JP3746581B2 - 陶磁器用坏土とこれを用いた成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、陶磁器用坏土とこれを用いた成形体に関し、より詳しくは、陶磁器の原料として廃棄ガラスを再利用するための陶磁器用坏土に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年になり、資源の有効利用を図ることが望まれており、使用済みのガラス瓶、自動車のフロントガラス等を陶磁器製品に再利用する技術が種々提案されている(特開平7−81956,特開平7−138036等)。ところで、以下に説明するようにガラスは加熱温度に対して敏感にその形態が変化する性質を有することから、上記した従来の技術では、陶磁器製品にガラスを再利用する際に、ガラス質原料を粘土質原料や陶長石等の他の陶磁器用原料と併用することが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ガラス質原料を粒子状として加熱する場合、ガラス質原料粒子の熔融温度や熔融状態は、粒子径に大きく左右される。より詳述すると、ガラス質原料粒子が約20μm程度の微細粒子である場合には、ガラス質原料粒子は、比較的低温において熔化し始め、当該温度からわずかな温度上昇で急速に熔化が進行して粒子形状を喪失する。これより粒径が大きい粗粒子(約500μm)の場合は、微細粒子に比べてやや高い温度で熔化が始まるが、この熔化は粒子の表面部において起きるため、粒子内部にまで熔化を起こして粒子形状の喪失を起こすには、長時間の加熱処理と更なる温度上昇が必要となる。即ち、ガラス質原料粒子の粒径を大きくすれば、熔化を開始する温度を高くできると共に、粒子形状を保つ温度幅等を広げることができる。従って、ガラスを陶磁器製品に再利用する際に粒径調製をすれば、加熱温度幅を広げて焼成時の形状安定性が見かけ上広がることになる。しかし、粒径調製を通して拡張したこの温度幅(焼成温度幅)は、陶磁器製品を焼成する際に通常起きる温度変動幅、具体的には炉内温度の変動幅よりも狭いので、ガラス質原料粒子の粒度調製だけでは焼成時の形状安定性、即ち熱安定性を確保するための現実的な解決にはならない。
【0004】
このため、上記した従来の技術では、既述したように、ガラス質原料を粘土質原料や陶長石等の他の陶磁器用原料と併用し、この粘土質原料等で以下のようにして熱安定性の確保がなされていた。ガラス質原料を粘土質原料等と併用して得た成形品を加熱すると、ガラス質原料と粘土質原料等とでは前者の方が熔化性が高く低い温度で熔化するため、まず、ガラス質原料粒子が熔化を始める。一方、粘土質原料等の粒子は、この熔化したガラス質原料で取り囲まれ、その後の温度上昇を経て始めて熔化し、全体がガラス状態となって結合し、冷却により結晶化する。よって、粘土質原料等を併用すると、比較的低い温度からのガラス質原料の熔化、これより高い温度での粘土質原料等の熔化が起きるので、この粘土質原料等が焼成安定剤として機能して焼成温度幅が広がり、焼成時の形状安定性、熱安定性を高めることができるのである。
【0005】
しかしながら、粘土質原料等を焼成安定剤として併用しても、ガラス質原料が含まれている都合上、焼成温度幅の広がりには限度がある。よって、焼成感度幅がガラス質原料を用いない通常の陶磁器製品と同程度まで広がることはないので、焼成して得られた陶磁器製品に、製品寸法のばらつきや変形或いは質感のばらつき等の不具合が起きることがあった。特に、各種原料の粒子が粗粒子の場合や、粒子の凝集体が起きている場合或いは各原料粒子が均一に分散されていないような場合では、熔化したガラス質原料で他の原料粒子を取り囲んでこの他の原料粒子が熔化することが局所的に起きにくくなったり、ガラス質原料粒子の凝集箇所での異常反応が起きたりする。このため、陶磁器製品の吸水率増大や強度低下を招いたり、生地にふくれや煮え等を起こして外観欠点を招くこともあった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされ、廃棄ガラス等のガラス質原料を陶磁器の原材料として再利用する上で、熱安定性に優れ焼成において高強度を与える陶磁器用坏土とこれを用いた成形体、延いては陶磁器製品を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
