JP3731668B2 - 画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明はプリンタ、ファクシミリ、複写機等に用いられる乾式電子写真技術を応用した画像形成装置に関するものであり、さらに詳しくは画像形成装置内における記録媒体の搬送技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
転写手段を備えた画像形成装置における記録紙給送手段の駆動力制御に関する従来技術として、特開平5−249784号公報では搬送経路に備えられた複数のローラで転写媒体を搬送しても転写媒体の撓みや引っ張りに起因する不具合を回避する技術が開示されている。
【0003】
この従来技術例を図19に示す。図19はプリンタ装置の概略構成を示す断面図である。図19において、プリンタ装置は図示しない乾式電子写真機構によってトナー像を保持する感光体101と転写媒体Wにトナー像を転写する転写ローラ102とで構成さる転写装置103と、転写装置103の搬入側に配置され転写媒体Wを転写装置103に搬入する第1のローラ104と、転写装置103の搬出側に配置され画像が転写された転写媒体Wを搬出する第2のローラ105とを備え、第1のローラ104および第2のローラ105の駆動によって転写媒体Wを搬送する。また、第1のローラ104および第2のローラ105の搬送作用部C,D間の距離Lを転写媒体Wの長さよりも短く設定し、第1のローラ104への駆動力を断続する駆動断続手段(図示せず)を設け、転写媒体Wの搬送方向前端部が第2のローラ105の搬送作用部Dに至ったことを判断して前述の駆動断続手段を制御し、第1のローラ104の駆動力を断つ制御手段を設けたことを特徴とし、加工精度等の理由で第1および第2のローラ外周速度が一致しない場合に、第1および第2のローラの駆動力が転写媒体に同時に作用しないか、あるいは同時に作用しても極めて短時間とすることで、転写媒体の撓みや引っ張りに起因する転写効率の低下、情報劣化、定着不良を回避する技術が開示されている。
【0004】
ここで、これらの従来技術の効果を検証するために発明者らが構成した画像形成装置の一例を説明する。
【0005】
図20は発明者らが構成した従来型画像形成装置の概略構成を示す断面図であり、具体的にはレーザー走査光学系を有するプリンタ装置である。この従来型画像形成装置の概略動作を図20に基づき説明する。
【0006】
図20において、図示しない駆動源により矢印E方向に回転する感光体101の外周には帯電手段として帯電ローラ106がある。帯電ローラ106は感光体101と当接し、図示しない高電圧電源から電圧を印加され、感光体表面を一様に帯電させる。帯電された感光体101は露光手段であるレーザー走査光学系107によって選択的に露光され、感光体101上に潜像を形成する。感光体101の表面に形成された潜像は現像手段である現像ローラ108で供給されるトナーによって顕像化される。転写手段である転写ローラ102は現像手段下流側で感光体101と当接し、図示しない高電圧電源から電圧を印加される。給紙手段は給紙ローラ109と分離パッド110、分離パッド110を給紙ローラ109へ付勢する分離バネ111によって構成され、給紙トレイ112に収納された記録紙113は給紙ローラ109、分離パッド110によって順次一枚分離して給送され、感光体101と転写ローラ102との間で挟持搬送される。転写手段で感光体101上のトナー像が転写された記録紙113は内部に棒状のハロゲンランプ114を備えたヒートローラ115とこれに加圧当接された加圧ローラ116で構成された定着手段に挟持搬送されてトナー像が定着され、装置外部へ排出される。
【0007】
また、転写バネ117および加圧バネ118は転写ローラ102および加圧ローラ116の記録媒体搬送幅方向の両端に位置し、転写ローラ102を感光体101へ、加圧ローラ116をヒートローラ115へそれぞれ加圧当接させるものである。各ローラの駆動方法は感光体101、現像ローラ108、ヒートローラ115が図示しない駆動源によって駆動され、帯電ローラ106は感光体101に、転写ローラ102は感光体101に、加圧ローラ116はヒートローラ115にそれぞれ従動する。また、給紙ローラ109は図示しないクラッチ機構を介して駆動源から動力が選択的に伝達できるように構成した。
