JP3795999B2 - 押出シート成形用ロールの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂を原料とし、少なくとも片面が平滑面であるプラスチックシートを押出し成形する押出しシート成形装置において該平滑面を成形するための鏡面ロールに関する。少なくとも片面が平滑面であるプラスチックシート、例えば、フレネルレンズシート、レンチキュラーレンズシート、プリズムレンズシート等は光学的用途に用いられ、レンズ形状を有する面の反対面に高度な平滑性が要求される。本発明によるロールはこのような平滑面を成形するのに好適に用いられるものである。
【0002】
【従来の技術】
フレネルレンズシート、レンチキュラーレンズシート、プリズムレンズシート等に代表されるレンズ機能シートは、片面に上記レンズ機能を発現する形状が付与され、その面の反対面は、高度な平滑性(鏡面性)を有する鏡面であることが要求される。一般に、量産性に優れる押出し連続成形法によって上記レンズ機能シートを製造するには、レンズ形状面を賦形するエンボスロールと、それに対向する鏡面成形用の鏡面ロールとの間に溶融樹脂を膜状に通過させ挾圧することによって、片面に光学機能を発現する微細な凹凸形状を転写すると共にもう一方の表面に平滑な鏡面を形成する方法が行われている。
【0003】
この鏡面ロールとして、i)表面が研磨あるいはメッキ加工されてなる金属鏡面ロール、ii) 内面を鏡面化した型を用いて軸芯部表面にシリコーンゴム等を注型硬化させて軸芯部を被覆してなる鏡面ゴムロール、または、軸芯部表面に流延法によってゴム層を設けてなる鏡面ゴムロールが用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
Tダイ金型を用いた押出しシートの厚み精度は、近年の金型設計、加工技術の発達により飛躍的に向上しているが、幅方向mm単位での微小な厚みムラ、すなわち、近接する2点間の厚みムラに対して画期的な改善策を見出すには至っていない。このような厚みムラはレンズ機能シートの賦形状態の不均一となって現れ、品質の低下、即ち部分的な光学性能の悪化をもたらす。
【0005】
エンボスロールは基本的には所望のレンズ形状を刻んだ金属製ロールであり、多種多様な鏡面ロールと組み合わせてこれらの間に溶融樹脂を膜状に通過させ挾圧することによりレンズ機能シートの成形が行われてきた。
【0006】
他方、鏡面ロールは下記のような問題を有する。まず、金属鏡面ロールi)は、鏡面の精度および無欠陥性に優れるが、柔軟性がないため樹脂の厚みムラを自らの変形により吸収する能力を持たない。したがって、金属製鏡面ロールを用いて溶融樹脂を膜状に通過させ挾圧した場合、樹脂の厚みムラにより厚肉部分に圧力が集中してしまい薄肉部分の圧力が不足するため、薄肉部分が賦形不十分となる。
【0007】
また、鏡面ゴムロールii) は、それ自身の柔軟性により樹脂の厚みムラを吸収するため均一な圧力で溶融樹脂を膜状に通過させ挾圧することが可能であるが、注型硬化によってゴム層を作製する際の発生ガス等に起因する微小欠陥が避けられず、高温の樹脂に曝されることによるゴムの劣化が生じ、短時間に使用不能となる。
【0008】
このように、レンズ機能シート押出し成形に使用される従来の鏡面ロールはそれぞれ短所を有し、レンズ機能シートの製造歩留りを低下させ、その光学性能を制限している。
【0009】
本発明は、上記の諸問題を克服した押出しシート成形用ロールを提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、均一な賦形を行い良好な光学機能を得るため、樹脂の厚みムラを吸収し、均一圧力でシートを挟圧し、且つ、シートに高度の鏡面を付与することができる鏡面ロールを案出すべく検討を行った結果、本発明によるシート成形用ロールを提供するに至った。
【0011】