かかる課題を解決するため、第1の発明の陶磁器用坏土は、
複数種の原料を含有した陶磁器用坏土であって、
前記原料として、少なくとも、ガラス質原料並びに粘土質原料と、陶磁器の焼成過程において熔化する前記ガラス質原料と粘土質原料のガラス熔融マトリックス中で熔化することなく結晶質を維持する非熔化性原料とを含有し、
前記非熔化性原料は、セルベン、キラ、フライアッシュ、焼却灰の溶融スラグを除く非熔化性原料であって、研磨剤廃棄物、高炉スラグ等の産業廃棄物に含有されている酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム等の高融点を有する化合物とされ、
前記ガラス質原料は、少なくとも一部が廃棄ガラスとされていることを特徴とする。
【0008】
上記構成を有する第1の発明の陶磁器用坏土では、陶磁器製品製造時の焼成過程において、まず最初に熔化したガラス質原料で粘土質原料や非熔化性原料が取り囲まれ、その後の温度上昇を経て熔化した粘土質原料と既に熔化済みのガラス質原料とで非熔化性原料が取り囲まれる。この際、粘土質原料とガラス質原料とは全体でガラス状態となって、両原材料からなるガラス熔融マトリックスとなる。そして、非熔化性原料は、このガラス熔融マトリックス中において熔化することなく結晶質を維持したままであり、マトリックスにおけるフィラーとして存在する。従って、この第1の発明の陶磁器用坏土によれば、ガラス質原料に遅れて熔化する粘土質原料による焼成安定機能と、熔化せず結晶質を維持したままフィラーとなる非熔化性原料による高い焼成安定機能とを併せて発揮して焼成温度幅をより拡張でき、焼成時の十分な形状安定性並びに熱安定性を得ることができる。そして、このように熱安定性が高いことから、製品寸法のばらつき等の不具合を回避することができる。また、焼結完了後には、粘土質原料とガラス質原料の両原材料からなり焼成過程ではガラス熔融マトリックス状であった組成部分が結合並びに結晶化した固体マトリックスに変容し、この固体マトリックスに非熔化性原料がフィラーとして存在する複合材構造となるので、高い熱安定性と相俟って高強度の陶磁器製品を得ることができる。
この場合、ガラス質原料を少なくとも一部が廃棄ガラスとされているものとしたので、廃棄ガラスの再利用効率を向上することができると共に、熱安定性に優れ高強度の陶磁器製品を製造可能な陶磁器用坏土を安価な廃棄ガラスを用いて低コストで得ることができる。
また、上記のような非熔化性原料を含有させるに際し、この非熔化性原料として、セルベン、キラ、フライアッシュ、焼却灰の溶融スラグを除く非熔化性原料であって、研磨剤廃棄物、高炉スラグ等の産業廃棄物に含有されている酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム等の高融点を有する化合物を採用した。この酸化アルミニウムや酸化ジルコニウム等は、研磨盤等を使用した際に生じる砥石の微細粉や研磨液剤等の研磨剤廃棄物や高炉スラグ等に微細粒子の状態で含まれている。このため、今まで廃棄処分や土中投棄処分されていた研磨剤廃棄物や高炉スラグ等を、熱安定性に優れた高強度の陶磁器製品製造用の坏土として再利用することができる。
【0009】
なお、この第1の発明の陶磁器用坏土にあっては、従前の坏土と同様に、原料の粉砕・混合、脱水、ねかし、混練等の坏土調製処理を受けていることは勿論である。
【0010】
上記の構成を有する第1の発明の陶磁器用坏土において、以下の種々の態様を採ることができる。第1の態様は、
前記ガラス質原料は約1〜85重量部、前記粘土質原料は約5〜70重量部、前記非熔化性原料は約1〜30重量部である。
