JP3732483B2 - 扉の取手構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、システムキッチン等のキャビネットの開口部に開閉可能もしくは引き出し可能に配設される扉の取手構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の取手としては、例えば特許文献1に開示されている。この取手は、平板部と立板部とからなるベース部材と、このベース部材の平板部と立板部の形状に対応した係合溝部を有する取手部材とからなり、ベース部材の平板部を扉の上端部に上面側からネジで固定し、この扉に固定されたベース部材に取手部材の係合溝部を係合させることにより、取手部材をベース部材を介して扉の上端部に取り付けるようにしたものである。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−213111号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この取手構造にあっては、取手の扉の上端部への位置決め固定がベース部材の平板部のネジ固定によって行われるため、ベース部材の扉上端面への取付状態に、作業者による作業バラツキや扉の板厚のバラツキ等により、例えば取手の前面と扉の前面が面一状態にならず、扉の意匠的価値が劣る場合があるという問題点を有している。また、取手が長尺状のベース部材と取手部材の2つの部材で構成されているため、部材数が増えてコストアップになると共に、ベース部材を扉端部に取り付けた後に取手部材をベース部材に取り付ける必要があるため、取付作業性が劣るという問題点も有している。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、扉端部に確実かつ容易に位置決めしつつ精度良く取り付けできて扉の意匠的価値を向上させると共に、部材数を削減して取付作業性等を向上させ得る扉の取手構造を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、指掛部と平坦な扉取付面が形成された取付部とを有する取手本体と、該取手本体の扉取付面に立設された前壁及び後壁からなる嵌合部と、該嵌合部の後壁にその略立設方向に所定長さ延設された固定部と、を備え、前記嵌合部の前壁内面が扉表面に当接されると共に前記固定部が扉裏面に当接されて扉に固定される扉の取手構造であって、前記嵌合部と固定部の少なくとも一方に、嵌合部に嵌め込まれる扉端部の板厚に対応し得ると共に、嵌合部の後壁に設けられて固定部を傾動させ得る肉薄部もしくは軟質部で形成された板厚対応手段が設けられていることを特徴とする。
【0007】
このように構成することにより、扉の上端部等に取手本体の取付部の平坦な扉取付面が載置されて前壁と後壁からなる嵌合部が嵌め込まれると、前壁内面が扉表面に当接し、嵌合部の後壁から立設方向に延設された固定部の内面が扉裏面に当接し、この状態で固定部を例えばネジで扉端部裏面に固定することにより、取手が扉に取り付けられる。この時、嵌合部の前壁や後壁及び後壁に延設された固定部で取手が扉端部に位置決めされつつ嵌め込まれて、嵌合部や固定部で扉端部の表裏面が挟持される状態となることから、取手の前壁前面と扉表面とをその長手方向において均一状態で取り付けできて、扉の意匠的価値が向上すると共に、嵌合部と固定部を扉端部に嵌め込んで固定部を固定するだけで取手を扉に取り付けできて、取手の扉への取付作業性が向上する。また、嵌合部や固定部に板厚対応手段が設けられていることから、この板厚対応手段が例えば板厚自体のバラツキや設計上の狙い値の大小等による扉板厚の各種寸法に対応して、取手取付時の固定部と扉裏面間や前壁内面と扉表面間の隙間発生を確実に抑えることができ、取手の扉端部への取り付けが確実に行えると共に、取手取付部分の意匠的価値が一層向上する。さらに、前記板厚対応手段が嵌合部の後壁に設けられた肉薄部もしくは軟質部で形成されていることから、扉板厚に応じて肉薄部や軟質部で固定部が所定角度確実に傾動させられ、板厚対応手段の構成を簡略化しつつ取手の扉端部への取り付けが一層確実に行える。