本発明によるシート成形用ロールの製造方法は、少なくとも片面が平滑面であるプラスチックシートを押出し成形する押出しシート成形装置において該平滑面を成形するための、軸芯部と、軸芯部を覆うゴム層と、さらにゴム層を覆う金属層とからなるロールの製造方法であって、電気鋳造法によって得られたニッケルを主成分とする継目なしのチューブ状物と、該チューブ状物を覆うクロムを主成分とする被膜とからなるチューブ状金属層内に、軸芯部を覆うゴム層を冷却収縮させて挿入し摩擦力で固定することを特徴とするものである。
【0012】
該金属層のチューブ状物の厚みは、好ましくは0.03〜0.3mmである。また、該金属層の被膜の厚みは、好ましくは0.01〜0.1mmである。
【0013】
更に、得られるシートの平滑面が他の平滑面と密着するのを防止するために、金属層の表面が中心線平均粗さRaで0.02〜0.08μmに凹凸加工されてなる場合がある。
【0014】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0015】
本発明によるシート成形用ロールの軸芯部は、従来から用いられている鏡面ロールの軸芯部と同じものであってよく、特に限定されるものではない。軸芯部はまたロール駆動用の付属部品を有していてもよい。
【0016】
通常、シートの型押し成形時には2本の対を成すロール間に溶融樹脂を膜状に通過させ狭圧することでロールの表面形状をシートに転写するものであるため、ロールは圧力に耐える材質からなる堅牢な構造を有するものであることを要する。よって、鏡面ロールの軸芯部としては、鋼、ステンレス、アルミニウム等の金属製のものが好適に用いられる。
【0017】
また、一般的に型押し成形においてロール温度は転写性に大きく影響を与えるため、ロールを適当な温度に調節できる構造の軸芯部が好ましい。好適に用いられる温度調節手段としては、シーズヒーターを軸芯部に組み込んでロールを加熱する電気加熱方式、誘導発熱式コイルによる電磁誘導作用によってロールを加熱する誘導発熱方式、軸芯部内に設けられた流路に温度制御用の熱媒体を循環させてロールを間接加熱する熱媒体循環加熱方式等が挙げられる。特に好ましいのは熱媒体循環加熱方式であり、この熱媒体は気体でもよいが、水、油等の液体の方が好ましい。熱媒体流路の好適な例としては、内部に二条スパイラルまたは四条スパイラル等の構造を有するものが挙げられる。
【0018】
該ゴム層の材料は室温以上でゴム弾性を持つものであればよく、例えばネオプレンゴム、NBRゴム、シリコーンゴム等が例示される。特に、JIS K7215に規定されるゴム硬度で60〜90°の材料が好適であり、高温での寿命を考慮する場合にはシリコーンゴムが好適である。ゴム層の材料にはゴム硬度を調整する目的でSiO2 粉末等の各種充填材を含ませてもよい。
【0019】
該ゴム層の厚みは、弾性力を保持できる程度、例えば0.5mm以上であることが好ましい。ゴム層の厚みが0.5mmを下回ると、ゴム層の弾性変形量が不足し、樹脂の厚みムラを吸収しきれない恐れがある。
【0020】
該ゴム層の表面状態は、これに外装される金属層を接着固定できるものであればよいが、ゴムの接着性に応じてゴム層の接着表面を適宜粗く仕上げることが好ましい。
【0021】
該金属層は、電気鋳造法によって得られたニッケルを主成分とする継目なしのチューブ状物(以下、ニッケルチューブという。)と、該チューブ状物を覆うクロムを主成分とする被膜(以下、クロム被膜という。)とからなる。電気鋳造法により作製したニッケルチューブは、鏡面性、無欠陥性に優れ、また、肉厚精度に優れるが、その反面、弾力性が低く、局所的な応力に対して容易に塑性変形する。そこで、このニッケルチューブの表面にクロム被膜を形成することにより、上記欠点を回避し、実用上支障のない弾力性を付与することができる。
【0022】
金属層のニッケルチューブの厚みは、好ましくは0.03〜0.3mmである。この厚みが0.03mmを下回ると、挾圧時にチューブが破断し易く圧力の設定に制限が生じることがある。この厚みが0.3mmを上回ると、チューブの柔軟性が欠けることとなり、樹脂の厚みムラを吸収しきれない場合もある。
【0023】
金属層のクロム被膜の厚みは、好ましくは0.01〜0.1mmである。この厚みが0.01mmを下回ると、局所的な応力に対して容易に塑性変形しない程度の弾力性が得られないことがある。この厚みが0.1mmを上回ると、ニッケルチューブとの密着力が低下し、クロム被膜の剥離が生じる場合もある。
