JP3734564B2 - 粉体塗料の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、粉体塗料の製造方法に関する。さらに詳しくは、tert−ブタノールを溶剤として用いて、樹脂、架橋剤、添加剤等を溶解後、凍結させ、凍結乾燥を行うことにより、製造時の熱による反応がなく、高仕上がり性の塗膜を形成することができかつ塗料の回収、再利用が可能な粉体塗料の製造方法に関するものである。
本発明の製造方法による粉体塗料は、特に自動車上塗クリヤーとして適するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の粉体塗料は、樹脂、架橋剤、添加剤等を粉砕、混合後、溶融混練器により混和させ、これを、粉砕することによって製造してきた。しかし、この方法では樹脂と架橋剤を熱で溶融させて混練りするため、一部樹脂と架橋剤の反応が進行し、高分子量化する。このため塗料の溶融粘度が高くなり仕上がり性が低下する。また時にはゲル物が生じ、これが塗膜外観、特に膜厚の薄いクリヤー塗膜では致命的な欠陥となる。また製造時に混入するゴミ、ブツ等も従来の製造法では塗料組成物での瀘過が困難であるため取り除くことができず、高品位な塗膜を要求される自動車上塗クリヤーとして使用する際、大きな問題点となる。また、製造時に発生する熱で一部架橋反応が進行することやゴミ、ゲル化物等が除去できないため高品位な塗膜外観を要求される用途では塗料の回収、再利用が不可能である。
もっとも前記した製造法と異なる製造法として凍結乾燥法も提唱されているが(特開昭50−92318号)、使用される溶剤、樹脂等の規定がなく当業者が容易に実施できる開示が不充分であって、この公報の記載から、樹脂、架橋剤、添加剤等の溶解性と凍結乾燥とのかねあいを見出すのは容易ではない。また凍結乾燥に良く用いられるベンゼンは毒性の面から今後、製造に使用することは難しく、また溶解性の良いジオキサンも衛生上の問題から多量に使用できないという問題がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとずる課題は、樹脂、架橋剤、添加剤等を全て溶解し、かつ凍結乾燥の容易な毒性のない溶剤組成あるいは樹脂組成を見出し凍結乾燥を行うことによって仕上がりの良い塗膜を形成しかつゴミ、ゲル化物の混合しない熱硬化性粉体塗料を容易に製造しうる方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる問題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、特定の溶剤組成と樹脂組成を用いることにより凍結乾燥で仕上がり性に優れる粉末塗料を簡便に製造する方法を見出し本発明を完成させることができた。
すなわち、本発明は、
「1. 側鎖に炭素数4以上の分岐または環状の置換基を有する(メタ)アクリレートモノマー及びグリシジル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを必須成分とするモノマー混合物を共重合して得られる、ガラス転移温度40℃〜100℃及び数平均分子量1,000〜10,000の熱硬化性ビニル系共重合体(a)及び脂肪族ポリカルボン酸またはその酸無水物である架橋剤(b)をtert−ブタノール50重量%以上からなる溶剤に溶解もしくは分散してなる融点が−30℃以上の塗料溶液を50mmHg以下の圧力下で凍結乾燥することを特徴とする粉体塗料の製造方法。
2. ビニル系共重合体(a)が側鎖に炭素数4以上の分岐または環状の置換基を有する(メタ)アクリレートモノマーを20〜65重量%含有するモノマー混合物を共重合してなるものである、1項に記載された粉体塗料の製造方法。
3. グリシジル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを20〜70重量%使用する、1項または2項に記載された粉体塗料の製造方法。
4. 炭素数4以上の分岐または環状の置換基を有する(メタ)アクリレート以外のその他の非官能性不飽和モノマーを10〜60重量%併用する、1項ないし3項のいずれか1項に記載された粉体塗料の製造方法。
5. 架橋剤(b)はドデカン二酸である、1項ないし4項のいずれか1項に記載された粉体塗料の製造方法。
6. 溶剤組成がtert−ブタノール50〜100重量%、ジオキサン0〜50重量%、及びその他の溶剤0〜20重量%からなる、1項ないし5項のいずれか1項に記載された粉体塗料の製造方法。
7. 溶剤組成がtert−ブタノール80重量%以上からなる、1項ないし6項のいずれか1項に記載された粉体塗料の製造方法。」