【0008】
なお、記録紙113の位置検出手段として反射型フォトセンサを用いて転写前センサ119と転写後センサ120を設け、それぞれのセンサによって記録紙113の給送開始と定着手段への進入を図示しない制御回路へ信号を送るように構成した。
【0009】
この従来型画像形成装置の主な仕様を表1に示す。
【0010】
【表1】
【0011】
(検証実験例)
従来型画像形成装置により、前述の従来技術の開示内容を検証する実験を行った。実験は給紙ローラ109の給送を停止させるタイミングを記録紙先端が図11の感光体101と転写ローラ102の当接位置Gに至った時点とするか、ヒートローラ115と加圧ローラ116の当接位置Dに至った時点とするかで記録画像の状態を観察し、結果を表2に示す。なお、給紙ローラ109およびヒートローラ115の外周速度は感光体101の外周速度と略同一にした。
【0012】
【表2】
【0013】
表2において、環境IおよびJの条件下で給紙ローラ109をG位置にて停止させると、停止時にG位置に相当する記録画像先端部に記録画像が縮まる送りピッチムラが発生したが、給紙ローラ109をD位置にて停止させた場合には、停止時にG位置に相当する記録画像部分には極めて軽微な送りピッチムラが認められる程度であった。
【0014】
しかしながら、環境Kの条件下では給紙ローラ109の停止位置がG位置でもD位置でも停止時にG位置に相当する記録画像部分に記録画像が縮まる送りピッチムラが発生した。
【0015】
また、どの環境条件においても画像記録後の記録紙に皺が発生し、高温かつ高湿の環境となるほど皺の程度が顕著であった。皺の程度は記録紙の厚さとも関係しており、坪量60g/m2程度の薄い記録紙を用いた場合に特に顕著な皺が認められ、高温かつ高湿の条件になると厚い記録紙でも発生が確認された。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
前述の検証実験結果のように、従来技術は低温かつ低湿または常温かつ常湿の環境下では記録画像の送りピッチムラに対して効果があることが確認されたが、高温かつ高湿の環境下では送りピッチムラ解消効果が得られていない。また、記録紙定着皺も認められ、環境条件の変化によって良好な画像形成できないという課題がある。
【0017】
本発明は上記の課題を解決するもので、その目的とするところは、環境条件が変化しても良好な画像形成が可能な小型の画像形成装置を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明の画像形成装置は、感光体に当接し電圧を印加したローラにより前記感光体上に形成されたトナー像を記録紙へ転写する転写手段と、前記転写手段の記録紙搬送方向上流側に位置し、前記記録紙を前記転写手段方向に給送する給送手段と、前記給送手段の給送駆動力を断続する駆動力断続手段と、前記転写手段の記録紙搬送方向下流側に位置し、前記記録紙を前記転写手段から搬出する搬出手段を具備する画像形成装置において、
前記転写手段にゴム部を有する転写ローラを設け、前記転写ローラは転写軸受け部材を介して保持する保持部を有しており、前記転写ローラおよび前記転写軸受け部材の公差上の隙間c1と、前記転写軸受け部材および保持部の公差上の隙間c2が前記給送手段側に形成されており、前記給送手段から前記搬出手段に至る記録紙搬送経路の長さを前記記録紙長さよりも短く設定し、画像形成時に前記転写手段と前記搬出手段が前記記録紙を共同して搬送する状態で前記駆動力断続手段が前記給送手段の駆動力を断つ制御手段を設けたことを特徴とする。
【0019】
また、転写手段の記録紙搬送力をFt、搬出手段の記録紙搬送力をFfとしたときに、画像形成時に転写手段と搬出手段が前記Ftを補助する方向にFfを作用させて記録紙を共同して搬送し、前記記録紙の先端が前記搬出手段の中心に達する時間よりも長い時間経過後に前記搬出手段を停止させることを特徴とする。さらに、給送手段が複数枚の記録紙を収納し、順次一枚分離して給送する給紙装置であることを特徴とし、搬出手段が前記記録紙上に転写されたトナー像を加熱加圧して前記記録媒体へ定着する定着装置であることを特徴とする。
【0020】
【作用】
