JP3743884B2 - インクジェットヘッドの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、支持体上に形成される大型インクジェットヘッド用のオリフイス板に正しい形状のオリフィスを形成し且つ支持体除去時に基板に損傷を与える虞の無いインクジェットヘッドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット方式のプリンタが広く用いられている。このインクジェット方式によるプリンタには、インクを加熱し気泡を発生させてその圧力でインク滴を飛ばすサーマル方式や、ピエゾ抵抗素子(圧電素子)の変形によってインク滴を飛ばすピエゾ方式等がある。
【0003】
上記のサーマル方式には、インク滴の吐出方向により二通りの構成がある。一つは発熱素子の発熱面に平行な方向へインク滴を吐出する構成のサイドシュータ型と呼称されるものであり、他の一つは発熱素子の発熱面に垂直な方向にインク滴を吐出する構成のルーフシュータ型と呼称されるものである。
【0004】
図4(a) は、そのようなルーフシュータ型のインクジェットプリンタに配設されるインクジェットヘッドのインク吐出面を模式的に示す平面図であり、同図(b) は、そのA−A′断面矢視図、同図(c) は、このインクジェットヘッドが製造されるシリコンウェハを示す図である。
【0005】
同図(c) に示すように、インクジェットヘッド1は、シリコンウェハ2の上で、LSI形成処理技術と薄膜形成処理技術とにより形成され、完成後にシリコンウェハ2から個々に切り出されて採取される。
同図(a) に示すように、インクジェットヘッド1のインク吐出面には、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4種類のインクを吐出する4列のオリフィス列3が形成されている。1列のオリフィス列3には64個、128個あるいは256個等の多数のオリフィス4が例えば25.4mm当り300ドットの解像度(1mm当り約12個の密度)で縦1列に並んで配置されている。これらの各オリフィス列3には不図示のインクカートリッジ等から各オリフィス列3に対応する色のインクがそれぞれ供給される。
【0006】
このインクジェットヘッド1の内部構成は、同図(b) に示すように、ヘッドチップ5上に、LSIからなる駆動回路6と薄膜からなる抵抗発熱部7が形成されている。この抵抗発熱部7は後から形成されるオリフィス列3のオリフィス4の数だけ1列に並んで形成されている。そして、この抵抗発熱部7の一方の端部と駆動回路6とを接続する個別配線電極8が形成され、更に抵抗発熱部7の他方の端部と給電用端子9とを接続する共通電極11が形成されている。そして、これらの上に隔壁12が積層されている。
【0007】
上記1列に並んで形成されている抵抗発熱部7に平行に延在してインク供給溝13が穿設形成され、このインク供給溝13に連通してヘッドチップ5の下面に貫通するインク供給孔14が穿設されている。これらの上からオリフィス板15が、熱と圧力を加えられて、下面の熱可塑性接着剤により隔壁12上に接着されて積層されている。
【0008】
このオリフィス板15の積層により、隔壁12の厚さに対応する高さおよそ10μmのインク流路16が、抵抗発熱部7とインク供給溝13間に形成される。この後、オリフィス板15にはメタルマスク17が形成され、このメタルマスク17に従って、インクを吐出する上述のオリフィス4が形成される。同図(a) に示すシリコンウェハ2の直径が例えば6×25.4mmであるとすると、上述したようなインクジェットヘッド1を90個以上採取することができる。
【0009】
上記の図4(a),(b) に示すインクジェットヘッド1は、一般に15×20mm程度の小さなものであり、通常は主として家庭用に使用されるシリアル式プリンタの印字ヘッドとして用いられ、プリンタのキャリッジにインクカートリッジと共に搭載され、用紙の幅方向すなわち印字主走査方向(図4(a) に示すインクジェットヘッド1では図の左右方向)に往復移動して印字を実行する。
【0010】
ところが、近年、情報通信システムの一翼を担うものとしてプリンタの需要が急激に増えており、その需要の増加に伴って印字の高速化の要望が高まっている。上述したシリアル式のプリンタでは、印字を高速に行うためには印字ヘッドとインクカートリッジを主走査方向に高速に往復移動させるか、あるいは印字ヘッドのオリフィス列を長大に、つまり印字ヘッドを大型化して対処する必要があるが、そのような方法で高速印字を行うと駆動の負荷が大きくなり過ぎて、装置の大型化や装置の短寿命化等の不具合があって実用的でない。つまり、シリアル式のプリンタは、高速化が構造的に困難である。
