JP3615926B2 - 回転電機の固定子コイルエンド構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は回転電機の固定子コイルエンド構造に関するもので、特に固定子コイルエンド内部の半導電層先端部の部分放電の防止、および固定子コイルエンド表面部の沿面放電の防止に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図11は例えば特開昭58−157350号公報に記載されている従来の高圧の回転電機の固定子コイルエンド部を示す部分断面図である。図11において、1はXを軸芯とするコイル導体、2はこのコイル導体1の周囲を覆う主絶縁層、3と4はその外側を覆う低抵抗コロナシールド層と電界緩和層、5は主絶縁層2の一部に巻くように設けられた半導電層、6は低抵抗コロナシールド層3と電界緩和層4の内側で半導電層5を覆うシールド絶縁層である。
【0003】
近年、回転電機は高電圧化、単機大容量化、および小型軽量化の傾向にある。これに伴い、固定子コイルエンド部の電界緩和が重要となっている。そこで固定子コイルエンド表面に沿面放電防止のため、非線形抵抗特性を有する電界緩和層4を低抵抗コロナシールド層3と当接して設けることが一般に行われている。
【0004】
ここで、回転電機の定格電圧の上昇に伴う交流耐圧試験電圧の上昇による沿面放電や電界緩和層4の焼損を防止するため、図11に示すように、低抵抗コロナシールド層3と電界緩和層4との重ね目付近を含む主絶縁層2の表面に半導電層5を設け、低抵抗コロナシールド層3と電界緩和層4との重ね目付近における電力損失を減少させることにより、重ね目付近における電界緩和層4の温度上昇を抑制し、さらに半導電層5を覆うシールド絶縁層6を設けている。
【0005】
以下、このような構成の高圧の回転電機の固定子コイルの製造方法について説明する。まず、コイル導体1に例えば集成マイカからなるマイカシートに補強材としてガラスクロスを張り合わせたマイカテープを複数回巻き付けて主絶縁層2を形成する。その上に半導電性を有するシートあるいはテープからなる半導電層5を後述する低抵抗コロナシールド層3と電界緩和層4の重ね目からコア側に入りこんだ位置から電界緩和層4のコイルエンド側の端部を越えない範囲に設ける。
【0006】
さらにそれら全体を覆うようにマイカテープを複数回巻き付け、シールド絶縁層6を形成し、全体を例えばエポキシ樹脂を用いて含浸し重合、そしてプレス整形し、その後、その上に低抵抗コロナシールド層3とこの低抵抗コロナシールド層3先端部に重ねて電界緩和層4を設けて、固定子コイルを構成したものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
図12は上記特開昭58−157350号公報に記載されている固定子コイルエンド部の電界緩和構造において、高電圧をコイル導体1に印加した場合の半導電層5とその延長上の各点における電位分布である。ただし、横軸は低抵抗コロナシールド層3の先端部を0として、先端部からコイルエンド方向への位置を示し、また点Aは半導電層5先端の位置を示し、縦軸は導体に印加した電圧のピーク値を100%とした相対値を示している。
【0008】
図12に示されるように、点Aにおいて電位が急激に上昇している。つまり、高電圧印加により半導電層5先端部が高電界になることを示している。そのため、半導電層5先端部から部分放電が発生し易い構造になっているという問題点があった。
【0009】
この発明は上記のような従来の問題点を解決するためになされたもので、半導電層先端部の電界を緩和することで、半導電層先端部の部分放電を防止すると共に、低抵抗コロナシールド層と電界緩和層との重なり部のジュール損を低下させ、電界緩和層の沿面放電を抑制し、さらに、半導電層と放電防止部材をシールド絶縁層で覆うことで主絶縁層の絶縁性能を低下させず、信頼性の高い回転電機の高電圧化、大容量化を可能にする回転電機の固定子コイルエンド構造を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的に鑑み、この発明は、回転電機の固定子コイルエンド構造であって、コイル導体と、このコイル導体を覆う主絶縁層と、この主絶縁層の外部表面に設けられた低抵抗コロナシールド層と、上記主絶縁層のコイルエンド外周部に上記低抵抗コロナシールド層の端部と重ねて設けられた電界緩和層と、上記低抵抗コロナシールド層と上記電界緩和層との重なり部よりコア側に入った位置から上記電界緩和層のコイルエンド側の端部を越えない範囲で、かつ上記主絶縁層の表面に設けられた半導電層と、上記半導電層のコイルエンド側端部に重ねて設置し、かつ上記電界緩和層のコイルエンド側の端部を越えない範囲に設けた放電防止部材と、上記半導電層と放電防止部材を覆うシールド絶縁層と、を備え、上記放電防止部材が電界に対し非線形抵抗特性を有する内部電界緩和層からなり、上記内部電界緩和層の表面抵抗率が電界緩和層の表面抵抗率と同等以上であることを特徴とする回転電機の固定子コイルエンド構造にある。
【0011】
またこの発明は、上記半導電層とこれのコイルエンド側先端部に内部電界緩和層を設けた層を上記シールド絶縁層内に、上記コイル導体の軸心に対して同心状に複数層設けたことを特徴とする回転電機の固定子コイルエンド構造にある。
【0024】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による高圧の回転電機の固定子コイルエンド構造を示す断面図である。固定子コイルは珪素鋼板を回転軸方向に積層したコア(図示せず)に挿入された部分と端部のコアから外れた部分からなる。このコアからはずれた部分をコイルエンド部と称し、端部方向をコイルエンド方向と称している。
【0025】
図1において1はコイル導体、2は含浸可能な主絶縁層で、絶縁のためにコイル導体1の外周にマイカテープを巻回して構成されている。3は低抵抗コロナシールド層、4は非線形抵抗特性を有する電界緩和層、5は半導電層、7は非線形抵抗材料からなる放電防止部材である内部電界緩和層、6は主絶縁層2と同じく含浸可能なシールド絶縁層で、半導電層5と内部電界緩和層7の外周にマイカテープを巻回して構成されている。
【0026】
以下、このような構成の高圧回転電機の固定子コイルの製造方法について説明する。まず、コイル導体1に例えば集成マイカからなるマイカシートに、補強材としてガラスクロスを張り合わせたマイカテープを複数回巻き付け、主絶縁層2を形成する。その上に表面抵抗率が102Ω程度の半導電性を有するシートあるいはテープからなる半導電層5を後述する低抵抗コロナシールド層3と電界緩和層4の重なり部からコア側に入り込んだ位置から低抵抗コロナシールド層3の端部からコイルエンド側に30mmの位置まで巻き付ける。
【0027】
そして、電界に対し非線形抵抗特性(0.3kV/mmで1010Ω、0.5kV/mmで109Ω程度)を有し、かつ0.3〜0.7kV/mmの電界範囲において、後述する電界緩和層4の表面抵抗率よりも同等以上の表面抵抗率を有する材料からなる内部電界緩和層7を、半導電層5のコイルエンド側端部に重ね、コイルエンド方向に100mm以上の長さで、かつ電界緩和層4のコイルエンド側端部をこえないように設置する。なお、内部電界緩和層7の電界に対する表面抵抗率の傾きと電界緩和層4の電界に対する表面抵抗率の傾きが異なり、上記電界範囲で両者の電界−表面抵抗率特性線がクロスする場合は同等の抵抗率とみなす。
【0028】
さらにそれら全体を覆うようにマイカテープを複数回巻き付け、シールド絶縁層6を形成する。この時、次式で決まる分圧比は15%とする。
分圧比 = シールド絶縁層6の厚さ÷(シールド絶縁層6の厚さ+主絶縁層2の厚さ)
【0029】
その後、全体を例えばエポキシ樹脂を用いて含浸し重合、そしてプレス整形し、その上に低抵抗コロナシールド層3とこの低抵抗コロナシールド層3のコイルエンド側端部に重ねて電界緩和層4を設け、固定子コイルを構成したものである。
【0030】
次にその作用効果について説明する。図2は従来例とこの実施の形態1の固定子コイルのコイル導体1に商用周波の交流電圧を印加した場合の、低抵抗コロナシールド層3先端部からコイルエンド側に延長した半導電層5とその延長上の各点における電位分布である。ただし、横軸は低抵抗コロナシールド層3の先端部を0として、先端部からコイルエンド方向への位置を示している。なお、点Aは半導電層5のコイルエンド側端部の位置を示している。縦軸はコイル導体1に印加した電圧のピーク値を100%とした相対値を示している。
