JP3725580B2 - サンプル・ホールド回路 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、サンプル・ホールド回路に関わり、特にモノリシックICで構成するのに適するサンプル・ホールド回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、サンプル・ホールド回路としては、図3に示すような構成のものが知られている。このサンプル・ホールド回路は、次のように構成されている。すなわち、信号入力端子20はNPNトランジスタQ20のベースに接続されており、トランジスタQ20のコレクタは電源VCCに、またエミッタは定電流源I20に接続されている。定電流源I20はトランジスタQ20のバイアス電流を決めるためのものである。またトランジスタQ20のエミッタは、抵抗R20を介してトランジスタQ23のベースに接続されている。そしてトランジスタQ23のコレクタは電源VCCに、またエミッタはコンデンサC20及びバッファアンプ23の入力に接続されている。トランジスタQ21とトランジスタQ22はエミッタ結合されており、その共通接続点に定電流源I21が接続されている。またトランジスタQ21のコレクタはトランジスタQ23のベースに、トランジスタQ22のコレクタはトランジスタQ23のエミッタに接続され、そしてトランジスタQ21,Q22の各ベースに接続された端子21,端子22に入力される制御信号/φ,φによって定電流源I21に流れ込む電流の経路を切り換えるようになっている。そして、トランジスタQ23のエミッタにはコンデンサC20が接続されると共に、バッファアンプ23を介して出力端子24が接続されている。
【0003】
また、特公平6−32237号には図4に示すような構成のサンプル・ホールド回路が開示されている。なお、図4においては、図3に示した従来例と同一又は対応する部材には同一符号を付して示し、その説明を省略する。図3に示した従来例と異なる点は、コレクタを電源電圧VCCに接続し、ベースを抵抗R21とツェナーダイオードZDに接続し、エミッタをトランジスタQ23のベースに接続したトランジスタQ24を設けている点である。
【0004】
次に、図3に示した従来のサンプル・ホールド回路の動作について説明する。端子21,端子22に印加される制御信号/φ,φは互いに電圧変化が逆相の信号であり、/φがLレベル、φがHレベルの場合、図3に示した回路はサンプルモードに、また/φがHレベル、φがLレベルの場合、ホールドモードに設定される。まずサンプル期間において、サンプルモードに設定されると、トランジスタQ21はオフ、トランジスタQ22はオンとなり、定電流源I21はトランジスタQ23のバイアス電流となり、トランジスタQ23もオンとなる。これにより信号入力端子20に印加された入力信号VINは、トランジスタQ20,抵抗R20及びトランジスタQ23を介してコンデンサC20に印加される。すなわちトランジスタがオンの時のベース・エミッタ間電圧をVBEとし、またトランジスタQ23のベース電流による抵抗R20の電圧降下を無視すると、コンデンサC20には、次式(1)で表される電圧が印加される。
IN−VBE(Q20) −VBE(Q23) ・・・・・・・・・・・(1)
したがって、入力信号VINを直流的にレベルシフトした信号がバッファアンプ23を介して出力端子24より出力される。
【0005】
次に、ホールド期間において、ホールドモードに設定されると、トランジスタQ21はオン、トランジスタQ22はオフとなり、定電流源I21の電流はトランジスタQ20−抵抗R20−トランジスタQ21の経路を流れ、トランジスタQ23はオフとなる。したがって、トランジスタQ22,トランジスタQ23が共にオフなので、コンデンサC20における電流の流入出はなく、コンデンサC20において、サンプル期間からホールド期間に変化する直前の電位が保持される。
【0006】
ここでコンデンサC20に保持された保持電圧をVHCとしたとき、
IN−VBE(Q20) −I21・R20<VHC ・・・・・・・・(2)
上記(2)式を満足するように、定電流源I21,抵抗R20の値I21,R20を設定すれば、ホールド期間中にトランジスタQ23は常に逆バイアスとなり、保持電圧VHCは入力信号VINの変化によらず一定電圧となり、バッファアンプ23を介して出力端子24より出力される。
【0007】
次に、図4に示した従来例の動作の図3に示したものとの差異について説明する。トランジスタQ24のベースは、制御信号/φがHレベルのときのVH と、トランジスタQ24がオンするに必要なベース・エミッタ間電圧VBE(Q24) との和に設定される。このように設定することにより、ホールド期間中入力信号VINのレベルが下がり接続点N20の電位がVH となると、トランジスタQ24がオンとなり、接続点N20がVH 以下になろうとしても、トランジスタQ24によりVH 一定に保たれる。したがってトランジスタQ21は飽和しない。
【0008】
またホールド期間中トランジスタQ23がオンにならないためには、コンデンサC20における保持電圧VHCがVH 以上となる必要がある。したがって入力信号VINの最低電圧VINMIN は、次式(3)となる。
INMIN =VBE(Q20) +VBE(Q23) +VH ・・・・・・(3)
また図3に示した従来例における入力信号VINの最低電圧VINMIN は、次式(4)となる。
INMIN =VBE(Q20) +I21・R20+VH ・・・・・・(4)
ここで、I21・R20は、常にVBE(Q23) 以上に設定されているので、次式(5)が成立する。
BE(Q20) +I21・R20+VH >VBE(Q20) +VBE(Q23) +VH ・・(5)
したがって、図3に示した従来例より図4に示す従来例の方が入力電圧の最低電圧を低くすることができ、その結果ダイナミックレンジを拡大することができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図3に示したサンプル・ホールド回路では、ホールド期間にトランジスタQ23をオフとし、また逆バイアスにすることによってコンデンサC20における保持電圧VHCを、入力信号VINによらず一定にしようとするものである。しかし、トランジスタのベース・エミッタ間に存在する接合容量の影響により、実際には入力信号VINに従って変化する接続点N20の電圧の変化が、トランジスタQ23のベース・エミッタ間の接合容量を介して僅かながらもコンデンサC20に印加され、これがバッファアンプ23を介して出力されるため、ホールド期間における重要な特性の一つであるフィードスルー除去比を悪化させる。また図4に示したサンプル・ホールド回路においても、ダイナミックレンジの拡大の改善はなされているが、フィードスルー低減に関しては、同様に改善はなされていない。
【0010】
本発明は、従来のサンプル・ホールド回路の上記問題点を解消するためになされたもので、請求項1記載の発明は、フィードスルーを低減できるようにしたサンプル・ホールド回路を提供することを目的とする。また請求項2記載の発明は、フィードスルーを低減し且つトランジスタの特性が揃い易いモノリシックIC化に好適なサンプル・ホールド回路を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段及び作用】
上記問題点を解決するため、請求項1記載の発明は、入力信号から入力信号と同位相である第1の出力信号と、該第1の出力信号と変化が逆相の電圧関係にある第2の出力信号とを得る入力増幅手段と、前記入力増幅手段の第1の出力信号が一端に入力され、サンプル期間は閉成されホールド期間は開放される第1のスイッチング手段と、前記入力増幅手段の第2の出力信号が一端に入力され、常に開放状態の第2のスイッチング手段と、前記第1のスイッチング手段の他端を一方の入力端子に、また前記第2のスイッチング手段の他端を他方の入力端子に接続した加算手段と、該加算手段の出力端子と第1の基準電圧源間に接続され、サンプル電圧を保持するコンデンサとでサンプル・ホールド回路を構成するものである。