【0011】
そこで、高速印字にに対応させるためには、ライン式プリンタ用の長尺化した印字ヘッドが必要である。長尺印字ヘッドは、図4(a) のインクジェットヘッド1を90度回転させ、その長手方向を延ばして、オリフィス列の長さを用紙幅方向の印字領域の長さと同じになるように形成することが考えられた。
【0012】
しかしながら、上記のような長尺印字ヘッドをシリコンウエハで作成するのでは、シリコンウエハは丸いものであるから、6×25.4mmφ以上の大型のシリコンウエハを用いても、上記のような長尺印字ヘッドは1枚のシリコンウエハからはその直径方向に沿って2個か3個程度しが取れない。したがって極めて歩留りが悪く高価なものとなって問題がある。
【0013】
そこで、シリコンウエハの代わりに、セラミックスやガラスの基板を用いることが提案されている。これであると基板に対する取り数の問題は解決する。また、このような大型の基板上の、抵抗発熱体、配線電極、隔壁等の内部構造物の上に更にオリフィス板として厚さ数十μm程度の薄膜体を均等に貼り付ける方法として、一旦オリフィス板を表面が平滑で硬度のある素材の上に貼着またはスパッタで覆設し、これを上記の基板上に貼り付ける方法がある。
【0014】
図5(a) 〜(f) は、そのような長尺印字ヘッドの製造方法を示す図である。この製造方法は、先ず、同図(a) に示すように、ガラス等から成る支持体18上に有機樹脂材料を塗布して硬化させてオリフィス板19を形成する。次に、このオリフィス板19上に、同図(b) に示すように、接着剤を塗布・乾燥させて接着剤層21を形成する。これにより、支持体18上にオリフィス板19と接着剤層21が積層された支持体基板Aが得られる。
【0015】
続いて、同図(c) に示すように、ガラス等からなる基板22上に抵抗発熱体、配線電極、隔壁等の全体的に凹凸のある形状をなす内部構成23(図では図示する上での便宜上、内部構成23を均一な構成部分であるかのように一様に示している)が既に形成されてある本体基板Bの上に、天地を逆にした支持体基板Aを加圧、熱処理によって貼り付ける。この後、支持体18を、同図(d) に示すように除去する。このように、オリフイス板19を本体基板B上に一様に張設して、内部構成23側に落ち込んだり、全体に皺が発生したりすることのないオリフィス板を形成することができる。
【0016】
更に続いて、上記のように支持体18が除去されたオリフィス板19の上に、同図(e) に示すように、マスク用メタル層24を形成し、これをパターン化し、このマスクパターンに従ってエッチングして、オリフィス板19にオリフィス25を形成して印字ヘッド26が完成する。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述したインクジェットヘッドの製造方法では、種々の不具合が発生することが判明した。
図6(a),(b) 及び図7(a),(b) は、その不具合が発生する状態を模式的に示す図である。先ず、上述のように大型の支持体18の全面に樹脂膜を覆設する方法でオリフイス板19を形成すると、樹脂膜の硬化収縮によって、図6(a) に矢印C及び矢印C′で示すように、オリフイス板19に張力による内部応力が発生する。尚、図5(b) 〜(f) に示した接着剤層21は、実際には図6(a) に示すように、他の構成部分に比較して無視できる程度に薄い層である。
【0018】
上記の状態で支持体基板Aを本体基板Bに貼り合わせ、支持体18を除去した後、穿設加工によって、図5(f) に示したようにオリフィス25を形成すると、そのオリフィス加工によってオリフィス板19の内部応力の均衡が崩れ、このため、上記形成されたオリフィス25の形状に、図6(b) に示すように、インク吐出方向を正常な垂直方向から傾斜した方向へ変えるようなゆがみが発生する。このようにオリフィス25のインク吐出方向がオリフィス板19の面に対して垂直な方向を向いていないと、正しいピッチの印字ドットで正しい画像を印字(印刷)することができない。
【0019】
