サンプル動作とホールド動作とを行うサンプルホールド回路がある。高速な信号を扱うアナログデジタル変換器(AD変換器)などには、電流切替ソースフォロア型のサンプルホールド回路がしばしば用いられる。サンプルホールド回路は、例えば特許文献1に記載されている。
図4に、特許文献1に記載のサンプルホールド回路を示す。サンプルホールド回路は、入力段差動増幅回路(入力段差動対)201、ホールド回路202、及び、出力回路(出力バッファ)203を有する。なお、特許文献1では、トランジスタにバイポーラトランジスタを使用しているが、図4ではトランジスタに電界効果トランジスタを用いている。
入力段差動増幅回路201は、抵抗R21〜R24と、トランジスタTr21、Tr22とを有する。トランジスタTr21のゲートには入力信号INが入力され、トランジスタTr22のゲートには入力信号INBが入力される。入力段差動増幅回路201は、入力信号INと入力信号INBとの差電圧を所定の増幅率で増幅する。
ホールド回路202は、トランジスタTr23、Tr24、Tr25と、電圧保持用コンデンサCH21とを有する。トランジスタTr23のゲートは、入力段差動増幅回路201の出力ノードPREOUTに接続される。トランジスタTr24のゲートにはサンプリングクロック信号CLKBが入力され、トランジスタTr25のゲートにはサンプリングクロック信号CLKが入力される。電圧保持用コンデンサCH21は、トランジスタTr23のソースに接続される。
出力回路203は、トランジスタTr26と、抵抗R25とを有する。トランジスタTr26のゲートは、ホールド回路202の出力ノードVHOLDに接続される。出力回路203は、ホールド回路202の出力をバッファリングする。
図5に、動作波形を示す。サンプリングクロック信号CLK(b)と、サンプリングクロック信号CLKB(c)とは、互いに反転した信号である。つまり、サンプリングクロック信号CLKがハイ(High)のとき、サンプリングクロック信号CLKBはロー(Low)であり、サンプリングクロック信号CLKがローのとき、サンプリングクロック信号CLKBはハイである。サンプルホールド回路は、サンプリングクロック信号CLKがハイのときサンプル動作を行い、CLKがローのときホールド動作を行う。
サンプル動作について説明する。入力段差動増幅回路201は、単なる線形の増幅回路として動作し、入力信号IN(a)とINBの差電圧に比例した電圧をノードPREOUTに出力する(d)。ホールド回路202では、トランジスタTr25がオンし、トランジスタTr24はオフしている。従って、電流源I22の電流はトランジスタTr25側を流れ、トランジスタTr23は単なるソースフォロアとして動作する。トランジスタTr23は、電圧保持用コンデンサCH21を充電しつつ、PREOUT電圧に応じた電圧VHOLDを出力する(e)。
出力バッファ203は、ホールド回路202の出力ノードの電圧VHOLDをハイインピーダンスで受け、出力端子OUTに、VHOLD電圧に応じた電圧を出力する(f)。このように、サンプルホールド回路は、サンプル動作時は、単なる増幅器として動作し、入力信号に追随した電圧を出力する。
次いで、ホールド動作について説明する。サンプリングクロック信号CLKがロー、サンプリングクロック信号CLKBがハイになると、ホールド回路202のトランジスタTr25はオフし、トランジスタTr24がオンする。トランジスタTr24がオンすることで、電流源I22の電流は、トランジスタTr24を介して、前段の入力段差動増幅回路201を構成する抵抗R22を流れることになる。このため、ノードPREOUTにはR22×I22分の電圧降下が発生し、トランジスタTr23がオフする。
トランジスタTr23がオフすることで、電圧保持用コンデンサCH21は、ホールド回路202から切り離される。電圧保持用コンデンサCH21は、サンプリングクロック信号CLKがローからハイに切り替わる瞬間の電荷を保持している。従って、ホールド回路202の出力ノードの電圧VHOLDは、電圧保持用コンデンサCH21により保持され、出力バッファ203の出力も、ホールド動作に切り替わる瞬間の電圧に保持される。このように、サンプルホールド回路は、ホールド動作時は、出力電圧を動作切替時の電圧に保持する。