【0011】
この第1の態様によれば、ガラス質原料を約1重量部以上とすることで、ガラス質原料を他の原料である粘土質原料と非熔化性原料を取り囲む熔化材として機能させることができ好ましい。また、ガラス質原材料を約85重量部以下とすれば、形状安定性や熱安定性に寄与する粘土質原料と非熔化性原料の配合量が少なすぎることがないので、確実に形状安定性や熱安定性を確保することができる。粘土質原料を約5重量部以上とすれば、陶磁器製品の成形時に好適にバインダーとして機能させることができ好ましい。また、粘土質原料を約70重量部以下とすれば、成形時の脱型膨張を控えることができキレ等の生地欠陥を招かず好ましいと共に、ガラス質原料と非熔化性原料の配合割合を過多に減少させることがなく好ましい。特に、粘土質原料が10〜60重量部であれば、粘土質原料の過不足がなく好適に成形安定性と焼成安定性機能を発揮でき、より好ましい。非熔化性原料を約1重量部以上とすれば、非熔化性原料の分散を過多に疎とすることがないので、熱安定性と高強度化を図ることができる。また、非熔化性原料を約30重量部以下とすれば、非熔化性原材料を過度に陶磁器製品表面に露出させないので、無施釉の陶磁器製品の表面の汚れの固着を抑制できる。なお、この非熔化性材料は、確実な熱安定性と高強度化を図りつつ汚れを抑制する観点から、約3〜25重量部であることがより好ましい。
【0012】
この場合、ガラス質原料と粘土質原料並びに非熔化性原料は、上記した重量部範囲で適宜その配合の程度が定まるが、ガラス質原料の配合の程度でこのガラス質原料と粘土質原料の熔化の状態が異なる。よって、各原料の配合の程度に応じて、適宜、焼成温度が選択される。焼成温度を低くした場合は、焼成温度の低温化によるCO2 排出量削減効果を得ることができ好ましい。また、ガラス質原料の配合程度を多くすれば、具体的にはガラス質原料をできるだけ85重量部に近い配合程度とすれば、ガラス質原料として廃棄ガラスを用いる場合の再利用効率が高まり好ましい。
【0013】
第2の態様は、
第1の発明の陶磁器用坏土において、
前記原料として、長石、陶石等の陶磁器原料を更に含有する。
【0014】
この第2の態様では、粘土質原料等に加えて含有し陶磁器原料が、先に熔化したガラス質原料で粘土質原料と同様に取り囲まれ、その後の温度上昇を経て熔化して結晶性を失い、ガラス質原料および粘土質原料と共にガラス熔融マトリックスとなる。このため、第2の態様によれば、新たに加えた陶磁器原料によっても焼成安定機能を発揮でき、焼成時の十分な形状安定性並びに熱安定性を得ることができる。つまり、一般的な陶磁器原料を粘土質原料と併用できる。
【0015】
第3の態様は、上記の第2の態様の陶磁器用坏土において、
前記ガラス質原料は約1〜85重量部、前記粘土質原料は約5〜70重量部、前記非熔化性原料は約1〜30重量部、前記陶磁器原料は約1〜70重量部である。
【0016】
この第3の態様によれば、ガラス質原料、粘土質原料および非熔化性原料については、上記の第1の態様と同一の配合とすることで、これらそれぞれの原料の上記機能を好適に発現させることができる。そして、陶磁器原料については、約1〜70重量部であれば、このように陶磁器原料を配合する分だけ粘土質原料やガラス質原料の配合を少なくできる。そして、この陶磁器原料を約70重量部以下とすれば、他の原料を上記した範囲の割合が配合できることから、熔化してガラス状態となる原材料同士の反応に著しい偏りを生じさせないので、熱安定性を損なうことがない。この場合、他の原料をできるだけ多く配合する上で、陶磁器原料が約1〜60重量部であることがより好ましい。
【0017】
第4の態様は、上記の第1の発明において、
前記ガラス質原料と前記粘土質原料のそれぞれの粒子が前記非熔化性原料の粒子を取り囲んで該粒子の周囲に付着するよう、前記ガラス質原料と前記粘土質原料と前記非熔化性原料を分散して含有したものとすることができる。
【0018】
