JP3740165B2 - 役物タイルの乾式製造方法及び乾式製造装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、略L字状に曲がったいわゆる役物タイルを製造するための乾式製造方法及び乾式製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図3(c),図4(c)に示した役物タイルTを製造する従来の乾式製造方法について、図5〜図7により説明する。なお、図3(c),図4(c)において符号Xは役物タイルTの平板部、また符号Yは平板部Xと平板部Xの間の屈曲部である。
【0003】
乾式製造方法に使用する製造装置は、坏土Zを押し固めるプレス手段1と、そのプレス手段1に坏土Zを供給するチャージャー2とを備えてなる。
前記プレス手段1は、裏返した役物タイルTをほぼ象った型凹部3を上面開口状のV溝4内に設けた下型5と、前記型凹部3に嵌入するほぼ逆三角形の型凸部6を有する上型7とを備えている。
前記下型5は、装置の固定部に対して上下動可能なように支えられている枠51と、その枠51に穿設した型孔52内に摺動可能に嵌っている固定的な駒53の二部材で構成されており、図5(a)に示したように枠51が上昇位置にあるとき、駒53の上面と枠51の型孔52で型凹部3が形成される。
前記上型7は、型凸部6の表面が合成樹脂層(図示せず)で覆われており、その合成樹脂層に役物タイルTの裏面に刻設されている剥離防止溝8を彫り込むための凸条(図示せず)が突設されている。なお、この凸条を除外した型凸部6の表面を主面という。
【0004】
一方、前記チャージャー2は、四角い底無しの枠形態であってV溝4上を摺動可能なように下型5の上面に載せられている。なお、図示しないがチャージャー2の前後を構成する前板2Fと後板2RにはV溝4に遊嵌する逆三角形の板が突設されている。また、チャージャー2には、前板2Fの前側に上下方向に抜き差し自在なように粉切り板9が取り付けられている。この粉切り板9は、前記下型5のV溝4に合致する形状であり、V溝4内に投入された坏土Zを摺り切り状態にして型凹部3に充填する機能を果たす。
【0005】
上記製造装置のプレス手段1で役物タイルTを成型する場合は、先ず、下型5上にあるチャージャー2に坏土Zを満たし、このチャージャー2を前後に摺動させてV溝4上で往復させる。前記のようにチャージャー2は底無しの枠形態であるため、チャージャー2が型凹部3上を通過するとそこにある坏土Zが型凹部3の中に入る。そして、チャージャー2を元の位置に戻すと、粉切り板9がV溝4に摺接して余分な坏土Zを掻き取るため、図5(b)のように型凹部3の中に摺り切り状態になって坏土Zが残る。
【0006】
次ぎに図5(c)のように上型7を降ろして型凸部6を下型5の型凹部3に嵌め入れ、坏土Zを所定の圧力でプレスした後、図5(d)のように上型7を上動させ、さらに下型5の枠51を下げ、押し固めた役物タイルTを相対的に上昇させて型凹部3から取り出すのである。なお、型凸部6の主面(前記のように役物タイルT裏面の剥離防止溝8を形成するための凸条を除外した面。)が坏土表面Z1に接した押圧開始から押圧終了までの型凸部6の垂直下降量を以下「押圧代」という。一般に、焼成後の厚さが7mm程度である標準的な役物タイルTの押圧代はおよそ4〜5mmである。
【0007】
以上のようにして坏土Zを固めた役物タイルのプレス成型品は、図7のように専用の匣鉢(さや)10に載置して並べられ、従来公知の方法で焼成する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
役物タイルTの乾式製造方法は、平板部Xと屈曲部Yが均一に加圧されていないと焼成による収縮が不均一になり、平板部Xと屈曲部Yの幅が揃わない。現在の標準的な役物タイルTは、屈曲部Yの外側のコーナーが半径約3mm、内側のコーナーが半径約3〜5mm程度の弧になっており、この寸法を採用すれば上記のプレス手段1で押し固めた場合に屈曲部Yと平板部Xがほぼ均一に加圧され、焼成後の平板部Xと屈曲部Yの幅がほぼ揃う。
