JP3733204B2 - 樹脂充填剤調製用の原料組成物および樹脂充填剤の調製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂充填剤調整用の原料組成物および樹脂充填剤の調整方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、多層配線基板の高密度化という要請から、いわゆるビルドアップ多層配線基板が注目されている。このビルドアップ多層配線基板は、例えば特公平4−55555 号公報に開示されているような方法により製造される。即ち、コア基板上に、感光性の無電解めっき用接着剤からなる層間樹脂絶縁剤を塗布し、これを乾燥したのち露光,現像することにより、バイアホール用開口を有する層間樹脂絶縁層を形成し、次いで、この層間樹脂絶縁層の表面を酸化剤等による処理にて粗化したのち、その粗化面に感光性の樹脂層を露光,現像処理してなるめっきレジストを設け、その後、めっきレジスト非形成部分に無電解めっきを施してバイアホールを含む導体回路パターンを形成し、このような工程を複数回繰り返すことにより、多層化したビルドアップ配線基板が得られる。
【0003】
このような方法で製造されるビルドアップ配線基板に関し、発明者らは先に、特願平8−262811号において、配線基板の表面に生じる導体回路間の凹部あるいは該基板に設けたスルーホール内に充填される,基板平滑化のための樹脂充填剤として、ビスフェノール型エポキシ樹脂、イミダゾール硬化剤および無機粒子を含む樹脂組成物を提案した。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような樹脂充填剤は、工業的に大量生産した場合、実際にプリント配線板を製造するに当たって基板の凹部等に塗布,充填するまでの間、保存する必要がある。
このため、この保存の間に、上記樹脂充填剤は、次第に硬化が進行して樹脂の粘度が高くなり、塗布,充填できない状態になるなどの問題があった。
【0005】
本発明の目的は、樹脂充填剤保存時に不可避的に発生するその充填剤の硬化を抑制することにあり、これにより、所定の物性を確保した樹脂充填剤を確実にプリント配線板の製造に提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記目的の実現に向け鋭意研究を行った結果、以下に示す内容を要旨構成とする発明に想到した。
即ち、本発明にかかる導体回路間およびスルーホール内に充填する樹脂充填剤調整用の原料組成物は、
予め下記の形態に調整された各組成物;
▲1▼.ビスフェノール型エポキシ樹脂および平均粒径0.1〜5μmである無機粒子を含む樹脂組成物、
▲2▼.硬化剤組成物、
を混合可能に準備し、かつ▲1▼樹脂組成物および▲2▼硬化剤組成物をそれぞれ隔離した状態に保持したことを特徴とする。
【0007】
また、本発明にかかる樹脂充填剤の調整方法は、ビスフェノール型エポキシ樹脂、無機粒子および硬化剤組成物を含む樹脂充填剤を調製するにあたり、
▲1▼.ビスフェノール型エポキシ樹脂および平均粒径0.1〜5μmである無機粒子を含む樹脂組成物、
▲2▼.硬化剤組成物、
を、▲1▼樹脂組成物および▲2▼硬化剤組成物にそれぞれ隔離保存し、導体回路間およびスルーホール内に充填する樹脂充填剤として使用するその直前に、その隔離された状態にある上記各組成物を混合攪拌することを特徴とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の樹脂充填剤調製用の原料組成物は、硬化剤成分が他の樹脂成分と隔離した状態で保持している点に特徴がある。
【0009】
これにより、本発明にかかる上記原料組成物は、樹脂成分の硬化が進まず、1か月以上経過しても、粘度上昇がみられない。その結果、この原料組成物からなる樹脂充填剤は、実際にプリント配線板を製造するに当たって基板の凹部等に塗布,充填する際に、その塗布性に関し問題はなかった。
【0010】
一方、本発明にかかる樹脂充填剤の調製方法は、隔離された状態にある上記各組成物を、樹脂充填剤として使用するその直前に攪拌混合する点に特徴がある。
【0011】
これにより、本発明にかかる上記充填剤調製方法によれば、組成物混合から充填剤として使用するまでの時間が極めて短いので、粘度等の上昇が少ない所定の物性を確保した樹脂充填剤を確実にプリント配線板の製造に提供することができる。
【0012】
このような本発明において、樹脂充填剤は、ロール混練やボールミル、ビーズミルなどを用いて、各組成物を攪拌混合することにより調製する。
【0013】
以上説明したような樹脂充填剤調製用の原料組成物および樹脂充填剤の調製方法において、樹脂組成物▲1▼中のビスフェノール型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いることができ、特に後者のエポキシ樹脂が好適である。
