JP3723610B2 - 光学活性α−アミノホスホン酸誘導体の製造方法および不斉合成用触媒の製造方法並びに新規なホスホネート系化合物 - Google Patents

光学活性α−アミノホスホン酸誘導体の製造方法および不斉合成用触媒の製造方法並びに新規なホスホネート系化合物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、光学活性α-アミノホスホン酸誘導体の製造方法および不斉合成用 触媒の製造方法並びに新規なホスホネート系化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
α-アミノアルキルホスホン酸またはそのペプチド類縁誘導体は、グラム陽性 菌およびグラム陰性菌に対して抗菌作用を有し、かつ抗生物質(例えばペニシリン、セファロスポリンおよびD−シクロセリン)の活性を高めること、L−アラニンおよびL−アミノエチルホスホン酸からのジペプチドであるアラフォスファリンが特に重要であること、一般に光学活性α-アミノアルキルホスホン酸の誘 導体および特にL体(R体)からの誘導体は大きな生物学的活性を示すことが知られている(特開昭61−88895号公報)。
【0003】
酵素的不斉合成法により光学活性α-アミノアルキルホスホン酸を得る方法と しては、テトラヘドロン アシンメトリー第4巻第1965頁1993年、特開昭6 1-88895号公報等に記載されているものが挙げられる。
【0004】
例えば、特開昭61-88895号公報には、
1-アミノ-アルキルホスホン酸又は1-アミノ-アルキルホスホン酸のラセミ体であるN-アシル誘導体を酵素分割し、次いで、脱アシル化することによりその 立体異性体を製造する方法において、酵素分割をペニシリン-G-アミダーゼを用いて、
【0005】
【化5】
Figure 0003723610
【0006】
[式中、R2は、場合により例えば、ハロゲン、ヒドロキシ、炭素原子1〜3個 のアルコキシ、フェニル及び/又はフェノキシにより置換されていてもよい炭素原子1〜6個、特に1〜4個を有する分枝鎖状か又は有利には直鎖状のアルキル基を表すか又はフェニル基を表す。]の1-アミノアルキルホスホン酸の立体異 性体を得る製造法が記載されている。
【0007】
しかしながら、これら酵素的不斉合成では、基質が限定されてしまうとの問題点がある。
また、非酵素的不斉合成法としては、従来下記▲1▼〜▲4▼に示すような種々の方法が知られている。
【0008】
すなわち、
▲1▼ ラセミ体のα-アミノアルキルホスホン酸を、無水ジベンゾイル-L-酒石酸に よって分割する方法<収率70〜87%>(カナディアン・ジャーナルオブ・ケミカル・エンジニアリング第61巻第2425頁、1985年)、
▲2▼ 光学活性アミノホスホン酸エステルへの不斉アルキル化反応によって合成す る方法<収率50〜86%、光学純度25〜76%>(テトラヘドロン・レターズ第33巻第6127頁、1992年)
▲3▼ 光学活性イミンへのホスホン酸エステルのジアステレオ選択的付加反応によ って合成する方法<収率30〜90%、光学純度71〜99%>(ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエテー第116巻第9377頁、1994年)
▲4▼ 不斉触媒を用いた不斉水素化反応によって合成する方法<収率90〜100 %、光学純度64〜76%>(リービッヒ アナーレン デル ケミー(Liebigs Ann. Chem 第555頁、1985年)など。
【0009】
しかしながら上記文献▲1▼および文献▲4▼に記載の方法では、工程数が多く、操作が煩雑であるとの問題点があり、また、上記文献▲2▼および文献▲3▼に記載の方法では、光学活性な原料を化学量論量必要とするなど、従来の方法は工業的に有利な方法ではない。
【0010】
このため、従来の光学活性α-アミノホスホン酸誘導体の合成法に比べて小量 の不斉化合物源を用いて大量の光学活性体を得ることが可能であり、しかも短い工程で上記光学活性体が得られるような光学活性α-アミノホスホン酸誘導体の 製造方法および不斉合成用触媒の製造方法並びに新規なホスホネート系化合物の出現が求められている。
【0011】
なお、「リービッヒ アナーレン デル ケミー第1153頁〜第1155頁、1990年」 には、不斉合成法に関するものではないが、一般式:R1CH(NHCOR22 [式中R1は、スチリル基などを示し、R2は、アルキリデン基を示す 。]で表 されるN,N’−アルキリデンビスアミドとPCl3と酢酸とを60〜80℃で、1時間反応させた後、加水分解して、一般式:R1CHNH2P(O)(OH)2 [式中R1は、スチリル基などを示す。]で表される化合物(収率39〜99 %)の製造方法が記載されている。
【0012】
また、特開平6−154618号公報には、不斉合成用触媒として下記の触媒が記載されている。
すなわち、式(AR)もしくは式(AS):
【0013】
【化6】
Figure 0003723610
【0014】
で表される光学活性2,2'-ジヒドロキシ-1,1'-ビナフチルのジアルカリ金属塩 (ただし、式中、MはLi、KもしくはNaである)、LaX3(XはF、Cl、Br、I、NO3もしくはCH3CO2である)で表されるランタン化合物、お よびMORもしくはMOH(MはLi、KもしくはNaであり、Rはイソプロピルもしくはt-ブチルである)で表されるアルカリ金属アルコキシドもしくは水酸化アルカリ金属から、含水溶媒存在下で調製された不斉合成用触媒、
または、
【0015】
【化7】
Figure 0003723610
【0016】
で表される光学活性2,2'-ジヒドロキシ-1,1'-ビナフチルおよびLa(OR)3(Rはイソプロピルもしくはt-ブチルである)で表されるランタンアルコキシドからエーテル系溶媒中で得られる活性種を塩化リチウム、含水溶媒の存在下で用いることを特徴とする不斉合成用触媒。
