JP3738080B2 - リニアイメージセンサの出力信号補正装置 - Google Patents

リニアイメージセンサの出力信号補正装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、画像撮像手段としてCCD等のリニアイメージセンサを有する画像読取装置に適用して好適なリニアイメージセンサの出力信号補正装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
画像読取装置は、例えば、原稿台上に載せられた原稿に照明光を照射することにより、前記原稿に担持された画像情報を含む光を、反射光または透過光として集光光学系に導いた後、CCD等のリニアイメージセンサで光電的に読み取るように構成されている。この場合、リニアイメージセンサにより原稿を主走査方向に読み取るとともに、前記原稿を前記主走査方向と略直交する副走査方向に相対的に搬送することで、2次元的な画像情報を得ることができる。
【0003】
図6に模式的に示すように、一般的なリニアイメージセンサ1は、基本的には、光電変換画素(単に、画素ともいう。)Pが長手方向に直線状に連結された受光部2と、この受光部2に沿って両側に形成された奇数画素転送部3oと偶数画素転送部3eからなる転送部3とから構成されている。実際上、転送部3は、図示していないアルミ蒸着膜等の金属膜で覆われ、光Lを遮光するように構成されている。
【0004】
受光部2によって受光された光Lは、各画素Pにより光電変換され、一定時間間隔で発生するシフトパルス毎に奇偶画素Po、Peがそれぞれ対応する奇偶画素転送部3o、3eにシフトされた後、転送クロックにより、FDA(フローティング ディフュージョン アンプ)4o、4eを通じ、リニアイメージセンサ1の出力端子を介して奇数画素信号Soおよび偶数画素信号Seとして出力される。
【0005】
この奇数・偶数画素信号So、Seは、図示していない利得可変増幅器および切換スイッチを通じて交互に取り込まれ、A/D変換器(図示していない。)を介してデジタル画像信号に変換された後、ラインメモリ等に記憶される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、奇数画素信号Soと偶数画素信号Seとは、ある一定光量下において、それぞれの出力振幅がたとえ、同一になるように前記利得可変増幅器により調整された場合においても、奇数光電変換画素Poと偶数光電変換画素Peとのリニアリティ(微小光量変化分に対する光電変換信号の振幅の変化量)の違いにより、前記ラインメモリに記憶されたデジタル画像信号のレベルが奇数画素信号Soと偶数画素信号Seで異なる、現象的にみれば信号のレベルが1画素毎に方形波リップル的に異なることとなり、このような画像信号に基づいて画像を再生した場合、前記副走査方向に対応した方向に周期的な縦筋が現れてしまうという問題が発生する。
【0007】
実際上、網点画像(網画像)を出力する場合には、網の角度やスクリーン線数とこの周期的な縦筋とのビートに係る模様が網画像上に現れてしまうことになる。
【0008】
この問題を解消するために、従来から、リニアイメージセンサ1に係わる、いわゆる奇偶差補正処理を行っている。この奇偶差補正処理は、補正後の当該画素信号をScとし、補正前の当該画素信号をSとし、補正前の当該画素信号の1画素前の画素信号をSpとするとき、補正後の当該画素信号Scをこれら2画素の移動平均である次の(1)式により求めるようにしている。
【0009】
Sc=(Sp+S)/2 …(1)
ところが、この(1)式による補正処理によれば、ラケットのガットのような副走査方向に延びる細い縦線を含む画像においては、MTFが劣化して画像がぼけるという欠点がある。
【0010】
このMTFの劣化をできるだけ抑制するために、本出願人は、人の視覚特性が、画像の低濃度側(原稿画像のハイライト側)ではMTFが低く、高濃度側(原稿画像のシャドウ側)ではMTFが高いことに着目して、濃度値が値2.0より高濃度側では全て移動平均による補正を行い、濃度値が値2.0より低濃度側では前記移動平均の重みが徐々に小さくなるような補正を行うようにした技術を採用している。
【0011】
図7は、この技術による重み係数kの特性を示している。なお、図7において、横軸の右側は濃度DのハイライトHL側に、左側はシャドウSD側にとっている。図7に示すこの重み係数kを使用した2画素の移動平均による補正後の当該画像信号Scを(2)式により求めるようにしている。
