JP3748617B2 - 光波距離計 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被測定物体に信号光を照射し、被測定物体で散乱反射された信号光を検出することにより、信号光の発光時と受光時との間の位相差に基づいて被測定物体に対する距離を計測する光波距離計に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の光波距離計においては、信号光の発光時と受光時との間の位相差を検出するために、ヘテロダイン(Heterodyne)技術が主に適用されている。この技術においては、信号光を検出する光検出器から出力された検出信号と、この検出信号の周波数と微妙に異なる周波数を有する参照信号とを重ね合わせることにより、検出信号の位相情報を保持する干渉信号を発生させる。
【0003】
ここで、検出信号と参照信号との間の周波数差は、比較的小さく設定されている。これにより、検出信号と参照信号との間の位相差を保持した状態で、検出信号と参照信号との間の周波数差が干渉信号の周波数として低域変換されるので、干渉信号の位相を検出することができる。そのため、干渉信号の位相の測定値と参照信号の位相の設定値とに基づいて、検出信号の位相を算出することにより、信号光の発光時と受光時との間の位相差を高い分解能で測定することができる。
【0004】
しかしながら、このようなヘテロダイン技術においては、検出信号及び参照信号の各周波数の安定性が、低域変換の割合に対応して拡大され、位相の測定精度に大きく影響してしまう。そのため、信号光を発生する光源に対して駆動信号を発生させる発振子や、参照信号を発生させる発振子などに、高精度の動作安定性で各信号周波数を一定に保持させる必要がある。また、干渉信号の位相を検出するために、高速に動作する比較器や計数回路なとが必要となるので、回路構成が複雑となってしまう。
【0005】
このような発振子や信号処理回路などに対する要請を考慮する必要がないものとして、ホモダイン(Homodyne)技術がある。この技術においては、信号光を検出する光検出器から出力された検出信号と、この検出信号の周波数と同一の周波数を有する参照信号とを重ね合わせることにより、検出信号の位相情報を保持する干渉信号を発生させる。
【0006】
ここで、干渉信号は高周波成分と直流成分とを含むので、高周波成分の振幅を取り扱うことができない。そのため、検出信号と参照信号との間の位相差に依存する直流成分の波高を取り扱うことになる。これにより、干渉信号の波高の測定値と参照信号の位相の設定値とに基づいて、検出信号の位相を算出することにより、信号光の発光時と受光時との間の位相差を高い分解能で測定することができる。
【0007】
なお、このようなホモダイン技術を用いた先行技術に関しては、電波距離計が実開平4−3373号公報などに詳細に記載されている。この電波距離計は、被測定物体に信号電波を発信し、被測定物体で散乱反射された信号電波を受信することにより、信号電波の発信時と受信時との間の位相差ではなく時間差に基づいて被測定物体に対する距離を計測している。
【0008】
この電波距離計においては、ホモダイン技術に基づいて、信号電波を受信する受信器から出力された検出信号と、この検出信号の周波数と同一の周波数を有する参照信号とを、乗算器で重ね合わせて干渉信号を発生させる際に、検出信号のレベルに対応して参照信号の位相を制御することにより、一種の可変減衰機構として、干渉信号の波高増幅によって発生する波形歪みを低減させる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、干渉信号の中で位相情報及び強度情報を含む直流成分を取り扱うことにしても、直流成分の強度は信号光の強度も含むため、干渉信号の波高が変化した場合に、振幅変化によるものなのか、あるいは、位相変化によるものなのかを判別することが困難であり、信号処理回路における増幅器のオフセット誤差を含む利得誤差が位相の測定精度に大きく影響してしまう。
【0010】
これにより、干渉信号の波高のレベル範囲に対して一定の利得を与えるために、干渉信号の波高を増幅する増幅器に、比較的広いダイナミックレンジと高い利得安定度とを設定することが必要となる。また、実際の乗算器はフィードスルーを有するため、参照信号の位相を切り替える際に低周波成分が同期して発生し、干渉信号の波高のレベルに大きく影響することがある。したがって、被測定物体に対する距離の計測精度を大幅に向上させることが困難である。
【0011】
そこで、本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、位相シフト法を利用したホモダイン技術に基づいて、検出信号と参照信号との間の位相差を検出することにより、被測定物体に対する距離の計測精度を向上させる光波距離計を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上述した目的を達成するために、本発明のうちで請求項1記載の光波距離計は、(a)基本信号に相互に異なる位相変調をそれぞれ施すことにより、同一の周波数を有する駆動信号及び参照信号をそれぞれ発生し、駆動信号と参照信号との間に少なくとも3種類の位相差を生じさせる信号発生回路と、(b)この信号発生回路から入力した駆動信号に基づいて発生させた信号光を被測定物体に投射する光源と、(c)被測定物体で散乱反射されて入射した信号光に基づいて検出信号を生成する光検出器と、(d)この光検出器から入力した検出信号と信号発生回路から入力した参照信号とを重ね合わせた干渉信号を生成するホモダイン処理回路と、(e)このホモダイン処理回路から入力した干渉信号の波高を駆動信号及び参照信号の少なくとも3種類の位相差切替に対応して相互に比較し、信号光の発光時と受光時との間の位相差を検出する位相検出回路とを備え、信号発生回路は、位相差πを有する2種類の位相変調を第1周期で基本信号に施して参照信号を生成するとともに、所定値の位相差を有する2種類の位相変調を第1周期の2倍に一致した第2周期で基本信号に施して駆動信号を生成する回路構成を含むことを特徴とする。
【0013】
このような光波距離計においては、信号発生回路は、少なくとも3種類の位相差を生じさせた状態で、相互に異なる位相変調を周期的に施した駆動信号及び参照信号を光源及びホモダイン処理回路にそれぞれ出力する。これにより、光源は、信号発生回路から入力した駆動信号に対応した信号光を発生し、この信号光を被測定物体に照射する。光検出器は、被測定物体で散乱反射された信号光を受光し、この信号光に対応した検出信号をホモダイン処理回路に出力する。
【0014】
このとき、ホモダイン処理回路は、光検出回路から入力した検出信号と信号発生回路から入力した参照信号とを重ね合わせることにより、干渉信号を生成して位相検出回路に出力する。ここで、参照信号及び検出信号は、同一の周波数を有するとともに、相互に異なる位相変調によって時分割に変動した少なくとも3種類の位相差を有する。そのため、干渉信号は、検出信号と参照信号との間の位相差に対応して少なくとも3つの波高を有し、参照信号の位相切替に同期して周期的に変動している。
【0015】
そして、位相検出回路は、ホモダイン技術の原理に基づいて、駆動信号及び参照信号の位相差切替に対応して、ホモダイン処理回路から入力した干渉信号の波高を相互に比較する。そのため、位相検出回路は、いわゆる位相シフト法に基づいて、干渉信号の振幅による影響を排除した状態で、シフトされた位相を有して異なる干渉信号の波高間のレベル比に対応した検出信号及び参照信号の位相差のみを検出する。
【0016】
また、駆動信号の位相を切り替える際に低周波成分が同期して発生しても、この低周波成分は光源によって信号光を発生する際に除去されてしまう。これにより、光検出器によって測定光を光電変換した検出信号は、このような低周波成分による影響から排除されている。したがって、この光波距離計は、信号光の発光時と受光時との間の位相差を高精度に検出する。
【0018】
請求項2記載の光波距離計は、請求項1記載の光波距離計において、駆動信号の変調成分の位相差を調整することにより、被測定物体に対する測距範囲に対応して干渉信号の波高を基準値以上に設定させる回路構成を、信号発生回路に含ませることを特徴とする。
