JP3723423B2 - シートベルト装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の乗員等を座席に拘束するシートベルト装置に関し、詳しくは、エネルギー吸収機構付シートベルト用リトラクターを備えたシートベルト装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両の乗員等を座席に保持するためのシートベルト装置においては、急な加速、衝突又は減速に反応する慣性感知手段によって駆動されてウェビングの引き出しを物理的にロックする緊急ロック機構を備えて乗員を効果的及び安全に拘束するようにした緊急ロック式リトラクターが用いられている。
【0003】
このような緊急ロック式リトラクターとしては、例えば特公昭59−21624号公報等に開示されたシートベルト用リトラクターのように、ウェビングを巻装する巻取軸の一端に配設された係合部材が車両緊急時にリトラクターベースの被係合部に係合して前記巻取軸のウェビング引き出し方向の回転を阻止することができるロック手段を備えたものがある。
【0004】
そして、前記ロック手段においては、巻取軸が貫通するリトラクターベースの巻取軸貫通穴に形成された係止噛合部や、その巻取軸貫通穴に併設された内歯プレートに形成されたラチェット歯が被係合部として用いられる。巻取軸と共に回転するロックプレートや係止爪が係合部材として用いられる。車両緊急時にそれら係合部材と被係合部とが係合して巻取軸のウェビング引き出し方向の回転を阻止するように構成されている。
【0005】
しかしながら、衝突による衝撃力が大きいときには、衝突後の時間の経過とともにウェビング張力が増大するため、乗員の身体に急激な減速度を生じることになり、ウェビングから乗員にかかる負荷が大きくなる。そこで、ウェビングに作用する荷重が予め設定した所定値以上となった際、ウェビングを所定量繰出させることにより、乗員の身体に生じる衝撃を吸収するエネルギー吸収機構を備え、乗員の身体をより確実に保護するようにしたシートベルト用リトラクターも種々提案されている。このような構成のシートベルト用リトラクターとしては、特開昭46−7710号公報に記載された、「とくに安全ベルト用のエネルギー吸収装置」が知られている。
【0006】
前記エネルギー吸収機構は、ウェビングが巻装される略筒状のボビンと、該ボビンの中心を挿通すると共に一端側が前記ボビンに一体的に結合されてリトラクターベースに回転自在に支持される巻取軸と、この巻取軸の他端側に一体的に結合されるロッキングベースと、車両緊急時に前記ロッキングベースをリトラクターベースに係合させて前記ボビンのウェビング引き出し方向への回転を阻止する緊急ロック手段とを備えている。そして、前記緊急ロック手段の作動時に前記ボビンに作用するウェビング引き出し方向の荷重が所定以上になると、前記巻取軸が捩り変形を起こすことで前記ボビンのウェビング引き出し方向の回転を許容して衝撃エネルギーの吸収を行う。
すなわち、ボビンの中心を挿通する巻取軸は、所謂、トーションバー(捩り棒)で、ボビンに作用するウェビング引き出し方向の荷重が所定以上になると、該トーションバー自体が軸回りに捩れる。この捩れによってボビンがウェビング引き出し方向へ回転する分だけ、ウェビングの引き出しを許容し、ウェビングによる乗員拘束力を緩めて、ウェビングから乗員に作用する衝撃を緩和する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、衝突時の衝撃は車両構造によって異なる。したがって、乗員の身体を十分に保護する為には、例えば、エネルギー吸収機構が作動開始する設定荷重(所謂、エネルギー吸収荷重と呼ばれるもので、実際には、エネルギー吸収を開始するウェビング張力)や、衝撃吸収時の変形量(実際には、ウェビングの伸出量)を、車両構造等に合わせて設計変更することが要求される。
【0008】
また、エネルギー吸収機構によってウェビングが引き出されると、その分、乗員に衝突方向の移動が生じる。その際に、乗員の身体が車室内壁等に衝突する事を防止するために、最近の車両では、車両緊急時に乗員と車室内壁等との間に膨出して乗員の身体を受け止めることで乗員の身体保護を図るSRSエアバッグシステムを装備し、シートベルト装置との協働で乗員の安全性を向上させる対応がなされている。
