JP2008290864A - 給紙装置及び給紙装置を備えた画像形成装置 - Google Patents

給紙装置及び給紙装置を備えた画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 スリップの発生を検知して、即座にスリップの発生しない条件へと捌きの条件を変更することができる給紙装置とこの給紙装置を使用した画像形成装置を提供する。
【解決手段】 用紙Pを供給する給紙ローラ17と、前記給紙ローラ17に圧接して正逆転可能な捌きローラ18と、前記捌きローラのブレーキ力を変更するブレーキ力変更手段60と、前記捌きローラの回転方向を検知する第1センサ31と、前記給紙ローラと捌きローラのニップ部より用紙の搬送方向の下流側に設けられ前記用紙の移動方向を検知する第2センサ32と、を有し、前記第1センサが前記捌きローラ18の逆転を検知し、前記第2センサ32が用紙Pの順方向の送り又は停止を検知したとき、捌きローラ18と用紙Pとの間にスリップが発生していると判断し、前記ブレーキ力変更手段により捌きローラのブレーキ力を小さくする。
【選択図】 図2

Description

本発明は給紙装置と、この給紙装置を使用した画像形成装置に関し、特に、給紙装置において、用紙と捌きローラとの間にスリップが発生して用紙に傷が付くのを防止する技術に関する。
電子写真方式の画像形成装置では、給紙装置を備えており、ここに用紙を積層した状態で収容している。そして、給紙ローラで最上の用紙を1枚ずつ送り出し、この用紙上に画像を形成する。しかし、用紙が2枚以上送られる重送を起こすと、画像不良の原因になるなど、種々の問題が生じる。
そこで、従来は、捌きローラ機構を使用している。これは、給紙ローラの下に捌きローラを圧接したものである。重送した用紙の先端が給紙ローラと捌きローラのニップに突入したとき、捌きローラのブレーキ力によって下側の用紙の先端を押しとどめ、それより下流に重送紙を送り込まないようにするものである。すなわち、給紙ローラと捌きローラのニップ力と、捌きローラの戻しトルク(ブレーキ力)とのバランスを考えて設計されるものである。この場合、紙同士の摩擦係数(紙間摩擦係数)μpに、ローラ同士の圧接力(ニップ力)Aを乗じた重送力よりも、ブレーキ力Tが勝るように(条件1:μp×A<T)の関係が成り立つようにAとTを設定している。
しかし、裁断面の粗い紙などでは、用紙の先端が裁断時のバリやカエリなどによって互いに食い付いている場合がある。この場合、食い付いた用紙の先端が給紙ローラと捌きローラのニップ部に突入すると、裁断による食い付きをさらに助長することになる。その結果、その状態で用紙の下面先端にブレーキ力を水平方向に与えても下面の用紙は剥離せず、それより下流に突入する。そして、用紙先端がニップを通り過ぎた後に用紙同士が分離を開始するが、既に上の紙と同方向に引きずらしながらの分離となるため、惰性で進んだ重送紙の先端が下流の搬送ローラにニップされると、用紙はそのまま重送となり、白紙の混入や紙詰まりとなることは防げない。
これを防止するために、下流の搬送ローラを給紙ローラと捌きローラのニップから遠ざける設計手段もあるが、ローラ間距離より短い長さの用紙に対応できなくなるため、多種類の用紙に対応したユニバーサルトレイでは対応不可能であった。
そこで、このよう場合でも重送を防止できるようにするために、アクティブリタード方式が用いられてきた。アクティブリタード方式のローラ捌き機構では、ブレーキ力を備える捌きローラに逆転駆動を付与し、ニップを通過してから分離を開始した用紙を能動的に上流側へと押し戻し、白紙の混入や紙詰まりを可能な限り防止している。
