本発明の両面構造フィルムの製造装置は、表面に微細構造が形成されたエンドレスベルト形状を有する第1の金型及び表面に微細構造が形成されたエンドレスベルト形状を有する第2の金型と、前記第1の金型が懸架され、前記第1の金型を加熱する第1加熱ロール、前記第1の金型を冷却する第1冷却ロール、および、前記第1加熱ロールと前記第1冷却ロールとの間に配置された移動可能な第1ガイドロールを少なくとも具備する第1金型搬送ユニットと、前記第2の金型が懸架され、前記第2の金型を加熱する第2加熱ロール、前記第2の金型を冷却する第2冷却ロール、前記第1加熱ロールと平行に配置され表面が弾性体に覆われたニップロール、および、前記第2加熱ロールと前記第2冷却ロールとの間に配置された第2ガイドロールを少なくとも具備する第2金型搬送ユニットと、前記第1加熱ロールと前記ニップロールを用いて成形用フィルムを狭圧するための加圧機構と、前記第1冷却ロールの表面に沿って、前記第1の金型と前記成形用フィルムと前記第2の金型とを密着した状態で搬送した後、前記第2冷却ロールにより前記第1の金型から成形用フィルムと前記第2の金型とを密着した状態で剥離し、さらに、前記第2冷却ロールの表面に沿って、成形用フィルムと前記第2の金型とを密着した状態で搬送した後、剥離ロールにより前記第2の金型と成形用フィルムとを剥離するための剥離ユニットと、を少なくとも備えたことを特徴とする。
図1に本発明の実施形態の一例を示す。図1は両面構造フィルムの製造装置1を成形用フィルム幅方向から見た断面概略図である。本発明の両面構造フィルムの製造装置1は、表面に微細構造が形成されたエンドレスベルト形状を有する第1の金型10と第2の金型11によって成形用フィルム2を挟圧することによって、成形用フィルム2の両面に微細構造を成形するための装置である。
第1の金型10は、第1金型搬送ユニット3によって搬送され、第2の金型11は第2金型搬送ユニット4によって搬送される。第1金型搬送ユニット3は、第1加熱ロール14と第1冷却ロール16と第1ガイドロール22から構成される。また、第2金型搬送ユニット4は、第2加熱ロール15と第2冷却ロール17とニップロール20と第2ガイドロール23から構成される。但し、上記のロールは少なくとも必要なロールであって、設備構成上、上記以外に金型を搬送するために必要なロールが具備されていてもよい。
両面構造フィルムの製造装置1の動作としては、先ず、巻出ロール12より巻き出された成形用フィルム2が、第1の金型10と第2の金型11に狭圧された状態で加圧機構19により狭圧される。第1の金型10は第1加熱ロール14の表面に沿って加熱されながら狭圧部50に導入される。第2の金型11は第2加熱ロール15により加熱された後に、狭圧部50に導入される。加圧機構19は、第1加熱ロール14と、第1の加熱ロールと平行に配置されたニップロール20、バックアップロール21と図示しないこれらの加圧機構から構成される。なお、バックアップロール21は、狭圧部のロールのたわみを抑制するために設けられたものであって、フィルム幅方向の加圧長さが小さい場合は、省略してもよい。
成形用フィルム2は狭圧部50で、両面から各金型の表面に形成された微細構造を押し付けられることにより、パターン形状に対応する形状、すなわち各金型の微細パターンが反転した微細構造が成形される。狭圧部50を通過した成形用フィルム2は、第1の金型10と第2の金型11とに挟持されながら、剥離ユニット25まで搬送される。剥離ユニット25は、第1冷却ロール16と、第2冷却ロール17と、剥離ロール18から構成される。剥離ユニット25においては、先ず、成形用フィルム2が第1の金型10と第2の金型11に挟持された状態で第1冷却ロール16の表面に沿って冷却されながら、第2冷却ロール17の表面近傍まで搬送され、第1の金型10を成形用フィルム2から剥離する。剥離後の第1の金型10は第1のガイドロール22を経て第1加熱ロール14へと搬送される。一方、第2の金型11と成形用フィルム2は、第2冷却ロール17の表面に沿って冷却されながら、剥離ロール18の表面近傍まで搬送され、第2の金型11を成形用フィルム2から剥離する。剥離された第2の金型11は第2ガイドロール23を経て第2加熱ロール15へと搬送される。一方、成形用フィルム2は巻取ロール13へと搬送され、巻き取られる。
上記の構成及び動作により、狭圧部50で第1の金型10は第1加熱ロールの表面に沿ったまま加熱されるので高い平面性で保持できる。一方、成形用フィルム2は狭圧部50までは熱負荷をほとんど受けず、熱変形の極めて少ない状態で導入される。また、第2の金型はあらかじめ加熱された状態で狭圧部50に導入される。狭圧部ではニップロール20の表面を覆う弾性体が、第2の金型の平面性に追従しながら弾性変形できる。一方の加圧面では第1の金型と成形用フィルムを高い平面性を出した状態にし、他方の加圧面では弾性体を適用して第2の金型の平面性にならって変形する構造とすることにより、幅方向でエアー噛み等を抑制しながら均一な圧力がかけられて、精度の高い成形が可能となる。
また、上記の構成により、成形用フィルムと金型との剥離を各面で異なる位置で行う、すなわち2段階で剥離動作させることが可能となる。両面同時に剥離する場合では、各面での剥離力が互いに影響しあうために、剥離点が不安定となり剥離跡を残しやすいのに対して、本方式では、一方の面の剥離動作が他方の面の剥離動作に影響しにくく、剥離点が一定となり、安定した剥離動作を可能にする。また、両面ともに、剥離動作において、各冷却ロールの表面を一定距離沿わせるために、剥離面に関して十分に冷却することが可能となり、剥離不良や剥離後のパターンの変形等が抑制される。