【0014】
樹脂組成物▲1▼中の無機粒子としては、シリカやアルミナ、タルク、コージェライト、ジルコニア、チタニアなどを用いることができる。
この無機粒子は、その平均粒径を 0.1〜5μmとすることが好ましく、また、その粒子表面に、各種カップリング剤などを塗布しておいてもよい。
【0015】
なお、樹脂組成物▲1▼には、レベリング剤や消泡剤を添加してもよい。例えば、サンノプコ社製のペレノールS4などを用いることができる。
【0016】
硬化剤組成物▲2▼としては、イミダゾール硬化剤がよく、特に、25℃で液状のものが好適に用いられる。
このような液状イミダゾール硬化剤としては、1-ベンジル−2-メチルイミダゾール(品名:1B2MZ )、1-シアノエチル−2-エチル−4-メチルイミダゾール(品名:2E4MZ-CN)、4-メチル−2-エチルイミダゾール(品名:2E4MZ )を用いることができる。
このイミダゾール硬化剤の添加量は、上記樹脂組成物の総固形分に対して1〜10重量%とすることが望ましい。充分な硬化物特性が得られるからである。
【0017】
なお、プリント配線板の製造に用いる樹脂充填剤としては、無溶剤の樹脂充填剤を用いることが好ましいが、有機溶剤を用いる場合には、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(DMTG)などの、下記構造式を持つグリコールエーテル系の溶剤やN−メチルピロリドン(NMP)などを用いることが望ましい。
CH3O−(CH2CH2O) n −CH3
(n=1〜5)
【0018】
【実施例】
(実施例1)(フルアディティブ法)
A.無電解めっき用接着剤調製用の原料組成物
〔樹脂組成物▲1▼〕
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬製、分子量2500)の25%アクリル化物を濃度80wt%となるようにDMDGに溶解させた樹脂液を35重量部、感光性モノマー(東亜合成製、アロニックスM315 )4重量部、消泡剤(サンノプコ製、S−65)0.5 重量部、NMP 3.6重量部を攪拌混合して得た。
〔樹脂組成物▲2▼〕
ポリエーテルスルフォン(PES)12重量部、エポキシ樹脂粒子(三洋化成製、ポリマーポール)の平均粒径 3.0μmのものを 12.08重量部、平均粒径 0.5μmのものを4.83重量部、を混合した後、さらにNMP30重量部を添加し、ビーズミルで攪拌混合して得た。
〔硬化剤組成物▲3▼〕
イミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ-CN)2重量部、光開始剤(チバガイギー製、イルガキュア I−907 )2重量部、光増感剤(日本化薬製、DETX-S)0.2 重量部、NMP 1.5重量部を攪拌混合して得た。
【0019】
これらの樹脂組成物▲1▼、樹脂組成物▲2▼および硬化剤組成物▲3▼それぞれを、隔離した状態に保持し、25℃で1か月間保存した。
【0020】
B.層間樹脂絶縁剤調製用の原料組成物
〔樹脂組成物▲1▼〕
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬製、分子量2500)の25%アクリル化物を濃度80wt%となるようにDMDGに溶解させた樹脂液を35重量部、感光性モノマー(東亜合成製、アロニックスM315 )4重量部、消泡剤(サンノプコ製、S−65)0.5 重量部、NMP 3.6重量部を攪拌混合して得た。
〔樹脂組成物▲2▼〕
ポリエーテルスルフォン(PES)12重量部、エポキシ樹脂粒子(三洋化成製、ポリマーポール)の平均粒径 0.5μmのものを 14.49重量部、を混合した後、さらにNMP30重量部を添加し、ビーズミルで攪拌混合して得た。
〔硬化剤組成物▲3▼〕
イミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ-CN)2重量部、光開始剤(チバガイギー製、イルガキュア I−907 )2重量部、光増感剤(日本化薬製、DETX-S)0.2 重量部、NMP1.5 重量部を攪拌混合して得た。
【0021】
これらの樹脂組成物▲1▼、樹脂組成物▲2▼および硬化剤組成物▲3▼それぞれを、隔離した状態に保持し、25℃で1か月間保存した。
なお、上記層間樹脂絶縁剤は、接着剤層と絶縁剤層の2層で構成する層間樹脂絶縁層における下層の絶縁剤層として用いられる樹脂組成物である。
【0022】
C.樹脂充填剤調製用の原料組成物(本発明にかかる原料組成物)
〔樹脂組成物▲1▼〕