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、前記肉薄部が、嵌合部の後壁自体の肉厚及びまたは後壁に設けられた凹溝で形成されていることを特徴とする。このように構成することにより、嵌合部の後壁自体の肉厚や後壁に設けられた凹溝で肉薄部が形成されることから、例えば肉薄部を取手の成形時に後壁に簡単に形成できる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、前記軟質部が、少なくとも嵌合部の後壁を軟質性の樹脂で成形することにより形成されていることを特徴とする。このように構成することにより、嵌合部の後壁自体をエラストマー等の軟質性樹脂でまた他の部分をABS等の硬質性樹脂で二色成形することによって、少なくとも嵌合部の後壁自体に軟質部が形成されることから、軟質部を取手の成形時に同時でかつ簡単に形成できる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図4は、本発明に係わる取手構造を採用したシステムキッチンの一実施形態を示し、図1がその正面図、図2がその要部の縦断面図、図3が取手の正面図、図4が取手の取付方法を示す分解斜視図である。
【0011】
図1において、システムキッチン1は、室内床面2上に設置され上面にカウンター4が設けられると共に、このカウンター4の一端側にコンロ台5が設けられ他端側にシンク(図示せず)が設けられたベースキャビネット3と、このベースキャビネット3の上方に壁パネル6を介して設置されたウォールキャビネット7及びレンジフード8等を備えている。
【0012】
前記ベースキャビネット3のキャビネット本体3a(図2参照)の前面開口部には、その左端側に2個の大引き出し9aが設けられると共に、コンロ台5の下部にはガス下大引き出し9bが設けられ、このガス下大引き出し9bと一方の大引き出し9aとの間には三段引き出し9cが、それぞれ前方に引き出し可能に配設されている。そして、これらの大引き出し9a、9bや三段引き出し9cは、キャビネット本体3aの前面開口部を閉塞する扉10を有し、この扉10の上端部10aには長尺状の取手11がそれぞれ取り付けられている。
【0013】
この取手11は、図2及び図3に示すように、長尺状で側面視略コ字状の取手本体12と、この取手本体12に設けられた嵌合部13及び固定部14を有し、嵌合部13と固定部14は取手本体12に、例えばアルミニウムの押出し成形によって一体成形されている。
【0014】
前記取手本体12は、その背面が垂直な平面で内面が曲面に形成された立壁部12aと、この立壁部12aの上部に形成されたフック状の指掛部12bと、立壁部12aの下部に形成されその下面に平坦な扉取付面12dを有する取付部12cとを有している。そして、指掛部12bの先端部は下方に所定長さ突出すると共に先端が内側に指向した状態で外周面が丸みをおびた状態に形成され、この指掛部12bに指を掛けて図2の矢印ロの如く前方向や矢印ハの如く回動方向に取手11を引っ張り操作できるようになっている。また、取手本体12の指掛部12bの外周形状や立壁部12a内面の曲面形状及び取付部12cの先端角度のアール形状等により、取手本体12の指が接触する部分が曲面状に形成されて、取手11に指を掛けた場合の安全性が確保されるようになっている。
【0015】
前記嵌合部13は、取手本体12の扉取付面12dの前後方向(扉10の板厚方向)の端部に略鉛直方向に立設された前壁13aと後壁13bを有し、後壁13bの基部には外側に向けて断面略半円形の凹溝15aが形成され、この凹溝15aと前記後壁13bによって肉薄部15が形成されている。
【0016】
また、前記固定部14は、嵌合部13の後壁13bにその立設方向に沿って所定長さ延設される状態で形成され、その基部側14aの板厚は嵌合部13の後壁13bの板厚より厚く形成されている。また、固定部14には、その長手方向に沿って所定間隔位置に皿ネジ用の固定孔14bが複数個穿設されると共に、その先端部内面には前方に突出する状態で凸状14cが形成されている。この固定部14の凸状14cと前記嵌合部13の肉薄部15とによって本発明の板厚対応手段が構成されている。そして、この肉薄部15と凸状14cは、長尺状の取手本体12の長手方向全域に亘って形成されており、これにより、固定部14が肉薄部15を軸として図2の矢印イ方向に若干傾動し得るようになっている。