【0031】
図2から半導電層5を設けている間(0から点Aまで)は従来例、この実施の形態共にほぼ電位一定で、分圧比によって決まる値となっているが、半導電層5先端部では従来例の場合、電位が急に立ち上がっているのに対し、この実施の形態の場合は非線形抵抗部があることにより、ある電位傾斜を持って緩やかに上昇し、100%電位に達している。よって、この実施の形態の場合、半導電層5先端部に電界が集中しないため、半導電層5先端部での部分放電の発生を抑制できる。
【0032】
また、図3は従来例とこの実施の形態1の固定子コイルのコイル導体1に商用周波の交流電圧を印加した場合の低抵抗コロナシールド層3先端部からコイルエンド側に延長した点における固定子コイル表面のジュール損密度を示す。ただし、横軸は低抵抗コロナシールド層3の先端部を0として、先端部からコイルエンド方向への位置を示す。また、点Aは半導電層5先端の位置を示し、縦軸は従来例を100%とした場合の相対比である。
【0033】
図3から低抵抗コロナシールド層3先端部(X=0)において、従来例に比較してこの実施の形態の場合、ジュール損密度が大きく低下しており、電界緩和層4における損失を小さくし、温度上昇を抑制し、電界緩和層4での沿面放電を防止できる。
【0034】
また、図4はこの実施の形態1において、内部電界緩和層7の長さを変えた固定子コイルに商用周波の交流電圧を印加した場合の、印加電圧がピーク時の電位分布を示す。ただし、横軸は低抵抗コロナシールド層3の先端部を0として、先端部からコイルエンド方向への位置を示す。また、点Aは半導電層5先端の位置を示し、縦軸は隣接ポイント間の電位差である。
【0035】
図4から、内部電界緩和層7の長さが50〜80mmの場合には、図中のSで示されるように電位が急変する点が生じ、電界緩和が十分できていないが、100mm以上設置した場合には、殆ど電位の変化はなく、電界緩和されている。よって、内部電界緩和層7を100mm以上設置することで、電界緩和が可能である。
【0036】
さらに、半導電層5と内部電界緩和層7の上をシールド絶縁層6で覆うことで、主絶縁層2の絶縁性能を低下させない。
以上のことから、この発明によれば信頼性の高い回転電機の高電圧化、大容量化を可能にできる。
【0037】
なお、半導電層5と内部電界緩和層7はテープ、シートに限らずペイント状であってもよい。また、半導電層5の表面抵抗率は過電流およびtanδ抑制の観点から102〜107Ωの範囲にあるものであればよいし、その長さも低抵抗コロナシールド層3端部から30mmと規定はしない。
【0038】
また、内部電界緩和層7の表面抵抗率は0.3〜0.7kV/mmの電界範囲において、電界緩和層4の表面抵抗率に比較して同等以上であればよいし、その長さも内部電界緩和層7の表面抵抗率や分圧比により最適値を導きだせばよい。
【0039】
また、シールド絶縁層6の厚さは、コイル導体1に印加される電圧および主絶縁層2の厚さに応じて50%以下の分圧比を考慮して最適な厚さを決めればよいし、シールド絶縁層6を構成する絶縁材料は主絶縁層2の材料と同じでなくとも、含浸する樹脂に相溶性の良い絶縁材料であればよい。
【0040】
また、この実施の形態では半導電層5とこの半導電層5のコイルエンド側先端部に内部電界緩和層7を設けた層が一層であったが、この層をコイル導体1の軸心Xに関して同心状にシールド絶縁層6内に複層設けても良い。
【0041】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態2による高圧の回転電機の固定子コイルエンド構造を示す断面図である。図5において12は半導電層5と同じ抵抗を持つ第2半導電層である。
【0042】
以下、このような構成の高圧の回転電機の固定子コイルの製造方法について説明する。まず、コイル導体1に例えば集成マイカからなるマイカシートに、補強材としてガラスクロスを張り合わせたマイカテープを複数回巻き付け、主絶縁層2を形成する。その上に表面抵抗率が102〜107Ω程度の半導電性を有するシートあるいはテープからなる半導電層5を、低抵抗コロナシールド層3と電界緩和層4の重なり目からコア側に入り込んだ位置から低抵抗コロナシールド層3の端部からコイルエンド側に30mmの位置まで巻き付ける。
