JP3739191B2 - 押出しシート成形用ロール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂を原料とし、少なくとも片面が平滑面であるプラスチックシートを押出し成形する押出しシート成形装置において該平滑面を成形するための鏡面ロールに関する。
【0002】
【従来の技術】
フレネルレンズシート、レンチキュラーレンズシート、プリズムレンズシート等に代表されるレンズ機能シートは、片面に上記レンズ機能を発現する形状が付与され、その面の反対面は、高度な平滑性(鏡面性)を有する鏡面であることが要求される。一般に、量産性に優れる押出し連続成形法によって上記レンズ機能シートを製造するには、レンズ形状面を賦形するエンボスロールと、それに対向する鏡面成形用の鏡面ロールとの間に溶融樹脂を膜状に通過させ挾圧することによって、片面に光学機能を発現する微細な凹凸形状を転写すると共にもう一方の表面に平滑な鏡面を形成する方法が行われている。
【0003】
この鏡面ロールとしては、▲1▼表面が研磨あるいはメッキ加工された金属鏡面ロール、▲2▼内面を鏡面化した型を用いて、軸芯部表面にシリコーンゴム等を注型硬化させて軸芯部を被覆した鏡面ゴムロール、または軸芯部表面に流延法によってゴム層を設けた鏡面ゴムロールが用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
Tダイ金型を用いた押出しシートの厚さ精度は、近年の金型設計、加工技術の発達により飛躍的に向上しているが、幅方向mm単位での微小な厚さムラ、すなわち、近接する2点間の厚さムラに対して決定的な改善策を見出すには至ってなく、このような厚さムラはレンズ機能シートの賦形状態の不均一となって現れ、品質の低下、即ち部分的な光学性能の悪化をもたらしている。
【0005】
エンボスロールは基本的には所望のレンズ形状を刻んだ金属製ロールであり、鏡面ロールと組み合わせて、溶融樹脂をこれら両ロールの間を膜状に通過させ、挾圧することによって、レンズ機能シートの成形が行われてきた。
【0006】
しかしながら、鏡面ロールは下記のような問題を有する。まず、金属鏡面ロール▲1▼は鏡面の精度および無欠陥性に優れるが、柔軟性がないために樹脂の厚さムラを自らの変形により吸収する能力を持たない。したがって、金属製鏡面ロールを用いて溶融樹脂を膜状に通過させ挾圧した場合、樹脂の厚さムラにより厚肉部分に圧力が集中してしまい、薄肉部分の圧力が不足して賦形不充分となることがある。
【0007】
また、鏡面ゴムロール▲2▼は、それ自身の柔軟性により樹脂の厚さムラを吸収するため均一な圧力で溶融樹脂を膜状に通過させ挾圧することが可能であるが、反面、挾圧時の圧力が分散されて、賦形に必要な圧力が得られないことがある。
また、注型硬化によってゴム層を作製する際の発生ガス等に起因する微小欠陥が避けられず、高温の樹脂に曝されることによってゴムの劣化が生じ、短時間に使用不能となることがある。
【0008】
このように、レンズ機能シート押出し成形に使用される従来の鏡面ロールはそれぞれ短所を有し、レンズ機能シートの製造歩留りを低下させ、その光学性能を制限している。
【0009】
本発明は上記従来技術の有する問題に鑑みてなされたものであって、樹脂の厚さムラを吸収してシートに高度の鏡面を付与することにより、良好な光学機能を有するレンズ機能シートを成形することのできる、押出しシート成形用ロールを提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は、少なくとも片面が平滑面であるプラスチックシートを押出し成形する押出しシート成形装置において該平滑面を成形するための押出しシート成形用ロールであって、軸芯部と、軸芯部を覆うゴム層と、さらにゴム層を覆う金属層とからなり、該金属層は、ゴム層の湿式メッキ処理によって得られたニッケルを主成分とする厚さ0.05mm〜0.5mmの継目なしのチューブ状物と、該チューブ状物を覆うクロムを主成分とする厚さ0.01mm〜0.1mmの被膜とからなることを特徴とするものである。
【0011】