【0012】
Sc=S−k{S−(S+Sp)/2} …(2)
図7と(2)式から理解されるように、この補正技術では、濃度Dの値がD=Da(実際の値としては、濃度D=Da=2)より高い部分では、k=1であるので、(2)式は、(1)式と同じ連続する2画素の移動平均となり、濃度Dの値がD=Db(実際の値としては、濃度D=Db=1.0より低い部分では、補正後の画素信号Scとして、補正前の当該画素信号Sがそのまま出力される(Sc=S)。そして、濃度Dbから濃度Daにかかけて徐々に平均化の重みが高くなるようにしている。
【0013】
このように濃度Dに依存した2画素の移動平均により、リニアイメージセンサ1に係わる奇偶差偏差を補正することで、上述したラケットのガットのような副走査方向に延びる細い縦線を含む画像におけるMTFの劣化を、視認することのできない最小限のものとすることができる。
【0014】
しかしながら、さらに、精緻な画像を得るために、ダイナミックレンジのより大きいリニアイメージセンサ1を使用した場合において、上述の(2)式による補正処理では、図8に示すように、濃度DがD=Daより低い低濃度側では、連続2画素の平均値が補正後の画像データとされるが、これは、出力画像データが、1/2画素分前側にシフトしたことと等価なことになる。一方、濃度DがD=Daより高い高濃度側では、補正がかけられないので、出力画像データの位置はシフトしない。したがって、この切り替わり部分で、いわゆる片エッジが顕著に発生してしまう。
【0015】
詳しく説明すると、主走査方向における画像の立ち上がりエッジ側では、画像データが本来の画像データ(補正前の当該画像データ)より小さくなり(いわゆる1/2画素分食い込み)、立ち下がりエッジ側では、本来の値より大きくなる(いわゆる1/2画素分膨らむ)方向に作用する。したがって、上述したラケットのガットのような細い縦線に対して、ダイナミックレンジの広いリニアイメージセンサ1により得られた画像信号に(2)式に基づく補正を行った場合には、縦方向(副走査方向)のガット部分の片側(図8中、主走査方向の後ろ側)がぼけた状態の画像になってしまうという新たな問題が発生する。
【0016】
この発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、リニアイメージセンサの奇偶差補正を行っても、いわゆる片エッジが発生しない、すなわち、画像の重心位置が変化しないリニアイメージセンサの出力信号補正装置を提供することを目的とする。
【0017】
また、この発明は、リニアイメージセンサの奇偶差補正を行っても、画像の重心位置が変化せず、しかも原稿画像の内容に応じて適切な奇偶差補正を行うことを可能とするリニアイメージセンサの出力信号補正装置を提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
の発明は、例えば、図3に示すように、
リニアイメージセンサから出力される奇数画素信号と偶数画素信号とを交互に取り込んで出力信号としての画像信号Sdを得、この画像信号を構成する各画素信号を補正する装置において、補正前の当該画素信号のレベルSと、この前後の画素信号のレベルSp、Saとを記憶する記憶手段61〜63と、この記憶手段に接続される演算手段71と、補正前の当該画素信号Sまたは補正後の当該画素信号Scを選択して出力する選択手段72、73、75、76、77、78とを有し、演算手段は、補正前の当該画素信号のレベルをS、当該画素信号の前側の補正前画素信号のレベルをSp、当該画素信号の後側の補正前画素信号のレベルをSa、補正後の当該画素信号のレベルをScとしたとき、Scを、Sc=(Sp+2S+Sa)/4として求め、選択手段は、前後の補正前の画素信号のレベルの平均値Dx={(Sp+Sa)/2}が第1の基準値より小さく、かつ差Cx=(Sa−Sp)の絶対値が第2の基準値より小さいときに、補正後の当該画素信号のレベルScを選択し、それ以外のときに補正前の当該画素信号のレベルSを選択して出力することを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、前後の補正前の画素信号のレベルの平均値と差に基づき、補正前の当該画素信号または補正後の当該画素信号を選択して出力するようにしているので、補正後の画像信号の重心位置が変化しないことに加えて、平均値に対応する画像の濃度と、差に対応する画像のコントラストに基づき補正の要否を選択することができる。