【0019】
請求項3記載の光波距離計は、請求項1または請求項2記載の光波距離計において、信号発生回路における駆動信号及び参照信号の少なくとも3種類の位相差切替に同期して、ホモダイン処理回路から入力した干渉信号を選択することにより、干渉信号の位相情報を含む位相信号を生成する切替器と、この切替器から入力した位相信号を直流変換する積分器とを、位相検出回路に含ませることを特徴とする。
【0020】
請求項4記載の光波距離計は、請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載の光波距離計において、駆動信号及び参照信号の少なくとも3種類の位相差切替時にデューティ比を50%で一定に保持する回路構成を、信号発生回路に含ませることを特徴とする。
【0021】
このような光波距離計においては、参照信号の位相を切り替える際に低周波成分が同期して発生しても、この低周波成分は信号発生回路から出力される以前に除去されてしまう。これにより、ホモダイン処理回路で検出信号と重ね合わされる参照信号は、このような低周波成分による影響から排除されている。したがって、この光波距離計は、信号光の発光時と受光時との間の位相差をよりいっそう高精度に検出する。
【0022】
請求項5記載の光波距離計は、請求項4記載の光波距離計において、駆動信号及び参照信号の少なくとも3種類の位相差切替に同期した低周波成分を除去する狭帯域フィルタを、信号発生回路に含ませることを特徴とする。
【0023】
請求項6記載の光波距離計は、請求項1ないし請求項5のいずれか一つに記載の光波距離計において、参照信号として第1参照信号を発生するとともに、第1参照信号の位相をπ/2だけシフトした第2参照信号をさらに発生する回路構成を、信号回路に含ませるとともに、光検出器から入力した検出信号に対して、信号発生回路から入力した第1及び第2参照信号をそれぞれ乗じる処理を並列して実行する2系統の回路構成を、ホモダイン処理回路に含ませることを特徴とする。
【0024】
請求項7記載の光波距離計は、請求項6記載の光波距離計において、基本信号として第1基本信号を発生する発振器と、この発振器から入力した第1基本信号の位相をπだけシフトした第2基本信号を生成する第1位相シフタと、第1基本信号の周期よりも大きい周期を有する第1切替信号を発生する第1切替信号発生器と、この第1切替信号発生器から入力した第1切替信号に基づいて、発振器及び第1位相シフタからそれぞれ入力した第1及び第2基本信号の一つを順次選択して第1参照信号を生成する第1切替器と、発振器から入力した第1基本信号の位相をπ/2だけシフトした第3基本信号を生成する第2位相シフタと、この第2位相シフタから入力した第3基本信号の位相をπだけシフトした第4基本信号を生成する第3位相シフタと、第1基本信号と同期した第2切替信号を発生する第2切替信号発生器と、この第2切替信号発生器から入力した第2切替信号に基づいて、第2及び第3位相シフタからそれぞれ入力した第3及び第4基本信号の一つを順次選択して第2参照信号を生成する第2切替器とを、信号発生回路に含ませることを特徴とする。
【0025】
請求項8記載の光波距離計は、請求項1ないし請求項7のいずれか一つに記載の光波距離計において、ホモダイン処理回路から入力した干渉信号に基づいて、光検出器及びホモダイン処理回路の各利得を調整することにより、干渉信号の波高の最小値及び最大値を一定に設定させる利得調整回路をさらに備えることを特徴とする。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る諸々の実施形態の構成および作用について、図1ないし図13を参照して説明する。なお、図面の説明においては同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0027】
第1実施形態
図1に示すように、本実施形態の光波距離計は、被測定物体10に信号光P0を投射する光源30と、この被測定物体10で散乱反射された信号光P1を検出する光検出器40と、これら光源30及び光検出器40に入出力する各種の電気信号を処理する信号処理系とで構成されている。ここで、光源30は、発光ダイオードであって、信号発生回路20から入力した駆動信号D0に対応して信号光P0を発生する。光検出器40は、フォトダイオードであって、被測定物体10で反射された信号光P1を光電変換し、検出信号M0として前置増幅器41に出力する。
【0028】
前置増幅器41は、光検出器40から入力した検出信号M0を増幅して第1ホモダイン処理回路50及び第2ホモダイン処理回路60にそれぞれ出力する。第1ホモダイン処理回路50は、前置増幅器41から入力した検出信号M0にホモダイン処理を施し、干渉信号として位相検出回路70及び利得調整回路80にそれぞれ出力する。また、第2ホモダイン処理回路60は、前置増幅器41から入力した検出信号M0にホモダイン処理を施し、干渉信号として位相検出回路70及び利得調整回路80にそれぞれ出力する。
【0029】
位相検出回路70は、第1及び第2ホモダイン処理回路50,60から入力した干渉信号の位相情報を抽出して外部の演算回路に出力する。また、利得調整回路80は、第1及び第2ホモダイン処理回路50,60から入力した干渉信号の強度情報を抽出し、光検出器40と第1及び第2ホモダイン処理回路50,60との各利得を調整する。その他に、光源30、第1及び第2ホモダイン処理回路50,60、位相調整回路70及び利得調整回路80の各動作を制御する信号処理系として、信号発生回路20が設置されている。
【0030】
図2に示すように、信号発生回路20は、第1基本信号B1を発生する発振器21と、第1基本信号B1の位相をπだけシフトした第2基本信号B2を生成する第1位相πシフタ221と、切替信号S0を発生する第1切替信号発生器251と、切替信号S0に基づいて第1及び第2基本信号B1,B2を選択して第1参照信号R1を生成する第1切替器261と、第1参照信号R1の低周波成分を除去する第1狭帯域フィルタ271とを含んで構成されている。
【0031】
これに加えて、信号発生回路20は、第1基本信号B1の位相をπ/2だけシフトした第3基本信号B3を生成する第1位相π/2シフタ231と、第3基本信号B3の位相をπだけシフトした第4基本信号B4を生成する第2位相πシフタ222と、切替信号S0を発生する第2切替信号発生器252と、切替信号S0に基づいて第3及び第4基本信号B3,B4を選択して第2参照信号R2を生成する第2切替器262と、第2参照信号R2の低周波成分を除去する第2狭帯域フィルタ272とを含んで構成されている。
【0032】
さらに、信号発生回路20は、第1基本信号B1の位相を基準位相αだけシフトした第5基本信号B5を生成する位相αシフタ24と、第5基本信号B5の位相をπ/2だけシフトした第6基本信号B6を生成する第2位相π/2シフタ232と、切替信号S0を発生する第3切替信号発生器253と、切替信号S0に基づいて第5及び第6基本信号B5,B6を選択して駆動信号D0を生成する第3切替器263と、駆動信号D0の低周波成分を除去する第3狭帯域フィルタ273とを含んで構成されている。
【0033】
発振器21は、第1基本信号B1として周波数f0、初期位相φ0及び振幅A1を有する方形波をパルス発振で発生し、第1切替器261、第1位相πシフタ221、第1位相π/2シフタ231及び位相αシフタ24にそれぞれ出力する。この第1基本信号B1は、正弦波として簡略化して表示すると、式(1)に示すようになる。ただし、tは時刻である。
【0034】
1sin(2πf0t+φ0) (1)
第1位相πシフタ221は、発振器21から入力した第1基本信号B1の位相をπだけシフトし、第2基本信号B2として第1切替器261に出力する。この第2基本信号B2は、正弦波として簡略化して表示すると式(2)に示すようになる。
【0035】
1sin(2πf0t+φ0+π) (2)
