JP3740261B2 - 光スイッチ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信装置や光伝送装置などで用いられる光スイッチに係り、特に組み立てが容易で光の透過損失の少ない光スイッチに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の光スイッチとして、特開平6−208062号公報に記載されている構成のものがある。この光スイッチは、弾性変形する入力用光ファイバーと、これに対向する位置に保持されている出力用光ファイバーと、入力用光ファイバを出力用光ファイバに対し相対運動させる電磁アクチュエータからなっている。入力用光ファイバーの先端と出力用光ファイバーの先端は、相対運動時にぶつからないように隙間を設けた状態で光ファイバー固定部材の中に挿入され保持されている。電磁アクチュエータは、入力用光ファイバーに挿入された可動部用軟磁性部材と、入力用光ファイバーを囲むように配置されたコイルと、コイルに固定された永久磁石からなっている。可動部用軟磁性部材を永久磁石を使って保持したり、コイルと組み合わせて保持位置を切り替えることで、光の切り替え機能と自己保持機能を実現している。
【0003】
なお、この従来例は、出力側の光ファイバを固定するに当って裸のファイバ部をV溝に挿入する構成したとき、ファイバの急峻な曲がりが生じないように規制部材を設けて固定する構成のものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の光スイッチは、入力用光ファイバーに可動部用軟磁性部材を挿入する工程や、光ファイバー固定部材内に入力用光ファイバーや出力用光ファイバーを挿入する工程や、コイルの中に入力用光ファイバーを挿入する工程など、複雑な3次元的な組立工程を多数必要としていた。
【0005】
また、入力用光ファイバーと出力用光ファイバーの間にある隙間のため、光の透過損失が大きくなるという課題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、単純な2次元的な組立工程のみで製造可能な機械式光スイッチを提供することを目的としている。また、入力用光ファイバーが保持されているときには、入力用光ファイバーと出力用光ファイバーの隙間をなくし、保持時の光の透過損失を極力小さくおさえることを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、以下の手段を備える。
【0008】
(1)光を伝搬させる弾性変形可能な可動媒体と、光を伝搬させ前記可動媒体の端面に対向する位置にある固定媒体と、前記可動媒体を前記固定媒体に対し相対運動させるアクチュエータからなる機械式光スイッチにおいて、前記アクチュエータが、前記可動媒体に固定された可動部用軟磁性部材と、前記可動部用軟磁性部材を両側からはさむように保持された複数のサイド用軟磁性部材と、前記可動部用軟磁性部材に対向する位置に保持されたセンタ用軟磁性部材と、前記サイド用軟磁性部材上に保持された複数のコイルと、前記センタ用軟磁性部材上に保持された永久磁石と、前記コイルと前記永久磁石をつなぐ上部軟磁性部材とからなるようにしたものである。
【0009】
光を伝搬させる媒体は、光導波路や光ファイバーを用いることができる。可動媒体と固定媒体との間を屈折率整合液で満たすため、可動部用軟磁性部材およびサイド用軟磁性部材およびセンタ用軟磁性部材を非磁性の封止部材で覆い、封止部材上にコイルおよび永久磁石および上部軟磁性部材を配置しても良い。光ファイバーを用いた場合は、光ファイバー固定部材を軟磁性材料にすることで、光ファイバー固定部材に軟磁性部材を固定する工程を省略することもできる。
【0010】
(2)光を伝搬させる弾性変形可能な可動媒体と、光を伝搬させ前記可動媒体の端面に対向する位置にある固定媒体と、前記可動媒体を前記固定媒体に対し相対運動させるアクチュエータからなる機械式光スイッチにおいて、前記アクチュエータが、前記可動媒体を光の伝搬方向に垂直な方向に運動させる第1のアクチュエータと、光の伝搬方向に平行な方向に運動させる第2のアクチュエータとからなるようにしたものである。
【0011】
