JP4037526B2 - ソルダーレジスト組成物およびプリント配線板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ソルダーレジスト組成物およびプリント配線板に関し、特に、熱サイクル特性に優れるソルダーレジスト組成物とこのソルダーレジスト組成物を用いたプリント配線板について提案する。
【0002】
【従来の技術】
近年、多層配線基板の高密度化という要請から、いわゆるビルドアップ多層配線基板が注目されている。このビルドアップ多層配線基板は、例えば特公平4−55555 号公報に開示されているような方法により製造される。即ち、コア基板上に、感光性の無電解めっき用接着剤からなる絶縁材を塗布し、これを乾燥したのち露光現像することにより、バイアホール用開口を有する層間絶縁材層を形成し、次いで、この層間絶縁材層の表面を酸化剤等による処理にて粗化したのち、その粗化面にめっきレジストを設け、その後、レジスト非形成部分に無電解めっきを施してバイアホール、導体回路を形成し、このような工程を複数回繰り返すことにより、多層化したビルドアップ配線基板が得られる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような多層プリント配線板では、表層に露出した導体回路を保護する目的と、電子部品を搭載する導体パッド表面に供給したはんだ体の流出やブリッジを防ぐ目的として、最外層にソルダーレジスト層が被覆される。その際、このソルダーレジスト層は、ICチップが搭載される導体パッドのみを露出する開口を設けて他の導体回路を保護する一方で、この開口にICチップを搭載するために供給されるはんだバンプと呼ばれる球状あるいは突起状のはんだ体のソルダーダムとして機能する。
【0004】
このようなソルダーレジスト層としては、Pbマイグレーションが発生しにくいフェノールノボラックやクレゾールノボラックのグリシジルエーテルを、アクリル酸やメタクリル酸などと反応させたエポキシ樹脂を主成分とする組成物を使用することが望ましい。しかしながら、このソルダーレジスト層は、樹脂を主成分としているので、ヒートサイクル試験時に導体層との熱膨張率の差に起因したクラックが発生しやすいという問題があった。
【0005】
本発明は、従来技術が抱える上述した問題を解消するためになされたものであり、その主たる目的は、ヒートサイクル条件下での耐クラック性に優れるソルダーレジスト組成物を開発することにある。
また本発明の他の目的は、ヒートサイクル試験においてソルダーレジスト層にクラックが発生しないヒートサイクル特性に優れるプリント配線板を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
発明者は、上記目的の実現に向け鋭意研究した結果、以下に示す内容を要旨構成とする本発明を完成するに至った。
(1) 本発明のソルダーレジスト組成物は、フェノールノボラックまたはクレゾールノボラックのグリシジルエーテルを、アクリル酸またはメタクリル酸と反応させてなるエポキシ樹脂と、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテルおよびポリエーテルイミドから選ばれる熱可塑性樹脂との樹脂複合体を主成分とし、その熱可塑性樹脂の配合割合が50wt%以下であることを特徴とする。
なお、上記(1) に記載のソルダーレジスト組成物において、前記熱可塑性樹脂は、ポリエーテルスルフォン(PES)であることが好ましい。
【0007】
(2) 本発明のプリント配線板は、導体回路を形成した配線基板の表面にソルダーレジスト層を有するプリント配線板において、前記ソルダーレジスト層は、フェノールノボラックまたはクレゾールノボラックのグリシジルエーテルを、アクリル酸またはメタクリル酸と反応させてなるエポキシ樹脂と、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテルおよびポリエーテルイミドから選ばれる熱可塑性樹脂との樹脂複合体を主成分とし、その熱可塑性樹脂の配合割合が50wt%以下であることを特徴とする。
【0008】
(3) また、本発明のプリント配線板は、導体回路を形成した配線基板に対し、その表面にソルダーレジスト層を設けると共にこのソルダーレジスト層に設けた開口部から露出する前記導体回路の一部をパッドとして形成し、そのパッド上にはんだ体を供給保持してなるプリント配線板において、前記ソルダーレジスト層は、フェノールノボラックまたはクレゾールノボラックのグリシジルエーテルを、アクリル酸またはメタクリル酸と反応させてなるエポキシ樹脂と、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテルおよびポリエーテルイミドから選ばれる熱可塑性樹脂との樹脂複合体を主成分とし、その熱可塑性樹脂の配合割合が50wt%以下であることを特徴とする。
【0009】
なお、上記(2) または(3) に記載のプリント配線板において、前記熱可塑性樹脂はポリエーテルスルフォン(PES)であることが好ましく、前記ソルダーレジスト層の熱膨張係数は 50ppm/℃以下であることが好ましい。また、前記導体回路の表面には、粗化層が形成されてなることが望ましく、その粗化層は、銅−ニッケル−リンからなる合金層であることが望ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のソルダーレジスト組成物は、フェノールノボラックまたはクレゾールノボラックのグリシジルエーテルを、アクリル酸またはメタクリル酸と反応させてなるエポキシ樹脂(以下、「エステル化されたノボラック型エポキシ樹脂」という)と、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテルおよびポリエーテルイミドから選ばれる熱可塑性樹脂との樹脂複合体を主成分とする樹脂組成物からなり、熱可塑性樹脂の配合割合がソルダーレジストの全固形分に対して50wt%以下:(熱可塑性樹脂/ソルダーレジストの樹脂粒子を除く全固形分)×100(wt%)である点に特徴がある。
これにより、この樹脂組成物を硬化したソルダーレジスト層は、熱膨張率が低下し、しかも熱可塑性樹脂に起因して剛性が向上するので、導体層との熱膨張率差に起因したクラックの発生を抑制でき、ヒートサイクル条件下での耐クラック性に優れる。
【0011】
このような構成のソルダーレジスト組成物を用いて形成したソルダーレジストを有する本発明のプリント配線板は、ヒートサイクル試験においてソルダーレジスト層にクラックが発生せずヒートサイクル特性に優れる。
