JP2004331582A - 水性化粧料 - Google Patents

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Abstract

【課題】水性化粧料の分野では、パラベン類やフェノキシエタノール等が防腐剤として用いられており、低級アルコールが清涼感の付与や収斂効果のために汎用されている。しかし、これらの防腐剤や低級アルコールを配合した水性化粧料は、使用する際に刺すような痛みやヒリヒリ感又はチクチク感といった皮膚刺激性を与える場合があり、特に油性成分の少ない水性化粧料においてはその傾向が顕著である。そこで、本発明においては、皮膚刺激性が低く、使用感も良好な水性化粧料の提供を目的とする。
【解決手段】皮膚刺激を低減する皮膚刺激低減剤として機能するα−D−グルコピラノシルグリセロールを水性化粧料に配合する。α−D−グルコピラノシルグリセロールを含有する水性化粧料は、皮膚への刺激性が非常に低いだけではなく、ベタツキやテカリといった使用する際の不快感もなく、使用感にも優れている。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、α−D−グルコピラノシルグリセロールを含有することを特徴とする水性化粧料に関する。さらに詳しくは、α−D−グルコピラノシルグリセロールを含有することにより、皮膚刺激性が低減された水性化粧料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、水性化粧料の分野では、パラベン類やフェノキシエタノール等が防腐剤として用いられており、低級アルコールが清涼感の付与や収斂効果のために汎用されている。しかし、これらの防腐剤や低級アルコールを配合した水性化粧料は、使用する際に刺すような痛みやヒリヒリ感又はチクチク感といった皮膚刺激性を与える場合があり、特に油性成分の少ない水性化粧料においてはその傾向が顕著である。このため、皮膚刺激性の低い化粧料を提供することを目的に、防腐剤低減の検討や皮膚刺激低減成分の配合検討など様々な試みがなされている。これまでに検討されている防腐剤低減の方法としては、糖類と多価アルコール類を併用する方法(特許文献1参照)等が知られており、また皮膚刺激低減成分としては、ヤエヤマアオキの抽出物(特許文献2参照),ラフィノース(特許文献3参照)等が知られている。しかし、グリセリンをはじめとする多価アルコール類や糖類などの従来の保湿剤は、肌に塗布した後にベタツキが残る場合や肌にぎらぎらとしたテカリが残るといった使用感上の欠点を有しており、また皮膚刺激低減成分は、効果や副作用、安定性などの点から未だ十分なものが得られていないのが現状であった。
【0003】
一方、本発明に係るα−D−グルコピラノシルグリセロールは、既知の物質であり、低褐変性、低メイラード反応性、加熱安定性、非う食性、難消化性、高い保湿性を有し、食品、化成品、医薬品に利用できることが報告されている(特許文献4参照)。しかし、α−D−グルコピラノシルグリセロールを含有する水性化粧料についての開示はなく、またα−D−グルコピラノシルグリセロールが皮膚刺激性を低減する効果があることや水性化粧料に配合した場合に使用感が非常に優れていることに関してはこれまで全く知られていなかった。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−264830号公報
【特許文献2】
特開2001−213755号公報
【特許文献3】
特開2000−186007号公報
【特許文献4】
特開平11−222496号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の従来の問題点を解決するとともに、より使用感が良好で低刺激性の化粧料が求められている現状に鑑みてなされたものである。したがって、本発明の目的は、低刺激性で使用感も良好な水性化粧料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、皮膚刺激を低減する皮膚刺激低減剤として機能する成分について研究を重ねた結果、α−D−グルコピラノシルグリセロールが水性化粧料における皮膚刺激性を低減する皮膚刺激低減剤として機能することを見出し、さらに検討を重ね、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、皮膚刺激を低減する皮膚刺激低減剤として機能するα−D−グルコピラノシルグリセロールを含有し、ベタツキやテカリがなく使用感にも優れた低刺激性の水性化粧料を提供するものである。特に、パラベン類(メチルパラベン,エチルパラベン,プロピルパラベン,ブチルパラベン)、フェノキシエタノール、あるいは低級アルコール等を含有する水性化粧料にα−D−グルコピラノシルグリセロールを配合した場合には、これらの皮膚刺激性を低減する効果に優れている。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるα−D−グルコピラノシルグリセロールには、(2R)−1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール(化1),(2S)−1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール(化2),2−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール(化3)の3成分が知られており、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0009】