ビスフェノールF型エポキシモノマー(油化シェル製、分子量310 、YL983U) 100重量部、表面にシランカップリング剤がコーティングされた平均粒径 1.6μmのSiO2 球状粒子(アドマテック製、CRS 1101−CE、ここで、最大粒子の大きさは後述する内層銅パターンの厚み(15μm)以下とする) 170重量部、レベリング剤(サンノプコ製、ペレノールS4)1.5 重量部を攪拌混合することにより、その混合物の粘度を23±1℃で45,000〜49,000cps に調整して得た。
〔硬化剤組成物▲2▼〕
イミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ-CN)6.5 重量部。
【0023】
これらの樹脂組成物▲1▼および硬化剤組成物▲2▼それぞれを、隔離した状態に保持し、25℃で1か月間保存した。
【0024】
D.液状めっきレジスト調製用の原料組成物
〔樹脂組成物▲1▼〕
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬製)のエポキシ基50%をアクリル化した感光性付与のオリゴマー(分子量4000) 100重量部、メチルエチルケトンに溶解させた80重量%のビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル製、エピコート1001)32重量部、感光性モノマーである多価アクリルモノマー(日本化薬製、R604 )6.4 重量部、同じく感光性モノマーである多価アクリルモノマー(共栄社化学製、DPE6A )3.2 重量部を混合し、さらにレベリング剤(共栄社化学製、ポリフローNo.75 )を全重量 100重量部に対して 0.5重量部混合して攪拌混合して得た。
〔硬化剤組成物▲2▼〕
イミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ-CN)3.4 重量部、光開始剤(チバガイギー製、イルガキュア I−907 )2重量部、光増感剤(日本化薬製、DETX-S)0.2 重量部、NMP1.5 重量部を攪拌混合して得た。
【0025】
これらの樹脂組成物▲1▼および硬化剤組成物▲2▼それぞれを、隔離した状態に保持し、25℃で1か月間保存した。
【0026】
E.プリント配線板の製造
(1) 厚さ1mmのガラスエポキシ樹脂またはBT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂からなる基板1の両面に18μmの銅箔8がラミネートされている銅張積層板を出発材料とした(図1参照)。まず、この銅張積層板をドリル削孔し、無電解めっき処理を施し、パターン状にエッチングすることにより、基板の両面に内層銅パターン4とスルーホール9を形成した。
【0027】
(2) 内層銅パターン4およびスルーホール9を形成した基板を水洗いし、乾燥した後、酸化浴(黒化浴)として、NaOH(10g/l),NaClO2 (40g/l), Na3PO4(6g/l)、還元浴として、NaOH(10g/l),NaBH4 (6g/l)を用いた酸化−還元処理により、内層銅パターン4およびスルーホール9の表面に粗化層11を設けた(図2参照)。
【0028】
(3) Cの樹脂充填剤調製用の原料組成物を混合混練して樹脂充填剤10を得た。
(4) 前記(3) で得た樹脂充填剤10を、調製後24時間以内に基板の両面にロールコータを用いて塗布することにより、導体回路4間あるいはスルーホール9内に充填し、70℃,20分間で乾燥させ、他方の面についても同様にして樹脂充填剤10を導体回路4間あるいはスルーホール9内に充填し、70℃,20分間で加熱乾燥させた(図3参照)。
【0029】
(5) 前記(4) の処理を終えた基板の片面を、#600 のベルト研磨紙(三共理化学製)を用いたベルトサンダー研磨により、内層銅パターン4の表面やスルーホール9のランド表面に樹脂充填剤10が残らないように研磨し、次いで、前記ベルトサンダー研磨による傷を取り除くためのバフ研磨を行った。このような一連の研磨を基板の他方の面についても同様に行った。
次いで、100 ℃で1時間、120 ℃で3時間、 150℃で1時間、 180℃で7時間の加熱処理を行って樹脂充填剤10を硬化した(図4参照)。
【0030】
このようにして、スルーホール9等に充填された樹脂充填剤10の表層部および内層導体回路4上面の粗化層11を除去して基板両面を平滑化し、樹脂充填剤10と内層導体回路4の側面とが粗化層11を介して強固に密着し、またスルーホール9の内壁面と樹脂充填剤10とが粗化層11を介して強固に密着した配線基板を得た。即ち、この工程により、樹脂充填剤10の表面と内層銅パターンの表面が同一平面となる。ここで、充填した硬化樹脂のTg点は155.6 ℃、線熱膨張係数は44.5×10-6/℃であった。
【0031】