しかし、近年、プリント・オン・デマンド市場などで常用される紙をこのアクティブリタード方式のローラ捌き機構で給紙した場合、あらたな問題が発生している。用紙の表面から剥離する粉体がローラに付着し、ローラと紙との摩擦係数μrを著しく低下させる場合がある。たとえば、粉体の一例として、塗工紙の場合を例にとると、塗工紙の表面に塗布されている塗工成分の一部が剥離し、微細な粉体となってローラ表面に付着する。これによって、捌きローラと紙との間の摩擦係数μrが低下する。捌きローラのグリップ限界力は、ローラのニップ力Aとμrとを積算したものであるが、この値がブレーキ力よりも低い値となった場合、即ち、(条件2:μr×A<T)の場合、捌きローラは紙の表面にグリップされず、スリップが発生する。このスリップによって紙の表面は傷つけられ、光沢ムラなどが発生する場合がある。この傷は、ローラと紙表面とのスリップ速度が大きいほど顕著で、用紙が順方向に進んでいるときに捌きローラが逆転すると最悪となる。また、給紙ローラが下流の作像又は排紙等の都合で、用紙をニップした状態で停止している場合に、捌きローラが逆転すると、特定箇所に集中してスリップが発生するため、最も目立つスリップ痕となる。ローラ捌き方式の求められる条件1を満たし、かつ、捌きローラのスリップする条件2を防ぐためには、
μp×A<T<μr×A
すなわち、μp<T/A<μr となるように、T及びAを設定しなければならない。ところが、紙間摩擦力の高い紙種の中には、粉体が付着して最も摩擦係数の小さくなった時の値よりも高い値の摩擦係数を持つものが存在し、(μpmax>μrmin)であるため、全ての紙種に一度に対応するT及びAの解は得られない。
ただし、粉体の発生する紙種の紙間摩擦係数μpは、一般に低く、その紙を使用している限りでは、(μp<μr)が成立している。そこで、スリップの発生する紙種に対応するとき、摩擦係数の高い紙種のときよりも、ブレーキ力を低下させたり、ニップ力が強くなるように切り替えることで対応可能である。しかし、この変更を適用したまま様々な紙種を給紙すると、当然重送が発生するおそれがあり、画像形成装置等においては、ユーザが例えば、普通紙と塗工紙等を交互に使用する際、紙種の種類に注意しながら、これらの設定を変更する必要があり、操作が煩雑であった。また、ユーザが変更を忘れると、重送や傷の発生が起こる場合があるため、ジャム処理やリトライなどで本来不要な操作が追加されるなど、さらに煩わしいものとなるという問題があった。
用紙等のシート間に高い密着力が作用する環境下であっても、不送り及び重送を安定して抑制することができるシート分離装置として、特許文献1(特許第3837338号)がある。これは、給紙ニップ部に生じるニップ圧の大きさを、その給紙ニップ部を用紙が通過する間に大きくなったり小さくなったり繰り返すものである。給紙中に給紙ニップ部に生じるニップ圧が連続的に変化することで、高いニップ圧による用紙の不送り回避を確保しながら、低いニップ圧力による重送回避を確実に確保することができる。
特許第3837338号
しかしながら、上記の特許文献1に記載のものは、スリップを検知して捌き力を変化させるものではないため、普通紙に対する重送防止性能を維持させつつ塗工紙の傷を防止することはできない。
本発明は、斯かる実情に鑑みてなされたもので、直接スリップの発生を検知して、即座にスリップの発生しない条件へと捌きの条件を変更することができる給紙装置と、この給紙装置を使用した画像形成装置を提供しようとするものである。
上記の目的を達成するために本発明の請求項1に係る給紙装置は、用紙を供給する給紙ローラと、前記給紙ローラに圧接して正逆転可能であり、かつ逆転方向への回転駆動力であるブレーキ力を付与された捌きローラと、前記捌きローラの前記ブレーキ力を変更するブレーキ力変更手段と、前記捌きローラの回転方向を検知する第1センサと、前記用紙の移動方向を検知する第2センサと、を有し、前記第1センサと第2センサとが捌きローラと用紙との間のスリップを検出したとき、前記ブレーキ力変更手段により捌きローラのブレーキ力を小さくすることを特徴としている。
