JP3996543B2 - 頭皮頭髪外用剤、育毛剤、及び血管内皮細胞増殖因子産生促進剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた効果を発揮する頭皮頭髪用外用剤、育毛剤、及び優れた効果を有する血管内皮細胞増殖因子産生促進剤に関する。さらに詳しくは、α−D−グルコピラノシルグリセロールを含有する頭皮頭髪用外用剤、育毛剤、及びα−D−グルコピラノシルグリセロールを有効成分とする血管内皮細胞増殖因子産生促進剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
加齢やストレスなどによって生じる脱毛や薄毛といった症状は、男性のみならず女性においても大きな悩みの一因となっている。近年、血管内皮細胞増殖因子が毛包細胞において毛髪の成長期に発現し、毛髪の成長を促進していることが報告され、頭皮頭髪用外用剤や育毛剤の分野においては、脱毛や薄毛といった症状の予防・改善のために、血管内皮細胞増殖因子の産生を促進する有効成分の検討が行われている。これまでに報告されている血管内皮細胞増殖因子産生促進剤としては、大豆由来の調製物(特許文献1参照),アミハナイグチ,シロヌメリイグチ,ハナイグチ,ウツロベニハナイグチ,アミタケ,キノボリイグチ,エゾウコギ,黄精,ゲンチアナ,センナ,トチュウ,ダイオウ,メリロート,ヨクイニン,クコの実,当帰,地黄,サンシシ,甘草,ニンジン,紅参,紫根,シンビジュームから選ばれる抽出物(特許文献2参照)が開示されている。
【0003】
一方、本発明に係るα−D−グルコピラノシルグリセロールは、既知の物質であり、低褐変性、低メイラード反応性、加熱安定性、非う食性、難消化性、高い保湿性を有し、食品、化成品、医薬品に利用できることが報告されている(特許文献3参照)。しかし、α−D−グルコピラノシルグリセロールを含有する頭皮頭髪外用剤及び育毛剤についてこれまで全く知られておらず、またα−D−グルコピラノシルグリセロールを有効成分とする血管内皮細胞増殖因子産生促進剤に関しても全く知られていなかった。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−286432号公報
【特許文献2】
特開2000−212059号公報
【特許文献3】
特開平11−222496号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来用いられている脱毛や薄毛といった症状の予防・改善のための有効成分は、副作用の点から配合が制限される場合や有効量を配合すると着色や不快臭が発生するなどの問題が生じる場合もあった。このため、より優れた有効成分の開発が期待されており、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものである。従って、本発明の目的は、脱毛や薄毛といった症状の予防・改善に優れた効果を発揮する頭皮頭髪用外用剤、育毛剤、及び優れた効果を有する血管内皮細胞増殖因子産生促進剤を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、脱毛や薄毛といった症状の予防・改善に優れた成分を見出すために、種々の物質について血管内皮細胞増殖因子産生促進作用に関する検討を行った。その結果、α−D−グルコピラノシルグリセロールに優れた血管内皮細胞増殖因子産生促進作用を示し、優れた血管内皮細胞増殖因子産生促進剤として機能することを見出し、さらに検討を重ね、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、α−D−グルコピラノシルグリセロールを含有する頭皮頭髪用外用剤、育毛剤、及びα−D−グルコピラノシルグリセロールを有効成分とする血管内皮細胞増殖因子産生促進剤に関するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるα−D−グルコピラノシルグリセロールには、(2R)−1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール(化1),(2S)−1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール(化2),2−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール(化3)の3成分が知られており、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0009】
【化1】
【0010】
【化2】
【0011】
【化3】
【0012】
