JP3729653B2 - 自動車のドア - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車のドアに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車の車体には、ドアが開閉自在に支持され、そのドアを開放して乗員が車室内に出入りし、或いは荷物などを出し入れする。図6はかかるドア1Aの従来例を示す側面図である。また図7は図6のVII−VII線拡大断面図、図8は図6のVIII−VIII線拡大断面図である。これらの図から判るように、ドア1Aは、ドア本体2Aと、ドアフレーム3Aと、窓ガラス4Aとを有している。ドア本体2Aは、図8に示すようにアウタパネル5Aとインナパネル6Aを有し、これらのパネル5A,6Aは、その周縁部において互いに固定され、両パネル5A,6Aの上部は互いに離間し、ここに開口が形成されている。ドア本体2Aに支持された窓ガラス4Aは、そのドア本体2Aの上部開口を通して昇降する。
【0003】
ドアフレーム3Aは、図7に示すように、アウタフレーム7Aとインナフレーム8Aを有し、これらのフレーム7A,8Aは、鋼板などの金属板をロール成形することにより形成され、しかもこの両フレーム7A,8Aはヘミング加工とスポット溶接によって一体に結合されている。アウタフレーム7Aは、ドア1Aを閉じた状態で車外側23Aに露出する面9Aを有し、この面は、車外側23Aに露出して外部から目視される部分であることから、一般に意匠面と称せられている。従って、以下、この面を意匠面9Aと称する。
【0004】
またアウタフレーム7Aには、ゴムなどの弾性材により形成されたガラスラン10Aを保持する凹溝状のガラスラン保持部11Aが形成され、窓ガラス4Aが昇降するとき、その窓ガラス4Aの縁部がガラスラン10Aに案内される。また図7には、ドア1Aを閉じたとき、そのドアフレーム3Aに隣接する車体12Aの一部を鎖線で示してあるが、図7のようにドア1Aを閉じたとき、インナフレーム8Aに形成された凹溝状のウェザストリップ保持部13Aに保持されたウェザストリップ14Aが、車体12Aに圧接して車室内15Aのシール性が確保される。
【0005】
ドアフレーム3Aは、図6に示すように、上辺部16Aと、前部17Aと、後部18Aとが一体に連続して接続され、その前部17Aと後部18Aの下部が図6と図8に示すようにドア本体2Aの内部に挿入され、その各下部がドア本体2Aに対して固着されている。その際、図9に示すように、ドアフレーム後部18Aの下部は、そのアウタフレーム7Aがインナフレーム8Aよりも下方に長く延び、その長く延びた部分がドア本体2Aのアウタパネル5Aとインナパネル6Aの内側に挿入され、その部分がインナパネル6Aに干渉することを防止するため、その一部が切除されている。図9には、アウタフレーム7Aの一部の切除により生じた端材を破線で示し、かつこれに符号20Aを付してある。またアウタフレーム7Aの長く延びた部分が、図8に符号S1を付した×印で示すように、スポット溶接によってドア本体2Aのインナパネル6Aに固着されている。
【0006】
ドア本体内には補強板19Aが配置され、図8に符号S2を付した×印で示すように、アウタフレーム7Aと補強板19Aがスポット溶接によって固着され、しかも符号S3を付した×印で示すように、補強板19Aがインナパネル6Aにスポット溶接されている。アウタフレーム7Aが補強板19Aを介して、インナパネル6Aに固着されているのである。
【0007】
ドアフレーム3Aの前部17Aの下部も同様にしてドア本体2Aに固着されている。
【0008】
上述した自動車のドア1Aにおいては、そのドアフレーム3Aのアウタフレーム7Aに、意匠面9Aが形成されていると共に、ガラスラン保持部11Aが形成されている。このため、図7から判るように、そのアウタフレーム7Aが大型化し、しかもその横断面形状がかなり複雑なものとなる。かかるアウタフレーム7Aは、前述のように、ロール成形によって形成されるが、大型で複雑な形状のアウタフレーム7Aをロール成形により製造するには、長い工程を経なければならず、その製造に長い時間を必要とする。このため、アウタフレーム7Aの意匠面9Aも、長い時間、成形機のロールに接触することになるが、このように長い工程を経て意匠面9Aを形成すると、その成形時にロールに付着したごみなどの異物によって意匠面9Aにわずかな傷や微小な凹凸が形成されるおそれがある。意匠面9Aは、車外側に露出して人の目に触れやすい部分であるため、ここにわずかでも傷や凹凸ができると、その外観品質が低下する。
