JP3743457B2 - ゴルフボール射出成形方法及びゴルフボール射出成形用金型 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ゴルフボールの射出成形方法及びそれに用いる射出成形用金型に関し、特にゴルフボールのカバーを射出成形する場合に好適とされるものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、ゴルフボールのカバーを射出成形する場合、図9,10に示したように、射出成形機からの溶融カバー成形材料を主ランナーaを通ってリング状のコールドランナーbに導入させ、このリング状ランナーbの内周部に周方向に沿って等配した複数のノズル部cよりゲート部dを通って金型eのキャビティfに供給する方法が採用されていた。なお、図中gはゴルフボールコアを示す。
【0003】
しかし、この方法においては、射出成形後、ゴルフボールを取り出す際、上記リング状ランナーb及びそのノズル部cに残った成形材料もカバーと共に固化し、図11に示したように、ゴルフボールhに上記リング状ランナーb及びノズル部cにそれぞれ対応する上記リング状固化物i及び放射状固化物jも一体に連結した状態で脱型されるものであった。
【0004】
このため、このように脱型されたゴルフボールhは、図12に示したように、ゲートカットして上記リング状及び放射状固化物i,jを切り離した後、ゲート対応部分の固化物(バリ)kをトリミングで除去することが行われていた。
【0005】
しかし、上記ゲートカットやトリミングは手間のかかる後工程であり、ゲートカットやトリミングのできが悪いとせっかく成形した製品が不良となる場合がしばしば生じることがあった。更に、上記リング状、放射状固化物i,jの形成は成形材料の無駄を引き起こし、このためこれら固化物i,jを粉砕し、これを成形材料中に混合して再度射出成形に使用するというリサイクル化も図られてきたが、このような粉砕物を成形材料に混入するとゴルフボールの品質低下や射出成形条件の変動を引き起こすことがあった。
【0006】
また、リング状ランナーを介して射出成形するため、射出成形サイクル途上で溶融成形材料がリング状ランナー内で固化しないように、しかも各ノズル部から各ゲート部を介してキャビティに均等にかつほぼ同時に導入されるようにする必要があることから、射出成形は高圧かつ低速で行われており、一般に高速低圧の射出成形条件を採用し難いものであった。更に、ゲート径は1mm程度が限界であり、これより径が小さいと溶融材料のキャビティ内への流動性が悪くなり、充填不足となるばかりでなく、製品にひけ、ウエルドライン、バリ、その他の外観欠陥を生じやすいという問題があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、ゲートカットやトリミング等の煩雑な後工程を省略でき、材料の無駄のない、高品質のゴルフボールを得ることができるゴルフボールの射出成形方法及び射出成形用金型を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するため、溶融したゴルフボール用射出成形材料を金型キャビティ内に導入してゴルフボールを射出成形する方法において、上記溶融成形材料が流通し、この成形材料の溶融状態を保持する加熱手段が近接して設けられた4つのランナーを、上記キャビティに内接する正四面体の各頂点にノズル部のゲートが位置するように配設し、それぞれゲート部を介して上記キャビティに連通させて、上記成形材料を上記ランナーの出口端から直接ゲート部を介して上記キャビティに射出、導入することを特徴とするゴルフボール射出成形方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、上型と下型とを有し、これら上下型を分離可能に接合することにより内部に中空球状のキャビティを形成するゴルフボール射出成形用金型において、溶融したゴルフボール用射出成形材料が流通する4つに分かれるホットランナーが、上記キャビティに内接する正四面体の各頂点にノズル部のゲートが位置するように配設されてなり、上記ホットランナー内の溶融成形材料の溶融状態を保持する加熱手段をホットランナーに内蔵してなることを特徴とするゴルフボール射出成形用金型を提供する。
【0010】
【作用】