第1位相π/2シフタ231は、発振器21から入力した第1基本信号B1の位相をπ/2だけシフトし、第3基本信号B3として第2切替器262及び第2位相πシフタ222にそれぞれ出力する。この第3基本信号B3は、正弦波として簡略化して表示すると式(3)に示すようになる。
【0036】
1sin(2πf0t+φ0+π/2) (3)
第2位相πシフタ222は、第1位相π/2シフタ231から入力した第3基本信号B3の位相をπだけシフトし、第4基本信号B4として第2切替器262に出力する。この第4基本信号B4は、正弦波として簡略化して表示すると式(4)に示すようになる。
【0037】
1sin(2πf0t+φ0+3π/2) (4)
位相αシフタ24は、発振器21から入力した第1基本信号B1の位相を基準位相αだけシフトし、第5基本信号B5として第3切替器263及び第2位相π/2シフタ232にそれぞれ出力する。この第5基本信号B5は、正弦波として簡略化して表示すると式(5)に示すようになる。
【0038】
1sin(2πf0t+φ0+α) (5)
第2位相π/2シフタ232は、位相αシフタ24から入力した第5基本信号B5の位相をπ/2だけシフトし、第6基本信号B6として第3切替器263に出力する。この第6基本信号B6は、正弦波として簡略化して表示すると式(6)に示すようになる。
【0039】
1sin(2πf0t+φ0+α+π/2) (6)
第1切替信号発生器251は、切替信号S0として周期T0でパルス発振した方形波を発生し、第1切替器261、位相検出回路70及び利得調整回路80にそれぞれ出力する。第2切替信号発生器252は、第1切替信号発生回路251と同期して切替信号S0を発生し、第2切替器262に出力する。第3切替信号発生器253は、第1及び第2切替信号発生回路251,252と同期して切替信号S0を発生し、第3切替器263に出力する。図3に示すように、切替信号S0の周期T0は、第1及び第2参照信号R1,R2の位相を変調するために、第1ないし第6基本信号B1〜B6の各周期1/f0の数十倍から数百倍の範囲で十分に大きく設定されている。
【0040】
第1切替器261は、第1切替信号発生器251から入力した切替信号S0の立上がりに対応して時間T0が経過する度に信号チャネルを切り替えることにより、発振器21及び第1位相πシフタ221からそれぞれ入力した第1及び第2基本信号B1,B2の一つを順次サンプリングし、2種類の位相で時分割に変調された第1参照信号R1として第1狭帯域フィルタ271に出力する。第1狭帯域フィルタ271は、第1切替器261から入力した第1参照信号R1の低周波成分を除去し、第1参照信号R1を第1ホモダイン処理回路50に出力する。
【0041】
ここで、第1切替器261で位相切替時に発生した第1参照信号R1の低周波成分は、第1狭帯域フィルタ271で位相切替時のノイズ成分として除去されるので、被測定物体10に対する測距値の精度に悪影響を及ぼさない。そのため、第1狭帯域フィルタ271から出力された第1参照信号R1は、位相切替時に周波数のずれを発生させるが、デューティ比を50%で一定に保持している。
【0042】
図3に示すように、第1参照信号R1は、時間T0毎に初期位相をφ0,φ0+πに順次切り替えた方形波として変調されている。この第1参照信号R1は、簡略化して表示すると4式(7a)〜(7d)に示すようになる。ただし、nは0以上の整数である。
【0043】
4nT0≦t<(1+4n)T0
1sin(2πf0t+φ0) (7a)
(1+4n)T0≦t<(2+4n)T0
1sin(2πf0t+φ0+π) (7b)
(2+4n)T0≦t<(3+4n)T0
1sin(2πf0t+φ0) (7c)
(3+4n)T0≦t<4(n+1)T0
1sin(2πf0t+φ0+π) (7d)
第2切替器262は、第2切替信号発生器252から入力した切替信号S0の立上がりに対応して時間T0が経過する度に信号チャネルを切り替えることにより、第1位相π/2シフタ231及び第2位相πシフタ222からそれぞれ入力した第3及び第4基本信号B3,B4の一つを順次サンプリングし、2種類の位相で時分割に変調された第2参照信号R2として第2狭帯域フィルタ272に出力する。第2狭帯域フィルタ272は、第2切替器262から入力した第2参照信号R2の低周波成分を除去し、第2参照信号R2を第2ホモダイン処理回路60に出力する。
【0044】
ここで、第2切替器262で位相切替時に発生した第2参照信号R2の低周波成分は、第2狭帯域フィルタ272で位相切替時のノイズ成分として除去されるので、被測定物体10に対する測距値の精度に悪影響を及ぼさない。そのため、第2狭帯域フィルタ272から出力された第2参照信号R2は、位相切替時に周波数のずれを発生させるが、デューティ比を50%で一定に保持している。
【0045】
図3に示すように、第2参照信号R2は、時間T0毎に初期位相をφ0+π/2,φ0+3π/2に順次切り替えた方形波として変調されている。この第2参照信号R2は、簡略化して表示すると4式(8a)〜(8d)に示すようになる。
【0046】
4nT0≦t<(1+4n)T0
1sin(2πf0t+φ0+π/2) (8a)
(1+4n)T0≦t<(2+4n)T0
1sin(2πf0t+φ0+3π/2) (8b)
(2+4n)T0≦t<(3+4n)T0
1sin(2πf0t+φ0+π/2) (8c)
(3+4n)T0≦t<4(n+1)T0
1sin(2πf0t+φ0+3π/2) (8d)
第3切替器263は、第3切替信号発生器253から入力した切替信号S0の立上がりに対応して時間2T0が経過する度に信号チャネルを切り替えることにより、位相αシフタ24及び第2位相π/2シフタ232からそれぞれ入力した第5及び第6基本信号B5,B6の一つを順次サンプリングし、2種類の位相で時分割に変調された駆動信号D0として第3狭帯域フィルタ273に出力する。第3狭帯域フィルタ273は、第3切替器263から入力した駆動信号D0の低周波成分を除去し、駆動信号D0を光源30に出力する。
【0047】
ここで、図4に示すように、第3切替器263で駆動信号D0を生成する際に、例えば、第5基本信号B5とこの第5基本信号B5よりπ/2だけ遅れた位相を有する第6基本信号B6とを切り替えた場合、デューティ比が50%から変化することがある。すなわち、パルスの一周期1/f0内でON状態及びOFF状態の時間比ton:toffが、1:1にならないことがある。そのため、低周波成分が50%からずれたデューティ比の変動量に対応して発生する。
【0048】
しかしながら、このように発生した駆動信号D0の低周波成分は、第3狭帯域フィルタ273で位相切替時のノイズ成分として除去されるので、被測定物体10に対する測距値の精度に悪影響を及ぼさない。なお、この低周波成分は、駆動信号D0の位相切替に同期していることから、より後段で除去することは非常に困難である。そのため、第3狭帯域フィルタ273から出力された駆動信号D0は、位相切替時に周波数のずれを発生させるが、デューティ比を一定に保持している。
【0049】
図3に示すように、駆動信号D0は、時間2T0毎に初期位相をφ0+α,φ0+α+π/2に順次切り替えた方形波として変調されている。この駆動信号D0は、簡略化して表示すると4式(9a)〜(9d)に示すようになる。
【0050】
4nT0≦t<(1+4n)T0
1sin(2πf0t+φ0+α) (9a)
(1+4n)T0≦t<(2+4n)T0
1sin(2πf0t+φ0+α) (9b)
(2+4n)T0≦t<(3+4n)T0
1sin(2πf0t+φ0+α+π/2) (9c)
(3+4n)T0≦t<4(n+1)T0
1sin(2πf0t+φ0+α+π/2) (9d)
第3狭帯域フィルタ273から出力された駆動信号D0は、第1及び第2狭帯域フィルタ271,272から出力された第1及び第2参照信号R1,R2に対して、同一のフィルタ効果を受けている。そのため、駆動信号D0と第1及び第2参照信号R1,R2との間では、フィルタの影響がキャンセルされている。なお、駆動信号D0の基準位相αは、被測定物体10に対する測距範囲に対応して、第1及び第2ホモダイン処理回路50,60に関して後述する第1ホモダイン信号H1及び第2ホモダイン信号H2の各波高を基準値よりも大きくするように設定されている。