ここで、サンプルホールド回路では、ホールド期間中も入力段差動増幅回路201は動作している。このため、ホールド回路202のトランジスタTr23のゲート電圧(PREOUT)は、入力段差動増幅回路201の出力電圧変動に伴って変動する。トランジスタTr23のゲート電圧が変動すると、トランジスタのゲート・ソース間の寄生容量などの影響で、ゲート電圧(PREOUTの電圧)がホールド回路202の出力ノードVHOLDへと漏れこみ、VHOLD電圧を変動させる。つまり、入力信号が出力に漏れ込むフィードスルーの問題が発生する。フィードスルーは、ホールド期間中の出力電圧に、入力信号INのRF(Radio Frequency)周波数に等しい微小な振動として現れる。仮に、サンプルホールド回路を差動出力で使用したとしても、フィードスルーは、差動間で逆相のノイズになるため除去できない。
フィードスルー対策として、逆相のデータ信号を入力するトランジスタTr21のドレイン端と、トランジスタTr23の出力ノードVHOLDとを、フィードフォワード容量で接続する手法がある。フィードフォワード容量を挿入することで、フィードスルーを、逆相のAC成分でキャンセルアウトすることができる。しかしながら、ホールド期間中のトランジスタTr23の動作で発生するフィードスルー量を、フィードフォワード容量で同様に生じさせることは、実際には困難であり、フィードスルーを完全にキャンセルアウトすることはできない。
上記フィードスルーの問題に対し、特許文献1では、プルアップ回路として、トランジスタTr27を用いる。トランジスタTr27のソース・ドレインは、電源VDDと、入力段差動増幅回路201の抵抗R23と抵抗R24の接続ノードとの間に挿入される。トランジスタTr27のゲートには、制御信号VBHckが入力される。制御信号VBHckは、サンプル動作時はローで、ホールド動作時はハイに制御される。
制御信号VBHckのハイの電圧は、入力信号IN、INBの最大電圧をVmaxとし、トランジスタTr21、22のソース・ドレイン間の抵抗をRSD、その抵抗RSDを流れる電流をIoとして、
VBHck(High)>Vmax−Io・RSD
で表される。トランジスタTr27のゲートに入力される制御信号VBHckがハイになると、入力段差動増幅回路201のトランジスタTr21、Tr22はオフになる。トランジスタTr21、Tr22がオフすることで、ホールド動作時、入力信号IN、INBが変動しても、トランジスタTr23のゲート電圧は変動しない。従って、フィードスルーが抑制される。
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態のサンプルホールド回路を示している。サンプルホールド回路は、入力差動対(入力段差動増幅回路)10、ホールド回路20、及び、出力バッファ30を有する。ここまでは、通常のソースフォロア(エミッタフォロア)型サンプルホールド回路と同じである。本実施形態のサンプルホールド回路は、通常のソースフォロア型サンプルホールド回路に加えて、補正回路40を有する。
入力差動対10は、抵抗R1〜R4と、トランジスタTr1、Tr2と、電流源I1とを有する。入力差動対10には、差動信号である入力信号INと入力信号INBとが入力される。ホールド回路20は、トランジスタTr3〜Tr5と、ホールド容量Chと、電流源I2とを有する。ホールド回路20には、入力差動対10の出力と、クロック信号CLK、CLKBとが入力される。出力バッファ30は、抵抗R5と、トランジスタTr6とを有する。出力バッファ30には、ホールド回路20の出力が入力される。
入力差動対10、ホールド回路20、及び、出力バッファ30の構成及び動作は、通常のサンプルホールド回路と同様である。すなわち、入力差動対10は、入力信号INと入力信号INBとの差電圧を所定の増幅率で増幅し出力する。ホールド回路20は、入力差動対10の一方の出力端に接続される。ホールド回路20は、サンプリングクロックCLK、CLKBに基づいて、サンプル動作とホールド動作とを行う。ホールド回路20は、サンプル動作時は入力差動対10が出力するアナログ電圧を出力し、ホールド動作時はアナログ電圧を保持する。出力バッファ30は、ホールド回路20の出力をバッファリングする。