【0023】
この場合、前後の補正前画素信号のレベルの平均値{(Sp+Sa)/2}が比較的小さく(第1の基準値Drより小さく)、換言すれば、原稿画像の濃度が高く、かつ差(Sa−Sp)の絶対値が比較的小さいとき(第2の基準値Crより小さいとき)、換言すれば、コントラストが小さいとき、すなわち、奇偶差による画像の縦筋が現れやすい(目立ちがちな)場合に、補正後の当該画素信号のレベルScを選択し、それ以外の場合には補正前の当該画素信号のレベルSを選択して出力するようにしているので、簡単な演算で、補正後の画像信号の重心位置が変化しないことに加えて、平均値に対応する画像の濃度と、差に対応する画像のコントラストに基づき補正の要否を適切に選択することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に参照する図面において、上述の図6〜図8に示したものと対応するものには同一の符号を付けてその詳細な説明は省略する。また、図面を繰り返して掲載する煩雑さを避けるために、必要に応じてそれらの図面をも参照して説明する。
【0025】
図1は、この実施の形態が適用された画像読取装置10の概略的な構成を示している。この画像読取装置10は、搬送機構11により矢印Y方向(副走査方向ともいう。)に搬送される原稿カセット12が照明光学系(照明光源ともいう。)14からの照明光によって矢印X方向(主走査方向Xともいう。)に沿って照明され、原稿カセット12に保持された透過型原稿Fに記録された画像情報が、透過光Lとして複数の集光レンズからなる結像光学系16により結像部18に集光され、結像部18により電気信号に変換されるように構成される。
【0026】
照明光源14は、内周面に光の拡散面が形成され、長手方向に沿ってスリット20が形成された円筒状の拡散キャビティ22と、この拡散キャビティ22の両端部に装着されたハロゲンランプ等からなる光源24a、24bとから構成される。
【0027】
結像部18は、スリット31が形成された基台28の下面部に装着され、透過光LをR、G、Bの光に分解するためのプリズム32a〜32cを有し、各プリズム32a〜32cには、光電変換素子としてのライン状のCCDリニアイメージセンサセンサ1a〜1cが固定されている。このリニアイメージセンサ1a〜1cの基本的構成は、図6に示したものと同一の構成である。
【0028】
このリニアイメージセンサ1a〜1cから出力される各々の奇数画素信号Soと偶数画素信号Seは、図示しないフレキシブルプリント配線基板を通じて信号処理基板34に供給される。
【0029】
なお、以下に述べる奇偶差補正処理の説明においては、各リニアイメージセンサ1a〜1cに対して同一の処理が施されるので、特に必要な場合を除いては、単に、リニアイメージセンサ1という。
【0030】
図2は、結像部18を構成するリニアイメージセンサ1の模式的な構成と、そのリニアイメージセンサ1の出力信号である奇数画素信号Soと偶数画素信号Seの奇偶差補正処理を行う系の全体的な構成を示している。
【0031】
図2(図6も参照)において、受光部2によって受光された透過光Lは、各光電変換画素Pにより光電変換され、周知のようにタイミング発生器51から出力されるシフトパルス毎に奇偶画素P(P1、P2、P3、P4…)がそれぞれ対応する転送部3o、3eにシフトされた後、タイミング発生器51からの転送クロックにより、FDA(フローティング ディフュージョン アンプ)4o、4eを通じ、リニアイメージセンサ1の出力端子を介して奇数画素信号Soおよび偶数画素信号Seとして出力される。
【0032】
この奇数・偶数画素信号So、Seは、信号処理基板34(図1参照)に搭載されている利得可変増幅器52、53および切換スイッチ(マルチプレクサ)54を通じて交互に14ビット分解能のA/D変換器55に供給される。このA/D変換器55は、利得可変増幅器52、53を通じて供給されるアナログ信号である奇数・偶数画素信号So、Seを画素順番(P1、P2、…)毎にデジタル画像信号(単に、デジタル信号ともいう。)Sdに変換して信号補正回路56に供給する。
【0033】
なお、処理の高速化のために、A/D変換器55を並列に設けて可変利得増幅器52、53にそれぞれ接続し、並列的なA/D変換器55の出力をマルチプレクサ54により切り換えるように構成してもよい。