本発明の画像形成装置によれば、転写手段の構成に工夫を加えると共に、転写手段と搬出手段の記録紙搬送力を共同して作用させ、環境条件が変化しても転写手段と搬出手段の間で記録紙を適度に伸張させ、転写手段と搬出手段が記録紙を共同して搬送する状態で給送手段の駆動力を断つことにより、搬出手段で発生する記録紙皺を防止すると共に転写手段に加わる記録紙の張力変化が軽減され、記録紙皺や送りピッチムラが発生しない小型の画像形成装置を提供することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、実施例に基づき本発明を詳しく説明する。
【0022】
図1は本発明の画像形成装置の全体構造を説明する装置横断面図である。本装置の概略動作を図1によって説明する。
【0023】
図1において、図示しない駆動源により矢印A方向に回転する感光体2の外周には帯電手段として帯電ローラ3がある。帯電ローラ3は感光体2と当接しながら図示しない高電圧電源から電圧を印加され、感光体表面を一様に帯電させる。帯電された感光体2は露光手段であるレーザー走査光学系4によって選択的に露光され、感光体2上に潜像を形成する。感光体2の表面に形成された潜像は現像手段である現像ローラ5で供給されるトナーによって顕像化される。転写手段である転写ローラ6は転写バネ13で付勢され、現像手段下流側で感光体2と当接し、図示しない高電圧電源から電圧を印加される。
【0024】
一方、給紙トレイ8内の給紙底板9の上に積み重ねて収納された記録紙1は給紙バネ10で付勢され、また、コルク材やウレタン発泡材を用いた分離パッド12を保持して揺動するパッドベース25は分離バネ11で付勢され、それぞれ給紙手段である給紙ローラ7に当接し、給紙ローラ7の回転によって記録紙1が順次一枚分離して給送される。
【0025】
給送された記録紙1は感光体2と転写ローラ6との間で挟持されつつトナー像が記録紙1へ転写され、引き続いて定着手段へ向けて搬送される。
【0026】
定着手段は内部に棒状のハロゲンランプ14を備えたヒートローラ15と、加圧バネ16で付勢されてヒートローラ15に加圧当接する加圧ローラ17で構成され、トナー像が転写された記録紙1を加熱加圧しながら挟持搬送してトナー像を定着する。
【0027】
さらに、トナー像が定着された記録紙1は排紙上ローラ18および排紙下ローラ19によって搬送され、画像記録面が下向きとなるように装置外部へ排出される。
【0028】
また、本実施例は記録紙上への画像形成タイミング制御を目的として紙搬送経路途中に2つの紙検出手段を具備している。
【0029】
まず、第1の紙検出手段として給紙センサレバー20と給紙センサ21があり、給紙ローラ7によって給送された記録紙1によって給紙センサレバー20が揺動し、基板24上に実装された透過型フォトマイクロセンサである給紙センサ21によって電気的信号に変換し、図示しない制御回路に記録紙の給送開始および終了信号を伝達する。
【0030】
さらに、第2の紙検出手段として排紙センサレバー22と排紙センサ23があり、定着手段から搬出される記録紙1によって排紙センサレバー22が揺動し、基板24上に実装された透過型フォトマイクロセンサである排紙センサ23によって電気的信号に変換し、図示しない制御回路に記録紙の定着手段からの排出開始および終了信号を伝達する。
【0031】
次に、本画像形成装置において記録紙搬送をする主なローラの駆動方法について説明する。図2は本画像形成装置の記録紙搬送をする主なローラの構成を示す斜視図である。
【0032】
図2において、給紙ローラ7は図示しない駆動源がクラッチギア27を駆動し、電磁クラッチ26を図示しない制御回路が作動させることによって回動が可能となり、非作動状態では駆動源とは無関係に回動自在となる。
【0033】
また、感光体2は図示しない駆動源が感光体ギア28を駆動することによって回動し、転写ローラ6は感光体2の駆動力が転写駆動ギア29および転写従動ギア30で伝達されることにより回動する。転写駆動ギア29および転写従動ギア30は感光体2と転写ローラ6の当接を阻害しないように歯形形状や転移量を適宜選択する必要がある。なお、本例の転写手段では記録紙1が感光体2と転写ローラ6の間に進入または離脱する時に感光体2が受ける回転方向の衝撃によって生じる画像の乱れを軽減するため、感光体2と転写ローラ6の周速度は等しく設定した。
【0034】
さらに、ヒートローラ15は図示しない駆動源が定着駆動ギア31を駆動することによって回動し、加圧ローラ17は加圧バネ16の付勢力でヒートローラ15に当接し従動するものである。
