JP3725233B2 - トレハロース誘導体及び界面活性剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規トレハロース誘導体及び界面活性能力及び皮膚安全性に優れた界面活性剤に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、界面活性剤として数多くの化合物が知られており、多方面に使用されている。 しかしながら、これらの界面活性剤の中には人体に直接接触するシャンプー、リンス、石鹸等の香粧品に用いた場合、皮膚に対する刺激を示すものも多い。このため、より刺激性の低い界面活性剤の開発が望まれていた。
【0003】
一方、アルキルエステル化した多糖類は食品、化粧品などに広く汎用されている界面活性剤であり、中でも糖骨格としてショ糖を用いたショ糖アルキルエステルに関する報告は多く、また広く工業的に用いられている。また、トレハロース誘導体を界面活性剤として、トレハロース−6,6’−ジアルキルエステル(特開昭60−258195号公報、特開昭62−91236号公報)や、トレハロース−6−脂肪酸エステルを用いることを報告もあるが(特開平5−168893号公報)、これらはエステル結合を有していることからアルカリに弱く、その用途範囲は限られる。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記事情に鑑み、鋭意研究を行った結果、下記の一般構造式(1)で示されるトレハロース誘導体が、優れた界面活性能力を持つと同時に皮膚に対する高い安全性を有することを見出し、本発明を完成した。即ち、本発明は、下記一般構造式(1)で示されるトレハロース誘導体、及び該トレハロース誘導体からなる界面活性剤に関する。
【化2】
(但し、R1 は炭素数7〜21で直鎖または分岐鎖の、飽和または不飽和炭化水素基、R 2は水素原子、炭素数1〜22で直鎖または分岐鎖の、飽和または不飽和炭化水素基である。)
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明のトレハロース誘導体の一つである上記一般構造式(1)で、R2 が水素原子であるトレハロース誘導体は、トレハロースと脂肪族炭化水素鎖が直鎖または分岐鎖で飽和または不飽和の、炭素数8〜22のアセタールとを酸触媒下に縮合する事により得ることが出来る。また、上記一般構造式(1)でR2 が炭素数1〜22で直鎖または分岐鎖の、飽和または不飽和の炭化水素基をもつトレハロース誘導体は、下記一般構造式(2)で示されるアセタール化合物とを酸触媒下に縮合する事により得ることが出来る。
【化3】
(但し、R1 は炭素数7〜21で直鎖または分岐鎖の、飽和または不飽和炭化水素基、R 2は炭素数1〜22で直鎖または分岐鎖の、飽和または不飽和炭化水素基、R3 はメチル基あるいはエチル基である。)
【0006】
本発明の上記界面活性剤は優れた界面活性能力、安全性等から、皮膚洗浄剤、頭髪洗浄剤、皮膚手入れ剤、頭髪手入れ剤、メイクアップ剤、入浴剤、石鹸等の化粧料、医薬品、食品等に使用でき、剤型としても液状、乳液状、クリーム状、粉末状、固形状、エアゾール状等の各種剤型中に界面活性剤として配合が可能である。
【0007】
以下、本発明の詳細について実施例に基づき説明する。尚、実施例に示すwt%とは、重量%を表す。
【0008】
【実施例】
実施例1 (4,6−O−ドデシリデン−トレハロースの製造)
α,α−トレハロース二水和物37.8gを300mlのジメチルホルムアミド(DMF)に溶解した後、100mlのDMFを減圧下に除去し結合水を脱水した。この溶液に100mgのp−トルエンスルフォン酸と25.8gドデカナールジエチルアセタールを加え、80℃にて生成するエタノールを除去しながら、2時間反応した。反応溶液を冷却した後、200mlのヘキサンで3回抽出して未反応のドデカナールジエチルアセタールを除去した。DMF溶液を減圧下において約50ml程度まで濃縮した後、100mlのアセトンを加え、触媒として用いたp−トルエンスルフォン酸と未反応のトレハロースを沈澱させ濾別除去した。沈澱を100mlのn−ブタノールにて洗浄し、洗浄液を濾液に加えた。濾液を減圧蒸留する事により淡黄色な粘性シロップを得た。