各部の詳細な構造について以下に説明する。第1加熱ロール14、第2加熱ロール15は金型を均一に加熱しつつ、安定して搬送するために必要な加工精度が求められ、さらに加熱手段を含むことが好ましい。第1加熱ロール14はニップ時に受ける荷重を想定した強度を有することが好ましい。両方の加熱ロールともに、材質としては、例えば鋼や繊維強化樹脂、セラミックス、アルミ合金などが挙げられる。また、加熱手段としては内部を中空にしてカートリッジヒーターや誘導加熱装置を設けたり、内部に流路を加工して油や水、蒸気等の熱媒を流したりすることにより、ロール内部から加熱する構造でもよい。また、ロール外表面付近に赤外線加熱ヒーターや誘導加熱装置を設置して、ロール外表面から加熱する構造でもよい。
両方の加熱ロールの加工精度はJIS B 0621(改訂年1984)にて定義される円筒度公差において0.03mm以下、円周振れ公差において0.03mm以下であることが好ましい。これらの値が0.03mmより大きくなると、挟圧時の第1加熱ロール14とニップロール20の間に部分的な隙間ができるため、成形用フィルム2を均一に押圧できなくなり、フィルム2に成形ムラが生じる場合がある。また、両方の加熱ロールの表面粗さは、JIS B 0601(改訂年2001)にて定義される、算術平均粗さRaが0.2μm以下のものが好ましい。Raが0.2μmを超えると、金型の裏面に加熱ロールの形状が転写し、さらにそれが成形用フィルム2に転写してしまう場合があるためである。
両方の加熱ロールの表面には、硬質クロムめっき、セラミック溶射、ダイヤモンド・ライク・カーボン・コーティングなどの高硬度皮膜の形成処理を施すことが好ましい。なぜなら、両方の加熱ロールは常に金型と接触しているので、その表面は非常に磨耗しやすいためである。加熱ロールの表面に傷が入ったりすると、前述したような成形用フィルム2の成形ムラや、フィルムへのロール表面形状の転写といった問題が生じる場合がある。また、各加熱ロールの直径は200mm〜500mmの範囲が好ましい。200mm未満では金型に大きな曲げ応力がかかり、変形したり繰り返しかかる応力により耐久性が低下したりする場合がある。500mmより大きいとロールの加工コストが多大となったり、加工精度が低下したりする場合がある。
また、ニップロール20は芯層の表面が弾性体に覆われた構造であることが好ましい。芯層は、強度および加工精度が求められ、例えば鋼や繊維強化樹脂、セラミックス、アルミ合金などが適用される。また、弾性体は、押圧力により変形し、ゴムに代表される樹脂やエラストマー材質が好ましく適用される。芯層はその両端部で軸受によって回転支持されており、さらに前記軸受は、シリンダなどの図示しない押圧手段と接続されている。ニップロール20はこの押圧手段のストロークにより開閉し、成形用フィルム2を挟圧または開放する。
また、ニップロール20は所望のプロセスやフィルム材質に合わせて、温調機構を有してもよい。温調機構としては、ロール内部を中空にしてカートリッジヒーターや誘導加熱装置を埋め込んだり、内部に流路を加工して油や水、蒸気等の熱媒を流したりすることにより、ロール内部から加熱する構造でもよい。また、ロール外表面付近に赤外線加熱ヒーターを設置して、ロール外表面から加熱する構造でもよい。
ニップロール20の加工精度は、JIS B 0621(改訂年1984)にて定義される円筒度公差において0.03mm以下、円周振れ公差において0.03mm以下であることが好ましい。これらの値が0.03mmより大きくなると、挟圧時の加熱ロール14とニップロール20の間に部分的な隙間ができるため、成形用フィルム2を均一に押圧できなくなり、成形用フィルム2に成形ムラが生じる場合がある。また、ニップロール表面に被覆した弾性体の表面粗さは、JIS B 0601(改訂年2001)にて定義される算術平均粗さRaが1.6μm以下のものが好ましい。Raが1.6μmを超えると、押圧時に成形用フィルム2の裏面に弾性体の表面形状が転写してしまう場合があるためである。
ニップロール20の表面の弾性体の耐熱性は、160℃以上の耐熱温度を有するものが好ましく、さらに好ましくは180℃以上の耐熱温度を有するものが好ましい。耐熱温度の上限は耐久性を考慮すると400℃以下が好ましい。ここで耐熱温度とはその温度で24時間放置したときの引張強さの変化率が10%を超えるときの温度を言う。
弾性体の材質としては、例えばゴムを用いる場合には、シリコーンゴムやEDPM(エチレンプロピレンジエンゴム)、ネオプレン、CSM(クロロスルホン化ポリエチレンゴム)、ウレタンゴム、NBR(ニトリルゴム)、エボナイトなどを用いることができる。更に高い弾性率と硬度を求める場合には、カレンダーローラ用樹脂としてゴムメーカ各社から販売されている上記ゴムに特殊な処方を用いたものや、じん性を向上させた硬質耐圧樹脂(例:ポリエステル樹脂)を用いることができる。
弾性体のゴム硬度がASTM D2240:2005(ショアD)規格で70〜97°の範囲であることが好ましい。なぜなら、硬度が70°を下回ると弾性体の変形量が大きくなり、成形用フィルム2との搬送方向の加圧長さが長くなりすぎて、微細構造の成形に必要な圧力を確保することができなくなる場合があり、また硬度が97°を超えると、逆に該弾性体の変形量が小さくなり、搬送方向の加圧長さが短くなりすぎて微細構造の成形に必要な押圧時間が確保できない場合があるためである。
ニップロールの直径は適切な強度を確保できる最低限の直径を有し、さらに200mm以下とすることが好ましい。200mmを超えると搬送方向の加圧長さが長くなり、圧力が低下するため微細構造の成形に必要な押圧時間が確保できない場合があるためである。
バックアップロール21は、加圧部のロールのたわみを抑制するために設けられたものであって、フィルム幅方向の加圧長さが小さい場合は、省略してもよいが、設ける場合には、以下の構成が好ましい。
バックアップロール21は、ニップ時に荷重を受けるので、強度および加工精度が求められる場合がある。材質としては、例えば鋼や繊維強化樹脂、セラミックス、アルミ合金などが挙げられる。接触するニップロール20の温度変化を抑制するために、バックアップロールの表面温度を一定に保持するための温調手段を有してもよい。温調手段としては内部を中空にしてカートリッジヒーターや誘導加熱装置を設置したり、内部に流路を加工して油や水、蒸気等の熱媒を流したりすることにより、ロール内部から加熱する構造でもよい。