補正回路40は、トランジスタTr7〜Tr10と、ホールド容量Ch2とを有する。トランジスタTr7のゲートは、入力差動対10のトランジスタTr1のドレイン端に接続される。トランジスタTr7のドレイン端子はVDD電源に接続され、ソース端子は、ホールド容量Ch2及びトランジスタTr8のドレインに接続される。ホールド回路20のトランジスタTr3は、入力差動対10のトランジスタTr2のドレイン端に接続されている。これに対し、トランジスタTr7は、逆相側のトランジスタTr1のドレイン端に接続されているので、トランジスタTr3とは逆相の信号で制御されることになる。
トランジスタTr8のソース端子は、ホールド回路20の電流源I2に接続される。トランジスタTr8のゲートには、固定のLow信号が入力され、トランジスタTr8は、オフ状態を維持する。トランジスタTr10のドレイン端子はトランジスタTr7のゲートに接続され、ソース端子はホールド回路20の電流源I2に接続される。トランジスタTr10のゲートには、クロック信号CLKBが入力される。トランジスタTr10は、クロック信号CLKBがHighでオンし、Lowでオフする。トランジスタTr9のドレイン端子はVDD電源に接続され、ソース端子は出力端子OUT(出力バッファ30の抵抗R5)に接続される。トランジスタTr9は、ソースフォロア回路として機能する。
補正回路40は、ホールド回路20及び出力バッファ30と同様な回路構成である、トランジスタTr7、Tr8、及び、Tr10は、それぞれ、ホールド回路20のトランジスタTr3、Tr5、及び、Tr4に対応する。ホールド容量Ch2は、ホールド回路20のホールド容量Chに対応する。トランジスタTr9は、出力バッファ30のトランジスタTr6に対応する。補正回路40のトランジスタTr7〜Tr10のサイズは、対応するトランジスタのサイズと同等である。
サンプルホールド回路の動作について説明する。サンプルホールド回路に入力されるサンプリングクロック信号CLK、CLKBは、互いに反転した信号である。つまり、サンプリングクロック信号CLKがHighのとき、サンプリングクロック信号はLowであり、サンプリングクロック信号CLKがLowのとき、サンプリングクロック信号CLKBはHighである。ホールド回路20は、サンプリングクロック信号CLKがHighでCLKBがLowのときサンプル動作を行い、CLKがLowでCLKBがHighのときホールド動作を行う。
サンプル動作、すなわち、サンプリングクロック信号CLKがHighのときの動作について説明する。入力差動対10は、線形の増幅回路として動作し、入力信号INとINBの差電圧に比例した電圧をノードPREOUTに出力する。ホールド回路20では、トランジスタTr5がオンし、トランジスタTr4はオフしている。従って、電流源I2の電流はトランジスタTr5側を流れ、トランジスタTr3はソースフォロアとして動作する。トランジスタTr3は、ホールド容量Chを充電しつつ、PREOUT電圧に応じた電圧VHOLDを出力する。
ホールド回路20が出力する電圧VHOLDは、入力信号INの変化に追随して変化する。出力バッファ30は、ホールド回路20の出力ノードの電圧VHOLDをハイインピーダンスで受け、出力端子OUTに、VHOLD電圧に応じた電圧を出力する。つまり、出力バッファ30は、入力信号INに追随した信号を出力端子OUTに出力する。
一方、補正回路40のトランジスタTr7のゲートには、入力差動対10の逆相側の信号が入力される。サンプル動作時、補正回路40のトランジスタTr10はオフしており、トランジスタTr7はソースフォロア回路として動作する。トランジスタTr7は、ホールド容量Ch2充電しつつ、ゲートに入力される信号に応じた電圧を出力する。しかし、トランジスタTr7のソース端子に接続されたトランジスタTr8はオフに維持されているので、トランジスタTr7を流れる電流はほとんどない。補正回路40のトランジスタTr9は、トランジスタTr7の出力をハイインピーダンスで受け、出力端子OUTに、トランジスタTr7の出力に応じた電圧を出力する。
出力端子OUTから出力される信号は、ホールド回路20の出力信号と補正回路40の出力信号とを合わせた信号である。しかし、上記したように、補正回路40のトランジスタTr7はソース側で電流が遮断されているため、トランジスタTr7の出力レベルは、ホールド回路20のトランジスタTr3の出力レベルに比して無視できるほど低い、つまり、補正回路40の出力信号レベルは、出力バッファ30の出力信号のレベルに比べて、無視できる程低い。従って、サンプル動作時に出力端子OUTから出力される信号は、入力信号INに追随した信号となる。