【0009】
この粘性シロップをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/メタノール=4/1)にて精製することにより、薄層クロマトグラフィーにおけるr.f値0.76(展開溶媒:クロロホルム/メタノール=3/1)のフラクションを濃縮する事により、26.4gの白色固体を得た。得られた固体の13C−NMRペクトル測定において103.2ppmにアセタール基、また80.9ppmにトレハロース4位及び68.5ppmにトレハロース6位のシグナルを確認したことから、その構造を確認した。
【0010】
実施例2 (4,6−O−(10−ウンデセニリデン)−トレハロースの製造)
実施例1で用いたドデカナールジエチルアセタール25.8gを10−ウンデセナールジメチルアセタール24.2gに代えた以外は同様に行い22.1gの白色固体を得た。得られた固体の13C−NMR測定により本発明の4,6−O−(10−ウンデセニリデン)−トレハロースの生成を確認した。
【0011】
実施例3 (4,6−O−(3,7ージメチルー6ーオクテニリデン)−トレハロースの製造)
トレハロース20gを400mlのDMFに溶解した。この溶液にシトロネラールジエチルアセタール10gと酸性イオン交換樹脂(アンバーライト)を加えた。80℃まで昇温した後、18時間撹拌した。反応溶液を冷却した後、イオン交換樹脂を濾別し、濾液に400mlのヘキサンで5回抽出してシトロネラールジエチルアセタールを除去した。DMF溶液を減圧下において約50ml程度まで濃縮した後、100mlのアセトンを加え、未反応のトレハロースを沈澱させ濾別除去した。沈澱を少量のn−ブタノールにて洗浄し、洗浄液を濾液に加えた。濾液を減圧蒸留する事により淡黄色な粘性シロップを得た。この粘性シロップをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/メタノール=4/1)にて精製することにより、15.3gの白色固体として4,6−O−(3,7ージメチル−6−オクテニリデン)−トレハロースを得た。
【0012】
実施例4 (4,6−O−オクタデシリデン−トレハロースの製造)
実施例1で用いたドデカナールジエチルアセタール25.8gをオクタデカナールジメチルアセタール25gに代えた以外は同様に行い14.1gの白色固体を得た。得られた固体の13C−NMR測定により本発明の4,6−O−オクタデシリデン−トレハロースの生成を確認した。
【0013】
実施例5 (4,6−O−(2)−トリデシリデン−トレハロースの製造)
α,α−トレハロース二水和物37.8gを300mlのジメチルホルムアミド(DMF)に溶解した後、100mlのDMFを減圧下に除去し結合水を脱水した。この溶液に100mgのp−トルエンスルフォン酸と24.4gの2,2−ジメトキシトリデカンを加え、70℃にて生成するメタノールを除去しながら、2時間反応させた。反応溶液を冷却した後、200mlのヘキサンで3回洗浄して未反応の2,2−ジメトキシトリデカンを除去した。次いで、DMF溶液を減圧下において約50ml程度まで濃縮した後、100mlのアセトンを加え、未反応のトレハロースを沈澱させ濾別除去した。残さを100mlのn−ブタノールにて洗浄し、洗浄液を濾液に加えた。次いで、溶媒を減圧下で留去し、淡黄色の粘性シロップを得た。
【0014】
この粘性シロップをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/メタノール=4/1)にて精製する事により、薄層クロマトグラフィーにおけるr.f値0.32(展開溶媒:クロロホルム/メタノール=6/1)のフラクションを得た。次いで、このフラクションを減圧濃縮する事により、20.9gの白色固体を得た。