【0017】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、光学活性な原料を少量で用いて、少ない工程数の簡単な操作で、大量の光学活性α-アミノホスホン酸誘導体を製造しうるような光学活性α-アミノホスホン酸誘導体の製造方法を提供することを目的としている。
【0018】
本発明は、このような光学活性α-アミノホスホン酸誘導体の製造に使用しうるような触媒の製造方法を提供することを目的としている。
本発明は、光学活性α-アミノホスホン酸誘導体を製造する際に好適に使用される新規な光学活性ホスホネート系化合物を提供することを目的としている。
【0019】
【発明の概要】
本発明に係る光学活性α-アミノホスホン酸誘導体の製造方法は、
一般式(II):
1−N=CHR2 ・・・・(II)
[式(II)中、R1は、トリチル基、ベンジル基またはジ-p-アニシルメチル基を示し、R2はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアリール基含有炭化水素基を示す。]で表されるイミンと、
一般式(III):
(R3O)2P(O)H ・・・・(III)
[式(III)中、R3は、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、アリール基またはアリール基含有炭化水素基を示す。]で表されるホスホン酸エステルとを、
一般式(A):
La−X−ビナフトール錯体 ・・・・(A)
[式(A)中、Xはアルカリ金属を示す。]で表される不斉合成用触媒の存在下に反応させて、
一般式(IVa)または一般式(IVb):
【0020】
【化8】
Figure 0003723610
【0021】
[式(IVa)および式(IVb)中、R1、R2およびR3は、前記に同じ。]で表されるホスホネート系化合物を合成し、
次いで、得られた上記化合物(IVa)または化合物(IVb)を、酸または水素と接触させてアミノ基の脱保護とOR3基の加水分解とを行うことにより、下記化合物(Ia)または(Ib)を得ることを特徴としている。
【0022】
一般式(Ia)または一般式(Ib):
【0023】
【化9】
Figure 0003723610
【0024】
[式(Ia)、(Ib)中、R2は前記に同じ。]
【0028】
本発明に係る新規なホスホネート系化合物は、例えば上記本発明に係る光学活性α-アミノホスホン酸誘導体の製造方法で好適に使用され、下記一般式(IVa)または一般式(IVb)で表される。
【0029】
【化11】
Figure 0003723610
【0030】
[式(IVa)および式(IVb)中、R1は、ベンジル基またはジ-p-アニシルメチル基を示し、R2はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアリール基含有炭化水素基を示し、R3は、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、アリール基またはアリール基含有炭化水素基を示す。但し、R 1 がベンジル基、R 2 がフェニル基、R 3 がアルキル基を同時に満たす態様を除く。以下同様。
このような新規なホスホネート系化合物としては、例えば、上記式(IVa)および式(IVb)中、R1がジ-p-アニシルメチル基であり、R2がイソプロピル基であり、R3がメチル基である光学活性ジメチル-α-ジ-p-アニシルメチルアミノイソブチルホスホネート、
上記式(IVa)および式(IVb)中、R1がジ-p-アニシルメチル基であり、R2がイソプロピル基であり、R3がエチル基である光学活性ジエチル-α-ジ-p-アニシルメチルアミノイソブチルホスホネートが挙げられる。
【0031】
このような本発明によれば、光学活性な原料を少量用いて、少ない工程数の簡単な操作で、大量の光学活性α-アミノホスホン酸誘導体を製造できる。
【0032】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る光学活性α-アミノホスホン酸誘導体の製造方法および不斉合成用触媒の製造方法並びに新規なホスホネート系化合物について具体的に説明する。
[光学活性α-アミノホスホン酸誘導体の製造方法]
本発明では、式(Ia)または式(Ib)で表される光学活性α-アミノホスホン酸誘導体を、以下の反応経路で合成している。
【0033】
【化12】
Figure 0003723610
【0034】
すなわち、式(IVa)または式(IVb)で示される化合物は、好ましくは後述するような光学活性なランタン−アルカリ金属−ビナフトール錯体(A)からなる不斉合成用触媒の存在下に、式(II)で表されるイミンと式(III)で表されるホスホン酸エステルとの反応により合成される。
【0035】
ここで、式(II)、(III)、(IVa)、(IVb)、(Ia)および(Ib)中、R1は、トリチル基、ベンジル基またはジ-p-アニシルメチル基を示し、R2はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアリール基含有炭化水素基を示す。また、R3は、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、アリール基またはアリール基含有炭化水素基を示す。
[式(II)で表されるイミンの合成]
このような反応の出発原料となる式(II)で表される化合物(イミン)は公知化合物であり、従来より公知の方法により合成することができる。例えば、上記式(II)中のR1がトリチル基の場合には、シンセシス(Synthesis 第370頁、1988年)に示される方法によって、トリチルアミンを用いて合成すればよく、またR1がジ-p-アニシルメチル基、ベンジル基の場合には、特開昭62−289558号公報などに示される方法によって、それぞれジ-p-アニシルメチルアミン、ベンジルアミンを用いて合成すればよい。
【0036】