【0035】
次に、図2の各ローラの配置間隔について説明する。図3は本画像形成装置の記録紙を搬送する主なローラの配置間隔を示す概略断面図である。
【0036】
図3において、給紙トレイ8内に収納された記録紙1の先端位置をP、感光体2と転写ローラ6のニップ中心位置をQ、ヒートローラ15と加圧ローラ17のニップ中心位置をSとし、PからQに至る記録紙の搬送経路長さを給紙・転写間距離L3、QからSに至る記録紙の搬送経路長さを転写・定着間距離L4、PからSに至る記録紙の搬送経路長さを画像形成経路長さL2と定義する。本例の画像形成装置は画像形成経路長さL2を記録紙長さL1よりも短く設定することにより装置全体を極めてコンパクトな構成としている。
【0037】
ここで、本装置の主な仕様を表3に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
ここで、転写手段の記録紙搬送力Ftおよび記録紙搬送速度Vt、定着手段の記録紙搬送力Ffおよび記録紙搬送速度Vfの測定方法について説明する。
【0040】
図4は転写手段の記録紙搬送力Ftの測定方法を示す斜視図である。図4において、Ftは本例の転写手段を装置外へ取り外し、感光体2と転写ローラ6を画像形成時と同一周速度で回転させ、記録紙1の端部が固定されたパイプ材32の両端にロープ33を接続し、ロープ33を介して図示しないテンションゲージによって測定される記録紙1の動的搬送力とした。なお、Ftの値は理論的にも推定が可能で、転写バネ13のバネ力、記録紙1と感光体2の摩擦係数、記録紙1と転写ローラ6の摩擦係数、転写ローラ6のニップ幅などから算出することができる。
【0041】
また、転写手段の記録紙搬送速度Vtは感光体2と転写ローラ6を画像形成時と同一速度で回転させて搬送した時の記録紙1の移動速度をレーザードップラー型速度計で計測した。
【0042】
定着手段の記録紙搬送力Ffおよび記録紙搬送速度Vfについても転写手段の場合と同じ方法で測定が可能であり、説明は省略する。
【0043】
以上述べてきた画像形成装置によって画像形成を行い、記録画像の送りピッチムラや記録紙定着皺に関する評価をした。
【0044】
まず、記録画像の送りピッチムラに関する検討を行った。検証実験の環境IおよびJにおいて給紙ローラの給送終了タイミングを変えると送りピッチムラの程度が異なったことに着目し、以下に示す実験例1および2のようなタイミング制御で本例の画像形成装置を動作させ、転写手段付近における記録紙の挙動と転写手段構成部品の挙動を観察した。
【0045】
(実験例1)
図5は実験例1における給紙ローラ7の制御を示すタイミングチャートである。図5において駆動源が動力供給を開始した後に電磁クラッチ26を作動させて記録紙1の給送を開始し、記録紙1の先端を給紙センサ21が検出してから感光体2と転写ローラ6のニップ中心位置Qを通過する時間T1を経過した後に給紙ローラ7の給送を停止させた。なお、給紙手段、転写手段、定着手段の記録紙搬送速度は可能な限り一致させた。
【0046】
本実験例で転写手段付近の記録紙1の挙動と転写手段構成部品の挙動を観察した所、次のような送りピッチムラの原因があることが判明した。
【0047】
まず、第1の原因として軟質な転写ローラ6のゴム部にねじれが発生しやすいことが挙げられる。
【0048】
図6は本実験例で記録紙1の先端がQ位置に達した時点における転写ローラ6のゴム部の挙動を示す部分断面図であり、図7は本実験例で給紙ローラ7の給送を停止した時点における転写ローラ6のゴム部の挙動を示す部分断面図である。
【0049】
図6で転写ローラ6のゴム部にはローラの駆動に伴って破線のようなねじれが生じているが、給紙ローラ7の駆動力を解除されると給紙バネ10および分離バネ11の付勢力によって記録紙1には進行方向とは逆向きの搬送抵抗Rsが発生する。この搬送抵抗Rsによって図7のように転写ローラ6のゴム部に加わるねじれが破線の如く図6よりも増大することが判明した。
【0050】
また、第2の原因として転写ローラ6の保持部の隙間が片寄りやすいことが挙げられる。
【0051】
図8は本実験例で記録紙1の先端がQ位置に達した時点における転写ローラ6の保持部の挙動を示す部分断面図であり、図9は本実験例で給紙ローラ7の給送を停止した時点における転写ローラ6の保持部の挙動を示す部分断面図である。