【0012】
ここで、上記樹脂複合体を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリエーテルスルフォン(PES)やポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミドなどが用いられる。特に、耐熱性、耐薬品性に優れ、溶剤に溶けやすく混合しやすいという点で、ポリエーテルスルフォン(PES)がより好ましい。
【0013】
この熱可塑性樹脂の配合量は、ソルダーレジスト組成物の樹脂粒子を除く全固形分に対して好ましくは5〜40wt%、より好ましくは10〜30wt%とする。この理由は、配合量がこの範囲内にあれば、均一混合しやすく、また最も高い破壊靱性値が得られる範囲だからである。
【0015】
このような構成の樹脂複合体の硬化剤としては、種々のものを使用できるが、25℃で液状であるイミダゾール硬化剤を用いることが望ましい。粉末では均一混練が難しく、液状の方が均一に混練できるからである。
このような液状イミダゾール硬化剤としては、1-ベンジル- 2-メチルイミダゾール(品名:1B2MZ )、1-シアノエチル- 2-エチル- 4-メチルイミダゾール(品名:2E4MZ-CN)、4-メチル- 2-エチルイミダゾール(品名:2E4MZ )などを用いることができる。
このイミダゾール硬化剤の添加量は、上記ソルダーレジスト組成物の総固形分に対して1〜10重量%とすることが望ましい。この理由は、添加量がこの範囲内であれば均一混合しやすいからである。
【0016】
なお、本発明のソルダーレジスト組成物は、溶剤としてグリコールエーテル系溶剤を用い、その粘度を25℃で1〜10Pa・s、より好ましくは2〜3Pa・sとすることが好ましい。
このように25℃で1Pa・s以上の粘度に調整したソルダーレジスト組成物によれば、得られるソルダーレジスト層は、樹脂分子鎖同志の隙間が小さく、この隙間を移動するPbの拡散(鉛のマイグレーション)が少なくなる結果、プリント配線板のショート不良が低減される。また、上記ソルダーレジスト組成物の粘度が25℃で1Pa・s以上であれば、基板を垂直に立てた状態で両面同時に塗布してもその組成物が垂れることはなく、良好な塗布が可能となる。ところが、上記ソルダーレジスト組成物の粘度が25℃で10Pa・sを超えると、ロールコータによる塗布ができないので、その上限を10Pa・sとする。
さらに、溶剤としてグリコールエーテル系溶剤を使用すると、このような組成物を用いたソルダーレジスト層は、遊離酸素が発生せず、銅パッド表面を酸化させない。また、人体に対する有害性も少ない。
このようなグリコールエーテル系溶剤としては、下記構造式のもの、特に望ましくは、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)およびトリエチレングリコールジメチルエーテル(DMTG)から選ばれるいずれか少なくとも1種を用いる。これらの溶剤は、30〜50℃程度の加温により反応開始剤であるベンゾフェノンやミヒラーケトンを完全に溶解させることができるからである。
CH3O-(CH2CH2O) n −CH3 (n=1〜5)
このグリコールエーテル系溶剤は、ソルダーレジスト組成物の全重量に対して10〜40wt%がよい。
【0017】
以上説明したようなソルダーレジスト組成物には、その他に、各種消泡剤やレベリング剤、耐熱性や耐塩基性の改善と可撓性付与のために熱硬化性樹脂、解像度改善のために感光性モノマーなどを添加することができる。
さらに、ソルダーレジスト組成物には、色素や顔料を添加してもよい。配線パターンを隠蔽できるからである。この色素としてはフタロシアニングリーンを用いることが望ましい。
【0018】
特に、本発明では、ソルダーレジスト組成物には、分子量 500〜5000程度のアクリル酸エステルの重合体を添加することが望ましい。この重合体は、25℃で液状であり、上記エステル化されたノボラック型エポキシ樹脂と相溶しやすく、レベリング作用、消泡作用を持つからである。このため、形成されたソルダーレジスト層は、表面平滑性に優れ、はじきや気泡による凹凸もない。また、この重合体は、感光性樹脂成分との相溶性を有しており、樹脂成分中に分散して透光性を低下させないので、現像残りが発生しにくい。
【0019】
本発明に用いられるアクリル酸エステルの重合体は、炭素数1〜10のアルコール、およびアクリル酸、メタクリル酸もしくはその誘導体とのエステルの重合体であることが望ましい。本発明に用いられる炭素数1〜10、好ましくは炭素数3〜8のアルコールとしては、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、アミルアルコール等の一価アルコール、1,2-エタンジオール等の多価アルコール等が挙げられる。
【0020】
このアクリル酸エステルの重合体は、上記エステル化されたノボラック型エポキシ樹脂との相溶性に優れており、特に、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、ブチルアクリレート(BA)、エチルアクリレート(EA)およびヒドロキシエチルアクリレート(HEA)から選ばれるいずれか少なくとも1種以上のアクリル酸エステルの重合体が望ましい。2-エチルヘキシルアクリレートは、分岐しているため界面活性作用を付与でき、めっきレジストがゴミなどに弾かれることを防止する。また、ブチルアクリレートは、レベリング作用や消泡作用を担い、エチルアクリレートおよびヒドロキシエチルアクリレートは、相溶性を向上させると考えられる。前記4種のアクリレートは、それぞれ単独で重合させたものを単独または2種以上を併用するか、あるいは、前記4種のアクリレートから選ばれる2種以上のアクリレートを共重合させたものを単独または混合して使用してもよい。
【0021】
例えば、前記4種のアクリレートを全て使用する場合、それらの重量組成比は、2-エチルヘキシルアクリレート/ブチルアクリレートは40/60〜60/40が望ましく、2-エチルヘキシルアクリレートとブチルアクリレートの混合物/エチルアクリレートは90/10〜97/3、2-エチルヘキシルアクリレートとブチルアクリレートの混合物/ヒドロキシエチルアクリレートは95/5〜99/1が望ましい。
【0022】