【0034】
図3は、奇偶差補正回路としての信号補正回路56のより詳しい構成を示している。
【0035】
入力ポート60を通じてA/D変換器55からの画像信号Sdが供給され、この画像信号Sdは、図示しない制御手段であるCPUの制御の下に、記憶手段である、例えば、FIFO型のシフトレジスタ(単に、レジスタともいう。)61、62、63に順次記憶される。したがって、レジスタ62に当該画素信号SのレベルS(レベルもSとする。)が記憶されると考えた場合、その前のレジスタ63には、当該画素信号Sの1つ前の画素信号(前画素信号ともいう。)SpのレベルSp(レベルもSpとする。)が記憶され、その後ろのレジスタ61には、当該画素信号Sの1つ後ろの画素信号(後画素信号ともいう)SaのレベルSa(レベルもSaとする。)が記憶される。
【0036】
実際上、タイミング発生器51から供給される画素クロックに同期して、ある画素Pp(図2参照)のデジタル信号SdのレベルSpが、まず、レジスタ61に記憶され、次の画素クロックにより、そのレジスタ61に記憶されたレベルSpがレジスタ62に転送され、レジスタ61には、次の画素Pに係る新たなデジタル信号SdのレベルSが記憶される。そして、その次の画素クロックに同期して、それぞれ、レジスタ63、62にレジスタ6261から画素Pp、PのレベルSp、Sが転送されて記憶され、レジスタ61にその次の画素Paに係る新たなデジタル信号SdのレベルSaが記憶される。以下、画素クロックの到来毎にレジスタ61〜63の内容が、同様の順序で更新される。
【0037】
なお、中央のレジスタ62に記憶される画素信号Sが、例えば、奇数画素信号(この画素信号はデジタル信号であるが、異なる符号を使用する煩雑さを避けるためにアナログ信号の符号である上述のSoを用いる。)であるとき、その前後の画素信号は偶数画素信号(同様に、符号は上述のSeを用いる。)であり、中央のレジスタ62に記憶される画素信号Sが、例えば、偶数画素信号Seであるとき、その前後の画素信号は奇数画素信号Soであることはいうまでもない。
【0038】
連続する3画素信号Sp、S、Saは、演算手段としての連続3画素移動平均器(連続3画素重み付け移動平均器)71に供給される。連続3画素移動平均器71は、所定演算である次の(3)式に基づく連続3画素の重み付け移動平均演算を行って演算後の画素信号ScのレベルSc(レベルもScとする。)を出力する。
【0039】
Figure 0003738080
(3)式において、Uは、図4に示すように、当該画素信号Sの前画素信号Spと後画素信号Saとの平均信号(平均レベル)を表している。
【0040】
再び、図3において、当該画素信号Sは、選択手段としての切換スイッチ(マルチプレクサ)72の一方の端子72bに供給され、演算後の画素信号(補正画素信号ともいう。)Scが、他方の端子72cに供給される。切換スイッチ72の共通端子72aは、制御端子72dに選択手段を構成する論理手段である3入力アンド回路73から供給されている切換制御信号である選択信号SEのレベルがハイレベルのとき端子72c側に切り換えられ、ローレベルのとき端子72b側に切り換えられる。
【0041】
当該画素信号Sまたは演算後の画素信号Scである補正後の当該画素信号S′は、出力端子74に現れ、以降の処理に供される。
【0042】
上述した前後画素信号Sp、Saは、それぞれ、濃度演算器75とコントラスト演算器76にも供給される。濃度演算器75では、次の(4)式による濃度対応信号Dx(上述のUと同じ。)を計算して比較器77の比較入力端子に供給する。コントラスト演算器76では、次の(5)式によるコントラスト対応信号Cxを計算して比較器78の比較入力端子に供給する。
【0043】
Dx=(Sp+Sa)/2 …(4)
Cx=|Sp−Sa| …(5)
なお、この例では、輝度信号である濃度対応信号Dxの値が大きいときに、濃度が低く(いわゆる画像のハイライトHL側)、濃度対応信号Dxの値が小さいときに、濃度が高い(いわゆる画像のシャドウSD側)ことを意味する(図5の横軸参照。)
キーボード等のデータ入力手段である濃度入力器81、コントラスト入力器82を通じて、第1の基準値である所望の基準濃度信号(基準濃度ともいう。)Dr{値(レベル)もDrとする。}と第2の基準値である所望の基準コントラスト信号Cr{値(レベル)もCrとする。}が入力され、また、補正オンオフスイッチ83の操作により、補正を行うかどうかの補正オンオフ信号G{G=1(ハイレベル)でオン、G=0(ローレベル)でオフ}が出力される。