本発明のゴルフボールの射出成形方法及びこれに用いる金型は、溶融したゴルフボール用射出成形材料が流通する4個のホットランナーが内部に形成されていると共に、このホットランナー内に溶融成形材料の溶融状態を保持する加熱手段が内蔵されたホットランナー部材の先端ノズル部を上記キャビティのゲート部に連結して、上記成形材料を上記ホットランナーの出口端から直接ゲート部を介して上記キャビティに射出、導入するものであり、リング状ランナーを介さず、直接キャビティ内に4個のゲートから成形材料を射出するので、ゲートカットやトリミング等の煩雑な後処理をなくすことができ、これら後処理により不良品が生じることをなくすことができる。更に、各成形サイクル毎にランナー部分を取り出す必要がないため、使用する成形材料のロス(無駄)を少なくすることができ、ランナー部分に材料を充填する時間が短縮でき、ランナーを取り出すための時間も不要となるので、これらを合計すると成形サイクル時間がかなり短縮できる。この場合、成形サイクル終了後において、ホットランナー内の溶融成形材料は加熱手段により加熱されるので固化することがなく、溶融状態を保持しているので、次の成形サイクル時に無駄なくキャビティに射出、導入されるものである。また、ランナー取り出しが不要なため、ゲート部が自動分離できるので、全自動成形(無人運転)が可能となる。更に、ゲートカットやトリミング等の後処理がなく、高速低圧成形が可能となり、バリの発生やウエルド等の成形不良の生じることが少ないものである。
【0011】
また、本発明の方法及び装置においては、溶融したゴルフボール用射出成形材料が流通する4つに分かれるホットランナーを、上記キャビティに内接する正四面体の各頂点にノズル部のゲートが位置するように配設するものであり、即ち、各ゲート部をそれぞれが実質的に均等な距離を有して離間するように配設するものであり、このような構成により、偏心のない多層ボールを射出成形することが可能となる。
【0012】
【実施例】
以下、本発明の参考例及び実施例について図1〜8を参照して説明する。図1,2は、本発明の一参考例に係るゴルフボール射出成形用金型を示し、図中1は下面に半球状凹部を有する上型、2は上面に半球状凹部を有する下型であり、これら上型1と下型2とは互に分離可能に接合し得るようになっており、その接合状態において、中空球状キャビティ3が形成されるようになっている。なお、この金型は図中Aが割り面とされる。
【0013】
また、4は第1ホットランナー部材(スプルーブッシュ)、5は第2ホットランナー部材、6は第3ホットランナー部材であり、第3ホットランナー部材6の先端部は上記上型1内に進入した状態に配置され、この部材6の先端ノズル部6aが上記キャビティ3のゲート部7に連結されている。上記各部材4,5,6内には溶融成形材料の通路となるホットランナー8が連続して形成され、射出成形機(図示せず)からの溶融成形材料は、第1ホットランナー部材4のホットランナー入口端8aからホットランナー8内に流入し、上記第3ホットランナー部材6の先端ノズル部6aのホットランナー出口端8bよりキャビティ3内に射出、導入されるようになっている。9はバルブピンで、上記第3ホットランナー部材6のホットランナー8c内に移動可能に(図1中上下方向移動可能に)配設されている。このバルブピン9の基端部(上端部)は上記第2ホットランナー部材5を貫通して上方に突出し、バルブピン9を上下動させる可動装置10と連結され、この作動装置10の作動によりバルブピン9がキャビティ3方向に進出すると、バルブピン9の先端が上記ホットランナー出口端8bを閉塞して、ホットランナー8内の溶融成形材料のキャビティ3内への流入を遮断し、またバルブピン9がキャビティ3側から退出すると、ホットランナー出口端8bが開口してホットランナー8内の溶融成形材料がキャビティ3内に流入し得るように構成されている。この場合、この実施例では、バルブピン9の最大進出限状態においてバルブピン9の先端面がゲート部7内を通って成形ゴルフボール表面に当接し得る位置まで進出するようになっている。
【0014】
更に、上記各ホットランナー部材4,5,6にはそれぞれ加熱手段(ヒーター)11が内蔵されており、この加熱手段11によりホットランナー8を流れる溶融成形材料が加熱されるようになっている。これにより、上記バルブピン9の進出でホットランナー出口端8bが閉塞された後においても、ホットランナー8、特に第3ホットランナー部材6のホットランナー8cに残る成形材料が固化することなく、溶融状態を保ち、次の成形サイクルでこの溶融成形材料がキャビティ3内に射出、導入される。
【0015】
ここで、図1に示す金型においては、上述した構成のホットランナー装置Hが3個設けられており、これらホットランナー装置Hは上型1と下型2とに対し、その接合状態において互いに等間隔づつ離間して配設されており、これにより3つのホットランナー8,8,8がゲート部7,7,7を介してキャビティ3に連通している。このときゲート部7,7,7は互いに等間隔離間し、実質的に120°間隔となるように(それぞれが最も遠くなるように)設けられている。