【0015】
得られた固体のIR(KBr)測定において、図1に示す様に1350cm-1付近に糖骨格のOH基に由来するブロードなピークを、2960〜2850cm-1にアルキル鎖に由来するピークを、1150〜980cm-1に糖骨格及びアセタール基に由来するピークを確認した。また、13C−NMR測定において、102.0ppm及び102.7ppmにアセタール基のシグナルを、また、FAB−MS測定において、〔M+H〕+ :523が検出されたことから、4,6−O−(2)−トリデシリデン−トレハロースの生成を確認した。
【0016】
実施例6 (4,6−O−(2)−ペンタデシリデン−トレハロースの製造)
実施例5で、2,2−ジメトキシトリデカン24.4gを、2,2−ジエトキシペンタデカン30.0gに代えた以外は同様に行い、22.0gの白色固体を得た。得られた固体について実施例1と同様に、IR測定及び13C−NMR測定、FAB−MS測定を行い、本発明の4,6−O−(2)−ペンタデシリデン−トレハロースの生成を確認した。
【0017】
実施例7 (4,6−O−(4)−オクタデシリデン−トレハロースの製造)
実施例5で、2,2−ジメトキシトリデカン24.4gを、4,4−ジメトキシオクタデカン34.2gに代えた以外は同様に行い、24.8gの白色固体を得た。得られた固体について実施例15同様に、IR測定及び13C−NMR測定、FAB−MS測定を行い、本発明の4,6−O−(4)−オクタデシリデン−トレハロースの生成を確認した。
【0018】
実施例8 (4,6−O−(11)−ドデセニリデン−トレハロースの製造)
実施例5で、2,2−ジメトキシトリデカン24.4gを、11,11−ジメトキシドデセン22.8gに代えた以外は同様に行い20.1gの白色固体を得た。得られた固体について実施例5と同様に、IR測定及び13C−NMR測定、FAB−MS測定を行い、本発明の4,6−O−(11)−ドデセニリデン−トレハロースの生成を確認した。
【0019】
実施例9 (4,6−O−(2)−シュードイオニリデン−トレハロースの製造)
シュードイオノン(6,9−ジメチル−3,5,8−ウンデシルトリエン−2−オン)より得た、シュードイオノン−2,2−ジメチルアセタール21.3gを、実施例5で用いた2,2−ジメトキシトリデカン24.4gに代えて、同様に行い20.2gの白色固体を得た。得られた固体について実施例5と同様に、IR測定及び13C−NMR測定、FAB−MS測定を行い、本発明の4,6−O−(2)−シュードイオニリデン−トレハロースの生成を確認した。
【0020】
実施例10 (4,6−O−(2)−ドデシリデン−トレハロースの製造)
トレハロース20gを400mlのDMFに溶解した。この溶液に2,2−ジメトキシドデカン10gと酸性イオン交換樹脂(アンバーライト)を加え、80℃まで昇温した後、生成するメタノールを除去しながら18時間撹拌した。
反応溶液を冷却した後、イオン交換樹脂を濾別し、濾液を400mlのヘキサンで5回洗浄してして未反応の2,2−ジメトキシドデカンを除去した。DMF溶液を減圧下において約50ml程度まで濃縮した後、100mlのアセトンを加えて未反応のトレハロースを沈澱させ濾別除去した。残渣を少量のn−ブタノールにて洗浄し、洗浄液を濾液に加えた。次いで、溶媒を留去し淡黄色の粘性シロップを得た。この粘性シロップをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/メタノール=4/1)にて精製することにより、8.3gの白色固体として4,6−O−(2)−ドデシリデン−トレハロースを得た。
【0021】
次に、溶解性を確認する目的で、実施例6にて得られた4,6−O−(2)−ペンタデシリデン−トレハロースと、同一の炭素数を有するが分岐鎖を有しない4,6−O−ペンタデシリデン−トレハロースを実施例1と同じ製造方法により合成し、これらを1wt%の水溶液としその外観を肉眼で判定した。その結果、4,6−O−ペンタデシリデン−トレハロースに比べ、分岐鎖を有する4,6−O−(2)−ペンタデシリデン−トレハロースは、極めて容易に水に溶け、水溶性に優れている性質を示した。
