JP3738157B2 - 密閉型アルカリ蓄電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、密閉型アルカリ蓄電池に係わり、詳しくは、充放電サイクルの長期にわたって高い活物質利用率を発現する非焼結式ニッケル正極を備える密閉型アルカリ蓄電池を提供することを目的とした、正極活物質の改良に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
密閉型アルカリ蓄電池のニッケル正極には、焼結式と非焼結式とがある。導電性芯体(集電体)に金属の焼結体を使用した焼結式ニッケル正極には、焼結体の多孔度が低いために、充填可能な活物質量が少ない、すなわちエネルギー密度が低いという問題が有る。そこで、近年、導電性芯体として発泡ニッケルなどの多孔度の大きい非焼結体を使用し、活物質を多量に充填した非焼結式ニッケル正極が、注目されている。
【0003】
しかしながら、活物質の充填量を多くするために多孔度の大きい非焼結体を使用すると、非焼結体の集電能力が低いために、活物質利用率が低下する。
【0004】
非焼結式ニッケル正極の活物質利用率を高めるための方法としては、3価のマンガンを固溶元素として含有する水酸化ニッケルを使用することが提案されている(特開平7−335214号公報)。しかし、この方法では、活物質利用率を充分に高めることは困難である。マンガンを固溶元素として含有する水酸化ニッケルの一部が充電時に見掛け密度の小さいγ−NiOOHに変化して電極が膨張し、その結果、セパレータが圧縮されてセパレータ内の電解液が電極内に取り込まれ、セパレータに電解液不足(ドライアウト)が生じて、電池の内部抵抗が上昇するからである。
【0005】
本発明は、充電時にγ−NiOOHが生成してもセパレータに電解液不足が生じにくいために、充放電サイクルの長期にわたって高い活物質利用率を発現する非焼結式ニッケル正極を備える密閉型アルカリ蓄電池を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る密閉型アルカリ蓄電池(本発明電池)は、固溶元素として、マンガンを、ニッケルとマンガンの総量に基づいて、15〜50重量%含有するα型水酸化ニッケルを活物質とする非焼結式ニッケル正極と、負極と、アルカリ電解液とを備え、前記α型水酸化ニッケルの一部が、全体のニッケル原子の平均価数が2.1〜2.3となるように、電池系外において予め酸化処理されて、γ−NiOOH・XH2 O(0.3≦X≦0.8)に置き換えられている。
【0007】
本発明電池では、固溶元素としてマンガンを、ニッケルとマンガンの総量に基づいて、15〜50重量%含有するマンガン含有α型水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2 )が正極活物質として使用される。マンガン含有量が15〜50重量%に限定されるのは、マンガン含有量がこの範囲を外れると、マンガン含有α型水酸化ニッケルの酸素過電圧が小さくなり、正極の充電受入れ性(充電効率)乃至活物質利用率を充分に高めることができなくなるからである。マンガン含有α型水酸化ニッケルは、充電により酸化されてマンガン含有γ−NiOOHに変化する。マンガン含有量が15〜50重量%のマンガン含有γ−NiOOHの酸素過電圧(酸素発生電位と酸化電位の差)は、β型水酸化ニッケルの充電により生成するβ−NiOOHのそれに比べて大きい。このため、本発明電池は、正極の充電受入れ性が良い。
【0008】
本発明電池では、上記のマンガン含有α型水酸化ニッケルの一部を、酸化処理後の全体のニッケル原子の平均価数が2.1〜2.3となるように、電池系外において予め酸化処理して、γ−NiOOH・XH2 O(0.3≦X≦0.8)に置き換えたものを正極活物質として使用する。酸化処理後のニッケル原子の平均価数(α−Ni(OH)2 とγ−NiOOHとからなる酸化処理後の混成体中のニッケル原子の平均価数)は、酸化レベルの指標であり、酸化処理後の全体(混成体)に占めるγ−NiOOHの割合が多くなるにつれて、大きくなる。酸化処理後のニッケル原子の平均価数が2.1〜2.3に限定され、またX(結晶水の含有量)が0.3〜0.8に限定される理由は次のとおりである。
【0009】