【0052】
図8では転写ローラ6の駆動力によって転写ローラ6と転写軸受け34の公差上の隙間c1および転写軸受け34とシャーシ35の公差上の隙間c2は給紙手段側に片寄っているが、前述の搬送抵抗Rsが加わった瞬間に図9のように隙間c1およびc2が定着手段方向に片寄ることが判明した。
【0053】
これらの原因によって転写ニップ中心位置Qの近傍で記録画像が縮む送りピッチムラが発生することが判明した。
【0054】
この送りピッチムラは給紙バネ10および分離バネ11の付勢力を下げたり、カム機構等を用いて付勢を解除することで改善されるが、多少のカールを有する記録紙や厚い記録紙を給送するためには表3に示す程度の付勢力が必要であり、カム機構を用いると装置の構造が複雑になるという課題が新たに生ずる。
【0055】
(実験例2)
図10は実験例2における給紙ローラー7の制御を示すタイミングチャートである。図10において駆動源が動力供給を開始した後に電磁クラッチ26を作動させて記録紙1の給送を開始し、記録紙1の先端を給紙センサ21が検出してからヒートローラ15と加圧ローラ17のニップ中心位置Sを通過する時間T2を経過した後に給紙ローラ7の給送を停止させた。なお、実験例1と同様に給紙手段、転写手段、定着手段の記録紙搬送速度は可能な限り一致させた。また、T2は記録紙1の先端が定着ニップ中心Sに達する時間よりも長めに設定し、ヒートローラ15と加圧ローラ17が記録紙1に対して充分な搬送力を発揮した後であることが望ましく、本例では記録紙1の先端が定着ニップ中心Sを5mm以上通過した時点に設定した。
【0056】
本実験例で転写手段付近の記録紙1の挙動と転写手段構成部品の挙動を観察した所、実験例1で判明した送りピッチムラ原因が大幅に軽減されることが判明した。
【0057】
図11は本実験例で給紙ローラ7の給送を停止した時点における転写ローラ6のゴム部の挙動を示す部分断面図である。実験例1と同様に給紙ローラ7が給送を停止すると記録紙1には搬送抵抗Rsが生じるが、転写手段の記録紙搬送力Ftを補助する方向に定着手段の記録紙搬送力Ffも作用する。これによって図12に示すように転写ローラ6のゴム部に加わるねじれは実験例1の図7と比較して増大しにくい。
【0058】
また、図12は本実験例で給紙ローラ7の給送を停止した時点における転写ローラ6の保持部の挙動を示す部分断面図である。実験例1と同様に給紙ローラ7が給送を停止すると記録紙1には搬送抵抗Rsが生じるが、転写手段の記録紙搬送力Ftを補助する方向に定着手段の記録紙搬送力Ffも作用するため、転写ローラ保持部にRsが作用しても実験例1の図9と比較して隙間c1およびc2が定着手段方向に片寄りにくくなる。
【0059】
以上の結果から、実験例2の如く画像形成時に転写手段と搬出手段が記録紙を共同して搬送する状態で給紙手段の駆動力を断つように制御することで転写ニップ部Qでの記録画像が縮みが軽減され、簡便な装置構成のままで送りピッチムラを大幅に軽減できることが判明した。
【0060】
(実験例3)
次に、検証実験の環境Kにおいて転写手段と搬出手段が記録紙を共同して搬送する状態で給紙手段の駆動力を解除しても送りピッチムラが発生したことに着目し、環境K(35℃,65%Rh)と同一条件下で定着手段の記録紙搬送速度Vfを変えながら本例の画像形成装置を動作させ、記録画像の送りピッチムラを観察した。なお、Vfは駆動源から定着駆動ギア31に至る歯車列の減速比を変更することによって調整した。
【0061】
また、転写手段の記録紙搬送速度Vtよりも定着手段の記録紙搬送速度Vfが速い場合に定着手段が記録紙1を引っ張ることで転写ニップ位置Qで記録画像が伸びる方向の送りピッチムラが発生しないように転写手段の記録紙搬送力Ftを定着手段の記録紙搬送力Ffよりも小さく設定した。
【0062】
本実験例の実験条件および実験結果を表4に示す。
【0063】
【表4】
【0064】
表4の結果から転写手段の記録紙搬送速度Vtよりも定着手段の記録紙搬送速度Vfが速ければ送りピッチムラが軽減されることが判明した。
【0065】