一方、同じ役物タイルTでも屈曲部Yの外側コーナーの弧の半径を大きくしたものがあるが、そのような役物タイルTでは内側コーナーの弧の半径も大きくして屈曲部Yの圧力が平板部Xに比べて上昇しないように調整している。つまり、これまでの役物タイルTは、屈曲部Yの外側コーナーの形状をデザイン重視の観点で決定し、その外側コーナーの形状に合わせてそれに見合う内側コーナーの形状を決定し、そうして屈曲部Yの圧力が平板部Xの圧力と均一になるように調整しているのであり、そこには役物タイルTの屈曲部Yの内側の形状を外側の形状から切り離して独自に決定する自由はない。
【0009】
ところで役物タイルTの焼成には前記のように専用の匣鉢10を使用する。この役物タイル用の匣鉢10は、山形の載置部10aがあってその載置部10aに役物タイルTを表向きに並べて焼成するが、焼成時の変形を防止するため、載置部10aの形状は役物タイルTの裏面形状にフィットするように作られている。
【0010】
しかして上記従来の役物タイルTの製造方法によれば、屈曲部Yの外側コーナーの形状によって内側コーナーの形状も変わるため、屈曲部Yの外側コーナーの形状ごとにそれに合う匣鉢10を用意する必要がある。もちろん役物タイルTを量産するには例え一種類であっても大量の匣鉢10を必要とするから、役物タイルTの屈曲部Yの形状変更には莫大な設備投資が必要であった。
【0011】
本発明は上記に鑑みなされたもので、その目的は、役物タイルTの屈曲部Yの形状を内側と外側である程度自由に決定することを可能とした役物タイルの乾式製造方法及び乾式製造装置の提供にある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため本発明は、坏土を押し固めて略L字状の役物タイルを製造する乾式製造方法であって、裏返した役物タイルをほぼ象った型凹部を上面開口状のV溝内に設けた下型と、前記型凹部に嵌入するほぼ逆三角形の型凸部を有する上型とを備えたプレス手段を使用し、前記型凹部に摺り切り状態に充填した坏土の摺り切り面形状を、上型の型凸部のうち役物タイルの平板部に対応する部分が坏土表面に接した状態で、型凸部のうち役物タイルの屈曲部に対応する部分と坏土表面との間に、型凸部の押圧代より小さい圧力調整隙間ができるように設定し、役物タイルの屈曲部の内側と外側の形状を任意に設定した場合に生じ得る屈曲部の加圧過多を前記圧力調整隙間で減じてプレスするようにした役物タイルの乾式製造方法を提供する。
【0013】
既述のように、例えば役物タイルの屈曲部の圧力が平板部より高いと焼成に伴う収縮に不均衡が生じ、屈曲部の幅が平板部の幅より大きく張った形に仕上がる。そのため従来は屈曲部の内側の弧の半径を調整して圧力を均一にする手段を講じていたが、本発明の乾式製造方法では型凸部の屈曲部に対応する部分と摺り切り状態の坏土表面との間に上記のような圧力調整隙間を作ることによって屈曲部の押圧代を圧力調整隙間分だけ減少させ、その分屈曲部の圧力が減ぜられるようにした。もちろん型凸部の押圧代より圧力調整隙間が小さくなっているため、最終的には屈曲部が型凸部によって押し込まれて型凸部通りの形状になる。
【0014】
また、請求項2に記載したように、坏土を押し固めるプレス手段と、そのプレス手段に坏土を供給するチャージャーとを備え、略L字状の役物タイルを製造するための乾式製造装置であって、前記プレス手段は、裏返した役物タイルをほぼ象った型凹部を上面開口状のV溝内に設けた下型と、前記型凹部に嵌入するほぼ逆三角形の型凸部を有する上型とを備え、一方、前記チャージャーは、前記下型のV溝に合致する形状の板形態であってそのV溝内を摺動して坏土を型凹部に摺り切り状態に充填する粉切り板を有し、前記粉切り板の細った先に、上型の型凸部の細った先を重ね合わせた場合にその型凸部の輪郭より周囲に張り出す拡張突部を形成し、一方、V溝の溝底に粉切り板の拡張突部に対応する拡張窪み部を形成し、前記拡張突部の大きさを前記押圧代より小さくした役物タイルの乾式製造装置を提供する。この乾式製造装置により、請求項1の製造方法が容易に実施可能である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、図1(a)〜(c)は製造工程を示す要部の拡大図、図2は粉切り板と型凸部の先を重ね合わせて示す正面図、図3(a)〜(c)は役物タイルを裏側から見た斜視図、図4(a)〜(c)は役物タイルの屈曲部を示す要部の平面図である。