そして、このようなSRSエアバッグシステムを備えた場合には、SRSエアバッグシステムの効果を安全かつ最大限に引き出すことから、エネルギー吸収機構の特性に変化を持たせることが要求されている。
例えば、乗員が膨張したエアバックに接触するまでの衝突初期には、大きなエネルギー吸収荷重を確保して乗員の移動を最小限に抑え、エアバッグが乗員を拘束しはじめた衝突後期はエネルギー吸収荷重を下げて、エアバッグシステムに乗員の保護を委ねるといった要求である。
【0009】
以上の、車両構造の差異に応じたエネルギー吸収荷重の最適化や、SRSエアバッグシステムとの役割分担等の観点から、エネルギー吸収機構には、エネルギー吸収荷重等の特性に変化を持たせることのできる柔軟性や設計自由度の高さが要求されるようになってきた。
【0010】
巻取軸の捩り変形によって衝撃エネルギーの吸収を行う場合、巻取軸の捩り変形量の増加に従って巻取軸が硬くなっていき、エネルギー吸収荷重は高くなっていく。つまり、巻取軸のみによってエネルギー吸収を行う場合にも、例えば衝突初期と衝突後期との間でエネルギー吸収特性に若干の変化が見られる。しかし、このような必然的なエネルギー吸収特性の変化ではなく、エネルギー吸収特性を柔軟かつ容易に、積極的に変化させることができるような改善が求められている。
また、エネルギー吸収域の拡大を容易に行えるような改善も求められている。
【0011】
本発明の目的は上記課題を解消することにあり、シートベルト用リトラクターのエネルギー吸収機構に作動途中でエネルギー吸収荷重が変化するエネルギー吸収特性を持たせることができ、しかも、リトラクターのコンパクト化を犠牲にすることなく、エネルギー吸収荷重をより高く設定することや、エネルギー吸収域をより広く設定することが容易にできて、シートベルト装置の小型化と、エネルギー吸収特性の向上による乗員の安全性向上を図ることのできるエネルギー吸収機構付シートベルト用リトラクターを備えたシートベルト装置を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、ウェビングが巻装されるボビンと、該ボビンの中心を挿通すると共に一端側が前記ボビンに一体的に結合されてリトラクターベースに回転自在に支持される巻取軸と、前記ボビンに隣接する状態で前記巻取軸の他端側に一体的に結合されるロッキングベースと、車両緊急時に前記ロッキングベースを前記リトラクターベースに係合させて前記ボビンのウェビング引き出し方向への回転を阻止する緊急ロック手段とを備え、
前記緊急ロック手段の作動時に前記ボビンに作用するウェビング引き出し方向の荷重が所定量以上になると、前記巻取軸が捩り変形を起こすことで前記ボビンのウェビング引き出し方向の回転を許容して衝撃エネルギーの吸収を行うエネルギー吸収機構付シートベルト用リトラクターを備えたシートベルト装置であって、
前記ボビン及びロッキングベースの少なくとも一方の対向面に、前記巻取軸の回転方向に湾曲した線材を受容する収納凹部が区画され、前記収納凹部に臨む前記ボビンまたはロッキングベースの一方には複数の線材係合部を有し、前記線材は、前記線材係合部の間を蛇行するように配設されるとともに、その一端が前記ボビンまたはロッキングベースの他方に結合され、前記ボビンと前記ロッキングベースとが相対回転するとき、前記線材は、結合された前記ボビンまたはロッキングベースの回転に伴って、前記線材係合部に摺接しながら蛇行して進行することにより摺接抵抗を発生し、前記線材が、前記線材係合部との係合が外れるまで、エネルギーを吸収するエネルギー吸収手段として作用することを特徴とするシートベルト装置により達成される。
【0013】
上記構成によれば、緊急ロック手段の作動時にボビンに作用するウェビング引き出し方向の荷重が所定以上になると、巻取軸と線材から成るエネルギー吸収手段との双方が、それぞれエネルギー吸収機構として作動して、車両緊急時の衝撃エネルギーを吸収する。
したがって、リトラクター全体でのエネルギー吸収荷重は、巻取軸が捩り変形を起こす時のエネルギー吸収荷重と、エネルギー吸収手段によるエネルギー吸収荷重との総和となり、エネルギー吸収手段による吸収分だけエネルギー吸収荷重の増大が図れ、高いエネルギー吸収荷重の確保が容易になる。
【0014】