次いで、ホールド動作、すなわち、サンプリングクロック信号CLKBがHighのときの動作について説明する。サンプリングクロック信号CLKがLowで、サンプリングクロック信号CLKBがHighになると、ホールド回路20のトランジスタTr5はオフし、トランジスタTr4がオンする。トランジスタTr4がオンすることで、電流源I2の電流は、トランジスタTr4を介して、前段の入力差動対10を構成する抵抗R2を流れる。これに伴い、ノードPREOUTに、電圧降下が発生し、トランジスタTr3がオフする。
トランジスタTr3がオフすることで、ホールド容量Chは、ホールド回路20から切り離される。ホールド容量Chは、サンプリングクロック信号CLKがLowからHighに切り替わる瞬間の電荷を保持している。ホールド容量Chは、ホールド回路20の出力ノードの電圧VHLODを保持する。出力バッファ30は、ホールド容量Chが保持する電圧に応じた信号を、出力端子OUTに出力する。
一方、補正回路40では、サンプリングクロック信号CLKBがHighになることで、トランジスタTr10がオンする。トランジスタTr10がオンすると、電流源I2の電流がトランジスタTr10を介して、前段の入力差動対10を構成する抵抗R1を流れる。これに伴い、トランジスタTr7のゲート電圧に電圧降下が生じ、トランジスタTr7がオフする。この動作は、ホールド回路20で、トランジスタTr4がオンしてトランジスタTr3がオフする動作と同様である。つまり、トランジスタTrは、トランジスタTr3と同様な条件下でオフ状態になる。
トランジスタTr7がオフすることで、ホールド容量Ch2への充電が停止する。ホールド容量Ch2は、サンプリングクロック信号CLKBがLowからHighに変化する瞬間の電荷を保持している。ホールド容量Ch2は、トランジスタTr9の電圧を保持する。トランジスタTr9は、ホールド容量Ch2が保持する電圧に応じた信号を、出力端子OUTに出力する。
入力差動対10は、ホールド期間中も差動増幅を続ける。これに起因して、ホールド回路20のトランジスタTr3のゲート電圧は入力信号の変動に応じて変動し、RF信号の漏れ(フィードスルー)が発生する。補正回路40でも、同様に、トランジスタTr7のゲート電圧が入力信号の変動に応じて変動し、フィードスルーが発生する。トランジスタTr3とトランジスタTr7とは、同様な条件下でオフ状態となっており、トランジスタTr3を介したフィードスルーとトランジスタTr7を介したフィードスルーは、同様な程度になる。
トランジスタTr7のゲートは、入力差動対10の抵抗R1側に接続されており、トランジスタTr3とは逆相の信号で制御されている。このため、トランジスタTr7を介して生じるフィードスルーは、トランジスタTr3を介して生じるフィードスルーとは逆相になる。従って、補正回路40では、ホールド動作時に、ホールド回路20で生じるフィードスルーと逆相のフィードスルーを生じる。トランジスタTr3を介したフィードスルーとトランジスタTr7を介したフィードスルーは同程度であり、かつ、両者のフィードスルーは逆相の関係にあるので、両者の出力を出力端子OUTで加算すると、フィードスルーをキャンセルアウトすることができる。すなわち、出力端子OUTから、フィードスルーがない信号を出力することができる。
本実施形態のサンプルホールド回路は、入力差動対10と、ホールド回路20と、出力バッファ30と、補正回路40とを有する。入力差動対10は、差動信号である入力信号IN、INBを所定の増幅率で増幅し出力する。ホールド回路20は、入力差動対10の一方の出力端に接続され、サンプリングクロック信号CLK、CLKBに基づいて、入力信号INに応じた信号を出力するサンプル動作と、出力電圧を保持するホールド動作を行う。出力バッファ30は、ホールド回路の出力をバッファリングする。補正回路40は、ホールド動作時に、ホールド回路20で生じるフィードスルーとは逆相のフィードスルーを生じる。補正回路40は、発生させた逆相のフィードスルーを、出力バッファ30の出力端子OUTに加える。