【化1】
Figure 2004331582
【0010】
【化2】
Figure 2004331582
【0011】
【化3】
Figure 2004331582
【0012】
α−D−グルコピラノシルグリセロールを得る方法としては、カビ類のα−グルコシダーゼをグリセロール溶液中で糖類の基質に作用させる方法、清酒,味噌,みりん等の醸造物から抽出,精製する方法、イソマルトース,マルチトールなどを四酢酸鉛や過ヨウ素酸塩でグリコール開裂したものを還元する方法、あるいはKoenigs−Knorr反応により合成したβ−グルコシドをアノメリゼーションした後、β−グルコシダーゼでβ−グルコシドを加水分解する方法などが挙げられるが、カビ類のα−グルコシダーゼをグリセロール溶液中で糖類の基質に作用させる方法が最も効率が良く特に好ましい。
【0013】
α−D−グルコピラノシルグリセロールは、そのままでも使用することができるが、水や極性溶媒に希釈したり、変性や分解のない範囲で脱色,脱臭の精製処理を行ったり、カラムクロマトグラフィー等による分画処理を行った後に用いてもよい。また、リポソーム等のベシクルやマイクロカプセル等に内包させて用いることもできる。
【0014】
本発明に係るα−D−グルコピラノシルグリセロールは、皮膚刺激を低減する皮膚刺激低減剤として機能し、特に水性化粧料に配合した場合に高い効果を発揮する。このため、α−D−グルコピラノシルグリセロールを含有する低刺激性水性化粧料は、敏感肌用の水性化粧料として使用することもできる。また、α−D−グルコピラノシルグリセロールを含有する水性化粧料は、ベタツキやテカリがなく使用感にも優れている。
【0015】
本発明に係るα−D−グルコピラノシルグリセロールの水性化粧料への配合量は、水性化粧料の種類や目的等によって調整することができるが、皮膚刺激を低減する作用や使用感などの点から、水性化粧料の全量に対して0.01〜30重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量%であり、最も好ましくは1〜15重量%である。
【0016】
本発明に係るα−D−グルコピラノシルグリセロールを含有する水性化粧料の剤型としては、水性成分を多く含む剤型であれば特に限定されないが、化粧水,ジェル状化粧料,乳液,液体洗浄料,頭髪用ローション,液体入浴料などが挙げられ、化粧水,ジェル状化粧料,液体洗浄料が好ましく、油性成分を少量しか含まず外観が透明若しくは半透明の化粧水やジェル状化粧料が特に好ましい。
【0017】
α−D−グルコピラノシルグリセロールを配合する水性化粧料には、α−D−グルコピラノシルグリセロールの他に、必要に応じて、通常医薬品,医薬部外品,皮膚化粧料,毛髪用化粧料,浴用剤,洗浄剤などに配合される、油性成分,保湿剤,粉体,色素,乳化剤,可溶化剤,洗浄剤,紫外線吸収剤,増粘剤,薬剤,香料,樹脂,アルコール類などを適宜配合することができる。
【0018】
【実施例】
さらに実施例により、本発明の特徴について詳細に説明するが、本願発明の技術的範囲はこれによってなんら限定されるものではないことはいうまでもない。まず、本発明のα−D−グルコピラノシルグリセロールの製造例を示す。
【0019】
[製造例1]
マルトース5%,グリセロール35%の水溶液1000mLに、0.125U/mL(1U:pH5.0,37℃,5mMp−NPGから1分間に1μmolのp−NPを遊離する酵素量)のAspergillus niger由来の酵素であるα−グルコシダーゼ(トランスグルコシダーゼL−アマノ,天野エンザイム製)を加え、40℃,反応pH5.0の条件で24時間反応させ、その後マルトースを10回連続的に添加・反応させ、反応液を得た。得られた反応液を活性炭クロマトグラフィーにより精製し、α−D−グルコピラノシルグリセロールを得た。得られたα−D−グルコピラノシルグリセロールをGC−MS分析により確認すると、(2R)−1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール(化1),(2S)−1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール(化2),2−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール(化3)の3成分の混合物であった。
【0020】
[製造例2]
清酒1000mLをShim−pack SCR−101(N)(7.9×300mm)カラム(カラム温度;50℃,溶離液;水,流速;0.6mL/min)により分画し、α−D−グルコピラノシルグリセロールを得た。得られたα−D−グルコピラノシルグリセロールをGC−MS分析により確認すると、(2R)−1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール(化1),(2S)−1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール(化2),2−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール(化3)の3成分の混合物であった。
【0021】
[製造例3]
1mLの4%マルチトール水溶液に10mLの2%の過ヨウ素酸を添加し、室温にて4分間反応させた。反応終了後、塩化バリウムを添加し、生じた過ヨウ素酸バリウムの沈殿をろ別、除去した。さらに、イオン交換カラムで脱塩後、水素化ホウ素酸ナトリウムで還元し、活性炭クロマトグラフィーとHPLCにより分画精製し、2−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール(化3)を得た。
