JP4049484B2 - 密閉型アルカリ蓄電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、密閉型アルカリ蓄電池に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
密閉型アルカリ蓄電池のニッケル正極には、焼結式と非焼結式とがある。導電性芯体(集電体)に金属の焼結体を使用した焼結式ニッケル正極には、焼結体の多孔度が低いために、充填可能な活物質量が少ない、すなわちエネルギー密度が低いという欠点が有る。そこで、近年、導電性芯体として発泡ニッケルなどの多孔度の大きい非焼結体を使用し、活物質を多量に充填した非焼結式ニッケル正極が、注目されている。
【0003】
しかしながら、非焼結式ニッケル正極には、活物質利用率が低いという問題がある。非焼結式ニッケル正極の活物質利用率が低い理由の一つは、水酸化ニッケルの一部が充電時に見掛け密度の小さいγ−NiOOHに変化して電極が膨張し、その結果、セパレータが圧縮されてセパレータに電解液不足(ドライアウト)が生じ、電池の内部抵抗が上昇するからである。
【0004】
水酸化ニッケルに、マンガンを固溶元素として1〜7重量%含有せしめ、且つ電池容量1Ah当たりの電解液量(比重1.23〜1.40)を1.0〜2.0cm3 とすることにより充電時のγ−NiOOHの生成が抑制され、充放電サイクル寿命の長いアルカリ蓄電池が得られることが、特開平5−21064号公報に報告されている。
【0005】
しかしながら、本発明者らが検討した結果、上記のアルカリ蓄電池は、水酸化ニッケルのマンガン含有量が少ないために、充電受入れ性が悪く、また電解液量が少ないために、短サイクル裡にドライアウトが起こることが分かった。因みに、7重量%のマンガン固溶量は、ニッケルとマンガンの総量に基づくマンガンの比率に換算すると、約11重量%である。また、電池容量1Ah当たり2.0cm3 の電解液量は、水酸化ニッケル1g当たりの水の量に換算すると、最も多い場合(電池容量が理論容量に等しい理想電池の場合)で、0.53gである。
【0006】
したがって、本発明は、充電受入れ性が良く、しかもドライアウトが起こりにくいために、充放電サイクルの長期にわたって高い活物質利用率を発現することができる密閉型アルカリ蓄電池を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る密閉型アルカリ蓄電池(本発明電池)は、水酸化ニッケルを導電性芯体に塗布し、乾燥して成る非焼結式ニッケル正極と、負極と、アルカリ電解液とを備え、前記水酸化ニッケルが、固溶元素として、マンガンを、ニッケルとマンガンの総量に基づいて、15〜50重量%含有するマンガン含有α型水酸化ニッケルであり、且つ前記アルカリ電解液が、前記マンガン含有α型水酸化ニッケル1g当たり0.55〜0.80gの水を含有している。
【0008】
本発明電池では、固溶元素としてマンガンを、ニッケルとマンガンの総量に基づいて、15〜50重量%含有するマンガン含有α型水酸化ニッケルが正極活物質として使用される。マンガン含有量が15〜50重量%に限定されるのは、マンガン含有量がこの範囲を外れると、マンガン含有α型水酸化ニッケルの酸素過電圧が小さくなり、正極の充電受入れ性乃至活物質利用率を充分に高めることが困難になるからである。マンガン含有α型水酸化ニッケルは、充電により酸化されてマンガン含有γ−NiOOHに変化する。マンガン含有量が15〜50重量%のマンガン含有γ−NiOOHは、β型水酸化ニッケルの充電により生成するβ−NiOOHに比べて、遙に大きな酸素過電圧(酸素発生電位と酸化電位の差)を有する。このため、本発明電池は、正極の充電受入れ性が良く、充放電サイクル初期の正極の活物質利用率が高い。
【0009】