に関する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の粉体塗料の製造法に供される粉体塗料組成中の熱硬化性ビニル系共重合体(a)は、側鎖に炭素数4以上の分岐または環状の置換基を有する(メタ)アクリレートモノマーおよび官能基を有する(メタ)アクリレートモノマーを必須成分とし、必要に応じてこれら以外の重合性不飽和モノマーを加えて共重合することによって得られるものである。
【0006】
側鎖に炭素数が4以上の分岐または環状の置換基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート等の分岐した4つ以上の炭素数を置換基として有する(メタ)アクリル酸エステル類:シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等の脂環族環を置換基に有する(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。
【0007】
共重合しうる官能基含有(メタ)アクリレートモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルアリルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有不飽和モノマー類:2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル等の水酸基含有不飽和モノマー類:アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有不飽和モノマー等が挙げられる。
【0008】
また、共重合しうるその他の非官能不飽和モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル:スチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族モノマーが挙げられる。
【0009】
ビニル系共重合体(a)の製造に用いられる炭素数4以上の分岐または環状の置換基を有する(メタ)アクリレートモノマーは、モノマー混合物中に20〜65重量%好ましくは30〜60重量%の範囲で用いて共重合することが適当である。共重合量が20重量%未満であると後記する溶剤特にtert−ブタノールへの溶解性が低下し、塗料溶液が不均一となり、この粉体塗料から形成される塗膜の仕上がり性が低下する。
【0010】
また、官能基含有(メタ)アクリレートモノマーは、20〜70重量%、好ましくは30〜45重量%の範囲で用いられる。
さらに、その他の非官能性不飽和モノマーは10〜60重量%の範囲である。ここでスチレンが使用される場合は、35重量%以下好ましくは25重量%以下が適当である。スチレンを36重量%以上共重合するとtert−ブタノールへの溶解性が大きく低下し、塗料溶液が不均一となる。
【0011】
本発明に用いられるビニル系共重合体(a)は、ガラス転移温度が40℃から100℃好ましくは50℃〜80℃が適当である。40℃より低いと粉体塗料の耐ブロッキング性が悪くなり、また100℃より高いと熱フロー時の粘度が上がり、仕上がり性が低下するばかりでなく、凍結乾燥を行う溶剤に対する溶解性が低下し、さらに仕上がり性を低下させる。
上記したガラス転移温度(Tg、℃)は下記のFoxの式で計算した温度(゜K)を(℃)に換算した数値である。
100/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+W3/Tg3+W4/Tg4
(式中、W1、W2、W3、W4はそれぞれ共重合体に使用されたモノマーの重量%を示し、Tg1、Tg2、Tg3、Tg4は同重合体のガラス転移(゜K)を示す。)
【0012】
架橋剤(b)は、特に規定はしないがビニル系共重合体(a)の持つ官能基と反応硬化する架橋剤であれば従来からの公知の架橋剤が使用できる。具体例としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、ドデカン二酸、ピペリン酸、アゼライン酸、イタコン酸、シトラコン酸等の脂肪族ポリカルボン酸類およびその(ポリ)酸無水物:テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族ポリカルボン酸類およびその(ポリ)酸無水物:ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等の脂環式ポリカルボン酸およびその無水物の如く(無水)ポリカルボン酸化合物あ挙げられる。また例えばイソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、(水添加)キシリレンジイソシアネート、(水添加)トリレンジイソシアネート等の脂肪族、脂環族または芳香族ポリイソシアネートをフェノール類、カプロラクトン類、アルコール類等のブロック剤でブロックしたもの等のブロックイソシアネート化合物:トリスエポキシプロピルイソシアヌレート、(水添加)ビスフェノールA、セロキシド2021(ダイセル化学社製)、EHPE−3150(ダイセル化学社製)等のポリエポキシ化合物等が挙げられる。