式(II)で表されるイミンにおいて、R2がアルキル基である場合、このようなアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が挙げられ、直鎖状または分岐状であってもよく、このようなアルキル基として具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙 げられる。
【0037】
2がシクロアルキル基である場合、このようなシクロアルキル基としては、 具体的には、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
2がアリール基である場合、このようなアリール基としては、具体的には、 例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などが挙げられる。
2がアリール基含有炭化水素基である場合、このようなアリール基含有炭化水素基としては、具体的には、ベンジル基、フェネチル基などのアリールアルキル基;スチリル基、p−メチルフェニルビニル基(CH3-C64-CH=CH−)などのアリールビニル基が挙げられる。
【0038】
このようなR2の内では、アルキル基が好ましく、その内ではイソプロピル基 が好ましい。
このような式(II)で表されるイミンとしては、具体的には、例えば、次のものが挙げられる。
【0039】
N-トリチルエタンイミンの他に、この化合物のトリチル基を、ジ-p-アニシルメチルあるいは、ベンジルに置換し、エタンをn-プロパン、nーブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、ネオヘキサン、シクロペンチルメタン、2-メチルブタン、シクロヘキシルメタン、フェニルメタンあるいは、スチリルメタンにそれぞれ置換した化合物が挙げられる。
【0040】
これらのイミンの内では、N-ジ-p-アニシルメチルイソブタンイミン、N-トリチルイソブタンイミンが好ましく用いられる。
[式(III)で表されるホスホン酸エステルの合成]
式(III)で表されるホスホン酸エステルは従来より公知の化合物であり、従来より公知の方法によって得られる。
【0041】
式(III)で表されるホスホン酸エステルにおいて、R3がアルキル基である場合、このようなアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が挙げられ、直鎖状または分岐状であってもよく、このようなアルキル基として具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられ、これらの内では、メチル基、エチル基などが好ましい。
【0042】
3がシクロアルキル基である場合、このようなシクロアルキル基としては、具体的には、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
3がアリール基である場合、このようなアリール基としては、具体的には、例えば、フェニル基、p-トリル基、パラクロルフェニル基などが挙げられる。
3がアリール基含有炭化水素基である場合、このようなアリール基含有炭化水素基としては、前記R2の場合と同様に、具体的には、ベンジル基、フェネチル基などのアリールアルキル基;スチリル基、p−メチルフェニルビニル基(CH3-C64-CH=CH−)などのアリールビニル基が挙げられる。
【0043】
このように式(III)で表されるホスホン酸エステル中のR3は、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、アリール基またはアリール基含有炭化水素基であり、中でも上記のようなアルキル基であることが好ましい。
【0044】
このような式(III)で表されるホスホン酸エステルとしては、具体的には、例えば、次のものが挙げられる。
ジメチルホスファイト、ジエチルホスファイト、ジn-プロピルホスファイト、ジn-ブチルホスファイト、ジn-ペンチルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジベンジルホスファイト、ジ-p-トリルホスフゥイト、ジ-p-クロルフェニルホスファイト、ジシクロヘキシルホスファイト、ジアリルホスファイトなど。
【0045】
これらのホスホン酸エステルの内では、ジメチルホスファイト、ジエチルホスファイトが好ましく用いられる。
[式(A)で表される不斉合成用触媒およびその合成]
本発明で用いられる不斉合成触媒は、下記式(A)で示され、好ましくは次のようにして合成される。
【0046】
一般式(A):
La−X−ビナフトール錯体 ・・・・(A)
[式(A)中、Xはアルカリ金属を示す。]
すなわち、このLa−アルカリ金属−ビナフトール錯体(A)は、
通常、不活性ガス雰囲気下、好ましくはチッ素(ガス)雰囲気下で、
(1)下記式(VR)で表される(R)-2,2'-ジヒドロキシ-1,1'-ビナフチルまたは、下記式(VS)で表される(S)-2,2'-ジヒドロキシ-1,1'-ビナフチルと、
【0047】
【化13】
Figure 0003723610
【0048】
(2)一般式(VI):
La(OR)3 ・・・・(VI)
[式(VI)中、Rはアルキル基を示す。]で表されるランタンアルコキシドと、(3)下記一般式(VII)、(VIII)および(IX)の内から選ばれる1種のアルカリ金属化合物と、
を非水溶媒または含水溶媒中で反応させることにより得られる。
【0049】
一般式(VII):
LiA ・・・・(VII)
[式(VII)中、Aはアルキル基を示す。]で表される化合物、
一般式(VIII):
[(CH33Si]2NK ・・・・(VIII)
で表される化合物、
一般式(IX):
ZOR ・・・・(IX)
[式(IX)中、Zはアルカリ金属を示し、Rはアルキル基を示す。]で表されるアルカリ金属アルコキシド。
【0050】