又請求項2の給紙装置は、用紙を供給する給紙ローラと、前記給紙ローラに圧接して正逆転可能であり、かつ逆転方向への回転駆動力であるブレーキ力を付与された捌きローラと、前記捌きローラの給紙ローラへの圧接力を変更する圧接力変更手段と、前記捌きローラの回転方向を検知する第1センサと、前記用紙の移動方向を検知する第2センサと、を有し、前記第1センサと第2センサとが捌きローラと用紙との間のスリップを検出したとき、捌きローラと用紙との間にスリップが発生していると判断し、前記圧接力変更手段により圧接力を大きくすることを特徴としている。
請求項3の給紙装置は、前記第2センサが、前記給紙ローラと捌きローラとのニップ点より搬送方向で20mm以内の下流側に設けられていることを特徴としている。
請求項4の給紙装置は、前記第1センサが前記捌きローラの逆転を検知し、前記第2センサが用紙の順方向の送り又は停止を検知したとき、捌きローラと用紙との間にスリップが発生していると判断することを特徴としている。
請求項5の給紙装置は、前記第1センサが前記捌きローラの逆転を検知し、前記第2センサが用紙の順方向の送り又は停止を検知した時間が所定時間継続したとき、スリップと判断することを特徴としている。
本発明の請求項6に示す画像形成装置は、上記請求項1から5のいずれかの給紙装置を備えたことを特徴としている。
用紙が塗工紙の場合、塗工成分の一部が剥離し、微細な粉体となってローラ表面に付着する。これによって、捌きローラと用紙との間にスリップが発生し易くなり、スリップによって用紙の表面が荒らされ、傷が付いてしまう。
本発明は、直接スリップの発生を検知して、即座にスリップの発生しない条件へと捌きの条件を変更することができるという格別の効果を奏する。
すなわち、本発明の給紙装置は、用紙を1枚送り出したとき、スリップしていると判断すると、請求項1の給紙装置では、捌きローラのブレーキ力を小さくする。ブレーキ力が小さいと、小さい力で捌きローラを停止させることができ、スリップを防止できる。
また、請求項2の給紙装置では、捌きローラが給紙ローラに圧接する力を強くする。このようにすることで、スリップを直ちに停止することができる。
請求項3の給紙装置では、第2センサを前記給紙ローラと捌きローラのニップ部より用紙の搬送方向の下流側に設けている。これによって、用紙が順行しているか、停止しているかを判断することができる。第2センサをニップ部から20mm以内に設けることで、誤検知を防止することができる。
請求項4の給紙装置では、第1センサが前記捌きローラの逆転を検知し、前記第2センサが用紙の順方向の送り又は停止を検知したとき、スリップしていると判断する。これによって、最もスリップによる傷が付きやすい場合を簡単に検知することができる。
以下、本発明に係る画像形成装置の最適な実施の態様について図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係る給紙装置を搭載した画像形成装置11の全体構成を示す模式図である。
このカラー画像形成装置11は、タンデム型カラー画像形成装置と称されるもので、複数のローラ群により張架され、周回駆動可能に支持された無端ベルト状の中間転写ベルト7を備えており、この中間転写ベルト7の外周面に沿って、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像を形成する4つの画像形成部10Y,10M,10C,10Kが縦列して配置されている。
画像形成部10Y,10M,10C,10Kは、それぞれ表面に潜像が形成される像担持体としての感光体1Y,1M,1C,1Kを有しており、各感光体の外周面に沿って動作順に、この感光体1Y,1M,1C,1Kの表面をそれぞれほぼ一様に帯電する帯電装置2Y,2M,2C,2Kと、各感光体表面上に静電潜像の書き込みを行う露光装置3Y,3M,3C,3Kと、感光体表面に形成された各潜像にトナーを転移させてトナー画像を形成する現像装置4Y,4M,4C,4Kと、各感光体表面上のトナー像を中間転写ベルト7上に転写する一次転写装置5Y,5M,5C,5K及び、転写後の感光体表面を清掃するクリーニング装置6Y,6M,6C,6Kが配設されている。