また、第5の態様は、上記の第2の態様の陶磁器用坏土において、
前記ガラス質原料と前記粘土質原料および前記陶磁器原材料のそれぞれの粒子が前記非熔化性原料の粒子を取り囲んで該粒子の周囲に付着するよう、前記ガラス質原料と前記粘土質原料と前記非熔化性原料および前記陶磁器原料を分散して含有したものとすることができる。
【0019】
これら態様では、図1に各原料粒子の様子を模式的に示すように、非熔化性原料の粒子を取り囲んでガラス質原料と粘土質原料若しくは陶磁器原材料のそれぞれの粒子がその周囲に付着して、各原料粒子が分散されている。このため、熔化したガラス質原料による他の原料粒子の取り囲みが均一に起き、その後の粘土質原料若しくは陶磁器原料の熔化も均一に起こる。また、ガラス質原料粒子の凝集がなく異常反応も起きなくなる。よって、これら態様によれば、陶磁器製品の吸水率増大や強度低下を招くことがないと共に、生地にふくれや煮え等が起きず外観欠点を招かない。
【0020】
第6の態様は、上記の第1の発明および各態様の陶磁器用坏土において、
前記ガラス質原料、粘土質原料、非熔化性原料および陶磁器原料は、平均粒径が約1〜50μmの粒子として調製されているものとすることができる。
【0021】
この第6の態様では、それぞれの原料の粒子が平均粒径で約1〜50μmと微細であることから、速やか且つ最先にガラス質原料を熔化させることと、その後の粘土質原料並びに陶磁器原料の熔化を速やかに進行させ、且つこれら原料を粒子内部まで総て熔化させてガラス熔融マトリックスとする。しかも、上記のように微細粒子であることから、焼結後の組織を緻密化する。また、各原料の粒径が所定粒径範囲で揃っていることから、それぞれの原料の熔化並びにガラス熔融マトリックス化とその後の結晶生成をほぼ均一に進行させることができる。よって、第6の態様によれば、強固な結合体とすることを通して、陶磁器製品の強度をより高めることができる。
【0026】
第2の発明は、
焼成を受けて陶磁器製品とされる成形体であって、
上記の第1の発明又は各態様の陶磁器用坏土を用い、前記陶磁器製品形状をなすよう成形されたものである。
【0027】
この第2の発明の成形体によれば、用いる陶磁器用坏土の上記した性質(焼成時の十分な形状安定性並びに熱安定性)により、高品質で高強度の陶磁器製品を得ることができる。
【0028】
この第2の発明の成形体の第1の態様は、
約700〜1300度で加熱して焼成を受けるものとすることができる。
【0029】
この第1の態様の成形体では、焼成の際に約700度以上の温度で加熱されることで、ガラス質原料を十分に熔化させることができる。よって、ガラス質原料と粘土質原料の熔融マトリックス化の確実な進行とその後の結晶化および非熔化性原料をフィラーとした複合材構造化を通して、高強度の陶磁器製品を得ることができる。また、焼成の際の温度を約1300度以下としたので、ガラス質原料と粘土質原料および陶磁器原料の急激な熔化の進行を抑制するので、焼成時の形状安定性を確保することができる。よって、寸法バラツキ等のない高品質の陶磁器製品を得ることができる。
【0030】
【発明の他の態様】
本発明は、以下のよう他の態様を採ることも可能であり、第1の他の態様は、陶磁器用坏土の製造方法であって、
ガラス質原料と、粘土質原料と、陶磁器原料と、陶磁器の焼成過程において熔化する前記ガラス質原料と粘土質原料と陶磁器原料のガラス熔融マトリックス中で熔化することなく結晶質を維持する非熔化性原料として、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム等の高融点を有する化合物を含有する研磨剤廃棄物、高炉スラグ等の産業廃棄物とを、粒度調整を経て準備する工程と、前記ガラス質原料と粘土質原料と陶磁器原料と前記産業廃棄物を混合して、前記ガラス質原料と粘土質原料と陶磁器原料と非熔化性原料とを分散させる工程と
を有する。
【0031】