これらは1種または2種以上組み合わせて使用できる。また上記した中でも脂肪族ポリカルボン酸およびその酸無水物が好ましく、中でもドデカン二酸は塗料の耐ブロッキング性、塗料の仕上がり外観等が優れている。
【0013】
添加剤(c)は、ワキ防止剤、表面調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、ブロッキング防止剤、流動調整剤、帯電制御剤、着色顔料、充填剤、硬化促進剤等通常塗料に配合されるものが使用でき必要に応じて配合される。
【0014】
本発明において、ビニル系共重合体(a)および架橋剤(b)を溶解もしくは分散させる溶剤としては、tert−ブタノール単独もしくはtert−ブタノールとジオキサンの混合溶剤が用いられる。
これらの溶剤は、樹脂、架橋剤、添加剤等の溶解性が高くまた融点も高く、蒸気圧が高いため凍結に必要なエネルギーが少なくてすみ、凍結乾燥時、高減圧度を必要とせずまた減圧時間も短時間にすることができる。また、融点が−40℃以下にならないよう、他の溶剤例えば、メチルエチルケトン、トルエンを併用することも可能である。融点が−40℃以下になると凍結にエネルギーを要するだけでなく、冷却時に樹脂と架橋剤が分離し、仕上がり性が低下する。
溶剤として混合溶剤が用いられる場合、tert−ブタノールは50重量%以上、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上の範囲で用いられる。他方、ジオキサンは50重量%未満、好ましくは30重量%未満、さらに好ましくは20重量%未満である。
また、他の溶剤が使用される場合は20重量%以下で用いられる。
tert−ブタノールの量が50重量%未満になると溶剤の蒸気圧が下がり高減圧度や減圧時間が長くなり、また架橋剤の溶解性が低下する場合がある。またジオキサンを50重量%以上用いると、衛生上問題があるばかりでなく、溶剤の蒸気圧が下がり高減圧度が必要となり、また減圧時間も長くなる。
【0015】
本発明の粉体塗料の製造方法は、前記したビニル系共重合体(a)、架橋剤(b)および添加剤等を溶解し、適度な瀘過装置で瀘過後、通常10℃〜−30℃で凍結し、50mmHg以下で減圧を行い、冷却トラップで捕集する。凍結乾燥後、簡単な粉砕とフルイで瀘過することにより粒径10μm程度の微粒子が容易に得られる。このため、粉砕等の工程を省略して粉体塗料を製造することが可能となる。
【0016】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。
【0017】
樹脂溶液(A)の製造例
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器および滴下装置を備えた反応容器に、tert−ブタノール100重量部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、82℃に加熱して、シクロヘキシルメタクリレート50重量部、tert−ブチルーメタクリレート15重量部、グリシジルメタクリレート35重量部、アゾビスジメチルバレロニトリル7重量部の混合液を約3時間かけて滴下した。滴下終了後82℃で2時間放置し、反応を終了し、樹脂溶液(1)を製造した。
【0018】
樹脂溶液(B〜I)の製造例
表1記載の配合で樹脂溶液(A)と同様に製造した。
【0019】
【表1】
【0020】
実施例1
樹脂溶液(A)200重量部、ドデカン二酸25重量部、tert−ブタノール190重量部を加え、溶解後、−10℃で冷却し、凍結させた。その後、1.0mmHg以下で減圧し、溶融が起こらないよう、徐々に常温に戻していった。得られた固形物は、軽く粉砕しながら150メッシュで瀘過して粉体塗料を製造した。
【0021】
実施例2〜7
樹脂溶液(A)〜(F)を用いて実施例1と同様に製造した。
【0022】
比較例1〜4
樹脂溶液(A)(G)(H)(I)を用い、表2に示される溶剤を用いてて実施例1と同様に製造した。
【0023】
比較例5
樹脂溶液(A)から溶剤を減圧蒸留により除去して固形樹脂を得た。この固形樹脂100重量部とドデカン二酸25重量部を室温でヘンシェルミキサーでドライブレンドした後、エクストルーダーで溶融混練した。次に冷却した後、ピンディスクで微粉砕し、150メッシュで瀘過して粉体塗料を得た。
【0024】
粉体塗料の塗膜性能試験結果を表2に示す。
【0025】
【表2】
【0026】
表2における試験は次のようにして行った。
溶液状態での溶解性の評価