画像形成部10Y,10M,10C,10Kによって感光体1Y,1M,1C,1K上に形成された各色のトナー画像は、一次転写装置5Y,5M,5C,5Kにより回動する中間転写ベルト7上の同一位置に逐次転写されて、カラー画像が合成される。
一方、記録媒体としての用紙Pを収容する給紙カセット15には、バネ等の付勢手段により常時その自由端が上方向に付勢される可動板15aが配置され、その上に配置される用紙Pの最上位のものがピックアップローラ16に接触するようになっている。
ピックアップローラ16に接触した用紙Pはピックアップローラ16によって送り出されて給紙ローラ17に達し、給紙ローラ17に接触する捌きローラ18によって一枚ずつに分離されて送り出され、複数の中間ローラ22にガイドされてレジストローラ23まで搬送される。
用紙Pはレジストローラ23により給紙タイミングがとられて二次転写装置5Aに搬送され、中間転写ベルト7上の合成されたカラー画像が用紙P上に一括転写される。転写後、用紙Pを曲率分離した中間転写ベルト7は、クリーニング手段6Aにより残留トナーが除去される。
カラー画像が転写された用紙Pは、搬送ガイド板に案内されながら、定着装置8に搬送される。そして、用紙P上のカラー画像は定着装置8により定着処理され、排紙ローラ24に挟持されて機外の排紙トレイ25上に載置される。
画像形成は、次のように行われる。プラテンガラス45上に載置された原稿は、原稿を照射する光源およびミラーからなる走査ユニット41によって読み取られ、反射光をガイドする二枚のミラー42およびレンズ43を経て撮像素子44上に結像される。読み取られた原稿の画像情報は画像情報手段46より処理され、ディジタル化された画像情報のデータは画像メモリ47に格納される。
この画像情報のデータに従って露光装置3Y,3M,3C,3Kはレーザ光源を駆動し、回転する感光体1Y,1M,1C,1K上にレーザ光を照射して露光を行う。
露光に先立ち、感光体1Y,1M,1C,1K上には、帯電装置2Y,2M,2C,2Kのコロナ放電により所定の表面電荷が付与されているが、レーザ光の照射により、露光部分の電荷が露光量に応じて減じられ、結果として画像情報のデータに応じた静電潜像がそれぞれの感光体1Y,1M,1C,1K上に形成される。静電潜像は、現像装置4Y,4M,4C,4Kから供給された各色の現像剤のトナーにより可視化されてトナー画像となる。
感光体1Y,1M,1C,1K上に形成された可視化されたトナー画像は一次転写装置5Y,5M,5C,5Kにより回動する中間転写ベルト7上の同位置に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。
給紙装置20内に収容された用紙Pはピックアップローラ16によりされ、給紙ローラ17に達すると、捌きローラ18により重送が防止された後、複数の中間ローラ22にガイドされて搬送される。
中間ローラ22によってガイドされた用紙Pは、回転を開始する前のレジストローラ23に、その先端が突き当てられてループが形成される。これにより搬送による用紙Pの斜行が補正される。
その後、中間転写ベルト7上に形成されたカラー画像の位置と用紙Pの位置との同期がとられた後、レジストローラ23は回転を開始して用紙Pを二次転写装置5Aへと搬送する。その結果、二次転写装置5Aにおいて用紙Pと中間転写ベルト7上のカラー画像とが重なり、同時に転写バイアス電圧がかけられて、カラー画像が用紙Pに一括して転写される。
用紙Pは中間転写ベルト7から分離した後、搬送ガイド板に案内されて定着装置8に搬送され、定着装置8の加圧加熱作用により、カラー画像を形成するトナー粉末が用紙P上に溶融定着される。定着処理された用紙Pは、排紙ローラ24に挟持されて機外の排紙トレイ25上に載置される。