第1のアクチュエータは(1)で述べた手段で構成し、第2のアクチュエータは、可動媒体の根元に固定された軟磁性を有する可動部根元固定用部材と可動部根元固定用部材に対向する位置に保持されたコイルとからなるようにしたものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施例である光スイッチの構造を、図1、図2、図3を用いて説明する。
【0013】
図1は、本発明の第1の実施例である光スイッチの基板部分の上面図およびA断面図及びB断面図を示したものである。
【0014】
石英基板110上に、弾性変形可能で先端が連結された2本の可動梁120が形成され、この可動梁の中には入力用光導波路211、212が形成されている。また、入力用光導波路の端面に対向する位置に、出力用光導波路221a、221b、222a、222bが形成されている。
【0015】
入力用光導波路を含む可動梁の先端には、可動部用軟磁性部材300が固定されている。この可動部用軟磁性部材300を両側から挟むように、石英基板110上にサイド用軟磁性部材301、302が固定されている。さらに、石英基板110上の可動部用軟磁性部材300に対向する位置に、センタ用軟磁性部材303が固定されている。
【0016】
まず、入力用光導波路を含む可動梁120の形成方法について、A断面図およびB断面図を用いて説明する。
【0017】
石英基板110上にシリコンの犠牲層130をスパッタリング法またはCVD法により成膜する。次に、シリコン犠牲層130上に、クラッド層200で囲まれた入力用光導波路211、212及び出力用光導波路221a、221b、222a、222bを形成する。その後、ドライエッチング技術により可動梁状にクラッド層200を除去し、更に可動梁の下にあるシリコン犠牲層130を、ウェットエッチング技術により除去する。前述の製造工程とすることで、弾性変形可能な入力用光導波路を含む可動梁が、基板上に形成できる。可動部用軟磁性部材300、サイド用軟磁性部材301、302、及びセンタ用軟磁性部材303は、全て鉄または鉄とニッケルの化合物からできており、機械加工により形成した後で、接着剤により可動梁や基板上に固定される。
【0018】
図2は、本発明の第1の実施例である光スイッチの基板部分に、屈折率整合液封止用の封止部材140を固定した状態の上面図およびC断面図およびD断面図を示す。
【0019】
図1で説明した可動梁120、可動部用軟磁性部材300、サイド用軟磁性部材301、302、およびセンタ用軟磁性部材303を覆うように封止部材140を基板110上に固定する。封止部材と基板に挟まれた領域には、屈折率整合液230を充填する。前記構成とすることで、入力用光導波路211、212と出力用光導波路221a、221b、222a、222bの間に隙間があっても、光の透過損失を低く抑えることが可能となる。封止部材140は、アクチュエータの動作に影響を及ぼさないように、極力薄くし、かつ非磁性の材料を用いる必要がある。材料としては、ステンレスやアルミニウムのような非磁性の金属やガラスやセラミックを用いることが可能である。
【0020】
図3は、本発明の第1の実施例である光スイッチの基板部分に、屈折率整合液封止用の封止部材140を固定し、さらにその上に、コイル311、312と、永久磁石320と、高さ補正用軟磁性部材305と、上部軟磁性部材304を固定したときの構造を示す上面図およびE断面図およびF断面図を示す。
【0021】
コイル311は、封止部材140を挟んでサイド用軟磁性部材301上に、コイル312は、封止部材140を挟んでサイド用軟磁性部材302上にそれぞれ固定される。また、永久磁石320は、封止部材140を挟んでセンタ用軟磁性部材303上に固定される。コイル311、312の高さと、永久磁石320の高さは同じではないので、高さ補正用の軟磁性部材305を永久磁石の上面に固定した後で、コイルと永久磁石の上面をつなぐ上部軟磁性部材304を固定する。固定は、全て接着剤を用いて行う。
【0022】
以上説明してきた図1から図3までは、第1の実施例の組立手順に対応する。すなわち、まず、図1で説明したように石英基板に弾性変形可能な可動梁状の入力用光導波路を形成後、可動部用軟磁性部材、サイド用軟磁性部材、センタ用軟磁性部材を固定し、次に、図2で説明したように封止部材を固定し、最後に、図3で説明したようにコイル、永久磁石、上部軟磁性部材を固定する。この組立手順は、基板上に要素部品を積み上げていく2次元的なもので、部品の挿入といった複雑な3次元的工程を一切用ずに、光スイッチを組み立てることができる。このようにしてできた光スイッチをパッケージに固定し、コイルの電極を外に引き出せば、きわめて容易に実用的な光スイッチを提供することが可能となる。組立が容易であることから量産性も非常に優れている。