すなわち、Xが0.8以下に限定されるのは、γ−NiOOHが含有可能な結晶水の量、すなわちXの最大値が0.8だからである。このようにXは最大で0.8であるから、酸化処理後の全体に占めるγ−NiOOH・XH2 Oの割合、すなわちニッケル原子の平均価数をある程度大きくしないと、非焼結式ニッケル正極が予め保有する水の量が不足して、セパレータ内の電解液の正極への流入を有効に抑制することはできない。ニッケル原子の平均価数が2.1以上に限定されるのはこのためである。しかし、γ−NiOOH・XH2 Oの割合が大きくなるにつれてα型水酸化ニッケル(活物質)の割合が小さくなるとともに、γ−NiOOH・XH2 Oの割合が大きくなると、本来は正極の容量により規制されるべき電池の容量が負極の容量により規制されるようになるので、電池容量が減少する。ニッケル原子の平均価数が2.3以下に限定されるのはこのためである。このようにγ−NiOOH・XH2 Oの割合、すなわちニッケル原子の平均価数は、最大で2.3であるから、1モル当たりの含水量(X)がある程度大きいγ−NiOOH・XH2 Oを使用しないと、非焼結式ニッケル正極が予め保有する水の量が不足して、セパレータ内の電解液の正極への流入を有効に抑制することはできない。Xが0.3以上に限定されるのはこのためである。
【0010】
非焼結式ニッケル正極の具体例としては、導電性芯体に、活物質を含有するペーストを塗布し、乾燥してなるペースト式ニッケル極が挙げられる。導電性芯体の具体例としては、ニッケルの発泡体、フェルト状ニッケル繊維多孔体、パンチングメタル、及び、鉄等の金属の表面にニッケルめっき等の被覆を施したものが挙げられる。非焼結式ニッケル正極としては、ペースト式ニッケル極の外、チューブ状の金属導電体の中に活物質を充填するチューブ状ニッケル極、ポケット状の金属導電体の中に活物質を充填するポケット状ニッケル極、活物質を網目状の金属導電体とともに加圧成形するボタン型電池用ニッケル極などが、例示される。
【0011】
本発明電池の負極としては、水素吸蔵合金電極、カドミウム電極及び亜鉛電極が例示される。
【0012】
本発明電池は、固溶元素としてマンガンを所定量含有するα型水酸化ニッケルを使用しているので、正極の酸素過電圧が大きく、それゆえ充電受入れ性が良い。また、本発明電池は、α型水酸化ニッケルの所定量を、電池系外において予め酸化処理して、γ−NiOOH・XH2 O(0.3≦X≦0.8)に置き換えた含水正極活物質を使用しているので、セパレータにおける電解液不足が抑制される。したがって、本発明電池は充放電サイクルの長期にわたって高い活物質利用率を発現する。
【0013】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能なものである。
【0014】
(予備実験)
α型水酸化ニッケル100gを、20重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液62ミリリットルと0.1、1、5、10又は20モル/リットル水酸化ナトリウム水溶液500ミリリットルとの混液に投入し、1時間攪拌混合した後、沈殿物をろ取し、水洗し、60°Cで乾燥して、5種の粉末を得た。各粉末を、粉末X線回折により分析した結果、γ−NiOOH・XH2 Oが一部生成していることが分かった。また、各粉末の熱分析により、各粉末が含むγ−NiOOH・XH2 Oの結晶水含有量(γ−NiOOH・XH2 O中のX)を調べた結果、それぞれ、0.2、0.3、0.65、0.8及び0.8であった。
【0015】
(実験1)
本発明電池及び比較電池を作製し、1サイクル目及び50サイクル目の活物質利用率を調べた。
【0016】
(本発明電池Aの作製)
ステップ1:硫酸マンガン(MnSO4 ・5H2 O)87.8g及び硫酸ニッケル(NiSO4 ・7H2 O)382.8gを水に溶かした水溶液5リットルに、pHメータにて液のpHを監視しながら、アンモニア及び水酸化ナトリウムを各10重量%水に溶かした水溶液を滴下して、液のpHを9.5±0.3に調整した後、1時間攪拌混合し、ろ過し、ろ物を水洗し、80°Cにて乾燥して、固溶元素としてマンガンを、ニッケルとマンガンの総量に基づいて、20重量%含有するα型水酸化ニッケルを得た。マンガン含有率20重量%は、原子吸光により定量分析して求めた。
【0017】
ステップ2:上記のα型水酸化ニッケル100gを、10モル/リットル水酸化ナトリウム水溶液500ミリリットルと20重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液50ミリリットルとの混液に投入し、1時間攪拌混合し、ろ過し、ろ物を水洗し、60°Cにて乾燥して、α型水酸化ニッケルの一部を酸化処理した。酸化処理後のニッケル原子の価数(平均価数)を、鉄の2価・3価酸化還元滴定法により求めたところ、2.2であった。また、酸化処理後の粉末を粉末X線回折により分析して、γ−NiOOH・XH2 Oが一部生成していることを確認した。このγ−NiOOH・XH2 Oは、先の予備実験から、γ−NiOOH・0.8H2 Oと推定される。
【0018】