本実施形態では、補正回路40で、ホールド動作時にホールド回路20で生じるフィードスルーと逆相のフィードスルーを発生させ、これを、出力バッファ30の出力に加える。逆相のフィードスルーを加えることで、フィードスルーの影響を低減できる。本実施形態では、ホールド動作時も入力差動対10は動作しており、特許文献1とは異なり、プルアップ回路を用いて入力差動対10を停止させる必要がない。つまり、本実施形態では、入力差動対10を停止させずに、フィードスルーの抑制が可能である。
本実施形態では、ホールド回路20内のソースフォロア回路を構成するトランジスタTr3に、入力信号INに追随する信号を入力する。トランジスタTr3は、サンプル動作時は入力信号INに追随した信号を出力する。また、トランジスタTr3は、ホールド動作時はオフに制御される。補正回路40内のソースフォロア回路を構成するトランジスタTr7には、入力信号INとは逆相の入力信号INBが入力される。トランジスタTr7のソース側は、常時オフに制御されるトランジスタTr8で電流が遮断されている。トランジスタTr7は、ホールド動作時は、オフに制御される。
ホールド回路20では、ホールド動作時に、オフ状態のトランジスタTr3を介して入力信号INが出力側に漏れ込むフィードスルーが発生する。また、補正回路40では、ホールド動作時に、オフ状態のトランジスタTr7を介して入力信号INBが出力側に漏れ込むフィードスルーが発生する。入力信号INと入力信号INBとは逆相の関係にあるので、トランジスタTr3とトランジスタTr7とでは、互いに逆相の入力信号に起因するフィードスルーが発生することになる。双方のトランジスタで生じたフィードスルーを加えることで、フィードスルーのキャンセルが可能である。
サンプル動作については、トランジスタTr7のソース側の電流が遮断されているため、サンプル動作時の補正回路40の出力は、ホールド回路20の出力に比して無視できるほどに小さい。従って、補正回路40は、サンプル動作に影響を与えない。
ホールド回路20のトランジスタTr3と、補正回路40のトランジスタTr7とは、同じサイズで構成することが好ましい。また、ホールド動作時に、トランジスタTr3とトランジスタTr7とを、同等な条件でオフにすることが好ましい。双方のトランジスタを同じサイズで構成し、かつ、双方のトランジスタを同じ条件でオフにすることで、発生するフィードスルーの量を同等にすることができる。この場合、フィードスルーを、より効果的にキャンセルアウトすることができる。
本実施形態では、フィードスルーの抑制に補正回路40が必要である。しかし、補正回路40内のトランジスタTr7はソース側で電流が遮断され、トランジスタTr8は常時オフで用いられる。このため、補正回路40を追加することで消費電力が大きく増加することはない。
図2は、本発明の第2実施形態のサンプルホールド回路を示している。本実施形態のサンプルホールド回路の構成は、図1に示す第1実施形態のサンプルホールドに対して、逆相側にもホールド回路50、出力バッファ60、及び、補正回路70を追加した構成である。ホールド回路50、出力バッファ60、及び、補正回路70の構成は、入力信号が逆相になることを除けば、図1のホールド回路20、出力バッファ30、及び、補正回路40と同様である。
ホールド回路50、出力バッファ60、及び、補正回路70内の各要素は、ホールド回路20、出力バッファ30、及び、補正回路40内の対応する各要素に添え字bを付けたもので表す。なお、図1の補正回路40におけるトランジスタTr10は、逆相側のホールド回路50におけるトランジスタTr4bで代用できるので、本実施形態では不要である。
ホールド回路(逆相側ホールド回路)50は、入力差動対10の他方の出力端に接続される。ホールド回路50は、サンプリングクロックCLK、CLKBに基づいて、サンプル動作とホールド動作とを行う。ホールド回路50は、サンプル動作時は、入力差動対が出力する逆相側の信号、つまり、入力信号INBに応じたアナログ電圧を出力し、ホールド動作時は出力電圧を保持する。出力バッファ(逆相側出力バッファ)60は、ホールド回路50の出力をバッファリングする。補正回路(逆相側補正回路)70は、ホールド回路50で生じるフィードスルーと逆相のフィードスルーを生じ、生じたフィードスルーを、出力バッファ60の出力に加える。