【0012】
このように構成されたサンプル・ホールド回路においては、サンプル期間には第1のスイッチング手段がオン状態となり、入力増幅手段から出力される第1の出力信号は加算手段の一方の入力端子に入力される。第2のスイッチング手段はオフ状態であるので、第1の出力信号が加算手段を介して出力され、コンデンサに保持される。またホールド期間には第1のスイッチング手段がオフ状態となり、コンデンサにおいてサンプル電圧が保持されるが、このとき第1の出力信号のうち第1のスイッチング手段が開放時の漏れ成分もコンデンサに伝達され、入力信号の変化による影響が現れることになる。しかし第2のスイッチング手段はサンプル期間、ホールド期間に拘わらず常にオフ状態であり、第2の出力信号のうち第2のスイッチング手段がオフ時の漏れ成分のみがコンデンサに伝達される。したがって、第1のスイッチング手段と第2のスイッチング手段とを同様な構成とすることにより、第1の出力信号と第2の出力信号とは互いに変化が逆相な電圧関係であるので、ホールド期間にスイッチング手段からの漏れ成分は互いに相殺され、コンデンサにおいて入力信号の変化による影響は現れず、フィードスルー除去比を向上させることができる。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のサンプル・ホールド回路において、前記第1のスイッチング手段を、ベースに前記第1の出力信号が入力され、コレクタを第2の基準電圧源に接続し、エミッタを第1の抵抗の一端と他端が第3の基準電圧源に接続された第1の定電流源の一端に接続した第1のトランジスタと、ベースを前記第1の抵抗の他端に接続し、コレクタを第2の基準電圧源に接続した第2のトランジスタと、ベースを第1の制御信号の入力端子に、コレクタを前記第2のトランジスタのベースに接続し、エミッタを他端が第3の基準電圧源に接続された第2の定電流源の一端に接続した第3のトランジスタと、ベースを前記第1の制御信号と電圧変化が逆相の第2の制御信号の入力端子に、コレクタを前記第2のトランジスタのエミッタに、エミッタを前記第2の定電流源の一端に接続した第4のトランジスタとで構成し、前記第2のスイッチング手段を、ベースに前記第2の出力信号が入力され、コレクタを第2の基準電圧源に接続し、エミッタを第2の抵抗の一端と他端が第3の基準電圧源に接続された第3の定電流源の一端に接続した第5のトランジスタと、ベースを前記第2の抵抗の他端に接続し、コレクタを第2の基準電圧源に接続した第6のトランジスタと、ベースを第4の基準電圧源に接続し、コレクタを前記第6のトランジスタのベースに接続し、エミッタを他端が第3の基準電圧源に接続された第4の定電流源の一端に接続した第7のトランジスタと、ベースを第5基準電圧源に接続し、コレクタを前記第6のトランジスタのエミッタに接続し、エミッタを前記第4の定電流源の一端に接続した第8のトランジスタとで構成し、前記加算手段を、前記第2のトランジスタのエミッタに一端を接続し他端を前記コンデンサに接続した第3の抵抗と、前記第6のトランジスタのエミッタに一端を接続し他端を前記コンデンサに接続した第4の抵抗とで構成するものである。
【0014】
このように構成したサンプル・ホールド回路においては、第1のスイッチング手段と第2のスイッチング手段とが同一の回路構成であり、特性が揃うことが望ましいので、モノリシックIC化に好適なサンプル・ホールド回路を実現することができる。
【0015】
【実施例】