【0023】
なお、本実施例では、屈折率整合液を封止するために、封止部材を用いているが、これを省いて、コイルや永久磁石を直接サイド用軟磁性部材やセンタ用軟磁性部材に固定しても良い。この場合、屈折率整合液がないので挿入損失は増加するが、屈折率整合液による特性のばらつきや高温時の不安定性を防止することができる。
【0024】
図4は、本発明の第1の実施例の光スイッチに用いたアクチュエータの動作原理を説明するための模式図である。図4(1)は、可動部用軟磁性部材300が、サイド用軟磁性部材301に保持されている時(状態1とする)の磁束を模式的に示したものである。
【0025】
入力用光導波路211、212は、それぞれ出力用光導波路221a、222aに結合している。永久磁石320の磁束は、封止部材140、センタ用軟磁性部材303を通って可動部用軟磁性部材300に流れる。更に、サイド用軟磁性部材301、コイル311(保持時には電流は通電せず)、上部軟磁性部材304を通って永久磁石に戻る。この磁束によって、可動部用軟磁性部材300にはサイド用軟磁性部材301の方を向いた力Fが働く。このとき、可動部用軟磁性部材から、サイド用軟磁性部材302に流れる磁束もわずかながらあるが、サイド用軟磁性部材302と可動部用軟磁性部材との距離が、サイド用軟磁性部材301と可動部用軟磁性部材との距離よりもはるかに長いので、ほとんど無視できる量である。
【0026】
図4(2)は、可動部用軟磁性部材の位置をサイド用軟磁性部材301の方からサイド用軟磁性部材302の方(状態2とする)に切り替えるときの磁束を模式的に示したものである。
【0027】
コイル311には、図4(1)で説明した磁束を弱めるように(すなわち上から下に向いた磁束が生じるように)電流を流し、逆にコイル312には、図4(1)のところで説明した可動部用軟磁性部材300からサイド用軟磁性部材302に流れる磁束を強めるように(すなわち下から上に向いた磁束が生じるように)電流を流す。コイル311が作る磁束は、永久磁石の磁束を打ち消すように働くため、永久磁石の磁束はほとんどが可動部用軟磁性部材を通って、サイド用軟磁性部材302の方に流れる。その結果、可動部用軟磁性部材には、サイド用軟磁性部材302の方を向いた力Fが働き、そちらの方へ引かれて状態2に切り替わる。
【0028】
図4(3)は、状態2に保持されている時の磁束を模式的に示す。このとき、入力用光導波路211、212は、それぞれ出力用光導波路221b、222bに結合している。
【0029】
永久磁石320の磁束は、封止部材140、センタ用軟磁性部材303を通って可動部用軟磁性部材300に流れる。更に、サイド用軟磁性部材302、コイル312(電流は通電せず)、上部軟磁性部材304を通って永久磁石に戻る。この磁束によって、可動部用軟磁性部材300にはサイド用軟磁性部材302の方を向いた力Fが働く。この場合でも、可動部用軟磁性部材から、サイド用軟磁性部材301に流れる磁束がわずかながらあるが、サイド用軟磁性部材301と可動部用軟磁性部材との距離が、サイド用軟磁性部材302と可動部用軟磁性部材との距離よりもはるかに長いため、ほとんど無視できる量である。
【0030】
以上説明したのように、本実施例で説明した光スイッチは、2次元的に積み上げるきわめて簡単な工程のみで組み立てることができるだけでなく、光の切り替えや自己保持機能という光スイッチとしての基本的な特性も十分に満足していることがわかる。
【0031】
図5は、状態1にある光スイッチの上面図を示す。
【0032】
可動梁120は、可動部用軟磁性部材300に働くサイド用軟磁性部材301の方を向いた力Fによって弾性変形している。ところでこのとき、可動部用軟磁性部材300には、力Fとは別にセンタ用軟磁性部材303の方を向いた力Faも働いている。この理由は、永久磁石320の磁束が、センタ用軟磁性部材303から可動部用軟磁性部材300に入ることにより、この磁束によって両者の間に引力が働くためである。
【0033】