このようなアクリル酸エステルの重合体の分子量は 500〜5000程度が好ましい。この範囲では、25℃において液状であり、ソルダーレジストを調製する際、感光性樹脂と混合しやすい。分子量が5000を超えると粘度が高くなり、レベリング作用や消泡作用が低下する。逆に分子量が 500未満では、レベリング作用や消泡作用がみられない。さらに、特に望ましいアクリル酸エステルの重合体の分子量は、2000〜3000である。この範囲では粘度が 250〜550cp (25℃)となり、さらにソルダーレジストを調製しやすくなる。
【0023】
アクリル酸エステルの重合体の添加量は、感光性樹脂成分 100重量部に対して 0.1〜5重量部、好ましくは 0.2〜1.0 重量部とすることが望ましい。 0.1重量部未満であるとレベリング作用や消泡作用が低下し、気泡に起因するPbマイグレーションやクラックが発生しやすく、逆に、5重量部を超えるとガラス転移点が低下して耐熱性が低下するからである。
【0024】
また本発明では、ソルダーレジスト組成物には、開始剤として下記化学式1の構造を持つ化合物、光増感剤として下記化学式2の構造を持つ化合物をを添加することが望ましい。これらの化合物は入手しやすく、また人体に対する安全性も高いからである。
【0025】
【化1】
【0026】
【化2】
【0027】
なお、添加成分として挙げた上記熱硬化性樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂を用いることができる。このビスフェノール型エポキシ樹脂には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型のエポキシ樹脂があり、耐塩基性を重視する場合には前者が、低粘度化が要求される場合(塗布性を重視する場合)には後者がよい。
【0028】
また、添加成分として挙げた上記感光性モノマーとしては、多価アクリル系モノマーを用いることができる。多価アクリル系モノマーは、解像度を向上させることができるからである。例えば、下記化学式3および化学式4に示すような構造の多価アクリル系モノマーが望ましい。ここで、化学式3は日本化薬製のDPE−6Aであり、化学式4は共栄社化学製のR−604である。
【0029】
【化3】
【0030】
【化4】
【0031】
さらに、ソルダーレジスト組成物には、ベンゾフェノン(BP)やミヒラーケトン(MK)を添加してもよい。これらは、開始剤、反応促進剤として作用するからである。
このBPとMKは、30〜70℃に加熱したグリコールエーテル系溶媒に同時に溶解させて均一混合し、他の成分と混合することが望ましい。溶解残渣がなく、完全に溶解できるからである。
【0032】
次に、本発明のプリント配線板は、導体回路を形成した配線基板の表面にソルダーレジスト層を有するプリント配線板において、前記ソルダーレジスト層を前述した本発明にかかるソルダーレジスト組成物を硬化させたもので構成したことを特徴とする。即ち、前記ソルダーレジスト層は、フェノールノボラックまたはクレゾールノボラックのグリシジルエーテルを、アクリル酸またはメタクリル酸と反応させてなるエポキシ樹脂(エステル化されたノボラック型エポキシ樹脂)と、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテルおよびポリエーテルイミドから選ばれる熱可塑性樹脂との樹脂複合体、より好ましくは上記エステル化されたノボラック型エポキシ樹脂とPESとの樹脂複合体を主成分とし、その熱可塑性樹脂の配合割合が50wt%以下である樹脂組成物の硬化物であることを特徴とする。
【0033】
本発明のプリント配線板において、配線基板は、特には限定されないが、表面が粗化処理された樹脂絶縁材上にめっきレジストが形成され、そのめっきレジストの非形成部分にパッドを含む導体回路が形成された、いわゆるアディティブプリント配線板、ビルドアップ多層プリント配線板であることが望ましい。
このような配線基板にソルダーレジスト組成物を塗布する場合、ソルダーレジスト層の開口径は、導体パッド径よりも大きくすることができる。これにより、樹脂であるめっきレジストは、はんだ体とはなじまずに該はんだ体を弾くため、はんだ体のダムとして作用する。
【0034】
本発明のプリント配線板において、ソルダーレジスト層の厚さは、5〜30μmとすることが望ましい。薄すぎるとはんだ体のダムとしての効果が低下し、厚すぎると現像処理しにくいからである。
【0035】
また、本発明のプリント配線板としてさらに好適な構成は、導体回路を形成した配線基板に対し、その表面にソルダーレジスト層を設けると共にこのソルダーレジスト層に設けた開口部から露出する前記導体回路の一部をパッドとして形成し、そのパッド上にはんだ体を供給保持してなるプリント配線板において、前記ソルダーレジスト層を本発明にかかるソルダーレジスト組成物を硬化させたもので構成すると共に、前記導体回路の表面には粗化層が形成されている構造である。
このような構造のプリント配線板では、パッド(ICチップや電子部品を搭載する部分)を含む導体回路の表面に形成した粗化層がアンカーとして作用するので、導体回路とソルダーレジスト層が強固に密着している。また、パッド表面に供給保持されるはんだ体の密着性も改善される。
また、特に、上記エステル化されたノボラック型エポキシ樹脂は、剛直骨格を持つため、耐熱性、耐塩基性には優れるが、フレキシビリティーに欠けるため、高温、多湿条件下での剥離が生じやすい。この点、導体回路の表面に粗化層を形成した上記構成によれば、このような剥離を防止することができる。
【0036】
ここで、上記粗化層は、研磨処理、エッチング処理、酸化還元処理およびめっき処理のいずれかにより形成されることが望ましい。これらの処理のうち、酸化還元処理は、NaOH(20g/l)、NaCl02(50g/l)、Na3PO4(15.0g/l)の水溶液を酸化浴(黒化浴)、NaOH( 2.7g/l)、NaBH4 ( 1.0g/l)の水溶液を還元浴として用い、めっき処理は、硫酸銅8g/l、硫酸ニッケル 0.6g/l、クエン酸15g/l、次亜リン酸ナトリウム29g/l、ホウ酸31g/lおよびアセチレン含有ポリオキシエチレン系の界面活性剤 0.1g/lの水溶液からなるpH=9の銅−ニッケル−リンめっき用の無電解めっき浴を用いることが望ましい。
特に、銅−ニッケル−リンめっきによる合金層の粗化層は、針状構造でソルダーレジスト層内にくい込むので、そのアンカー効果によってソルダーレジスト層との密着性向上に寄与するからである。また、この粗化層は、電気導電性であるので、パッド表面にはんだ体を形成しても除去する必要がない。
【0037】
