JP3745383B2 - 回転電機の固定子コイル - Google Patents

Description

技術分野
本発明は、固定子コイルを固定子鉄心スロットに収納した状態で樹脂の含浸および硬化を行う全含浸方式により製造される回転電機の固定子コイルに関するものである。
背景技術
一般的に、高電圧回転電機の固定子コイルの製造方法には、固定子コイル単体で樹脂含浸を行い、ヒートプレスにより加熱硬化させた後に、固定子鉄心スロットに組み込み巻線する単体含浸方式と、樹脂含浸前の固定子コイルを固定子鉄心スロットに組み込み結線した後、これに樹脂を含浸させて硬化させる全含浸方式とがある。全含浸方式では、固定子コイルと固定子鉄心とが含浸樹脂により強固に固着されるため、巻線全体としての機械的剛性が高く、固定子コイルと固定子鉄心間の熱抵抗が単体含浸方式のそれと比べ小さくなる為、運転時に固定子コイル導体で発生する熱に起因する固定子コイルの温度上昇を、単体含浸方式に比べ効率的に押さえることが可能である。さらに、全含浸方式で製造すれば、含浸および硬化工程が１度で済み製造工程の短縮ができるという利点がある。
一方、全含浸方式で製造される回転電機の小型化、大容量化により固定子コイル導体の電流密度が増加する傾向があり、これに伴う固定子コイル導体の発熱量も増加する。一般に、回転電機の運転時には、固定子コイル導体で発生する熱が駆動力となり、固定子コイル表面と固定子鉄心スロット間に熱膨張係数の差に起因する剪断応力が発生する。従って、固定子コイル導体での発熱量が増大することにより、この剪断応力が増大し、固定子コイル対地絶縁層内に剥離や亀裂等の欠陥が発生するという問題が生じている。
これに対し、固定子コイル対地絶縁層に発生する剪断応力を緩和する方法として、本願発明者が先に出願した特願平８−１２０２２２号明細書に示されているように、固定子コイル対地絶縁層外周に非接着テープを巻回したものが提案されている。
第９図は上記従来の固定子コイルを説明する説明図であり、固定子コイルを高電圧回転電機に用いた場合のスロット出口部を示す。図において、１は固定子鉄心、１３は固定子コイル、１３ａは上口コイル、１３ｂは下口コイル、３は固定子コイル導体、４は固定子コイル対地絶縁層、５はウエッジ、６は中間フィラー、７は固定子鉄心スロット、８は導電性非接着テープで、９は半導電性テープである。
第１０図は上記導電性非接着テープ８の長さ方向の一部を示す説明図で導電性非接着テープ８は片面にコロナ処理が施されている。第１１図は固定子鉄心スロット７に収納された従来の固定子コイルの収容状態を説明する説明図である。
即ち、固定子コイル導体３の周りにマイカテープを所定回数巻回し、固定子コイル対地絶縁層４を形成し、片面にコロナ処理を施した導電性非接着テープ８（第１０図）を、コロナ処理を施した面１４が固定子コイル対地絶縁層４側にくるように固定子コイル対地絶縁層４の表面に半重ね巻きし、この上に半導電性テープ９を半重ね巻きしている。
上記固定子コイル１３を固定子鉄心スロット７へ挿入し、ウエッジ５を打ち込み固定子コイル１３を固定した後、各固定子コイル１３を電気的および機械的に接続する結線を行い、その後樹脂の含浸および硬化を行う。
ここで、導電性非接着テープ８のコロナ処理が施されている面と固定子コイル対地絶縁層４の表面とは、含浸樹脂により強固に接着されるが、コロナ処理が施されていない面と半導電性テープ９の間は、適当な大きさの剪断応力が加わると離型する構造になっている。
従って、上記固定子コイル対地絶縁層４と固定子鉄心スロット７間に発生する剪断応力は、半導電性テープ９と導電性非接着テープ８が離型することにより緩和され、上記固定子コイル対地絶縁層４に剪断応力が加わらず、固定子コイル対地絶縁層４内の剥離や亀裂の発生を防ぐことができる。
