の別の目的は、エンジンがどのように傾いてもオイル貯留室内のオイルを確実にエンジン各部に送油することができるオイル供給装置を部品点数を増加させることなく実現することである。
【0009】
本発明の別の目的は、エンジンがどのように傾いてもオイル貯留室内のオイルを確実にエンジン各部に送油することができるオイル供給装置の小型化を実現することである。
【0010】
本発明の別の目的は、エンジンがどのように傾いてもオイル貯留室内のオイルを確実にエンジン各部に送油することができるオイル供給装置の軽量化を実現することである。
【0011】
本発明のさらに別の目的は、エンジンがどのように傾いてもオイル貯留室内のオイルを確実にエンジン各部に送油する動作の確実性を得ることである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明の4サイクルエンジンのオイル供給装置は、オイルを貯留するオイル貯留室と、オイル貯留室内に回動自在に支持された中空のオイル吸入軸と、このオイル吸入軸に連結されて自由端側にオイル貯留室内のオイルに浸漬されるオイル吸入口を有する可撓性弾性材料により形成された可撓性パイプとからなるオイル吸入流路と、オイル吸入流路のオイル吸入口の近傍に固定された錘と、オイル吸入軸に連結されてオイル吸入流路のオイル吸入口からオイル貯留室内のオイルを移送して4サイクルエンジンの被潤滑部に供給するオイル供給手段とを備える。
【0013】
したがって、オイル供給手段は、オイル吸入流路のオイル吸入口からオイル貯留室内のオイルを移送して4サイクルエンジンの被潤滑部に供給する。これにより、4サイクルエンジンの被潤滑部にオイルが供給されてその潤滑がなされる。この際、4サイクルエンジンが搭載される携帯型作業機等の姿勢変動に応じて4サイクルエンジンが傾けられた場合、オイル吸入軸は回動自在であり、かつ、オイル吸入流路の自由端側は可撓性弾性材料からなる可撓性パイプによって形成されているため、錘の自重でオイル吸入軸が回動すると共に可撓性パイプが可撓し、オイル吸入口は常に鉛直方向下向きに位置付けられる。これにより、オイル吸入口はオイル貯留室に貯留されたオイル内に常に浸漬され、エンジンがどのように傾いてもオイル貯留室内のオイルは確実にエンジン各部に送油される。
【0014】
また、請求項1記載の発明は、エンジン内部とオイル貯留室内に位置するオイル吸入軸の外周との間を連通してピストンの往復動に伴うエンジン内部の圧力変動によってエンジン内部からオイル貯留室内へオイルを回収する回収流路と、オイル貯留室内に位置する回収流路の終端に臨ませてオイル吸入軸に取り付けられたフランジ部とを備える。
【0015】
したがって、ピストンの往復動に伴ってエンジン内部の圧力が上がった場合、エンジン内部のオイルが回収流路を通ってオイル貯留室に回収される。この際、回収流路からはオイルと空気とエンジン内部で生じたブローバイガスとが吐出されるため、これらのオイルと空気とブローバイガスとが回収流路の終端に臨むフランジに当たり、フランジと一体であるオイル吸入軸がオイル貯留室の底部方向に付勢される。このため、特に4サイクルエンジンの倒立時、オイル吸入軸に上方向の力が働いてオイル吸入軸が浮遊状態となり、その回動動作が確実となる。これにより、錘に付勢されてのオイル吸入軸の回動動作が確実となり、オイル吸入口は常に鉛直方向下向きに位置付けられる。なお、回収流路からオイル貯留室に流れ込む空気にはブローバイガスが混ざっている。そこで、本明細書を通じ、特にことわらなくても回収流路からオイル貯留室に流れ込む空気は、空気とブローバイガスとの混合気を意味するものとする。
【0016】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の4サイクルエンジンのオイル供給装置において、オイル吸入軸の回転中心から偏心させてそのオイル吸入軸に取り付けられた第二の錘を備える。
【0017】