【0024】
金属層の作製にあたっては、円筒状の母型を用いて電気鋳造法によりニッケルチューブを得た後、時間をおかずに連続して湿式メッキ法によりニッケルチューブの表面にクロム被膜を付与するのが、両者の密着性および表面光沢性の点で好ましい。
【0025】
ゴム層と金属層とは接着剤を用いて固定されていてもよく、ゴム層を冷却収縮させて金属層のニッケルチューブに挿入し摩擦力を強くすることで固定を行ってもよい。軸芯部とニッケルチューブを先に位置決めし、その間に液状ゴムを注入することで本発明鏡面ロールを作製することもできる。
【0026】
このようにして本発明による鏡面ロールを得た後、ロール表面の研磨により更に鏡面性、無欠陥性を向上させてもよく、逆に、他の平滑面との密着を防止してハンドリング性を確保するために、金属層の表面に中心線平均粗さRaで0.02〜0.08μmの凹凸加工を施してもよい。
【0027】
金属層表面への凹凸加工の方法は、全面において均一な凹凸が得られるのであれば、特に限定されるものではなく、適宜の方法が使用可能である。例えば、ウェット法によるサンドブラスト加工の後研磨により表面平滑性を向上し所望の表面平滑性を得る方法、200メッシュ程度のガラスビーズを用いてドライ法によりサンドブラスト加工のみ行なう方法や、ニッケルチューブを電気鋳造法により作製する際に表面に光沢をもたないようにサージェント浴を調整しておく方法等が挙げられる。
【0028】
金属層表面の平滑性は、このロールを用いて得られるシートの表面性に対して極めて重要であって、中心線平均粗さRaで0.02μmないし0.08μmであることが好ましく、更に好適には0.03μmないし0.06μmである。中心線平均粗さRaで0.02μmを下回ると、表面が平滑になりすぎて接触する他の表面との間で密着が起こり易く、中心線平均粗さRaで0.08μmを上回ると、平滑性が損なわれすぎてシート本来の光学的機能を著しく低下させてしまう。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明を具体例により詳述する。
【0030】
参考実施例1
i) 軸芯部をS45C鋼材で作製し、その内部に熱媒体油を循環させるための流路を設けた。流路は四条スパイラル構造とした。
【0031】
ii) 次に、SiO2 粉末を充填材として含有する液状シリコーンゴムによって軸芯部を被覆し、ゴムの硬化後ゴム層の厚みを研磨により2mmに調整した。硬化後のゴム硬度は75°であった。
【0032】
iii) 次に電気鋳造法を用いて厚み0.2mmのニッケルチューブを作製し、続いて該ニッケルチューブの表面に厚み0.05mmのハードクロムメッキ被膜を湿式メッキ法により付与した。ニッケルチューブの内径は、上記ゴム被覆後の軸芯部の外径と一致させた。ニッケルチューブを覆うハードクロムメッキ被膜表面は良好な鏡面性を有していた。軸芯部を被覆したゴム層表面にシリコーン系接着剤を塗布し、軸芯部を被覆したゴム層をニッケルチューブ内に挿入することによって、ニッケルチューブおよびクロム被膜からなる金属層でゴム層を被覆し、接着剤を硬化させた。こうして、本発明による鏡面ロールを得た。
【0033】
得られた押出しシート成形用ロールの構造を図1に示す。図1中、2 は軸芯部、3 は軸芯部を覆うゴム層、4 はゴム層を覆う金属層、4aは金属層中のニッケルチューブ、4bは金属層中のクロム被膜、1 はこれらから構成された本発明の押出しシート成形用ロールである。
【0034】
参考実施例2
ニッケルチューブの厚みを0.1mmとした点、および接着剤硬化後金属層の表面に400メッシュのガラスビーズを用いてドライ法によるサンドブラスト加工を行なった点を除いて参考実施例1と同様の操作を行なって、鏡面ロールを得た。
【0035】
比較例1
参考実施例1において用いたものと同じS45C鋼材製の軸芯部の表面にクロムメッキを施し、鏡面ロールを得た。
【0036】
比較例2