【0044】
比較器77では、次の(6)式による比較演算が行われ、2値信号である比較結果信号G1が出力される。また、比較器78では、次の(7)式による比較演算が行われ、2値信号である比較結果信号G2が出力される。
【0045】
Figure 0003738080
なお、この実施の形態において、基準濃度Drと基準コントラスト値Crは、図5に示すように、それぞれ、濃度DがD=1.0の値、14ビットの輝度レベルに換算した場合には、値1600、すなわち、Dr=1600に設定し、コントラスト値Crは、輝度レベルにおいて値500、すなわちCr=500に設定した。なお、基準濃度Drと基準コントラスト値Crは、例えば、この画像読取装置10(図1参照)に接続される図示していない網画像出力機を含む、いわゆる画像読取製版システム全体の特性を考慮して決定する。
【0046】
比較結果信号G1、G2および補正オンオフ信号G3の全ての信号のレベルがハイレベルのとき、3入力アンド回路73の出力信号である選択信号SEがハイレベルとなって、補正後の当該画素信号S′として演算された画素信号Scが出力され、信号G1〜G3のうち、いずれか1つの信号がローレベルであるときには、補正後の当該画素信号S′として元の当該画素信号Sが出力される。
【0047】
このように上述の実施の形態によれば、透過型原稿Fの透過光Lに対応するリニアイメージセンサ1から出力される奇数画素信号Soと偶数画素信号Seとを切換スイッチ54により交互に取り込んで、14ビットのA/D変換器55により画素番号が連続するデジタル画像信号Sdを生成して信号補正回路56に供給し、信号補正回路56により、以下の補正処理を行っている。
【0048】
すなわち、まず、連続する3つの画素信号Sp、S、Saをレジスタ61〜63に順次記憶する。
【0049】
次に、補正しようとする当該画素信号Sの補正後の画素信号S′を作成する際、連続3画素移動平均器71により、当該画素信号Sと、この前後の画素信号Sp、Saから(3)式に示す連続3画素の移動平均信号Scを作成しておく。
【0050】
そして、濃度演算器75により前後の画素信号Sp、Saからこれらの平均である(4)式に示す濃度対応信号Dxを計算し、画像の濃度が高いとき、人の視覚のMTFが高い事実を考慮して、濃度が一定の基準レベルDrより高いとき(この実施の形態では、濃度D=1.0、輝度レベルでは、濃度基準Dr=1600以下のとき)であって、かつ前後の画素信号Sp、Saの差として得られるコントラストCxが小さいとき(図5中のハッチングを施した「ON」領域)、換言すれば、濃度差(輝度差)が小さいので奇偶差に基づく等ピッチの縦筋が見えやすい(再現されやすい)ときに、補正後の画素信号S′として連続3画素移動平均信号Scを出力するように設定している。
【0051】
このため、奇偶差に基づく等ピッチの縦筋を見えなくすることができる。この場合、補正後の画素信号S′=Scは、当該画素を含む連続する3画素の移動平均信号であるので、補正後の画素信号S′=Scの重心位置が移動することもなくなる。
【0052】
さらに、前後の画素の平均の濃度対応信号Dxの値が大きいとき(濃度Dが低いとき、原稿画像のハイライトHL側)、またはコントラスト対応信号Cxの値が大きいとき(図5中のハッチング以外の「OFF」領域)には、3画素移動平均処理を行わないで、補正後の画素信号S′として当該画素信号S′=Sを出力するようにしている。したがって、このような条件のときには、画像のシャープ感が保持される。
【0053】
上述のように作成した補正後の画像信号S′を基にCMYKの網%データを作成し、その網%データを各版毎に所望の網角度、スクリーン線数に基づいてビットマップ展開して2値データとし、その2値データに基づく網画像フイルムを作成し、PS版を作成して、印刷物を作成したとき、その印刷物上の網画像上で、従来の技術の項で問題となった、ラケットのガット部分の、いわゆる片エッジによるぼけが解消され、かつ原稿画像に正確に対応し、シャープ感の保持された精緻な網画像を再現することが可能となった。
【0054】
なお、上述したように、基準濃度Dr、基準コントラストCrは、ともに、このような画像読取・製版システム全体の特性から、画質評価を通じて、最終的な値を決定することが好ましい。
【0055】