本実施例においては、力Faは光スイッチの機能に対して特に影響を及ぼさないが、後で述べる本発明の第3の実施例においては、この力Faを積極的に利用して光スイッチの機能の向上を実現している。このことについては、後で詳しく説明する。
【0034】
本発明の第2の実施例である光スイッチの構造を、図6、図7、図8を用いて説明する。
【0035】
図6は、本発明の第2の実施例である光スイッチの基板部分の上面図を示したものである。
【0036】
ステンレススチールや銅などの非磁性の金属でできた薄板基板150に、弾性変形可能で先端が連結された2本の可動梁160が形成されている。連結された可動梁の自由端上には、入力用光ファイバー411を固定するための入力用光ファイバー固定部材(図示せず)が固定され、さらにその上に可動部用軟磁性部材300が固定されている。また、可動梁の固定端側近くの基板上には、入力用光ファイバー411を固定するための入力用光ファイバー根元固定用部材510が固定されており、入力用光ファイバー411は、これらふたつの固定用部材によって基板上に支持されている。
【0037】
入力用光ファイバーの端面は入力用光ファイバー固定部材上にある。一方、入力用光ファイバーの端面に対向する位置には、出力用光ファイバー421a、421bが、出力用光ファイバー固定部材(図示せず)によって基板上に支持される。出力用光ファイバー固定部材上には、センタ用軟磁性部材303が固定されている。サイド用軟磁性部材301、302は第1の実施例で説明した光スイッチと同様に、可動部用軟磁性部材300を両側から挟むように、基板150上に固定されている。
【0038】
非磁性の金属基板150内に可動梁160を作成する方法としては、ウェットエッチング法または機械加工法がある。光ファイバー固定用の三つの部材は、光ファイバーと熱膨張係数が近いシリコンやセラミックを、ウェットエッチング法または機械加工法により加工して形成される。可動部用軟磁性部材、サイド用軟磁性部材、及びセンタ用軟磁性部材は、第1の実施例で説明した光スイッチと同様すべて鉄または鉄とニッケルの化合物からできており、機械加工により形成した後で、接着剤により可動梁や基板上に固定される。
【0039】
図7は、本発明の第2の実施例である光スイッチの基板部分に、屈折率整合液封止用の封止部材140を固定した状態の上面図を示したものである。
【0040】
本実施例では、可動梁160、可動部用軟磁性部材300、及び入力用光ファイバーと出力用光ファイバーの結合部を覆うように封止部材140を基板150に固定した。但し、第1の実施例で説明した光スイッチと異なり、サイド用軟磁性部材301、302、センタ用軟磁性部材303、及びファイバー根元固定用部材510の一部は、封止部材140からはみ出している。これは、基板の両側に出ている光ファイバーと封止用部材140が交差しないようにしたものである。
【0041】
すなわち、屈折率整合液が漏れ出さないように封止部材140には切り欠きが作られており、この切り欠きがサイド用軟磁性部材301、302、センタ用軟磁性部材303、及びファイバー根元固定用部材510とぴったり勘合するようにしている。封止部材と基板に挟まれた領域には、同様に屈折率整合液230を充填する。
【0042】
本実施例の光スイッチにおいては、アクチュエータを構成するコイルや永久磁石を直接サイド用軟磁性部材やセンタ用軟磁性部材上に固定することができるので、封止部材はアクチュエータの動作に全く影響を及ぼさない。従って特に薄くする必要はないが、材料的には非磁性のものを用いる必要がある。材料としては、ステンレスやアルミニウムのような非磁性の金属やガラスやセラミックを用いることが可能である。
【0043】
図8は、本発明の第2の実施例である光スイッチの基板部分に、屈折率整合液封止用の封止部材140を固定し、さらに、コイル311、312と、永久磁石(図示せず)と、高さ補正用軟磁性部材(図示せず)と、上部軟磁性部材304を固定したときの構造を示す上面図およびG断面図を示す。コイル311は、サイド用軟磁性部材301上に、コイル312は、サイド用軟磁性部材302上にそれぞれ直接固定される。
【0044】