このようにVt<Vfの条件で送りピッチムラが軽減される現象を図13から図15で説明する。図13は本実験例における転写手段と定着手段間での記録紙1の挙動を示す装置概略断面図であり、図14は本実験例においてVt≧Vfの条件下で転写手段と定着手段が記録紙1を共同して搬送する状態の記録紙1の挙動を示す装置概略断面図であり、図15は本実験例においてVt<Vfの条件下で転写手段と定着手段が記録紙1を共同して搬送する状態の記録紙1の挙動を示す装置概略断面図である。
【0066】
環境Kのような高温かつ高湿の環境において、図13のように記録紙1は転写手段と定着手段間で撓んだ状態となっている。この状態で記録紙1が定着手段に至るとVt≧Vfの搬送条件では図14のように転写手段と定着手段間の記録紙1の撓みが画像形成中に継続して残留し、このタイミングで給紙ローラ7の給送を停止すると実験例2で説明した転写手段と定着手段の共同搬送効果が得られず、送りピッチムラが発生する。
【0067】
一方、Vt<Vfの搬送条件では図15のように転写・定着手段間の記録紙1の撓みが転写手段と定着手段の記録紙搬送速度の差分によって伸張され、前述の転写手段と定着手段の共同搬送効果が作用して送りピッチムラが低減されることが確認された。
【0068】
以上の結果から、転写手段の記録紙搬送速度Vfよりも定着手段の記録紙搬送速度Vfを速く設定して転写手段と定着手段の間で記録紙を伸張させ、かつ、転写手段の記録紙搬送力Ftを定着手段の記録紙搬送力Ffよりも大きく設定して転写ニップ部での画像転写ズレを回避した状態で給紙手段の駆動を解除することで、高温かつ高湿の環境下においても実験例2で説明した送りピッチムラ低減効果がより確実に得られることが判明した。
【0069】
(実験例4)
実験例3の結果が高温かつ高湿以外の環境条件においても有効であるか、また、実験例3の方法が検証実験において発生した記録紙の皺に与える影響を確認するため、実験例3と同様の実験を様々な環境下で行い、送りピッチムラと記録紙皺の状態を観察した。
【0070】
本実験例の実験条件および実験結果を表5示す。
【0071】
なお、表5の記録紙皺の欄に記入した記号はそれぞれの条件における記録紙の皺の発生状態を示すものであり、◎は全く皺の発生が見られない場合、○は皺は発生しないが皺の兆候が見られる場合、△はわずかな皺の発生が時折見られた場合、×は皺が頻発した場合を示す。
【0072】
【表5】
【0073】
表5に示すように送りピッチムラに関しては転写手段の記録紙搬送速度Vtと定着手段の記録紙搬送速度VfをVt<Vfとすることで環境条件が変化しても発生を低減できる。また、記録紙の皺に関してはVfがVtに対して1.0から1.005倍の範囲とすればおおむね抑制することができ、さらに、VfはVtに対して1.002倍程度であればより好ましい。
【0074】
記録紙の皺が改善された理由としては、Ft>Ffの関係下でVfをVtに対して1.0から1.005倍とすることにより、転写手段と定着手段の間で記録紙1が適度な張力で伸張され、記録紙1の定着手段直前部が搬送幅方向に加熱されて膨張した場合のうねりが平均的に抑止され、記録紙の皺を抑制する効果があるものと推測される。また、必要以上にVfを速くすると記録紙1の定着手段直前部のうねりが局部的に集中してしまい、記録紙定着皺となるものと推測される。
【0075】
このように様々な環境条件下において実験例3の結果は送りピッチムラ低減に関して有効であり、かつ、記録紙の皺防止に関しても良好な結果得られることが判明した。
【0076】
以上述べてきた本発明の実施例では記録紙1を転写手段へ給送する給送手段を給紙ローラ7等で構成された給紙手段で、また、記録紙1を転写手段から搬出する搬出手段をヒートーローラ15および加圧ローラ17で構成された定着手段で説明してきたが、これとは異なる構成においても本発明は構成可能である。
【0077】
まず、給送手段の第2の実施例を図16で説明する。図16において感光体2および転写ローラ6の記録紙搬送方向上流側には給送手段として上レジストローラ36および下レジストローラ37を配置する。上レジストローラ36または下レジストローラ37の少なくともどちらか一方は図示しない駆動源によってクラッチ機構を介して駆動され、停止状態のレジストローラ対に給紙ローラ7で記録紙1を供給し、レジストローラニップ部Uに記録紙1の先端を衝突させ、記録紙1の斜行を補正した後にレジストローラ対を駆動して転写手段へ記録紙1を供給する。
【0078】