凍結乾燥前の溶液での溶解性は25゜Cでの塗料溶液の状態で評価した。樹脂については次の基準で評価した。◎は完全溶解、○は沈降はしないがブルーイング、△は白濁し沈降物も少量みられる。また架橋剤のドデカン二酸の溶解性も次の基準で評価した。◎は完全溶解、△は結晶物の析出がみられる。
塗膜作成条件
燐酸亜鉛化成処理を施した熱さ0.8mmのダル鋼板上にエポキシ系カチオン電着塗料を乾燥膜厚20ミクロンとなるように電着塗装し、焼き付けた電着塗膜上に自動車中塗りサーフェサーを乾燥厚膜20ミクロンとなるように焼き付けした後#400サンドペーパーで水研ぎし、水切乾燥した。次いでマジクロンベースコートHM−22(関西ペイント株式会社製、メタリック塗料、商品名)を硬化塗膜で約15ミクロンとなるように塗装し、乾燥器で140℃で約30分間焼き付け硬化させ試験用の素材とした。
次いでは該素材の表面に粉体塗料を膜厚が約70ミクロンとなるように静電塗装し、乾燥器で160℃で30分間加熱硬化させた。得られた塗板について次の試験を行った。
塗膜外観
塗膜の仕上がり外観をツヤ感、平滑感から次の基準で評価した。◎は良好なもの、○はは若干平滑性が劣るがツヤ感は良好なもの、△は若干劣るもの、×は劣るもの。
ワキは次に基準で評価した。○は良好、△は少数のワキが発生。
60゜光沢
60゜での鏡面反射率を測定した。JISK−5400に従って測定した。
【0027】
【発明の効果】
本発明は製造時の熱による反応がないので塗料の溶融粘度の上昇がなく、仕上り性の良好な粉体塗料を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、粉体塗料の製造方法に関する。さらに詳しくは、tert−ブタノールを溶剤として用いて、樹脂、架橋剤、添加剤等を溶解後、凍結させ、凍結乾燥を行うことにより、製造時の熱による反応がなく、高仕上がり性の塗膜を形成することができかつ塗料の回収、再利用が可能な粉体塗料の製造方法に関するものである。
本発明の製造方法による粉体塗料は、特に自動車上塗クリヤーとして適するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の粉体塗料は、樹脂、架橋剤、添加剤等を粉砕、混合後、溶融混練器により混和させ、これを、粉砕することによって製造してきた。しかし、この方法では樹脂と架橋剤を熱で溶融させて混練りするため、一部樹脂と架橋剤の反応が進行し、高分子量化する。このため塗料の溶融粘度が高くなり仕上がり性が低下する。また時にはゲル物が生じ、これが塗膜外観、特に膜厚の薄いクリヤー塗膜では致命的な欠陥となる。また製造時に混入するゴミ、ブツ等も従来の製造法では塗料組成物での瀘過が困難であるため取り除くことができず、高品位な塗膜を要求される自動車上塗クリヤーとして使用する際、大きな問題点となる。また、製造時に発生する熱で一部架橋反応が進行することやゴミ、ゲル化物等が除去できないため高品位な塗膜外観を要求される用途では塗料の回収、再利用が不可能である。
もっとも前記した製造法と異なる製造法として凍結乾燥法も提唱されているが(特開昭50−92318号)、使用される溶剤、樹脂等の規定がなく当業者が容易に実施できる開示が不充分であって、この公報の記載から、樹脂、架橋剤、添加剤等の溶解性と凍結乾燥とのかねあいを見出すのは容易ではない。また凍結乾燥に良く用いられるベンゼンは毒性の面から今後、製造に使用することは難しく、また溶解性の良いジオキサンも衛生上の問題から多量に使用できないという問題がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとずる課題は、樹脂、架橋剤、添加剤等を全て溶解し、かつ凍結乾燥の容易な毒性のない溶剤組成あるいは樹脂組成を見出し凍結乾燥を行うことによって仕上がりの良い塗膜を形成しかつゴミ、ゲル化物の混合しない熱硬化性粉体塗料を容易に製造しうる方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる問題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、特定の溶剤組成と樹脂組成を用いることにより凍結乾燥で仕上がり性に優れる粉末塗料を簡便に製造する方法を見出し本発明を完成させることができた。
すなわち、本発明は、
「1. 側鎖に炭素数4以上の分岐または環状の置換基を有する(メタ)アクリレートモノマー及びグリシジル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを必須成分とするモノマー混合物を共重合して得られる、ガラス転移温度40℃〜100℃及び数平均分子量1,000〜10,000の熱硬化性ビニル系共重合体(a)及び脂肪族ポリカルボン酸またはその酸無水物である架橋剤(b)をtert−ブタノール50重量%以上からなる溶剤に溶解もしくは分散してなる融点が−30℃以上の塗料溶液を50mmHg以下の圧力下で凍結乾燥することを特徴とする粉体塗料の製造方法。