ステップ3:ステップ2で作製した、酸化処理したα型水酸化ニッケル90重量部と、導電剤としての水酸化コバルト10重量部と、結着剤としての1重量%メチルセルロース水溶液20重量部とを混練してペーストを調製し、このペーストを集電体としての発泡ニッケル(多孔度:95%、平均孔径:200μm)の孔内に充填し、乾燥し、加圧成形して、非焼結式ニッケル正極(寸法:40mm×65mm×0.6mm)を作製した。
【0019】
ステップ4:ステップ3で作製した非焼結式ニッケル正極、これに比べて電気化学的容量が充分に大きい従来公知のペースト式カドミウム負極(寸法:42mm×100mm×0.5mm)、ポリアミド不織布(セパレータ)、30重量%水酸化カリウム水溶液(アルカリ電解液)、金属製の電池缶、金属製の電池蓋などを使用して、AAサイズのアルカリ蓄電池A(容量:約1000mAh)を作製した。
【0020】
(比較電池Xの作製)
ステップ2で作製した、酸化処理したα型水酸化ニッケルに代えて、ステップ1で作製した、酸化処理していないα型水酸化ニッケル(マンガンとニッケルの総量に基づくマンガン含有率:20重量%)を正極活物質として使用したこと以外は、ステップ3及び4の各操作を順に行って、アルカリ蓄電池Xを作製した。酸化処理しなかったα型水酸化ニッケル中のニッケル原子の価数は、2.0である。
【0021】
(比較電池Yの作製)
ステップ1において硫酸マンガン及び硫酸ニッケルの使用量を、それぞれ0g及び478.6gに変更し、ステップ2において20重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液50ミリリットルに代えて10重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液124ミリリットルを使用したこと以外は、ステップ1〜4の各操作を順に行って、アルカリ蓄電池Yを作製した。ステップ1において硫酸マンガンを使用しなかったので、α型水酸化ニッケルのマンガンとニッケルの総量に基づくマンガン含有率は0である。酸化処理後の粉末を粉末X線回折により分析して、γ−NiOOH・XH2 Oが一部生成していることを確認した。このγ−NiOOH・XH2 Oは、先の予備実験から、γ−NiOOH・0.8H2 Oと推定される。また、酸化処理後のニッケル原子の平均価数は、2.2であった。
【0022】
〈各電池の1サイクル目及び50サイクル目の活物質利用率〉
25°Cにて0.1Cで16時間充電した後、25°Cにて1Cで1.0Vまで放電する充放電を50サイクル行い、各電池に使用した非焼結式ニッケル正極の下式で定義される1サイクル目及び50サイクル目の活物質利用率を調べた。結果を表1に示す。表1に示す活物質利用率の値は、アルカリ蓄電池Aの1サイクル目の活物質利用率を100とする相対指数である。
【0023】
活物質利用率(%)={1サイクル目又は50サイクル目の放電容量(mAh)/〔水酸化ニッケルの充填量(g)×288(mAh/g)〕}×100
【0024】
【表1】
Figure 0003738157
【0025】
表1に示すように、本発明電池Aは、比較電池X及びYに比べて、1サイクル目及び50サイクル目の活物質利用率が高い。比較電池Xの50サイクル目の活物質利用率が極めて低いのは、充電時に見掛け密度の小さいγ−NiOOHが生成し、その結果、セパレータが圧縮されて電解液不足が生じ、電池の内部抵抗が上昇したためである。また、比較電池Yの1サイクル目及び50サイクル目の活物質利用率が低いのは、正極(正極活物質)の酸素過電圧が小さいことに起因して、充電受入れ性が良くなかったからである。
【0026】
(実験2)
α型水酸化ニッケルのマンガン含有率と活物質利用率の関係を調べた。
【0027】
(アルカリ蓄電池B1の作製)
ステップ1において硫酸マンガン及び硫酸ニッケルの使用量を、それぞれ35.1g及び440.2gに変更し、ステップ2において20重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を50ミリリットルに代えて60ミリリットル使用したこと以外は、ステップ1〜4の操作を順に行って、アルカリ蓄電池B1(比較電池)を作製した。α型水酸化ニッケルのマンガンとニッケルの総量に基づくマンガン含有率は8重量%であった。酸化処理後の粉末を粉末X線回折により分析して、γ−NiOOH・XH2 Oが一部生成していることを確認した。このγ−NiOOH・XH2 Oは、先の予備実験から、γ−NiOOH・0.8H2 Oと推定される。また、酸化処理後のニッケル原子の平均価数は、2.2であった。
【0028】
(アルカリ蓄電池B2の作製)