次に実施例について説明する。図1は本発明係るサンプル・ホールド回路の基本的な実施例を示すブロック構成図で、請求項1記載の発明に対応するものである。図1において、1は信号入力端子で、2は入力増幅部であり、信号入力端子1から入力された入力信号VINを受け、該入力信号VINと同位相の第1の出力信号V1 と、第1の出力信号V1 と変化が逆相の電圧関係にある第2の出力信号V2 とを出力する。3は入力増幅部2の第1の出力信号V1 の出力端子に接続された第1のスイッチング部で、サンプル期間は閉成状態、ホールド期間は開放状態となるように動作するものであり、4は同じく入力増幅部2の第2の出力信号V2 の出力端子に接続された第2のスイッチング部で、サンプル期間及びホールド期間に拘わらず開放状態となっているものである。5は第1及び第2のスイッチング部3,4の出力端子に接続された加算部で、該加算部5の出力端子には、一端を第1の基準電圧源(GND)に接続したコンデンサC1とバッファアンプ6が接続され、バッファアンプ6の出力側は信号出力端子7に接続されている。
【0016】
次に、このように構成されたサンプル・ホールド回路の動作について説明する。まず、信号入力端子1に入力信号VINを入力する。信号入力端子1に入力された入力信号VINは入力増幅部2に入力され、入力増幅部2は互いに変化が逆相の電圧関係にある第1の出力信号V1 と、第2の出力信号V2 とを出力する。第1の出力信号V1 は第1のスイッチング部3に入力され、第1のスイッチング部3は、サンプル期間は閉成、ホールド期間は開放状態となるように動作する。一方、第2の出力信号V2 は第2のスイッチング部4に入力される。第2のスイッチング部4は、サンプル期間及びホールド期間に拘わらず常に開放状態になっている。したがって、サンプル期間においては、第1の出力信号V1 が第1のスイッチング部3を介して加算部5に印加され、また第2の出力信号V2 のうち第2のスイッチング部4の漏れ成分が加算部5に印加される。加算部5の出力はコンデンサC1及びバッファアンプ6に接続される。第1の出力信号V1 と第2の出力信号V2 とは、互いに変化が逆相の電圧関係になっているので、第2のスイッチング部4からの漏れ成分は、入力信号VINに対し利得を下げる影響を与えるが、これは入力増幅部2あるいはバッファアンプ6において利得を調整すれば、補正することが可能である。したがって、サンプル期間においては入力信号VINがバッファアンプ6より出力される。
【0017】
一方、ホールド期間においては、第1のスイッチング部3及び第2のスイッチング部4が共に開放状態なので、コンデンサC1にはサンプル期間からホールド期間に変化する直前の電圧VHCが保持される。しかし、加算部5には第1の出力信号V1 のうち第1のスイッチング部3からの漏れ成分が印加され、コンデンサC1において保持された電圧VHCが入力信号VINの変化の影響を受け、ホールド期間におけるフィードスルーの増大をもたらす。ところが、本実施例では第2の出力信号V2 のうち第2のスイッチング部4からの漏れ成分も加算部5を介してコンデンサC1に印加される。そして、第1の出力信号V1 と第2の出力信号V2 とは互いに変化が逆相の電圧関係にあるので、第2のスイッチング部4からの漏れ成分は第1のスイッチング部3からの漏れ成分と相殺し合うことになる。結局、コンデンサC1に保持された電圧VHCは、入力信号VINの影響で変化することなく、バッファアンプ6を介して出力され、ホールド期間でのフィードスルーを低減することが可能となる。
【0018】
以上のように、この実施例においては、ホールド期間に、入力信号の変化が保持電圧に与える影響を、逆位相の変化により相殺することによって、フィードスルーを低減することができる。
【0019】