上記式(VR)で示される(R)-2,2'-ジヒドロキシ-1,1'-ビナフチルおよび、上記式(VS)で示される(S)-2,2'-ジヒドロキシ-1,1'-ビナフチルは、何れも、公知物質であり、従来より公知の方法(ジャーナル オブ オーガニックケミストリー(J. Org. Chem. 第7317頁、1993年 参照)により合成される。
【0051】
また式(VI)で示される化合物であるランタンアルコキシドは公知物質であり、公知の方法により合成される。
ランタンアルコキシドとしては、ランタントリイソプロポキシド、ランタントリt-ブトキシドなどが挙げられ、ランタントリイソプロポキシドが好ましく用いられる。
【0052】
式(VII)で示されるリチウム化合物中のAは、アルキル基を示し、このようなアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、n-ブチル基、t-ブチル基などが挙げられ、n-ブチル基が好ましい。
【0053】
このような式(VII)で示される化合物としては、具体的には、例えば、CH3Li、CH3(CH23Li、(CH33CLiなどが挙げられ、CH3(CH23Liが好ましく用いられる。
【0054】
式(VIII)で示される化合物は、公知物質である。
また式(IX)で示されるアルカリ金属アルコキシドは公知の化合物であり、公知の方法(ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイエティ J. A. C., S 第4364頁、1956年)により合成できる。
【0055】
式(IX)中、Zで示されるアルカリ金属としては、具体的には、例えば、Li、Na、K、Rb、Csが挙げられ、Na、Kが好ましく用いられる。
このような式(IX)で示されるアルカリ金属アルコキシドとしては、具体的には、例えば、LiO(CH33C、NaO(CH33C、KO(CH33C、RbO(CH33C、CsO(CH33C、LiO(CH32CH、NaO(CH32CH、KO(CH32CH、RbO(CH32CH、CsO(CH32CH等が挙げられ、LiO(CH33C、NaO(CH33C、KO(CH33C、RbO(CH33C、CsO(CH33Cが好ましく用いられる。
【0056】
本発明に係る不斉合成用触媒の製造方法においては、上記式(VR)または( VS)で示される(R)/(S)-2,2'-ジヒドロキシ-1,1'-ビナフチル(1)と、式(VI)で示されるランタンアルコキシド(2)と、「式(VII)、式(VIII)または(IX)で示されるアルカリ金属化合物(3)」とのモル比[(1):(2):(3)]は通常、1:1:1〜10:1:10であり、好ましくは1:1:1〜3:1:3の量で用いられることが望ましい。また、このような反応は通常0〜50℃、好ましくは0〜20℃の温度で、通常0.1〜100時間、好ましくは0.1〜24時間行うことが望ましい。
【0057】
本発明においては、このような反応の際には、非水溶媒または含水溶媒が用いられる。
溶媒としては、具体的には、例えば、テトラヒドロフラン(以下「THF」という)、エーテルなどが挙げられ、THFが好ましく用いられる。不斉合成反応でTHF以外の溶媒を用いるときには、触媒調製時に用いられた溶媒(例:THF)を20℃以下の温度で留去させ、前記式(II)で示されるイミンと(III)で示されるホスホン酸エステルとの不斉合成反応の際に使用される溶媒を加えて溶媒交換しておくことが好ましい。
【0058】
含水溶媒としては、具体的には、例えば、含水THF、含水エーテル、含水ジオキサン、含水ジエチルエーテルなどが挙げられ、含水THF、含水エーテルが好ましく用いられる。
【0059】
触媒調製時に含水溶媒を使用する場合には、水は式(VI)のランタン化合物1モルに対して、通常、0.1〜10モルの量で、好ましくは0.1〜1モルの量で用いられる。
【0060】
このようにして得られる式(A)で示される不斉合成用触媒は、下記式(イ)または(ロ):
【0061】
【化14】
Figure 0003723610
【0062】
[式(イ)および式(ロ)中、Xは、アルカリ金属を示す。]で表されるのであろうと推測される。
このような式(A)(さらに具体的には、式(イ)または式(ロ))で表される不斉合成用触媒として、具体的には、例えば、La−Li−(R)−ビナフトール錯体(以下「(R)−LLB」という)、La−K−(R)−ビナフトール錯体(以下「(R)−LPB」という)、La−Na−(R)−ビナフトール錯体(以下「(R)−LSB」という)、La−Rb−(R)−ビナフトール錯体(以下「(R)−LRB」という)、La−Cs−(R)−ビナフトール錯体(以下「(R)−LCB」という)などが挙げられる。また(R)又は(S)-LLBよりも、(R)又は(S)-LSBの方が活性が高く、さらに、(R)又は(S)-LSBよりも(R)又は(S)-LPBの方がより活性が高いため好ましく用いられる[(R)又は(S)-LLB→(R)又は(S)-LSB→(R)又は(S)-LPB(高活性)]。
【0063】
また本発明では、不斉合成用触媒として、特開平6−154618号公報に記載の方法等により調製されたものを使用することもできる。
すなわち、式(AR)もしくは式(AS):
【0064】
【化15】
Figure 0003723610
【0065】
で表される光学活性2,2'-ジヒドロキシ-1,1'-ビナフチルのジアルカリ金属塩 (ただし、式中、MはLi、KもしくはNaである)、LaX3(XはF、Cl、Br、I、NO3もしくはCH3CO2である)で表されるランタン化合物、およびMORもしくはMOH(MはLi、KもしくはNaであり、Rはイソプロピルもしくはt-ブチルである)で表されるアルカリ金属アルコキシドもしくは水酸化アルカリ金属から、含水溶媒存在下で調製された不斉合成用触媒、
または、
【0066】
【化16】
Figure 0003723610
【0067】