図2は、本発明の給紙装置の要部の構成を示す図である。給紙装置20内の用紙Pはピックアップローラ16により最上の用紙Pが給紙され、給紙ローラ17のところで、捌きローラ18により重送が防止された後、搬送され、画像形成部に送られる。捌きローラ18には、回転方向を検知する第1センサ31が設けられ、給紙ローラ17と捌きローラ18のニップ部の下流側には、用紙の移動方向を検知する第2センサ32が設けられている。これら第1センサ31と第2センサ32については、後述する。
図3〜図6は、給紙ローラ17と捌きローラ18のニップ部の拡大図で、給紙状態による作用を説明する図である。捌きローラ18は、アクティブリタード方式のもので、トルクリミッタにより、戻しトルク、すなわち、逆転方向への駆動力であるブレーキ力Tが設定されている。そして、捌きローラ18は、用紙Pを送り返す方向に回転しようとしているが、捌きローラ18が給紙ローラ17に圧接するなどしてブレーキ力以上の力が加わると、捌きローラ18は停止する。捌きローラ18にブレーキ力以上の力が加わっているとき、圧接している給紙ローラ17が捌きローラ18の回転方向と逆方向(用紙を送り出す方向)に回転すると、捌きローラ18は、給紙ローラ17と共に回転することになる。
図3は、給紙ローラ17と捌きローラ18のニップ部に用紙が1枚だけ送り込まれた場合である。この実施例において、給紙ローラ17と用紙Pとの間の摩擦係数μfは、μf=2.0であった。一方捌きローラ18と用紙Pとの間の摩擦係数μrは、μr=1.5であった。捌きローラ18が給紙ローラ17に圧接する圧接力(ニップ力)Aを、A=4.0Nとし、ブレーキ力Tを、T=5.0Nとすると、捌きローラ18で用紙を抑える力Fは、F=μrA=1.5×4.0=6.0Nとなる。この値がブレーキ力T=5.0Nより大きいので、捌きローラ18は逆転できず、給紙ローラ17の順方向の送りに追従し、用紙Pを画像形成部に送り込むことになる。すなわち、用紙Pの下面は給紙速度Vで進行し、捌きローラ18は、給紙速度Vで順転し、スリップは発生しない。
図4は、給紙ローラ17と捌きローラ18のニップ部に用紙が2枚送り込まれた場合で、捌きローラ18が停止した状態の場合である。μf=2.0、μr=1.5で図3と同じ条件であり、用紙Pと用紙Pとの間の摩擦係数μpは、μp=0.7とする。また、ニップ力Aは、給紙ローラ17側の1枚目に対するニップ力A1と、2枚目に対するニップ力A2とに分けられるが、
A=A1+A2=4.0N
となる。また、ブレーキ力Tも、1枚目に対するブレーキ力T1と、2枚目に対するブレーキ力T2とに分けられ、
T=T1+T2=5.0N
となる。また、T1=μr×A1、T2=μp×A2であるから、捌きローラ18が停止する条件は、
T=T1+T2=A1×1.5+A2×0.7=5.0N
A1+A2=A=4.0N
となる。これらからA1、A2を求めると、A1=4.125N A2=0.875Nとなる。このとき、捌きローラ18が停止しており、給紙ローラ17側の用紙Pの下面は給紙速度Vで進行するので、捌きローラ18と用紙Pの下面との間では、引き出しによるスリップが発生する。しかし、このときは、ニップ力A1もAほど高くなく、スリップ痕は発生しないか、発生しても目立たない程度である。
図5は、給紙ローラ17と捌きローラ18とのニップ部に達した2枚の用紙Pが、ニップ部を通過した後に捌かれ、重送紙が戻されている場合である。μf=2.0、μr=1.5、μp=0.7で図4と同じ条件である。ニップ力はA=4.0Nである。そして、実際に発生するブレーキ力T’は、T’=A×μp=4.0×0.7=2.8Nとなる。したがって、捌きローラ18は戻し線速−Rで逆転し、下側の用紙Pの下面は戻し線速−Rで逆行し、スリップは発生しない。