前記粗化層を構成する合金層の組成は、銅、ニッケル、リンの割合で、それぞれ90〜96wt%、1〜5wt%、 0.5〜2wt%であることが望ましい。これらの組成割合のときに、針状の構造を有するからである。また、前記粗化層の厚さは、 0.5〜7μmであることが望ましい。厚すぎても薄すぎてもソルダーレジスト層やはんだ体との密着性が低下するからである。
【0038】
なお、パッド上にはんだ体を供給保持する場合には、そのパッド表面にニッケル−金めっきを施しておくとよい。ニッケル層は、銅との密着性を改善し、また金との密着性にも優れ、金層ははんだ体との馴染みがよいからである。
はんだ体は、層状であってもよく、ボール状のいわゆる「はんだバンプ」であってもよい。
【0039】
次に、本発明のプリント配線板を製造する一方法について説明する。
(1) まず、コア基板の表面に内層銅パターンを形成した配線基板を作製する。
このコア基板への銅パターンは、銅張積層板をエッチングして行うか、あるいは、ガラスエポキシ基板やポリイミド基板、セラミック基板、金属基板などの基板に無電解めっき用接着剤層を形成し、この接着剤層表面を粗化して粗化面とし、ここに無電解めっきを施す方法、もしくはその粗化面全体に無電解めっきを施し、めっきレジストを形成し、めっきレジスト非形成部分に電解めっきを施した後、めっきレジストを除去し、エッチング処理して、電解めっき膜と無電解めっき膜からなる導体回路を形成する方法、により形成される。
【0040】
さらに、上記配線基板の導体回路の表面に銅−ニッケル−リンからなる粗化層を形成することができる。
この粗化層は、無電解めっきにより形成される。この無電解めっき水溶液の液組成は、銅イオン濃度、ニッケルイオン濃度、次亜リン酸イオン濃度が、それぞれ 2.2×10-2〜4.1 ×10-2 mol/l、 2.2×10-3〜 4.1×10-3 mol/l、0.20〜0.25 mol/lであることが望ましい。
この範囲で析出する被膜の結晶構造は針状構造になるため、アンカー効果に優れるからである。この無電解めっき浴には上記化合物に加えて錯化剤や添加剤を加えてもよい。
粗化層の形成方法としては、この他に酸化−還元処理、銅表面を粒界に沿ってエッチングして粗化面を形成する方法などがある。
【0041】
なお、コア基板には、スルーホールが形成され、このスルーホールを介して表面と裏面の配線層を電気的に接続することができる。
また、スルーホールおよびコア基板の導体回路間には樹脂が充填されて、平滑性を確保してもよい。
さらに、コア基板には、その内層に導体回路を有していてもよく、その内層導体回路は、コア基板を貫通するスルーホールによりコア基板表面の導体回路と接続される。
さらに、スルーホールに、金属粒子、無機粒子、樹脂粒子を含む樹脂組成物が充填されて、その充填樹脂を被覆する導体層が形成されていてもよい。この導体層にバイアホールを接続させることができる。
【0042】
(2) 次に、前記(1) で作製した配線基板の上に、層間樹脂絶縁層を形成する。
本発明では、層間樹脂絶縁材として前述した無電解めっき用接着剤を用いることが望ましい。
【0043】
(3) 前記(2) で形成した無電解めっき用接着剤層を乾燥した後、必要に応じてバイアホール形成用開口を設ける。
このとき、感光性樹脂の場合は、露光,現像してから熱硬化することにより、また、熱硬化性樹脂の場合は、熱硬化したのちレーザー加工することにより、前記接着剤層にバイアホール形成用の開口部を設ける。
【0044】
(4) 次に、硬化した前記接着剤層の表面に存在するエポキシ樹脂粒子を酸あるいは酸化剤によって溶解または分解して除去し、接着剤層表面を粗化処理する。
ここで、上記酸としては、リン酸、塩酸、硫酸、あるいは蟻酸や酢酸などの有機酸があるが、特に有機酸を用いることが望ましい。粗化処理した場合に、バイアホールから露出する金属導体層を腐食させにくいからである。
一方、上記酸化剤としては、クロム酸、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウムなど)を用いることが望ましい。
【0045】
(5) 次に、接着剤層表面を粗化した配線基板に触媒核を付与する。
触媒核の付与には、貴金属イオンや貴金属コロイドなどを用いることが望ましく、一般的には、塩化パラジウムやパラジウムコロイドを使用する。なお、触媒核を固定するために加熱処理を行うことが望ましい。このような触媒核としてはパラジウムがよい。
【0046】
(6) 次に、無電解めっき用接着剤層表面に無電解めっきを施し、粗化面全面に、その粗面に沿って凹凸を有する薄膜の無電解めっき膜を形成する。このとき、無電解めっき膜の厚みは、 0.1〜5μm、より望ましくは 0.5〜3μmとする。
つぎに、無電解めっき膜上にめっきレジストを形成する。
めっきレジスト組成物としては、特にクレゾールノボラック型エポキシ樹脂やフェノールノボラック型エポキシ樹脂のアクリレートとイミダゾール硬化剤からなる組成物を用いることが望ましいが、他に市販品のドライフィルムを使用することもできる。
【0047】
(7) 次に、基板を10〜35℃、望ましくは15〜30℃の水で水洗する。
この理由は、水洗温度が35℃を超えると水が揮発してしまい、無電解めっき膜の表面が乾燥して、酸化してしまい、電解めっき膜が析出しない。そのため、エッチング処理により、無電解めっき膜が溶解してしまい、導体が存在しない部分が生じてしまう。一方、10℃未満では水に対する汚染物質の溶解度が低下し、洗浄力が低下してしまうからである。特に、バイアホールのランドの径が 200μm以下になると、めっきレジストが水をはじくため、水が揮発しやすく、電解めっきの未析出という問題が発生しやすい。
なお、洗浄水の中には、各種の界面活性剤、酸、アルカリを添加しておいてもよい。また、洗浄後に硫酸などの酸で洗浄してもよい。
【0048】
(8) 次に、めっきレジスト非形成部に電解めっきを施し、導体回路、ならびにバイアホールを形成する。
ここで、上記電解めっきとしては、銅めっきを用いることが望ましい。
【0049】
(9) さらに、めっきレジストを除去した後、硫酸と過酸化水素の混合液や過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどのエッチング液でめっきレジスト下の無電解めっき膜を溶解除去して、独立した導体回路とする。
【0050】
(10)次に、導体回路の表面に粗化層を形成する。
粗化層の形成方法としては、エッチング処理、研磨処理、酸化還元処理、めっき処理がある。