また、従来は、ガラスの支持体18の除去を専らウェットエッチングのみで行っているが、ガラスはウエットエッチングに時間が掛かる。例えば支持体としての強度上の必要から0.7mm程度の厚さのガラス板を支持体として用いると、濃度50%のフッ酸でも30μm/min(30℃)程度のエツチングレートしか得られないため、支持体を完全に溶解除去するには、およそ30分近くの時間を要し、作業能率が上がらないという問題があった。
【0020】
また、図7(a) に示すように支持体基板Aと本体基板Bを貼り合わせた後、支持体18に対し同図(b) に示すように長時間のウエットエッチングを行っていると(同図(b) の破線部分18′はエッチングによって除去された部分を示している)、エッチャントであるフッ酸中に全体が長時間浸漬されるため、支持体基板Aと本体基板Bとの貼り合わせの隙間部分からフッ酸が侵入し、同図(a) に示す本体基板Bの内部構成23のSiO2 などから成る下地膜27が、同図(b) に示す浸食部27′のように浸食され、内部構成23の配線電極や隔壁部分28を本体基板に短絡させたり剥離させるなどの不具合を引き起こすという問題があった。
【0021】
本発明の課題は、上記従来の実情に鑑み、支持体を用いて形成される大型インクジェットヘッド用のオリフイス板に正しい形状のオリフィスを形成し且つ支持体除去時に基板に損傷を与える虞の無いインクジェットヘッドの製造方法を提供することである。
【0022】
【課題を解決するための手段】
先ず、請求項1記載の発明のインクジェットヘッドの製造方法は、薄膜体を支持体上に覆設する工程と、上記支持体上に覆設された上記薄膜体上に接着剤を被着する工程と、上記薄膜体を加工するためのマスクを上記接着剤上に被着する工程と、上記マスクをパターン加工する工程と、エッチングにより上記接着剤と上記薄膜体を上記マスクパターンに則って加工して上記薄膜体を複数の薄膜体に分割する工程と、上記マスクを除去する工程と、上記マスクが除去されて露出した上記接着剤の面を、少なくともインクを吐出させるための印字素子が形成されている基板上に、貼り合わせる工程と、上記支持体を除去する工程と、上記薄膜体上に金属マスクパターンを形成する工程と、上記薄膜体及び上記接着剤を上記金属マスクパターンに従ってエッチングしオリフィスを形成することにより、上記薄膜体をオリフィス板に加工する工程と、よりなる。
【0023】
上記支持体を除去する工程は、例えば請求項4記載のように、該支持体を上記接着剤面から剥離する工程で構成してよい。
次に、請求項2記載の発明のインクジェットヘッドの製造方法は、薄膜体を支持体上に覆設する工程と、上記支持体上に覆設された上記薄膜体上に接着剤を被着する工程と、上記薄膜体上に被着された上記接着剤の面を、インクを吐出させるための印字素子が形成された基板上に貼り合わせる工程と、貼り合わされた上記支持体及び上記基板の端面及びその間隙部にレジストを施す工程と、上記支持体をエッチングにより除去する工程と、上記薄膜体上に金属マスクパターンを形成する工程と、上記薄膜体及び上記接着剤を上記金属マスクパターンに従ってエッチングしオリフィスを形成することにより、上記薄膜体をオリフィス板に加工する工程と、よりなり、上記レジストにより上記エッチング工程において上記基板を保護すことを特徴とする
【0024】
上記いずれの製造方法においても、上記支持体を除去する工程は、例えば請求項3記載のように、サンドブラスト工程と該サンドブラスト工程の後に行うエッチング工程の2つの工程から成るように構成してよい。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1(a) は、一実地の形態におけるインクジェットヘッドの製造方法の主要部の処理工程を説明するフローチャートであり、同図(b) は、そのガラス基板除去工程の詳細を示すフローチャートである。
【0026】
図2(a),(b),(c) は、上記処理工程のオリフィス板加工までの状態を模式的に示す断面図であり、同図(d) は、同図(c) の平面図である。
図3(a),(b),(c) は、図2に続く処理工程の基板貼り合せから支持体除去までの状態を模式的に示す断面図であり、図3(d) は、同図(c) の平面図、同図(e) は、同図(d) の横側面図である。
【0027】
先ず、図1に示すように、オリフィス板を形成する(工程S1)。この処理では、図2(a) に示すように、支持体としての支持ガラス基板29の上に薄膜体30を覆設する。支持ガラス基板29は、後の工程で除去される一時的な中間体であり、表面が平滑な適宜の厚さのガラス基板で構成される。
【0028】