また、巻取軸の捩り変形によるエネルギー吸収域に対し、エネルギー吸収手段によるエネルギー吸収域は、独自に設定することができる。例えば、エネルギー吸収手段によるエネルギー吸収域を巻取軸の捩り変形によるエネルギー吸収域の一部に重なるように設定することで、巻取軸の捩り変形によるエネルギー吸収域の一部では、双方のエネルギー吸収荷重の総和による高いエネルギー吸収荷重を確保すると共に、双方のエネルギー吸収域が重ならない範囲では、巻取軸の捩り変形によるエネルギー吸収作用だけで、低いエネルギー吸収荷重に設定することができる。このように、シートベルト用リトラクターのエネルギー吸収機構に作動途中でエネルギー吸収荷重が変化するエネルギー吸収特性を持たせることができる。また、線材の長さの変更等により、エネルギー吸収手段のエネルギー吸収域の増減を容易に調整できる。このエネルギー吸収域の調整と、線材及び線材係合部の係合力の調整とを組み合わせれば、車種毎に最適なエネルギー吸収特性を提供できる。
【0015】
さらに、リトラクター全体でのエネルギー吸収荷重の調整は、巻取軸の軸径や材料の変更だけでなく、エネルギー吸収手段のエネルギー吸収を起こす部位の寸法、形状、材質の変更までもが関連し、多種の要素が関連する。例えば、巻取軸の軸径の拡大や材料の変更等に頼らずとも、残りの要素の設計変更で、所望のエネルギー吸収荷重を実現することも可能である。すなわち、リトラクターの巻取軸やボビンの径の縮減によるリトラクターのコンパクト化を犠牲にすることなく、エネルギー吸収荷重を設定することが容易にできる。
そして、巻取軸及びエネルギー吸収手段の双方の寸法や材料を変更可能な場合には、双方でエネルギー吸収荷重の調整やエネルギー吸収域の調整を行うことで、車両構造の差異等に応じた特異なエネルギー吸収特性の要求にも容易に対応可能で、多様なニーズにも柔軟に対応可能になる。
【0016】
したがって、リトラクターの巻取軸やボビンの径の縮減によるリトラクターのコンパクト化を犠牲にすることなくエネルギー吸収性能を向上させて、シートベルト装置の小型化を図ることができ、また、エネルギー吸収特性の向上による乗員の安全性向上を図ることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のシートベルト装置の好適な実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係るシートベルト装置に使用されるエネルギー吸収機構付シートベルト用リトラクターの第1実施形態の正面縦断面図であり、図2は図1に示したシートベルト用リトラクターの要部分解斜視図であり、図3は図2のロッキングベース15を軸方向反対側から見た斜視図である。
【0022】
図1に示すエネルギー吸収機構付シートベルト用リトラクター10は、ウェビングが巻装される略円筒状のボビン13と、ボビン13の中心を挿通すると共に一端側(図1では、左端側)がそのボビン13に一体的に結合されてリトラクターベース11に回転自在に支持される巻取軸12と、巻取軸12の他端側に一体的に結合される略円盤状のロッキングベース15と、車両緊急時にロッキングベース15をリトラクターベース11に係合させてボビン13のウェビング引き出し方向への回転を阻止する緊急ロック手段60と、ロッキングベース15とボビン13との間に装備されたエネルギー吸収手段20とを備えている。
本実施形態は、エネルギー吸収機構として、捩り変形によって衝撃エネルギーの吸収を行う巻取軸12と、この巻取軸12とは別に衝撃エネルギーの吸収を行うエネルギー吸収手段20とを備えている。車両緊急時の衝撃エネルギーの吸収を、これら巻取軸12とエネルギー吸収手段20とで行う。
【0023】
リトラクターベース11は、車体に固定される背板11cの両側から左右の側板11a,11bが立ち上がり、略コ字状の断面を有するように金属板をプレス成形したものである。左右の側板11a,11bの対向位置には、ボビン13と組み合された巻取軸12が回転自在に橋架されている。リトラクターベース11の一方の側板11aの外側には、車両緊急時に乗員を拘束するウェビングの緩みを除去するようにボビン13を回転させてウェビングを緊張させるプリテンショナー70と、ボビン13をウェビング巻き取り方向に常時付勢する巻き取りばね装置80とが装備されている。
【0024】