【0043】
そして、半導電層5の先端部に電界に対し非線形抵抗特性材料からなる内部電界緩和層7を、半導電層5のコイルエンド側端部に重ね、コイルエンド方向に100mm以上の長さで、かつ電界緩和層4のコイルエンド側端部をこえないように設置する。
【0044】
その後、内部電界緩和層7のコア側先端部からコア方向に20mmの位置から、半導電層5と内部電界緩和層7との重なり部を覆うように第2半導電層12を巻回し、さらにそれら全体を覆うように、マイカテープを最適な分圧比(但し、50%以下)になるように複数回巻き付け、シールド絶縁層6を形成し、全体を例えばエポキシ樹脂を用いて含浸し重合、そしてプレス整形し、その後、その上に低抵抗コロナシールド層3とこの低抵抗コロナシールド層3のコイルエンド側端部に重ねて電界緩和層4を設け、固定子コイルを構成したものである。
【0045】
次にその作用効果について説明する。この実施例の形態では、内部電界緩和層7の先端部を半導電層5と第2半導電層12が挟む構造になっている。そのため半導電層5、12と内部電界緩和層7との重なり部の接触が良くなり、両層間を確実に電気的に接続でき、安定した電界緩和効果が得られる。
【0046】
なお、この実施の形態2では半導電層5とこの半導電層5のコイルエンド側先端部に内部電界緩和層7を設け、かつその重なり部を第2半導電層12で覆った層が一層であったが、この層をコイル導体1の軸心の関して同心状にシールド絶縁層6内に複層設けても良い。
【0047】
また、導電性を確実にするためにこの実施の形態の第2半導電層12の替わりに、コイルの乾燥温度あるいは樹脂の重合温度で熱収縮する絶縁性材料12aを内部電界緩和層7と半導電層5の重なり部の外周に設けても良い。
また、内部電界緩和層7に熱収縮性のある例えば基材にポリエステル不織布を使ったSiCテープやシートを使用してもよい。
【0048】
実施の形態3.
図6はこの発明の実施の形態3による高圧の回転電機の固定子コイルエンド構造を示す断面図である。図6において、9は半導電層5よりも表面抵抗率が高く、半導電層5のコイルエンド方向端部と電気的に接続された放電防止部材である第3半導電層である。
【0049】
以下、このような構成の高圧の回転電機の固定子コイルの製造方法について説明する。まず、コイル導体1に例えば集成マイカからなるマイカシートに、補強材としてガラスクロスを張り合わせたマイカテープを複数回巻き付け、主絶縁層2を形成する。その上に表面抵抗率が102〜107Ω程度の半導電性を有するシートあるいはテープからなる半導電層5を、低抵抗コロナシールド層3と電界緩和層4の重なり部からコア側に入り込んだ位置から低抵抗コロナシールド層3先端からコイルエンド側に30mmの位置まで巻き付ける。
【0050】
そして、半導電層5のコイルエンド方向端部に第3半導電層9を重ねて設置する。そして、それら全体を覆うようにマイカテープを最適な分圧比(但し、50%以下)になるように複数回巻き付け、シールド絶縁層6を形成し、全体を例えばエポキシ樹脂を用いて含浸し重合、プレス整形し、その後、その上に低抵抗コロナシールド層3とこれの先端部に当接して電界緩和層4を設けて、固定子コイルを構成したものである。
【0051】
次にその作用効果について説明する。ここで半導電層5、第3半導電層9の表面抵抗率をそれぞれR1、R2Ωとする。この実施の形態の構成の場合、半導電層の表面抵抗率はR1<R2であり、コイルエンド方向に行くに従って高くなり、第3半導電層9の先端部では高抵抗になっている。そのため、第3半導電層9端部では電界が小さくなり、部分放電を防止することが可能となる。さらに、半導電層5および第3半導電層9の上をシールド絶縁層6で覆うことで主絶縁層2の絶縁性能を低下させない。なお、第3半導電層は1段のみならず2段以上にしても良い。ただし、その場合、後段の表面抵抗率は前段よりも高くなくてはならない。
【0052】
実施の形態4.