また、永久磁石は、センタ用軟磁性部材303上に直接固定される。コイル311、312の高さと、永久磁石の高さは同じではないので、高さ補正用の軟磁性部材を永久磁石の上面に固定した後で、コイルと永久磁石の上面をつなぐ上部軟磁性部材304を固定する。固定は、すべて接着剤を用いて行う。なお、図8のG断面図を見ればわかるように、入力用光ファイバー411は、可動梁160上に固定された入力用光ファイバー固定部材500の中のV型の溝内に固定されており、可動部用軟磁性部材300は、この入力用光ファイバー固定部材の上に固定されている。
【0045】
図6から図8までは、本発明の第2の実施例である光スイッチの組立工程に対応するものである。この工程は、基板上に要素部品を積み上げていく2次元的なもので、部品の挿入といった複雑な3次元的工程を一切必要としていない。完成した光スイッチをパッケージに固定し、コイルの電極を外に引き出せば、第1の実施例と同様、きわめて容易に実用的な光スイッチを提供することが可能となる。組立が容易であることから量産性も非常に優れている。更に、本実施例においても光の切り替えや自己保持機能という光スイッチとしての基本的な特性は十分に満足している。
【0046】
なお、本実施例では、入力用光ファイバー固定部材上に可動部用軟磁性部材を、出力用光ファイバー固定部材上にセンタ用軟磁性部材をそれぞれ直接固定している。このため、両者の熱膨張係数の差による変形を低減する必要がある。そこで、入力用光ファイバー固定部材や出力用光ファイバー固定部材の上には、まずガラスやセラミック製のファイバー押さえ板を固定し、その上に可動部用軟磁性部材やセンタ用軟磁性部材を固定しても良い。また、入力用光ファイバー固定部材や出力用光ファイバー固定部材を軟磁性の金属材料で形成することにより、可動部用軟磁性部材やセンタ用軟磁性部材の固定という工程を省くこともできる。
【0047】
本発明の第3の実施例である光スイッチの構造を、図9、図10を用いて説明する。基本的な構造は、第2の実施例で説明した光スイッチと同じように、弾性変形する可動梁上に固定した入力用光ファイバーを電磁型のアクチュエータで動かすことにより切り替え動作を行うものである。第3の実施例の特徴は、切り替え動作用のアクチュエータのほかにもう一つ別のアクチュエータを有していることである。
【0048】
図9は、本実施例の光スイッチに用いるステンレススチールや銅などの非磁性の金属でできた薄板基板150の構造を示したものである。
【0049】
第2の実施例では、可動梁160のみが基板内に形成されていたが、本実施例では、さらに可動梁161が可動梁160に連結された形で形成されている。このような構造にすることにより、可動梁160の自由端側を、紙面の上下方向だけでなく紙面の左右方向にも動かすことが可能になる。
【0050】
図10は、図9で説明した基板150上に図6で説明した光スイッチの要素部品を固定したときの上面図およびH断面図を示したものである。
【0051】
可動梁160の自由端上には、入力用光ファイバー411を固定するための入力用光ファイバー固定部材(図示せず)が固定されており、さらにその上には可動部用軟磁性部材300が固定されている。また、可動梁160の固定端側で、可動梁161によって支持されている部分には、入力用光ファイバー411を固定するための入力用光ファイバー根元固定用軟磁性部材600が固定されており、入力用光ファイバー411は、これら2つの固定用部材によって基板上に支持されている。入力用光ファイバーの端面は入力用光ファイバー固定部材上にある。一方、入力用光ファイバーの端面に対向する位置には、出力用光ファイバー421a、421bが、出力用光ファイバー固定部材(図示せず)によって基板上に支持される。出力用光ファイバー固定部材上には、センタ用軟磁性部材303が固定されている。サイド用軟磁性部材301、302は、可動部用軟磁性部材300を両側からはさむように、基板150上に固定されている。さらに本実施例においては、入力用光ファイバー根元固定用軟磁性部材600に対向する位置の基板上に、吸引コイル611、612と上部ヨーク601が固定されている。
【0052】
各要素部品の材料や組立手順は、第2の実施例と同じである。
【0053】
このような構造を有する光スイッチにおいては、可動部用軟磁性部材300の下にある入力用光ファイバー411の端面は、可動梁160によって光の伝搬方向に対して垂直方向に動くことができるだけでなく、可動梁161によって光の伝搬方向に対し平行な方向へも動くことができる。
【0054】