【0051】
光源30は、信号発生回路20から入力した駆動信号D0に対応して信号光P0を発生し、信号光P0を被測定物体10に投射する。光検出器40は、被測定物体10で散乱反射された信号光P1を受光し、信号光P1に対応して検出信号M0を前置増幅器41に出力する。この光検出器40の利得は、利得調整回路80から入力した制御信号C0に基づいて可変に設定されている。前置増幅器41は、光検出器40から入力した検出信号M0の振幅を増幅し、検出信号M0を第1及び第2ホモダイン処理回路50,60にそれぞれ出力する。
【0052】
ここで、前置増幅器41から出力された検出信号M0は、二つの信号光P0,P1の移動距離、すなわち、光源30及び被測定物体10間の距離と被測定物体10及び光検出器40間の距離との和に対応して、駆動信号D0の位相よりも検出位相βだけシフトしている。すなわち、検出信号M0は、周波数f0及び振幅A2を有し、時間2T0毎に初期位相をφ0+α+β,φ0+α+β+π/2に順次切り替えた方形波として変調されている。
【0053】
この検出信号M0は、簡略化して表示すると4式(10a)〜(10d)に示すようになる。
【0054】
4nT0≦t<(1+4n)T0
2sin(2πf0t+φ0+α+β) (10a)
(1+4n)T0≦t<(2+4n)T0
2sin(2πf0t+φ0+α+β) (10b)
(2+4n)T0≦t<(3+4n)T0
2sin(2πf0t+φ0+α+β+π/2) (10c)
(3+4n)T0≦t<4(n+1)T0
2sin(2πf0t+φ0+α+β+π/2) (10d)
第1ホモダイン処理回路50は、検出信号M0及び第1参照信号R1を重ね合わせて第1ホモダイン信号H1を生成する第1乗算器51と、第1ホモダイン信号H1の波高を増幅する第1可変利得増幅器52と、第1ホモダイン信号H1の極性を保持する第1極性保持増幅器53と、第1ホモダイン信号H1の極性を反転する第1極性反転増幅器54とで構成されている。
【0055】
第1乗算器51は、前置増幅器41から入力した検出信号M0と信号発生回路20から入力した第1参照信号R1とを重ね合わせた干渉信号を生成し、この干渉信号を第1ホモダイン信号H1として第1可変利得増幅器52に出力する。図5に示すように、第1ホモダイン信号H1は、時間T0毎に位相を切り替えて時分割に変化し、簡略して表示すると4式(11a)〜(11d)に示すように、容易に後処理可能な交流信号となる。
【0056】
Figure 0003748617
第1可変利得増幅器52は、利得調整回路80から入力した制御信号C0に基づいて可変に設定された利得を有し、第1乗算器51から単一の信号ラインで入力した第1ホモダイン信号H1に含まれた相互に異なる4種類の位相成分の波高を単独で順次増幅して、第1極性保持増幅器53及び第1極性反転増幅器54にそれぞれ出力する。
【0057】
第1極性保持増幅器53は、第1可変利得増幅器52から入力した第1ホモダイン信号H1の極性を保持し、第1保持ホモダイン信号H11として位相検出回路70及び利得調整回路80にそれぞれ出力する。第1極性反転増幅器54は、第1可変利得増幅器52から入力した第1ホモダイン信号H1の極性を反転し、第1反転ホモダイン信号H12として位相検出回路70及び利得調整回路80にそれぞれ出力する。
【0058】
ここで、第1ホモダイン信号H1の直流成分は、時間T0毎に4種類の波高I11,I12,I13,I14をステップ状に切り替えたものとなり、簡略化して表示すると4式(12a)〜(12d)に示すようになる。
【0059】
4nT0≦t<(1+4n)T0
11=A12cos(α+β) (12a)
(1+4n)T0≦t<(2+4n)T0
12=−A12cos(α+β) (12b)
(2+4n)T0≦t<(3+4n)T0
13=−A12sin(α+β) (12c)
(3+n)T0≦t<4(n+1)T0
14=A12sin(α+β) (12d)
一方、第2ホモダイン処理回路60は、検出信号M0及び第2参照信号R2を重ね合わせて第2ホモダイン信号H2を生成する第2乗算器61と、第2ホモダイン信号H2の波高を増幅する第2可変利得増幅器62と、第2ホモダイン信号H2の極性を保持する第2極性保持増幅器63と、第2ホモダイン信号H2の極性を反転する第2極性反転増幅器64とで構成されている。
【0060】
第2乗算器61は、前置増幅器41から入力した検出信号M0と信号発生回路20から入力した第2参照信号R2とを重ね合わせた干渉信号を生成し、干渉信号の強度の時間平均を第2ホモダイン信号H2として第2可変利得増幅器62に出力する。図5に示すように、第2ホモダイン信号H2は、時間T0毎に位相を切り替えて時分割に変化し、簡略化して表示すると4式(13a)〜(13d)に示すように、容易に後処理可能な交流信号となる。
【0061】
Figure 0003748617
Figure 0003748617
第2可変利得増幅器62は、利得調整回路80から入力した制御信号C0に基づいて可変に設定された利得を有し、第1乗算器61から単一の信号ラインで入力した第2ホモダイン信号H2に含まれた相互に異なる4種類の位相成分の波高を単独で順次増幅して、第2極性保持増幅器63及び第2極性反転増幅器64にそれぞれ出力する。
【0062】
第2極性保持増幅器63は、第2可変利得増幅器62から入力した第2ホモダイン信号H2の極性を保持し、第2保持ホモダイン信号H21として位相検出回路70及び利得調整回路80にそれぞれ出力する。第2極性反転増幅器64は、第2可変利得増幅器62から入力した第2ホモダイン信号H2の極性を反転し、第2反転ホモダイン信号H22として位相検出回路70及び利得調整回路80にそれぞれ出力する。
【0063】
ここで、第2ホモダイン信号H2の直流成分は、時間T0毎に4種類の波高I21,I22,I23,I24をステップ状に切り替えたものとなり、簡略化して表示すると4式(14a)〜(14d)に示すようになる。
【0064】
4nT0≦t<(1+4n)T0
21=A12sin(α+β)=I14 (14a)
(1+4n)T0≦t<(2+4n)T0
22=−A12sin(α+β)=I13 (14b)
(2+4n)T0≦t<(3+4n)T0
23=A12cos(α+β)=I11 (14c)
(3+4n)T0≦t<4(n+1)T0
24=−A12cos(α+β)=I12 (14d)
位相検出回路70は、切替信号S0に基づいて第1及び第2保持ホモダイン信号H11,H21と第1及び第2反転ホモダイン信号H12,H22とを選択して位相信号E0を生成する第4切替器71と、位相信号E0を直流変換する第1積分器72と、位相信号E0の波高を平滑化して干渉信号の位相情報を測距信号L0として生成する直線性改善回路73とで構成されている。
【0065】
第4切替器71は、信号発生回路20から入力した切替信号S0に対応して時間T0が経過する度に信号チャネルを切り替えることにより、第1及び第2極性保持増幅器53,63と第1及び第2極性反転増幅器54,64とからそれぞれ入力した第1及び第2保持ホモダイン信号H11,H21と第1及び第2反転ホモダイン信号H12,H22との一つを順次サンプリングし、位相信号E0を生成して第1積分器72に出力する。
【0066】
より具体的には、第4切替器71は、正の極性を有し、かつ、駆動信号D0に対して位相差π/2−α,3π/2−αを有する第1及び第2参照信号R1,R2の成分を検出信号M0に重ね合わせて生成されたものを時分割に選択する。すなわち、位相信号E0は、時間T0毎に4種類の波高I21,I22,I13,I14を切り替えたものとなる。
【0067】
第1積分器72は、第4切替器71から入力した位相信号E0を直流変換して直線性改善回路73に出力する。直線性改善回路73は、第1積分器72から入力した位相信号E0の波高を平滑化し、検出信号M0と第1及び第2参照信号R1,R2との間の位相差として第1及び第2ホモダイン信号H1,H2の各位相情報(α+β)を含む測距信号L0として外部の演算回路に出力する。
【0068】