【0016】
上記金型を用いてゴルフボールを射出成形する場合は、上型1と下型2とを接合した状態において、射出成形機(図示せず)よりゴルフボール用射出成形材料を溶融状態でホットランナー入口端8aに供給する。このときバルブピン9はホットランナー出口端8bより退出させて該出口端8bを開口する。これにより、溶融成形材料はホットランナー8内を流れ、ホットランナー出口端8bより直接キャビティ3内に導入される。所定量の成形材料がキャビティ3内に導入されたら、上記可動装置を作動させてバルブピン9をキャビティ3方向に進出させ、ホットランナー出口端8bを閉塞する。次いで、キャビティ3内の成形材料が固化した後、上記割り面Aで上型1と下型2とを分離し、成形されたゴルフボールを取り出す。更に続いてゴルフボールを成形する場合は上記の動作を繰り返すが、上述したように、先の成形サイクルでホットランナー8内に残った成形材料は加熱手段11の熱により固化することなく溶融状態を保持しているので、新たな成形サイクルでこの溶融成形材料は無駄なく射出成形材料としてキャビティ3内に射出、導入される。なお、バルブピンの進退のタイミングは射出成形機と連動させることよって行うことができる。
【0017】
従って、この方法によれば、成形ゴルフボールが、従来のようにこれに図11に示したようにリング状固化物が一体に接合した状態で成形されるのではなく、成形サイクル終了時はバルブピン9の先端面が成形ゴルフボール表面に当接するので実質的にバリのない状態でかつゲート圧が目立たない状態で成形され、たとえバリがあっても、これはバルブピン9とゲート部7との間のわずかな隙間に成形材料が侵入して生じる薄く短いリング状のバリであって、容易に除去し得る程度のものであり、成形材料に無駄がなく、しかもゲートカットやトリミング等の後工程の削減が可能となり、場合によっては後工程を省略し得、後加工時における不良品の発生も低減する。
【0018】
図3は、上記参考例の変形例であり、この例は第3ホットランナー部材6の先端ノズル部6aを同時にゲート部7とした状態のトップタイプのものである点で上記図1,2のトップレスタイプのものと相違する以外は上記参考例と同様の構成及び作用効果を有するものである。
【0019】
なお、バルブピン9の先端面形状は種々変更でき、図2,3に示すように半球状(ディンプル形状に対応した形状)に形成して、成形サイクル終了時に成形材料に該先端面を食い入れるように押圧してディンプルを形成してもよく、また、このようにディンプルを形成せず、陸地部に当接させる場合は、円形状のほか、三角形、正方形、長方形、六角形、八角形等の多角形や人型、楕円状、ひょうたん形、十字形など種々の形状に形成し得る。
【0020】
また、図4はバルブゲート方式のものである。この方式においては、前後に二分割されたカプセル体62内にピストン64及びスプリング66を配置した部材にてゲートを開閉させる。即ち、ゲート7は、樹脂圧を受けていないときは、スプリング66の力でピストン64がゲート方向に押圧されていることにより閉じている。樹脂圧がかかると、カプセル体62のうちのゲートに近い部分62bが樹脂圧により押され、これによりピストン64が後退しゲート7が開く。キャビティへの充填が完了して樹脂圧が下がると、自動的にスプリング66の力でピストン64を押圧してゲート7を完全にシールするものである。
【0021】
更に、図5,6はそれぞれ上記のようなバルブピンを用いないオープンノズルタイプのもので、図5はホットランナー8cの外側に加熱手段11を有する外部加熱方式のもの、図6はホットランナー8c内に加熱手段11を有する内部加熱方式のものである。これらのオープン方式のものでは、ゲート部7に対応したバリが生じるが、本発明の目的は十分に達成し得るものである。
【0022】
なお、図2〜6の参考例は、キャビティに連通するホットランナーを1つだけ示し、他は省略してあるもので、これらも図1と同様に3つのホットランナーがキャビティに連通しているものである。
【0023】
また、図7は本発明の実施例を示すもので、この例はキャビティ3の複数箇所(図では4箇所)にホットランナー部材6,6,6,6の先端ノズル部6a,6a,6a,6aを連結したものである。
【0024】
このとき4つの先端ノズル部は、図8に模式的に示すように、球状のキャビティに内接する正四面体ABCDの各頂点にゲートがくるように配設されている。このような構造とすることで偏心のない多層ボールを射出成形することが可能となる。
【0025】