上記構成を有する他の態様の陶磁器用坏土の製造方法によれば、産業廃棄物が含有する酸化アルミニウム等を非熔化性原料として有し、その他にガラス質原料と粘土質原料と陶磁器原料を含有してなる陶磁器用坏土を製造できる。そして、ガラス質原材料を廃棄ガラスともできるので、この他の態様の陶磁器用坏土の製造方法によれば、廃棄ガラスの再利用と熱安定性に優れた高強度の陶磁器製品の製造に用いることのできる陶磁器用坏土を得ることができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づき説明する。
【0033】
▲1▼第1実施例
この実施例では、ガラス質原料として廃棄ガラスを用い、非熔化性原料は、金属アルミ製造プラントにおけるアルミ高炉から排出され、酸化アルミニウム(アルミナ)を約90wt%含有するアルミ残灰から調達した。まず、廃棄ガラス70重量部、粘土20重量部、上記のアルミ残灰10重量部をそれぞれ秤量し調合する。なお、非熔化性原料としてのアルミナは、換算して約9重量部となる。次いで、この調合物を、平均粒径が約30μmとなるようにボールミルで湿式粉砕混合し、上記の各原料の粒子が均一に分散された泥しょうを取得した。続いて、この泥しょうをスプレードライヤーにかけ、上記の粒径で各原材料が分散された第1実施例の陶磁器用坏土を調製した。この場合、含水率は約7%に調製した。
【0034】
そして、この第1実施例の陶磁器用坏土を、15x15x2cmの金型に充填し、250kgf/cm2 で加圧成形して乾燥させ、陶磁器成形体(板状体)を得た。次いで、この成形体を、RHK(ローラーハースキルン)にて最高温度約850度で90分間焼成して、第1実施例の陶磁器製品を得た。得られた陶磁器製品は、外観欠点もなく、寸法も安定したものであった。また、その物理的な性質は、吸水率が約0.3%、焼成による収縮率が約8.0%,曲げ強度は約4200N/cm2 であった。また、焼成温度が約20度程度の範囲で変動した場合でも、同様の物性の陶磁器製品が得られた。
【0035】
▲2▼第2実施例
この実施例では、ガラス質原料として廃棄ガラスを用い、非熔化性原料は、上記の第1実施例と同様、アルミナを約90wt%含有するアルミ残灰から調達した。まず、廃棄ガラス50重量部、粘土40重量部、上記のアルミ残灰10重量部、赤色顔料1重量部をそれぞれ秤量し調合する。この場合のアルミナも、換算して約9重量部となる。次いで、この調合物を、平均粒径が約35μmとなるようにボールミルで湿式粉砕混合し、上記の各原料の粒子が均一に分散された泥しょうを取得した。続いて、この泥しょうをフィルタープレスにかけ、上記の粒径で各原材料が分散された第2実施例の陶磁器用坏土を調製した。この場合、含水率は約18%に調製した。
【0036】
そして、この第2実施例の陶磁器用坏土を、口金寸法が約6.9x1.5cmの押出成形機に供給して約20cmの長さで押出成形し、その後に乾燥させて陶磁器成形体(ブロック体)を得た。次いで、この成形体を、トンネル炉にて最高温度1100度で24時間焼成して、第2実施例の陶磁器製品を得た。得られた陶磁器製品は、外観欠点もなく、寸法も安定したものであった。また、その物理的な性質は、吸水率が約0.2%、焼成による収縮率が約6.3%,曲げ強度は約3800N/cm2 であった。また、焼成温度が約20度程度の範囲で変動した場合でも、同様の物性の陶磁器製品が得られた。
【0037】
▲3▼第3実施例
この実施例では、ガラス質原料として廃棄ガラスを用い、非熔化性原料は、円筒研磨盤等の研磨機器から排出され、アルミナを約52wt%、ジルコン(ZrSiO4 )を約46wt%含有する研磨剤廃棄物から調達した。まず、廃棄ガラス20重量部、粘土35重量部、上記の研磨剤廃棄物15重量部をそれぞれ秤量し調合する。なお、非熔化性原料としては、アルミナが換算して約7.8重量部、ジルコンが約6.9重量部であり、合計で約14.7重量部となる。次いで、この調合物を、平均粒径が約35μmとなるようにボールミルで湿式粉砕混合し、上記の各原料の粒子が均一に分散された泥しょうを取得した。続いて、この泥しょうをスプレードライヤーにかけ、上記の粒径で各原材料が分散された第3実施例の陶磁器用坏土を調製した。この場合、含水率は約7%に調製した。