利得調整回路80は、切替信号S0に基づいて第1及び第2保持ホモダイン信号H11,H21と第1及び第2反転ホモダイン信号H12,H22とを選択して強度信号G0を生成する第5切替器81と、強度信号G0を直流変換する第2積分器82と、基準電圧V0を発生する電圧源83と、強度信号G0と基準電圧V0との比に比例した制御信号C0を生成する比較器84とで構成されている。
【0069】
第5切替器81は、信号発生回路20から入力した切替信号S0に対応して時間T0が経過する度に信号チャネルを切り替えることにより、第1及び第2極性保持増幅器53,63と第1及び第2極性反転増幅器54,64とからそれぞれ入力した第1及び第2保持ホモダイン信号H11,H21と第1及び第2反転ホモダイン信号H12,H22との一つとして順次サンプリングし、強度信号G0を生成して第2積分器82に出力する。
【0070】
より具体的には、第5切替器81は、負の極性を有し、かつ、駆動信号D0に対して位相差−α,π−αを有する第1及び第2参照信号R1,R2の成分を検出信号M0に重ね合わせて生成されたものを時分割に選択する。すなわち、強度信号G0は、時間T0毎に4種類の波高I11,I12,I23,I24を切り替えたものとなる。
【0071】
第2積分器82は、第5切替器81から入力した強度信号G0を直流変換して比較器84に出力する。電圧源83は、基準電圧V0を発生して比較器84に出力する。比較器84は、第5切替器81から入力した強度信号G0と電圧源83から入力した基準電圧V0とを比較し、電圧比G0/V0に比例したレベルを有する制御信号C0を生成して光検出器40と第1及び第2ホモダイン処理回路50,60とにそれぞれ出力する。
【0072】
なお、光検出器40と第1及び第2可変利得増幅器52,62との各利得は、第1及び第2保持ホモダイン信号H11,H21と第1及び第2反転ホモダイン信号H12,H22の各波高I11,I12,I23,I24を一定に保持するように制御されることになる。
【0073】
このように、第1及び第2ホモダイン信号H1,H2の最大値及び最小値として各波高I11,I12,I23,I24は、利得調整回路80によって一定値に設定されている。そのため、第1及び第2ホモダイン信号H1,H2の各位相情報(α+β)は、第1及び第2ホモダイン信号H1,H2の各波高I21,I22,I13,I14に基づいて高精度に算出することができる。すなわち、外部の演算回路においては、例えば式(15)に示すように、第1及び第2ホモダイン信号H1,H2の各位相情報(β−α)を算出することができる。このとき、第1及び第2ホモダイン信号H1,H2の各波高間で差を取ることにより、各種増幅器のオフセット誤差を含む利得誤差を除去することができる。
【0074】
tan-1{[(I21−I22)/2]/[(I13−I14)/2]}
=α+β (15)
これにより、信号光P0の発光時と信号光P1の受光時との間の位相差βは、位相αシフタ24によって設定された駆動信号D0の基準位相αに基づいて算出することができる。したがって、光源30及び被測定物体10間の距離と被測定物体10及び光検出器40間の距離との和は、式(16)に示すように計測される。ただし、cは測定光P0,P1の光速である。
【0075】
β・c/(2π・f0) (16)
次に、本実施例の光波距離計の作用について説明する。
【0076】
信号発生回路20は、周波数f0を有し、かつ、2種類の初期位相φ0+α,φ0+α+π/2を周期2T0で切り替える駆動信号D0を光源30に出力する。これにより、光源30は、信号発生回路20から入力した駆動信号D0に対応して信号光P0を、被測定物体10に投射する。そのため、光検出器40は、被測定物体10から入射した信号光P1に対応して周波数f0を有し、かつ、2種類の初期位相φ0+α+β,φ0+α+β+π/2を周期2T0で切り替える検出信号M0を、前置増幅器41を介して第1及び第2ホモダイン処理回路50,60にそれぞれ出力する。
【0077】
信号発生回路20は、駆動信号D0の周波数と同一の周波数f0を有し、かつ、2種類の初期位相φ0,φ0+πを周期T0で切り替える第1参照信号R1を第1ホモダイン処理回路50に出力するとともに、駆動信号D0の周波数と同一の周波数f0を有し、かつ、2種類の初期位相φ0+π/2,φ0+3π/2を周期T0で切り替える第2参照信号R2を第2ホモダイン処理回路60に出力する。
【0078】
これにより、第1及び第2ホモダイン処理回路50,60は、前置増幅器41から入力した検出信号M0と信号発生回路20から入力した第1及び第2参照信号R1,R2とを重ね合わせることにより、この干渉信号として第1及び第2ホモダイン信号H1,H2を生成し、これら第1及び第2ホモダイン信号H1,H2の極性を保持または反転させた第1及び第2保持ホモダイン信号H11,H12と第1及び第2反転ホモダイン信号H21,H22とを位相検出回路70及び利得調整回路80にそれぞれ出力する。
【0079】
ここで、検出信号M0の周波数は、駆動信号D0の周波数f0に一致することから、第1及び第2参照信号R1,R2の各周波数f0と同一である。そのため、第1及び第2ホモダイン信号H1,H2の波高は、ホモダイン技術の原理に基づいて、検出信号M0と第1及び第2参照信号R1,R2との間の位相差に対応してそれぞれ決定されている。
【0080】
また、検出信号M0の位相と第1及び第2参照信号R1,R2の各位相とは、相互に同期して時分割に変調されている。そのため、第1及び第2ホモダイン信号H1,H2の波高は、検出信号M0と第1及び第2参照信号R1,R2との間の位相差の変動に対応して時分割に変動している。したがって、第1及び第2保持ホモダイン信号H11,H12と第1及び第2反転ホモダイン信号H21,H22との各波高は、検出信号M0と第1及び第2参照信号R1,R2との各位相切替に同期して変化している。
【0081】
信号発生回路20は、検出信号M0と第1及び第2参照信号R1,R2との各位相切替に同期した切替信号S0を位相検出回路70及び利得調整回路80にそれぞれ出力する。利得調整回路80は、信号発生回路20から入力した切替信号S0に対応して、第1及び第2ホモダイン処理回路50,60からそれぞれ入力した第1及び第2保持ホモダイン信号H11,H12と第1及び第2反転ホモダイン信号H21,H22との各波高の中で、負の極性を有し、かつ、駆動信号D0に対して位相差−α,π−αを有する第1及び第2参照信号R1,R2の成分を検出信号M0に重ね合わせて生成されたものを、時分割に選択して強度信号G0を生成する。
【0082】
この利得調整回路80は、強度信号G0の波高と基準電圧V0とを比較し、光検出器40と第1及び第2可変利得増幅器52,62との各利得を制御することにより、第1及び第2保持ホモダイン信号H11,H12と第1及び第2反転ホモダイン信号H21,H22との各波高の中で、駆動信号D0に対して位相差−α,π−αを有する第1及び第2参照信号R1,R2の成分に対応したものを、一定値に設定することができる。そのため、信号光P0,P1における光路中の減衰や被測定物体10の反射率などに起因した影響を、第1及び第2保持ホモダイン信号H11,H12と第1及び第2反転ホモダイン信号H21,H22との各波高から除去することができる。
【0083】
一方、位相検出回路70は、信号発生回路20から入力した切替信号S0に対応して、第1及び第2ホモダイン処理回路50,60からそれぞれ入力した第1及び第2保持ホモダイン信号H11,H12と第1及び第2反転ホモダイン信号H21,H22との各波高の中で、正の極性を有し、かつ、駆動信号D0に対して位相差π/2−α,3π/2−αを有する第1及び第2参照信号R1,R2の成分を検出信号M0に重ね合わせて生成されたものを、時分割に選択して位相信号E0を生成し、位相信号E0の波高を平滑化する。
【0084】
このとき、位相検出回路70は、第1及び第2保持ホモダイン信号H11,H12と第1及び第2反転ホモダイン信号H21,H22との各波高の中で、駆動信号D0に対して位相差−α,π−αを有する第1及び第2参照信号R1,R2の成分に対応して一定値に設定されたものに対して、駆動信号D0に対して位相差π/2−α,3π/2−αを有する第1及び第2参照信号R1,R2の成分に対応して生成されたものに基づいて、第1及び第2ホモダイン信号H1,H2の各位相情報(α+β)を検出することができる。