α−D−グルコピラノシルグリセロールを得る方法としては、カビ類のα−グルコシダーゼをグリセロール溶液中で糖類の基質に作用させる方法、清酒,味噌,みりん等の醸造物から抽出,精製する方法、イソマルトース,マルチトールなどを四酢酸鉛や過ヨウ素酸塩でグリコール開裂したものを還元する方法、あるいはKoenigs−Knorr反応により合成したβ−グルコシドをアノメリゼーションした後、β−グルコシダーゼでβ−グルコシドを加水分解する方法などが挙げられるが、カビ類のα−グルコシダーゼをグリセロール溶液中で糖類の基質に作用させる方法が最も効率が良く特に好ましい。
【0013】
α−D−グルコピラノシルグリセロールは、そのままでも使用することができるが、水や極性溶媒に希釈したり、変性や分解のない範囲で脱色,脱臭の精製処理を行ったり、カラムクロマトグラフィー等による分画処理を行った後に用いてもよい。また、リポソーム等のベシクルやマイクロカプセル等に内包させて用いることもできる。
【0014】
本発明における脱毛や薄毛といった症状の予防・改善に優れた効果を発揮する頭皮頭髪用外用剤、及び育毛剤は、上述のα−D−グルコピラノシルグリセロールを含有する。また、優れた効果を発揮する血管内皮細胞増殖因子産生促進剤は、係るα−D−グルコピラノシルグリセロールを有効成分とする。
【0015】
本発明におけるα−D−グルコピラノシルグリセロールの配合量は、頭皮頭髪用外用剤及び育毛剤の種類や目的等によって調整することができるが、育毛効果や使用性等の点から、頭皮頭髪用外用剤及び育毛剤の全量に対して、0.0001〜10.0重量%が好ましく、より好ましくは、0.001〜5.0重量%である。
【0016】
本発明に係る頭皮頭髪用外用剤及び育毛剤は、ローション,乳液,ゲル,クリーム,軟膏剤,粉末,顆粒等、種々の剤型で提供することができる。
【0017】
なお、本発明に係る頭皮頭髪用外用剤及び育毛剤には、α−D−グルコピラノシルグリセロールの他に、通常医薬品,医薬部外品,皮膚化粧料,頭皮頭髪用外用剤及び育毛剤に配合される、油性成分,保湿剤,粉体,色素,乳化剤,可溶化剤,洗浄剤,紫外線吸収剤,増粘剤,薬剤,香料,樹脂,防菌防黴剤,アルコール類等を適宜配合することができる。また、本発明の効果を損なわない範囲において、他の血管内皮細胞増殖因子産生促進剤との併用も可能である。
【0018】
【実施例】
さらに実施例により、本発明の特徴について詳細に説明する。まず、本発明のα−D−グルコピラノシルグリセロールの製造例を示す。
【0019】
[製造例1]
マルトース5%,グリセロール35%の水溶液1000mLに、0.125U/mL(1U:pH5.0,37℃,5mMp-NPGから1分間に1μmolのp−NPを遊離する酵素量)のAspergillus niger由来の酵素であるα−グルコシダーゼ(トランスグルコシダーゼL−アマノ,天野エンザイム製)を加え、40℃,反応pH5.0の条件で24時間反応させ、その後マルトースを10回連続的に添加・反応させ、反応液を得た。得られた反応液を活性炭クロマトグラフィーにより精製し、α−D−グルコピラノシルグリセロールを得た。得られたα−D−グルコピラノシルグリセロールをGC−MS分析により確認すると、(2R)−1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール(化1),(2S)−1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール(化2),2−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール(化3)の3成分の混合物であった。
【0020】
[製造例2]
清酒1000mLをShim−pack SCR−101(N)(7.9×300mm)カラム(カラム温度;50℃,溶離液;水,流速;0.6mL/min)により分画し、α−D−グルコピラノシルグリセロールを得た。得られたα−D−グルコピラノシルグリセロールをGC−MS分析により確認すると、(2R)−1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール(化1),(2S)−1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール(化2),2−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール(化3)の3成分の混合物であった。
【0021】
[製造例3]
1mLの4%マルチトール水溶液に10mLの2%の過ヨウ素酸を添加し、室温にて4分間反応させた。反応終了後、塩化バリウムを添加し、生じた過ヨウ素酸バリウムの沈殿をろ別、除去した。さらに、イオン交換カラムで脱塩後、水素化ホウ素酸ナトリウムで還元し、活性炭クロマトグラフィーとHPLCにより分画精製し、2−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール(化3)を得た。