これらの処理のうち酸化還元処理は、NaOH(20g/l)、NaClO2(50g/l)、Na3PO4(15.0g/l)の水溶液を酸化浴(黒化浴)、NaOH( 2.7g/l)、NaBH4(1.0 g/l)の水溶液を還元浴とする。
また、銅−ニッケル−リン合金層からなる粗化層は、無電解めっき処理による析出により形成する。
この合金の無電解めっき液としては、硫酸銅1〜40g/l、硫酸ニッケル 0.1〜 6.0g/l、クエン酸10〜20g/l、次亜リン酸塩10〜100 g/l、ホウ酸10〜40g/l、界面活性剤(アセチレン含有ポリオキシエチレン系など)0.01〜10g/lの水溶液からなる液組成のめっき浴を用いることが望ましい。
【0051】
(11)次に、この基板上に層間樹脂絶縁層として、無電解めっき用接着剤層を形成する。
(12)さらに、 (3)〜(9) の工程を繰り返してさらに上層の導体回路を設け、はんだパッドとして機能する平板状導体パッドとバイアホールを形成し、多層配線基板を得る。
(13)ついで、導体パッドとバイアホール表面に粗化層を設ける。この粗化層の形成方法は、前記(10)で説明したものと同様である。
【0052】
(14)次に、こうして得られた配線基板の両面に、本発明にかかるソルダーレジスト組成物を塗布する。
ソルダーレジスト層を塗布する際に、前記配線基板は、垂直に立てた状態でロールコータの一対の塗布用ロールのロール間に挟み、下側から上側へ搬送させて基板の両面にソルダーレジスト組成物を同時に塗布することが望ましい。この理由は、現在のプリント配線板の基本仕様は両面であり、カーテンコート法(樹脂を滝のように上から下へ流し、この樹脂の”カーテン”に基板をくぐらせて塗布する方法)では、片面しか塗布できないからである。前述したソルダーレジスト組成物は、両面同時に塗布する上記方法のために使用できる。即ち、前述したソルダーレジスト組成物は、粘度が25℃で1〜10Pa・sであるため、基板を垂直に立てて塗布しても流れず、また転写も良好である。
【0053】
(15)次に、ソルダーレジスト組成物の塗膜を60〜80℃で5〜60分間乾燥し、この塗膜に、開口部を描画したフォトマスクフィルムを載置して露光、現像処理することにより、導体回路のうちパッド部分を露出させた開口部を形成する。このようにして開口部を形成した塗膜を、さらに80℃〜150 ℃で1〜10時間の熱処理により硬化させる。これにより、開口部を有するソルダーレジスト層は導体回路の表面に設けた粗化層と密着する。
【0054】
ここで、前記開口部の開口径は、パッドの径よりも大きくすることができ、パッドを完全に露出させてもよい。この場合、フォトマスクがずれてもパッドがソルダーレジストで被覆されることはなく、またソルダーレジストがはんだ体に接触せず、はんだ体にくびれが生じないため、クラックが発生しにくくなる。
逆に、前記開口部の開口径は、パッドの径よりも小さくすることができ、この場合、パッド表面の粗化層とソルダーレジストが密着する。また、いわゆるセミアディティブ法を採用する場合は、無電解めっき用接着剤の粗化層の深さが浅くなり(1〜3μm)、まためっきレジストがないのでパッドが剥離やすいが、ソルダーレジストの開口部の開口径を、パッドの径よりも小さくして、パッドの一部をソルダーレジスト層で被覆することにより、パッド剥離を抑制することができる。
【0055】
(16)次に、前記開口部から露出した前記はんだパッド部上に「ニッケル−金」の金属層を形成する。
【0056】
(17)前記開口部から露出した前記はんだパッド部上にはんだ体を供給する。
はんだ体の供給方法としては、はんだ転写法や印刷法を用いることができる。ここで、はんだ転写法は、プリプレグにはんだ箔を貼合し、このはんだ箔を開口部分に相当する箇所のみを残してエッチングすることによりはんだパターンを形成してはんだキャリアフィルムとし、このはんだキャリアフィルムを、基板のソルダーレジスト開口部分にフラックスを塗布した後、はんだパターンがパッドに接触するように積層し、これを加熱して転写する方法である。一方、印刷法は、パッドに相当する箇所に貫通孔を設けたメタルマスクを基板に載置し、はんだペーストを印刷して加熱処理する方法である。
【0057】
【実施例】
(実施例1)
A.上層の無電解めっき用接着剤の調製
▲1▼.クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬製、分子量2500)の25%アクリル化物を80wt%の濃度でDMDGに溶解させた樹脂液を35重量部、感光性モノマー(東亜合成製、アロニックスM315 )3.15重量部、消泡剤(サンノプコ製、S−65) 0.5重量部、NMPを 3.6重量部を攪拌混合した。
▲2▼.ポリエーテルスルフォン(PES)12重量部、エポキシ樹脂粒子(三洋化成製、ポリマーポール)の平均粒径1.0 μmのものを7.2 重量部、平均粒径 0.5μmのものを3.09重量部を混合した後、さらにNMP30重量部を添加し、ビーズミルで攪拌混合した。
▲3▼.イミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ-CN)2重量部、光開始剤(チバガイギー製、イルガキュア I−907 )2重量部、光増感剤(日本化薬製、DETX -S) 0.2重量部、NMP 1.5重量部を攪拌混合した。
これらを混合して2層構造の層間樹脂絶縁層を構成する上層側の接着剤層として用いられる無電解めっき用接着剤を調製した。
【0058】
B.下層の層間樹脂絶縁剤の調製
▲1▼.クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬製、分子量2500)の25%アクリル化物を80wt%の濃度でDMDGに溶解させた樹脂液を35重量部、感光性モノマー(東亜合成製、アロニックスM315 )4重量部、消泡剤(サンノプコ製、S−65)0.5 重量部、NMPを 3.6重量部を攪拌混合した。
▲2▼.ポリエーテルスルフォン(PES)12重量部、エポキシ樹脂粒子(三洋化成製、ポリマーポール)の平均粒径 0.5μmのものを14.49 重量部、を混合した後、さらにNMP30重量部を添加し、ビーズミルで攪拌混合した。
▲3▼.イミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ-CN)2重量部、光開始剤(チバガイギー製、イルガキュア I−907 )2重量部、光増感剤(日本化薬製、DETX-S)0.2 重量部、NMP1.5 重量部を攪拌混合した。