次に、本発明の具体的な実施例を図2に基づいて説明する。この実施例は請求項2記載の発明に対応するもので、図1に示した第1実施例と同一又は対応する部材には同一符号を付して示している。この実施例のサンプル・ホールド回路は、入力増幅部2からの第1の出力信号V1 は第1のトランジスタQ1のベースに入力され、前記第1のトランジスタQ1のコレクタは第2の基準電圧源VCCに接続され、エミッタは第1の抵抗R1の一端と第1の定電流源I1の一端に接続され、前記第1の定電流源I1の他端は第3の基準電圧源VEEに接続されている。前記第1の抵抗R1の他端は第2のトランジスタQ2のベースと第3のトランジスタQ3のコレクタに接続され、前記第2のトランジスタQ2のエミッタは第4のトランジスタQ4のコレクタに接続され、前記第3のトランジスタQ3のエミッタと第4のトランジスタQ4のエミッタは第2の定電流源I2の一端に共通に接続され、前記第2の定電流源I2の他端は前記第3の基準電圧源VEEに接続されている。そして前記第3のトランジスタQ3のベースには、端子8からの第1の制御信号/φが入力され、前記第4のトランジスタQ4のベースには、端子9からの前記第1の制御信号/φと電圧変化が逆相の第2の制御信号φが入力されるようになっており、以上の構成により第1のスイッチング部を構成している。
【0020】
次に、前記入力増幅部2からの第2の出力信号V2 は第5のトランジスタQ5のベースに入力され、前記第5のトランジスタQ5のコレクタは第2の基準電圧源VCCに接続され、前記第5のトランジスタQ5のエミッタは第2の抵抗R2の一端と第3の定電流源I3の一端に接続され、前記第3の定電流源I3の他端は第3の基準電圧源VEEに接続されている。前記第2の抵抗R2の他端は第6のトランジスタQ6のベースと第7のトランジスタQ7のコレクタ接続され、前記第6のトランジスタQ6のコレクタは前記第2の基準電圧源VCCに接続され、前記第6のトランジスタQ6のエミッタは第8のトランジスタQ8のコレクタに接続され、前記第7のトランジスタQ7のエミッタと第8のトランジスタQ8のエミッタは第4の定電流源I4の一端に共通に接続され、前記第4の定電流源I4の他端は前記第3の基準電圧源VEEに接続されている。そして前記第7のトランジスタQ7のベースには該トランジスタQ7を常にオンとする第4の基準電圧源V3 が接続され、前記第8のトランジスタQ8のベースには該トランジスタQ8を常にオフとする第5の基準電圧源V4 が接続されており、以上の構成により第2のスイッチング部を構成している。
【0021】
また前記第2のトランジスタQ2のエミッタには第3の抵抗R3の一端が接続され、前記第6のトランジスタQ6のエミッタには第4の抵抗R4の一端が接続され、前記第3の抵抗R3の他端と前記第4の抵抗R4の他端を、一端がGNDに接続されたコンデンサC1の他端に接続して加算部を構成している。
【0022】
次に、このように構成された具体的な第2実施例の動作について説明する。端子8,端子9にそれぞれ印加される制御信号/φ,φは互いに電圧変化が逆相である。/φがLレベル、φがHレベルの場合はサンプルモードとして動作し、また/φがHレベル、φがLレベルの場合はホールドモードとして動作する。まず、サンプル期間においては、トランジスタQ3はオフ、トランジスタQ4はオンとなる。したがって定電流源I2の電流はトランジスタQ2に流れ、トランジスタQ2はオンとなりエミッタフォロワとして動作する。入力信号VINは入力増幅部2に信号入力端子1から入力される。入力増幅部2は入力信号VINに従い変化する第1の出力信号V1 と、第1の出力信号V1 と変化が逆相の電圧関係にある第2の出力信号V2 を出力する。第1の出力信号V1 は、定電流源I1によりエミッタフォロワ動作をするトランジスタQ1及び抵抗R1を介してトランジスタQ2のベースに入力される。ここでトランジスタQ2はエミッタフォロワ動作をするので、接続点N2(トランジスタQ2のエミッタ)には第1の出力信号V1 からトランジスタQ1,トランジスタQ2のオン動作時におけるベース・エミッタ間電圧を差し引いた電圧、すなわち次式(6)で表される電圧が発生する。
1 −VBE(Q1)−VBE(Q2) ・・・・・・・・・・・・・(6)
ただし、ここではトランジスタQ2のベース電流による抵抗R1の電圧降下は無視している。
【0023】