薄膜体30は、後の工程でオリフィス板になるものであり、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、又はアクリル樹脂などの有機系樹脂のフィルムを支持ガラス基板29上に貼着して覆設するか、あるいは同じく有機系樹脂で熱硬化型あるいは紫外線硬化型のものを、スピンコート法又はローラコーテング法で支持ガラス基板29上に塗布し硬化させて覆設する。このオリフィス板としての薄膜体30の硬化後の膜厚は、数十μmとなるようにする。
【0029】
次に、上記のように支持ガラス基板29上に覆設された薄膜体30上に接着剤31を被着させる(工程S2)。この処理では、接着剤31の材料としては熱硬化性または熱可塑性のポリイミド樹脂を用い、スピンコート法で厚さ2〜5μm程度に塗布して乾燥する。
【0030】
続いて、薄膜体30を加工する(工程3)。この処理では、特には図示しないが、先ず、薄膜体30を加工するための感光型樹脂等からなるマスクを接着剤31上に被着し、このマスクをフォトリソグラフィー技術でパターン加工し、このマスクパターンに則って、エッチングにより、図2(c) 及び同図(d) に示すように、接着剤31と薄膜体30を加工して、薄膜体30を複数の薄膜体30−1、30−2、・・・に分割する。この分割される薄膜体30−1、30−2、・・・の寸法はこれから作成されるインクジェットヘッドの寸法と同一である。尚、エッチングはウェットエッチングあるいはドライエッチングのどちらでもよい。この後、上記マスクを適宜の溶剤で除去する。これにより、本発明の支持体基板Dが形成される。
【0031】
更に、上記に続いて、貼り合せを行う(工程4)。この処理では、上記のようにマスクを除去されて図2(c),(d) に示すように接着剤31が露出した支持体基板Dを、その天地を逆にして、上記露出した接着剤31の面を、図3(a) に示すように、予め作成されている本体基板Eの上に貼り合わせる。この貼り合わせでは、両基板D及びEを加圧しながら熱処理する。熱処理条件は、接着剤31としての樹脂の硬化条件または軟化条件に対応させて行う。
【0032】
上記の本体基板Eには、ガラスあるいはセラミックス等の絶縁性基板32の上に、インクを吐出させるための印字素子やこの印字素子に吐出エネルギーを発生させるための電力を供給する配線電極、印字素子にインクを適正に供給するためのインク流路を形成する隔壁等の内部構造33が形成されており、また、図には見えないが、絶縁性基板32には、外部から上記インク流路にインクを供給するための、図4(b) に示したインク供給溝13やインク供給孔14と同様のインク供給溝とインク供給孔が形成されている。
【0033】
上記の処理に続いて、支持ガラス基板29を除去する(工程5)。この処理では、先ず図1(b) に示すように、支持ガラス基板29にサンドブラスト加工を行って、支持ガラス基板29の薄膜化処理を行う(工程S5−1)。これにより、図3(b) に示すように、支持ガラス基板29の下部29−1を50〜100μm程度残して、上部29−2が切削されて除去される。
【0034】
サンドブラスト加工はエッチングに比較して切除する速度が速いだけではなくウエットエッチングとは異なり他の部分を側面から浸食することがないので、薄膜体30が露出する寸前までの範囲で高速に支持ガラス基板29の上部29−2を除去することができる。
【0035】
続いて、特には図示しないが、本体基板Eの表面にレジスト塗布を行い(工程S5−2)、さらに、支持体基板Dと本体基板Eのそれぞれ側面にレジスト塗布を行う(工程S5−3)。この処理は、本体基板Eをエッチング剤から防護するために、そのレジストを本体基板Eの露出面つまり底面と四方の側面及び支持体基板Dとの接合部に塗布する処理である。
【0036】
次に、支持ガラス基板29のエッチングを行う(工程S5−4)。このエッチング処理では、例えばフッ酸によるウェットエッチングなどを用いる。この場合、上記のレジストにはフッ酸に耐性のある樹脂等を用いる。
上記のように、予めサンドブラスト加工により薄膜体30が露出する寸前まで支持ガラス基板29の上部29−2を切除してあるので、エッチングレートの遅いフッ酸によるウエットエッチングでも、従来のようにエッチング時間を大きく取られることがなく短時間でエッチングが完了する。これにより、支持体としてガラスを用いた場合にエッチングに時間がかかりすぎて本体基板側に下地膜を浸食する等の損傷を与える不具合が解消される。
【0037】