【0016】
上記従来技術の項で説明した乾式製造装置及び製造方法の説明は、本発明にも殆どそのまま当て嵌まるため重複する部分の説明を省略する。
【0017】
しかして本発明の乾式製造装置の特徴は、図2に拡大して示したように、前記粉切り板9の細った先に、上型7の型凸部6の細った先を同図二点鎖線のように重ね合わせた場合にその型凸部6の輪郭より外側に張り出す拡張突部11を形成し、一方、V溝4の溝底に粉切り板9の拡張突部11に対応する拡張窪み部12を形成し、さらに前記拡張突部11の大きさを前記押圧代より小さくした点にある。
【0018】
このような特徴を備えた本発明の乾式製造装置によれば、図1(b)に示したように、前記型凹部3に摺り切り状態に充填した坏土Zの摺り切り面形状が、上型7の型凸部6のうち役物タイルTの平板部Xに対応する主面部分が坏土表面Z1に接した状態で、型凸部6のうち役物タイルTの屈曲部Yに対応する部分と坏土表面Z1との間に、前記粉切り板9の拡張突部11に対応する圧力調整隙間Sができる。この圧力調整隙間S分だけ型凸部6の押圧代が減少し、屈曲部Yに加わる圧力が確実に弱まるから、圧力調整隙間Sの大きさを加減することにより屈曲部Yと平板部Xの圧力を均一にすることができる。もちろん最終的には図1(c)に示したように屈曲部Yが型凸部6によって押し込まれて成型されるから、屈曲部Yの形状は意図した通りのものに仕上がる。
【0019】
【実施例】
焼成後の厚さ約7mm、幅約45mm、屈曲部Yの内側コーナーの弧の半径約3mm、外側コーナーの弧の半径約10mmである図3(a),図4(a)に示した形状の役物タイルTを本発明の製造装置で製造した。粉切り板9の拡張突部11(=圧力調整隙間S)の大きさは、図2(図1(b))において最大垂直幅約0.6mm、面積約1.45mmとした。こうして焼成した役物タイルTは、屈曲部Yと平板部Xの幅の差が実用上問題ない範囲に収まった。
なお、今回製造した役物タイルTは、屈曲部Yの内側コーナーの形状が図3(c),図4(c)に示した現在最も量産されているタイプの役物タイルTと同じである。従って、既存の匣鉢で支障なく焼成することができた。
【0020】
以上本発明を実施の形態について説明したが、もちろん本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、実施形態では役物タイルTの屈曲部Yの外側形状を弧状にしたが、図3(b),図4(b)に示したように真っ直ぐな面取り形状にすることもできる。ちなみに従来の製造方法によれば屈曲部Yの内側も真っ直ぐな面取り形状にするほかなく、専用の匣鉢が必要になる。
また、実施形態では粉切り板9をチャージャー2に対して着脱自在としたが、例えばチャージャー2の前板2Fを粉切り板9として利用するなどしてもよい。また、粉切り板9はチャージャー2と一体に摺動させる場合に限らず、独立して摺動させるようにしてももちろんよい。
【0021】
また、本発明者が試作を重ねた結果によれば、屈曲部Yに加わる圧力は、役物タイルT裏面の剥離防止溝8の長さによっても影響を受けることが確認された。すなわち、剥離防止溝8の先端を屈曲部Yから遠ざけるほど屈曲部Yに加わる圧力が減少するのである。その理由は、剥離防止溝8を刻設するために型凸部6に設けられている凸条が圧力を高める作用を発揮することによると考えられる。従って本発明の圧力調整隙間Sを設ける手段と、剥離防止溝8の先端位置を屈曲部Yから離す手段を組み合わせるようにすれば、屈曲部Yの圧力調整可能範囲を拡大することができる。