ステップ1において硫酸マンガン及び硫酸ニッケルの使用量を、それぞれ65.9g及び406.8gに変更し、ステップ2において20重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を50ミリリットルに代えて53ミリリットル使用したこと以外は、ステップ1〜4の操作を順に行って、アルカリ蓄電池B2(本発明電池)を作製した。α型水酸化ニッケルのマンガンとニッケルの総量に基づくマンガン含有率は15重量%であった。酸化処理後の粉末を粉末X線回折により分析して、γ−NiOOH・XH2 Oが一部生成していることを確認した。このγ−NiOOH・XH2 Oは、先の予備実験から、γ−NiOOH・0.8H2 Oと推定される。また、酸化処理後のニッケル原子の平均価数は、2.2であった。
【0029】
(アルカリ蓄電池B3の作製)
ステップ1において硫酸マンガン及び硫酸ニッケルの使用量を、それぞれ219.4g及び239.3gに変更し、ステップ2において20重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を50ミリリットルに代えて31ミリリットル使用したこと以外は、ステップ1〜4の操作を順に行って、アルカリ蓄電池B3(本発明電池)を作製した。α型水酸化ニッケルのマンガンとニッケルの総量に基づくマンガン含有率は50重量%であった。酸化処理後の粉末を粉末X線回折により分析して、γ−NiOOH・XH2 Oが一部生成していることを確認した。このγ−NiOOH・XH2 Oは、先の予備実験から、γ−NiOOH・0.8H2 Oと推定される。また、酸化処理後のニッケル原子の平均価数は、2.2であった。
【0030】
(アルカリ蓄電池B4の作製)
ステップ1において硫酸マンガン及び硫酸ニッケルの使用量を、それぞれ241.4g及び215.3gに変更し、ステップ2において20重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を50ミリリットルに代えて29ミリリットル使用したこと以外は、ステップ1〜4の操作を順に行って、アルカリ蓄電池B4(比較電池)を作製した。α型水酸化ニッケルのマンガンとニッケルの総量に基づくマンガン含有率は55重量%であった。酸化処理後の粉末を粉末X線回折により分析して、γ−NiOOH・XH2 Oが生成していることを確認した。このγ−NiOOH・XH2 Oは、先の予備実験から、γ−NiOOH・0.8H2 Oと推定される。また、酸化処理後のニッケル原子の平均価数は、2.2であった。
【0031】
〈各電池の1サイクル目及び50サイクル目の活物質利用率〉
各電池について、実験1で行ったものと同じ条件の充放電を50サイクル行い、各電池に使用した非焼結式ニッケル正極の1サイクル目及び50サイクル目の活物質利用率を調べた。結果を表2に示す。表2には、アルカリ蓄電池Aの1サイクル目及び50サイクル目の活物質利用率も示してあり、表2に示す活物質利用率は、アルカリ蓄電池Aの1サイクル目の活物質利用率を100として示した指数である。
【0032】
【表2】
Figure 0003738157
【0033】
表2に示すように、本発明電池A、B2及びB3は、比較電池B1及びB4に比べて、1サイクル目及び50サイクル目の活物質利用率が高い。比較電池B1及びB4の1サイクル目及び50サイクル目の活物質利用率が低いのは、正極の酸素過電圧が小さいことに起因して、充電受入れ性が良くなかったからである。
【0034】
(実験3)
酸化処理後のα型水酸化ニッケルの含水量と活物質利用率の関係を調べた。
【0035】
(アルカリ蓄電池C1の作製)
ステップ2において、10モル/リットル水酸化ナトリウム水溶液500ミリリットルと20重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液50ミリリットルとの混液に代えて、0.1モル/リットル水酸化ナトリウム水溶液500ミリリットルと20重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液50ミリリットルとの混液を使用したこと以外は、ステップ2〜4の操作を順に行って、アルカリ蓄電池C2(本発明電池)を作製した。酸化処理後の粉末を粉末X線回折により分析して、γ−NiOOH・XH2 Oが一部生成していることを確認した。このγ−NiOOH・XH2 Oは、先の予備実験から、γ−NiOOH・0.2H2 Oと推定される。また、酸化処理後のニッケル原子の平均価数は、2.2であった。
【0036】
(アルカリ蓄電池C2の作製)
ステップ2において、10モル/リットル水酸化ナトリウム水溶液500ミリリットルと20重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液50ミリリットルとの混液に代えて、1モル/リットル水酸化ナトリウム水溶液500ミリリットルと20重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液25ミリリットルとの混液を使用したこと以外は、ステップ2〜4の操作を順に行って、アルカリ蓄電池C2(本発明電池)を作製した。酸化処理後の粉末を粉末X線回折により分析して、γ−NiOOH・XH2 Oが一部生成していることを確認した。このγ−NiOOH・XH2 Oは、先の予備実験から、γ−NiOOH・0.3H2 Oと推定される。また、酸化処理後のニッケル原子の平均価数は、2.1であった。
