JP2005080468A - 回転電機の固定子コイル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鉄心スロット部およびこの鉄心スロット部外の直線部に対地主絶縁層からの樹脂漏れを防止するフィルムテープを巻回し、更にこのフィルムテープ外周部に低抵抗コロナシールドテープを巻回することにより、低抵抗コロナシールド部を形成し、この低抵抗コロナシールド部の巻回形成後に熱硬化性含浸樹脂を真空加圧含浸・加熱硬化させる。
【選択図】図1
Description
しかし、対地主絶縁層4として巻回されているマイカテープは硬く、また比較的厚い(0.10〜0.23mm)ため低抵抗コロナシールド層6と密着しがたく、マイカテープ端縁部には低抵抗コロナシールド層6との間の密着性が悪い部分にマイカテープ厚さに匹敵するような比較的大きな三角形状の樹脂溜まりが出来る可能性がある。
加熱硬化時には樹脂粘度が低下するため含浸樹脂の流動性が増し、一旦含浸された樹脂もこれらテープのクロスの目や不織布の繊維の隙間を経由して絶縁表面近くの樹脂が漏れ出し、結果的に低抵抗コロナシールド層の下部のマイカテープ層端縁部の樹脂溜まりにボイドを形成する。図7に示すように低抵抗コロナシールド層6の直下にマイカテープ4の厚さに匹敵する比較的大きな(0.10〜 0.23mm)ボイド11が形成されるとボイド放電が発生し、その放電によって低抵抗コロナシールド層のカーボンやグラファイトが消失し、さらに放電が大きくなる恐れがある。
なお、各図間において、同一符号は同一あるいは相当部分を示す。
図1、図2、および図3は、この発明の実施の形態1に係る高電圧回転電機固定子コイルを示すもので、図1は低抵抗コロナシールド装置の部分を模式的に示す要部斜視図、図2はスロット部における絶縁構造を模式的に示す要部断面図、図3は図2における最外層の重ね代を変えた場合を模式的に示す要部断面図である。
上記のごとく本発明の低抵抗コロナシールド装置は、対地主絶縁層の外周部に巻回されたフィルムテープ層5と、このフィルムテープ層の外周部に巻回された低抵抗コロナシールド層6とにより構成されている。なお、2は固定子コイル3をスロット部内1aに保持するための楔である。
なお、高抵抗コロナシールド層7は例えば炭化珪素混入塗料などの材料を用いて形成された従来と同様のものが特別な制限なく用いることができる。
回転電機の固定子コイル3には、導体(亀甲型)の周囲に所定回数マイカテープを巻回して所定の厚さの対地主絶縁層4を形成し、しかる後固定子鉄心スロット部1aに相当する部位(鉄心スロット部および鉄心スロット外の直線部)にそれぞれテープを巻回してフィルムテープ層5と低抵抗コロナシールド層6からなる低抵抗コロナシールド装置を形成する。またコイル端部には低抵抗コロナシールド層6と連接して高抵抗コロナシールド層7を形成する。
温度が上昇して粘度が低下した樹脂は、このフィルムテープ層5があるためテープを貫通する方向への流出が防止され、フィルムテープ層下部の対地主絶縁層4からは樹脂がほとんど漏れて行かないためフィルムテープ下部近傍にはボイドが形成されない。また、フィルムテープ層5はマイカ層に比べて柔らかく、低抵抗コロナシールド層6もポリエステルやテトロン・ポリアミド基材で形成されて柔らかいので、両層の密着性がよいため両層間の樹脂もれが起き難く、従って絶縁層表面近傍の部分放電が抑制される。
また図3に示すように、低抵抗コロナシールド層6の厚さが厚くなり過ぎないように、低抵抗コロナシールド層のテープ相互の重なりをマイカテープ巻回時のような半重ねより小さくして、厚さの増加を抑える構造にしても同様の樹脂漏れの効果は得られる。なおテープ幅は25〜38mm程度の幅のものが通常使われるが、工作の信頼性から考えると、この重なり幅は最低5mm程度の確保が必要である。
図4はこの発明の実施の形態2である高電圧回転電機の固定子コイルの低抵抗コロナシールド装置を示す要部断面図である。
フィルムテープ層5が存在するとその下にある主絶縁層4からの樹脂漏れが防止される。すなわち、マイカテープ(対地主絶縁層4)の段差で形成される三角形状の小さな空間は、含浸樹脂によって充填されるため樹脂充填部12となりボイドは形成されない。
一方、低抵抗コロナシールド層6とフィルムテープ層5は柔らかいため密着性がよく、両層間の樹脂は漏れにくい。しかし、万一両層間の樹脂が漏れてフィルムテープ端部にボイド11が形成された場合には部分放電が発生して低抵抗コロナシールド層6を消失させたり、絶縁層を劣化させる恐れがある。この時、フィルムテープ層5を形成するフィルムの厚さを薄くしておけば、たとえフィルム厚さに相当するボイドができても回転電機運転中に放電しないようにできる。
この点に着目し、上記低抵抗コロナシールド装置のテープ層に形成されるボイドの分担電圧が気体の最低放電電圧以下となるように、各テープ層の厚さを設定すればよい。
ここに0.025m m(25μm)のボイドが存在すると、絶縁部は4.132mm、絶縁の比誘電率を5とすれば、厚さ4.132/比誘電率5=0.8264なので、0.025mmのボイドの分担電圧は、
0.025/(0.025+0.8264)*18√3=0.305 kV
となる。
気体の放電を表すパッシェン(Paschen)則では、最低放電電圧は約0.34kVであるので、0.025mm以下であるボイドでは放電しない。