したがって、4サイクルエンジンが搭載される携帯型作業機等の姿勢変動に応じて4サイクルエンジンが傾けられた場合、第2の錘によってもオイル吸入軸が回動すると共に可撓性パイプが可撓する。これにより、オイル吸入軸の回動と可撓性パイプの可撓とによってオイル吸引口を鉛直方向下向きに向ける動作がより確実となる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の第一の実施の形態を図1ないし図7に基づいて説明する。図1は携帯用作業機に搭載される4サイクルエンジンを示す縦断正面図であり、図2は図1におけるA−A線断面図、図3は図1におけるB−B線断面図、図4は 図1におけるC−C線断面図、図5はオイル貯留室周辺を拡大して示す縦断正面図、図6(a)は図5におけるD−D線断面図、図6(b)は図5におけるE−E線断面図、図7は4サイクルエンジンを倒立させた状態を示す縦断正面図である。
【0021】
4サイクルエンジンのエンジン本体1は、クランクケース2の上部にシリンダブロック3が取り付けられ、このシリンダブロック3にはシリンダヘッド4が一体に形成され、シリンダヘッド4の上部にはロッカーカバー5が取り付けられている。クランクケース2は、ケース本体2aの側面にクランクケースカバー2bを取り付けることにより形成されており、これらのケース本体2aとクランクケースカバー2bとに囲まれた部分がエンジン内部であるクランク室6とされている。
【0022】
クランク室6内には、両端部を軸受7,8により軸支されたクランク軸9と、一端をケース本体2aに一体形成された軸受部10に軸支されて他端をクランクケースカバー2bに一体形成された軸受部11により軸支されたカム軸12とが回転自在に設けられている。クランク軸9には、シリンダブロック3内に形成されたシリンダ13内を往復摺動するピストン14がコネクティングロッド15を介して連結され、さらに、クランクギア16が固定されている。また、このクランク軸9はその両端部がケース本体2aとクランクケースカバー2bとを貫通してクランク室6外へ突出しており、クランク軸9がケース本体2aとクランクケースカバー2bとを貫通する部分にはオイルシール17が取り付けられている。カム軸12には吸気カム18と排気カム19とが固定され、さらに、クランクギア16と噛み合ったカムギア20が固定されている。
【0023】
シリンダヘッド4の上部におけるロッカーカバー5により覆われた空間はエンジン内部である動弁室21とされ、この動弁室21内には、シリンダヘッド4に取り付けられた吸気弁22や排気弁23を閉弁方向へ付勢するスプリング24、吸気弁22や排気弁23を開弁方向へ付勢するロッカーアーム25、一端をロッカーアーム25に当接させるとともに他端をタペット26a,26bを介して吸気カム18と排気カム19とに当接させたプッシュロッド27a,27b等からなる動弁機構28が収納されている。シリンダブロック3とシリンダヘッド4とには、プッシュロッド27a,27bが挿通されるプッシュロッド通路29a,29bが形成され、これらのプッシュロッド通路29a,29bの一端は動弁室21に開口され、プッシュロッド通路29a,29b同士はその途中で連通しないように仕切られている。
【0024】
シリンダヘッド4には、シリンダ13内の燃焼室へ混合気を供給するための吸気ポート30と、燃焼室内からの排気ガスを排気するための排気ポート31とが形成されている。吸気ポート30の先端部には気化器32とエアクリーナ(図示せず)とが接続され、排気ポート31の先端部にはマフラ33が接続されている。
【0025】
クランクケース2の下方には、オイルタンク34が固定されており、このオイルタンク34内には潤滑用のオイルを貯留するオイル貯留室35が形成されている。このオイル貯留室35と動弁室21との間は、オイル貯留室35内のオイルを動弁室21へ供給する供給流路36で連通されている。この供給流路36は、一端がオイル貯留室35内に挿入されて他端がプッシュロッド通路29bの途中に接続された供給パイプ37と、プッシュロッド通路29bとにより形成されている。オイル貯留室35内に挿入された供給パイプ37の先端部はオイル貯留室35内の略中央部に位置し、この先端部にはオイル貯留室35内の空気を吸入する空気吸入孔38が形成されている。また、供給パイプ37の内周面における空気吸入孔38の近傍位置には、内径寸法を小さくした絞り部39が形成されている。
【0026】