【0085】
ここで、二系統の第1及び第2ホモダイン処理回路50,60は、第1及び第2参照信号R1,R2の位相差π/2に基づいて、干渉信号の位相情報及び利得情報が時間的に補完し合う第1及び第2ホモダイン信号H1,H2を生成する。そのため、位相検出回路70は、干渉信号の位相情報のみを時間的に間欠なく抽出した位相信号E0を生成することができる。また、利得調整回路80は、干渉信号の強度情報のみを時間的に間欠なく抽出した利得信号G0を生成することができる。
【0086】
また、二系統の第1及び第2ホモダイン処理回路50,60は、第1及び第2参照信号R1,R2に基づいてホモダイン処理を並列に実行することから、第1及び第2ホモダイン信号H1,H2の高域成分を減少させる。そのため、位相検出回路70及び利得調整回路80における第1及び第2積分器72,82の各時定数を低減することにより、高速な応答特性を達成することができる。なお、二系統の第1及び第2積分器72,82は、第1及び第2ホモダイン信号H1,H2の波高を交互に加算して平均化することから、第1及び第2ホモダイン処理回路50,60の間の利得誤差を解消することになる。
【0087】
したがって、本実施例の光波距離計は、位相シフト法を利用したホモダイン技術に基づいて、検出信号M0と第1及び第2参照信号R1,R2との間の位相差に対応した信号光P0の発光時と信号光P1の受光時との間の位相差βを高精度に検出するので、被測定物体10に対する測距精度を向上させることができる。
【0088】
このように、本実施例の光波距離計においては、二系統の第1及び第2ホモダイン処理回路50,60を簡単な構成で実現することができる。これらの回路構成を集積化によって外付け部品の少ない1個のIC(Integrated Circuits)として設置した場合、低コスト化を達成することができる。
【0089】
第2実施形態
図6に示すように、本実施形態の光波距離計は、上記第1実施形態とは異なる信号発生回路20の内部構成を発振器21、CPU(Central Processing Unit)90及び記憶装置91に置換しているが、その他に関しては上記第1実施形態と同様にして構成されている。
【0090】
信号発生回路20は、記憶装置91に格納されたプログラムにしたがってCPU90に演算制御を実行させることにより、発振器21で発生した第1基本信号B1に基づいて、駆動信号D0と第1及び第2参照信号R1,R2と切替信号S0とを生成し、これら各種信号を光源30と第1及び第2ホモダイン処理回路50,60と位相検出回路70と利得調整回路80とにそれぞれ出力する。
【0091】
ここで、信号発生回路20は、第1基本信号B1に同期して第1及び第2参照信号R1,R2を生成する際に、ディジタル演算によって4種類の位相切替時にデューティ比を50%で一定に保持させている。このとき、第1及び第2参照信号R1,R2は、第1基本信号B1の周波数f0の1/4倍だけ低い周波数を有する低周波成分を含むが、位相切替周期T0に匹敵する周波数を有する低周波成分を含まない。第1及び第2参照信号R1,R2に含まれた低周波成分は、位相切替周期T0よりも十分に大きい周波数3f0/4を有するので、後段で容易に除去することができる。
【0092】
このように、本実施例の光波距離計においては、信号発生回路20の構成を簡略化することにより、低コスト化が可能となっている。
【0093】
第3実施形態
図7に示すように、本実施形態の光波距離計は、上記第1実施形態とは異なる信号発生回路20の内部構成を発振器21、アドレス発生器92及びROM(Read Only Memory)93に置換しているが、その他に関しては上記第1実施形態と同様にして構成されている。
【0094】
信号発生回路20において、ROM93は、駆動信号D0と第1及び第2参照信号R1,R2と切替信号S0との各信号データをそれぞれ格納している。ここで、各種信号のデータは、4種類の位相切替時にデューティ比を50%で一定に保持した状態で、ROM93にそれぞれ格納されている。
【0095】
アドレス発生回路92は、発振器21から入力した第1基本信号B1に同期してROM93にアドレス指定信号を出力することにより、駆動信号D0と第1及び第2参照信号R1,R2と切替信号S0とをROM93から光源30と第1及び第2ホモダイン処理回路50,60と位相検出回路70と利得調整回路80とにそれぞれ出力する。
【0096】
このように、本実施例の光波距離計においては、信号発生回路20の構成を簡略化することにより、低コスト化が可能となっている。
【0097】
第4実施形態
図8に示すように、本実施形態の光波距離計は、上記第1実施形態とは異なる信号発生回路20の内部構成を発振器21、アドレス発生器92、記憶装置94及びRAM(Random Access Memory)95に置換しているが、その他に関しては上記第1実施形態と同様にして構成されている。
【0098】
信号発生回路20において、記憶装置94は、駆動信号D0と第1及び第2参照信号R1,R2と切替信号S0との各信号データを初期値としてそれぞれ格納している。ここで、各種信号のデータは、4種類の位相切替時にデューティ比を50%で一定に保持した状態で、記憶装置94にそれぞれ格納されている。RAM95は、起動時に各種信号のデータを記憶装置94から読み出して格納している。
【0099】
アドレス発生回路92は、発振器21から入力した第1基本信号B1に同期してRAM95にアドレス指定信号を出力することにより、駆動信号D0と第1及び第2参照信号R1,R2と切替信号S0とをRAM95から光源30と第1及び第2ホモダイン処理回路50,60と位相検出回路70と利得調整回路80とにそれぞれ出力する。
【0100】
このように、本実施例の光波距離計においては、信号発生回路20の構成を簡略化することにより、低コスト化が可能となっている。
【0101】
第5実施形態
図9に示すように、本実施形態の光波距離計は、上記第1実施形態とは異なって一系統の第1ホモダイン処理回路50を失うとともに、信号発生回路20の内部を簡略しているが、その他に関しては上記第1実施形態と同様にして構成されている。信号発生回路20は、第1位相πシフタ221、第1切替信号発生器251、第1切替器261及び第1狭帯域フィルタ271を失い、第1参照信号R1を出力することなく、第2参照信号R2を第2ホモダイン処理回路60に出力している。
【0102】
第2ホモダイン処理回路60のみが、前置増幅器41から入力した検出信号M0と信号発生回路20から入力した第2参照信号R2とを重ね合わせることにより、この干渉信号として第2ホモダイン信号H2を生成し、この第2ホモダイン信号H2の極性を保持または反転させた第2保持ホモダイン信号H12と第2反転ホモダイン信号H22とを位相検出回路70及び利得調整回路80にそれぞれ出力する。
【0103】
利得調整回路80は、信号発生回路20から入力した切替信号S0に対応して、第2ホモダイン処理回路60から入力した第2保持ホモダイン信号H12及び第2反転ホモダイン信号H22の各波高の中で、負の極性を有し、かつ、駆動信号D0に対して位相差−α,π−αを有する第1及び第2参照信号R1,R2の成分を検出信号M0に重ね合わせて生成されたものを、時分割に選択して強度信号G0を生成し、強度信号G0の波高と基準電圧V0とを比較し、光検出器40及び第2可変利得増幅器62の各利得を制御する。
【0104】
一方、位相検出回路70は、信号発生回路20から入力した切替信号S0に対応して、第2ホモダイン処理回路60から入力した第2保持ホモダイン信号H12及び第2反転ホモダイン信号H22の各波高の中で、正の極性を有し、かつ、駆動信号D0に対して位相差π/2−α,3π/2−αを有する第1及び第2参照信号R1,R2の成分を検出信号M0に重ね合わせて生成されたものを、時分割に選択して位相信号E0を生成し、位相信号E0の波高を平滑化して第2ホモダイン信号H2の位相情報(α+β)を含む測距信号L0を出力する。
【0105】