【0017】
なお、前記取手本体12、嵌合部13及び固定部14の長さL(図3及び図4参照)は、扉10の上端部10aの幅寸法W(図3及び図4参照)と略同一に設定されるが、例えば図3の二点鎖線で示すように、固定部14の長さL1を、扉10の形態等に応じて、取手本体12や嵌合部13の長さLより両端部において所定寸法L2短く設定することもできる。また、固定部14は、嵌合部13の後壁13bの肉厚や前記凹部15aの形状等からなる肉薄部15の形態を適宜に設定することで、その傾動動作を調整しても良い。
【0018】
さらに、図2に示すように、嵌合部13の前壁13a内面と後壁13b内面間の寸法w1は、扉10の板厚t(図4参照)より寸法α(例えばα=0.7mm程度)大きく、嵌合部13の前壁13a内面と固定部14の基部側14a内面間の寸法w2が例えば扉10の板厚tと同一で、嵌合部13の前壁13a内面と固定部14の凸状14c先端間の寸法w3が、扉10の板厚tより寸法β(例えばβ=0.3mm程度)小さくなるように設定されている。この寸法α及び寸法βの具体値は、使用する扉10の板厚t(=w2)が18.5mm程度の場合に好ましいが、扉10の板厚tによって適宜に増減することもできる。
【0019】
そして、この取手11は次のようにして扉10に取り付けられる。すなわち、図4に示すように、比較的長く長尺状に押出し成形された取手11を扉10の幅寸法Wに応じて切断して所定長さLにするか、あるいは予め扉10の幅寸法Wに応じた所定長さLに押出し成形された取手11を準備し、この取手11の嵌合部13を扉10の上端部10aに上方から矢印ニの如く嵌め込む。この嵌め込み時に、前壁13aと後壁13bの扉10の上端部10aへの嵌め込みで位置決めが簡単に行えると共に、嵌合部13(固定部14)の前記幅寸法w2が扉10の板厚tに対応して予め設定されていることから、扉10の上端部10aが基準寸法の場合は、固定部14の凸状14c部分が外側に若干押し広げられつつ嵌合部13が扉10の上端部10aに嵌め込まれて、凸状14c先端が扉裏面10cに当接し、また嵌合部13の前壁13a内面が扉表面10bに当接した状態となる。
【0020】
ところが、扉10の基材や表面材自体の板厚のバラツキ寸法あるいは表面塗装する場合の塗装のバラツキ寸法、製品のバリエーションアップを図るための板厚の設計上の狙い値の大小による各種板厚寸法等により、扉10の板厚tが例えば基準値(この例では18.5mm)より薄い場合は、取手11の固定部14を図2の二点鎖線で示すように(図では極端な例を示す)、矢印イ方向内側に傾動させた状態で嵌合部13を嵌め込むことにより、固定部14の凸状14c先端を扉裏面10cに当接させる。また、扉10の板厚tが例えば基準値より厚い場合は、扉10の上端部10aを嵌合部13に斜めからこじ開ける状態で嵌め込み、図示はしないが取手11の固定部14を板厚tが薄い場合と逆に矢印イ方向外側に傾動させることで、凸状14c先端を扉裏面10cに当接させた状態とする。
【0021】
つまり、取手11の固定部14が扉10の板厚tに応じて肉薄部15を軸として板厚t方向に傾動して変形されることにより、嵌合部13の前壁13a内面の扉表面10bへの隙間のない当接状態を維持しつつ、固定部14先端の凸状14cが扉裏面10cに当接した状態となる。なお、取手11の固定部14は、扉10への取り付け開始前である初期状態において、図2の実線で示す状態に設定することで、扉10の板厚バラツキ等の分布の中心に対応させて、ほとんどの扉10にそのままの状態で容易に取り付けるようにすることもできるが、例えば固定部14を初期状態において、図2の二点鎖線で示す位置に設定することで、固定部14の矢印イ方向外側への傾動動作により取手11を全ての扉10に取り付けるように構成することもできる。
【0022】