サンプル動作について説明する。ホールド回路20、出力バッファ30、及び、補正回路40の動作は、第1実施形態と同様である。すなわち、ホールド回路20では、トランジスタTr5がオンし、トランジスタTr4はオフする。トランジスタTr3のゲートには、入力信号INに応じた電圧(PREOUT)が入力され、トランジスタTr3は、PREOUTに応じたアナログ電圧を出力すると共に、ホールド容量Chを充電する。出力バッファ30は、ホールド回路20の出力をバッファリングする。
補正回路40では、トランジスタTr7のゲートに入力信号INBに応じた電圧(PREOUTB)が入力される。しかし、トランジスタTr7のソース側で電流が遮断されているため、補正回路40の出力は、ホールド回路20の出力に比して、無視できるほど小さい。従って、補正回路40の出力は出力バッファ30の出力に影響を与えず、出力バッファ30は、出力端子OUTから、入力信号INに追随した信号を出力する。
逆相側についても、動作は上記と同じである。すなわち、ホールド回路50では、トランジスタTr5bがオンし、トランジスタTr4bがオフする。トランジスタTr3bのゲートには、入力信号INBに応じた電圧(PREOUTB)が入力され、トランジスタTr3bは、PREOUTBに応じたアナログ電圧を出力すると共に、ホールド容量Chbを充電する。出力バッファ60は、ホールド回路50の出力をバッファリングする。
補正回路70では、トランジスタTr7bのゲートに入力信号INに応じた電圧(PREOUTB)が入力される。しかし、トランジスタTr7bのソース側で電流が遮断されているため、補正回路70の出力は、ホールド回路50の出力に比して、無視できるほど小さい。従って、補正回路70の出力は出力バッファ60の出力に影響を与えず、出力バッファ60は、出力端子OUTBから、入力信号INBに追随した信号を出力する。
ホールド動作について説明する。ホールド回路20、出力バッファ30、及び、補正回路40の動作は、第1実施形態と同様である。すなわち、ホールド回路20では、トランジスタTr4がオンし、トランジスタTr5がオフする。トランジスタTr3のゲート電圧は、R2×I2分の電圧降下が生じ、トランジスタTr3がオフになる。トランジスタTr3がオフになることで、ホールド回路20の出力は、ホールド容量Chが保持する電圧VHOLDに保持される。
補正回路40では、逆相側のホールド回路50でトランジスタTr4bがオンすることで、トランジスタTr7のゲート電圧にR1×I2b分の電圧降下が生じ、トランジスタTr7がオフになる。トランジスタTr7がオフになることで、補正回路40の出力は、ホールド容量Ch2が保持する電圧に保持される。
ホールド回路20では、オフになったトランジスタTr3を介して入力信号INが漏れ込むフィードスルーが発生する。また、補正回路40では、オフになったトランジスタTr7を介して入力信号INBが漏れ込むフィードスルーが発生する。トランジスタTr3とトランジスタTr7とは、同等な条件でオフになっているので、発生するフィードスルーの量は同じである。ホールド回路20で生じるフィードスルーと、補正回路40で生じるフィードスルーとは、互いに逆相の関係にあるので、これらを出力バッファ30の出力端子OUTで加算することで、フィードスルーをキャンセルアウトすることができる。
逆相側についても、動作は上記と同様である。すなわち、ホールド回路50では、トランジスタTr4bがオンし、トランジスタTr5bがオフする。トランジスタTr3bのゲート電圧は、R1×I2b分の電圧降下が生じ、トランジスタTr3bがオフになる。トランジスタTr3bがオフになることで、ホールド回路50の出力は、ホールド容量Chbが保持する電圧VHOLDBに保持される。
補正回路70では、逆相側のホールド回路20でトランジスタTr4がオンすることで、トランジスタTr7bのゲート電圧にR2×I2分の電圧降下が生じ、トランジスタTr7bがオフになる。トランジスタTr7bがオフになることで、補正回路70の出力は、ホールド容量Ch2bが保持する電圧に保持される。