図2に示すように、巻取軸12の一端側には、ボビン13と一体回転可能な結合を果たすボビン結合部12aが形成され、他端側には、ロッキングベース15と一体回転可能な結合を果たすロッキングベース結合部12bが形成されている。ボビン結合部12aは、断面六角形状を呈していて、スリーブ14の断面六角形の挿通穴14aに嵌挿される。スリーブ14は、ボビン13の一端側に形成された断面三角形状の嵌合凹部(図示せず)に嵌合される。これにより、巻取軸12はボビン13と一体回転可能に結合される。
【0025】
ロッキングベース結合部12bは、断面六角形状を呈していて、図3に示すロッキングベース15のボビン側の面に突設された円筒状のボス部18の断面六角形の挿通穴18aに嵌挿される。これにより、巻取軸12はロッキングベース15と一体回転可能に結合される。
ロッキングベース15のボビン側の面には、前記エネルギー吸収手段20の一部を収納するための収納凹部15aが設けられている。収納凹部15aは、ボス部18の外周に設けられたリング状溝である。
収納凹部15aの底面の所定箇所には、後述する線材の一端が挿入される係合穴15bが設けられている。ここでは係合穴15bが、ボス部18の外周面近傍に配置されている。
【0026】
一方、図2に示すように、ボビン13のロッキングベース15側の端面にも、前記エネルギー吸収手段20の一部を収納するための略円形の収納凹部13aが設けられている。さらに、収納凹部13aの中央には、前記ロッキングベース15のボス部18を受容する嵌合凹部19が設けられている。
収納凹部13aの底面の、嵌合凹部19より外周側における所定箇所には、線材係合部としての係合ピン23が設けられている。ここでは、3個の係合ピン23が、周方向に沿って収納凹部13aの底面に一体的に突設されている。3個の係合ピン23のうち両側の2個の係合ピンは、ほぼ同一円周上に配置されている。真中の1個の係合ピン23は、他の係合ピンより外周側にオフセットして配置されている。
係合ピン23の材質としては、鉄、ステンレス等を例示できる。
【0027】
ロッキングベース15の収納凹部15a(図3参照)と、ボビン13の収納凹部13aとによって、収納空間が区画される。この収納空間に、線材21が、ロッキングベース15及びボビン13の周方向に沿って曲げられた状態で、配設される。ここでは線材21が、略C字状に湾曲されている。線材21の一端は、ロッキングベース15の係合穴15b(図3参照)に挿入できるように、ロッキングベース15の軸方向に向かうように折り曲げられて、ロッキングベース係合部21aとされている。ロッキングベース係合部21aは、ロッキングベース15に一体的に結合される。
線材21のロッキングベース係合部21a近傍の箇所は、3個の係合ピン23間を蛇行するようにボビン13に係合されている。すなわち線材21は、3個の係合ピン23のうち両側の2個の係合ピンに、ボビン13の外周側から摺動可能に当接し、真中の1個の係合ピン23に、ボビン13の内周側から摺動可能に当接する。
【0028】
図4に、ボビン13の収納凹部13a内に線材21が配置された様子を示す。線材21の、最もロッキングベース係合部21a側に配置された係合ピン23aに当接している箇所から、線材20の他端までが、ボビン13に(詳しくは係合ピン23に)係合して摺動抵抗を発揮するボビン係合部となる。ボビン係合部は、ボビン13に一体的に結合されない。
ロッキングベース係合部21aは、ロッキングベースのボス部18が嵌挿される嵌合凹部19の外周縁に隣接配置されている。
線材21の材質としては、鉄、ステンレス、銅等を例示できる。
【0029】
図1に戻る。ボビン13とロッキングベース15との間に区画された収納空間22内に、線材21と係合ピン23とからなるエネルギー吸収手段が収納されている。
巻取軸12は、緊急ロック手段60の作動時にボビン13に作用するウェビング引き出し方向の荷重が所定以上になり、これに伴い、結合部12a,12b間に所定以上の回転トルクが作用すると、これらの結合部12a,12b間が捩り変形を起こす。こうして巻取軸12は、ボビン13のウェビング引き出し方向の回転を許容して乗員に作用する衝撃エネルギーの吸収を行うエネルギー吸収機構として機能する。
【0030】