そして、この状態で、固定部14の固定孔14bから皿ネジ16を扉10にその扉裏面10c側から矢印ホの如くねじ込むことにより、固定部14から皿ネジ16が突出しない状態で固定部14が扉10に固定され、取手11が扉10の上端部10aに強固に取り付けられる。この取手11の取付状態において、扉10の板厚tに係わらず嵌合部13の前壁13a内面が扉表面10bに隙間なく当接すると共に、固定部14の少なくとも凸状14c先端が扉裏面10cに当接した状態となり、嵌合部13の前壁13aが扉表面10bから浮いた突出部分等がなくなり、扉10を前方から見た場合の取手11部分のデザイン性の向上が図れる。また、開放した扉10を側面から見た場合も、凸状14c先端が扉裏面10cに当接することにより発生する隙間が、凸状14cの高さ分(例えば0.3mm以下)であることから、デザイン的に悪影響を与えることもなく、意匠的に優れた扉10が得られることになる。
【0023】
このように取手11が取り付けられた扉10は、図2に示すように、取手本体12の立壁部12aの背面がキャビネット本体3aの前面に両面テープ等で固着された中空ゴム製のパッキン17に当接して、キャビネット本体3aの開口部が略密封状態とされたり、扉10を閉めた際の異音の発生が防止される。この時、立壁部12aの高さを所定(例えば30mm程度)に設定することで、その背面の所定位置にパッキン17を当接させることができて、取手11を各種大きさの開口部を有するキャビネット本体3aに適用できることになる。
【0024】
なお、以上の説明においては、取手11の固定部14先端の凸状14cを扉裏面10cに当接状態としたが、例えば扉10の特に裏面側の材質が柔らかい場合には、固定部14を皿ネジ16で固定した際に、凸状14cを扉裏面10c内に埋め込ませて固定部14の基部側14a内面を扉裏面10cに略当接させる状態とすることもできる。この場合は、取手11の取付強度が一層高まると共に、扉裏面10cの取手11部分のデザイン性が一層向上することになり、この時、固定部14に設けられる凸部としての凸状14cの代わりに、例えば固定部14の両端(もしくはその内側の所定間隔位置)に円錐形状の凸部としての突起を設けるようにすれば、突起の扉裏面10cへの埋め込みが容易となって、固定部14を扉裏面10cに一層確実に密着させることができる。
【0025】
また、以上の説明においては、取手11を扉10の上端部10aの幅寸法Wと略同一長さLの長尺状に形成して、扉10の上端部10a全域に亘って取り付けたが、例えば図1のウォールキャビネット7のように、観音開き式の扉10の場合に、扉10の開放側(反ヒンジ側)の下端部10dに取手11を所定長さ部分的に取り付けることもできるし、図の二点鎖線で示すように下端部10dの全域に亘って取手11を取り付け、取手11や扉表面10bの開放側に所定のマークを施す構成とすることもできる。この場合も、取手11はその長さLが異なるのみで、取手11自体の形状や扉10端部への取付構造は、前記ベースキャビネット3の取手11と全く同様にして行われる。
【0026】
このように、上記実施形態の取手11にあっては、取手11が扉10の上端部10aに嵌め込まれる前壁13aと後壁13bからなる嵌合部13を有すると共に、この嵌合部13の後壁13bに固定孔14bを有する固定部14が延設されているため、嵌合部13を扉10の上端部10aに嵌め込ませるだけで、嵌合部13の前壁13a内面を扉表面10bに当接させると共に、固定部14の内面を扉裏面10cに当接もしくは近接させることができる。その結果、取手11の上端部10aへの位置決めを簡単かつ確実に行うことができると共に、嵌合部13を上端部10aに嵌め込むだけで固定部14を自動的に扉裏面10cと対向させることができて、取手11自体の扉10への取付作業を極めて簡単に行うことができる。
【0027】
また、嵌合部13に凹溝15a等からなる板厚対応手段としての肉薄部15が設けられているため、扉10の板厚tに応じてこの肉薄部15を軸として固定部14を所定角度傾動させて、固定部14の内面を扉裏面10cに当接させることができ、扉10の板厚tのバラツキや設計上の狙い値の大小等に容易に対応しつつ取手11を所定強度で扉10に取り付けることができると共に、各種板厚(例えば17.9mm〜19.1mm)の扉10に容易に適用してそのバリエーションアップが容易に図れる等、システムキッチン1の設計上の自由度を高めることが可能になる。この場合、特に固定部14の先端内面に板厚対応手段として機能する凸状14cを設けることで、この凸状14cを扉10の板厚tに応じて扉裏面10cに確実に当接させることができて、扉10の板厚tの寸法(特にバラツキ等)に一層確実に対応することが可能になる。