図11は、本実施例の光スイッチの動作を説明するための上面図である。図11(1)は、図4で説明した状態1(可動部用軟磁性部材300がサイド用軟磁性部材301に力Fで保持されている状態)にあるときのようすを示したものである。
【0055】
可動梁160が力Fによって弾性変形し、入力用光ファイバー411は出力用光ファイバー421aに結合している。またこのとき、可動部用軟磁性部材300には、図5で説明したようにセンタ用軟磁性部材303の方を向いた力Faも作用しており、この力Faによって可動梁161が弾性変形し、可動部用軟磁性部材300がセンタ用軟磁性部材303の方にも引き寄せられている。この結果、入力用光ファイバー411の端面と、出力用光ファイバー421aの端面の間にある隙間が狭まり、両者が接触した状態で保持することができる。従って、入力用光ファイバーから出力用光ファイバーに光が伝搬するときに生じる光の透過損失を、ほぼゼロにすることが可能となる。もちろん、光ファイバー同士の結合部を屈折率整合液で満たす必要もないので、第2の実施例のところで説明した封止部材を用いる必要もない。
【0056】
図11(2)は、(1)で説明した状態1から状態2(可動部用軟磁性部材300がサイド用軟磁性部材302に力Fで保持されている状態)に切り替えるときの状態を示したものである。
【0057】
入力用光ファイバーが結合する出力用光ファイバーを切り替えるための動作、すなわち光の伝搬方向に垂直な方向の動作は、図4で説明した動作と全く同じである。サイド用軟磁性部材301上のコイルに永久磁石の磁束を打ち消す磁束を作るように電流を流し、サイド用軟磁性部材302上のコイルに永久磁石の磁束を強める磁束を作るように電流を流すことにより動作させる。しかし、(1)に示した状態で、入力用光ファイバーを光の伝搬方向に垂直な方向に動かすと、入力用光ファイバーの端面と出力用光ファイバーの端面がこすれてしまい、動かすのに大きな力が必要であるだけでなく、光ファイバーの端面に傷をつけてしまう恐れがある。
【0058】
このような問題を回避するために、上記した動作をさせる直前に、入力用光ファイバーに光の伝搬方向に平行な方向の動作をさせる。この動作を実現するため、吸引コイル611、612に電流を流し、入力用光ファイバー根元固定用軟磁性部材600を力Fbで吸引する。この力Fbによって、可動梁161が再び弾性変形し、光ファイバー根元固定用軟磁性部材が紙面の左側にわずかに移動する。この動作により、保持時には接触していた入力用光ファイバーの端面と出力用光ファイバーの端面が一瞬離れて、なんの問題もなく光の結合状態を切り替えることが可能となる。光の伝搬方向に垂直な方向の動作と平行な方向の動作を起こすタイミングは、後者の方をわずかに早くしてやれば良い。駆動回路をふたつ持つことによりこの動作は容易に実現できるが、前者の動作をさせるコイルの時定数を相対的に長くしてやることによりひとつの回路で実現することもできる。
【0059】
本実施例で説明した光スイッチは、組立が容易であるだけでなく、保持時には入力用光ファイバーの端面と出力用光ファイバーの端面が接触しているため、光の透過損失を極めて低く押さえることが可能となる。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、複雑な組立工程無しに製造でき、光の透過損失がきわめて小さい光スイッチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例の光スイッチの基板の構造図である。
【図2】本発明の第1の実施例の光スイッチの封止部材の構造図である。
【図3】本発明の第1の実施例の光スイッチのアクチュエータの構造図である。
【図4】本発明の第1の実施例の光スイッチのアクチュエータの動作を示す模式図である。
【図5】本発明の第1の実施例の光スイッチの保持時の状態を示す上面図である。
【図6】本発明の第2の実施例の光スイッチの基板の構造図である。
【図7】本発明の第2の実施例の光スイッチの封止部材の構造図である。
【図8】本発明の第2の実施例の光スイッチのアクチュエータの構造図である。
【図9】本発明の第3の実施例の光スイッチの基板の上面図である。
【図10】本発明の第3の実施例の光スイッチの基板の構造図である。
【図11】本発明の第3の実施例の光スイッチの切り替え動作を示す上面図である。
【符号の説明】