緊急ロック手段60の具体的な構成は、公知の種々の物を採用することができる。例えば、本実施形態の場合は、図2に示すように、ロッキングベース15に立設した支軸17に、先端に係止歯16aを備えたポール16が回動可能に軸支されている。また、リトラクターベース11の側板11bの外側には、ポール16の係止歯16aが噛合可能な係合内歯25を内周に備えた内歯ラチェット26が併設されている。
車両緊急時には、ポール16の係止歯16aを内歯ラチェット26の係合内歯25に噛合させることで、ロッキングベース15のウェビング引き出し方向への回転を阻止する。
【0031】
次に、本実施形態のシートベルト用リトラクター10の作動について説明する。
衝突等の車両緊急時に緊急ロック手段60が作動すると、まず、巻取軸12の他端に結合されているロッキングベース15のウェビング引き出し方向への回転が阻止される。そして、ウェビングに作用する荷重によって所定以上の回転トルクがボビン13を介して巻取軸12の一端側に作用すると、巻取軸12の捩り変形が始まり、巻取軸12の捩り変形量の分だけ、ボビン13がウェビング引き出し方向に回転することで衝撃エネルギーの吸収がなされる。
また、巻取軸12の捩り変形の開始によって、ボビン13とロッキングベース15との間に相対回転が発生する時に、エネルギー吸収手段20による衝撃エネルギーの吸収も開始される。
【0032】
すなわち、図4に示した初期状態(ボビン13がロッキングベースに対して相対回転していない状態)から、ボビン13がウェビング引き出し方向(図4では反時計回り方向)に回転されていき、図5に示す状態となり、ついには図6に示す状態となる。この間、線材21のロッキングベース係合部21aはロッキングベースに結合されて移動せず、ボビン13に一体形成された係合ピン23a〜23cは回転していくため、係合ピン23a〜23cの間で線材21がしごかれていく。換言すれば、係合ピン23a〜23c上を線材21が相対的に摺動する。線材21は、係合ピン23a〜23c間を蛇行するように係合ピン23a〜23cに係合しており、係合ピン23a〜23c上を線材21が相対的に摺動する際には、高い摺動抵抗及び線材の屈曲抵抗が生じる。この摺動抵抗及び屈曲抵抗により、衝撃エネルギーの吸収がなされる。
【0033】
つまり、車両緊急時に緊急ロック手段60が作動して、ボビン13に作用するウェビング引き出し方向の荷重が所定以上になると、巻取軸12とエネルギー吸収手段と20との双方が、それぞれエネルギー吸収機構として作動して、車両緊急時の衝撃エネルギーを吸収する。
なお図6は、線材21と係合ピン23との係合が解除される直前の様子を示す。線材21は、そのロッキングベース係合部21aがロッキングベースのボス部18(図3参照)の外周近傍に固定されているため、ボビン13のロッキングベースに対する相対回転に伴って、線材21はロッキングベースのボス部18の外周面に巻回されていく。そして、図6に示す状態を経て、線材21と係合ピン23との係合が解除された後も、線材21はロッキングベースのボス部18の外周面に巻回された状態を保つ。
【0034】
以上のようなシートベルト用リトラクター10によれば、エネルギー吸収手段20が、ボビン13に設けられた収納凹部13aとロッキングベース15に設けられた収納凹部15aとによって区画される収納空間22内に収納されている。したがって、巻取軸12とは別個にエネルギー吸収を行うためのエネルギー吸収手段20を備えたにも拘わらず、リトラクター10の軸方向への寸法拡大がなく、コンパクト化が犠牲にされていない。
また、エネルギー吸収手段20を構成する線材21及び係合ピン23は、ともに簡単な構成であり、製造が容易である。そして、部材の塑性変形によるエネルギー吸収に比較して、このエネルギー吸収手段20によるエネルギー吸収は、製造誤差等に起因するばらつきが少ない。したがって、安定したエネルギー吸収性能を得ることができる。
【0035】
リトラクター10全体でのエネルギー吸収荷重は、図7(a)に示すように、巻取軸12が捩り変形を起こす時のエネルギー吸収荷重f1と、エネルギー吸収手段20によるエネルギー吸収荷重f2の総和f3となる。例えば、図7(b)に示すように巻取軸12の捩り変形だけで車両緊急時のエネルギー吸収を行っていた従来のものと比較すると、エネルギー吸収手段20の吸収分だけ、エネルギー吸収荷重の増大が図れ、高いエネルギー吸収荷重の確保が容易になる。
【0036】