【0022】
次に、α−D−グルコピラノシルグリセロールによる皮膚刺激性の低減作用に関する評価を行った。評価には、製造例1にて調製したα−D−グルコピラノシルグリセロール(α−D−GG)を用いた。表1に評価に用いた実施例と比較例を示す。
【0023】
【表1】
Figure 2004331582
【0024】
評価は、次の手順にて行った。各サンプル2mLをコットンに含浸させ、洗顔後のパネルの頬部に貼付し、1分間の貼付中に感じる痛みを表2に示す判定基準に評価し、各サンプルにつき3名の専門パネルによる判定を行った。それぞれのサンプルについて、パネルの判定結果の平均値を算出し、表3に示した。
【0025】
【表2】
Figure 2004331582
【0026】
【表3】
Figure 2004331582
【0027】
表3より、α−D−グルコピラノシルグリセロール自体には、皮膚刺激性は全くなく、メチルパラベンやフェノキシエタノールによる皮膚刺激性を低減させる作用があることが明らかとなった。
【0028】
続いて、本発明に係るα−D−グルコピラノシルグリセロールを含有する水性化粧料の処方例を示す。
【0029】
[処方例1]ローション
(1)エタノール 5.0(重量%)
(2)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(3)フェノキシエタノール 0.05
(4)ポリオキシエチレン(40E.O.)硬化ヒマシ油 0.3
(5)香料 0.1
(6)α−D−グルコピラノシルグリセロール[製造例1] 5.0
(7)精製水 100とする残余
(8)クエン酸 0.02
(9)クエン酸ナトリウム 0.1
(10)ヒドロキシエチルセルロース 0.15
製法:(1)に(2)〜(5)を溶解する。溶解後、(6)〜(9)を順次添加した後、十分に攪拌し、(10)を加え、均一に混合し、ローションを得た。
【0030】
[処方例2]水性ジェル
(1)カルボキシビニルポリマー(1重量%水溶液) 15.0(重量%)
(2)キサンタンガム(1重量%水溶液) 5.0
(3)精製水 100とする残余
(4)α−D−グルコピラノシルグリセロール[製造例1] 10.0
(5)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(6)エタノール 5.0
(7)ポリオキシエチレン(40E.O.)硬化ヒマシ油 0.3
(8)香料 0.1
(9)水酸化ナトリウム(1重量%水溶液) 4.0
製法:(1)〜(4)を均一に攪拌後、予め均一にしておいた(5)〜(8)を添加した後、十分に攪拌し、(9)を加え、均一に混合し、水性ジェルを得た。
【0031】
[処方例3]水性美容液
(1)カルボキシビニルポリマー(1重量%水溶液) 17.5(重量%)
(2)アルギン酸ナトリウム(1重量%水溶液) 15.0
(3)α−D−グルコピラノシルグリセロール[製造例1] 15.0
(4)ショ糖脂肪酸エステル 1.3
(5)カルボキシビニルポリマー(1重量%水溶液) 17.5
(6)モノラウリン酸ポリグリセリル 1.0
(7)精製水 100とする残余
(8)スクワラン 2.0
(9)ベヘニルアルコール 0.75
(10)ホホバ油 1.0
(11)L−アルギニン(10重量%水溶液) 2.0
(12)香料 0.1
製法:(1)〜(7)の水相成分を混合し、75℃にて加熱溶解する。一方、(8)〜(10)の油相成分を混合し、75℃にて加熱溶解する。次いで、上記水相成分に油相成分を添加して予備乳化を行った後、ホモミキサーにて均一に乳化する。乳化終了後に冷却を開始し、50℃にて(11)を加える。さらに40℃まで冷却し、(12)を加え、均一に混合し、水性美容液を得た。
【0032】
次に、α−D−グルコピラノシルグリセロールを配合した処方を用いて使用試験を行い、使用後の肌のベタツキ・テカリについて評価した。その際、処方例1に示したローションの処方に製造例1に示す方法により製造したα−D−グルコピラノシルグリセロールを10%,15%それぞれ配合し、実施例6,7として使用試験を行った。また、それぞれの実施例に対しα−D−グルコピラノシルグリセロールをグリセリンに代替し、比較例3,4として使用試験を行った。
【0033】
各試料について、専門パネル20名をそれぞれ一群とし、ブラインドにて使用させ、使用後の肌のベタツキ・テカリについて「ある」,「ややある」,[ない]の三段階で評価を行わせた。表1に各評価を得たパネラー数を示す。
【0034】
【表4】
Figure 2004331582
【0035】
表4より、α−D−グルコピラノシルグリセロールを含有しない比較例使用群においては、6割以上のパネラーが肌のベタツキ・テカリといった不快感を感じているのに対し、α−D−グルコピラノシルグリセロールを配合した実施例使用群においては、6割以上のパネラーが不快感を感じていないことが分かった。以上のように、本発明の実施例においては、従来の比較例よりも、使用感に優れていること明らかとなった。
【0036】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、皮膚刺激性が低減され、ベタツキやテカリがなく、使用感にも優れた水性化粧料を提供することができる。

Claims (2)

  1. α−D−グルコピラノシルグリセロールを含有することを特徴とする水性化粧料。
  2. α−D−グルコピラノシルグリセロールを含有することを特徴とする低刺激性水性化粧料。
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