2. ビニル系共重合体(a)が側鎖に炭素数4以上の分岐または環状の置換基を有する(メタ)アクリレートモノマーを20〜65重量%含有するモノマー混合物を共重合してなるものである、1項に記載された粉体塗料の製造方法。
3. グリシジル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを20〜70重量%使用する、1項または2項に記載された粉体塗料の製造方法。
4. 炭素数4以上の分岐または環状の置換基を有する(メタ)アクリレート以外のその他の非官能性不飽和モノマーを10〜60重量%併用する、1項ないし3項のいずれか1項に記載された粉体塗料の製造方法。
5. 架橋剤(b)はドデカン二酸である、1項ないし4項のいずれか1項に記載された粉体塗料の製造方法。
6. 溶剤組成がtert−ブタノール50〜100重量%、ジオキサン0〜50重量%、及びその他の溶剤0〜20重量%からなる、1項ないし5項のいずれか1項に記載された粉体塗料の製造方法。
7. 溶剤組成がtert−ブタノール80重量%以上からなる、1項ないし6項のいずれか1項に記載された粉体塗料の製造方法。」
に関する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の粉体塗料の製造法に供される粉体塗料組成中の熱硬化性ビニル系共重合体(a)は、側鎖に炭素数4以上の分岐または環状の置換基を有する(メタ)アクリレートモノマーおよび官能基を有する(メタ)アクリレートモノマーを必須成分とし、必要に応じてこれら以外の重合性不飽和モノマーを加えて共重合することによって得られるものである。
【0006】
側鎖に炭素数が4以上の分岐または環状の置換基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート等の分岐した4つ以上の炭素数を置換基として有する(メタ)アクリル酸エステル類:シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等の脂環族環を置換基に有する(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。
【0007】
共重合しうる官能基含有(メタ)アクリレートモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルアリルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有不飽和モノマー類:2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル等の水酸基含有不飽和モノマー類:アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有不飽和モノマー等が挙げられる。
【0008】
また、共重合しうるその他の非官能不飽和モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル:スチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族モノマーが挙げられる。
【0009】
ビニル系共重合体(a)の製造に用いられる炭素数4以上の分岐または環状の置換基を有する(メタ)アクリレートモノマーは、モノマー混合物中に20〜65重量%好ましくは30〜60重量%の範囲で用いて共重合することが適当である。共重合量が20重量%未満であると後記する溶剤特にtert−ブタノールへの溶解性が低下し、塗料溶液が不均一となり、この粉体塗料から形成される塗膜の仕上がり性が低下する。
【0010】
また、官能基含有(メタ)アクリレートモノマーは、20〜70重量%、好ましくは30〜45重量%の範囲で用いられる。
さらに、その他の非官能性不飽和モノマーは10〜60重量%の範囲である。ここでスチレンが使用される場合は、35重量%以下好ましくは25重量%以下が適当である。スチレンを36重量%以上共重合するとtert−ブタノールへの溶解性が大きく低下し、塗料溶液が不均一となる。
【0011】
本発明に用いられるビニル系共重合体(a)は、ガラス転移温度が40℃から100℃好ましくは50℃〜80℃が適当である。40℃より低いと粉体塗料の耐ブロッキング性が悪くなり、また100℃より高いと熱フロー時の粘度が上がり、仕上がり性が低下するばかりでなく、凍結乾燥を行う溶剤に対する溶解性が低下し、さらに仕上がり性を低下させる。
上記したガラス転移温度(Tg、℃)は下記のFoxの式で計算した温度(゜K)を(℃)に換算した数値である。
100/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+W3/Tg3+W4/Tg4