バックアップロール21の加工精度も、JIS B 0621(改訂年1984)にて定義される円筒度公差において0.03mm以下、円周振れ公差において0.03mm以下であることが好ましい。これらの値が大きくなりすぎると、挟圧時のバックアップロール21とニップロール20の間に部分的な隙間ができるため、成形用フィルム2を均一に圧力がかからなくなり、フィルムの幅方向に成形ムラが生じる場合がある。また、バックアップロール21の表面粗さは、JIS B 0601(改訂年2001)にて定義される算術平均粗さRaが0.2μm以下のものが好ましい。Raが0.2μmを超えると、ニップロール20の表面にバックアップロール21の表面形状が転写する場合があるためである。
バックアップロール21の表面には、硬質クロムめっき、セラミック溶射、ダイヤモンド・ライク・カーボン・コーティングなどの高硬度皮膜の形成処理を施すことが好ましい。なぜなら、ニップロール20による押圧力を受けるため、その表面は非常に磨耗しやすく、バックアップロール21の表面が磨耗したり、傷が入ったりすると、前述したような成形用フィルム2の成形ムラの問題が生じる場合があるためである。
第1冷却ロール16、第2冷却ロール17は、例えば内部に通水路が設けられ、一定の温度の水を連続して循環させる水冷式の冷却手段などによって冷却されることが好ましい。そして第1の金型10、第2の金型11との接触面における熱伝導により金型を冷却する。
各冷却ロールは金型との密着性を良くして幅方向に均一に熱伝導させて冷却するために、ロールの表面材質は鋼やアルミ合金、銅などの金属とし、加工精度はJIS B 0621(改訂年1984)にて定義される円筒度公差において0.1mm以下、円周振れ公差において0.1mm以下であることが好ましい。これらの値が0.1mmより大きくなると、金型との接触が不均一となり、冷却不良によるパターン成形不良が発生する場合がある。また、両ロールともに表面粗さは、JIS B 0601(改訂年2001)にて定義される算術平均粗さRaが0.2μm以下のものが好ましい。Raが0.2μmを超えると、上記同様に金型との接触が不均一となり、冷却不良によるパターン成形不良が発生する場合がある。各冷却ロールの表面には、金型との接触による摩耗を防止するために、硬質クロムめっき、セラミック溶射、ダイヤモンド・ライク・カーボン・コーティングなどの高硬度皮膜の形成処理を施すことが好ましい。
第1冷却ロール、第2冷却ロールともに200mm〜500mの直径を有することが好ましい。200mm未満では金型に大きな曲げ応力がかかり、変形したり繰り返しかかる応力により耐久性が低下したりする場合がある。500mmを超えるとロールの加工コストが多大となったり、加工精度が低下したりする場合がある。
次に、第1冷却ロール16と第2冷却ロール17と剥離ロール18から構成される剥離ユニット25について説明する。第1冷却ロール16と第2冷却ロール17は平行に配置されている。幅方向で均一な剥離動作を行うために、両ロールの間隙は1mm〜10mmの範囲が好ましく、間隙精度としては0.01mm以下にすることが好ましい。また、第2冷却ロールと剥離ロール18も平行に配置され、上記と同じ間隙量、間隙精度にすることが好ましい。
剥離ロール18は、は各冷却ロール16、17と同様に冷却手段を有しており、成形用フィルム2を冷却し、第2の金型11からの剥離を補助する役割を果たすことが好ましい。また、第1の金型により形成された微細構造面を破壊しないように、表面を樹脂やゴムからなる弾性体で被覆されたロールを適用してもよい。また、第2冷却ロールとの平行度を高くして安定した剥離動作を得るために、加工精度はJIS B 0621(改訂年1984)にて定義される円筒度公差において0.1mm以下、円周振れ公差において0.1mm以下であることが好ましい。さらに、剥離ロール18は、第2剥離ロールの表面で第2の金型と成形用フィルム3との剥離点を一定に維持するために、流体圧シリンダなどにより第2冷却ロール17に対して押し当てられる構造であってもよい。剥離ロール18の成形用フィルム2に対する押圧力は特に制限されず、剥離ロールの周面が成形用フィルム2の裏面に密着していればよい。
また、第1冷却ロール16と第2冷却ロール17は、第1冷却ロール16の外周面に沿って成形用フィルム2が移動する区間の抱き角が10度〜45度になるように配置することが好ましい。10度未満では十分な冷却効果が得られにくくなる場合があり、45度を超えると、成形用フィルム2または第2の金型が所定の位置よりも早く剥離し、剥離点が不均一となる場合がある。
また、第2冷却ロール17と剥離ロール18は、第2冷却ロール17の外周面に沿って成形用フィルム2が移動する区間の抱き角が10度〜90度になるように配置することが好ましい。10度未満では十分な冷却効果が得られにくくなる場合があり、90度を超えると、成形用フィルム2が所定の位置よりも早く剥離し、剥離点が不均一となる場合がある。また、剥離ロール18は各冷却ロールと同様に冷却手段を有しており、成形用フィルム2を裏面側から冷却し、第2の金型からの剥離を補助する役割を果たすことが好ましい。
第1ガイドロール22、第2ガイドロール23は、それぞれ第1の金型10と第2の金型11の搬送において、張力を調整する機構が付加されていることが好ましい。例えば、昇降方向に移動できるようにして、搬送張力を調整したり、あるいは張力を除荷して金型を交換できるようにしたりすることが好ましい。昇降機構としては、エアーシリンダーやモーターで駆動する機構等、いかなるものでもよい。高精度な張力制御を行う場合は、軸受け部にロードセルを設けて検出値に応じてサーボモーター等で高精度にロール位置を高精度に制御することが好ましい。