で表される光学活性2,2'-ジヒドロキシ-1,1'-ビナフチルおよびLa(OR)3(Rはイソプロピルもしくはt-ブチルである)で表されるランタンアルコキシドからエーテル系溶媒中で得られる活性種を塩化リチウム、含水溶媒の存在下で用いることを特徴とする不斉合成用触媒。
【0068】
本発明においては、このような不斉合成用触媒を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
[式( IVa )または式( IVb )で示される化合物の合成]
本発明においては、上記のような式(II)で示されるイミンと、式(III)で示されるホスホン酸エステルとを、上記のような不斉合成用触媒の存在下で、好ましくは上記式(A)で示される不斉合成用触媒の存在下で反応させて式(IVa)および/または式(IVb)で示される化合物を得る。
【0069】
このような反応において、式(II)で示されるイミンと、式(III)で示されるホスホン酸エステルと、不斉合成用触媒(好ましくは不斉合成用触媒(A))とは、そのモル比[イミン:ホスホン酸エステル:不斉合成用触媒]が通常、1:1:0.01〜1:5:1であり、好ましくは1:1:0.01〜1:5:0.2の量で用いられることが望ましい。
【0070】
このような反応は、通常、−80〜80℃、好ましくは20〜50℃の温度で、通常、0.1〜100時間、好ましくは60〜80時間行うことが望ましい。また反応の際には、通常、溶媒が用いられ、このような反応溶媒として、具体的には、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、エーテル、ジオキサン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)などが挙げられ、THF、トルエン、エーテルが好ましく用いられる。
【0071】
また、本発明においては、これらの溶媒を1種単独で用いてもよく、また2種以上組み合わせて混合溶媒として用いてもよい。混合溶媒として、具体的には、例えば、トルエン−THF混合溶媒、THF−ジオキサン混合溶媒などが挙げられ、トルエン−THF混合溶媒が好ましく、特にTHF1体積に対して通常トルエンを1〜10体積、好ましくは6〜8体積で混合してなるトルエン−THF混合溶媒が好ましい。
【0072】
上記のような反応は、通常、反応溶液の1〜10倍量の水を反応溶液に加えることにより、停止させることができる。
本発明においては、このような反応終了後に、得られた反応液(式(IVa)ま たは式(IVb)で示される化合物含有物)に通常、食塩水を加えて洗浄し、水相 と有機相とに相分離させ、次いでこのように洗浄して得られた有機層から溶媒を留去することにより粗生成物を得る。このようにして得られた粗生成物を例えば、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、式(IVa)または式(IVb)で示される化合物が得られる。
【0073】
式(IVa)または式(IVb)で示される化合物の具体例を次に示す。
(R)または(S)-ジメチル-α-トリチルアミノエチルホスホネートの他に、
この化合物のジメチル基をジエチル、ジn-プロピル、ジイソプロピル、ジn-ブチル、ジイソブチル、ジsec-ブチル、ジtert-ブチル、ジn-ペンチル、ジイソペンチル、ジネオペンチル、ジシクロペンチル、ジシクロヘキシル、ジフェニル、ジベンジル、ジp-トリルあるいはジp-クロルフェニルに置換し、
またトリチル基をジ-p-アニシルメチルあるいはベンジルに、エチル基をn-プロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、イソペンチル、2-メチルブチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、ネオヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、フェニルメチルあるいはスチリルメチルにそれぞれ置換した化合物等が挙げられる。
[式(Ia)または式(Ib)化合物の合成]
次に光学活性α-アミノホスホン酸誘導体[式(Ia)または式(Ib)]の合成 について述べる。
【0074】
上記式(Ia)または式(Ib)で示される化合物は、式(IVa)または式(IVb)で示される化合物に酸を加えるか、あるいは接触水添により得られる。
このような式(IVa)または式(IVb)で示される化合物中のアミノ基の脱保護と、OR3基の加水分解反応に酸を用いる場合には、酸は、式(III)で示される化合物1モルに対して5〜100モルの量で、好ましくは5〜10モルの量で用いられる。このような酸としては、具体的には、例えば、5〜10Mの濃塩酸あるいは濃硫酸、濃度100%の酢酸などが挙げられ、濃塩酸、酢酸が好ましく用いられる。
【0075】
このような反応は、溶媒の非存在下に行うこともでき(無溶媒)、また溶媒中で行うこともできる。溶媒としては、具体的には、例えば、メタノール、クロロホルム、酢酸、アセトン等が挙げられ、メタノール、酢酸が好ましく用いられる。無溶媒の条件下で反応を行う場合には、通常、20〜100℃、好ましくは80〜100℃の温度で、溶媒中で反応を行う場合には、通常20〜100℃、好ましくはその還流温度で行なうことが望ましい。反応時間は、無溶媒の条件下では、1〜10時間、好ましくは8〜10時間であり、溶媒中では1〜50時間、好ましくは10〜20時間であることが望ましい。
【0076】
また、接触水添による方法では、パラジウム黒を式(IVa)または式(IVb)で示される化合物1モルに対して通常、1〜10モルの量で、好ましくは5〜10モルの量で用いることが望ましい。このような接触水添の際には、反応溶媒を用いることができ、このような反応溶媒としては、具体的には、例えば、酢酸、メタノール、エタノールなどが挙げられ、酢酸が好ましく用いられる。反応温度は通常、20〜100℃、好ましくは20〜50℃であることが望ましい。反応時間は通常、1〜50時間、好ましくは5〜10時間であることが望ましい。