ここで、一系統の第2ホモダイン処理回路60は、駆動信号D0及び第2参照信号R2の時分割な位相変調に基づいて、干渉信号の位相情報及び強度情報がタイムラグを生じる第2ホモダイン信号H2を生成する。そのため、位相検出回路70は、干渉信号の位相情報を断続的に抽出して位相信号E0を生成することができる。また、利得調整回路80は、干渉信号の強度情報を断続的に抽出して利得信号G0を生成することができる。
【0106】
このように、本実施例の光波距離計においては、一系統の第2ホモダイン処理回路60のみを設置することにより、ハードウエアの構成の簡略化によって低コスト化が可能となっている。
【0107】
第6実施形態
図10に示すように、本実施形態の光波距離計は、上記第5実施形態における第2ホモダイン処理回路60の第2極性保持増幅器63及び第2極性反転増幅器と位相検出回路70及び利得調整回路80とをA/D変換器100及び第1コンピュータ110に置換しているが、その他に関しては上記第5実施形態と同様にして構成されている。
【0108】
第2ホモダイン処理回路60は、前置増幅器41から入力した検出信号M0と信号発生回路20から入力した第2参照信号R2とを重ね合わせることにより、この干渉信号として第2ホモダイン信号H2を生成してA/D(Analogue/Digital)変換器100に出力する。A/D変換器100は、第2ホモダイン処理回路60から入力した第2ホモダイン信号H2をA/D変換して第1コンピュータ110に出力する。
【0109】
図11に示すように、第1コンピュータ110は、切替信号S0及び第2ホモダイン信号H2を取り込む入力装置111と、切替信号S0に基づいて第2保持ホモダイン信号H21の波高を選択して測距信号L0及び強度信号G0を生成するCPU112と、測距信号L0及び強度信号G0を取り出す出力装置113と、CPU112の演算制御で使用される命令やデータなどを記憶する記憶装置114とで構成されている。
【0110】
ここで、記憶装置114のメモリ領域は、演算処理中のデータやアドレスなどを格納する一時記憶エリアと、第2ホモダイン信号H2の位相情報から算出した測距データを格納する測距値記憶エリア116と、第2ホモダイン信号H2の強度情報から算出した利得データを格納する利得値記憶エリア117とを含んで構成されている。
【0111】
第1コンピュータ110は、信号発生回路20から入力装置111に入力した切替信号S0に対応して、A/D変換器100から入力装置111に入力した第2ホモダイン信号H2の波高データを一時記憶エリア115に順次格納する。続いて、第1コンピュータ110は、一時記憶エリア115に格納された第2ホモダイン信号H2の波高データの中で、駆動信号D0に対して位相差π/2−α,3π/2−αを有する第1及び第2参照信号R1,R2の成分を検出信号M0に重ね合わせて生成されたものに基づいて、光源30及び被測定物体10間の距離と被測定物体10及び光検出器40間の距離との和を算出して測距値データとして測距値記憶エリア116に格納する。
【0112】
一方、第1コンピュータ110は、一時記憶エリア115に格納された第2ホモダイン信号H2の波高データの中で、駆動信号D0に対して位相差−α,π−αを有する第1及び第2参照信号R1,R2の成分を検出信号M0に重ね合わせて生成されたものを基準値に比較し、利得データを生成して利得値記憶エリア117に格納する。続いて、第1コンピュータ110は、利得値記憶エリア117に格納された利得データを出力装置113から光検出器40及び第2ホモダイン処理回路60に出力し、光検出器40及び可変利得増幅器62の各利得を制御する。
【0113】
このように、本実施例の光波距離計においては、第1コンピュータ110が位相検出機能及び利得調整機能を内蔵することから複雑な内部処理を行うが、ハードウエアの構成を簡略化することによって低コスト化が可能となっている。
【0114】
第7実施形態
図12に示すように、本実施形態の光波距離計は、上記第6実施形態における信号処理回路20及び第1コンピュータ110を第2コンピュータ120に置換しているが、その他に関しては上記第6実施形態と同様にして構成されている。図13に示すように、第2コンピュータ120は、第1基本信号B1を発生する発振器21を、第1コンピュータ110に内蔵して構成されている。
【0115】
第2コンピュータ120は、発振器21で発生した第1基本信号B1に基づいて、駆動信号D0、第2参照信号R2及び切替信号S0を生成し、駆動信号D0及び第2参照信号R2を出力装置113から光源30及び第2ホモダイン処理回路60にそれぞれ出力する。そして、第2コンピュータ120は、切替信号S0に対応して、A/D変換器100から入力装置111に入力した第2ホモダイン信号H2の波高データを一時記憶エリア115に順次格納する。
【0116】
ここで、第2コンピュータ120は、一時記憶エリア115に格納された第2ホモダイン信号H2の波高データの中で、駆動信号D0に対して位相差π/2−α,3π/2−αを有する第1及び第2参照信号R1,R2の成分を検出信号M0に重ね合わせて生成されたものに基づいて、光源30及び被測定物体10間の距離と被測定物体10及び光検出器40間の距離との和を算出して測距値データとして測距値記憶エリア116に格納する。
【0117】
一方、第2コンピュータ120は、一時記憶エリア115に格納された第2ホモダイン信号H2の波高データの中で、駆動信号D0に対して位相差−α,π−αを有する第1及び第2参照信号R1,R2の成分を検出信号M0に重ね合わせて生成されたものを基準値に比較し、利得データを生成して利得値記憶エリア117に格納する。続いて、第1コンピュータ110は、利得値記憶エリア117に格納された利得データを出力装置113から光検出器40及び第2ホモダイン処理回路60に出力し、光検出器40及び可変利得増幅器62の各利得を制御する。
【0118】
このように、本実施例の光波距離計においては、第2コンピュータ120が信号発生機能、位相検出機能及び利得調整機能を内蔵することから複雑な内部処理を行うが、ハードウエアの構成を簡略化することによって低コスト化が可能となっている。
【0119】
ここで、本発明は上記諸実施形態に限られるものではなく、種々の変形を行うことが可能である。
【0120】
例えば、上記諸実施形態においては、干渉信号を生成するために相互に重ね合わせる検出信号と二つの参照信号とは、4種類の位相差を生じる位相変調を時分割に施されている。しかしながら、干渉信号の波高を表す理論式は、検出信号の振幅と、参照信号の振幅と、検出信号と参照信号との間の位相差とからなる3変数を含むことから、少なくとも3種類の位相変調を時分割に施された二つの参照信号を用いることより、上記諸実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0121】
上記第1実施形態においては、発振器と光源との間に狭帯域フィルタが設置されている。しかしながら、光源側または光検出器側のいずれに狭帯域フィルタを設置することにより、二つの参照信号に与えたフィルタ効果と同一の影響を検出信号に与えればよい。なお、このような狭帯域フィルタを設置しない場合、よりいっそう低コスト化を達成することができる。
【0122】
上記第6実施形態においては、信号発生回路が駆動信号及び参照信号の位相切替時を示す切替信号を発生してコンピュータに出力している。しかしながら、コンピュータがこの切替信号を発生して信号発生回路に出力してもよい。
【0123】
上記第6及び第7実施形態においては、コンピュータによって光検出器とホモダイン処理回路の可変利得増幅器との各利得を制御している。しかしながら、コンピュータ内部のデジタル演算で測距値を算出することから、光検出器及び可変利得増幅器の利得制御は必須ではない。このような利得制御を行わない場合、非測定物体に対する測距範囲に対応したダイナミックレンジを確保できないことが生じるが、処理時間の短縮によって高速応答を達成することができる。