【0038】
そして、この第3実施例の陶磁器用坏土を、15x15x2cmの金型に充填し、250kgf/cm2 で加圧成形して乾燥させ、陶磁器成形体(板状体)を得た。次いで、この成形体を、RHKにて最高温度約1170度で90分間焼成して、第3実施例の陶磁器製品を得た。得られた陶磁器製品は、外観欠点もなく、寸法も安定したものであった。また、その物理的な性質は、吸水率が約0.2%、焼成による収縮率が約5.3%,曲げ強度は約4000N/cm2 であった。また、焼成温度が約20度程度の範囲で変動した場合でも、同様の物性の陶磁器製品が得られた。
【0039】
▲4▼第4実施例
この実施例では、ガラス質原料として廃棄ガラスを用い、非熔化性原料は、上記の第3実施例と同様、アルミナを約52wt%、ジルコンを約46wt%含有する研磨剤廃棄物から調達した。そして、このほかに、長石と陶石の陶磁器原料を用いた。まず、廃棄ガラス3重量部、粘土45重量部、上記の研磨剤廃棄物12重量部、長石15重量部、陶石25重量部をそれぞれ秤量し調合する。なお、非熔化性原料としては、上記の第3実施例と同様、アルミナが約6.2重量部、ジルコンが約5.5重量部、合計で約11.7重量部である。次いで、この調合物を、平均粒径が約35μmとなるようにボールミルで湿式粉砕混合し、上記の各原料の粒子が均一に分散された泥しょうを取得した。続いて、この泥しょうをスプレードライヤーにかけ、上記の粒径で各原材料が分散された第4実施例の陶磁器用坏土を調製した。この場合、含水率は約7%に調製した。
【0040】
そして、この第4実施例の陶磁器用坏土を、15x15x2cmの金型に充填し、250kgf/cm2 で加圧成形して乾燥させ、陶磁器成形体(板状体)を得た。次いで、この成形体の表面に、長石65重量部、珪砂5重量部、粘土5重量部、アルカリ土類金属酸化物25重量部からなる釉薬をスプレー塗布し、RHKにて最高温度1250℃で90分間焼成して、第4実施例の陶磁器製品を得た。得られた陶磁器製品は、外観欠点もなく、寸法も安定したものであった。また、その物理的な性質は、吸水率が約0.1%、焼成による収縮率が約5.1%,曲げ強度は約4400N/cm2 であった。また、焼成温度が約20度程度の範囲で変動した場合でも、同様の物性の陶磁器製品が得られた。
【0041】
次に、上記の各実施例の陶磁器製品の物性を比較するために、非熔化性原料を含まない陶磁器製品(比較例)を以下のようにして製造した。この比較例では、非熔化性原料を一切有しない陶磁器用坏土を用いており、まず、廃棄ガラス70重量部、粘土30重量部をそれぞれ秤量し調合する。次いで、この調合物を、平均粒径が約30μmとなるようにボールミルで湿式粉砕混合し、上記の各原料の粒子が均一に分散された泥しょうを取得した。続いて、この泥しょうをスプレードライヤーにかけ、上記の粒径で各原材料が分散された比較例の陶磁器用坏土を調製した。この場合、含水率は約7%に調製した。
【0042】
そして、この比較例の陶磁器用坏土から、第1実施例と同一の条件で成形・焼成して比較例の陶磁器製品を得た。得られた陶磁器製品は、ガラス特有の光沢を有するものもあり、外観欠点として質感のバラツキが見られた。また、物性については、吸水率は約0.1%程度であり良好であるものの、焼成による収縮率が約9.0〜9.5%であった。更に、曲げ強度は約2900〜3400N/cm2 程度しか得られなかった。また、焼成温度が約20度程度の範囲で変動した場合には、収縮率が約8.5〜9.8%程度にまで拡大し、曲げ強度についても約2600〜3500N/cm2 となり、大きく変化した。
【0043】