【0009】
そこで、従来は、意匠面9Aに傷や凹凸ができた場合、これを手直しして、その傷などを除去していたが、かかる手直し作業は、大変煩しく、ドアフレーム3Aのコストを上昇させる原因となっていた。
【0010】
また、従来のドア1Aにおいては、前述のように、ドア本体2Aの内部に挿入されたアウタフレーム7Aの一部が切除され、そのアウタフレーム7Aを補強板19Aを介してインナパネル6Aに固定していたため、アウタフレーム7Aの一部を切除することにより端材20Aが発生し、これによりアウタフレーム7Aの製造コストが上昇していた。しかも補強板19Aを用いれば、その分のコストが上昇する欠点も免れない。
【0011】
上述のようにアウタフレーム7Aの一部を切除する代りに、この部分を図8及び図9に鎖線で示すように曲折し、その曲折部21Aをインナパネル6Aの内面に沿わせ、この部分を符号S4を付した×印で示すように、インナパネル6Aにスポット溶接すれば、アウタフレーム7Aとインナパネル6Aとのスポット溶接個所が増えるので、補強板19Aを廃止でき、しかもアウタフレーム7Aの切除に伴う端材20Aの発生も阻止でき、ドアフレーム3Aの製造コストを大幅に低減できる。
【0012】
ところが、アウタフレーム7Aには、意匠面9Aがあるため、上述のようにアウタフレーム7Aの一部を曲げ加工すると、その変形の影響が、ドア本体2Aの外部に出たアウタフレーム7Aの意匠面9Aにも及び、これがわずかに変形する。意匠面9Aにかかる変形を生じれば、その見ばえが低下し、意匠面9Aの機能を損うことになりかねない。
【0013】
そこで、従来は、やむをえず、インナパネル6Aとの干渉を阻止すべくアウタフレーム7Aの一部を切除し、かつ補強板19Aを介してそのアウタフレーム7Aをインナパネル6Aに固定していたのであるが、これによってドア本体3Aのコストが上昇する欠点を免れなかった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した新規な認識に基づきなされたものであって、その目的とするところは、ドアフレームの製造時にその意匠面に傷や凹凸ができる可能性を低減することのできる自動車のドアを提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するため、アウタパネルとインナパネルを有するドア本体と、該ドア本体に昇降可能に支持された窓ガラスと、下部が前記ドア本体に固定されたドアフレームとを有し、該ドアフレームは、昇降する窓ガラスの縁部を案内するガラスランを保持するガラスラン保持部と、ドア閉鎖状態で車体に圧接するウェザストリップを保持するウェザストリップ保持部とを有している自動車のドアにおいて、前記ドアフレームが、ドア閉鎖状態で、車外側に露出する意匠面を備えたアウタフレームと、同じくドア閉鎖状態で、前記アウタフレームの意匠面よりも車内側に位置すると共に、前記アウタフレームに固定され、かつ前記ガラスラン保持部とウェザストリップ保持部が形成されているインナフレームとを具備し、前記アウタフレームは、意匠面を構成する板部分と、該板部分を前記インナフレームに固定する固定部のみから構成されていることを特徴とする自動車のドアを提案する(請求項1)。
【0016】
その際、前記アウタフレームと、該アウタフレームの意匠面に対向するインナフレーム部分とによって、ドアフレームの長手方向に沿って延びる空間が区画形成されていると有利である(請求項2)。
また、上記請求項1又は2に記載の自動車のドアにおいて、前記ドアフレームの下部は、ドア本体のアウタパネルとインナパネルの間に挿入され、該ドアフレームのインナフレームがアウタフレームよりも下方に長く延びていて、その長く延びたインナフレーム部分の一部が曲折形成され、その曲折部が前記インナパネルに固着されていると有利である(請求項3)。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態例を図面に従って詳細に説明する。
【0018】
図1は本例のドア1を有する自動車の側面図、図2はそのドア単体の側面図である。ドア1は、図1に示すように車体12の側部に配置され、その前部のヒンジ22を介して車体12に回動開閉自在に支持されている。
【0019】
図3は、図2のIII−III線拡大断面図、図4は図2のIV−IV線拡大断面図であり、図3には、ドア1を閉じた状態で、そのドア1に隣接する車体12の一部、すなわちセンタピラーを鎖線で付加して示してある。
【0020】