また、この導電性非接着テープ８により、固定子鉄心１と固定子コイル１３の表面は電気的に接続されているので表面コロナの発生も防止できる構造となっている。
しかし、上記回転電機の固定子コイルでは、導電性非接着テープ８としてフッ素系のフィルムを用いているため、このフィルムが含浸樹脂に対して濡れ性が悪く、第１１図に示すように、フィルム同士のラップ部において、フィルムが密着することによるシール効果が発現し、含浸樹脂の固定子コイル対地絶縁層４に対する含浸性を阻害することになる。従って、固定子コイル対地絶縁層４に樹脂未含浸な部分が出来易く、その結果固定子コイルの機械的強度および電気的特性の低下が発生するという危険性がある。
本発明は、かかる課題を解決するためになされたもので、固定子コイル対地絶縁層への樹脂の含浸性を阻害せず、固定子コイル対地絶縁層と固定子鉄心スロットとの間の離型性を保ちつつ、表面コロナの発生を防止し、長期的に優れた特性を有する回転電機の固定子コイルを得ることを目的とする。
発明の開示
本発明に係る第１の回転電機の固定子コイルは、導体の周囲にこの導体を覆う固定子コイル対地絶縁層、およびこの固定子コイル対地絶縁層を覆う表面コロナ防止層を備え、固定子鉄心スロットに収納され、固定子鉄心と共に熱硬化性含浸樹脂で含浸して硬化し、上記樹脂の硬化物により上記固定子鉄心と一体化される回転電機の固定子コイルにおいて、上記表面コロナ防止層が、半導電性テープと半導電性テープの片面にこのテープより幅の狭いフッ素系の非接着材層を設けた複合テープとを、上記固定子鉄心スロットと固定子コイル対地絶縁層が上記テープの半導電性面と接し、かつ上記非接着材層が半導電性テープの間に位置し、上記非接着材層の幅方向に間隙を設けるように巻回したものである。これにより、固定子コイル対地絶縁層への樹脂の含浸性を阻害せず、固定子コイル対地絶縁層表面と固定子鉄心スロットとの間の離型性を保ち、表面コロナの発生を防止し、長期的に優れた特性を有することができる。
本発明に係る第２の回転電機の固定子コイルは、上記第１の回転電機の固定子コイルにおいて、固定子コイル対地絶縁層側が半導電性テープを巻回したものである。
本発明に係る第３の回転電機の固定子コイルは、上記第１の回転電機の固定子コイルにおいて、固定子コイル対地絶縁層側が複合テープを巻回したものである。これにより、作業性がよくなる。
本発明に係る第４の回転電機の固定子コイルは、導体の周囲にこの導体を覆う固定子コイル対地絶縁層、およびこの固定子コイル対地絶縁層を覆う表面コロナ防止層を備え、固定子鉄心スロットに収納され、固定子鉄心と共に熱硬化性含浸樹脂で含浸して硬化し、上記樹脂の硬化物により上記固定子鉄心と一体化される回転電機の固定子コイルにおいて、上記表面コロナ防止層が、半導電性テープの片面にこのテープより幅の狭いフッ素系の非接着材層を設けた複合テープを、上記固定子鉄心スロットと固定子コイル対地絶縁層が半導電性テープ面と接し、かつ上記非接着材層が半導電性テープの間に位置し、上記非接着材層の幅方向に間隙を設けるように巻回したものである。これにより、固定子コイル対地絶縁層への樹脂の含浸性を阻害せず、固定子コイル対地絶縁層表面と固定子鉄心スロットとの間の離型性が優れ、表面コロナの発生を防止し、長期的に優れた特性を有することができる。
本発明に係る第５の回転電機の固定子コイルは、上記第１の回転電機の固定子コイルにおいて、半導電性テープが複合テープに用いた半導電性テープの幅より狭いものである。これにより、固定子コイル対地絶縁層への樹脂の含浸性がさらに優れる。
本発明に係る第６の回転電機の固定子コイルは、上記第１の回転電機の固定子コイルにおいて、固定子コイル対地絶縁層または固定子鉄心スロットと巻回した複合テープとの間に、複合テープに用いた半導電性テープの幅より狭い半導電性テープを巻回したものを設けたものである。これにより、固定子コイル対地絶縁層または固定子鉄心スロットとの電気的接続を確実におこなうことができる。