【0077】
上記のような反応の際に酸を用いた場合には、通常、反応終了後に、反応液をCH3Clにて洗浄し、水相を減圧下に留去することにより式(Ia)または式(Ib)で示される化合物が得られる。
【0078】
また、上記のような反応を接触水添で行った場合には、通常、反応終了後に、反応液からパラジウム黒を除去し、反応液を水にて洗浄し、有機相から溶媒を留去することにより式(Ia)または式(Ib)で示される化合物が得られる。
【0079】
このようにして得られた式(Ia)または式(Ib)で示される化合物としては、(R)または(S)-α-アミノエチルホスホン酸の他にこの化合物のエチル基をn-プロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、イソペンチル、2-メチルブチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、ネオヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、フェニルメチルあるいはスチリルメチルに代えた化合物が挙げられる。
【0080】
【発明の効果】
本発明によれば、従来の光学活性α-アミノホスホン酸誘導体の合成法に比べて小量の不斉化合物源を用いて大量の光学活性体を得ることが可能であり、しかも短い工程で上記光学活性体が得られるなどの利点がある。
【0081】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明は、かかる実施例により何等制限されるものではない。
【0082】
鏡像体過剰率(ee)
以下の実施例および比較例における鏡像体過剰率(ee)の測定法は、下記のとおり。
【0083】
図1に示すように、クロマトグラフィー(HPLC)により求めた(+)体の面積(A)と(−)体の面積(B)との面積比r=A/B(エナンチオマー比)とするとき、
【0084】
【数1】
Figure 0003723610
【0085】
で表される。
【0086】
【実施例1】
(1)(R)−LPB(La−K−(R)−ビナフトール錯体)の調製
窒素雰囲気下、(R)-2,2'-ジヒドロキシ-1,1'-ビナフチル4.29g(5×3mmol)に、0.2MのLa(O(CH32CH)3・THF溶液25ml(5mmol)、0.5Mのビス(トリメチルシリル)カリウムアミド・トルエン溶液30ml(5×3mmol)、水90mg(5mmol)、THF45mlを加え、室温(20℃)下で1時間攪拌し、(R)−LPB(La−K−(R)−ビナフトール錯体)(約0.05mol/リットル、収率100%)を調製した。
【0087】
この(R)−LPB・THF溶液を20℃以下の温度で減圧下(圧力:5mmHg)に溶媒留去し、次いで、THF・トルエン混合溶液[THF:トルエン=1:7(体積比)の混合物]100ml((R)−LPB含有量:約0.05mol/リットル)を加えた。
(2)(R)−LPBによる(R) - ジメチル - α - -p- アニシルメチルアミノイソブチルホスホネートの合成[式( IVa )化合物]
N-ジ-p-アニシルメチルイソブタンイミン0.37g(1.25mmol)、ジメチルホスファイト0.69g(1.25×5mmol)に、上記により得られた(R)−LPB含有量が0.05mol/リットル[THF:トルエン=1:7(体積比)混合液]の(R)−LPB溶液5ml(1.25×0.2mmol)を加えた。
【0088】
得られた反応混合物を20℃で62時間攪拌した後、この反応混合物に10mlの水を加えて反応を停止させた。
次いで、通常の後処理を行った後(すなわち、反応混合物を食塩水で洗浄し、水相と有機相とに相分離させ、得られる有機相から溶媒を留去した後)、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(長さ30cm×直径2cm)を用い、酢酸エチル:ヘキサン=1:1(体積比)の混合溶媒により精製し、458mgの(R)-ジメチル-α-ジ-p-アニシルメチルアミノイソブチルホスホネートを得た。(収率90%)
得られた(R)-ジメチル-α-ジ-p-アニシルメチルアミノイソブチルホスホネートの鏡像体過剰率(ee)は、HPLC測定結果から、95%であった。
【0089】
[α]D−26.4(c=1.85、CHCl3)。
(R)-ジメチル-α-ジ-p-アニシルメチルアミノイソブチルホスホネートの1H-NMR(CDCl3)のピーク値:
δ:0.98−1.02(m,6H),1.81(brs,1H),2.12−2.27(m,1H),2.77(dd,J=14.2,3.0Hz,1H),3.78,3.769,3.765,3.75,3.74,3.70(s,12H),5.13(d,J=3.3Hz,1H),6.28(d,J=8.2Hz,4H),7.33(d,J=8.6Hz,2H),7.34(d,J=8.6Hz,2H)。
(3)(R) - α - アミノイソブチルホスホン酸の合成[式( Ia )化合物]
(R)-ジメチル-α-ジ-p-アニシルメチルアミノイソブチルホスホネート2.04g(5mmol)に、10規定の塩酸5mlを加え、還流下24時間攪拌した。
【0090】
得られた反応液にCH3Clを加えて、水相と有機相とに分離した。分取され た水相から、減圧下に溶媒留去し、粗結晶を得た。
得られた粗結晶を、メタノール5ml、プロピレンオキサイド1mlを用いることにより再結晶させて、(R)-α-アミノイソブチルホスホン酸を得た(収量6 00mg、収率90%)。[α]D−2.4゜(C=2.4,H2O);文献値[α]D−2.1゜(C=1.9,H2O)
【0091】
【実施例2】
(1)(R)−LSB(La−Na−(R)−ビナフトール錯体)の調製