図6は、1枚の用紙Pが給紙されている際に、捌きローラ18がスリップしている場合の図である。用紙Pが塗工紙のような場合、滑りやすくなり、給紙ローラ17と用紙Pとの間の摩擦係数μfは、μf=1.0と低下し、捌きローラ18と用紙Pとの間の摩擦係数μrも、μr=0.6と低下する。ニップ力AはA=4.0Nと同じであるが、実際に発生するブレーキ力T’は、T’=0.6×4.0=2.8Nとなって、設定されたブレーキ力5.0Nより小さくなる。したがって、この場合、捌きローラ18は、戻し線速−Rで逆転し、用紙Pの下面は、給紙速度Vで進行しているか、停止し、捌きローラ18と用紙Pの下面とがスリップを起こす。このとき、ニップ力も図4のA1より大きいAとなっており、捌きローラ18に付着している粉体が砥粒の働きをし、捌きローラ18が逆転することで研磨作用が発生し、用紙Pの表面を傷つけてしまう。
そこで、本発明は、スリップが発生した場合に、スリップが発生しない条件に捌きローラのブレーキ力を変更したり、捌きローラのニップ力を変更したりすることができる給紙装置を提案している。
図2に示す給紙装置には、スリップの検知をするための第1センサ31と第2センサ32が設けられている。第1センサ31は、用紙Pの走行方向を検出するもので、用紙Pの順行、停止、逆行を検知する。第2センサ32は、捌きローラ18の回転方向を検知するもので、回転方向が正転、停止、逆転のいずれであるかを検知する。
第1センサ31と第2センサ32とは、共に、同じ構造のロータリーエンコーダを使用することができる。
図7は、接触式のロータリーエンコーダの構成例を示す図である。ロータリーエンコーダ50は、回転軸51を有し、回転軸51の先端には、円板52が固定されている。円板52には、中心から等しい距離に多数の孔52aが貫通形成されている。円板52の孔52aと対向する位置に光源53があり、光源53の光は孔52aを通過して扇形をした固定スリット54に達する。固定スリット54には、2つの貫通した孔54a、54bが穿設され、孔54aの下には、受光素子55aが、孔54bの下には受光素子55bが固定されている。
回転軸51又は円板52が回転すると、光源53の光は、孔52aのところでは、光が通過し、孔52aの無いところでは遮断される。そして、孔52aと固定スリット54の孔54aが重なったときと、円板52の孔52aと、固定スリット54の孔54bとが重なったとき、光源53の光が受光素子55a又は55bに達する。そこで、受光素子55aと55bの出力を波形整形回路56を経過させて矩形波とし、それぞれの出力波形A相とB相とを得る。
図8は円板52の回転方向を検知する方法を示す図で、(a)は、時計方向回りの場合で、(b)は反時計方向回りの場合である。(a)では、A相がB相より位相が早くなっているので、円板52は時計方向回りであると判断できる。(b)では、逆にB相がA相より早くなっているので、反時計方向の回転であると判断できる。
以上の構成において、第1センサ31では、回転軸51を捌きローラ18の回転軸に接続することで、捌きローラ18の回転状態が、正転、静止、逆転のいずれかであることを検知することが可能となる。
第2センサ32では、円板52の外周面52bを用紙Pの下面に接触させることで、用紙Pが順行、停止、逆行のいずれであるかを検知することができる。
なお、図5に示すように、重送された場合、下の用紙Pの先端が、第2センサ32を越えてから戻されると、捌きローラ18は逆転しており、用紙Pは順行しているので、スリップと誤認することになる。しかし、下の用紙Pが無くなれば、捌きローラ18は順転するので、逆転している時間は短時間である。したがって、レスポンスを若干鈍らせることで対応することができる。たとえば、給紙速度が400mm/secの場合、最低でも200ms以上連続してスリップ発生と検出した場合に、スリップと判定することで、対処できる。
また、第2センサ32は、給紙ローラ17と捌きローラ18のニップ点のできるだけ近くに設置することが望ましい。具体的には、図2に示す距離Lが、20mm以下が望ましい。これ以上離れると、タイムラグが大きくなり、誤検知が生じて実用性が無くなるからである。