これらを混合して、2層構造の層間樹脂絶縁層を構成する下層側の絶縁剤層として用いられる樹脂組成物を調製した。
【0059】
C.樹脂充填剤の調製
▲1▼.ビスフェノールF型エポキシモノマー(油化シェル製、分子量310,YL983U) 100重量部、表面にシランカップリング剤がコーティングされた平均粒径 1.6μmのSiO2 球状粒子(アドマテック製、CRS 1101−CE、ここで、最大粒子の大きさは後述する内層銅パターンの厚み(15μm)以下とする) 170重量部、レベリング剤(サンノプコ製、ペレノールS4)1.5 重量部を3本ロールにて混練して、その混合物の粘度を23±1℃で45,000〜49,000cps に調整した。
▲2▼.イミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ-CN)6.5 重量部。
これらを混合して樹脂充填剤を調製した。
【0060】
D.プリント配線板の製造方法
(1) 厚さ1mmのガラスエポキシ樹脂またはBT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂からなる基板1の両面に18μmの銅箔8がラミネートされている銅張積層板を出発材料とした(図1参照)。まず、この銅張積層板をドリル削孔し、めっきレジストを形成した後、無電解めっき処理してスルーホール9を形成し、さらに、銅箔8を常法に従いパターン状にエッチングすることにより、基板1の両面に内層銅パターン4を形成した。
【0061】
(2) 内層銅パターン4およびスルーホール9を形成した基板を水洗いし、乾燥した後、酸化浴(黒化浴)として、NaOH(20g/l)、NaClO2(50g/l)の水溶液、Na3PO4(15.0g/l)、還元浴として、NaOH( 2.7g/l)、NaBH4 ( 1.0g/l)の水溶液を用いた酸化−還元処理により、内層導パターン4およびスルーホール9の表面に粗化層11を設けた(図2参照)。
【0062】
(3) 樹脂充填剤10を、基板の片面にロールコータを用いて塗布することにより、導体回路4間あるいはスルーホール9内に充填し、70℃, 20分間で乾燥させ、他方の面についても同様にして樹脂充填剤10を導体回路4間あるいはスルーホール9内に充填し、70℃, 20分間で加熱乾燥させた(図3参照)。
【0063】
(4) 前記(3) の処理を終えた基板の片面を、#600 のベルト研磨紙(三共理化学製)を用いたベルトサンダー研磨により、内層銅パターン4の表面やスルーホール9のランド表面に樹脂充填剤10が残らないように研磨し、次いで、前記ベルトサンダー研磨による傷を取り除くためのバフ研磨を行った。このような一連の研磨を基板の他方の面についても同様に行った。
次いで、 100℃で1時間、120 ℃で3時間、 150℃で1時間、 180℃で7時間の加熱処理を行って樹脂充填剤10を硬化した(図4参照)。
【0064】
このようにして、スルーホール9等に充填された樹脂充填剤10の表層部および内層導体回路4上面の粗化層11を除去して基板両面を平滑化し、樹脂充填剤10と内層導体回路4の側面とが粗化層11を介して強固に密着し、またスルーホール9の内壁面と樹脂充填剤10とが粗化層11を介して強固に密着した配線基板を得た。即ち、この工程により、樹脂充填剤10の表面と内層銅パターン4の表面が同一平面となる。ここで、充填した硬化樹脂のTg点は155.6 ℃、線熱膨張係数は44.5×10-6/℃であった。
【0065】
(5) 前記(4) の処理で露出した内層導体回路4およびスルーホール9のランド上面に、厚さ 2.5μmのCu−Ni−P合金からなる粗化層(凹凸層)11を形成し、さらに、その粗化層11の表面に厚さ 0.3μmのSn層を設けた(図5参照、但し、Sn層については図示しない)。
その形成方法は以下のようである。即ち、基板を酸性脱脂してソフトエッチングし、次いで、塩化パラジウムと有機酸からなる触媒溶液で処理して、Pd触媒を付与し、この触媒を活性化した後、硫酸銅8g/l、硫酸ニッケル 0.6g/l、クエン酸15g/l、次亜リン酸ナトリウム29g/l、ホウ酸31g/l、界面活性剤(日信化学工業製、サーフィノール 465) 0.1g/lの水溶液からなるpH=9の無電解めっき浴にてめっきを施し、銅導体回路4上面およびスルーホール9のランド上面にCu−Ni−P合金の粗化層11を形成した。次いで、ホウフッ化スズ0.1mol/l、チオ尿素1.0mol/lの水溶液を用い、温度50℃、pH=1.2 の条件でCu−Sn置換反応させ、粗化層11の表面に厚さ0.3 μmのSn層を設けた(Sn層については図示しない)。
【0066】
(6) 基板の両面に、Bの層間樹脂絶縁剤(粘度 1.5Pa・s)をロールコータで塗布し、水平状態で20分間放置してから、60℃で30分の乾燥を行い、絶縁剤層2aを形成した。
さらにこの絶縁剤層2aの上にAの無電解めっき用接着剤(粘度7Pa・s)をロールコータを用いて塗布し、水平状態で20分間放置してから、60℃で30分の乾燥を行い、接着剤層2bを形成し、厚さ35μmの層間樹脂絶縁層2を形成した(図6参照)。
【0067】
(7) 前記(6) で層間樹脂絶縁層2を形成した基板の両面に、85μmφの黒円が印刷されたフォトマスクフィルムを密着させ、超高圧水銀灯により 500mJ/cm2 で露光した。これをDMDG溶液でスプレー現像することにより、その層間樹脂絶縁層2に85μmφのバイアホールとなる開口を形成した。さらに、当該基板を超高圧水銀灯により3000mJ/cm2 で露光し、100 ℃で1時間、その後 150℃で5時間の加熱処理をすることにより、フォトマスクフィルムに相当する寸法精度に優れた開口(バイアホール形成用開口6)を有する厚さ35μmの層間樹脂絶縁層2を形成した(図7参照)。なお、バイアホールとなる開口には、スズめっき層を部分的に露出させた。
【0068】
(8) バイアホール形成用開口を形成した基板を、 800g/lのクロム酸水溶液に70℃で19分間浸漬し、層間樹脂絶縁層2の接着剤層2bの表面に存在するエポキシ樹脂粒子を溶解除去することにより、当該層間樹脂絶縁層2の表面を粗面(深さ3μm)とし、その後、中和溶液(シプレイ社製)に浸漬してから水洗いした(図8参照)。
さらに、粗面化処理した該基板の表面に、パラジウム触媒(アトテック製)を付与することにより、層間樹脂絶縁層2の表面およびバイアホール用開口6の内壁面に触媒核を付けた。
【0069】