窒素雰囲気下、(R)-2,2'-ジヒドロキシ-1,1'-ビナフチル4.29g(15mmol)に、0.2MのLa(O(CH32CH)3・THF溶液25ml(5mmol)、NaOC(CH33:1.44g(15mmol)、水90mg(5mmol)、THF:75mlを加え、20℃で1時間攪拌して(R)−LSB(La−Na−(R)−ビナフトール錯体)(約0.05mol/リットル)を調製した。(収率100%)
(2)(R) - α - アミノイソブチルホスホン酸の合成[式( Ia )化合物]
N-ジ-p-アニシルメチルイソブタンイミン0.38g(1.25mmol)、ジメチルホスファイト0.69g(1.25×5mmol)に、上記により得られた(R)−LSB含有量が0.05mol/リットル[THF:トルエン=1:7(体積比)混合液]の(R)−LSB溶液5ml(1.25×0.2mmol)を加えた。
【0092】
得られた反応混合物を50℃で35時間攪拌した後、10mlの水を加えて反応を停止させた。
次いで、前記と同様の通常の後処理を行った後(すなわち、反応混合物を食塩水で洗浄し、水相と有機相とに相分離させ、得られる有機層から溶媒を留去した後)、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(長さ30cm×直径2cm)を用い、酢酸エチル:ヘキサン=1:1(体積比)の混合溶媒により精製し、(R)-ジメチル-α-ジ-p-アニシルメチルアミノイソブチルホスホネー トを得た。(収量330mg、収率65%)
得られた(R)-ジメチル-α-ジ-p-アニシルメチルアミノイソブチルホスホ ネートの鏡像体過剰率は、HPLC測定結果から、60%であった。
【0093】
この(R)-ジメチル-α-ジ-p-アニシルメチルアミノイソブチルホスホネートの1H-NMR(CDCl3)のピーク値:
δ:0.98−1.02(m,6H),1.81(brs,1H),2.12−2.27(m,1H),2.77(dd,J=14.2,3.0Hz,1H),3.78,3.769,3.765,3.75,3.74,3.70(s,12H),5.13(d,J=3.3Hz,1H),6.28(d,J=8.2Hz,4H),7.33(d,J=8.6Hz,2H),7.34(d,J=8.6Hz,2H)。
【0094】
次いで、(R)-ジメチル-α-ジ-p-アニシルメチルアミノイソブチルに、実施例1の第(3)欄と同様の操作を施すことにより(R)α-アミノイソブチルホスホン酸を得た。
【0095】
【実施例3】
(R) - α - アミノイソブチルホスホン酸の合成[式( Ia )化合物の合成]
N-ジ-p-アニシルメチルイソブタンイミン0.38g(1.25mmol)、ジエチルホスファイト0.86g(1.25×5mmol)に、実施例1と同様にして得られた(R)−LPB(La−K−(R)−ビナフトール錯体)含有量が0.05mol/リットル[THF:トルエン=1:7(体積比)混合液]の(R)−LPB溶液5ml(1.25×0.2mmol)を加えた。
【0096】
得られた反応混合物を20℃で35時間攪拌した後、10mlの水を加えて反応を停止させた。
次いで、前記と同様の通常の後処理を行った後(すなわち、反応混合物を食塩水で洗浄し、水相と有機相とに相分離させ、得られる有機層から溶媒を留去した後)、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(長さ30cm×直径2cm)を用い、酢酸エチル:ヘキサン=1:1(体積比)の混合溶媒により精製し、(R)-ジエチル-α-ジ-p-アニシルメチルアミノイソブチルホスホネートを得た。(収量218mg、収率40%)
この(R)-ジエチル-α-ジ-p-アニシルメチルアミノイソブチルホスホネートの鏡像体過剰率は、HPLC測定結果から、80%であった。
【0097】
この(R)-ジエチル-α-ジ-(p-アニシル)メチルアミノイソブチルホスホネートの1H-NMR(CDCl3)のピーク値:
δ:1.00(d,J=6.9Hz,6H),1.32(t,J=6.9Hz,3H),1.35(t,J=6.9Hz,3H),1.83(brs,1H),2.08−2.23(m,1H),2.74(dd,J=14.2,2.6Hz,1H),3.767(s,3H),3.774(s,3H),4.00−4.21(m,4H),5.19(d,J=3.3Hz,1H),6.82(d,J=8.9Hz,4H),7.34(d,J=8.9Hz,4H)。
【0098】
次いで、(R)-ジエチル-α-ジ-p-アニシルメチルアミノイソブチルホスホネート2.18g(5mmol)に、10規定の塩酸5mlを加え、還流下24時間攪拌した。
【0099】
得られた反応液にCH3Clを加えて、水相と有機相とに分離した。分取された水相から、減圧下に溶媒留去し、粗結晶を得た。
水層を減圧下溶媒留去した。得られた粗結晶は、メタノール5ml、プロピレンオキサイド1mlを用いることにより再結晶させて、(R)-α-アミノイソブチルホスホン酸を得た(収量704mg、収率92%)。
【0100】
【実施例4】
(R) - α - アミノイソブチルホスホン酸の合成[式( Ia )化合物の合成]
実施例2と同様にして得られた(R)−LSB(La−Na−(R)−ビナフトール錯体)含有量が0.05mol/リットルの(R)−LSB・THF溶液25ml(1.25mmol)を減圧 下溶媒留去し、これにTHF:5ml、N-トリチルイソブタンイミン0.39g( 1.25mmol)、ジメチルホスファイト0.69g(1.25×5mmol)を加えた 。
【0101】
得られた反応混合物を50℃で24時間攪拌した後、10mlの水を加えて反応を停止させた。
次いで、前記実施例1と同様の通常の後処理を行った後(すなわち、反応混合物を食塩水で洗浄し、水相と有機相とに相分離させ、得られた有機層から溶媒を留去させた後)、この有機相から得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[酢酸エチル:ヘキサン=1:1(体積比)]にて精製し、(R)-ジメチル-α-トリチルアミノイソブチルホスホネートを得た(収量105mg、収率20%)。
【0102】