次に、搬出手段の第2の実施例を図17で説明する。図17において転写ローラ6によって感光体2上のトナー像が転写された記録紙1は、ベルトローラ38に掛け回され、かつ、多数の小径穴を有する搬送ベルト39と図示しない吸引手段に接続された吸引箱40で構成された中間搬送手段によって搬送され、引き続いてヒートーローラ15および加圧ローラ17で構成された定着手段に至るものである。
【0079】
また、搬出手段の第3の実施例を図18で説明する。図18も定着手段であり、ポリイミドフィルム等の部材で構成された耐熱ベルト41は厚膜抵抗体等を具備した発熱体42と補助ローラ43により回動可能な状態で保持される。図示しない駆動源によって駆動される加圧ローラ17は両端を加圧バネ16によって付勢され、発熱体43の方向へ押圧されている。転写ローラ6によてトナー像が転写された記録紙1は耐熱ベルト41と加圧ローラ17に挟持かつ搬送され、発熱体42の加熱によりトナー像が記録紙1へ定着される。
【0080】
以上のような給送手段と搬出手段を適宜組み合わせ、給送手段から搬出手段に至る記録紙搬送経路の長さを記録紙長さよりも短く設定し、転写手段の記録紙搬送速度Vt、記録紙搬送力Ft、搬出手段の記録紙搬送速度Vf、記録紙搬送力FfがVt<Vf、かつ、Ft>Ffとなるように設定し、画像形成時に転写手段と搬出手段が記録紙を共同して搬送する状態で給送手段の駆動力を断つことによって、画像の送りピッチムラや記録紙の皺を実験例4と同様に低減できることも確認されている。
【0081】
なお、上述した実施例においては、記録紙として210mm幅(A4サイズ)のものを使用した。これ以外にも様々な幅を有する記録紙(B5サイズ、封筒、ハガキ、レターサイズなど)で実験したがすべて上述した実験例と同様の結果が得られた。そして、210mm幅の記録紙や、最大通紙幅を有する記録紙を用いた場合は、転写手段の記録紙搬送力Ftと、定着手段の記録紙搬送力Ffとは、
Ft>Ff
の関係を満たしている。ただし、記録紙幅が非常に狭い場合(例えばハガキのように100mm程度の場合は、全く同じ構成の画像形成装置を用いても、転写手段の記録紙搬送力Ftと、定着手段の記録紙搬送力Ffとの力の大小関係が逆転することも有り得る。これは、記録紙幅が狭い場合、ヒートローラ15と加圧ローラ17が記録紙を介さずに直接圧接する領域が増大し定着手段における圧接力が高まるためと推定される。
【0082】
【発明の効果】
以上述べたように本発明の画像形成装置によれば、転写手段の構成に工夫を加えると共に、転写手段と搬出手段の記録紙搬送力を共同して作用させることによって、環境条件が変化しても転写手段と搬出手段の間で記録紙を適度に伸張させ、転写手段と搬出手段が記録紙を共同して搬送する状態で給送手段の駆動力を断つことにより、搬出手段で発生する記録紙皺を防止すると共に転写手段に加わる記録紙の張力変化が軽減され、記録紙皺や送りピッチムラが発生しない画像形成装置を提供することができる。
【0083】
また、本発明を用いた画像形成装置は各記録紙搬送手段の配置間隔を短縮し、かつ、簡便な記録紙搬送機構で画像形成を行っても画質を損なうことがなく、小型かつ低価格でありながら良好な記録画像が得られる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の画像形成装置の全体構造を説明する装置横断面図である。
【図2】 本発明の画像形成装置の記録紙搬送をする主なローラの構成を示す斜視図である。
【図3】 本発明の画像形成装置の記録紙を搬送する主なローラの配置間隔を示す概略断面図である。
【図4】 本発明の画像形成装置の転写手段の記録紙搬送力の測定方法を示す斜視図である。
【図5】 本発明の画像形成装置の実験例1における給紙ローラの制御を示すタイミングチャートである。
【図6】 本発明の画像形成装置の実験例1において記録紙先端が転写ニップ位置に達した時点における転写ローラのゴム部の挙動を示す部分断面図である。
【図7】 本発明の画像形成装置の実験例1において給紙ローラの給送を停止した時点における転写ローラのゴム部の挙動を示す部分断面図である。
【図8】 本発明の画像形成装置の実験例1において記録紙先端が転写ニップ位置に達した時点における転写ローラ6の保持部の挙動を示す部分断面図である。
【図9】 本発明の画像形成装置の実験例1において給紙ローラの給送を停止した時点における転写ローラ保持部の挙動を示す部分断面図である。