【0037】
(アルカリ蓄電池C3の作製)
ステップ2において、10モル/リットル水酸化ナトリウム水溶液500ミリリットルと20重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液50ミリリットルとの混液に代えて、10モル/リットル水酸化ナトリウム水溶液500ミリリットルと20重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液75ミリリットルとの混液を使用したこと以外は、ステップ2〜4の操作を順に行って、アルカリ蓄電池C3(本発明電池)を作製した。酸化処理後の粉末を粉末X線回折により分析して、γ−NiOOH・XH2 Oが一部生成していることを確認した。このγ−NiOOH・XH2 Oは、先の予備実験から、γ−NiOOH・0.8H2 Oと推定される。また、酸化処理後のニッケル原子の平均価数は、2.3であった。
【0038】
(アルカリ蓄電池C4の作製)
ステップ2において、10モル/リットル水酸化ナトリウム水溶液500ミリリットルと20重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液50ミリリットルとの混液に代えて、10モル/リットル水酸化ナトリウム水溶液500ミリリットルと20重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液100ミリリットルとの混液を使用したこと以外は、ステップ2〜4の操作を順に行って、アルカリ蓄電池C4(比較電池)を作製した。酸化処理後の粉末を粉末X線回折により分析して、γ−NiOOH・XH2 Oが一部生成していることを確認した。このγ−NiOOH・XH2 Oは、先の予備実験から、γ−NiOOH・0.8H2 Oと推定される。また、酸化処理後のニッケル原子の平均価数は、2.4であった。
【0039】
〈各電池の1サイクル目及び50サイクル目の放電容量及び活物質利用率〉
各電池について、実験1で行ったものと同じ条件の充放電を50サイクル行い、各電池に使用した非焼結式ニッケル正極の1サイクル目及び50サイクル目の放電容量(mAh)並びに1サイクル目及び50サイクル目の活物質利用率を調べた。結果を表3に示す。表3に示す放電容量及び活物質利用率は、それぞれアルカリ蓄電池C2の1サイクル目の放電容量及び活物質利用率を100として示した指数である。
【0040】
【表3】
Figure 0003738157
【0041】
表3に示すように、本発明電池C2及びC3は、1サイクル目及び50サイクル目の活物質利用率がいずれも高い。比較電池C1の50サイクル目の活物質利用率が低いのは、セパレータに電解液不足が生じ、電池の内部抵抗が上昇したためである。比較電池C4の1サイクル目及び50サイクル目の活物質利用率が低いのは、本来は正極の容量により規制されるべき電池の容量が負極の容量により規制されるようになったからである。
【0042】
【発明の効果】
充放電サイクルの長期にわたって正極の活物質利用率が高いアルカリ蓄電池が提供される。

Claims (3)

  1. 固溶元素として、マンガンを、ニッケルとマンガンの総量に基づいて、15〜50重量%含有するα型水酸化ニッケルを活物質とする非焼結式ニッケル正極と、負極と、アルカリ電解液とを備えるアルカリ蓄電池であって、前記α型水酸化ニッケルの一部が、全体のニッケル原子の平均価数が2.1〜2.3となるように、電池系外において予め酸化処理されて、γ−NiOOH・XH2 O(0.3≦X≦0.8)に置き換えられていることを特徴とする密閉型アルカリ蓄電池。
  2. 前記負極が、水素吸蔵合金電極、カドミウム電極又は亜鉛電極である請求項1記載の密閉型アルカリ蓄電池。
  3. 固溶元素として、マンガンを、ニッケルとマンガンの総量に基づいて、15〜50重量%含有するα型水酸化ニッケルを活物質とする密閉型アルカリ蓄電池用の非焼結式ニッケル正極であって、前記α型水酸化ニッケルの一部が、全体のニッケル原子の平均価数が2.1〜2.3となるように、電池系外において予め酸化処理されて、γ−NiOOH・XH2 O(0.3≦X≦0.8)に置き換えられていることを特徴とする密閉型アルカリ蓄電池用の非焼結式ニッケル正極。
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