本発明に係る第７の回転電機の固定子コイルは、上記第５または第６の回転電機の固定子コイルにおいて、複合テープに用いた半導電性テープの幅より狭い半導電性テープを突き合わせ巻きしたものである。これにより、固定子コイル対地絶縁層または固定子鉄心スロットとの電気的接続をさらに確実におこなうことができる。
本発明に係る第８の回転電機の固定子コイルは、上記第１または第４の回転電機の固定子コイルにおいて、半導電性テープが、半導電性の織布または不織布からなるものである。これにより、含浸性が向上する。
本発明に係る第９の回転電機の固定子コイルは、上記第１または第４の回転電機の固定子コイルにおいて、非接着材が導電性のものである。これにより、固定子コイル対地絶縁層表面と固定子鉄心スロットとの電気的接続が簡略化される。
【図面の簡単な説明】
第１図は本発明の実施例の固定子コイルを導入した高電圧回転電機のスロット出口部の構成図であり、第２図は本発明に係わる複合テープ１０の説明図であり、第３図は固定子鉄心スロット７に収納された本発明の第１の実施例の固定子コイル２の収容状態を説明する説明図であり、第４図は固定子鉄心スロット７に収納された本発明の第２の実施例の固定子コイル２の収容状態を説明する説明図であり、第５図は固定子鉄心スロット７に収納された本発明の第３の実施例の固定子コイル２の収容状態を説明する説明図であり、第６図は固定子鉄心スロット７に収納された本発明の第４の実施例の固定子コイル２の収容状態を説明する説明図であり、第７図は固定子鉄心スロット７に収納された本発明の第５の実施例の固定子コイル２の収容状態を説明する説明図であり、第８図は固定子鉄心スロット７に収納された本発明の第６の実施例の固定子コイル２の収容状態を説明する説明図であり、第９図は従来の固定子コイルの説明図であり、第１０図は従来の導電性非接着テープの説明図であり、第１１図は固定子鉄心スロット７に収納された従来の固定子コイル１３の収容状態を説明する説明図である。
発明を実施するための最良の形態
第１図は、本発明の実施例の固定子コイルを説明するための高電圧回転電機のスロット出口部の構成図であり、図中、２が本発明の実施例の回転電機の固定子コイルである。図１において、１はケイ素鋼板を積層した固定子鉄心、３は固定子コイル導体、４は固定子コイル対地絶縁層、５はウエッジ、６は中間フィラー、７は固定子鉄心スロット、９は半導電性テープ、１０は複合テープである。
本発明の実施例の回転電機の固定子コイル２は、固定子コイル導体３と、固定子コイル導体３の外側にマイカテープを巻回して形成された樹脂含浸可能な固定子コイル対地絶縁層４と、対地絶縁層４の外側に固定子鉄心スロット７との間のコロナ放電を防止するための表面コロナ防止層とを備え、表面コロナ防止層は、半導電性を有する半導電性テープ９を巻回したものと、下記複合テープ１０を巻回したものとを有する。
上記固定子コイル２は、固定子鉄心スロット７に収納され、固定子鉄心１と共に熱硬化性含浸樹脂で含浸して硬化し、上記樹脂の硬化物により上記固定子鉄心１と一体化される。
第２図は、本発明に係わる表面コロナ防止層に用いた上記複合テープ１０の説明図で、複合テープ１０の長さ方向の一部を示し、１１は非接着材層である。複合テープ１０は、半導電性テープ９の幅より狭い、例えば半分以下の幅の非接着性のフィルムを非接着材層１１として張り付けたもので、この複合テープ１０を以下の様に巻回する必要がある。
つまり、固定子鉄心スロット７または固定子コイル対地絶縁層４が上記テープの半導電性面と接するように巻回し、かつ、上記非接着材層１１と固定子コイル対地絶縁層４および固定子鉄心スロット７との間に少なくとも１層以上の半導電性テープ層が存在するように巻回することにより、半導電性テープ９と複合テープ１０の非接着材層１１とが容易に全面離型するので運転時に発生する固定子鉄心スロットと固定子コイル対地絶縁層表面間の剪断応力が効果的に緩和され、固定子コイル対地絶縁層内の剥離および亀裂の発生を抑制することができる。