図9は、用紙の順行、停止、逆行と、捌きローラの正転、停止、逆転の組合せと、スリップの有無の判断を纏めたものである。図6の状態、すなわち、捌きローラ18が逆転していて、かつ、用紙が順行、又は停止しているとき、スリップしていると判断することとしている。
次にスリップを検知した場合の対応の仕方について、説明する。スリップは、図6で説明したように、用紙Pの下面と捌きローラ18との間の摩擦力T’が、捌きローラ18のブレーキ力Tより小さくなるから生じる。そこで、スリップ防止の対策としては2つある。1つ目は、ブレーキ力Tを小さくすることで、T<T’の関係を成り立たせる方法、2つ目は、捌きローラ18を給紙ローラ17に圧接するニップ力Aを大きくして、T’を大きくし、T<T’の関係を成り立たせる方法である。
図10は、スリップを防止する方法としてブレーキ力Tを小さくする実施例で、ブレーキ力変更手段60の構成を示す図である。ブレーキ力変更手段60は、モータ61、歯車列62、トルクリミッタ63、64、電磁クラッチ65及び歯車列66とから構成される。
給紙ローラ17に圧接する捌きローラ18は、モータ61により回転させられる。モータ61の回転は、歯車列62を経て2つの並行に配置されたトルクリミッタ63と64に伝達される。2つのトルクリミッタのうち、一方のトルクリミッタ63の出力軸は直接に歯車列66に接続され、他方のトルクリミッタ64は、電磁式のクラッチ65を介して歯車列66に接続されている。
クラッチ65が接続状態になると、モータ61の回転は2つのトルクリミッタ63,64を介して捌きローラ18に伝達される。クラッチ65が切断状態になると、モータ61の回転はクラッチ65の無いトルクリミッタ63のみを介して捌きローラ18に伝達される。トルクリミッタ63、64の双方を介した場合は、ブレーキ力Tが大きくなり、トルクリミッタが1つだけの場合はブレーキ力Tが小さくなる。したがって、スリップが検知されたら、クラッチ65を切断状態にすることで、ブレーキ力を小さくしてスリップを回避することができる。なお、クラッチ65の接続、断絶は、クラッチ65への通電のON、OFFにより切り替え、ON、OFFの制御は、画像形成装置のコンピュータにより行うこととしている。
図11は、スリップを防止する方法として、捌きローラ18が給紙ローラ17に圧接する力(ニップ力)Aを調整する例で、圧接力変更手段70の構成を示す図である。圧接力変更手段70は、バネ71、板72、ラック73、ピニオン74及びモータ75とから構成される。
捌きローラ18の両端の軸は、バネ71に支持され、2つのバネ71は、板72に固定されている。板72の一端には、ラック73が一体的に設けられ、このラック73にはピニオン74が噛み合っており、ピニオン74はモータ75により正逆方向に回転可能である。モータ75に通電されると、ピニオン74が正逆いずれかの方向に回転し、ラック73を昇降させ、バネ71を伸縮させるので、捌きローラ18が給紙ローラ17に圧接するニップ力を変更することができる。すなわち、板72が上昇するとバネ71が縮んで圧接力が大きくなる。板72が下降すると、バネ71が延びて圧接力が小さくなる。
本発明では、スリップが発生したら、図10に示すように捌きローラ18のブレーキ力Tを小さくするか、又は、図11に示すように、捌きローラ18の圧接力Aを増加する。このようにすることで、スリップを回避して用紙Pに傷がつくことを防止することができる。
スリップが発生したらスリップしない条件へと画像形成装置の制御部で自動的に変更する。画像形成装置に複数の給紙装置がある場合、同じ給紙装置から給紙されている間は、このスリップしない状態を継続する。あるいは、1ジョブの画像形成が完了するまでスリップしない状態を継続する。そして、別の給紙装置からの給紙に切り替えた時、又は、次のジョブの開始時に、元の条件に自動的に復帰させる。このように、自動的に設定を切り替えることで、ユーザに煩わしい操作を要求することなく、多種類の紙種に同時に対応しながら、重送や傷の発生を防止することができる。