本発明電池では、上記マンガン含有α型水酸化ニッケル1g当たり0.55〜0.80gの水を含有するアルカリ電解液が使用される。非焼結式ニッケル正極を使用した従来のアルカリ蓄電池では、一般に、水酸化ニッケル1g当たり0.20〜0.50gの水を含有するアルカリ電解液が使用されてきた。しかし、α型水酸化ニッケルの充電により生成するγ−NiOOHは、見掛け密度が小さい。このため、充電時に非焼結式ニッケル正極が膨張し、それに伴い、セパレータが圧縮されて、ドライアウトが起こり易い。ドライアウトが起こると、電池の内部抵抗が上昇し、充電受入れ性乃至活物質利用率が低下する。そこで、本発明電池では、γ−NiOOHの生成に伴うドライアウトを抑制するために、従来電池に比べて多めのアルカリ電解液を使用することとしている。アルカリ電解液の含水量が、マンガン含有α型水酸化ニッケル1g当たり0.55〜0.80gに限定されるのは、同含水量が0.55g未満の場合は、ドライアウトを抑制することが困難になり、一方同含水量が0.80gを越えた場合は、電池缶内の空間部の体積が過小になって充電時に電池内圧が上昇し易くなり、アルカリ電解液が漏出し易くなるからである。
【0010】
非焼結式ニッケル正極の具体例としては、導電性芯体に、活物質を含有するペーストを塗布し、乾燥してなるペースト式ニッケル極が挙げられる。導電性芯体の具体例としては、ニッケル発泡体、フェルト状ニッケル繊維多孔体、パンチングメタル及び鉄等の金属の発泡体の表面にニッケルめっき等の被覆を施したものが挙げられる。非焼結式ニッケル正極としては、ペースト式ニッケル極の外、チューブ状の金属導電体の中に活物質を充填するチューブ状ニッケル極、ポケット状の金属導電体の中に活物質を充填するポケット状ニッケル極、活物質を網目状の金属導電体とともに加圧成形するボタン型電池用ニッケル極などが、例示される。
【0011】
本発明電池の負極としては、水素吸蔵合金電極、カドミウム電極及び亜鉛電極が例示される。
【0012】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能なものである。
【0013】
(実験1)
マンガン含有α型水酸化ニッケルのマンガン含有率と活物質利用率の関係を調べた。
【0014】
〔正極の作製〕
表1に示す量の硫酸マンガン(MnSO4 ・5H2 O)及び硫酸ニッケル(NiSO4 ・7H2 O)を水に溶かした各水溶液5リットルに、pHメータにて液のpHを監視しながら、アンモニア及び水酸化ナトリウムを各10重量%水に溶かした水溶液を滴下して、液のpHを9.5±0.3に調整した後、1時間攪拌混合し、ろ過し、ろ物を水洗し、80°Cにて乾燥して、固溶元素としてマンガンを含有する5種のマンガン含有α型水酸化ニッケルを得た。原子吸光法により定量分析して求めた、各マンガン含有α型水酸化ニッケルのマンガン含有率(ニッケルとマンガンの総量に基づくマンガンの比率)を表2に示す。
【0015】
〔アルカリ電解液の調製〕
85重量%の水酸化カリウム(水酸化カリウム85重量%;水15重量%)30gを水55gに溶かして、アルカリ電解液を調製した。
【0016】
〔非焼結式ニッケル正極の作製〕
上記各マンガン含有α型水酸化ニッケルと水酸化コバルトとの重量比9:1の混合物90重量部と、結着剤としての1重量%メチルセルロース水溶液20重量部とを混練してペーストを調製し、このペーストを発泡ニッケル(多孔度95%、平均孔径200μm)からなる多孔性基板に充填し、乾燥し、加圧成形して、シート状の5種の非焼結式ニッケル正極を作製した。なお、各非焼結式ニッケル正極中には、各マンガン含有α型水酸化ニッケルを3.5g含有せしめた。
【0017】
〔アルカリ蓄電池の作製〕
上記各非焼結式ニッケル正極、この正極よりも電気化学的容量が大きい従来公知のペースト式カドミウム極(負極)、ポリアミド不織布(セパレータ)、上記アルカリ電解液3.0g(このアルカリ電解液に含まれる水の量は、マンガン含有α型水酸化ニッケル1g当たり0.60gである。)、金属製の電池缶、金属製の電池蓋などを用いてAAサイズの密閉型アルカリ蓄電池A1〜A5を作製した。
【0018】
〔各電池の5サイクル目及び75サイクル目の活物質利用率及び漏液電池数〕
各電池について、25°Cにて70mAで16時間充電した後、25°Cにて1000mAで1.0Vまで放電する充放電を75サイクル行い、各電池に使用した非焼結式ニッケル正極の下式で定義される5サイクル目及び75サイクル目の活物質利用率を調べた。また、各電池10個について、充放電を5サイクル行った後の漏液電池数を調べた。結果を表2に示す。表2中の5サイクル目及び75サイクル目の活物質利用率は、アルカリ蓄電池A3の5サイクル目の活物質利用率を100として示した指数である。また、表2中の漏液電池数の欄の分子が漏液電池数を示す。