また、上記非接着材層１１の横方向に間隙を設けるように巻回することにより、非接着材層がテープをすかし巻きにした状態と同等になり、固定子コイル対地絶縁層４への含浸樹脂の流入経路が確保され、固定子コイル対地絶縁層４への樹脂の含浸を容易に行うことができる。
また、固定子コイル対地絶縁層４の外周に上記表面コロナ防止層を設けるために、半導電性テープ９と複合テープ１０で巻回するには、まず半導電性テープ９を巻回しその後複合テープ１０を巻回する場合、その逆の場合または両方複合テープの場合でも良く、固定子鉄心スロット７と対地絶縁層４が上記テープの半導電性面と接すれば良い。
また、上記半導電性テープの幅を、複合テープに用いた半導電性テープの幅より狭くすると、上記半導電性テープを巻回した場合に比べ単位長さ当りの隙間がより多くなり含浸がより容易となる。
また、固定子コイル対地絶縁層４または固定子鉄心スロット７と巻回した複合テープ１０との間に、複合テープに用いた半導電性テープの幅より狭い半導電性テープを巻回したものを設けると、固定子コイル対地絶縁層４と固定子鉄心スロット７との電気的接続が確実になる。
また、上記複合テープ１０に用いた半導電性テープ９の幅より狭い半導電性テープを突き合わせ巻きすれば、電気的接続がより確実になる。
また、上記半導電性テープ９が、半導電性の織布または不織布であると、導電性と含浸性をともに維持できる。
また、上記複合テープ１０の非接着材層１１が導電性であると、作業性がよく、電気的接続が確実になる。」から「また、上記複合テープ１０の非接着材層１１が導電性であるため、作業性がよく、電気的接続が確実になる。
以下、さらに具体的な実施例を示す。
実施例１．
第３図は、固定子鉄心スロットに収納された本発明の第１の実施例の固定子コイルの収容状態を説明する説明図である。
第３図に示すように、固定子コイルは、固定子コイル導体にマイカテープを所定回数巻回して固定子コイル対地絶縁層４を形成し、この周囲に、半導電性テープ９を半重ね巻きし、その上に複合テープ１０をこの複合テープ１０の非接着材層１１の幅方向に隙間を設けて巻回しているため、複合テープ１０の巻回面の表面は見かけ上、非接着材が単独ですかし巻きされているのと同等となる。
上記構造により、複合テープ１０に含浸樹脂の流入経路が確保されるため、固定子コイル対地絶縁層４への樹脂の含浸性が良好となる。
さらに、半導電性テープ９として、半導電性の織布または不織布を用いれば、固定子コイル対地絶縁層４への樹脂の含浸性を阻害しないため好ましい。
また、複合テープ１０の非接着材として、四弗化エチレン（ＰＴＦＥ）を用いれば、他のフッ素系フィルム材と比べ含浸樹脂に対する離型性が特に優れているため、固定子コイル製造時の含浸後の加熱硬化・冷却時や機器の運転の際の起動・停止時に発生する固定子鉄心スロットと固定子コイルの表面間の剪断応力により、半導電テープ９と複合テープ１０の非接着材層１１間で容易に離型し、固定子コイル対地絶縁層４内の剥離や亀裂発生を防止できる。
なお、この四弗化エチレンは絶縁性を示す材料のため、固定子コイル対地絶縁層４表面と固定子鉄心スロット表面との間の電気的接続を行なうために、固定子鉄心スロットの長さ方向の中央部の所定領域において、複合テープ１０の非接着材層１１を取り去り、複合テープ１０の半導電性テープ９が固定子コイル対地絶縁層４の表面に巻回した半導電性テープ９と電気的に接続させることが必要となる。上記処置により表面コロナの発生が防止できる。
また、複合テープ１０の非接着材層１１として、導電性のＰＦＡ、ＥＴＦＥ、ＰＶＤＦ等のフッ素フィルムを用いてもよい。この場合、非接着材層１１が導電性を示すため、固定子鉄心スロットの長さ方向の中央部の所定領域において、複合テープ１０の非接着材層１１を取り去る処置をする必要がなく作業性に優れる。