オイル貯留室35内には、オイル吸入流路40が設けられている。このオイル吸入流路40は、供給パイプ37の先端部に所定の隙間を空けて回動自在に取り付けられたオイル吸入軸41と、このオイル吸入軸41に接続された可撓性を有する可撓性パイプ42とにより形成されている。可撓性パイプ42の先端部にはオイル吸入口43が形成され、このオイル吸入口43の外周部には錘44が固定されている。この錘44が固定されることにより、オイルタンク34の傾き角を変化させることに伴ってオイル吸入軸41が回動し、可撓性パイプ42が撓み、オイル吸入口43は鉛直方向の最下部となるオイル貯留室35の底部に常に移動する。オイル吸入軸41の一端には供給パイプ37内に位置するオイル吐出口45が形成されており、このオイル吐出口45は、絞り部39に臨んで位置している。
【0027】
動弁室21とクランク室6との間には、動弁室21内に供給されたオイルをクランク室6内へ送る送油通路46が設けられている。この送油通路46は、プッシュロッド通路29aと、シリンダブロック3内に形成されて一端をプッシュロッド通路29aに連通して他端がクランク室6内に開口部47により連通された連通路48とにより形成されている。この開口部47は、ピストン14の摺動により開閉されるともにピストン14が略上死点位置に上昇したときに開口される位置に形成されている。そして、この開口部47とピストン14とにより、オイルが動弁室21からクランク室6内に送油されることのみを許容するチェック弁49が形成されている。また、連通路48における開口部47の近傍には連通路48内の空気の流れを絞る絞り部50が形成されている。
【0028】
クランク室6とオイル貯留室35との間は、クランク室6内のオイルをオイル貯留室35内へ回収する回収流路51で連通されている。この回収流路51は、クランクケース2の壁部内にクランク軸9の回転方向に沿って形成された溝状流路52と、溝状流路52の途中から分岐された分岐流路53と、分岐流路53に接続されてオイル貯留室35内に形成された回収パイプ54とにより形成されている。溝状流路52は3個の連通孔55によりクランク室6内に連通されている。また、溝状流路52と分岐流路53との間には、クランク室6内の圧力変動により開閉してオイルがクランク室6からオイル貯留室35に向けて送油されることのみを許容するリード弁56が設けられている。このリード弁56は、クランク室6内の圧力の上昇に伴い開く構造である。
【0029】
オイル貯留室35内に挿入された回収パイプ54の先端部はオイル貯留室35内の略中央部に位置し、この先端部には回収したオイルをオイル貯留室35内へ戻す戻し孔57が形成されている。
【0030】
シリンダブロック3とシリンダヘッド4とには、バイパスパイプ58が挿入されている。このバイパスパイプ58は、一端が動弁室21内の天井部近傍に開口され、他端が絞り部50に臨ませて開口されている。
【0031】
また、この4サイクルエンジンには、ブローバイガスを排気するブローバイガス排気パイプ59が設けられている。このブローバイガス排気パイプ59の一端は、絞り部50に臨ませて開口され、ブローバイガス排気パイプ59の他端は、図示しないエアクリーナに接続されている。
【0032】
さらに、オイル吸入軸41には、オイル貯留室35内に位置する回収流路51の終端、つまり、回収パイプ54の先端部の戻し孔57に臨ませて4つのフランジ部60が形成されている。これらのフランジ部60は、図6(b)に示すように、オイル吸入軸41の外周面から放射方向に突出するような形状となっている。
【0033】
このような構成において、この4サイクルエンジンの運転時には、ピストン14の上昇に伴ってクランク室6内の圧力が下がり、ピストン14が略上死点に達してクランク室6内の圧力が最も下がったときにチェック弁49が開弁され、開口部47が開口される。これにより、動弁室21内のオイルが空気と共に送油通路46内を通ってクランク室6内へ吸入される。
【0034】
つぎに、ピストン14の下降に伴ってクランク室6内の圧力が上昇したときには、クランク室6からオイルが混ざった空気(前述したとおり、ブローバイガスとの混合気)が回収流路51を通ってオイル貯留室35に吐出される。つまり、ミスト状のオイルと液状化したオイルとが混ざった空気は、クランク室6から連通孔55及び溝状流路52を通って分岐流路53に押し出され、押し出されたオイル混じりの空気はリード弁56を開弁させて回収パイプ54を通り戻し孔57からオイル貯留室35に吐出される。これにより、クランク室6内のミスト状のオイルと液状化したオイルとが回収流路51内を通ってオイル貯留室35内へ回収される。