また、レジストを本体基板Eの露出面である底面と四方の側面だけでなく、支持体基板Dの側面にも連続して塗布することで本体基板Eと支持体基板Dとの接合部がレジストで保護される。これにより、本体基板Eと支持体基板Dとの接合部の隙間および基板端面からエッチング液が侵入して本体基板EのSiO2 等の下地膜が侵されるのを防ぐことができる。
【0038】
上記に続いて、水洗を行って(工程S5−5)、上記のエッチングによって生じた残渣を洗浄した後、レジストを剥離し(工程S5−6)、再び、水洗を行って(工程S5−7)、レジスト剥離後の汚れを洗浄した後、全体を乾燥する(工程S5−8)。これにより、図3(c),(d),(e) に示すように、本体基板Eの内部構造33の上つまり隔壁の上に、個々の印字ヘッドごとに薄膜体30が固着されて、その上から、支持ガラス基板29が除去されて、複数の印字ヘッド本体35が出来上がる。
【0039】
このように、硬度の高いガラスを支持体として、この上にオリフィス板となる薄膜体を形成してから、この薄膜体側の面を予め抵抗発熱部、配線電極、隔壁等の内部構成が形成されている本体基板の表面に貼り付けた後、支持体を除去するので、本体基板の大型サイズにも拘らず薄膜体のオリフィス板を、本体基板の凹凸のある表面上に、撓みや皺を発生させることなく設置することができるだけでなく、各印字ヘッド本体ごとに薄膜体を切り分けてあるので、薄膜体の内部応力が緩和される。
【0040】
この後、特には図示しないが、薄膜体30の上に、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、銅 (Cu)又はアルミニューム(Al)等からなる厚さ0.5〜1μmの金属マスクパターンを、スパッタとフォトリソグラフィーとエッチングで形成し、この金属マスクパターンに従ってドライエッチングを行って、薄膜体30及び接着剤31を貫通する直径が20μm〜40μmのオリフィスを所定の位置(図3(d) の各印字ヘッド本体35毎に所定の位置の図の上下方向)に形成して、印字ヘッドが完成する。
【0041】
上述したように、各印字ヘッド本体ごとに薄膜体を切り分けて薄膜体の内部応力を緩和した後、オリフィスを形成しているので、形成された後にオリフィスの形状がゆがんでインク吐出方向が正しい方向とならずに傾いてしまう、という不具合が解消される。
【0042】
尚、上記実施の形態では、オリフィス層を形成する支持体をガラス基板としているが、これに限ることなく、金属板を用いてもよい。その場合は、支持体基板の除去工程が金属板除去工程となり、金属板を形成している金属を除去することが可能なエッチング液を用いればよい。
【0043】
また、上記実施の形態では、支持ガラス基板をサンドブラストとウエットエツチングで除去するようにしているが、支持体の除去はこれに限ることなく、例えば支持体に、オリフィス板ほどには薄くなく、上記実施形態の場合の支持ガラス基板のように剛体でもない、つまりオリフィス板よりは厚くて且つ柔軟性があるような素材を用いて支持体を構成し、この面に、弱接着性の接着剤を介してオリフィス板を形成し、工程S5における図3(a) から同図(c) となる支持体除去の工程では、支持体をオリフィス板から剥離するようにしてもよい。このようにすれば、エッチングの場合のように、本体基板の周囲に保護レジストを設ける必要が無く、作業能率が向上する。
【0044】
また、内部構造33の印字素子を抵抗発熱体として説明しているが、印字素子は抵抗発熱体と限ることなく、例えばピエゾ素子から成る印字素子であってもよい。
【0045】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、長尺印字ヘッドを作成するために大型の支持体上に覆設したオリフィス板を、後に切り出す印字ヘッドの個々のサイズに加工してからオリフィスを形成するので、オリフィス板の内部応力によりオリフイスの変形が緩和され、これにより、オリフィスのインク吐出方向のバラツキが低減された印字精度の良好な長尺印字ヘッドを製造が可能となる。
【0046】
また、ガラスの支持体を除去するに際し、最初にサンドブラストで切削してから残る部分をウエットエッチングで除去するので、ウェットエッチング時間を短くすることができ、これにより、本体基板へのエッチング液の進入を低減させ、抵抗発熱体や配線電極の短絡や隔壁の剥離を防止して、信頼性の高い長寿命の長尺印字ヘッドを製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a) は一実地の形態におけるインクジェットヘッドの製造方法の主要部の処理工程を説明するフローチャート、(b) はそのガラス基板除去工程の詳細を示すフローチャートである。