上述のドア1も、従来のドアと同様に、そのドア1を閉じた状態で車外側23に位置するアウタパネル5と、これよりも車内側に位置するインナパネル6とを有するドア本体2と、そのドア本体2に昇降可能に支持された窓ガラス4と、ドア本体2に固着されたドアフレーム3とを有している。アウタパネル5とインナパネル6は、その周縁部がヘミング加工により互いに固定され、その上部が互いに離間してここに開口が形成され、その開口を通して窓ガラス4が昇降する。またドアフレーム3が、前部17と上辺部16と後部18から成り、その前部17と後部18の下部が、ドア本体2のアウタパネル5とインナパネル6の間に挿入されて、ドア本体2に後述するように固定されている。
【0021】
さらに、ドアフレーム3は、図3に明示するように、昇降する窓ガラス4の縁部を案内するためのガラスラン10を保持した凹溝状のガラスラン保持部11と、ドア1の閉鎖状態で、車体12に圧接して車室内15のシール性を確保するウェザストリップ14を保持した凹溝状のウェザストリップ保持部13を有しており、ガラスラン10とウェザストリップ14がゴムなどの弾性材により構成されていることも従来と変りはない。
【0022】
また、ドアフレーム3は、ドア閉鎖状態で、車外側23に露出する意匠面9を備えたアウタフレーム7と、このアウタフレーム7に固定されたインナフレーム8とを有し、アウタフレーム7とインナフレーム8は、鋼板などの金属板をロール成形することにより製造され、ヘミング加工によって、そのアウタフレーム7とインナフレーム8が一体に固定されている。
【0023】
ここで、従来のドアと異なるところは、そのドアフレーム3のインナフレーム8が、ドア閉鎖状態で、アウタフレーム7の意匠面9より車内側に位置し、しかもこのインナフレーム8に上述のガラスラン保持部11とウェザストリップ保持部13が共に形成され、アウタフレーム7が、意匠面9を構成する板部分と、この板部分をインナフレーム8に固定する固定部24、すなわちヘミング加工により折り返され、インナフレーム8の縁部を挟持する部分のみから構成されている点にある。アウタフレーム7のほぼ全体が意匠面9を構成し、従来アウタフレームに設けられていたガラスラン保持部が、インナフレーム8に形成されているのである。このため、図3から判るように、アウタフレーム7は非常に小型化し、しかもその横断面形状は極めて単純化されている。
【0024】
このようなアウタフレーム7が鋼板をロール成形して加工されるので、その成形時の工程は短かく、短時間でアウタフレーム7を製造することができる。このため、その成形時にアウタフレーム7の意匠面9に傷や小さな凹凸が形成される可能性は極めて低くなり、その手直し作業をなくし、或いはその作業の必要性が極めて少なくなる。これにより、ドアフレーム3の製造コストを確実に低減することができる。
【0025】
アウタフレーム7の横断面形状が単純となった分、インナフレーム8の横断面形状が複雑となり、これが大型化するため、そのインナフレーム8をロール成形によって製造する際、インナフレーム8の表面に傷や微小な凹凸が付けられる可能性が高まるが、このインナフレーム8は、アウタフレーム7よりも車内側に配置され、ドア1の閉鎖時に、外部から目視されることがないため、そのアウタフレーム7に多少の傷や凹凸があっても、品質上問題は生じない。
【0026】
また、図3に示すように、アウタフレーム7と、そのアウタフレーム7の意匠面9を構成する板部分に対向するインナフレーム8の部分とによって、ドアフレーム3の長手方向に沿って延びる空間Sが区画形成されている。このようにアウタフレーム7とインナフレーム8により閉空間Sを形成することにより、ドアフレーム3の剛性を高めることができる。このため、ドアフレーム3の板厚を従来より薄くすることが可能となり、これによってもドアフレーム3のコストを低減することができる。
【0027】
前述のように、ドアフレーム3の前部17と後部18の各下部は、ドア本体2の内部に挿入されてドア本体2に固着されるが、その際、図2、図4及び図5に示すように、ドアフレーム後部18の下部においては、インナフレーム8の方がアウタフレーム7よりも下方に長く延び、しかもその長く延びたインナフレーム部分の一部が、他のインナフレーム部分に対して曲折形成されている。この曲折部21は、ドア本体2のインナパネル6の内側面に沿って延び、その曲折部21とインナパネル6が、図4に符号S5を付した×印で示すように、1又は複数の個所でスポット溶接によって固着されている。ドアフレーム3が、図4にS1で示したスポット溶接のほかに、インナフレーム8の曲折部21のスポット溶接S5によっても、インナパネル6に固着されているのである。
【0028】