【0028】
さらに、嵌合部13の前壁13aと固定部14とで扉10が挟持された状態で取り付けられるため、取手11が扉10の上端部10aで板厚方向にずれることがなくなり、取手11の取付状態の均一化を図ることができると共に、取手11の扉10への取付強度を向上させることができ、かつ、扉10の幅寸法Wと同一長さLの取手11によって、扉10の上端部10aの剛性を高めることもできて、長期に亘り使用してもそりや変形等のない信頼性の高い扉10を得ることが可能になる。
【0029】
また、嵌合部13と固定部14の各種寸法w1〜w3を扉10の板厚tに応じて適宜に設定することにより、嵌合部13を扉10の上端部10aに嵌合させて固定部14で固定した際に、嵌合部13の前壁13a内面を扉表面10bにその全長に亘って確実に密着させることができるため、取手11の前面となる前壁13a前面が扉表面10bから浮くこともなく、扉10を前方から視認した際の取手11部分の意匠的価値を高めることができる。また同時に、固定部14の凸状14cによって形成される隙間も僅かな寸法に設定できると共に、固定部14裏面への皿ネジ16の突出等がなくなるため、取手11側面や扉裏面10c側の意匠的価値の低下が防止されて、高級感が望まれるシステムキッチン1の各種扉10等に好適に使用することが可能になる。
【0030】
またさらに、取手本体12と嵌合部13及び固定部14がアルミニウムの押出し成形で一体成形されているため、取手11自体の構成を簡略化してそのコストダウンが図れると共に、扉10への取付作業性の向上等によるコストの低減化が図れ、取手11の安価な取付構造を得ることができる。また、取手11の取手本体12の指掛部12bの外周形状や立壁部12aの内面形状等が曲面状に形成されているため、取手11の使用時に指を傷付けることがなくなる等、取手11の安全性を十分に確保することができると共に、意匠的な向上をも同時に図ることが可能になる。
【0031】
また、取手本体12に前方向への引っ張りや回動方向への引っ張り操作が可能な指掛部12bが設けられているため、嵌合部13を扉10の上端部10aは勿論のこと、下端部10bに取り付けることで扉10の引き出し操作や回動操作を容易に行うことができると共に、取手本体12と嵌合部13の長さLが扉10の上端部10aの幅寸法Wと同一に設定されているため、嵌合部13を扉10の上端部10aに長手方向の位置決めを気にすることなく簡単に取り付けることができる。また、固定部14の長さを嵌合部13と同一か所定寸法短く設定することで、各種形態の扉10に所定の強度で取り付けできると共に、長尺状に形成された取手11を扉10の幅寸法Wに応じて切断して所定長さLとして使用することもでき、これらのことから、引き出し式や観音開き式等の各種形態の扉10に使用できる汎用性に高い取手11を得ることが可能になる。
【0032】
図5及び図6は、上記実施形態の変形例を示す要部の断面図である。以下、上記実施形態と同一部位には同一符号を付して説明する(以下の他の実施形態においても同様である)。先ず、図5に示す取手11の特徴は、その取手本体12の立壁部12aの背面に前記ゴム製のパッキン17に代わる円盤状のパッキン18を固定した点にある。このパッキン18は、例えば樹脂等によって形成され、接着や凹凸部による嵌め込み等によって立壁部12aに一体的に固着されている。この変形例においても、上記実施形態と同様の作用効果が得られる他に、キャビネット本体3a側への長尺状のパッキン17の貼付作業が不要となって、パッキン18の部分的な取り付けにより、その取付作業性が向上するという作用効果が得られる。
【0033】
また、図6に示す取手11の特徴は、嵌合部13の後壁13bと固定部14を、取手本体12の扉取付面12dの後端部より所定寸法前方に位置させて立設させた点にある。すなわち、前記取付部12cの扉取付面12dの前後方向の略中間位置に嵌合部13の後壁13bを立設させ、この後壁13bの下部に固定部14を一体的に形成する。この時、後壁13bには前記凹溝15aを設けることなく、後壁13b自体の板厚により前記肉薄部15が形成され、この後壁13b部分を軸として固定部14が所定角度傾動することになる。この変形例においても、嵌合部13の各種寸法w1〜w3を所定に設定することで上記実施形態と同様の作用効果が得られる他に、特に板厚tが薄い扉10に比較的大きな取手11を取り付けできて、その使い勝手が向上するという作用効果が得られる。