【0035】
ここで、クランク室6からオイルが混ざった空気が回収流路51を通ってオイル貯留室35に吐出されると、オイル貯留室35から動弁室21、そして動弁室21からクランク室6等へとオイルが供給される。このようなオイル貯留室35から各部へのオイルの供給について以下に詳しく説明する。
【0036】
まず、オイルが混ざった空気が回収パイプ54の戻し孔57からオイル貯留室35に吐出されると、オイル貯留室35内の圧力が高まるため、オイル貯留室35内の空気が供給パイプ37の先端の空気吸入孔38から供給流路36に供給される。この際、供給流路36の入口近傍には内径寸法を小さくした絞り部39が形成されているために、空気吸入孔38から吸入された空気が絞り部39を通過するときにその流速が上昇し、その部分周辺に負圧を生じさせる。これにより、オイル貯留室35に貯留されたオイルが可撓性パイプ42のオイル吸入口43から吸引され、吸引されたオイルは可撓性パイプ42及びオイル吸入軸41を通りオイル吐出口45から吐出されて供給流路36に導かれる。すると、空気吸入孔38から吸入された空気とオイル吐出口45から吐出されたオイルとが混合され、ミスト状のオイルが生成される。生成されたミスト状のオイルは、オイル貯留室35内の圧力上昇に伴い空気吸入孔38から供給流路36に供給される空気と共に動弁室21内へ供給される。この際、液体状のオイルが直接動弁室21内に供給されるということが防止され、液体状のオイルを直接供給することに伴って発生するオイルの過剰供給が防止される。そして、動弁室21内に供給されたミスト状のオイルはその一部が動弁室21内で液状化し、ピストン14の摺動に伴ってクランク室6の圧力が下がるとともに開口部47が開いたときに、ミスト状のオイルと液状化したオイルとが動弁室21からクランク室6内へ供給される。ここに、オイル貯留室35内のオイルを吸引して4サイクルエンジンの被潤滑部に供給するオイル供給手段の機能が実行される。
【0037】
ここで、本実施の形態では、オイル貯留室35内のオイルを移送するためのオイル吸入流路40として、回動自在のオイル吸入軸41に可撓性弾性材料からなる可撓性パイプ42を連結し、この可撓性パイプ42の先端のオイル吸入口43の近傍に錘44を取り付けた構造となっている。このため、4サイクルエンジンをどのような向きに傾けた場合でもオイル吸入口43はオイル貯留室35内の底部に移動し、オイル貯留室35内のオイル量が減少した場合でもオイル吸入口43からのオイルの吸入を常に良好に行なえる。これにより、オイル吸入口43はオイル貯留室35に貯留されたオイル内に常に浸漬され、4サイクルエンジンがどのように傾いてもオイル貯留室35内のオイルは確実にエンジン各部の被潤滑部に送油される。
【0038】
また、ピストン14の下降に伴ってクランク室6内の圧力が上昇したときにクランク室6内のミスト状のオイルと液状化したオイルとが回収流路51内を通ってオイル貯留室35内へ回収される際、回収流路51の終端の戻し孔57からはエンジン内部で生じたブローバイガスと空気との混合気及びオイルが吐出されるため、これらの混合気とオイルとが回収流路51の終端に臨むフランジ60に当たり、フランジ61が取り付けられたオイル吸入軸41がオイル貯留室35の底部方向に付勢される。このため、特に4サイクルエンジンの倒立時、オイル吸入軸41に上方向の力が働いてオイル吸入軸41が浮遊状態となり、その回動動作が円滑かつ確実となる(図7参照)。これにより、錘44に付勢されてのオイル吸入軸41の回動動作が確実となり、オイル吸入口43は常に鉛直方向下向きに位置付けられることになる。よって、エンジンがどのように傾いてもオイル貯留室35内のオイルを確実にエンジン各部に送油する動作が確実になる。
【0039】