図7はこの発明の実施の形態4による高圧の回転電機の固定子コイルエンド構造を示す断面図である。図7において10は例えば半導電性のゴムで整形された半導電性部材である半導電性キャップである。図8はこの実施の形態に係わる半導電性キャップ10を示す一部を断面で示す斜視図である。
【0053】
以下、このような構成の高圧の回転電機の固定子コイルの製造方法について説明する。まず、コイル導体1に例えば集成マイカからなるマイカシートに、補強材としてガラスクロスを張り合わせたマイカテープを複数回巻き付け、主絶縁層2を形成する。その上に表面抵抗率が102〜107Ω程度の半導電性を有するシートあるいはテープからなる半導電層5を低抵抗コロナシールド層3と電界緩和層4の重なり部からコア側に入り込んだ位置から低抵抗コロナシールド層3先端からコイルエンド側に30mmの位置まで巻き付ける。
【0054】
そして、半導電層5の先端部に例えば抵抗が102〜107Ω程度の半導電性ゴムを整形したキャップ10をはめ込み、さらにそれら全体を覆うようにマイカテープを複数回巻き付け、シールド絶縁層6を形成し、全体を例えばエポキシ樹脂を用いて含浸し重合、そしてプレス整形し、その後、その上に低抵抗コロナシールド層3とこれの先端部に当接して電界緩和層4を設けて、固定子コイルを構成したものである。
【0055】
次にその作用効果について説明する。半導電層5の先端部は半導電性キャップ10により曲率半径を大きくとってあるため、電界集中が緩和され、部分放電を防止することが可能となる。さらに、半導電層5および半導電性キャップ10をシールド絶縁層6で覆うことで主絶縁層2の絶縁性能を低下させない。
【0056】
なお、上記構成では半導電層の先端部は半導電性キャップ10をはめ込んだが、図9および図10に示すような断面が半円形の半導電性チューブ11を、図9に示すように、半導電層5の先端外周部に巻いても良い。また、半導電層5のコイルエンド側先端に半導電性キャップ10あるいは半導電性チューブ11を設けた層を同心状に複数層、シールド絶縁層6内部に設けても良い。
【0057】
【発明の効果】
以上のようにこの発明では、回転電機の固定子コイルエンド構造であって、コイル導体と、このコイル導体を覆う主絶縁層と、この主絶縁層の外部表面に設けられた低抵抗コロナシールド層と、上記主絶縁層のコイルエンド外周部に上記低抵抗コロナシールド層の端部と重ねて設けれられた電界に対し抵抗値が変化する非線形抵抗特性を有する電界緩和層と、上記低抵抗コロナシールド層と電界緩和層との重なり部よりコア側に入った位置から上記電界緩和層のコイルエンド側の端部を越えない範囲で、かつ上記主絶縁層の表面に設けられた半導電層と、この半導電層のコイルエンド側端部に重ねて設置し、かつ上記電界緩和層のコイルエンド側の端部を越えない範囲に設けた放電防止部材と、上記半導電層と放電防止部材を覆うシールド絶縁層と、を備えたもので、放電防止部材により半導電層先端部の電界を緩和することで、半導電層先端部での部分放電を防止すると供に、低抵抗コロナシールド層と電界緩和層との重なり部のジュール損を低下させ、電界緩和層の沿面放電を抑制し、さらにそれら総てをシールド絶縁層で覆うことで主絶縁層の絶縁性能を低下させず、信頼性の高い回転電機の高電圧化、大容量化を可能にする。
【0058】
特にこの発明では、上記放電防止部材を電界に対し非線形抵抗特性を有する内部電界緩和層としたので、半導電層先端部に電界を集中させないため半導電層先端部での部分放電を抑制でき、また電界緩和層におけるジュール損密度を小さくし、温度上昇を抑制し、電界緩和層での沿面放電を防止できる。
【0059】
またこの発明では、上記内部電界緩和層のコア側先端部からコア方向に入った位置から上記半導電層と内部電界緩和層との重なり部までを覆うように第2半導電層を設けたので、内部電界緩和層の先端部を半導電層と第2半導電層が挟む構造になっているので、半導電層と内部電界緩和層との重なり部の接触が良くなり、両層間を確実に電気的に接続でき、安定した電界緩和効果が得られる。
【0060】
またこの発明では、上記内部電界緩和層のコア側先端部からコア方向に入った位置から上記半導電層と内部電界緩和層との重なり部までを覆うように絶縁性の熱収縮材料を設けたので、半導電層と内部電界緩和層との重なり部の接触が良くなり、両層間を確実に電気的に接続でき、安定した電界緩和効果が得られる。
【0061】
またこの発明では、上記内部電界緩和層の材料として、熱により収縮する非線形抵抗材料を使用するようにしたので、非線形抵抗材料であるため、半導電層先端部の電界緩和を行うと共に、熱収縮により半導電層と内部電界緩和層との接触がよくなり、両層間を確実に電気的に接続できる。
【0062】
またこの発明では、上記内部電界緩和層の表面抵抗率が電界緩和層の表面抵抗率と同等以上であるようにしたことにより、半導電層先端部に電界を集中させず半導電層先端部での部分放電を抑制でき、また電界緩和層におけるジュール損密度を小さくし、温度上昇を抑制し、電界緩和層での沿面放電を防止できる。