また、図7(a)に示すように、巻取軸12の捩り変形によるエネルギー吸収域A1に対し、エネルギー吸収手段20の摺動抵抗によるエネルギー吸収域A2は、独自に設定することができる。例えば、エネルギー吸収手段20によるエネルギー吸収域A2を巻取軸12の捩り変形によるエネルギー吸収域A1の一部に重なるように設定することで、巻取軸12の捩り変形によるエネルギー吸収域の一部では、双方のエネルギー吸収荷重の総和による高いエネルギー吸収荷重を確保できる。また、双方のエネルギー吸収域が重ならない範囲では、巻取軸12の捩り変形によるエネルギー吸収作用だけで、低いエネルギー吸収荷重に設定することができる。このように、シートベルト用リトラクターのエネルギー吸収機構に作動途中でエネルギー吸収荷重が変化するエネルギー吸収特性を持たせることもできる。
【0037】
さらに、リトラクター全体でのエネルギー吸収荷重の調整は、巻取軸12の軸径や材料の変更だけでなく、エネルギー吸収手段20の寸法、形状、材質の変更までもが関連し、多種の要素が関連する。例えば、巻取軸12の軸径の拡大や材料の変更等に頼らずとも、残りの要素の設計変更で、所望のエネルギー吸収荷重を実現することも可能である。すなわち、リトラクターの巻取軸12やボビン13の径の縮減によるリトラクターのコンパクト化を犠牲にすることなく、エネルギー吸収荷重をより高く設定することが容易にできる。
そして、巻取軸12及びエネルギー吸収手段20の双方の寸法や材料を変更可能な場合には、双方でエネルギー吸収荷重の調整やエネルギー吸収域の調整を行うことで、車両構造の差異等に応じた特異なエネルギー特性の要求にも容易に対応可能で、多様なニーズにも柔軟に対応可能になる。
【0038】
なお、線材21と係合ピン23との摺動抵抗の調整は、それぞれの接触面の粗さや、接触面積の広さ等、多種の要素から設定する構成とするとよい。
このように多種の要素から摺動抵抗を設定する構成とすると、例えば、寸法等の制限で一部の要素の変更が困難になっても、他の要素の変更によって、確保する摺動抵抗を要求される任意値に比較的容易に調整することが可能になる。
【0039】
図8は本発明に係るシートベルト装置に使用されるエネルギー吸収機構付シートベルト用リトラクターの第2実施形態の要部を示す図である。なお、以下に説明する実施形態において、既に説明した部材等と同様な構成・作用を有する部材等については、図中に同一符号又は相当符号を付すことにより、説明を簡略化或いは省略する。
【0040】
図8に示すように、ボビン13の、図示しないロッキングベース側の端面に形成された収納凹部13a内に、線材41が、ボビン13の周方向に沿って曲げられた状態で、配設されている。この線材41は、第1実施形態の線材21より長く、略O字状に湾曲されている。線材41の一端は、ロッキングベースの係合穴に挿入できるように、ロッキングベースの軸方向に向かうように折り曲げられて、ロッキングベース係合部41aとされている。線材41の一端のロッキングベース係合部41aは、ロッキングベースのボス部が嵌挿される嵌合凹部19の外周縁に隣接配置されている。線材41の他端は、ロッキングベース係合部41aの外周側に配置されている。
【0041】
上記第2実施形態の、リトラクター全体でのエネルギー吸収荷重は、図9に示すように、巻取軸が捩り変形を起こす時のエネルギー吸収荷重f1と、エネルギー吸収手段40によるエネルギー吸収荷重f2の総和f3となる。そして、エネルギー吸収手段40によるエネルギー吸収域A2が、図7(a)に示す第1実施形態におけるエネルギー吸収手段20によるエネルギー吸収域A2より広くなっている。
本発明は、この第2実施形態のように、ボビン13の構造に変更を加えることなく、長い線材41を用いるのみでも、エネルギー吸収域A2を広げることができる。
【0042】
図10は本発明に係るシートベルト装置に使用されるエネルギー吸収機構付シートベルト用リトラクターの第3実施形態の要部分解斜視図であり、図11はそのシートベルト用リトラクターの正面縦断面図である。
シートベルト用リトラクター110は、ボビン113の内部に装着された円筒状の管部材122と、管部材122を挿通した線材121とを備えている。これら管部材122及び線材121により、エネルギー吸収手段が構成されている。
【0043】