また、複合テープ１０の非接着材層１１として、上記絶縁性非接着材と導電性非接着材を共に半導電性テープに設けておけば、優れた離型性を保ちながら作業性良く導電性を得ることができる。
実施例２．
第４図は、固定子鉄心スロットに収納された本発明の第２の実施例の固定子コイルの収容状態を説明する説明図である。
第４図に示すように、固定子コイルは、固定子コイル導体にマイカテープを所定回数巻回して固定子コイル対地絶縁層４を形成し、この外周に複合テープ１０を非接着材層１１が固定子鉄心スロット側になるように、かつ非接着材層１１を幅方向に隙間を設けるように巻回し、この上にさらに別の複合テープ１０を非接着材層１１が固定子コイル対地絶縁層４側になるように、かつ非接着材層１１同士が対向するように（図は重なるように）巻回した構造になっている。
ここで、２枚の複合テープ１０の巻く方向は、それぞれ逆にする。このようにすることにより、最初に巻回した非接着材層１１が形成する樹脂流入経路を、その上に巻く非接着材層１１が塞いでしまいことがなく、固定子コイル対地絶縁層４への含浸樹脂の流入経路を確保することができる。
本実施例では、２枚の複合テープ１０の間は、非接着材層１１が対面しているのでこの間の離型性を格段に向上させることが出来る。
ただし、巻回した２枚の複合テープの対面している非接着材層間には当然滑りが生じるため、例えば、複合テープを適当な長さ巻き付けてゆく毎に粘着テープ等で滑りどめをする必要がある。
なお、複合テープ１０としては、実施例１と同様のものを同様に用いることができる。
実施例３．
第５図は、固定子鉄心スロットに収納された本発明の第３の実施例の固定子コイルの収容状態を説明する説明図である。
第５図に示すように、固定子コイルは実施例１における半導電性テープ９の代わりに、上記複合テープ１０に用いた半導電性テープの幅より狭い半導電性テープ１２で突き合わせ巻きを２回施した他は、実施例１と同様に巻回した構造になっている。
幅の狭い半導電性テープ１２を、２回突き合わせ巻きを行っているので、固定子コイル対地絶縁層４の表面との電気的接続を確実に行え、半導電性テープ９を半重ねで巻回している実施例１に比べ、半導電性テープの表面に沿う含浸経路が短くなる為含浸性が改良できる。
なお、複合テープ１０としては、実施例１と同様のものを同様に用いることができる。
実施例４．
第６図は、固定子鉄心スロットに収納された本発明の第４の実施例の固定子コイルの収容状態を説明する説明図である。
第６図に示すように、固定子コイルは固定子コイル導体にマイカテープを所定回数巻回して固定子コイル対地絶縁層４を形成し、その外周に複合テープ１０を非接着材層１１が固定子鉄心スロット側になるようにかつ複合テープ１０の非接着材層１１の幅方向に隙間を設けて重ならないように巻回し、この上に半導電性テープ９を半重ねで巻回した構造になっている。
上記のように巻回することにより、複合テープ１０を巻回するときに非接着材層１１が表面に見えるため巻回する時の作業性が改善できる。
なお、複合テープ１０としては、実施例１と同様のものを同様に用いることができる。
実施例５．
第７図は、固定子鉄心スロットに収納された本発明の第５の実施例の固定子コイルの収容状態を説明する説明図である。
第７図に示すように、固定子コイルは実施例１において、半導電性テープ９と複合テープ１０とを巻回した後、さらに実施例３で用いた幅の狭い半導電性テープ１２を突き合わせで巻回した構造になっている。
上記のように、幅の狭い半導電性テープ１２を追加して巻回することにより、複合テープ１０と固定子コイル鉄心スロットとの電気的接続を確実にし、半導電性テープ層が増えることによる含浸性の阻害を最小限にできる。
なお、複合テープ１０としては、実施例１と同様のものを同様に用いることができる。