一方、第2の出力信号V2 は定電流源I3によりエミッタフォロワ動作をするトランジスタQ5及び抵抗R2を介してトランジスタQ6のベースに入力される。しかし、エミッタ結合された1対のトランジスタQ7,Q8においては、サンプル期間、ホールド期間に拘わらず常にトランジスタQ7がオン、トランジスタQ8がオフとなるように基準電圧源V3 及び基準電圧源V4 が設定されている。よって、定電流源I4の電流は、トランジスタQ5−抵抗R2−トランジスタQ7の経路を流れ、トランジスタQ6はオフとなる。
2 −VBE(Q5)−I4 ・R2 <V1 −VBE(Q1)−VBE(Q2) ・・・(7)
また上記(7)式を満たすように、定電流源I4及び抵抗R2の値I4 ,R2 を設定すれば、トランジスタQ6は常に逆バイアスとなる。よって接続点N4(トランジスタQ6のエミッタ)には、第2の出力信号V2 の変化分が、トランジスタQ6のベース・エミッタ間の接合容量を介して現れる。
【0024】
したがって、接続点N5(抵抗R3と抵抗R4の共通接続点)には、接続点N2と接続点N4に発生した信号が、それぞれ抵抗R3,抵抗R4を介して現れる。ここで接続点N4に現れる第2の出力信号V2 のうち、遮断されたトランジスタQ6の接合容量から漏れる成分は、第1の出力信号V1 と第2の出力信号V2 が互いに変化が逆相の電圧関係にあることから、接続点N5で利得を下げる影響を及ぼす。しかし、これは入力増幅部2又はバッファアンプ6において利得を調整すれば、補正が可能である。
【0025】
次にホールド期間においては、トランジスタQ3はオン、トランジスタQ4はオフとなる。したがって定電流源I2の電流はトランジスタQ1−抵抗R1−トランジスタQ3の経路を流れ、トランジスタQ2はオフとなる。ここでトランジスタQ2,Q4及びトランジスタQ6,Q8は全てオフであり、またバッファアンプ6の入力バイアス電流を無視すると、コンデンサC1には電流の流入出がない。したがって、コンデンサC1はサンプル期間からホールド期間に切り替わる直前の電圧が保持される。この保持された電圧をVHCとすると、
1 −VBE(Q1)−I2 ・R1 <VHC ・・・・・・・・・(8)
上記(8)式を満たすように定電流源I2及び抵抗R1の値I2 ,R1 を設定すれば、トランジスタQ2は逆バイアスとなり、第1の出力信号V1 は接続点N2に現れない。しかし、実際にはトランジスタQ2のベース・エミッタ間の接合容量の影響で、僅かながらも第1の出力信号V1 の変化分が漏れ、接続点N2に現れる。これにより、ホールド期間中に入力信号VINの変化に従って変化する第1の出力信号V1 の変化が、保持電圧VHCを変化させ、これがバッファアンプ6を介して出力されるため、入力信号の変化が出力に影響するフィードスルーの問題が発生する。
【0026】
ところが本実施例においては、トランジスタQ6,Q7,Q8及び抵抗R2により構成される常に遮断状態の第2のスイッチング部が設けられており、この第2のスイッチング部においては、サンプル期間の説明で述べたように、トランジスタQ6のベース・エミッタ間容量の影響で接続点N4に第2の出力信号V2 の変化の影響が現れる。ここで第1の出力信号V1 と第2の出力信号V2 は、互いに変化が逆相の電圧関係である。よって遮断されたトランジスタQ2から接続点N2に漏れる第1の出力信号V1 の変化と、遮断されたトランジスタQ6から接続点N4に漏れる第2の出力信号V2 の変化とは、互いに逆位相の関係になり、これらは相殺するように働く。更に第1のスイッチング部と第2のスイッチング部とは同一の回路構成であり、また(7),(8)式を満足する範囲で定電流源I2と定電流源I4とを、また抵抗R1と抵抗R2とを同じ値に設定することにより、接続点N2と接続点N4に現れる入力信号VINの変化は同振幅になり、接続点N5には入力信号VINの変化による影響は現れず、保持電圧VHCがホールド期間中保持され、これがバッファアンプ6を介して出力端子7に出力されるので、フィードスルーを低減することができる。更にモノリシックIC化すれば各トランジスタの特性を揃えることが容易であり、より良好なフィードスルー低減が可能となる。