(6) 前記(5) の処理で露出した内層導体回路4およびスルーホール9のランド上面に厚さ 2.5μmのCu−Ni−P合金からなる粗化層(凹凸層)11を形成し、さらに、その粗化層11の表面に厚さ 0.3μmのSn層を設けた(図5参照、但し、Sn層については図示しない)。
その形成方法は以下のようである。即ち、基板を酸性脱脂してソフトエッチングし、次いで、塩化パラジウムと有機酸からなる触媒溶液で処理して、Pd触媒を付与し、この触媒を活性化した後、硫酸銅8g/l、硫酸ニッケル 0.6g/l、クエン酸15g/l、次亜リン酸ナトリウム29g/l、ホウ酸31g/l、界面活性剤 0.1g/l、pH=9からなる無電解めっき浴にてめっきを施し、銅導体回路4上面およびスルーホール9のランド上面にCu−Ni−P合金の粗化層11を形成した。ついで、ホウフッ化スズ0.1mol/l、チオ尿素1.0mol/l、温度50℃、pH=1.2 の条件でCu−Sn置換反応させ、粗化層11の表面に厚さ0.3 μmのSn層を設けた(Sn層については図示しない)。
【0032】
(7) Bの層間樹脂絶縁剤調製用の原料組成物を攪拌混合し、粘度1.5 Pa・sに調整して層間樹脂絶縁剤(下層用)を得た。
Aの無電解めっき用接着剤調製用の原料組成物を攪拌混合し、粘度7Pa・sに調整して無電解めっき用接着剤溶液(上層用)を得た。
【0033】
(8) 前記(6) の基板の両面に、前記(7) で得られた粘度 1.5Pa・sの層間樹脂絶縁剤(下層用)を調製後24時間以内にロールコータで塗布し、水平状態で20分間放置してから、60℃で30分の乾燥(プリベーク)を行い、絶縁剤層2aを形成した。
さらにこの絶縁剤層の上に前記(7) で得られた粘度7Pa・sの感光性の接着剤溶液(上層用)を調製後24時間以内に塗布し、水平状態で20分間放置してから、60℃で30分の乾燥(プリベーク)を行い、接着剤層2bを形成した(図6参照)。
【0034】
(9) 前記(8) で絶縁剤層2aおよび接着剤層2bを形成した基板の両面に、85μmφの黒円が印刷されたフォトマスクフィルムを密着させ、超高圧水銀灯により 500mJ/cm2 で露光した。これをDMTG溶液でスプレー現像し、さらに、当該基板を超高圧水銀灯により3000mJ/cm2 で露光し、100 ℃で1時間、120 ℃で1時間、その後 150℃で3時間の加熱処理(ポストベーク)をすることにより、フォトマスクフィルムに相当する寸法精度に優れた85μmφの開口(バイアホール形成用開口6)を有する厚さ35μmの層間樹脂絶縁層(2層構造)2を形成した(図7参照)。なお、バイアホールとなる開口には、スズめっき層を部分的に露出させた。
【0035】
(10)開口が形成された基板を、クロム酸に2分間浸漬し、層間樹脂絶縁層2の接着剤層2bの表面に存在するエポキシ樹脂粒子を溶解除去することにより、当該層間樹脂絶縁層2の表面を粗面とし、その後、中和溶液(シプレイ社製)に浸漬してから水洗いした(図8参照)。
さらに、粗面化処理(粗化深さ6μm)した該基板の表面に、パラジウム触媒(アトテック製)を付与することにより、層間樹脂絶縁層2の表面およびバイアホール用開口6に触媒核を付けた。
【0036】
(11)Dの液状めっきレジスト調製用の原料組成物を攪拌混合し、液状めっきレジストを得た。
(12)前記(10)で触媒核付与の処理を終えた基板の両面に、上記液状めっきレジストをロールコーターを用いて塗布し、60℃で30分間の乾燥を行い、厚さ30μmのレジスト層を形成した。次に、このレジスト層の上に、導体回路パターンの描画されたフォトマスクフィルムを載置して 400mJ/cm2 の紫外線を照射し、露光した。そして、フォトマスクフィルムを取り除いた後、レジスト層をDMTGで溶解現像し、基板上に導体回路パターン部の抜けためっき用レジストを形成し、さらに、超高圧水銀灯にて6000mJ/cm2 で露光し、100 ℃で1時間、その後、150 ℃で3時間の加熱処理を行い、層間樹脂絶縁層2の上に永久レジスト3を形成した(図9参照)。
【0037】
(13)上記永久レジスト3を形成した基板に、予め、めっき前処理(具体的には触媒核の活性化)を施し、その後、下記組成を有する無電解銅−ニッケル合金めっき浴を用いて一次めっきを行い、レジスト非形成部分に厚さ約1.7 μmの銅−ニッケル−リンめっき薄膜を形成した。このとき、めっき浴の温度は60℃とし、めっき浸漬時間は1時間とした。
【0038】
(14)一次めっき処理した基板を、前記めっき浴から引き上げて表面に付着しているめっき浴を水で洗い流し、さらに、その基板を酸性溶液で処理することにより、銅−ニッケル−リンめっき薄膜表層の酸化皮膜を除去した。その後、Pd置換を行うことなく、銅−ニッケル−リンめっき薄膜上に、下記組成の無電解銅めっき浴を用いて二次めっきを施すことにより、アディティブ法による導体層として必要な外層導体パターン5およびバイアホール(BVH )7を形成した。このとき、めっき浴の温度は50〜70℃とし、めっき浸漬時間は90〜360 分とした。