同様に、定格電圧16kVの場合、設計電界2.5kV/mmならば、絶縁厚さは3.695mm、ボイド0.025mm、絶縁部3.670mm、3.67/5=0.734なのでボイドの分担電圧は
0.025/(0.025+0.734)*16/√3=0.304kV
となり、従ってこれも放電しない。
現在の絶縁性フィルムは、工業的には25μmのほか50、125、250μm、薄い方では12.5、6.3μm などが作られている。
もし0.01mmのフィルムが製造プロセスを満たして適用できるならば、上記のように、0.025mmを前提に計算した分担電圧よりももっと小さくなるので、より放電しない効果が期待できる。
現在市販の25μmより薄いテープは放電しない方向となるので問題なく使用できるが、厚い方の市販品で25μm以上の対象品を選ぶとすれば50μmのものとなる。この場合およそ分担電圧が2倍の0.6kV程度となり、パッシェン則の放電電圧を超え放電する可能性が出てくるので使用不可となる。
上記のように、気体の放電を表すパッシェン則によると、最低放電電圧は約0.34kVであるので、現在、市販のテープで上記条件に適応できるものの最高値は25μmと言う事になるが、上記の最低放電電圧(パッシェン則)に適応できる25μmより厚いテープが製品化されれば25μmの厚さに制約されるものではない。また、最低値についても使用するテープについて同様のことがいえる。
図5はこの発明の実施の形態3である高電圧回転電機の固定子コイルの低抵抗コロナシールド装置を示す要部断面図である。
マイカテープ層(対地主絶縁層4)の外周には薄いフィルムテープ層5が巻回され、さらにその外周には低抵抗コロナシールド層6が巻回されている。この時、低抵抗コロナシールド層6としては、薄いフィルムテープ層5が引き裂きや引っかき等の外傷により傷つくことを防止するため、引き裂き・引っかきに強いクロスや不織布を用いる。材料としては一般的なテトロンやポリエステルでも良いが、より望ましくは機械的に高強度であるガラスクロス、ポリアミドの不織布などが適用できる。これにより、フィルムテープ層5が主絶縁層4の最外層からの樹脂漏れを防止し、低抵抗コロナシールド層6がコロナ防止とフィルムテープ層5の外傷防止を兼ねることにより信頼性の高いコイルを提供することができる。
なお、ここで最外層の低抵抗コロナシールド層6もフィルムテープで形成した場合には、引き裂きや引っかきなどの外傷に対して一度に両層ともに傷ついて、絶縁が露出する恐れがある。このような状態で運転すると激しく放電が発生し、絶縁層を劣化させるため好ましくないが、上記説明のようにクロスや不織布の使用で解決できる。
図6はこの発明の実施の形態4である高電圧回転電機の固定子コイルの低抵抗コロナシールド装置を示す要部断面図である。
マイカテープ層(対地主絶縁層4)の外周には薄いフィルムテープ層5が巻回され、その外周には低抵抗コロナシールド層6が巻回されている。この時、低抵抗コロナシールド層6にはゴム系接着剤が添加され、樹脂含浸・硬化時に膨潤したゴム材料が低抵抗コロナシールド層とマイカテープ層(対地主絶縁層4)との界面に染み出し、マイカテープ端縁部の樹脂溜まり部を埋め、その結果一旦含浸された樹脂が漏れてもボイドを形成しないようになる(樹脂充填部12)。特にマイカテープに比較して薄いフィルムテープ層5の場合は、テープ端に形成される樹脂溜まり(樹脂が漏れるとボイドになる)の体積ははるかに小さいため、樹脂含浸・硬化時にゴム材料が僅かでも膨潤して染み出せばボイド部分を埋められる(ゴム材料充填部13)。これによりボイドが形成されないため、フィルムテープ端縁部でのボイド放電を抑制できる。ゴム材料としては例えばニトリルゴムを用いることができる。
上記のごとく、薄いフィルムを用いることで万一樹脂もれが発生してテープ厚さに匹敵するボイドが出来ても放電を防止でき、またボイドを形成しないよう低抵抗コロナシールド層にゴム系材料を添加しボイドとなりうる部分を充填したことにより、放電による劣化を抑制することが可能となり、信頼性の高い固定子コイルの低抵抗コロナシールド装置を提供することができる。
2 楔。 3 固定子コイル。
4 対地主絶縁層。 5 フィルムテープ層。
6 低抵抗コロナシールド層。 7 高抵抗コロナシールド層。
8 コイル導体。 11 ボイド。
12 樹脂充填部。 13 ゴム材料充填部。
Claims (4)
- 鉄心スロットに配置された導体の周囲に設けられ、熱硬化性含浸樹脂を含浸・硬化させることにより構成される対地主絶縁層を有する回転電機の固定子コイルにおいて、上記対地主絶縁層の外周に、鉄心スロット部およびこの鉄心スロット部外の直線部に巻回され上記対地主絶縁層からの樹脂漏れを防止するフィルムテープと、このフィルムテープの外周部に巻回された低抵抗コロナシールドテープとからなる低抵抗コロナシールド部を備えたことを特徴とする回転電機の固定子コイル。
- 上記フィルムテープ層の厚さを、25μm以下にしたことを特徴とする請求項1に記載の回転電機の固定子コイル。
- 上記低抵抗コロナシールド層が低抵抗クロステープ層または低抵抗不織布テープ層であり、その厚さを25μm以下にしたことを特徴とする請求項2に記載の回転電機の固定子コイル。
- 上記低抵抗コロナシールド層がゴム系接着材を添加した低抵抗クロステープ層または低抵抗不織布テープ層であることを特徴とする請求項2に記載の回転電機の固定子コイル。
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