内面を鏡面化した型を用意し、この型の内面と、参考実施例1において用いたものと同じS45C鋼材製の軸芯部の表面との間にシリコーンゴムを注型して硬化させ、軸芯部を被覆した鏡面ゴムロールを得た。
【0037】
比較例3
参考実施例1において用いたものと同じS45C鋼材製の軸芯部をフッ素系樹脂製の熱収縮チューブで被覆した後、表面を研磨により鏡面化し、鏡面フッ素樹脂ロールを得た。
【0038】
比較例4
ニッケルチューブの表面にハードクロムメッキ被膜を付与していない点を除いて参考実施例1と同様の操作を行って、鏡面ロールを得た。
【0039】
性能評価
参考実施例および比較例で得られた各鏡面ロールとプリズムシート成形用のエンボスロールとをそれぞれ引取り機に設置し、Tダイから押出したポリカーボネート溶融樹脂をこれらのロール間に膜状に通過させ狭圧することでエンボス加工を行った。Tダイからの押出し直後の樹脂温度は270℃であり、エンボスロール内に流す熱媒体温度は130℃に制御し、本発明による鏡面ロール内に流す熱媒体温度は30℃に制御した。得られた成形シートはエンボスロールから良好に剥離し、その厚みは200μmであった。
【0040】
作製したシートを観察し、エンボス形状の転写性、鏡面の平滑性、鏡面の無欠陥性、ロール寿命、樹脂原料中の異物によるロール表面欠陥の発生、およびシート平滑面と表面の中心線平均粗さRaが0.02μmであるアクリル板との非密着性の評価を行った。ロール寿命は、上記成形条件で成形を行い、ゴム層や金属層が剥離するまでの時間、またはゴム層の表面や金属層の表面に傷が発生するまでの時間によって表示したものである。
【0041】
評価結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
Figure 0003795999
【0043】
表1のエンボス形状転写均一性の項中、
○は均一性が極めて良好、
△は均一性が十分でない、
×は均一性が良くない、
をそれぞれ意味する。
【0044】
また、表1の非密着性の項中、
○はアクリル板との密着が起こらない、
×はアクリル板との密着が起こる、
をそれぞれ意味する。
【0045】
表1から明らかなように、参考実施例1の鏡面ロールは、非密着性を除く全ての項目において良好な評価を得た。また、参考実施例2の鏡面ロールは、いずれの項目においても良好な評価を得た。
【0046】
【発明の効果】
本発明により、樹脂の厚みムラを吸収し、均一圧力でシートを挾圧し、且つ、シートに高度な鏡面性を付与する鏡面ロールが実現され、これによって均一なエンボス賦形性と鏡面の平滑性、無欠陥性を飛躍的に向上した押出しシートを成形することが可能となった。したがって、本発明により、光学精度に優れたレンズシートを量産性よく、安価に提供することが可能となった。
【0047】
また、本発明は、上記レンズシートのみならず、包装用等に供される例えば透明ポリプロピレン樹脂シート等の透明シートの成形に用いることによって、該透明シートの平滑性を向上させ、透明性を改善することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による押出しシート成形用ロールの横断面図である。
【符号の説明】
1:本発明の押出しシート成形用ロール
2:軸芯部
3:ゴム層
4:金属層
4a:ニッケルチューブ
4b:クロム被膜

Claims (2)

  1. 少なくとも片面が平滑面であるプラスチックシートを押出し成形する押出しシート成形装置において該平滑面を成形するための、軸芯部と、軸芯部を覆うゴム層と、さらにゴム層を覆う金属層とからなるロールの製造方法であって、電気鋳造法によって得られたニッケルを主成分とする継目なしのチューブ状物と、該チューブ状物を覆うクロムを主成分とする被膜とからなるチューブ状金属層内に、軸芯部を覆うゴム層を冷却収縮させて挿入し摩擦力で固定することを特徴とする押出しシート成形用ロールの製造方法
  2. 金属層の表面が中心線平均粗さRaで0.02〜0.08μmに凹凸加工されてなる、請求項1記載の押出しシート成形用ロールの製造方法
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