【0022】
次に、α−D−グルコピラノシルグリセロールの血管内皮細胞増殖因子産生促進作用を示す。試料には、製造例1にて調製したα−D−グルコピラノシルグリセロールを用いた。
【0023】
評価は、以下の手順で行った。正常ヒト表皮細胞を1ウェル当たり2.0×104個となるように96穴マイクロプレートに播種した。播種培地には、市販のクラボウ社製Humedia−KG2を用いた。37℃にて24時間培養後、試料を任意の濃度で添加した試験培地に交換し、さらに24時間培養し、培養上清中に分泌された血管内皮細胞増殖因子量をELISA法(Enzyme−linked immunosorbent assay)により定量した。また、ブランクとして、血管内皮細胞増殖因子産生促進剤が無添加の培地を用い、ブランクの血管内皮細胞増殖因子量についてもELISA法により定量を行った。これらの評価結果を、ブランクの血管内皮細胞増殖因子量を100とした場合の相対値にて表1に示す。なお、表中の*及び**は、t検定における有意確率P値に対し、有意確率5%未満の危険率(P<0.05)で有意差が認められたものを*で、有意確率1%未満の危険率(P<0.01)で有意差が認められたものを**で表したものである。
【0024】
【表1】
【0025】
表1より明らかなように、α−D−グルコピラノシルグリセロールを添加した培地では、有意な血管内皮細胞増殖因子産生促進作用が認められた。特に、α−D−グルコピラノシルグリセロールを6.25〜12.5ng/mL添加した場合に、ブランクと比較して、危険率1%未満で有意な血管内皮細胞増殖因子産生促進作用が認められた。このことから、α−D−グルコピラノシルグリセロールは、優れた血管内皮細胞増殖因子産生促進作用を有することが明らかとなった。
【0026】
続いて、本発明に係るα−D−グルコピラノシルグリセロールを配合した頭皮頭髪用外用剤、育毛剤の処方を示す。
【0027】
[処方例1]ヘアーローション
(1)エタノール 15.0(重量%)
(2)ポリオキシエチレン(40E.O.)硬化ヒマシ油 0.3
(3)香料 0.1
(4)精製水 100とする残余
(5)クエン酸 0.02
(6)クエン酸ナトリウム 0.1
(7)グリセリン 3.0
(8)ヒドロキシエチルセルロース 0.1
(9)α-D-グルコピラノシルグリセロール[製造例1] 2.0
製法:(1)に(2)及び(3)を溶解する。溶解後、(4)〜(8)を順次添加した後、十分に攪拌し、(9)を加え、均一に混合する。
【0028】
[処方例2]ヘアーミルク
製法:(1)〜(6)の油相成分を80℃にて加熱溶解する。一方(7)〜(10)の水相成分を80℃にて加熱溶解する。これに前記油相成分を攪拌しながら加え、ホモジナイザーにより均一に乳化する。乳化終了後、冷却を開始し、(11)と(12)を順次加え、均一に混合する。
【0029】
[処方例3]ヘアークリーム
(1)スクワラン 10.0(重量%)
(2)ステアリン酸 2.0
(3)水素添加パーム核油 0.5
(4)水素添加大豆リン脂質 0.1
(5)セタノール 3.6
(6)親油型モノステアリン酸グリセリン 2.0
(7)グリセリン 10.0
(8)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(9)アルギニン(20重量%水溶液) 15.0
(10)精製水 40.7
(11)カルボキシビニルポリマー(1重量%水溶液) 15.0
(12)α-D-グルコピラノシルグリセロール[製造例1] 1.0
製法:(1)〜(6)の油相成分を80℃にて加熱溶解する。一方(7)〜(10)の水相成分を80℃にて加熱溶解する。これに前記油相成分を攪拌しながら加え、ホモジナイザーにより均一に乳化する。乳化終了後、(11)を加え、冷却を開始し、40℃にて(12)を加え、均一に混合する。
【0030】
[処方例4]頭皮頭髪用美容液
製法:(1)〜(6)の水相成分を混合し、75℃にて加熱溶解する。一方、(7)〜(14)の油相成分を混合し、75℃にて加熱溶解する。次いで、上記水相成分に油相成分を添加して予備乳化を行った後、ホモミキサーにて均一に乳化する。乳化終了後に冷却を開始し、50℃にて(15)を加える。さらに40℃まで冷却し、(16)を加え、均一に混合する。
【0031】
[処方例5]ヘアージェル
(1)カルボキシビニルポリマー 0.5(重量%)
(2)精製水 85.5
(3)水酸化ナトリウム(10重量%水溶液) 0.5
(4)エタノール 10.0