更に、図2,3中、参照符号12で示したように、ゲート部7付近に冷却手段を設けると、第3ホットランナー部材6の先端ノズル部6aからの熱で成形ゴルフボールのゲート部7近傍部分が影響されることが避けられ、より外観の良好なゴルフボールが得られる。この冷却手段としては、冷水を循環させる手段やヒートパイプを用いることができる。
【0026】
なお、本発明においては、3つ以上設けるホットランナーのうち少なくとも1つを成形型に内蔵できるような小型の射出成形機としてもよい。
【0027】
本発明で成形されるゴルフボールの種類は特に制限されず、ワンピース、ツーピース、スリーピース等のソリッドゴルフボールでも糸巻きゴルフボールでもよいが、特にツーピース以上のソリッドゴルフボール、糸巻きゴルフボールのカバーの射出成形に好適に用いられる。この場合、図10で示したように、キャビティ内にコアを入れ、このコアとキャビティ壁面との隙間にカバー用成形材料を射出することにより、カバーを形成できる。なお、カバー材料は射出成形可能なものであればよく、特に制限されるものではない。
【0028】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更して差し支えない。
【0029】
【発明の効果】
本発明のゴルフボール射出成形方法及び射出成形用金型は、下記の効果を有する。
(1)ゴルフボールの射出成形後の後加工を削減もしくはなくすことができる。
(2)後加工をなくすことにより、その工程での不良がなくなる。
(3)後加工によるゴルフボールの飛びのバラツキ等の要因を減少もくしはなくすことができ、品質が向上する。
(4)成形材料の無駄がなくなる。
(5)ゲート径を大きくできるので、より高速低圧射出が可能となり、バリの発生やウエルド等の成形不良が減る。
(6)後加工をする設備を簡略化したり、省くことができる。
(7)サイクル短縮(リードタイム短縮)が図られる。
(8)金型の割り面にディンプルのあるシームレスゴルフボールの成形が容易になる。
(9)高速低圧射出が容易になり、薄いカバーの成形が容易になる(なお、従来のコールドランナー方式では、樹脂が入る前に固まってしまったり、無理に高圧で充填するためコアが偏心したりする)。
(10)低圧射出、低圧型締ができるため、金型、成形機の寿命が伸びる。
(11)従来技術の金型による成形品より樹脂の残留応力を減らせるため、ボールの耐久性が良くなる。
(12)偏心のない多層ゴルフボールを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 金型の参考例1を示す概略断面図である。
【図2】 金型の参考例2を示す概略断面図である。
【図3】 金型の参考例3を示す概略断面図である。
【図4】 金型の参考例4を示す概略断面図である。
【図5】 金型の参考例5を示す概略断面図である。
【図6】 金型の参考例6を示す概略断面図である。
【図7】 本発明の金型の実施例を示す概略断面図である。
【図8】 上記実施例におけるホットランナー部材の先端ノズル部の配設態様の説明図である。
【図9】 従来のゴルフボール射出成形金型を示す概略側面断面図である。
【図10】 従来のゴルフボール射出成形金型を示す概略平面断面図である。
【図11】 同金型によって成形されたゴルフボールの斜視図である。
【図12】 同ゴルフボールのゲートカット状態を説明する概略断面図である。
【符号の説明】
1 上型
2 下型
3 キャビティ
4 第1ホットランナー部材
5 第2ホットランナー部材
6 第3ホットランナー部材
7 ゲート部
8 ホットランナー
9 バルブピン
10 作動装置
11 加熱手段
Claims (2)
- 溶融したゴルフボール用射出成形材料を金型キャビティ内に導入してゴルフボールを射出成形する方法において、上記溶融成形材料が流通し、この成形材料の溶融状態を保持する加熱手段が近接して設けられた4つのランナーを、上記キャビティに内接する正四面体の各頂点にノズル部のゲートが位置するように配設し、それぞれゲート部を介して上記キャビティに連通させて、上記成形材料を上記ランナーの出口端から直接ゲート部を介して上記キャビティに射出、導入することを特徴とするゴルフボール射出成形方法。
- 上型と下型とを有し、これら上下型を分離可能に接合することにより内部に中空球状のキャビティを形成するゴルフボール射出成形用金型において、溶融したゴルフボール用射出成形材料が流通する4つに分かれるホットランナーが、上記キャビティに内接する正四面体の各頂点にノズル部のゲートが位置するように配設されてなり、上記ホットランナー内の溶融成形材料の溶融状態を保持する加熱手段をホットランナーに内蔵してなることを特徴とするゴルフボール射出成形用金型。
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