金属塩… CuSO4・5H2O : 8.6 mM
錯化剤…TEA : 0.15M
還元剤…HCHO : 0.02M
その他…安定剤(ビピリジル、フェロシアン化カリウム等):少量
析出速度は、6μm/時間
【0039】
(15)このようにしてアディティブ法による導体層(厚さ15μm程度)を形成した後、#600 のベルト研磨紙を用いたベルトサンダー研磨により、基板の片面を、永久レジスト3の表層とバイアホール7の銅の最上面とが揃うまで研磨した。引き続き、ベルトサンダーによる傷を取り除くためにバフ研磨を行った(バフ研磨のみでもよい)。そして、他方の面についても同様に研磨して、基板両面が平滑なプリント配線基板を形成した(図10参照)。
【0040】
(16)そして、硫酸銅8g/l、硫酸ニッケル 0.6g/l、クエン酸15g/l、次亜リン酸ナトリウム29g/l、ホウ酸31g/l、界面活性剤 0.1g/lからなるpH=9の無電解めっき液に浸漬し、厚さ3μmのCu−Ni−P合金からなる粗化層11を形成した(図11参照)。そしてさらに、前述の工程を繰り返すことにより、アディティブ法による導体層を更にもう一層形成し、このよにして配線層をビルドアップすることにより多層配線基板を得た。
【0041】
(17)一方、DMDGに溶解させた60重量%のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬製)のエポキシ基50%をアクリル化した感光性付与のオリゴマー(分子量4000)を 46.67g、メチルエチルケトンに溶解させた80重量%のビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル製、エピコート1001)15.0g、イミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ-CN)1.6 g、感光性モノマーである多価アクリルモノマー(日本化薬製、R604 )3g、同じく多価アクリルモノマー(共栄社化学製、DPE6A ) 1.5g、分散系消泡剤(サンノプコ社製、S−65)0.71gを混合し、さらにこの混合物に対して光開始剤としてのベンゾフェノン(関東化学製)を2g、光増感剤としてのミヒラーケトン(関東化学製)を 0.2g加えて、粘度を25℃で 2.0Pa・sに調整したソルダーレジスト組成物を得た。
なお、粘度測定は、B型粘度計(東京計器、 DVL-B型)で 60rpmの場合はローターNo.4、6rpm の場合はローターNo.3によった。
【0042】
(18)前記(16)で得た多層配線基板に、Pd触媒を付与し、この触媒を活性化した後、硫酸銅8g/l、硫酸ニッケル 0.6g/l、クエン酸15g/l、次亜リン酸ナトリウム29g/l、ホウ酸31g/l、界面活性剤 0.1g/l、pH=9からなる無電解めっき浴にてCu−Ni−P合金めっきを施し、導体回路表面に粗化層11を形成した。その多層配線基板の両面に、上記ソルダーレジスト組成物を20μmの厚さで塗布した。次いで、70℃で20分間、70℃で30分間の乾燥処理を行った後、円パターン(マスクパターン)が描画された厚さ5mmのフォトマスクフィルムを密着させて載置し、1000mJ/cm2 の紫外線で露光し、DMTG現像処理した。そしてさらに、80℃で1時間、 100℃で1時間、 120℃で1時間、 150℃で3時間の条件で加熱処理し、はんだパッド部分(バイアホールとそのランド部分を含む)を開口した(開口径 200μm)ソルダーレジスト層(厚み20μm)14を形成した。
【0043】
(19)次に、ソルダーレジスト層14を形成した基板を、塩化ニッケル30g/l、次亜リン酸ナトリウム10g/l、クエン酸ナトリウム10g/lからなるpH=5の無電解ニッケルめっき液に20分間浸漬して、開口部に厚さ5μmのニッケルめっき層15を形成した。さらに、その基板を、シアン化金カリウム2g/l、塩化アンモニウム75g/l、クエン酸ナトリウム50g/l、次亜リン酸ナトリウム10g/lからなる無電解金めっき液に93℃の条件で23秒間浸漬して、ニッケルめっき層15上に厚さ0.03μmの金めっき層16を形成した。
【0044】
(20)そして、ソルダーレジスト層14の開口部に、はんだペーストを印刷して 200℃でリフローすることによりはんだバンプ(はんだ体)17を形成し、はんだバンプ17を有するプリント配線板を製造した(図12参照)。
【0045】
(比較例1)
樹脂充填剤として、以下に示す成分組成のものを使用したこと以外は、実施例1と同様にして多層プリント配線板を製造した。