110…石英基板、150…金属基板、120、160、161…可動梁、130…シリコン犠牲層、140…封止部材、200…クラッド層、211、212…入力用光導波路、221a、222a、221b、222b…出力用光導波路、230…屈折率整合液、300…可動部用軟磁性部材、301、302…サイド用軟磁性部材、303…センタ用軟磁性部材、304…上部軟磁性部材、305…高さ補正用軟磁性部材、311、312…コイル、320…永久磁石、411…入力用光ファイバー、421a、421b…出力用光ファイバー、500…入力用光ファイバー固定部材、510…入力用光ファイバー根元固定用部材、600…入力用光ファイバー根元固定用軟磁性部材、601…上部ヨーク、611、612…吸引コイル。
Claims (5)
- 光を伝搬させる弾性変形可能な可動媒体と、前記可動媒体からの光を伝搬させる固定媒体と、前記可動媒体を前記固定媒体に対し相対運動させるアクチュエータからなる光スイッチにおいて、
前記アクチュエータが、前記可動媒体に固定された可動部用軟磁性部材と、前記可動部用軟磁性部材を両側から挟むように保持された複数のサイド用軟磁性部材と、前記可動部用軟磁性部材に対向する位置の前記固定媒体に保持されたセンタ用軟磁性部材と、前記サイド用軟磁性部材上に保持された複数のコイルと、前記センタ用軟磁性部材上に保持された永久磁石と、前記コイルと前記永久磁石をつなぐ上部軟磁性部材とからなることを特徴とする光スイッチ。 - 基板と、前記基板に設置された出力用光ファイバー固定部材と、前記出力用光ファイバー固定部材に対向する位置に可動に配置された入力用光ファイバー固定部材と、前記入力用光ファイバー固定部材に固定された入力用光ファイバーと、前記出力用光ファイバー固定部材に固定された出力用光ファイバーと、前記入力用光ファイバーを前記出力用光ファイバーに対し相対運動させるアクチュエータとを有し、
前記アクチュエータが、入力用光ファイバー固定部材上に固定された可動部用軟磁性部材と、前記可動部用軟磁性部材を両側から挟むように前記基板上に固定された複数のサイド用軟磁性部材と、前記出力用光ファイバー固定部材上に固定されたセンタ用軟磁性部材と、前記サイド用軟磁性部材上に固定された複数のコイルと、前記センタ用軟磁性部材上に固定された永久磁石と、前記コイルと前記永久磁石をつなぐ上部軟磁性部材とからなることを特徴とする光スイッチ。 - 基板と、前記基板に設置された出力用光ファイバー固定部材と、前記出力用光ファイバー固定部材に対向する位置に可動に配置された入力用光ファイバー固定部材と、前記入力用光ファイバー固定部材に固定された入力用光ファイバーと、前記出力用光ファイバー固定部材に固定された出力用光ファイバーと、前記入力用光ファイバーを前記出力用光ファイバーに対し相対運動させるアクチュエータとを有し、
前記アクチュエータが、軟磁性を有する前記入力用光ファイバー固定部材と、前記入力用光ファイバー固定部材を両側から挟むように前記基板上に固定された複数のサイド用軟磁性部材と、軟磁性を有する前記出力用光ファイバー固定部材と、前記サイド用軟磁性部材上に固定された複数のコイルと、前記出力用光ファイバー固定部材上に固定された永久磁石と、前記コイルと前記永久磁石をつなぐ上部軟磁性部材とからなることを特徴とする光スイッチ。 - 石英もしくはシリコンからなる基板と、前記基板上に片持ち梁状に保持された弾性変形可能な入力用光導波路と、前記基板上で入力用光導波路の端面に対向する位置に形成された出力用光導波路と、前記入力用光導波路を前記出力用光導波路に対し相対運動させるアクチュエータとを有し、
前記アクチュエータが、前記入力用光導波路上に固定された可動部用軟磁性部材と、前記可動部用軟磁性部材を両側から挟むように前記基板上に固定された複数のサイド用軟磁性部材と、前記基板上で前記可動部用軟磁性部材に対向する位置に固定されたセンタ用軟磁性部材と、前記サイド用軟磁性部材上に固定された複数のコイルと、前記センタ用軟磁性部材上に固定された永久磁石と、前記コイルと前記永久磁石をつなぐ上部軟磁性部材とからなることを特徴とする光スイッチ。 - 請求項2に記載の光スイッチにおいて、
前記可動部用軟磁性部材およびサイド用軟磁性部材およびセンタ用軟磁性部材と、前記コイルおよび永久磁石および上部軟磁性部材との間に、非磁性の屈折率整合液封止部材を有することを特徴とする光スイッチ。
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