上述のように、ドア本体2に挿入されたドアフレーム下部におけるインナフレーム8の一部を曲折し、その曲折部21をインナパネル6に沿わせて当該インナパネル6に固着するので、従来のようにドアフレームを補強板を介してインナパネルに固着する必要がなく、しかもドアフレームの一部を切除する必要もない。このため、ドアフレーム3とインナパネル6の結合強度を高め、しかもそのドアフレーム3の製造コスト、ひいてはドア1の製造コストを効果的に低減することができる。
【0029】
また、上述のようにインナフレーム8の一部を曲折しても、このインナフレーム8には意匠面9が形成されていないので、曲折部21の曲折加工の影響が意匠面9に及ぼされることはなく、意匠面9が変形してその外観品質が低下するおそれはない。アウタフレーム7を、意匠面9を構成する板部分と、これをインナフレーム8に固定する固定部24のみから構成することにより、インナフレーム8の曲折が意匠面9に影響を与えることを阻止できるのである。
【0030】
ドアフレーム3の前部17の下部も、上述したところと同様にしてドア本体2に固着されている。また、ドアフレーム3の横断面形状は、その前部17と後部18の下部を除き、全長に亘って実質的に同一に形成されている。また上述したドアフレーム3を製造するには、例えば、先ずインナフレーム8とアウタフレーム7を別々にロール成形により製造し、インナフレーム8の一部を前述のように曲折形成した後、そのインナフレーム8とアウタフレーム7をヘミング加工によって一体化すればよい。
【0031】
本発明は、自動車の車体側部に設けられるドアに限らず、例えば車体の後部に設けられるバックドアなどにも適用できるものである。
【0032】
【発明の効果】
請求項1に係る発明によれば、ドアフレームの製造時に、意匠面に傷や凹凸ができる可能性を著しく低減でき、その製造コストを効果的に低減できる。
【0033】
請求項2に係る発明によれば、ドアフレームの剛性を高め、その品質を向上させることができる。
請求項3に係る発明によれば、従来必ず必要とされた補強板を廃止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動車の側面図である。
【図2】図1に示したドア単体の側面図である。
【図3】図2のIII−III線拡大断面図である。
【図4】図2のIV−IV線拡大断面図である。
【図5】ドアフレームの下部の斜視図である。
【図6】従来のドアの一例を示す側面図である。
【図7】図6のVII−VII線拡大断面図である。
【図8】図6のVIII−VIII線拡大断面図である。
【図9】図6に示したドアフレームの下部の斜視図である。
【符号の説明】
1 ドア
2 ドア本体
3 ドアフレーム
4 窓ガラス
5 アウタパネル
6 インナパネル
7 アウタフレーム
8 インナフレーム
9 意匠面
10 ガラスラン
11 ガラスラン保持部
12 車体
13 ウェザストリップ保持部
14 ウェザストリップ
21 曲折部
24 固定部
S 空間
Claims (3)
- アウタパネルとインナパネルを有するドア本体と、該ドア本体に昇降可能に支持された窓ガラスと、下部が前記ドア本体に固定されたドアフレームとを有し、該ドアフレームは、昇降する窓ガラスの縁部を案内するためのガラスランを保持するガラスラン保持部と、ドア閉鎖状態で車体に圧接するウェザストリップを保持するウェザストリップ保持部とを有している自動車のドアにおいて、
前記ドアフレームが、ドア閉鎖状態で、車外側に露出する意匠面を備えたアウタフレームと、同じくドア閉鎖状態で、前記アウタフレームの意匠面よりも車内側に位置すると共に、前記アウタフレームに固定され、かつ前記ガラスラン保持部とウェザストリップ保持部が形成されているインナフレームとを具備し、前記アウタフレームは、意匠面を構成する板部分と、該板部分を前記インナフレームに固定する固定部のみから構成されていることを特徴とする自動車のドア。 - 前記アウタフレームと、該アウタフレームの意匠面に対向するインナフレーム部分とによって、ドアフレームの長手方向に沿って延びる空間が区画形成されている請求項1に記載の自動車のドア。
- 前記ドアフレームの下部は、ドア本体のアウタパネルとインナパネルの間に挿入され、該ドアフレームのインナフレームがアウタフレームよりも下方に長く延びていて、その長く延びたインナフレーム部分の一部が曲折形成され、その曲折部が前記インナパネルに固着されている請求項1又は2に記載の自動車のドア。
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