(5)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(6)香料 0.1
(7)α-D-グルコピラノシルグリセロール[製造例1] 1.2
(8)ポリオキシエチレン(60E.O.)硬化ヒマシ油 0.1
(9)グリセリン 2.0
製法:(1)を(2)に加え、均一に攪拌した後、(3)を加える。均一に攪拌した後,(4)〜(9)を順次加え、均一に混合する。
【0032】
[処方例6]シャンプー
製法:(1)に(2)〜(12)を順次加え、均一に混合する。
【0033】
[処方例7]リンス
(1)スクワラン 1.0(重量%)
(2)メチルポリシロキサン 3.0
(3)セタノール 2.0
(4)ステアリルアルコール 1.0
(5)塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 1.0
(6)グリセリン 5.0
(7)パラオキシ安息香酸メチル 0.2
(8)ポリオキシエチレンステアリルエーテル 0.5
(9)精製水 86.15
(10)香料 0.1
(11)α-D-グルコピラノシルグリセロール[製造例1] 0.04
製法:(1)〜(4)の油相成分を混合し、75℃にて加熱溶解する。一方、(5)〜(9)の水相成分を混合し、75℃にて加熱溶解する。次いで、上記油相成分に水相成分を添加して予備乳化を行った後、ホモミキサーにて均一に乳化する。乳化終了後に冷却を開始し、40℃まで冷却し、(10)と(11)を加え、均一に混合する。
【0034】
[処方例8]ヘアーフォーム(原液処方)
製法:(1)に(2)〜(9)を順次加え、均一に混合する。
(充填)缶に原液を充填し、バルブ装着後に液化石油ガスを充填する。原液と液化石油ガスとの充填比率は、9:1とする。
【0035】
[処方例9]ヘアートニック
(1)エタノール 30.0(重量%)
(2)精製水 65.75
(3)ヒドロキシプロピルセルロース 0.15
(4)ポリオキシエチレン(40E.O.)硬化ヒマシ油 1.0
(5)α-D-グルコピラノシルグリセロール[製造例1] 2.5
(6)香料 0.1
製法:(1)〜(3)を均一混合し、予め混合しておいた(4)〜(6)の成分を加え、均一化する。
【0036】
[処方例10]ヘアーワックス
製法:(1)〜(6)の油相成分を混合し、75℃にて加熱溶解後する。一方、(7)〜(10)の水相成分を75℃にて加熱溶解し、前記油相成分を加え、ホモミキサーにて乳化する。乳化終了後に冷却を開始し、40℃にて(11)と(12)の成分を加え、均一に混合する。
【0037】
続いて、上記処方例の処方例1に示したヘアーローションを実施例として使用試験を行い、育毛効果について評価した。α−D−グルコピラノシルグリセロールを0.01%,0.5%,2%,5%,10%それぞれ配合したものを実施例1〜5とし、α−D−グルコピラノシルグリセロールを精製水に代替したものを比較例1とした。
【0038】
各試料について、脱毛や薄毛といった症状が顕著に認められる30〜50才代の男性パネラー20名を一群とし、ブラインドにて1日2回、3カ月間連続して使用させ、使用前後の毛髪状態の変化を観察して評価した。症状改善の指標として、髪の密度と毛髪の太さについて、マイクロスコープにて観察を行い、使用前後の状態を比較し、「改善」,「やや改善」,「変化なし」の三段階で評価し、表2に各評価を得たパネラー数にて示した。
【0039】
【表2】
【0040】
表2より、髪の密度と毛髪の太さについて、α−D−グルコピラノシルグリセロールを含有しない比較例使用群においては、半数以上のパネラーに改善が認められなかったが、α−D−グルコピラノシルグリセロールを配合した実施例使用群においては、改善傾向が認められた。特に、α−D−グルコピラノシルグリセロールを2%以上配合した実施例3〜5のパネラーの7割以上に明確な改善が認められた。
【0041】
以上のことから、α−D−グルコピラノシルグリセロールを含有する頭皮頭髪用外用剤及び育毛剤は、優れた育毛効果を有することが示された。
【0042】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明により、優れた効果を発揮する頭皮頭髪用外用剤、育毛剤、及び優れた効果を有する血管内皮細胞増殖促進因子産生促進剤を得ることが出来た。
Claims (3)
- α−D−グルコピラノシルグリセロールを含有することを特徴とする頭皮頭髪用外用剤。
- α−D−グルコピラノシルグリセロールを含有することを特徴とする育毛剤。
- α−D−グルコピラノシルグリセロールを有効成分とすることを特徴とする血管内皮細胞増殖因子産生促進剤。
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