また、上述の実施の形態では、補正処理を輝度信号により行っているが、この輝度信号の濃度変換を行った後の濃度信号により行ってもよいことはいうまでもない。
【0056】
さらに、この発明は上述の実施の形態に限らずこの発明の要旨を逸脱することなく種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、リニアイメージセンサのいわゆる奇偶差補正を、当該画素を含むその前後の連続する3つの画素信号のレベルを利用して行うようにしているので、当該画素とその前の画素信号のみを利用して補正を行う従来の技術に比較して、補正後の画像の中心位置(重心位置)が変化しないという効果が達成される。
【0058】
また、この発明によれば、前後の補正前の画素信号のレベルの平均値と差に基づき、補正前の当該画素信号または補正後の当該画素信号を選択して出力するようにしているので、補正後の画像信号の重心位置が変化しないことに加えて、平均値に対応する画像の濃度と、差に対応する画像のコントラストに基づき補正の要否を選択することができ、結果として、原稿画像の内容に応じて適切なイメージセンサに係る奇偶差補正を行うことができるという効果が達成される。
【0059】
具体的には、当該画素信号の前後の補正前の画素信号のレベルの平均値が比較的小さく、換言すれば、原稿画像の濃度が高く、かつ差の絶対値が比較的小さいとき、換言すれば、コントラストが小さいとき、すなわち、奇偶差による画像の縦筋が目立つと予測される場合にのみ、3連続画素の移動平均信号を補正後の画素信号とすることで、奇偶差に基づく出力画像信号の段差を除去することができる。一方、原稿画像濃度が低い場合、またはコントラストが高い場合には、奇偶差に基づく画像の段差が目立たないので、この場合には、補正後の画像信号として、無補正の当該画像信号を出力するようにすることで、原稿画像のシャープ感が失われることがないという効果が達成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施の形態が適用された画像読取装置の概略的な構成を示す斜視図である。
【図2】この発明の一実施の形態の概略的構成を示す回路ブロック図である。
【図3】図2例のうち、信号補正回路の詳細な構成を示す回路ブロック図である。
【図4】3画素移動平均の説明に供される線図である。
【図5】濃度とコントラストに応じて補正を行う処理の説明に供される特性図である。
【図6】一般的にリニアイメージセンサの模式的構成を示す斜視図である。
【図7】従来の技術に係る移動平均用重みの説明に供される線図である。
【図8】従来の技術に係る2画素移動平均による問題点の説明に供される線図である。
【符号の説明】
1、1a〜1c…リニアイメージセンサ
2…受光部 3o、3e…転送部
4o、4e…FDA 61〜63…レジスタ
71…連続3画素移動平均器 75…濃度演算器
76…コントラスト演算器 Cx…コントラスト対応信号
Dx…濃度対応信号 S…当該画素信号
Sp…前画素信号 Sa…後画素信号
So…奇数画素信号 Se…偶数画素信号

Claims (1)

  1. リニアイメージセンサから出力される奇数画素信号と偶数画素信号とを交互に取り込んで出力信号としての画像信号を得、この画像信号を構成する各画素信号を補正する装置において、
    補正前の当該画素信号のレベルと、この前後の画素信号のレベルとを記憶する記憶手段と、
    この記憶手段に接続される演算手段と、
    補正前の当該画素信号または補正後の当該画素信号を選択して出力する選択手段とを有し、
    前記演算手段は、
    補正前の当該画素信号のレベルをS、当該画素信号の前側の補正前画素信号のレベルをSp、当該画素信号の後側の補正前画素信号のレベルをSa、補正後の当該画素信号のレベルをScとしたとき、Scを、
    Sc=(Sp+2S+Sa)/4
    として求め、
    前記選択手段は、前後の補正前の画素信号のレベルの平均値{(Sp+Sa)/2}が第1の基準値より小さく、かつ差(Sa−Sp)の絶対値が第2の基準値より小さいときに、補正後の当該画素信号のレベルScを選択し、それ以外のときに補正前の当該画素信号のレベルSを選択して出力する
    ことを特徴とするリニアイメージセンサの出力信号補正装置。
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