【0034】
図7及び図8は、本発明に係わる取手構造の他の実施形態を示すシステムキッチンの正面図及びそのA部の横断面図である。この実施形態の特徴は、ベースキャビネット3の扉10を観音開き式に構成し、この扉10の反ヒンジ側となる開放側の左右端部10e、10fに、その上下方向の全域に亘って取手11を取り付けた点にある。すなわち、図8に示すように、扉10の開放側である例えば右端部10fに取手11の嵌合部13を嵌め込んで、嵌合部13の前壁13a内面を扉表面10bに当接させると共に、固定部14の凸状14cを扉裏面10cに当接させ、固定部14の固定孔14bから皿ネジ16をねじ込むことによって、取手11が扉10に取り付けられる。
【0035】
この実施形態においても、取手11が扉10の左右端部10e、10fに上下方向に取り付けられる点で上記実施形態と異なるのみで、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。特に、この取手11が扉10の端部全域に上下方向に亘って取り付けられる実施形態の場合は、取手11の長手方向の上端や下端等を利用して扉10を開放することができて、扉10が縦方向に長い場合であっても扉開放時の操作性が向上したり、隣接する取手10によって観音開き式の合せ部を明瞭に把握できたり、全域に取り付けられた近接した一対の取手11によって合せ部の強度アップが図れる等の作用効果が得られる。
【0036】
図9は、本発明に係わる取手構造のさらに他の実施形態を示す図2と同様の縦断面図である。この実施形態の特徴は、上記実施形態の肉薄部15に代えて軟質部22を設けた点にある。すなわち、取手本体12の扉取付面12dの後端部に形成される嵌合部13の後壁13b及びこの後壁13bに延設される固定部14を軟質性の樹脂で、また取手本体12の取付部12cや嵌合部13の前壁13a等のその他の部分を硬質性の樹脂で二色成形することにより、少なくとも嵌合部13の後壁13b部分に軟質部22を形成する。
【0037】
この時、軟質性の樹脂で形成される後壁13bは、その板厚t1が固定部14の板厚t2より所定寸法薄く形成されることにより、後壁13b部分によって固定部14の凸状14cを有する先端部分が矢印イの如く傾動動作し得るように設定されている。また、軟質性樹脂としては、硬質性樹脂としてABSが使用される場合にエラストマーが使用され、硬質性樹脂として硬質塩ビが使用される場合に軟質塩ビが使用される。
【0038】
この実施形態においても、軟質部22による固定部14の傾動動作で、嵌合部13に嵌合される扉10の板厚t寸法のバラツキや設計上の狙い値による大小等に確実かつ容易に対応できて、上記実施形態と同様の作用効果を得ることが可能になる。また、軟質部22が成形と同時に硬質部としての取手本体12等に一体形成されることから、取手11の製造を容易かつ安価に行うことができるという作用効果も得られる。
【0039】
なお、この例の場合、嵌合部13の後壁13bの板厚t1を固定部14の板厚t2より薄くし、これらを軟質性樹脂で一体成形したが、例えば図10に示すように、後壁13bと固定部14の板厚を略同一としてこれらを軟質性樹脂で一体成形することもできるし、図11に示すように、固定部14の傾動動作の中心となる後壁13b部分のみを軟質性樹脂として硬質性樹脂からなる他の部分と一体成形することもできる。これらの場合、軟質部22としての後壁13bと固定部14の板厚が略同一であることから、後壁13bの基端部に凹溝23を形成して固定部14が傾動し易い構成とすることが好ましい。
【0040】
図12は、本発明に係わる取手構造のさらに他の実施形態を示す斜視図である。この実施形態の特徴は、取手11の固定部14を取手本体12の長手方向に沿って分割状態で設けると共に、固定部14に嵌合部13の前記後壁13bの機能を持たせるようにした点にある。すなわち、取手本体12の長手方向の両端部にその端部から所定寸法L2隔てて長さL3の固定部14をそれぞれ設けることにより、固定部14間に所定寸法L4のスリット20(切欠き)が形成されている。また、固定部14は、嵌合部13の後壁13bをそのまま立設方向に延設させることにより後壁13bと同一板厚に設定されて、前記肉薄状の後壁13bが無い状態とされると共に、各固定部14に一つの固定孔14bがそれぞれ設けられている。