(9) 以下の組成の無電解銅めっき水溶液中に基板を浸漬して、粗面全体に厚さ 0.6μmの無電解銅めっき膜12を形成した(図9参照)。このとき、めっき膜が薄いために無電解めっき膜表面には凹凸が観察された。
〔無電解めっき水溶液〕
EDTA 150 g/l
硫酸銅 20 g/l
HCHO 30 ml/l
NaOH 40 g/l
α、α’−ビピリジル 80 mg/l
PEG 0.1 g/l
〔無電解めっき条件〕
70℃の液温度で30分
【0070】
(10)前記(9) で形成した無電解めっき膜12上に市販の感光性ドライフィルムを張り付け、マスクを載置して、100 mJ/cm2 で露光、0.8 %炭酸ナトリウムで現像処理し、厚さ15μmのめっきレジスト3を設けた(図10参照)。
【0071】
(11)ついで、基板を50℃の水で洗浄して脱脂し、25℃の水で水洗後、さらに硫酸で洗浄してから、以下の条件で電解銅めっきを施し、厚さ15μmの電解銅めっき膜13を形成した(図11参照)。
【0072】
(12)めっきレジスト3を5%KOH水溶液で剥離除去した後、そのめっきレジスト3下の無電解めっき膜12を硫酸と過酸化水素の混合液でエッチング処理して溶解除去し、無電解銅めっき膜12と電解銅めっき膜13からなる厚さ18μmの導体回路(バイアホール7を含む)5を形成した。さらに、70℃で800g/l のクロム酸水溶液に3分間浸漬して、導体回路非形成部分に位置する導体回路間の無電解めっき用接着剤層の表面を1μmエッチング処理し、その表面に残存するパラジウム触媒を除去した(図12参照)。
【0073】
(13)導体回路5を形成した基板を、硫酸銅8g/l、硫酸ニッケル 0.6g/l、クエン酸15g/l、次亜リン酸ナトリウム29g/l、ホウ酸31g/l、界面活性剤(日信化学工業製、サーフィノール 465) 0.1g/lの水溶液からなるpH=9の無電解めっき液に浸漬し、該導体回路5の表面に厚さ3μmの銅−ニッケル−リンからなる粗化層11を形成した(図13参照)。このとき、形成した粗化層11をEPMA(蛍光X線分析装置)で分析したところ、Cu:98 mol%、Ni: 1.5 mol%、P: 0.5 mol%の組成比であった。
さらに、ホウフッ化スズ 0.1 mol/l、チオ尿素 1.0 mol/lの水溶液を用い、温度50℃、pH=1.2 の条件でCu−Sn置換反応を行い、前記粗化層11の表面に厚さ0.3 μmののSn層を設けた(Sn層については図示しない)。
【0074】
(14)前記 (6)〜(13)の工程を繰り返すことにより、さらに上層の導体回路を形成し、多層配線板を得た。但し、Sn置換は行わなかった(図14〜19参照)。
【0075】
(15)▲1▼.クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬製、分子量2500)の25%アクリル化物を80wt%の濃度でMDG(ジエチレングリコールジメチルエーテル)に溶解させた樹脂液を35重量部、感光性モノマー(東亜合成製、アロニックスM325)を4重量部、泡消剤(サンノプコ製、S−65)0.5重量部、NMP3.6重量部を混合攪拌した。
▲2▼.ポリエーテルスルフォン(PES)12重量部、エポキシ樹脂粒子(三洋化成製、ポリマーポール)の平均粒径0.5μmのものを14.49重量部を混合後、さらにNMP30重量部を添加し、ビーズミルで攪拌混合した。
▲3▼.イミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ-CN)2重量部、光開始剤(チバガイギー製、イルガキュアI-907)2重量部、光増感剤(日本化薬製、DETX-S) 0.2重量部、NMP1.5重量部を攪拌混合した。
▲1▼〜▲3▼を混合し、さらにNMP21重量部を添加して、粘度を25℃で1.4±0.3Pa・sに調整したソルダーレジスト組成物を得た。
なお、粘度測定は、B型粘度計(東京計器、 DVL-B型)で 60rpmの場合はローターNo.4、6rpm の場合はローターNo.3によった。また本実施例では、PESの配合量は、ソルダーレジストの全固形分(樹脂粒子を除く)に対して26.8wt%とした。
【0076】
(16)前記(14)で得られた多層配線基板の両面に、上記ソルダーレジスト組成物を20μmの厚さで塗布した。次いで、70℃で20分間、70℃で30分間の乾燥処理を行った後、円パターン(マスクパターン)が描画された厚さ5mmのフォトマスクフィルムを密着させて載置し、1000mJ/cm2 の紫外線で露光し、DMDG現像処理した。
そしてさらに、80℃で1時間、 100℃で1時間、 120℃で1時間、 150℃で3時間の条件で加熱処理し、はんだパッド部分が開口した(開口径 200μm)ソルダーレジスト層(厚み20μm)14を形成した(図20参照)。
【0077】
(17)次に、ソルダーレジスト層14を形成した基板を、塩化ニッケル30g/l、次亜リン酸ナトリウム10g/l、クエン酸ナトリウム10g/lの水溶液からなるpH=5の無電解ニッケルめっき液に20分間浸漬して、開口部に厚さ5μmのニッケルめっき層15を形成した。さらに、その基板を、シアン化金カリウム2g/l、塩化アンモニウム75g/l、クエン酸ナトリウム50g/l、次亜リン酸ナトリウム10g/lの水溶液からなる無電解金めっき液に93℃の条件で23秒間浸漬して、ニッケルめっき層15上に厚さ0.03μmの金めっき層16を形成した。
【0078】
(18)そして、ソルダーレジスト層14の開口部に、はんだペーストを印刷して 200℃でリフローすることによりはんだバンプ(はんだ体)17を形成し、はんだバンプ17を有するプリント配線板を製造した(図20参照)。
【0079】
(比較例1)
以下に示す成分組成のソルダーレジスト組成物を用いてソルダーレジスト層を形成したこと以外は、実施例1と同様にしてはんだバンプを有するプリント配線板を製造した。
DMDGに溶解させた60wt%のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬製)のエポキシ基50%をアクリル化した感光性付与のオリゴマー(分子量4000)を 46.67重量部、メチルエチルケトンに溶解させた80wt%のビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル製、エピコート1001)14.121重量部、イミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ-CN)1.6 重量部、感光性モノマーである多価アクリルモノマー(日本化薬製、R604 )1.5 重量部、同じく多価アクリルモノマー(共栄社化学製、DPE6A ) 3.0重量部、アクリル酸エステル重合物からなるレベリング剤(共栄社製、ポリフローNo.75 )0.36重量部を混合し、さらにこれらの混合物に対して光開始剤としてのイルガキュアI-907(チバガイギー製)2.0 重量部、光増感剤としてのDETX-S(日本化薬製)0.2 重量部を加えて、DMDG(ジエチレングリコールジメチルエーテル)1.0 重量部を加え、粘度を25℃で 1.4±0.3 Pa・sに調整したソルダーレジスト組成物を得た。