本発明に係る給紙装置を搭載した画像形成装置の全体構成を示す模式図である。 本発明の給紙装置の要部の構成を示す図である。 給紙ローラと捌きローラのニップ部に用紙が1枚だけ送り込まれた状態を示す図である。 給紙ローラと捌きローラのニップ部に用紙が2枚送り込まれた場合で、捌きローラが停止した状態の場合である。 給紙ローラと捌きローラとのニップ部に達した2枚の用紙が、ニップ部を通過した後に捌かれ、重送紙が戻されている場合である。 1枚の用紙が給紙されている際に、捌きローラがスリップしている場合の図である。 ロータリーエンコーダの構成例を示す斜視図である。 円板の回転方向を検知する方法を示す図で、(a)は、時計方向回りの場合で、(b)は反時計方向回りの場合である。 用紙の順行、停止、逆行と、捌きローラの正転、停止、逆転の組合せと、スリップの有無の判断を纏めたものである。 スリップを防止する方法としてブレーキ力を小さくする例を示す図である。 スリップを防止する方法として、捌きローラが給紙ローラに圧接する力を調整する例を示す図である。
符号の説明
17 給紙ローラ
18 捌きローラ
20 給紙装置
31 第1センサ
32 第2センサ
60 ブレーキ力変更手段
70 圧接力変更手段
A 捌きローラと給紙ローラの圧接力
T 捌きローラのブレーキ力
P 用紙

Claims (6)

  1. 用紙を供給する給紙ローラと、前記給紙ローラに圧接して正逆転可能であり、かつ逆転方向への回転駆動力であるブレーキ力を付与された捌きローラと、前記捌きローラの前記ブレーキ力を変更するブレーキ力変更手段と、前記捌きローラの回転方向を検知する第1センサと、前記用紙の移動方向を検知する第2センサと、を有し、前記第1センサと第2センサとが捌きローラと用紙との間のスリップを検出したとき、前記ブレーキ力変更手段により捌きローラのブレーキ力を小さくすることを特徴とする給紙装置。
  2. 用紙を供給する給紙ローラと、前記給紙ローラに圧接して正逆転可能であり、かつ逆転方向への回転駆動力であるブレーキ力を付与された捌きローラと、前記捌きローラの給紙ローラへの圧接力を変更する圧接力変更手段と、前記捌きローラの回転方向を検知する第1センサと、前記用紙の移動方向を検知する第2センサと、を有し、前記第1センサと第2センサとが捌きローラと用紙との間のスリップを検出したとき、捌きローラと用紙との間にスリップが発生していると判断し、前記圧接力変更手段により圧接力を大きくすることを特徴とする給紙装置。
  3. 前記第2センサが、前記給紙ローラと捌きローラとのニップ点より搬送方向で20mm以内の下流側に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の給紙装置。
  4. 前記第1センサが前記捌きローラの逆転を検知し、前記第2センサが用紙の順方向の送り又は停止を検知したとき、捌きローラと用紙との間にスリップが発生していると判断することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の給紙装置。
  5. 前記第1センサが前記捌きローラの逆転を検知し、前記第2センサが用紙の順方向の送り又は停止を検知した時間が所定時間継続したとき、スリップと判断することを特徴とする請求項4記載の給紙装置。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載の給紙装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
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