両ロールの表面材質は鋼やアルミ合金、銅などの金属とし、加工精度はJIS B 0621(改訂年1984)にて定義される円筒度公差において0.1mm以下、円周振れ公差において0.1mm以下であることが好ましい。これらの値が0.1mmより大きくなると、金型との接触が不均一となり、全幅にわたって均一な張力がかからない場合がある。また、両ロールともに金型との接触による摩耗を防止するために、硬質クロムめっき、セラミック溶射、ダイヤモンド・ライク・カーボン・コーティングなどの高硬度皮膜の形成処理を施すことが好ましい。
第1金型搬送ユニット3、第2金型搬送ユニット4を構成する各ロールの端部は、ころがり軸受などにより回転支持されることが好ましい。第1加熱ロール14、第2加熱ロール15はモーター等の駆動手段と連結され、速度を制御しながら回転可能となっている。また第1冷却ロール16、第2冷却ロール17は第1の金型10、第2の金型11を通じて、各加熱ロールの駆動力により回転することが好ましい。搬送速度は微細構造の成形性と成形用フィルムの生産性のバランスを考慮して決定されるが、微細構造を高精度に成形しながら生産性を高くするために、速度は1〜30m/分の範囲より決定されることが好ましい。バックアップロール21の駆動手段は第1の加熱ロール14と速度を同期可能なモーターなどを用いて独立して回転させることが好ましい。バックアップロール21を適用しない場合は、ニップロール20を第1加熱ロール14と速度を同期可能なモーターなどを用いて独立して回転させることが好ましいが、第1加熱ロール14の端部とチェーンまたはベルトなどで連結し、第1加熱ロール14と連動して回転できるようにしてもよい。
また、巻出ロール12および巻取ロール13はともに成形用フィルム2を巻きつけるコアを固定できる構造となっており、端部はモーター等の駆動手段と連結され、速度を制御しながら回転可能となっている。また、トルク制御により、成形用フィルム2に与えられる張力を調整できるようにしてもよい。
第1金型搬送ユニット3と第2金型搬送ユニット4において、金型蛇行修正機構を設けることが安定的に金型を搬送するために好ましい。金型蛇行抑制機構の好ましい形態は、図1に示すように、第1の金型の搬送経路において、金型の端部の位置を検知する端部検出センサー40と、検出された値に基づいて第1ガイドロール22の移動を制御することにより、第1の金型の搬送位置を調整するためのコントローラ41を有する。さらに、第2の金型の搬送経路において、金型の端部の位置を検知する端部検出センサー42と、検出された値に基づいて第2ガイドロール23の移動を制御することにより、第2の金型の搬送位置を調整するためのコントローラ43を有する。
端部検出センサー40、42は、発信側と受信側に分かれた光量検出式等の非接触のラインセンサーであり、発信信号の一部が第1の金型10、第2の金型11によって遮られるように、各金型の幅方向端部に被さるように設置されることが好ましい。そして、受信側が受け取る信号量の大小によって、コントローラ41、43によって各金型の幅方向位置を検出する。各コントローラでは端部検出センサーの検出値に合わせて、ガイドロールを所定量移動させるために、あるいは所定速度で移動させるために移動手段を駆動させる。
第1ガイドロール22、第2ガイドロール23の各可動手段としては、それぞれ第1の金型10、第2の金型11の搬送方向に対して各ガイドロールの角度を調整できるものが好ましい。端部検出センサーからの値に基づき、移動させたい方向に張力が低下するように各ガイドロールの金型搬送方向に対する角度を調整する構造が好ましい。上記の各金型の蛇行抑制機構を備えることにより、熱変形による金型の蛇行を抑制し、安定した金型の搬送と成形動作を実現できる。また、各ガイドロールは各金型の非微細構造面をエアーシリンダー等の押圧手段で一定の荷重で押圧することが好ましい。金型は温度変化により寸法変化を起こすことから、一定の張力を維持するために上記構造が有効である。
第1の金型10、第2の金型11は、表面に微細構造面を加工されたエンドレスベルト形状を有する金型である。材質は強度と熱伝導率が高い金属が好ましく、例えばニッケルや鋼、ステンレス鋼、銅などが好ましい。また、エンドレスベルト形状を有する金型として、エンドレスベルト形状を有する金属ベルトの表面に鍍金を施したものを使用してもよい。表面に微細構造を有する各金型の作成方法については、金属ベルトの表面に直接切削やレーザー加工を施工する方法、金属ベルトの表面に形成した鍍金皮膜に直接切削やレーザー加工を施工する方法、微細構造を内面に有する円筒状の原版に電気鋳造を施す方法、金属ベルトの表面に微細構造面を有する薄板を連続して張り付ける方法などが挙げられる。
エンドレス形状を有する金属ベルトは、所定の厚み、長さを持つ金属板の端部同士を突き合わせ溶接する方法、所定の倍の厚みの金属板を所定の半分の長さで溶接してエンドレス形状にした後に圧延する方法、などによって製造される。このとき、金属ベルトの厚みは金型として必要な強度とハンドリング性の理由により、0.1〜0.4mmの範囲とすることが好ましい。この範囲よりも厚みが小さくなると、加熱ロールと冷却ロールによって懸架されるときに与えられる張力により、金属ベルトが破断あるいは塑性変形する場合がある。一方、この範囲よりも厚みが大きい場合、金属ベルトの曲げ剛性が大きくなりすぎて、加熱ロールおよび冷却ロールに懸架したり、これらのロールに懸架した状態で搬送させることが難しくなったりする場合がある。
エンドレス形状を有する金属ベルトの表面に鍍金を施す場合は、鍍金の材質はニッケルや銅などが好ましい。また、金属ベルトの厚みは0.1〜0.3mm、鍍金の厚みは0.03〜0.1mmの範囲とすることが好ましい。金属ベルトの厚みに対して鍍金の厚みが大きくなると、金属ベルトと鍍金の境界面で剥離が発生する場合がある。一方、鍍金の厚みが小さすぎると、微細構造を精度よく加工することが困難となる場合がある。