【0027】
【発明の効果】
以上実施例に基づいて説明したように、請求項1記載の発明によれば、サンプル・ホールド回路において、ホールド期間中に入力信号の変化が保持電圧に与える影響を逆位相の変化により相殺することによって、フィードスルーを低減することができる。また請求項2記載の発明によれば、第1,第2のスイッチング部が同一の回路構成からなり、また特性が揃うことが望ましいので、モノリシックIC化に好適なサンプル・ホールド回路を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るサンプル・ホールド回路の基本的な実施例を示すブロック構成図である。
【図2】本発明の具体的な実施例を示す回路構成図である。
【図3】従来のサンプル・ホールド回路の構成例を示す回路構成図である。
【図4】従来のサンプル・ホールド回路の他の構成例を示す回路構成図である。
【符号の説明】
1 信号入力端子
2 入力増幅部
3 第1のスイッチング部
4 第2のスイッチング部
5 加算部
6 バッファアンプ
7 出力端子

Claims (2)

  1. 入力信号から入力信号と同位相である第1の出力信号と、該第1の出力信号と変化が逆相の電圧関係にある第2の出力信号とを得る入力増幅手段と、前記入力増幅手段の第1の出力信号が一端に入力され、サンプル期間は閉成されホールド期間は開放される第1のスイッチング手段と、前記入力増幅手段の第2の出力信号が一端に入力され、常に開放状態の第2のスイッチング手段と、前記第1のスイッチング手段の他端を一方の入力端子に、また前記第2のスイッチング手段の他端を他方の入力端子に接続した加算手段と、該加算手段の出力端子と第1の基準電圧源間に接続され、サンプル電圧を保持するコンデンサとを具備したことを特徴とするサンプル・ホールド回路。
  2. 前記第1のスイッチング手段は、ベースに前記第1の出力信号が入力され、コレクタを第2の基準電圧源に接続し、エミッタを第1の抵抗の一端と他端が第3の基準電圧源に接続された第1の定電流源の一端に接続した第1のトランジスタと、ベースを前記第1の抵抗の他端に接続し、コレクタを第2の基準電圧源に接続した第2のトランジスタと、ベースを第1の制御信号の入力端子に、コレクタを前記第2のトランジスタのベースに接続し、エミッタを他端が第3の基準電圧源に接続された第2の定電流源の一端に接続した第3のトランジスタと、ベースを前記第1の制御信号と電圧変化が逆相の第2の制御信号の入力端子に、コレクタを前記第2のトランジスタのエミッタに、エミッタを前記第2の定電流源の一端に接続した第4のトランジスタとで構成され、前記第2のスイッチング手段は、ベースに前記第2の出力信号が入力され、コレクタを第2の基準電圧源に接続し、エミッタを第2の抵抗の一端と他端が第3の基準電圧源に接続された第3の定電流源の一端に接続した第5のトランジスタと、ベースを前記第2の抵抗の他端に接続し、コレクタを第2の基準電圧源に接続した第6のトランジスタと、ベースを第4の基準電圧源に接続し、コレクタを前記第6のトランジスタのベースに接続し、エミッタを他端が第3の基準電圧源に接続された第4の定電流源の一端に接続した第7のトランジスタと、ベースを第5基準電圧源に接続し、コレクタを前記第6のトランジスタのエミッタに接続し、エミッタを前記第4の定電流源の一端に接続した第8のトランジスタとで構成され、前記加算手段は、前記第2のトランジスタのエミッタに一端を接続し他端を前記コンデンサに接続した第3の抵抗と、前記第6のトランジスタのエミッタに一端を接続し他端を前記コンデンサに接続した第4の抵抗とで構成されていることを特徴とする請求項1記載のサンプル・ホールド回路。
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