ホールド回路50では、オフになったトランジスタTr3bを介して入力信号INBが漏れ込むフィードスルーが発生する。また、補正回路70では、オフになったトランジスタTr7bを介して入力信号INが漏れ込むフィードスルーが発生する。トランジスタTr3bとトランジスタTr7bとは、同様な条件でオフになっているため、発生するフィードスルーの量は同じである。ホールド回路50で生じるフィードスルーと、補正回路70で生じるフィードスルーとは、互いに逆相の関係にあるので、これらを出力バッファ60の出力端子OUTBで加算することで、フィードスルーをキャンセルアウトすることができる。
ここで、ホールド回路20にて、トランジスタTr3の入力電圧が大きくなるとリーク電流が生じ、ホールド電圧に影響をもたらすドループの問題が発生する。ドループは、ホールド期間中の出力電圧低下として現れる。電圧低下の程度は、ホールド開始時の電圧に依存し、ホールド電圧が高いほど、ドループ量(電圧低下量)は増大する。ドループ量は、ホールド開始時の電圧に依存するため、単に図4のサンプルホールド回路を差動出力で用いるだけでは、ドループの問題は解消できない。
本実施形態では、サンプルホールド回路の出力OUTとOUTB間の差動出力を使用することで、ドループの抑制が可能である。以下、ドループの抑制について説明する。出力端子OUTでは、トランジスタTr3経由、トランジスタTr7経由の互いに逆相の入力信号を起源に持つドループ量が加算される。逆相側出力である出力端子OUTBでも、同様に、トランジスタTr3b経由、トランジスタTr7b経由の互いに逆相の入力信号を期限に持つドループ量が加算される。従って、差動の正補で、同程度のドループが出力されることになる。
図4に示すサンプルホールド回路を差動出力で用いる場合、差動の正補でドループ量が異なっていた。このため、差動出力をとっても、ドループのキャンセルはできなかった。本実施形態では、出力端子OUTと出力端子OUTBとで同程度のドループ量が出力されるので、差動出力をとると、コモンノイズとしてキャンセルすることができる。例えば、サンプルホールド回路の後段の回路で、OUTとOUTBとの差動出力をとることで、コモンノイズのキャンセルが可能である。
或いは、サンプルホールド回路に差動アンプを追加し、サンプルホールド回路でコモンノイズをキャンセルしてもよい。図3に、差動アンプを有するサンプルホールド回路を示す。差動アンプ(出力差動対)80の構成は、入力差動対10と同様である。差動アンプ80の一方の入力にOUTを接続し、他方にOUTBを接続する。差動アンプ80の出力端子OUTと出力端子OUTBとの間を出力とすることで、ドループの影響を排除した出力を得ることができる。
ドループの問題に関して、特許文献2に記載のA/D変換器では、以下のようにしてドループの問題を解決している。すなわち、第1のサンプルホールド(SH)回路と同一の特性を有し、かつ、同じクロック信号に同期する第2のSH回路に所定の固定電圧を入力する。第1のSH回路の出力をA/D変換する第1のA/D変換回路に加えて、第2のSH回路の出力をA/D変換する第2のA/D変換回路を用いる。第1、第2のA/D変換回路の出力をデジタル演算回路で処理し、ドループによる誤差をキャンセルする。
しかしながら、特許文献2では、ドループを解決するために、余分に1組のSH回路とA/D変換回路とを用意しなくてはならず、更に、ドループキャンセル用にデジタル演算回路を設け、演算処理を行う必要がある。このため、ドループ処理のためにLSIに必要なオーバーヘッドがきわめて高くなる。また、特許文献2では、ドループで生じる電圧降下は常に一定であることを前提としている。しかし、前述の通り、実際にはドループで生じる電圧降下の量は、ホールド開始時の電圧に依存するため、特許文献2で誤差がキャンセルされることは難しい。
本実施形態では、サンプルホールド回路を差動出力で用いる。本実施形態では、フィードスルーの抑制が可能であると共に、差動出力間の差動出力をとることで、ドループの影響を抑制可能である。本実施形態では、余分なサンプルホールド回路やA/D変換器が不要であると共に、ドループ処理のためのデジタル演算器が別途必要ない。従って、回路規模や消費電力の増大を招くことなく、ドループの問題の解消が可能である。
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明のサンプルホールド回路及びフィードスルー抑制方法は、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。