得られた(R)-ジメチル-α-トリチルアミノイソブチルホスホネートの鏡像体過剰率は、HPLC測定の結果から、80%であった。
この(R)-ジメチル-α-トリチルアミノイソブチルホスホネートの1H-NMR(CDCl3)のピーク値:
δ:0.95(d,3H,J=2.5Hz),1.02(d,3H,J=1.5Hz),1.5(m,1H),2.8(brs,1H),3.00(ddd,1H,J=2,21.5Hz),3.76(d,3H,J=10.5Hz),3.78(d,3H,J=10.5Hz),7.4−7.6(m,9H),7.7−7.9(m,6H)。
【0103】
次いで、(R)-ジメチル-α-トリチルアミノイソブチルホスホネート2.12g(5mmol)に、パラジウム黒2.66g(25mmol)、エタノール50mlを加え、25℃の温度で130mlの水素を吹き込み、5時間攪拌した。
【0104】
次いで、パラジウム黒を濾過により取り除き、得られた反応液に水を加えて、水相と有機相とに分離した。分取された有機相から、前記実施例1と同様に溶媒留去することにより、(R)-α-アミノイソブチルホスホン酸を得た(収量688mg、収率90%)。
【0105】
【実施例5】
(R) - α - アミノn - プロピルホスホン酸の合成[式( Ia )化合物の合成]
実施例2と同様にして得られた(R)−LSB含有量が0.05mol/リットルの(R)−LSB・THF溶液25ml(1.25mmol)を減圧下に溶媒留去し、これにTHF:5ml、N-トリチルn-プロパンイミン0.37g(1.25mmol)、ジメチルホスファイ ト0.69g(1.25×5mmol)を加えた。
【0106】
得られた反応混合物を50℃で15時間攪拌した後、10mlの水を加えて反応を停止させた。
次いで、前記実施例と同様に通常の後処理を行った後、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[酢酸エチル:ヘキサン=1:1(体積比)]にて精製し、307mgの(R)-ジメチル-α-トリチルアミノn-プロピルホスホネートを得た(収率60%)。
【0107】
この(R)-ジメチル-α-トリチルアミノn-プロピルホスホネートの鏡像体過剰率は、HPLC測定の結果から、70%であった。
次いで(R)-ジメチル-α-トリチルアミノn-プロピルホスホネートを実施例4と同様に接触水添を行い、(R)-α-アミノn-プロピルホスホン酸631mgを得た(収率91%)。
実施例1〜5のまとめを表1に示す。
【0108】
【表1】
Figure 0003723610
【表2】
Figure 0003723610
【表3】
Figure 0003723610

【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、鏡像体過剰率(ee)の測定法を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 一般式(II):R1−N=CHR2 ・・・・(II)
    [式(II)中、R1は、トリチル基、ベンジル基またはジ-p-アニシルメチル基を示し、R2はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアリール基含有炭化水素基を示す。]で表されるイミンと、
    一般式(III):(R3O)2P(O)H ・・・・(III)
    [式(III)中、R3は、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、アリール基またはアリール基含有炭化水素基を示す。]で表されるホスホン酸エステルとを、
    一般式(A):La−X−ビナフトール錯体 ・・・・(A)
    [式(A)中、Xはアルカリ金属を示す。]で表される不斉合成用触媒の存在下に反応させて、
    一般式(IVa)または一般式(IVb):
    Figure 0003723610
    [式(IVa)および式(IVb)中、R1、R2およびR3は、前記に同じ。]で表されるホスホネート系化合物を合成し、
    次いで、得られた上記化合物(IVa)または化合物(IVb)を、酸または水素と接触させて脱保護と加水分解とを行うことを特徴とする、
    一般式(Ia)または一般式(Ib):
    Figure 0003723610
    [式(Ia)、(Ib)中、R2は前記に同じ。]で表される光学活性α-アミノホスホン酸誘導体の製造方法。
  2. 一般式(IVa)または一般式(IVb):
    Figure 0003723610
    [式(IVa)および式(IVb)中、R1は、ベンジル基またはジ-p-アニシルメチル基を示し、R2はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアリール基含有炭化水素基を示し、R3は、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、アリール基またはアリール基含有炭化水素基を示す。但し、R 1 がベンジル基、R 2 がフェニル基、R 3 がアルキル基を同時に満たす態様を除く。]で表される新規なホスホネート系化合物。
  3. 上記式(IVa)および式(IVb)中、R1がジ-p-アニシルメチル基であり、R2がイソプロピル基であり、R3がメチル基である光学活性ジメチル-α-ジ-p-アニシルメチルアミノイソブチルホスホネートであることを特徴とする請求項2に記載の新規なホスホネート化合物
  4. 上記式(IVa)および式(IVb)中、R1がジ-p-アニシルメチル基であり、R2がイソプロピル基であり、R3がエチル基である光学活性ジエチル-α-ジ-p-アニシルメチルアミノイソブチルホスホネートであることを特徴とする請求項2に記載の新規なホスホネート化合物
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