【0124】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明の光波距離計においては、信号発生回路は、少なくとも3種類の位相差を生じさせた状態で、相互に異なる位相変調を周期的に施した駆動信号及び参照信号を光源及びホモダイン処理回路にそれぞれ出力する。これにより、光源が駆動信号に対応した信号光を発生して被測定物体に照射すると、光検出器が被測定物体で散乱反射されて受光した信号光に対応した検出信号をホモダイン処理回路に出力する。
【0125】
このとき、ホモダイン処理回路は、検出信号と参照信号とを重ね合わせることにより、干渉信号を生成して位相検出回路に出力する。ここで、参照信号及び検出信号は、同一の周波数を有するとともに、相互に異なる位相変調によって時分割に変動した少なくとも3種類の位相差を有する。そのため、干渉信号は、検出信号と参照信号との間の位相差に対応して少なくとも3つの波高を有し、参照信号の位相切替に同期して周期的に変動している。
【0126】
そして、位相検出回路は、ホモダイン技術の原理に基づいて、駆動信号及び参照信号の位相差切替に対応して、ホモダイン処理回路から入力した干渉信号の波高を相互に比較する。そのため、位相検出回路は、位相シフト法に基づいて、異なる干渉信号の波高間のレベル比に対応した検出信号及び参照信号の位相差のみを検出する。
【0127】
また、駆動信号の位相を切り替える際に同期して発生した低周波成分は、光源によって信号光を発生する際に除去されるので、光検出器で生成された検出信号は、低周波成分による影響から排除されている。したがって、この光波距離計は、信号光の発光時と受光時との間の位相差を高精度に検出することにより、被測定物体に対する測距精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光波距離計の回路構成を示すブロック図である。
【図2】図1の光波距離計に設置された信号発生回路の構成を示すブロック図である。
【図3】図2の信号発生回路から出力された各種信号の波形を示すタイミングチャートである。
【図4】図2の信号発生回路で生成された参照信号のデューティ比調整を示すタイミングチャートである。
【図5】図1の光波距離計に設置されたホモダイン処理回路から出力された強度信号の波形を示すタイミングチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態に係る光波距離計に設置された信号発生回路の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る光波距離計に設置された信号発生回路の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る光波距離計に設置された信号発生回路の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係る光波距離計の回路構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第6実施形態に係る光波距離計の回路構成を示すブロック図である。
【図11】図10の光波距離計に設置されたコンピュータの内部構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の第7実施形態に係る光波距離計の回路構成を示すブロック図である。
【図13】図12の光波距離計に設置されたコンピュータの内部構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
10…測定対象物、20…信号発生回路、30…光源、40…光検出器、50,60…ホモダイン処理回路、70…位相検出回路、80…利得調整回路。

Claims (8)

  1. 基本信号に相互に異なる位相変調をそれぞれ施すことにより、同一の周波数を有する駆動信号及び参照信号をそれぞれ発生し、前記駆動信号と前記参照信号との間に少なくとも3種類の位相差を生じさせる信号発生回路と、
    この信号発生回路から入力した前記駆動信号に基づいて発生させた信号光を被測定物体に投射する光源と、
    前記被測定物体で散乱反射されて入射した前記信号光に基づいて検出信号を生成する光検出器と、
    この光検出器から入力した前記検出信号と前記信号発生回路から入力した前記参照信号とを重ね合わせた干渉信号を生成するホモダイン処理回路と、
    このホモダイン処理回路から入力した前記干渉信号の波高を前記駆動信号及び前記参照信号の少なくとも3種類の位相差切替に対応して相互に比較し、前記信号光の発光時と受光時との間の位相差を検出する位相検出回路とを備え、前記信号発生回路は、位相差πを有する2種類の位相変調を第1周期で前記基本信号に施して前記参照信号を生成するとともに、所定値の位相差を有する2種類の位相変調を前記第1周期の2倍に一致した第2周期で前記基本信号に施して前記駆動信号を生成する回路構成を含むことを特徴とする光波距離計。
  2. 前記信号発生回路は、前記駆動信号の変調成分の位相差を調整することにより、前記被測定物体に対する測距範囲に対応して前記干渉信号の波高を基準値以上に設定させる回路構成を含むことを特徴とする請求項1記載の光波距離計。
  3. 前記位相検出回路は、前記信号発生回路における前記駆動信号及び前記参照信号の少なくとも3種類の位相差切替に同期して、前記ホモダイン処理回路から入力した前記干渉信号を選択することにより、前記干渉信号の位相情報を含む位相信号を生成する切替器と、この切替器から入力した前記位相信号を直流変換する積分器とを含むことを特徴とする請求項1または請求項2記載の光波距離計。
  4. 前記信号発生回路は、前記駆動信号及び前記参照信号の少なくとも3種類の位相差切替時にデューティ比を50%で一定に保持する回路構成を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載の光波距離計。
  5. 前記信号発生回路は、前記駆動信号及び前記参照信号の少なくとも3種類の位相差切替に同期した低周波成分を除去する狭帯域フィルタを含むことを特徴とする請求項4記載の光波距離計。
  6. 前記信号発生回路は、前記参照信号として第1参照信号を発生するとともに、前記第1参照信号の位相をπ/2だけシフトした第2参照信号をさらに発生する回路構成を含むとともに、前記ホモダイン処理回路は、前記光検出器から入力した前記検出信号に対して、前記信号発生回路から入力した前記第1及び第2参照信号をそれぞれ乗じる処理を並列して実行する2系統の回路構成を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一つに記載の光波距離計。
  7. 前記信号発生回路は、前記基本信号として第1基本信号を発生する発振器と、この発振器から入力した前記第1基本信号の位相をπだけシフトした第2基本信号を生成する第1位相シフタと、前記第1基本信号の周期よりも大きい周期を有する第1切替信号を発生する第1切替信号発生器と、この第1切替信号発生器から入力した前記第1切替信号に基づいて、前記発振器及び前記第1位相シフタからそれぞれ入力した前記第1及び第2基本信号の一つを順次選択して前記第1参照信号を生成する第1切替器と、前記発振器から入力した前記第1基本信号の位相をπ/2だけシフトした第3基本信号を生成する第2位相シフタと、この第2位相シフタから入力した前記第3基本信号の位相をπだけシフトした第4基本信号を生成する第3位相シフタと、前記第1基本信号と同期した第2切替信号を発生する第2切替信号発生器と、この第2切替信号発生器から入力した前記第2切替信号に基づいて、前記第2及び第3位相シフタからそれぞれ入力した前記第3及び第4基本信号の一つを順次選択して前記第2参照信号を生成する第2切替器とを含むことを特徴とする請求項6記載の光波距離計。
  8. 前記ホモダイン処理回路から入力した前記干渉信号に基づいて、前記光検出器及び前記ホモダイン処理回路の各利得を調整することにより、前記干渉信号の波高の最小値及び最大値を一定に設定させる利得調整回路をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一つに記載の光波距離計。
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