【図10】 本発明の画像形成装置の実験例2における給紙ローラの制御を示すタイミングチャートである。
【図11】 本発明の画像形成装置の実験例2において給紙ローラの給送を停止した時点における転写ローラのゴム部の挙動を示す部分断面図である。
【図12】 本発明の画像形成装置の実験例2において給紙ローラの給送を停止した時点における転写ローラ保持部の挙動を示す部分断面図である。
【図13】 本発明の画像形成装置の実験例3において転写手段と定着手段間での記録紙の挙動を示す装置概略断面図である。
【図14】 本発明の画像形成装置の実験例3においてVt≧Vfの条件下で転写手段と定着手段が記録紙を共同して搬送する状態の記録紙の挙動を示す概略断面図である。
【図15】 本発明の画像形成装置の実験例3においてVt<Vfの条件下で転写手段と定着手段が記録紙を共同して搬送する状態の記録紙の挙動を示す概略断面図である。
【図16】 本発明における給送手段の第2実施例を示す装置概略断面図である。
【図17】 本発明における搬出手段の第2実施例を示す装置概略断面図である。
【図18】 本発明における搬出手段の第3実施例を示す装置概略断面図である。
【図19】 従来型プリンタ装置の概略構成を示す断面図である。
【図20】 発明者らが構成した従来型画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【符号の説明】
1…記録紙
2…感光体
3…帯電ローラ
4…レーザー走査光学系
5…現像ローラ
6…転写ローラ
7…給紙ローラ
8…給紙トレイ
9…給紙底板
10…給紙バネ
11…分離バネ
12…分離パッド
13…転写バネ
14…ハロゲンランプ
15…ヒートローラ
16…加圧バネ
17…加圧ローラ
18…排紙上ローラ
19…排紙下ローラ
20…給紙センサレバー
21…給紙センサ
22…排紙センサレバー
23…排紙センサ
24…基板
25…パッドベース
26…電磁クラッチ
27…クラッチギア
28…感光体ギア
29…転写駆動ギア
30…転写従動ギア
31…定着駆動ギア
32…パイプ材
33…ロープ
34…転写軸受け
35…シャーシ
36…上レジストローラ
37…下レジストローラ
38…ベルトローラ
39…搬送ベルト
40…吸引箱
41…耐熱ベルト
42…発熱体
43…補助ローラ
Claims (4)
- 感光体に当接し電圧を印加したローラにより前記感光体上に形成されたトナー像を記録紙へ転写する転写手段と、前記転写手段の記録紙搬送方向上流側に位置し、前記記録紙を前記転写手段方向に給送する給送手段と、前記給送手段の給送駆動力を断続する駆動力断続手段と、前記転写手段の記録紙搬送方向下流側に位置し、前記記録紙を前記転写手段から搬出する搬出手段を具備する画像形成装置において、
前記転写手段にゴム部を有する転写ローラを設け、前記転写ローラは転写軸受け部材を介して保持する保持部を有しており、前記転写ローラおよび前記転写軸受け部材の公差上の隙間c1と、前記転写軸受け部材および保持部の公差上の隙間c2が前記給送手段側に形成されており、前記給送手段から前記搬出手段に至る記録紙搬送経路の長さを前記記録紙長さよりも短く設定し、画像形成時に前記転写手段と前記搬出手段が前記記録紙を共同して搬送する状態で前記駆動力断続手段が前記給送手段の駆動力を断つ制御手段を設けたことを特徴とする画像形成装置。 - 前記転写手段の記録紙搬送力をFt、前記搬出手段の記録紙搬送力をFfとしたときに、画像形成時に前記転写手段と前記搬出手段が前記Ftを補助する方向にFfを作用させて前記記録紙を共同して搬送し、前記記録紙の先端が前記搬出手段の中心に達する時間よりも長い時間経過後に前記搬出手段を停止させることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
- 前記給送手段が複数枚の記録紙を収納し、順次一枚分離して給送する給紙装置であることを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
- 前記搬出手段が前記記録紙上に転写されたトナー像を加熱加圧して前記記録媒体へ定着する定着装置であることを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
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