また、微細構造とは、高さ10nm〜100μmの凹形状および/または凸形状がピッチ10nm〜1mm、より好ましくは高さ1μm〜50μmの凹形状および/または凸形状がピッチ1μm〜100μmで周期的に繰り返された形状のことを示し、例えば、三角形状の溝が複数個ストライプ状に並んでいるものであったり、矩形、半円形状もしくは半楕円形状等であったりしてもよい。さらには溝が直線である必要はなく、曲線のストライプパターンでもよい。また、その稜線方向はベルトの周方向に限らず幅方向であってもよい。さらに、微細構造は他にも直線状あるいは曲線状に連続したものに限られず、半球や円錐や直方体などの凸形状あるいは凹形状がドット状に離散的に配置されたものでもよい。
エンドレスベルト形状を有する金型の製造方法の一例を以下に示す。まず、ステンレス鋼板の端部を突き合わせ溶接し、エンドレス形状を有する金属ベルトに加工する。次に、この金属ベルトをロールにはめて固定し、表面にニッケル鍍金処理を施し、その後、旋盤加工機にて金属ベルトの鍍金層に所定の微細構造を切削加工する方法がある。切削加工を施した金属ベルトは、ロールより取り外すことで、表面に所定の微細構造を有するエンドレスベルト形状を有する金型が得られる。
また、エンドレスベルト形状を有する金型の他の製造方法の例として、薄板状の金属板に微細構造を加工した後に、突き合わせ溶接でエンドレスベルト化する方法がある。薄板状の金属板への加工は、表面にニッケル鍍金処理を施した後、平面切削加工機にて鍍金層に所定の微細構造を切削する方法や、金属板表面を直接レーザー加工や、電子ビーム加工、あるいはフォトリソグラフィーにより微細精密構造を形成する方法が挙げられる。
図2に本発明の微細構造フィルムの製造装置に関する別の好ましい形態を示す。
第1金型搬送ユニット3において、第1加熱ロール14〜第1冷却ロール16との間に、第1温調ロール30を配置することが好ましい。第1温調ロール30は、第1の金型の微細構造が形成された面とは逆側の面から第1の金型を押し当てるように構成する。第1温調ロール30を配置することにより、加熱工程によって加熱された第1の金型10が第1冷却ロールの外周面に到達した地点での第1の金型の温度降下幅を小さくできる。温度降下幅を小さくすることにより、熱変形量を抑えることができる。熱変形は金型のうねりやしわを発生させる要因となることから、本発明の構成で熱変形量を抑制することにより、金型のうねりやしわの発生を抑えることができる。これにより第1冷却ロール16と第1の金型10との接触が幅方向で均一になり、均一な金型の冷却が可能になる。また、金型のうねりやしわは、本来の剥離位置より手前での剥離を引き起こすことから、本発明の構成により、本来の剥離位置より手前での剥離を防止することができる。
第1温調ロール30は各冷却ロールと同様に冷却手段を有し、第1の金型10を微細構造面とは逆側の面から冷却する。第1温調ロールは金型との密着性を良くして幅方向に均一に熱伝導させて冷却するために、ロールの表面材質は鋼やアルミ合金、銅などの金属とし、加工精度はJIS B 0621(改訂年1984)にて定義される円筒度公差において0.1mm以下、円周振れ公差において0.1mm以下であることが好ましい。これらの値が0.1mmより大きくなると、金型との接触が不均一となり、金型の温度ムラを引き起こす場合がある。また、両ロールともに表面粗さは、JIS B 0601(改訂年2001)にて定義される算術平均粗さRaが0.2μm以下のものが好ましい。Raが0.2μmを超えると、上記同様に金型との接触が不均一となり、温度ムラを引き起こす場合がある。各冷却ロールの表面には、金型との接触による摩耗を防止するために、硬質クロムめっき、セラミック溶射、ダイヤモンド・ライク・カーボン・コーティングなどの高硬度皮膜の形成処理を施すことが好ましい。
また、第1温調ロール30は第1の金型10と幅方向で均一に接触できるように、第1の金型10を微細構造面とは逆側の面から適切な力で押圧するための押圧機構を備えることが好ましい。押圧機構としては、油圧、空圧等、一定の力を与えるものがよいが、モーター駆動にしてロール位置を常に一定の位置で押せるように位置制御できるものでもよい。また、両端は自在に回転できるように軸受で支持されている構成が良い。
図3に本発明の微細構造フィルムの製造装置に関するさらに別の好ましい形態を示す。
第2金型搬送ユニット4において、ニップロール20〜第2冷却ロール17との間に、第2温調ロール31を配置することが好ましい。第2温調ロール31は、第2の金型の微細構造が形成された面とは逆側の面から第2の金型を押し当てるように構成する。図示したとおり第1温調ロール30と併用してもよいし、単独で適用してもよい。
第2温調ロール31を配することにより、加熱工程によって加熱された第2の金型11が第2冷却ロールの外周面に到達した地点での第2の金型の温度降下幅を小さくできる。温度降下幅を小さくすることにより熱変形量を抑えることができる。熱変形は金型のうねりやしわを発生させる要因となることから、本発明の構成で熱変形量を抑制し、金型のうねりやしわの発生を抑えることができる。これにより第2冷却ロール17と第2の金型11との接触が幅方向で均一になり、均一な金型の冷却が可能になる。また、金型のうねりやしわは、本来の剥離位置より手前での剥離を引き起こすことから、本発明の構成により、本来の剥離位置より手前での剥離を防止することができる。
第2温調ロール31の構造や材質は第1温調ロール30と同様でよい。
また、第2温調ロール31は第1の金型11と幅方向で均一に接触できるように、上記の第1温調ロールと同様の押圧機構を用いればよい。
また、第1温調ロール30と第2温調ロール31を併用し、さらに、図3で示すように各々の温調ロール位置を搬送方向で異なる位置に配置することが好ましい。各ロールを金型に搬送方向で別々の位置で押し当てることにより、ロール表面に金型を密着させることができる。密着させることにより、金型の幅方向に渡って均一な温度分布を実現できるために金型の熱変形によるうねりを抑制できる。