ビスフェノールF型エポキシモノマー(油化シェル製、分子量310 、YL983U) 100重量部、表面にシランカップリング剤がコーティングされた平均粒径 1.6μmのSiO2 球状粒子(アドマテック製、CRS 1101−CE、ここで、最大粒子の大きさは後述する内層銅パターンの厚み(15μm)以下とする)170 重量部およびイミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ-CN)6.5 重量部を混練して、樹脂充填剤を得た。
【0046】
この樹脂充填剤を25℃で1か月間保存したところ、硬化してしまい、塗布,充填することができなかった。
【0047】
(実施例2)(セミアディティブ)
A.無電解めっき用接着剤調製用の原料組成物
〔樹脂組成物▲1▼〕
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬製、分子量2500)の25%アクリル化物を濃度80wt%となるようにDMDGに溶解させた樹脂液を35重量部、感光性モノマー(東亜合成製、アロニックスM315 )3.15重量部、消泡剤(サンノプコ製、S−65)0.5 重量部、NMP3.6 重量部を攪拌混合して得た。
〔樹脂組成物▲2▼〕
ポリエーテルスルフォン(PES)12重量部、エポキシ樹脂粒子(三洋化成製、ポリマーポール)の平均粒径1.0 μmのものを 7.2重量部、平均粒径 0.5μmのものを3.09重量部を混合した後、さらにNMP30重量部を添加し、3本ロールで攪拌混合して得た。
〔硬化剤組成物▲3▼〕
イミダゾール硬化剤(四国化成製、 2E4MZ−CN)2重量部、光開始剤(チバガイギー製、イルガキュア I−907 )2重量部、光増感剤(日本化薬製、DETX-S)0.2 重量部、NMP 1.5重量部を攪拌混合して得た。
【0048】
これらの樹脂組成物▲1▼、樹脂組成物▲2▼および硬化剤組成物▲3▼それぞれを、隔離した状態に保持し、25℃で1か月間保存した。
【0049】
B.層間樹脂絶縁剤調製用の原料組成物
〔樹脂組成物▲1▼〕
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬製、分子量2500)の25%アクリル化物を濃度80wt%となるようにDMDGに溶解させた樹脂液を35重量部、感光性モノマー(東亜合成製、アロニックスM315 )4重量部、消泡剤(サンノプコ製、S−65)0.5 重量部、NMP 3.6重量部を攪拌混合して得た。
〔樹脂組成物▲2▼〕
ポリエーテルスルフォン(PES)12重量部、エポキシ樹脂粒子(三洋化成製、ポリマーポール)の平均粒径 0.5μmのものを 14.49重量部、を混合した後、さらにNMP30重量部を添加し、3本ロールで攪拌混合して得た。
〔硬化剤組成物▲3▼〕
イミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ −CN)2重量部、光開始剤(チバガイギー製、イルガキュア I−907 )2重量部、光増感剤(日本化薬製、DETX-S)0.2 重量部、NMP1.5 重量部を攪拌混合して得た。
【0050】
これらの樹脂組成物▲1▼、樹脂組成物▲2▼および硬化剤組成物▲3▼それぞれを、隔離した状態に保持し、25℃で1か月間保存した。
なお、上記層間樹脂絶縁剤は、接着剤層と絶縁剤層の2層で構成する層間樹脂絶縁層における下層の絶縁剤層として用いられる樹脂組成物である。
【0051】
C.プリント配線板の製造
(1) 実施例1の(1) 〜(6) の工程を実施した(図1〜5参照)。
(2) Bの層間樹脂絶縁剤調製用の原料組成物を攪拌混合し、粘度1.5 Pa・sに調整して層間樹脂絶縁剤(下層用)を得た。
Aの無電解めっき用接着剤調製用の原料組成物を攪拌混合し、粘度7Pa・sに調整して無電解めっき用接着剤溶液(上層用)を得た。
【0052】
(3) 基板の両面に、前記(2) で得られた粘度 1.5Pa・sの層間樹脂絶縁剤(下層用)を調製後24時間以内にロールコータで塗布し、水平状態で20分間放置してから、60℃で30分の乾燥(プリベーク)を行い、絶縁剤層2aを形成した。
さらにこの絶縁剤層の上に前記(2) で得られた粘度7Pa・sの感光性の接着剤溶液(上層用)を調製後24時間以内に塗布し、水平状態で20分間放置してから、60℃で30分の乾燥(プリベーク)を行い、接着剤層2bを形成した(図6参照)。
【0053】