さらに、図7に示すように、4サイクルエンジンを倒立状態で長時間使用した場合には、液状化したオイルが動弁室21内の天井部に溜まり易い。しかし、一端を動弁室21の天井部近傍に開口させて他端を開口部47の近傍に位置する絞り部50に臨ませたバイパスパイプ58が設けてあり、この絞り部50の箇所では大きな負圧が発生するため、動弁室21内の天井部に溜まったオイルは、絞り部50で発生した負圧によりバイパスパイプ58内を通って吸い出され、クランク室6内へ送油される。このため、4サイクルエンジンを略倒立状態で長時間使用した場合でも、動弁室21内に過剰のオイルが溜まるということが防止される。 次いで、ミスト状のオイルの生成については、オイル貯留室35内に挿入した供給パイプ37の先端部に空気吸入孔38と絞り部39とオイル吐出口45とを設け、クランク室6内の圧力変動を利用してオイルをオイル吐出口45から吐出させるとともに空気を空気吸入孔38から吸入し、絞り部39において流速が上昇した空気とオイルとを混合させることにより行なっている。従って、ミスト状のオイルを簡単な構造で生成することができる。しかも、このミスト状のオイルを生成することに伴うエンジンの出力低下が起こらない。
【0040】
また、このようなミスト状のオイルの生成に際して、回収流路51内を通ってオイル貯留室35内へ流入するオイルや空気は、動弁室21内やクランク室6内の回転部や摺動部を潤滑することにより温度が上昇している。このように温度が上昇しているオイルや空気が供給パイプ37と二重構造となっている回収パイプ54内を流れることにより、回収パイプ54内を流れるオイルや空気の熱が供給パイプ37に伝わる。このため、この供給パイプ37内を通って動弁室21内に供給されるミスト状のオイルが温められてオイルの粘度が低下し、初期始動時や低温始動時などにおいて短時間で良好な潤滑が開始される。
【0041】
次いで、本実施の形態の4サイクルエンジンでは、戻し孔57及び空気流入孔38がオイル貯留室35の略中央部に配置されている。これにより生ずる利点を次に述べる。
【0042】
まず、戻し孔57がオイル貯留室35の略中央部に位置するため、オイル貯留室35内のオイル量をこの戻し孔57がオイルに浸漬されない所定量以下とすることにより、この4サイクルエンジンをどのような向きに傾けた場合でも、戻し孔57から吐出した空気がオイル貯留室35に貯留されているオイル内に入ってオイルの液面を泡立てるということなく、泡立ったオイルが空気吸入孔38から送油されるということが防止され、供給流路36を通って動弁室21内に供給されるミスト状のオイルのミスト濃度が一定に維持される。
【0043】
次いで、空気吸入孔38がオイル貯留室35の略中央部に位置するため、オイル貯留室35内のオイル量をこの空気吸入孔38がオイルに浸漬されない所定量以下とすることにより、この4サイクルエンジンをどのような向きに傾けた場合でも空気吸入孔38からの空気の供給が良好に行なわれ、ミスト状のオイルの生成、及び、生成したミスト状のオイルの動弁室21内やクランク室6内への供給が良好に行なえる。
【0044】
本発明の第二の実施の形態を図8に基づいて説明する。図8は、携帯用作業機に搭載される4サイクルエンジンを示す縦断正面図である。第一の実施の形態と同一部分は同一符号で示し説明も省略する。本実施の形態では、オイル吸入軸41に第2の錘61が取り付けられている。この第2の錘61は、オイル吸入軸41の回転中心から偏心させた位置に取り付けられている。
【0045】
このような構成において、4サイクルエンジンが搭載される携帯型作業機等の姿勢変動に応じて4サイクルエンジンが傾けられた場合、錘44と第2の錘61とが共にオイル吸入軸41を回動させ、可撓性パイプ42を可撓させる。この際、第2の錘61は、エンジン姿勢の変動に対するオイル吸入流路40の回動及び可撓の反応を敏感にし、エンジン姿勢の僅かな変動に対してもオイル吸入口43を鉛直方向下向きに向ける作用をもたらす。
【0046】
【発明の効果】
請求項1記載の発明は、上述のように構成したので、錘の自重によるオイル吸入軸の回動と可撓性パイプの可撓とによってオイル吸入口を常に鉛直方向下向きに位置付け、これにより、エンジンがどのように傾いてもオイル貯留室内のオイルを確実にエンジン各部に送油することができる。この場合、オイル吸入軸の回動構造に加えてオイル吸入流路の一部を可撓性弾性材料からなる可撓性パイプにより形成するだけでこのような効果を実現しているので、構造の簡略化、部品点数の削減、装置の小型化及び装置の軽量化を実現することができる。
【0047】