(式中、W1、W2、W3、W4はそれぞれ共重合体に使用されたモノマーの重量%を示し、Tg1、Tg2、Tg3、Tg4は同重合体のガラス転移(゜K)を示す。)
【0012】
架橋剤(b)は、特に規定はしないがビニル系共重合体(a)の持つ官能基と反応硬化する架橋剤であれば従来からの公知の架橋剤が使用できる。具体例としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、ドデカン二酸、ピペリン酸、アゼライン酸、イタコン酸、シトラコン酸等の脂肪族ポリカルボン酸類およびその(ポリ)酸無水物:テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族ポリカルボン酸類およびその(ポリ)酸無水物:ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等の脂環式ポリカルボン酸およびその無水物の如く(無水)ポリカルボン酸化合物あ挙げられる。また例えばイソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、(水添加)キシリレンジイソシアネート、(水添加)トリレンジイソシアネート等の脂肪族、脂環族または芳香族ポリイソシアネートをフェノール類、カプロラクトン類、アルコール類等のブロック剤でブロックしたもの等のブロックイソシアネート化合物:トリスエポキシプロピルイソシアヌレート、(水添加)ビスフェノールA、セロキシド2021(ダイセル化学社製)、EHPE−3150(ダイセル化学社製)等のポリエポキシ化合物等が挙げられる。
これらは1種または2種以上組み合わせて使用できる。また上記した中でも脂肪族ポリカルボン酸およびその酸無水物が好ましく、中でもドデカン二酸は塗料の耐ブロッキング性、塗料の仕上がり外観等が優れている。
【0013】
添加剤(c)は、ワキ防止剤、表面調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、ブロッキング防止剤、流動調整剤、帯電制御剤、着色顔料、充填剤、硬化促進剤等通常塗料に配合されるものが使用でき必要に応じて配合される。
【0014】
本発明において、ビニル系共重合体(a)および架橋剤(b)を溶解もしくは分散させる溶剤としては、tert−ブタノール単独もしくはtert−ブタノールとジオキサンの混合溶剤が用いられる。
これらの溶剤は、樹脂、架橋剤、添加剤等の溶解性が高くまた融点も高く、蒸気圧が高いため凍結に必要なエネルギーが少なくてすみ、凍結乾燥時、高減圧度を必要とせずまた減圧時間も短時間にすることができる。また、融点が−40℃以下にならないよう、他の溶剤例えば、メチルエチルケトン、トルエンを併用することも可能である。融点が−40℃以下になると凍結にエネルギーを要するだけでなく、冷却時に樹脂と架橋剤が分離し、仕上がり性が低下する。
溶剤として混合溶剤が用いられる場合、tert−ブタノールは50重量%以上、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上の範囲で用いられる。他方、ジオキサンは50重量%未満、好ましくは30重量%未満、さらに好ましくは20重量%未満である。
また、他の溶剤が使用される場合は20重量%以下で用いられる。
tert−ブタノールの量が50重量%未満になると溶剤の蒸気圧が下がり高減圧度や減圧時間が長くなり、また架橋剤の溶解性が低下する場合がある。またジオキサンを50重量%以上用いると、衛生上問題があるばかりでなく、溶剤の蒸気圧が下がり高減圧度が必要となり、また減圧時間も長くなる。
【0015】
本発明の粉体塗料の製造方法は、前記したビニル系共重合体(a)、架橋剤(b)および添加剤等を溶解し、適度な瀘過装置で瀘過後、通常10℃〜−30℃で凍結し、50mmHg以下で減圧を行い、冷却トラップで捕集する。凍結乾燥後、簡単な粉砕とフルイで瀘過することにより粒径10μm程度の微粒子が容易に得られる。このため、粉砕等の工程を省略して粉体塗料を製造することが可能となる。
【0016】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。
【0017】
樹脂溶液(A)の製造例
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器および滴下装置を備えた反応容器に、tert−ブタノール100重量部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、82℃に加熱して、シクロヘキシルメタクリレート50重量部、tert−ブチルーメタクリレート15重量部、グリシジルメタクリレート35重量部、アゾビスジメチルバレロニトリル7重量部の混合液を約3時間かけて滴下した。滴下終了後82℃で2時間放置し、反応を終了し、樹脂溶液(1)を製造した。
【0018】