本発明において、軸芯部は従来から用いられている鏡面ロールの軸芯部と同じものであってよく、鋼、ステンレス、アルミニウム等の金属製のものが好適に用いられる。また内部に温度制御用の熱媒体流路、電熱ヒータ、誘導発熱式コイル、ロール駆動用の付属部品などを有していてもよい。
【0012】
ゴム層の材料は室温以上でゴム弾性を持つものであればよく、JIS K7215に規定されるゴム硬度で60〜90°の材料が好適であり、ネオプレンゴム、NBR、シリコーンゴム等が挙げられる。高温での寿命を考慮する場合にはシリコーンゴムが好適である。ゴム層の材料には、ゴム硬度を調整する目的でSiO2 粉末等の充填材を添加してもよい。
【0013】
ゴム層の厚さは、弾性力を保持できる程度、例えば0.5mm以上であることが好ましい。ゴム層の厚さが0.5mm未満では弾性変形量が不足して、樹脂の厚さムラを吸収しきれない恐れがある。
ゴム層の表面は、湿式メッキ処理によって金属層を形成するため、#1500程度の粒子の細かいサンドペーパーで平滑に研磨仕上げすることが好ましい。
【0014】
金属層は、一般に電気鋳造法と呼ばれる湿式メッキ法を用いて形成したニッケルを主成分とする継目なしのチューブ状物(以下、ニッケルチューブと称する)と、ニッケルチューブを覆うクロムを主成分とする被膜(以下、クロム被膜と称する)とからなる。電気鋳造法により作製したニッケルチューブは、鏡面性、無欠陥性に優れ、また、肉厚精度に優れるが、その反面、弾力性が低く、局所的な応力に対して容易に塑性変形する。そこで、このニッケルチューブの表面にクロム被膜を形成することにより、上記欠点を回避し、実用上支障のない弾力性を付与することができる。
【0015】
ニッケルチューブの厚さは、0.05〜0.5mmとする。厚さが0.05mm未満では挾圧時にチューブが破断し易く、圧力の設定に制限が生じることがある。0.5mmを超えるとチューブの柔軟性が不足して、樹脂の厚さムラを吸収しきれないことがある。
【0016】
クロム被膜の厚さは、0.01〜0.1mmとする。厚さが0.01mm未満では弾力性が不足して、局所的な応力がかかった場合に変形しないことがある。0.1mmを超えるとニッケルチューブとの密着力が低下して、クロム被膜の剥離が生じることがある。
【0017】
金属層の作製にあたっては、ゴム層を被覆した軸芯部に湿式メッキ法によりニッケルチューブを形成した後、時間をおかずに連続して湿式メッキ法によりニッケルチューブの表面にクロム被膜を形成することにより、両者の密着性およびクロム被膜表面の光沢性が得られるので好ましい。
【0018】
ゴム層が導電性を有しない場合には、金属層を形成する際に予め導電層を形成しておく必要があるが、銀粒子や銅粒子等を含有する導電性塗料を塗装することによって導電層を形成することが可能となる。
【0019】
上記のようにして本発明の鏡面ロールを得ることができるが、ロール表面を研磨して更に鏡面性、無欠陥性を向上させてもよい。
【0020】
(作用)
エンボスロールと鏡面ロールで押出しシートを挟圧する場合、ゴム層の弾性によって押出しシートの厚さムラが吸収されるとともに、継目なしの硬度の高い金属層によって押出しシートの表面が鏡面状に平滑に仕上げられる。
【0021】
金属層は外層が硬度のより高いクロムを主成分とする被膜で、その内層が靱性の高いニッケルチューブであるから、表面が損傷しにくいとともに金属層全体が剥離しにくい。押出しシート成形用ロールの寿命が長く保たれる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を実施例により詳細に説明する。
(実施例)
内部に4条のスパイラル状の熱媒体流路を有するS45C(機械構造用炭素鋼鋼材)製の軸芯部を製作した。
次に、SiO2 粉末を充填材として含有する液状シリコーンゴムによって軸芯部を被覆し、ゴムが硬化した後、ゴム層の厚さが2mmとなるように研磨し調整した。硬化後のゴム層の硬度は75°であった。更にゴム層の表面に銀粒子を主たる顔料とする塗料をスプレー法によって塗装し、導電化した。
【0023】