【0019】
活物質利用率(%)={5サイクル目又は75サイクル目の放電容量(mAh)/〔水酸化ニッケルの充填量(g)×288(mAh/g)〕}×100
【0020】
【表1】
Figure 0004049484
【0021】
【表2】
Figure 0004049484
【0022】
表2より、充放電サイクルの初期における活物質利用率が高いアルカリ蓄電池を得るためには、固溶元素として、マンガンを、ニッケルとマンガンの総量に基づいて、15〜50重量%含有するマンガン含有α型水酸化ニッケルを使用する必要があることが分かる。
【0023】
(実験2)
マンガン含有α型水酸化ニッケル1g当たりのアルカリ電解液中の水の量と活物質利用率の関係を調べた。
【0024】
アルカリ電解液の使用量を、3.0gに代えて、それぞれ2.25g、2.75g、3.5g、4.0g及び4.5gとしたこと以外はアルカリ蓄電池A3の作製方法と同様にして、アルカリ蓄電池A6〜A10を作製した。これらのアルカリ蓄電池のマンガン含有α型水酸化ニッケル1g当たりのアルカリ電解液中の水の量は、順に、0.45g、0.55g、0.70g、0.80g及び0.90gである。活物質として使用したマンガン含有α型水酸化ニッケルのマンガン含有率(ニッケルとマンガンの総量に基づくマンガンの比率)は、いずれも20重量%である。
【0025】
また、硫酸マンガン(MnSO4 ・5H2 O)及び硫酸ニッケル(NiSO4 ・7H2 O)の使用量を、それぞれ57.0g及び416.3gに変更し、且つアルカリ電解液の使用量を、3.0gに代えて、2.5gとしたこと以外はアルカリ蓄電池A3の作製方法と同様にして、アルカリ蓄電池A11を作製した。このアルカリ蓄電池A11は、マンガン含有α型水酸化ニッケル1g当たりのアルカリ電解液中の水の量が、0.50gであり、また活物質として使用したマンガン含有α型水酸化ニッケルのマンガン含有率(ニッケルとマンガンの総量に基づくマンガンの比率)が、13重量%である。
【0026】
アルカリ蓄電池A6〜A11について、実験1で行ったものと同じ条件の充放電サイクル試験を行い、各電池に使用した非焼結式ニッケル正極の5サイクル目及び75サイクル目の活物質利用率、並びに、充放電を5サイクル行った後の漏液電池数を調べた。結果を表3に示す。但し、アルカリ蓄電池A10は、充放電を5サイクル行った時点で10個のうち8個に漏液が認められたので、その時点で充放電サイクル試験を終了した。表3には、アルカリ蓄電池A3の結果も表2より転記して示してあり、表3中の5サイクル目及び75サイクル目の活物質利用率は、アルカリ蓄電池A3の5サイクル目の活物質利用率を100として示した指数である。
【0027】
【表3】
Figure 0004049484
【0028】
表3より、充放電サイクルの長期にわたって活物質利用率が高いアルカリ蓄電池を得るためには、マンガン含有α型水酸化ニッケル1g当たりのアルカリ電解液中の水の量を0.45〜0.80gとする必要があることが分かる。アルカリ蓄電池A11の5サイクル目の活物質利用率が低いのは、水酸化ニッケルのマンガン含有量が少ないために、充電受入れ性が悪かったからである。また、アルカリ蓄電池A11の75サイクル目の活物質利用率が低いのは、セパレータ内に電解液不足が起こり、電池の内部抵抗が上昇したためである。
【0029】
【発明の効果】
充放電サイクルの長期にわたって正極の活物質利用率が高いアルカリ蓄電池が提供される。

Claims (2)

  1. 水酸化ニッケルを導電性芯体に塗布し、乾燥して成る非焼結式ニッケル正極と、負極と、アルカリ電解液とを備えるアルカリ蓄電池において、前記水酸化ニッケルが、固溶元素として、マンガンを、ニッケルとマンガンの総量に基づいて、15〜50重量%含有するマンガン含有α型水酸化ニッケルであり、且つ前記アルカリ電解液が、前記マンガン含有α型水酸化ニッケル1g当たり水0.55〜0.80gを含有していることを特徴とする密閉型アルカリ蓄電池。
  2. 前記負極が、水素吸蔵合金電極、カドミウム電極又は亜鉛電極である請求項1記載の密閉型アルカリ蓄電池。
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