以上説明したように本実施例の陶磁器用坏土を用いて製造した陶磁器製品は、アルミナ等の非熔化性原料を含有しない坏土から得た比較例の陶磁器製品に比べて、高い形状安定性と高い強度を有することが判明した。しかも、約20度程度の焼成温度変動が起きてもその物性に大きな変動は見られないことから、本実施例の陶磁器用坏土によれば、いわゆる歩留まりの向上を通した生産性の向上と、温度管理等の工程管理の簡略化とを図ることができる。また、本実施例では、アルミナ等の非熔化性原料を高炉スラブや研磨剤廃棄物から調達したので、アルミナ等を陶磁器用坏土の製造のために調製する必要がなく、工程の簡略化、延いては製造コストの低減を図ることができる。更には、高炉スラブや研磨剤廃棄物の有効利用を促進することができる。
【0044】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明は上記の実施例や実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、ガラス質原料として、廃棄ガラスとガラス製造工程で得られた一般のガラス製品やその副次的に生産されるガラスを用いたり、この一般のガラス製品や副次的生産ガラスのみを用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の陶磁器用坏土が含有したガラス質原料、粘土質原料、非熔化性原料および陶磁器原材料のそれぞれの粒子の分散の様子を模式的に示す模式図。
Claims (9)
- 複数種の原料を含有した陶磁器用坏土であって、
前記原料として、少なくとも、ガラス質原料並びに粘土質原料と、陶磁器の焼成過程において熔化する前記ガラス質原料と粘土質原料のガラス熔融マトリックス中で熔化することなく結晶質を維持する非熔化性原料とを含有し、
前記非熔化性原料は、セルベン、キラ、フライアッシュ、焼却灰の溶融スラグを除く非熔化性原料であって、研磨剤廃棄物、高炉スラグ等の産業廃棄物に含有されている酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム等の高融点を有する化合物とされ、
前記ガラス質原料は、少なくとも一部が廃棄ガラスとされていることを特徴とする陶磁器用坏土。 - 請求項1記載の陶磁器用坏土であって、
前記ガラス質原料は約1〜85重量部、前記粘土質原料は約5〜70重量部、前記非熔化性原料は約1〜30重量部である陶磁器用坏土。 - 請求項1記載の陶磁器用坏土であって、
前記ガラス質原料と前記粘土質原料のそれぞれの粒子が前記非熔化性原料の粒子を取り囲んで該粒子の周囲に付着するよう、前記ガラス質原料と前記粘土質原料と前記非熔化性原料を分散して含有した陶磁器用坏土。 - 請求項1記載の陶磁器用坏土であって、
前記原料として、長石、陶石等の陶磁器原料を更に含有した陶磁器用坏土。 - 請求項4記載の陶磁器用坏土であって、
前記ガラス質原料は約1〜85重量部、前記粘土質原料は約5〜70重量部、前記非熔化性原料は約1〜30重量部、前記陶磁器原料は約1〜70重量部である陶磁器用坏土。 - 請求項4記載の陶磁器用坏土であって、
前記ガラス質原料と前記粘土質原料および前記陶磁器原材料のそれぞれの粒子が前記非熔化性原料の粒子を取り囲んで該粒子の周囲に付着するよう、前記ガラス質原料と前記粘土質原料と前記非熔化性原料および前記陶磁器原料を分散して含有した陶磁器用坏土。 - 請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の陶磁器用坏土であって、
前記ガラス質原料、粘土質原料、非熔化性原料および陶磁器原料は、平均粒径が約1〜50μmの粒子として調製されている陶磁器用坏土。 - 焼成を受けて陶磁器製品とされる成形体であって、
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の陶磁器用坏土を用い、前記陶磁器製品形状をなすよう成形された成形体。 - 請求項8記載の成形体であって、
約700〜1300度で加熱して焼成を受ける成形体。
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