【0041】
この実施形態の取手11においても、嵌合部13の前壁13a内面を扉表面10bに当接させた状態で固定部14の内面を扉裏面10cに当接させ、2個の固定部14により取手11を扉10の上端部10aに取り付けできて、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、固定部14間にスリット20が設けられているため、例えば図9の二点鎖線で示すように、取手11の長さL(扉上端部10aの幅W)が600mm以上の時に設けられる中仕切板21aを有する引き出し21の場合等に、中仕切板21aを固定部14間に位置させることができて、取手11を各種形態の引き出しの扉10に適用できることになる。
【0042】
また、この実施形態によれば、固定部14が寸法L3の分割状態とされているため、固定部14自体の剛性を全長に亘って設ける場合に比較して弱く設定でき、固定部14の傾動動作が調整されて、扉10の上端部10aの板厚バラツキ等に確実に対応することができる。また、固定部14が嵌合部13の後壁13bと同一板厚で一体形成され、固定部14が後壁13bの機能を兼ねることができるため、前記肉薄状の後壁13bや凹溝15aを設ける必要がなくなって、固定部14(嵌合部13の後壁13b)の構成を簡略化して、取手11を一層安価に形成することができる。
【0043】
この実施形態の場合、固定部14の基部側14aに嵌合部13の後壁13bの機能を持たせたが、例えば嵌合部13の後壁13bを取手本体12の全域に亘った設け、この後壁13bの長手方向に沿った一部に分割状の固定部14をそれぞれ設ける構成とすることもできる。また、固定部14の長さL3やその数、スリット20の形状やその数等も、取手本体12の長さLや扉10(引き出し)の形態等に応じて適宜に変更することができるし、分割状態の固定部14や嵌合部13の形状を上記各実施形態と同様の構成とすることもできる。
【0044】
なお、上記各実施形態においては、取手11に設けられた肉薄部15と固定部14の凸状14cの両者によって扉10の板厚tのバラツキを吸収したり設計上の狙い値に対応できる板厚対応手段を構成したが、本発明はこれに限定されず、いずれか一方のみの板厚対応収手段を採用することもできるし、他の適宜構成の板厚対応手段を採用することもできる。また、本発明は上記各実施形態のそれぞれに限定されるものでもなく、例えば図12に示す実施形態の固定部14を前述した各実施形態に適用する等、各実施形態を適宜に組み合わせることもできる。
【0045】
さらに、上記各実施形態においては、取手11をシステムキッチン1のベースキャビネット3やウォールキャビネット7の扉10に取り付ける場合について説明したが、例えばシステムキッチン1の各種ストッカーや収納庫、収納棚、ボードユニット等の扉、あるいはキッチン以外の収納庫の扉等、取手11を必要とするあらゆる扉に適用することができる。また、上記各実施形態における、取手11の全体形状、取手本体12や嵌合部13及び固定部14の形状等も一例であって、本発明に係わる各発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜に変更することができる。
【0046】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1に記載の発明によれば、取手本体の扉取付面に立設された前壁と後壁からなる嵌合部が設けられると共に、この嵌合部の後壁に固定部が延設されているため、嵌合部や固定部で取手を扉端部に位置決めしつつ嵌め込んで挟持でき、取手の前壁前面と扉表面の取付状態をその長手方向において隙間を生じさせることなく均一とし得る等、扉の意匠的価値を向上させることができると共に、嵌合部と固定部を扉端部に嵌め込んで固定部を扉端部に固定するだけで取手を扉に取り付けできて、取手の取付作業性を向上させることができる。また、嵌合部や固定部に板厚対応手段が設けられているた め、この板厚対応手段が例えば板厚自体のバラツキや設計上の狙い値の大小等による扉板厚の各種寸法に対応して、取手取付時の固定部と扉裏面間や前壁内面と扉表面間の隙間発生を確実に抑えることができ、取手の扉端部への取り付けを確実に行うことができると共に、取手取付部分の意匠的価値を一層向上させることができる。さらに、嵌合部の後壁に板厚対応手段としての肉薄部や軟質部が設けられているため、扉板厚に応じて肉薄部や軟質部で固定部を所定角度確実に傾動させることができて、板厚対応手段の構成を簡略化しつつ取手の扉端部への取り付けを一層確実に行うことができる。