第1温調ロールと第2温調ロールを異なる位置に配置する距離としては、30mm〜200mmの範囲が好ましい。30mm未満では互いのロールの押圧力が両金型を介して影響しあい、各ロールが幅方向に均一な接触を阻害する場合がある。一方、200mmを超えると装置構成上、長い搬送工程を有することとなり装置が大型化する場合がある。
上記の装置を用いて微細構造が表面に形成されたフィルムを製造する方法を説明する。本発明の製造方法は、表面に微細構造が形成されたエンドレスベルト形状を有する第1の金型及び第2の金型を加熱する加熱工程と、加熱された前記第1の金型と前記第2の金型を、その内側に成形用フィルムを挟んだ状態でロールにより加圧する加圧工程と、前記加圧工程後に前記第1の金型、前記成形用フィルム、前記第2の金型の順に積層した状態で搬送する搬送工程と、前記搬送工程後に、前記第1の金型及び前記第2の金型から前記成形用フィルムを第1冷却ロール及び第2冷却ロールにより冷却しながら剥離する冷却剥離工程と、からなる両面構造フィルムの製造方法において、(1)前記加熱工程は、加熱ロールによって実施され、前記加圧工程は、表面が弾性体に覆われたニップロールによって実施され、(2)前記冷却剥離工程は、前記第1冷却ロールの表面に沿って、前記第1の金型と成形用フィルムと前記第2の金型とを密着した状態で搬送した後、前記第2の冷却ロールにより前記第1の金型から前記成形用フィルムと前記第2の金型とを密着した状態で剥離する工程と、さらに、前記第2冷却ロールの表面に沿って、前記成形用フィルムと前記第2の金型とを密着した状態で搬送した後、剥離ロールにより前記第2の金型と前記成形用フィルムとを剥離する工程とを、少なくとも含むことを特徴とする。
本発明の製造方法の実施形態の一例を図1を用いて説明する。まず、準備段階として、成形用フィルム2を巻出ロール12より引き出し、ニップロール20を開放した状態で、第1加熱ロール14と第1冷却ロール16に懸架された第1の金型10の上に沿わせた後、第2冷却ロール17、剥離ロール18を経由し、巻取ロール13で巻き取っている状態とする。
続いて、駆動手段により成形用フィルム2、第1の金型10、第2の金型11を低速で搬送しながら、各加熱手段及び冷却手段を作動し、第1加熱ロール14、第2加熱ロール15、及び第1冷却ロール16、第2冷却ロール17の表面温度が所定の温度になるまで温調する。各加熱ロールの表面温度、各冷却ロールの表面温度の条件は、成形用フィルム2の材質、金型の微細構造の形状、アスペクト比等に依存し、第1加熱ロール、第2加熱ロールの表面温度はフィルム2のTg+50℃からTg+100℃、第1冷却ロール、第2冷却ロールの表面温度はフィルム2のTg−20℃からTg−100℃の範囲で設定されることが好ましい。ここで、Tgとはフィルムのガラス転移温度のことを示す。なお、成形条件やフィルムの材料等によっては、成形性の向上、フィルムの平面性の向上、スムーズな剥離を目的としてニップロール20や剥離ロール18を所定の温度に制御してもよい。
各加熱ロール及び各冷却ロールの表面温度が設定値まで温調されたら、フィルムを成形速度で搬送すると同時に、ニップロール20を閉じ、第1加熱ロール14とニップロール20で第1の金型10、成形用フィルム2、第2の金型11を積層した状態で加圧し、第1の金型10と第2の金型11の微細構造面の反転した形状を成形用フィルム2の各成形面に成形する。このときの条件として、フィルムの成形速度は1〜30m/分、線圧は400kN/m以上の範囲で設定されることが好ましい。
フィルム表面への連続成形は、第1の金型及び第2の金型の周回動作に合わせて加熱工程、加圧工程、搬送工程、冷却剥離工程から構成される。
第1の金型10は第1加熱ロール14と接触する部分において、常に高温の第1加熱ロール14からの熱伝導により加熱され、第1加熱ロール14とニップロール20によって挟圧されるまでに、加熱ロール4の表面温度近くまで昇温される。一方、第2の金型11は、第2加熱ロールと接触する部分において、熱伝導によって加熱され、所定の温度まで昇温する。昇温された第2の金型11は、ニップロール20の挟圧部50まで搬送される。(加熱工程)。
次に、成形用フィルム2は狭圧部50において第1の金型10と第2の金型11によって挟持されたまま加圧され、軟化したフィルムを構成する樹脂が各金型の微細構造面のパターン内に入り込む(加圧工程)。
成形用フィルム2の各面は第1の金型10と第2の金型11に密着した状態で第1冷却ロール16まで搬送される。(搬送工程)。
成形用フィルム2が両金型に挟まれた状態で第1冷却ロール16の外周面まで到達すると、熱伝導により、第1の金型10が冷却される。第1の金型は第1の冷却ロールの外周面に沿って、一定区間走行する。この間に、成形用フィルム2の第1の金型10との接触面の温度が、フィルムのガラス転移温度以下まで冷却されることが好ましい。第1の金型を剥離した後、成形用フィルム2と第2の金型11は、第2冷却ロール17の外周面に沿って一定区間走行し、剥離ロール20の外周面に到達する。その後、剥離ロール20により第2冷却ロール17の外周面において成形用フィルム2を第2の金型から剥離する(冷却剥離工程)。
なお、第1の金型10及び第2の金型11はその後、それぞれ、第1加熱ロール14、第2加熱ロール15の外周面に搬送され、加熱工程から再度繰り返す。一方、剥離ロール20により剥離された成形用フィルム2は巻取ロール13に巻き取られる。
上記の加熱工程により、第1の金型10は第1加熱ロール14の表面に沿って高い平面性を保持したまま狭圧部50に導入される。成形用フィルム2も狭圧部50までは熱負荷をほとんど受けず、熱変形の極めて少ない状態で導入されるので、第1の金型面のパターン形状が成形用フィルム2に均一に成形される。一方、第2の金型11はあらかじめ加熱された状態で狭圧部50に導入される。狭圧部50ではニップロール20が第2の金型11の平面性に倣って弾性変形し、幅方向均一に圧力をかけられて、第2の金型面のパターン形状が成形用フィルム2に均一に成形される。