樹脂溶液(B〜I)の製造例
表1記載の配合で樹脂溶液(A)と同様に製造した。
【0019】
【表1】
【0020】
実施例1
樹脂溶液(A)200重量部、ドデカン二酸25重量部、tert−ブタノール190重量部を加え、溶解後、−10℃で冷却し、凍結させた。その後、1.0mmHg以下で減圧し、溶融が起こらないよう、徐々に常温に戻していった。得られた固形物は、軽く粉砕しながら150メッシュで瀘過して粉体塗料を製造した。
【0021】
実施例2〜7
樹脂溶液(A)〜(F)を用いて実施例1と同様に製造した。
【0022】
比較例1〜4
樹脂溶液(A)(G)(H)(I)を用い、表2に示される溶剤を用いてて実施例1と同様に製造した。
【0023】
比較例5
樹脂溶液(A)から溶剤を減圧蒸留により除去して固形樹脂を得た。この固形樹脂100重量部とドデカン二酸25重量部を室温でヘンシェルミキサーでドライブレンドした後、エクストルーダーで溶融混練した。次に冷却した後、ピンディスクで微粉砕し、150メッシュで瀘過して粉体塗料を得た。
【0024】
粉体塗料の塗膜性能試験結果を表2に示す。
【0025】
【表2】
【0026】
表2における試験は次のようにして行った。
溶液状態での溶解性の評価
凍結乾燥前の溶液での溶解性は25゜Cでの塗料溶液の状態で評価した。樹脂については次の基準で評価した。◎は完全溶解、○は沈降はしないがブルーイング、△は白濁し沈降物も少量みられる。また架橋剤のドデカン二酸の溶解性も次の基準で評価した。◎は完全溶解、△は結晶物の析出がみられる。
塗膜作成条件
燐酸亜鉛化成処理を施した熱さ0.8mmのダル鋼板上にエポキシ系カチオン電着塗料を乾燥膜厚20ミクロンとなるように電着塗装し、焼き付けた電着塗膜上に自動車中塗りサーフェサーを乾燥厚膜20ミクロンとなるように焼き付けした後#400サンドペーパーで水研ぎし、水切乾燥した。次いでマジクロンベースコートHM−22(関西ペイント株式会社製、メタリック塗料、商品名)を硬化塗膜で約15ミクロンとなるように塗装し、乾燥器で140℃で約30分間焼き付け硬化させ試験用の素材とした。
次いでは該素材の表面に粉体塗料を膜厚が約70ミクロンとなるように静電塗装し、乾燥器で160℃で30分間加熱硬化させた。得られた塗板について次の試験を行った。
塗膜外観
塗膜の仕上がり外観をツヤ感、平滑感から次の基準で評価した。◎は良好なもの、○はは若干平滑性が劣るがツヤ感は良好なもの、△は若干劣るもの、×は劣るもの。
ワキは次に基準で評価した。○は良好、△は少数のワキが発生。
60゜光沢
60゜での鏡面反射率を測定した。JISK−5400に従って測定した。
【0027】
【発明の効果】
本発明は製造時の熱による反応がないので塗料の溶融粘度の上昇がなく、仕上り性の良好な粉体塗料を提供することができる。
Claims (7)
- 側鎖に炭素数4以上の分岐または環状の置換基を有する(メタ)アクリレートモノマー及びグリシジル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを必須成分とするモノマー混合物を共重合して得られる、ガラス転移温度40℃〜100℃及び数平均分子量1,000〜10,000の熱硬化性ビニル系共重合体(a)及び脂肪族ポリカルボン酸またはその酸無水物である架橋剤(b)をtert−ブタノール50重量%以上からなる溶剤に溶解もしくは分散してなる融点が−30℃以上の塗料溶液を50mmHg以下の圧力下で凍結乾燥することを特徴とする粉体塗料の製造方法。
- ビニル系共重合体(a)が側鎖に炭素数4以上の分岐または環状の置換基を有する(メタ)アクリレートモノマーを20〜65重量%含有するモノマー混合物を共重合してなるものである、請求項1に記載された粉体塗料の製造方法。
- グリシジル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを20〜70重量%使用する、請求項1または2に記載された粉体塗料の製造方法。
- 炭素数4以上の分岐または環状の置換基を有する(メタ)アクリレート以外のその他の非官能性不飽和モノマーを10〜60重量%併用する、請求項1ないし3のいずれか1項に記載された粉体塗料の製造方法。
- 架橋剤(b)はドデカン二酸である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載された粉体塗料の製造方法。
- 溶剤組成がtert−ブタノール50〜100重量%、ジオキサン0〜50重量%、及びその他の溶剤0〜20重量%からなる、請求項1ないし5のいずれか1項に記載された粉体塗料の製造方法。
- 溶剤組成がtert−ブタノール80重量%以上からなる、請求項1ないし6のいずれか1項に記載された粉体塗料の製造方法。
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