(4) 前記(3) で絶縁剤層2aおよび接着剤層2bを形成した基板の両面に、85μmφの黒円が印刷されたフォトマスクフィルムを密着させ、超高圧水銀灯により 500mJ/cm2 で露光した。これをDMTG溶液でスプレー現像し、さらに、当該基板を超高圧水銀灯により3000mJ/cm2 で露光し、100 ℃で1時間、その後 150℃で5時間の加熱処理(ポストベーク)をすることにより、フォトマスクフィルムに相当する寸法精度に優れた85μmφの開口(バイアホール形成用開口6)を有する厚さ35μmの層間樹脂絶縁層(2層構造)2を形成した(図7参照)。なお、バイアホールとなる開口には、スズめっき層を部分的に露出させた。
【0054】
(5) 前記(4) の処理を施した基板を、クロム酸に1分間浸漬し、層間樹脂絶縁層2の接着剤層2bの表面に存在するエポキシ樹脂粒子を溶解除去することにより、当該層間樹脂絶縁層2の表面を粗面とし、その後、中和溶液(シプレイ社製)に浸漬してから水洗いした(図8参照)。
さらに、粗面化処理した該基板の表面に、パラジウム触媒(アトテック製)を付与することにより、層間樹脂絶縁層2の表面およびバイアホール用開口6の内壁面に触媒核を付けた。
【0055】
(6) 以下の組成の無電解銅めっき浴中に基板を浸漬して、粗面全体に厚さ1.6 μmの無電解銅めっき膜12を形成した(図13参照)。
〔無電解めっき液〕
EDTA 150 g/l
硫酸銅 20 g/l
HCHO 30 ml/l
NaOH 40 g/l
α、α’−ビピリジル 80 mg/l
PEG 0.1 g/l
〔無電解めっき条件〕
70℃の液温度で30分
【0056】
(7) 前記(6) で形成した無電解銅めっき膜12上に市販の感光性ドライフィルムを張り付け、マスクを載置して、100 mJ/cm2 で露光、0.8 %炭酸ナトリウムで現像処理し、厚さ15μmのめっきレジスト3を設けた(図14参照)。
【0057】
(8) ついで、レジスト非形成部分に以下の条件で電解銅めっきを施し、厚さ15μmの電解銅めっき膜13を形成した(図15参照)。
【0058】
(9) めっきレジストを5%KOHで剥離除去した後、そのめっきレジスト3下の無電解めっき膜12を硫酸と過酸化水素の混合液でエッチング処理して溶解除去し、無電解銅めっき膜12と電解銅めっき膜13からなる厚さ18μmの導体回路(バイアホールを含む)5を形成した(図16参照)。
【0059】
(10)導体回路5を形成した基板を、硫酸銅8g/l、硫酸ニッケル 0.6g/l、クエン酸15g/l、次亜リン酸ナトリウム29g/l、ホウ酸31g/l、界面活性剤 0.1g/lからなるpH=9の無電解めっき液に浸漬し、該導体回路5の表面に厚さ3μmの銅−ニッケル−リンからなる粗化層11を形成した(図17参照)。このとき、形成した粗化層をEPMA(蛍光X線分析装置)で分析したところ、Cu : 98mol%、Ni : 1.5 mol%、P: 0.5mol%の組成比であった。
さらに、ホウフッ化スズ0.1mol/l、チオ尿素1.0mol/l、温度50℃、pH=1.2 の条件でCu−Sn置換反応を行い、前記粗化層11の表面に厚さ 0.3μmのSn層を設けた(Sn層については図示しない)。
【0060】
(11)前記(2) 〜(10)の工程を繰り返すことにより、さらに上層の導体回路を形成し、多層プリント配線板を得た。但し、Sn置換は行わなかった(図18〜23参照)。
(12)さらに、実施例1の(17)〜(20)までを実施して、はんだバンプ17を有する多層プリント配線板を製造した。
【0061】
(比較例2)
樹脂充填剤として、以下に示す成分組成のものを使用したこと以外は、実施例2と同様にして多層プリント配線板を製造した。
ビスフェノールF型エポキシモノマー(油化シェル製、分子量310 、YL983U) 100重量部、表面にシランカップリング剤がコーティングされた平均粒径 1.6μmのSiO2 球状粒子(アドマテック製、CRS 1101−CE、ここで、最大粒子の大きさは後述する内層銅パターンの厚み(15μm)以下とする)170 重量部およびイミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ-CN)6.5 重量部を混練して、樹脂充填剤を得た。
【0062】
この樹脂充填剤を25℃で1か月間保存したところ、硬化してしまい、塗布,充填することができなかった。
【0063】
【発明の効果】