また、上記の構成により、フィルムと金型との剥離は各面で異なる位置で行う、すなわち、第1の金型と接触する面と第2の金型と接触する面を2段階に逐次、剥離動作させることが好ましい。両面同時に剥離する場合では、各面での剥離力が互いに影響しあうために、剥離点が不安定となり剥離跡を残しやすくなる場合がある。一方、本発明の方式では、一方の面の剥離動作が他方の面の剥離動作に影響することが生じにくく、剥離点が一定となり、安定した剥離動作を可能にする。また、両面ともに各冷却ロールの表面を一定区間沿わせるために、剥離面に関して十分に冷却することが可能となり、剥離不良や剥離後のパターンの変形等が抑制されやすくなる。
また、図2や図3に示すように、上記の搬送工程において、第1の金型の温度を、温調機構を有する第1温調ロール30により、所定の温度に調整したり、第2の金型の温度を、温調機構を有する第2温調ロール31により、所定の温度に調整したりすることが好ましい。
成形動作中の第1温調ロール30、第2温調ロール31の表面の温度は、それぞれ第1冷却ロール16、第2冷却ロール17の表面温度よりも50度以上、120度以下とすることが好ましい。より好ましくは、70度以上、100度以下である。50度未満では、冷却が過度に行われ金型と成形用フィルムとの密着力が低下し、本来の剥離位置よりも手前で剥離され、剥離跡を誘発する場合がある。一方、120度より高くすると、各冷却ロールとの接触開始点において、温度降下幅が大きくなり、金型のうねりやしわを誘発させ、各冷却ロール上で冷却不良を引き起こす場合がある。また、各金型を押圧する力としては、搬送するベルトの厚みや各ロールの設定温度によって異なるが、概ね100N/m〜1,000N/mの範囲が好ましい。100N/m未満では幅方向で均一な接触状態を得ることが難しくなる場合があり、また、1,000N/mより大きい場合は、金型の蛇行を引き起こす場合がある。なお、第1冷却ロール16と第2冷却ロール17はそれぞれ単独で用いてもよいし、図3に示すように併用してもよい。併用する場合は、成形用フィルムの各面において、幅方向に均一な温度分布となるように各温調ロールと各金型の接触位置が搬送方向において異なる位置に配置されることが好ましい。
本発明に適用される成形用フィルム2は、熱可塑性樹脂を主たる成分とした熱可塑性フィルムが用いられ、具体的に好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂ポリエーテル系樹脂、ポリエステルアミド系樹脂、ポリエーテルエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、あるいはポリ塩化ビニル系樹脂などからなるものである。
このなかで共重合するモノマー種が多様であり、かつそのことによって材料物性の調整が容易であるなどの理由から特にポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂またはこれらの混合物から選ばれる熱可塑性樹脂から主として形成されていることが好ましく、上述の熱可塑性樹脂が50質量%以上からなることがさらに好ましい。
成形用フィルム2は上述の樹脂の単体からなるフィルムであっても構わないし、複数の樹脂層からなる積層体であってもよい。この場合、単体フィルムと比べて、易滑性や耐摩擦性などの表面特性や、機械的強度、耐熱性を付与することができる。このように複数の樹脂層からなる積層体とした場合はフィルム全体が前述の熱可塑性樹脂を主たる成分とする要件を満たすことが好ましいが、フィルム全体としては前記要件を満たしていなくても、少なくとも前記要件を満たす層が表層に形成されていれば容易に表面を形成することができる。特に、フィルムの成形性を良くするために金型温度を高温にしたい場合は、表層にガラス転移温度が低く微細構造を成形しやすい樹脂、芯層にガラス転移温度が高く強度の強い樹脂、という構成のフィルムを用いることで、フィルムの平面性を維持しつつ、フィルムの成形性を高めることができる。
(実施例1)
成形用フィルム2には、ポリカーボネート樹脂を芯層とし、その両面に成形層としてポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂を積層した3層積層フィルムを共押出しにより作成し用いた。該フィルムの総厚みは300μm、各層の積層比はおよそ1:8:1であり、幅は320mm、長さは200mとした。
装置は図1に示す構成を適用した。第1の金型10、第2の金型11として、厚み0.2mmのステンレス鋼ベルトの表面に厚み0.1mmのニッケル鍍金をしたものに、ピッチ25μm、深さ12.5μmのV溝形状を該ベルトの周方向と平行に切削加工して作製した。また、幅は340mm、周長は1,600mmとした。
第1加熱ロール14、第2加熱ロール15として、外径400mmの炭素鋼からなる筒状の芯材の表面に硬質クロムを鍍金したもので、内部に誘導加熱ヒーターを有している。両ロールの表面温度を常に190℃に保った。
ニップロール20として、幅280mmで外径160mmの炭素鋼からなる筒状の芯材表面全面に、弾性体10としてポリエステル樹脂(硬度:ショアD86°)を20mmの厚みで被膜したものを用いた。また、内部に誘導加熱ヒーターを有している。常に表面温度180℃に保った。
第1冷却ロール16、第2冷却ロール17として、外径400mmの炭素鋼からなる筒状の芯材の表面に硬質クロム鍍金をし、内部に流水を循環する構造を適用した。常に表面温度70℃に保った。
剥離ロール18として、外径180mmの炭素鋼からなる筒状の芯材の表面に硬質クロムを鍍金したものを用いた。
第1冷却ロール16と第2冷却ロール17は、第1の金型が第1冷却ロールに対して60度の抱き角をなすように配置し、第2冷却ロールと剥離ロールとの抱き角を60度となるように配置した。
加圧機構として、上記ニップロールを油圧シリンダーを用いて第1加熱ロールに対して昇降できる構造とし、加圧力は200kNとした。