また、上述のように構成したので、特に4サイクルエンジンの倒立時、オイル吸入軸に上方向の力を働かせてオイル吸入軸を浮遊状態にし、その回動動作を確実にすることができ、したがって、エンジンがどのように傾いてもオイル貯留室内のオイルをエンジン各部に送油する動作を確実にすることができる。
【0048】
請求項2記載の発明は、上述のように構成したので、第二の錘によってオイル吸入軸の回動動作及び可撓性パイプの可撓動作をより確実にすることができ、したがって、エンジンがどのように傾いてもオイル貯留室内のオイルをエンジン各部に送油する動作を確実にすることができる。特に、エンジン姿勢の僅かな変動に対してもオイル吸入軸の回動動作を確実にし、エンジン姿勢の変動に対するオイル吸入軸の反応をより正確にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の第一の形態の4サイクルエンジンを示す縦断正面図である。
【図2】図1におけるA−A線断面図である。
【図3】図2におけるB−B線断面図である。
【図4】図1におけるC−C線断面図である。
【図5】オイル貯留室周辺を拡大して示す縦断正面図である。
【図6】(a)は図5におけるD−D線断面図、(b)は図5におけるE−E線断面図である。
【図7】4サイクルエンジンを倒立させた状態を示す縦断正面図である。
【図8】本発明の実施の第二の形態の4サイクルエンジンの一部を示す縦断正面図である。
【符号の説明】
14 ピストン
35 オイル貯留室
40 オイル吸入流路
42 可撓性パイプ
43 オイル吸入口
44 錘
51 回収流路
60 フランジ
61 第2の錘
Claims (2)
- オイルを貯留するオイル貯留室と、
前記オイル貯留室内に回動自在に支持された中空のオイル吸入軸と、このオイル吸入軸に連結されて自由端側に前記オイル貯留室内のオイルに浸漬されるオイル吸入口を有する可撓性弾性材料により形成された可撓性パイプとからなるオイル吸入流路と、
前記オイル吸入流路の前記オイル吸入口の近傍に固定された錘と、
前記オイル吸入軸に連結されて前記オイル吸入口から前記オイル貯留室内のオイルを移送して4サイクルエンジンの被潤滑部に供給するオイル供給手段と、
エンジン内部とオイル貯留室内に位置するオイル吸入軸の外周との間を連通してピストンの往復動に伴うエンジン内部の圧力変動によってエンジン内部からオイル貯留室内へオイルを回収する回収流路と、
前記オイル貯留室内に位置する前記回収流路の終端に臨ませて前記オイル吸入軸に取り付けられたフランジ部と、
を備える4サイクルエンジンのオイル供給装置。 - オイル吸入軸の回転中心から偏心させてそのオイル吸入軸に取り付けられた第二の錘を備える請求項1記載の4サイクルエンジンのオイル供給装置。
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---|---|---|---|
JP08204098A JP3749614B2 (ja) | 1998-03-27 | 1998-03-27 | 4サイクルエンジンのオイル供給装置 |
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EP98305015A EP0887520B1 (en) | 1997-06-26 | 1998-06-25 | Oil supply apparatus of a four-stroke-cycle engine |
US09/105,202 US5975042A (en) | 1997-06-26 | 1998-06-26 | Oil supply apparatus of a four-stroke-cycle engine |
Applications Claiming Priority (1)
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JP08204098A JP3749614B2 (ja) | 1998-03-27 | 1998-03-27 | 4サイクルエンジンのオイル供給装置 |
Publications (2)
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