【0022】
【発明の効果】
本発明の乾式製造方法は、型凸部の屈曲部に対応する部分と摺り切り状態の坏土表面との間に上記のような圧力調整隙間を作ることによって屈曲部の押圧代を圧力調整隙間分だけ減少させ、その分屈曲部の圧力が減ぜられるようにしたため、屈曲部に加わる圧力を確実に弱めることができる。従って圧力調整隙間の大きさを適宜加減することにより屈曲部と平板部の圧力の均一化が可能になる。もちろん型凸部の押圧代より圧力調整隙間を小さくしたため、最終的には屈曲部が型凸部によって押し込まれるから型凸部通りの形状になる。
しかして本発明の乾式製造方法は、役物タイルの屈曲部の形状を内側と外側である程度自由に決定することができるから、例えばデザイン重視の観点から屈曲部の外側コーナーの半径を大きくし、一方、コスト重視の観点から屈曲部の内側の形状を既存の役物タイルのそれと一致させ、もって既存の匣鉢をフルに活用して製造コストを抑制する、ということが可能になる。
【0023】
また、請求項2に記載した役物タイルの乾式製造装置によれば、請求項1の製造方法が容易に実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)〜(c)は製造工程を示す要部の拡大図である。
【図2】 粉切り板と型凸部の先を重ね合わせて示す正面図である。
【図3】 (a)〜(c)は役物タイルを裏側から見た斜視図である。
【図4】 (a)〜(c)は役物タイルの屈曲部を示す要部の平面図である。
【図5】 (a)〜(d)は製造工程を説明する断面図である。
【図6】 下型とチャージャーを示す斜視図である。
【図7】 匣鉢を示す斜視図である。
【符号の説明】
S …圧力調整隙間
T …役物タイル
X …平板部
Y …屈曲部
Z …坏土
Z1…坏土表面
1 …プレス手段
2 …チャージャー
3 …型凹部
4 …V溝
5 …下型
6 …型凸部
7 …上型
9 …粉切り板
11…拡張突部
12…拡張窪み部

Claims (2)

  1. 坏土を押し固めて略L字状の役物タイルを製造する乾式製造方法であって、
    裏返した役物タイルをほぼ象った型凹部を上面開口状のV溝内に設けた下型と、前記型凹部に嵌入するほぼ逆三角形の型凸部を有する上型とを備えたプレス手段を使用し、
    前記型凹部に摺り切り状態に充填した坏土の摺り切り面形状を、上型の型凸部のうち役物タイルの平板部に対応する部分が坏土表面に接した状態で、型凸部のうち役物タイルの屈曲部に対応する部分と坏土表面との間に、型凸部の主面が坏土表面に接してから押圧終了までの下降量(次項において「押圧代」という。)より小さい圧力調整隙間ができるように設定し、
    役物タイルの屈曲部の内側と外側の形状を任意に設定した場合に生じ得る屈曲部の加圧過多を前記圧力調整隙間で減じてプレスするようにしたことを特徴とする役物タイルの乾式製造方法。
  2. 坏土を押し固めるプレス手段と、そのプレス手段に坏土を供給するチャージャーとを備え、略L字状の役物タイルを製造するための乾式製造装置であって、
    前記プレス手段は、裏返した役物タイルをほぼ象った型凹部を上面開口状のV溝内に設けた下型と、前記型凹部に嵌入するほぼ逆三角形の型凸部を有する上型とを備え、
    一方、前記チャージャーは、前記下型のV溝に合致する形状の板形態であってそのV溝内を摺動して坏土を型凹部に摺り切り状態に充填する粉切り板を有し、
    前記粉切り板の細った先に、上型の型凸部の細った先を重ね合わせた場合にその型凸部の輪郭より周囲に張り出す拡張突部を形成し、一方、V溝の溝底に粉切り板の拡張突部に対応する拡張窪み部を形成し、前記拡張突部の大きさを請求項1に記載された押圧代より小さくしたことを特徴とする役物タイルの乾式製造装置。
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