【0022】
次に、安全性試験として、皮膚に対する刺激性を以下の方法で調べた。20人の被験者に、上記実施例で得られたトレハロース誘導体の0.2wt%水溶液1mlをしみこませたパッチテスト用絆創膏を24時間貼布し、貼布除去後24時間後に刺激性を判定した。判定結果は、はっきりと紅斑を示したものを陽性とし、その陽性率で示した。また、対照としてラウリル硫酸ナトリウム塩を用いた。その結果を表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
表1の如く、本発明のトレハロース誘導体は皮膚刺激性はなく皮膚安全性は明らかに優れている。
【0025】
応用例1、比較例1 (液状皮膚洗浄剤)
下記表2の組成からなる液状皮膚洗浄剤を調製した。尚、応用例1で用いた4,6−O−ドデシリデン−トレハロースは実施例1にて得られた物である。また、比較例として4,6−O−ドデシリデン−トレハロースを含まない液状皮膚洗浄剤を調製した。そしてパネラー10人が応用例1と比較例1の液状皮膚洗浄剤で、身体を洗浄したときの比較官能評価試験を実施した。尚、比較官能評価試験の判定基準は以下の通りである。
◎;比較例に比べ極めて良好(良いと答えた人が9人以上)
○;比較例に比べ良好(良いと答えた人が7〜 8人)
△;比較例に比べ同程度(良いと答えた人が4〜 6人)
×;比較例に比べ劣る(良いと答えた人が3人以下)
【0026】
【表2】
【0027】
応用例2 (水中油型スキンクリーム)
下記表3組成からなる水中油型スキンクリームを調製した。尚、用いた4,6−O−オクタデシリデン−トレハロースは実施例4にて得られた物である。このクリームの乳化状態は極めて良好で、べたつかず肌なじみも良好であった。
【0028】
【表3】
【0029】
応用例3 (頭髪洗浄剤)
下記表4の組成からなる頭髪洗浄剤を調製した。尚、用いた4,6−O−( 10−ウンデセニリデン)−トリハロースは実施例2にて得られた物である。この頭髪洗浄剤で洗髪した結果、泡立ちは優れており感触も良好であった。
【0030】
【表4】
【0031】
応用例4、比較例2 (洗顔剤)
下記表5の組成からなる洗顔剤を調製した。尚、用いた4,6−O−(2)−トリデシリデン−トレハロースは実施例5にて得られた物である。比較例2として、4,6−O−(2)−トリデシリデン−トレハロースを含まない洗顔剤を調製した。そしてパネラー10人が応用例4と比較例2の洗顔剤で洗顔し、前記の比較官能試験を実施した。その結果を表5に示す。
【0032】
【表5】
【0033】
応用例5 (水中油型スキンクリーム)
前記表3組成において、4,6−O−オクタデシリデン−トレハロースの代わりに、実施例6で得られた4,6−O−(2)−ペンタデシリデン−トレハロースを用い、水中油型スキンクリームを調製した。このクリームの乳化状態は極めて良好で、べたつかず肌なじみも良好であった。
【0034】
応用例6 (ヘアーリンス剤)
下記表6の組成からなるヘアーリンス剤を調製した。尚、用いた4,6−O−(4)−オクタデシリデン−トレハロースは実施例7にて得られたものである。このヘアーリンスは乳化状態も極めて良好で、使用感に優れており乾燥後の風合いも良好であった。
【0035】
【表6】
【0036】
【発明の効果】
本発明のトレハロース誘導体は界面活性能力及び皮膚安全性に優れており、界面活性剤として広範囲に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の4,6−O−(2)トリデシリデン−トレハロースのIRスペクトルを示す図である。
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