実施例６．
第８図は、固定子鉄心スロットに収納された本発明の第６の実施例の固定子コイルの収容状態を説明する説明図である。
第８図に示すように、固定子コイルは実施例３で用いた幅の狭い半導電性テープ１２をまず固定子コイル対地絶縁層４の外側に突き合わせで巻回し、その上に実施例４と同様に複合テープ１０と半導電性テープ９を巻回した構造になっている。
上記のように、幅の狭い半導電性テープ１２を追加して巻回することにより、複合テープ１０と固定子コイル対地絶縁層４との電気的接続を確実にし、半導電性テープ層が増えることによる含浸性の阻害を最小限にできる。
なお、複合テープ１０としては、実施例１と同じものを同様に用いることができる。
産業上の利用可能性
本発明は、発電機および大型電動機等の高電圧用回転電機の固定子コイルや核融合炉用コイル等の大型コイルに適用され、これらの機器の小型化、大容量化にともなう熱的負荷による絶縁破壊の問題を解決し高信頼性のものとすることができる。

Claims (9)

1. 導体の周囲にこの導体を覆う固定子コイル対地絶縁層、およびこの固定子コイル対地絶縁層を覆う表面コロナ防止層を備え、固定子鉄心スロットに収納され、固定子鉄心と共に熱硬化性含浸樹脂で含浸して硬化し、上記熱硬化性含浸樹脂の硬化物により上記固定子鉄心と一体化される回転電機の固定子コイルにおいて、
   上記表面コロナ防止層が、半導電性テープと、
   これとは別に半導電性テープの片面に上記半導電性テープの幅よりも狭い導電性を有する非接着材層を設けた複合テープとを巻回して構成され、
   上記半導電性テープあるいは上記複合テープの半導電性面が、上記固定子コイル対地絶縁層に接し、上記複合テープの非接着材層の幅方向に間隙を設けて巻回したものであることを特徴とする回転電機の固定子コイル。
2. 対地絶縁層側に半導電性テープを巻回したものであることを特徴とする請求の範囲第１項に記載の回転電機の固定子コイル。
3. 対地絶縁層側に複合テープを巻回したものであることを特徴とする請求の範囲第１項に記載の回転電機の固定子コイル。
4. 導体の周囲にこの導体を覆う固定子コイル対地絶縁層、およびこの固定子コイル対地絶縁層を覆う表面コロナ防止層を備え、固定子鉄心スロットに収納され、固定子鉄心と共に熱硬化性含浸樹脂で含浸して硬化し、上記熱硬化性含浸樹脂の硬化物により上記固定子鉄心と一体化される回転電機の固定子コイルにおいて、
   上記表面コロナ防止層が、
   半導電性テープの片面に上記半導電性テープの幅よりも狭い導電性を有する非接着材層を設けた複数の複合テープを巻回して構成され、
   上記複数の複合テープの上記非接着材層面を対向して配設され、上記複合テープの非接着材層の幅方向に間隙を設けて巻回したものであることを特徴とする回転電機の固定子コイル。
5. 半導電性テープの幅が複合テープの半導電性テープの幅よりも狭いことを特徴とする請求の範囲第１項に記載の回転電機の固定子コイル。
6. 対地絶縁層または固定子鉄心スロット側に、複合テープの半導電性テープの幅よりも狭い第２の半導電性テープを巻回したことを特徴とする請求の範囲第１項に記載の回転電機の固定子コイル。
7. 複合テープの半導体半導電性テープの幅よりも狭い半導電性テープを突き合わせ巻きしたことを特徴とする請求の範囲第５項または第６項に記載の回転電機の固定子コイル。
8. 半導電性テープが、半導電性の織布または不織布からなることを特徴とする請求の範囲第１項ないし第７項のいずれかに記載の回転電機の固定子コイル。
9. 非接着材層が導電性のＰＦＡ、ＥＴＦＥ、ＰＶＤＦであることを特徴とする請求の範囲第１項から第８項のいずれかに記載の回転電機の固定子コイル。

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