第1ガイドロール、第2ガイドロールは、外径180mmの炭素鋼からなる筒状の芯材の表面に硬質クロムを鍍金したものを用いて、さらに金型の端部位置を検出し、その結果をもとに金型の搬送方向に対するガイドロールの角度を調整する蛇行防止機構を、第1のガイドロール、第2のガイドロールともに取り入れた。
フィルムの搬送速度を10m/分として連続成形を行った。その結果、安定して全幅で外観均一な外観の両面微細構造フィルムが得られた。
成形したフィルムの走査型電子顕微鏡((株)キーエンス社製 VE−7800)による断面写真を図4に示す。図4(a)は第1の金型によって形成されたパターン側の断面写真であり、図4(b)は第2の金型によって形成されたパターン側の断面写真である。
両面ともにV溝のピッチは25.0μm、深さは12.5μmであり、金型の断面とほぼ同じ形状のパターン形状を得ることができた。
(実施例2)
本実施例では、図3に示す構成を適用した。第1加熱ロール14、第2加熱ロール15の表面温度を200度に保持し、第1冷却ロール16、第2冷却ロール17の表面温度を60度に保持した。その他は上記実施例1と同じ構成のものを適用した。
さらに、第1温調ロール30及び第2温調ロール31として、外径180mmの炭素鋼からなる筒状の芯材の表面に硬質クロムを鍍金したものを用いて、内部に流水を循環する構造を適用した。循環経路を0.8MPaまで加圧しながら加熱することにより、第1温調ロールでは流水の温度を120度に、第2温調ロールでは流水の温度を130度に保持した。第1温調ロールは、第1冷却ロール16と第1の金型10との接触点よりも200mm巻き出し側の位置に、第1の金型との接触点が存在するように配置した。第1の金型に対して微細構造面とは逆側から5N/mmの線圧で押圧した。また、第2温調ロールは、第1温調ロールよりも50mm巻き取り側の位置に、第2の金型との接触点が存在するように配置した。第2の金型に対して微細構造面とは逆側から5N/mmの線圧で押圧した。
フィルムの搬送速度を15m/分として連続成形を行った。その結果、安定して全幅で外観均一な外観の両面微細構造フィルムが得られた。
成形したフィルムの走査型電子顕微鏡((株)キーエンス社製 VE−7800)による断面写真を図5に示す。図5(a)は第1の金型によって形成されたパターン側の断面写真であり、図5(b)は第2の金型によって形成されたパターン側の断面写真である。
両面ともにV溝のピッチは25.0μm、深さは12.5μmであり、金型の断面とほぼ同じ形状のパターン形状を得ることができた。
(実施例3)
本実施例では、第1冷却ロール16と第2冷却ロール17は、成形用フィルムが第1冷却ロールに対して20度の抱き角をなすように配置し、第2冷却ロールと剥離ロールは、成形用フィルムが第2冷却ロールに対して30度の抱き角をなすように配置した。また、第1加熱ロール14、第2加熱ロール15の表面温度を210度に保持し、第1冷却ロール16、第2冷却ロール17の表面温度を50度に保持した。その他は上記実施例2と同じ装置構成および装置条件で運転した。
フィルムの搬送速度を20m/分として連続成形を行った。その結果、安定して全幅で外観均一な外観の両面微細構造フィルムが得られた。
成形したフィルムの走査型電子顕微鏡((株)キーエンス社製 VE−7800)による断面写真を図6に示す。図6(a)は第1の金型によって形成されたパターン側の断面写真であり、図6(b)は第2の金型によって形成されたパターン側の断面写真である。
両面ともにV溝のピッチは25.0μm、深さは12.5μmであり、金型の断面とほぼ同じ形状のパターン形状を得ることができた。
(比較例1)
成形用フィルム2には、ポリカーボネート樹脂を芯層とし、その両面に成形層としてPMMA樹脂を積層した3層積層フィルムを共押出しにより作成し用いた。該フィルムの総厚みは200μm、各層の積層比はおよそ1:8:1であり、幅は320mm、長さは200mとした。
装置は図7に示す構成を適用した。本装置は、加圧機構が実施例1〜3とは異なり、表面が金属からなる2個の加熱ロールによって第1の金型、第2の金型、及びフィルムを挟圧する構成である。さらに、本装置は、剥離ユニットが実施例1〜3とは異なり、対向に配置された第1冷却ロールと第2冷却ロールによって同時に第1の金型と第2の金型を剥離する構成である。
第1の金型110、第2の金型111として、厚み0.2mmのステンレス鋼ベルトの表面に厚み0.1mmのニッケル鍍金をしたものに、ピッチ25μm、深さ12.5μmのV溝形状を該ベルトの周方向と平行に切削加工して作製した。また、幅は340mm、周長は1,600mmとした。
第1加熱ロール114、第2加熱ロール115として、外径400mmの炭素鋼からなる筒状の芯材の表面に硬質クロムを鍍金したもので、内部に誘導加熱ヒーターを有している。両ロールの表面温度を常に190℃に保った。
第1冷却ロール116、第2冷却ロール117として、外径400mmの炭素鋼からなる筒状の芯材の表面に硬質クロム鍍金をし、内部に流水を循環する構造を適用した。常に表面温度70℃に保った。
加圧機構として、上記第2加熱ロールを油圧シリンダーを用いて第1加熱ロールに対して昇降できる構造とし、加圧力は200kNとした。
フィルムの搬送速度を10m/分として連続成形を行った。その結果、外観上ムラ欠点を有する両面微細構造フィルムが得られた。
成形したフィルムの走査型電子顕微鏡((株)キーエンス社製 VE−7800)による断面写真を図8に示す。図8(a)は第1の金型によって形成されたパターン側の断面写真であり図8(b)は第2の金型よって形成されたパターン側の断面写真である。
第1の金型によって形成されたV溝のピッチは25.0μm、深さは11.7μmであり、第2の金型によって形成されたV溝のピッチは25.0μm、深さは11.0μmであった金型のV溝の形状よりも深さが小さくなった原因として、加圧部での圧力不足や、剥離時の冷却不良によることが考えられる。