なお、粘度測定は、B型粘度計(東京計器、 DVL-B型)で 60rpmの場合はローターNo.4、6rpm の場合はローターNo.3によった。
【0080】
このようにして製造したプリント配線板について、−55〜125 ℃で1000回のヒートサイクル試験を実施し、光学顕微鏡によりソルダーレジスト層におけるクラック発生の有無を確認した。
【0081】
その結果を表1に示す。この表に示す結果から明らかなように、本発明のソルダーレジストは耐クラック性に優れている。
【0082】
【表1】
【0083】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のソルダーレジスト組成物によれば、エステル化されたノボラック型エポキシ樹脂と、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテルおよびポリエーテルイミドから選ばれる熱可塑性樹脂との樹脂複合体を主成分としているので、ソルダーレジスト層の熱膨張率が低下し、導体層との熱膨張率差に起因したクラックの発生を抑制でき、ヒートサイクル条件下での耐クラック性に優れるプリント配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるプリント配線板の一製造工程を示す図である。
【図2】本発明にかかるプリント配線板の一製造工程を示す図である。
【図3】本発明にかかるプリント配線板の一製造工程を示す図である。
【図4】本発明にかかるプリント配線板の一製造工程を示す図である。
【図5】本発明にかかるプリント配線板の一製造工程を示す図である。
【図6】本発明にかかるプリント配線板の一製造工程を示す図である。
【図7】本発明にかかるプリント配線板の一製造工程を示す図である。
【図8】本発明にかかるプリント配線板の一製造工程を示す図である。
【図9】本発明にかかるプリント配線板の一製造工程を示す図である。
【図10】本発明にかかるプリント配線板の一製造工程を示す図である。
【図11】本発明にかかるプリント配線板の一製造工程を示す図である。
【図12】本発明にかかるプリント配線板の一製造工程を示す図である。
【図13】本発明にかかるプリント配線板の一製造工程を示す図である。
【図14】本発明にかかるプリント配線板の一製造工程を示す図である。
【図15】本発明にかかるプリント配線板の一製造工程を示す図である。
【図16】本発明にかかるプリント配線板の一製造工程を示す図である。
【図17】本発明にかかるプリント配線板の一製造工程を示す図である。
【図18】本発明にかかるプリント配線板の一製造工程を示す図である。
【図19】本発明にかかるプリント配線板の一製造工程を示す図である。
【図20】本発明にかかるプリント配線板の一製造工程を示す図である。
【符号の説明】
1 基板
2 樹脂絶縁層
2a 絶縁剤層
2b 接着剤層
3 めっきレジスト
4 内層導体回路(内層銅パターン)
5 外層導体回路(外層銅パターン)
6 バイアホール用開口
7 バイアホール
8 銅箔
9 スルーホール
10 充填樹脂(樹脂充填剤)
11 粗化層
12 無電解めっき膜
13 電解めっき膜
14 ソルダーレジスト層
15 ニッケルめっき層
16 金めっき層
17 はんだバンプ
Claims (8)
- フェノールノボラックまたはクレゾールノボラックのグリシジルエーテルを、アクリル酸またはメタクリル酸と反応させてなるエポキシ樹脂と、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテルおよびポリエーテルイミドから選ばれる熱可塑性樹脂との樹脂複合体を主成分とし、その熱可塑性樹脂の配合割合が50wt%以下であることを特徴とするソルダーレジスト組成物。
- 前記熱可塑性樹脂がポリエーテルスルフォン(PES)であることを特徴とする請求項1に記載のソルダーレジスト組成物。
- 導体回路を形成した配線基板の表面にソルダーレジスト層を有するプリント配線板において、
前記ソルダーレジスト層は、フェノールノボラックまたはクレゾールノボラックのグリシジルエーテルを、アクリル酸またはメタクリル酸と反応させてなるエポキシ樹脂と、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテルおよびポリエーテルイミドから選ばれる熱可塑性樹脂との樹脂複合体を主成分とし、その熱可塑性樹脂の配合割合が50wt%以下であることを特徴とするプリント配線板。 - 導体回路を形成した配線基板に対し、その表面にソルダーレジスト層を設けると共にこのソルダーレジスト層に設けた開口部から露出する前記導体回路の一部をパッドとして形成し、そのパッド上にはんだ体を供給保持してなるプリント配線板において、
前記ソルダーレジスト層は、フェノールノボラックまたはクレゾールノボラックのグリシジルエーテルを、アクリル酸またはメタクリル酸と反応させてなるエポキシ樹脂と、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテルおよびポリエーテルイミドから選ばれる熱可塑性樹脂との樹脂複合体を主成分とし、その熱可塑性樹脂の配合割合が50wt%以下であることを特徴とするプリント配線板。 - 前記熱可塑性樹脂がポリエーテルスルフォン(PES)であることを特徴とする請求項3または4に記載のプリント配線板。
- 前記ソルダーレジスト層の熱膨張係数が 50ppm/℃以下であることを特徴とする請求項3または4に記載のプリント配線板。
- 前記導体回路の表面には、粗化層が形成されてなる請求項3または4に記載のプリント配線板。
- 前記粗化層は、銅−ニッケル−リンからなる合金層である請求項7に記載のプリント配線板。
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1998
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