【0063】
またこの発明では、上記半導電層とこれのコイルエンド側先端部に内部電界緩和層を設けた層を上記シールド絶縁層内に、上記コイル導体の軸心に対して同心状に複数層設けたことにより、上記部分放電および沿面放電をより一層防止できる。
【0064】
またこの発明では、上記放電防止部材を上記半導電層より表面抵抗率が高い第3半導電層としたので、表面抵抗率がコイルエンド方向に行くに従って高くなり、第3半導電層の先端部では高抵抗になり、そのため第3半導電層端部では電位差が小さくなり、部分放電を防止することが可能となる。
【0065】
またこの発明では、上記第3半導電層を2段以上としたので、より部分放電防止効果が向上する。
【0066】
またこの発明では、上記放電防止部材を上記半導電層のコイルエンド側端部に設けられた、上記半導電層の端部より大きい曲率半径を有する半導電性部材からなるものとしたので、半導電層先端部に電界を集中させないため半導電層先端部での部分放電を抑制できる。
【0067】
またこの発明では、上記半導電性部材を上記半導電層のコイルエンド側端部に沿って延び、端部を裏表から挟むように覆う半導電性キャップで構成したので、容易に実現を可能にした。
【0068】
またこの発明では、上記半導電性部材を上記半導電層のコイルエンド側端部の縁に沿って延びる半導電性チューブで構成したので、より容易に実現を可能にした。
【0069】
またこの発明では、上記主絶縁層とシールド絶縁層との比である分圧比が50%以下であることとして、上記の効果を実現可能とした。
【0070】
またこの発明では、上記半導電層の表面抵抗率が102〜107Ωの範囲にあることとして、上記の効果を実現可能とした。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1による高圧の回転電機の固定子コイルエンド構造を示す断面図である。
【図2】従来例と実施の形態1の固定子コイルエンド内部の電位分布を示す図である。
【図3】従来例と実施の形態1の固定子コイルエンド表面のジュール損密度を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1において内部電界緩和層の長さを変化させた場合の固定子コイルエンド内部の電位差を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態2による高圧の回転電機の固定子コイルエンド構造を示す断面図である。
【図6】この発明の実施の形態3による高圧の回転電機の固定子コイルエンド構造を示す断面図である。
【図7】この発明の実施の形態4による高圧の回転電機の固定子コイルエンド構造を示す断面図である。
【図8】図7の半導電性キャップを示す一部断面で示す斜視図である。
【図9】この発明の実施の形態4による別の高圧の回転電機の固定子コイルエンド構造を示す断面図である。
【図10】図9の半導電性チューブを示す一部断面で示す斜視図である。
【図11】従来の高圧の回転電機の固定子コイルエンド部の構成を示す部分断面図である。
【図12】従来の高圧の回転電機の固定子コイルエンド内部の電位分布を示す図である。
【符号の説明】
1 コイル導体、2 主絶縁層、3 低抵抗コロナシールド層、4 電界緩和層、5 半導電層、6 シールド絶縁層、7 内部電界緩和層(放電防止部材)、9 第3半導電層(放電防止部材)、10 半導電性キャップ(半導電性部分)、11 半導電性チューブ(半導電性部分)、12 第2半導電層、12a 熱収縮絶縁材料。
Claims (2)
- 回転電機の固定子コイルエンド構造であって、
コイル導体と、
このコイル導体を覆う主絶縁層と、
この主絶縁層の外部表面に設けられた低抵抗コロナシールド層と、
上記主絶縁層のコイルエンド外周部に上記低抵抗コロナシールド層の端部と重ねて設けられた電界緩和層と、
上記低抵抗コロナシールド層と上記電界緩和層との重なり部よりコア側に入った位置から上記電界緩和層のコイルエンド側の端部を越えない範囲で、かつ上記主絶縁層の表面に設けられた半導電層と、
上記半導電層のコイルエンド側端部に重ねて設置し、かつ上記電界緩和層のコイルエンド側の端部を越えない範囲に設けた放電防止部材と、
上記半導電層と放電防止部材を覆うシールド絶縁層と、
を備え、上記放電防止部材が電界に対し非線形抵抗特性を有する内部電界緩和層からなり、上記内部電界緩和層の表面抵抗率が電界緩和層の表面抵抗率と同等以上であることを特徴とする回転電機の固定子コイルエンド構造。 - 上記半導電層とこれのコイルエンド側先端部に内部電界緩和層を設けた層を上記シールド絶縁層内に、上記コイル導体の軸心に対して同心状に複数層設けたことを特徴とする請求項1に記載の回転電機の固定子コイルエンド構造。
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