【図2】 (a),(b),(c) は図1の処理工程のオリフィス板加工までの状態を模式的に示す断面図、(d) は(c) の平面図である。
【図3】 (a),(b),(c) は図2に続く処理工程の基板貼り合せから支持体除去までの状態を模式的に示す断面図、(d) は(c) の平面図、(e) は(d) の横側面図である。
【図4】 (a) は従来のシリアル式プリンタのインクジェットヘッドのインク吐出面を模式的に示す平面図、(b) はそのA−A′断面矢視図、(c) はインクジェットヘッドが製造されるシリコンウェハを示す図である。
【図5】 (a) 〜(f) は従来のライン式プリンタの長尺印字ヘッドの製造方法を示す図である。
【図6】 (a),(b) は従来の長尺印字ヘッドに発生する不具合を模式的に示す図(その1)である。
【図7】 (a),(b) は従来の長尺印字ヘッドに発生する不具合を模式的に示す図(その2)である。
【符号の説明】
1 インクジェットヘッド
2 シリコンウェハ
3 オリフィス列
4 オリフィス
5 ヘッドチップ
6 駆動回路
7 抵抗発熱部
8 個別配線電極
9 給電用端子
11 共通電極
12 隔壁
13 インク供給溝
14 インク供給孔
15 オリフィス板
16 インク流路
17 メタルマスク
18 支持体
19 オリフィス板
21 接着剤層
22 基板
23 内部構成
A 支持体基板
B 本体基板
24 マスク用メタル層
25 オリフィス
26 印字ヘッド
27 下地膜
28 隔壁部分
29 支持ガラス基板
30 薄膜体
31 接着剤
D 支持体基板
E 本体基板
32 絶縁性基板
33 内部構造
35 印字ヘッド本体

Claims (4)

  1. 薄膜体を支持体上に覆設する工程と、
    前記支持体上に覆設された前記薄膜体上に接着剤を被着する工程と、
    前記薄膜体を加工するためのマスクを前記接着剤上に被着する工程と、
    前記マスクをパターン加工する工程と、
    エッチングにより前記接着剤と前記薄膜体を前記マスクパターンに則って加工して前記薄膜体を複数の薄膜体に分割する工程と、
    前記マスクを除去する工程と、
    前記マスクが除去されて露出した前記接着剤の面を、少なくともインクを吐出させるための印字素子が形成されている基板上に、貼り合わせる工程と、
    前記支持体を除去する工程と、
    前記薄膜体上に金属マスクパターンを形成する工程と、
    前記薄膜体及び前記接着剤を前記金属マスクパターンに従ってエッチングしオリフィスを形成することにより、前記薄膜体をオリフィス板に加工する工程と、
    よりなることを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
  2. 薄膜体を支持体上に覆設する工程と、
    前記支持体上に覆設された前記薄膜体上に接着剤を被着する工程と、
    前記薄膜体上に被着された前記接着剤の面を、インクを吐出させるための印字素子が形成された基板上に貼り合わせる工程と、
    貼り合わされた前記支持体及び前記基板の端面及びその間隙部にレジストを施す工程と、
    前記支持体をエッチングにより除去する工程と、
    前記薄膜体上に金属マスクパターンを形成する工程と、
    前記薄膜体及び前記接着剤を前記金属マスクパターンに従ってエッチングしオリフィスを形成することにより、前記薄膜体をオリフィス板に加工する工程と、
    よりなり、前記レジストにより前記エッチング工程において前記基板を保護することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
  3. 前記支持体を除去する工程は、サンドブラスト工程と該サンドブラスト工程の後に行うエッチング工程の2つの工程から成ることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェットヘッドの製造方法。
  4. 前記支持体を除去する工程は、該支持体を前記接着剤面から剥離する工程であることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドの製造方法。
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