【0047】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、肉薄部が嵌合部の後壁自体の肉厚及びまたは後壁に設けられた凹溝で形成されているため、例えば肉薄部を取手の成形時に後壁に簡単に形成することができる。
【0048】
また、請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、軟質部が少なくとも嵌合部の後壁を軟質性の樹脂で成形することにより形成されているため、軟質部を取手の成形時に同時にかつ簡単に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係わる取手構造を採用したシステムキッチンの一実施形態を示す正面図
【図2】 同その要部の縦断面図
【図3】 同取手の正面図
【図4】 同取手の取付方法を示す分解斜視図
【図5】 同取手の変形例を示す断面図
【図6】 同取手の他の変形例を示す断面図
【図7】 本発明に係わる取手構造の他の実施形態を示すシステムキッチンの正面図
【図8】 同そのA部の横断面図
【図9】 本発明に係わる取手構造のさらに他の実施形態を示す要部の縦断面図
【図10】 同その変形例を示す縦断面図
【図11】 同他の変形例を示す縦断面図
【図12】 本発明に係わる取手構造のさらに他の実施形態を示す背面側から見た斜視図
【符号の説明】
1・・・・・・・・・システムキッチン
3・・・・・・・・・ベースキャビネット
7・・・・・・・・・ウォールキャビネット
9a・・・・・・・・大引き出し
9b・・・・・・・・ガス下大引き出し
9c・・・・・・・・三段引き出し
10・・・・・・・・扉
10a・・・・・・・上端部
10b・・・・・・・扉表面
10c・・・・・・・扉裏面
10d・・・・・・・下端部
10e・・・・・・・左端部
10f・・・・・・・右端部
11・・・・・・・・取手
12・・・・・・・・取手本体
12a・・・・・・・立壁部
12b・・・・・・・指掛部
12c・・・・・・・取付部
12d・・・・・・・扉取付面
13・・・・・・・・嵌合部
13a・・・・・・・前壁
13b・・・・・・・後壁
14・・・・・・・・固定部
14a・・・・・・・基部側
14b・・・・・・・固定孔
14c・・・・・・・凸状
15・・・・・・・・肉薄部
15a・・・・・・・凹溝
17、18・・・・・パッキン
20・・・・・・・・スリット
21・・・・・・・・引き出し
23・・・・・・・・軟質部
24・・・・・・・・凹溝

Claims (3)

  1. 指掛部と平坦な扉取付面が形成された取付部とを有する取手本体と、該取手本体の扉取付面に立設された前壁及び後壁からなる嵌合部と、該嵌合部の後壁にその略立設方向に所定長さ延設された固定部と、を備え、前記嵌合部の前壁内面が扉表面に当接されると共に前記固定部が扉裏面に当接されて扉に固定される扉の取手構造であって、
    前記嵌合部と固定部の少なくとも一方に、嵌合部に嵌め込まれる扉端部の板厚に対応し得ると共に、嵌合部の後壁に設けられて固定部を傾動させ得る肉薄部もしくは軟質部で形成された板厚対応手段が設けられていることを特徴とする扉の取手構造。
  2. 前記肉薄部は、嵌合部の後壁自体の肉厚及びまたは後壁に設けられた凹溝で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の扉の取手構造。
  3. 前記軟質部は、少なくとも嵌合部の後壁を軟質性の樹脂で成形することにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の扉の取手構造。
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