次いでこれをニッケルの湿式メッキ槽に浸漬して、厚さ0.2mmのニッケルチューブを形成した後、クロムメッキ槽に移し、ニッケルチューブの外面に膜厚0.05mmのクロム被膜を形成して、鏡面ロールを得た。
【0024】
得られた鏡面ロールの構造を図1に示す。図1において1は鏡面ロール、2は軸芯部、3は軸芯部2を覆うゴム層、4はゴム層3を覆う金属層で、金属層はニッケルチューブ4aと、ニッケルチューブ4aの表面を被覆するクロム皮膜4bよりなっている。
【0025】
この鏡面ロール1とプリズムシート成形用エンボスロールを引取機に設置し、Tダイから押し出したポリカーボネート樹脂シートを両面から挾圧してエンボス加工し、厚さ200μmのプリズムシートを得た。
製造条件は、Tダイから押し出し直後の樹脂温度を270℃、エンボスロール内に流す熱媒体の温度を130℃、鏡面ロール1内に流す熱媒体の温度を30℃に制御した。
【0026】
以上のようにして得られた鏡面ロール1の鏡面の平滑性(中心線平均粗さ)及び無欠陥性(表面に疵などの欠陥がないか)、プリズムシートのエンボス形状の転写均一性、ロールの寿命、樹脂原料中に含まれる異物によるロール表面の損傷発生を評価した。
【0027】
(比較例1)
S45C製の軸芯部の表面にクロム合金メッキを施した鏡面ロールを使用した以外は、実施例と同じ方法及び条件によりプリズムシートを得た。
得られたプリズムシートにつき、実施例と同じ評価を行った。
【0028】
(比較例2)
S45C製の軸芯部の表面にシリコーンゴムを注型し硬化させて被覆層を形成した鏡面ロールを使用した以外は、実施例と同じ方法及び条件によりプリズムシートを得た。
得られたプリズムシートにつき、実施例と同じ評価を行った。
【0029】
(比較例3)
クロム被膜を形成しない鏡面ロールを使用した以外は、実施例と同じ方法及び条件によりプリズムシートを得た。
得られたプリズムシートにつき、実施例と同じ評価を行った。
【0030】
以上の結果を表1にまとめて示す。
【0031】
【表1】
【0032】
表1の結果が示すように、実施例1の本発明鏡面ロールでは、全ての項目について良好な評価が得られた。
これに対し、比較例1の場合はエンボス形状(転写均一性)が劣っている。これは鏡面ロールがゴム層を欠いていて弾性がないために、鏡面ロールとこれに対向するエンボスロールによる挟圧が均一に行われず、そのためにエンボスロール表面模様の賦形が精確になされなかったものと思われる。
【0033】
また、比較例2の場合はロール表面の鏡面平滑性が劣っている上、ロール表面に欠陥がある。これは金属層を欠いているためにロール表面の硬度が低くて平滑な鏡面が得られない上、欠陥が発生したものと思われる。
比較例3の場合は押出しシートの表面に異物による欠陥が発生している。これはクロム被膜がないために、ロールの表面硬度が不足して、押出しシート中の異物により疵が付いたものと思われる。
【0034】
【発明の効果】
本発明は上記のように構成されているので、押出しシートの厚さムラが吸収されるとともに、表面が鏡面状に平滑に仕上げられて、良好な光学機能を有するレンズ機能シートが得られる。
【0035】
また、ロールの表面が損傷しにくく剥離しにくいので寿命が長く、長期間にわたって高品質のレンズ機能シートを安定して生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明押出しシート成形用ロール(鏡面ロール)の横断面図。
【符号の説明】
1 鏡面ロール
2 軸芯部
3 ゴム層
4 金属層
4a ニッケルチューブ
4b クロム被膜
Claims (1)
- 少なくとも片面が平滑面であるプラスチックシートを押出し成形する押出しシート成形装置において該平滑面を成形するためのロールであって、軸芯部と、軸芯部を覆うゴム層と、さらにゴム層を覆う金属層とからなり、該金属層は、ゴム層の湿式メッキ処理によって得られたニッケルを主成分とする厚さ0.05mm〜0.5mmの継目なしのチューブ状物と、該チューブ状物を覆うクロムを主成分とする厚さ0.01mm〜0.1mmの被膜とからなることを特徴とする押出しシート成形用ロール。
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