以上説明のように本発明によれば、充填剤保存時に不可避的に発生するその充填剤の硬化を抑制することができるので、樹脂充填剤の長期保存が可能となる。しかも、本発明によれば、粘度などの所定の物性を確保した樹脂充填剤を確実にプリント配線板の製造に提供できるので、その樹脂充填剤の調製方法は量産に適したものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図2】実施例における多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図3】実施例における多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図4】実施例における多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図5】実施例における多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図6】実施例における多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図7】実施例における多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図8】実施例における多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図9】実施例における多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図10】実施例における多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図11】実施例における多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図12】実施例における多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図13】実施例における多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図14】実施例における多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図15】実施例における多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図16】実施例における多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図17】実施例における多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図18】実施例における多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図19】実施例における多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図20】実施例における多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図21】実施例における多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図22】実施例における多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図23】実施例における多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図24】実施例における多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【符号の説明】
1 基板
2 層間樹脂絶縁層
2a 絶縁剤層
2b 接着剤層
3 めっきレジスト
4 内層導体回路(内層銅パターン)
5 外層導体回路(外層銅パターン)
6 バイアホール用開口
7 バイアホール(BVH )
8 銅箔
9 スルーホール
10 充填樹脂(樹脂充填剤)
11 粗化層
12 無電解銅めっき膜
13 電解銅めっき膜
14 ソルダーレジスト層
15 ニッケルめっき層
16 金めっき層
17 はんだバンプ
Claims (2)
- 予め下記の形態に調整された各組成物;
▲1▼.ビスフェノール型エポキシ樹脂および平均粒径0.1〜5μmである無機粒子を含む樹脂組成物、
▲2▼.硬化剤組成物、
を混合可能に準備し、かつ▲1▼樹脂組成物および▲2▼硬化剤組成物をそれぞれ隔離した状態に保持したことを特徴とする導体回路間およびスルーホール内に充填する樹脂充填剤調製用の原料組成物。 - ビスフェノール型エポキシ樹脂、無機粒子および硬化剤組成物を含む樹脂充填剤を調製するにあたり、
▲1▼.ビスフェノール型エポキシ樹脂および平均粒径0.1〜5μmである無機粒子を含む樹脂組成物、
▲2▼.硬化剤組成物、
を▲1▼樹脂組成物および▲2▼硬化剤組成物にそれぞれ隔離保存し、導体回路間およびスルーホール内に充填する樹脂充填剤として使用するその直前に、その隔離された状態にある上記各組成物を混合攪拌することを特徴とする樹脂充填剤の調製方法。
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