管部材122はボビン113と同等の軸方向寸法を有している。管部材122は、ボビン113の中心から半径方向にオフセットした位置に設けられた貫通孔123内に挿着されている。こうして管部材122は、ボビン113軸方向に対して平行に配設されている。管部材122の材質としては、軟鋼等を採用できる。
線材121は、一端に(図10では左端に)管路拡大部121aを備え、他端にロッキングベース係合部121bを備えている。管路拡大部121aは、ここでは円錐台状に形成されている。ロッキングベース係合部121bは、ロッキングベース115に加締められて一体的に固定される。ここではロッキングベース115に、線材121が貫通される貫通孔115aが設けられている。線材121の材質としては、SWRH等を採用できる。
【0044】
なお、初期状態において、線材121の軸方向延長線上からオフセットした位置でロッキングベース係合部121bをロッキングベース115に固定しておくことが好ましい。すなわち、線材121のボビン113から突出した部分を一度或いは二度屈曲させた状態で、その屈曲部先端のロッキングベース係合部121bをロッキングベース115に固定する。
こうすれば、後述する線材121の屈曲変形を起こし易くできると共に、線材121がせん断により切断されることを防止できる。
【0045】
図11に示すように、管部材122の内周面の一端(図11では左端)は、線材121の管路拡大部121aに対応したテーパ形状になっている。管路拡大部121aは、管部材122の内部に装着されており、管部材122の端部から突出していない。管部材122の外径D3は、管路拡大部121aの最大外径(ここでは管路拡大部121aの端面における外径)D2より大きい。管路拡大部121aの最大外径D2は、線材121の外径D1より大きい。管部材122の内径(管路径)は、線材121の外径D1にほぼ等しい。
【0046】
次に、本実施形態のシートベルト用リトラクター110の作動について説明する。
衝突等の車両緊急時に緊急ロック手段60が作動してロッキングベース115のウェビング引き出し方向への回転が阻止されると、ウェビングに作用する荷重によって巻取軸12の捩り変形が始まり、巻取軸12による衝撃エネルギーの吸収がなされる。
また、巻取軸12の捩り変形の開始によって、ボビン113とロッキングベース115との間に相対回転が発生する時に、エネルギー吸収手段による衝撃エネルギーの吸収も開始される。
【0047】
すなわち、図11に示した初期状態から、ボビン113がウェビング引き出し方向に回転されていくことで、図12に示すように、線材121及び管路拡大部121aが管部材121の管路内を相対移動されていく。この際、管路拡大部121aは、管部材121の管路を放射方向に押し広げながら、管路内を移動する。ここでは、管路拡大部121aが管部材121を塑性変形させている。
またこの時、ボビン113の端面を示す図13(a)、及び図13(a)におけるB−B断面図である図13(b)に示すように、線材121はボビン113の端面に沿って屈曲されつつ管部材122から引き抜かれていく。
こうして、巻取軸12とは別個に、エネルギー吸収手段による衝撃エネルギーの吸収がなされる。
【0048】
以上のようなシートベルト用リトラクター110によれば、管路拡大部121aが管部材122の管路を押し広げて塑性変形させることと、線材121が屈曲変形されることとにより、エネルギー吸収手段による衝撃エネルギーの吸収がなされる。したがって、リトラクター110のコンパクト化を犠牲にすることなく、高いエネルギー吸収荷重を得ることができる。
【0049】
図14は本発明に係るシートベルト装置に使用されるエネルギー吸収機構付シートベルト用リトラクターの第4実施形態の要部分解斜視図である。
このシートベルト用リトラクター130は、ボビン133に設けられた係合孔143と、係合孔143を通して一端をボビン133内に挿入された線材141とを備えている。これら係合孔143と線材141とにより、エネルギー吸収手段が構成されている。
【0050】
係合孔143は、ボビン133の一方側(ロッキングベース135側)の端面における、その端面の中心から半径方向にオフセットした位置に設けられている。
線材141は、一端に(図14では右端に)線材141より外径が大きいロッキングベース係合部141bを備えている。ここではロッキングベース135に、線材141の貫通は許容するがロッキングベース係合部141bの貫通は許容しない貫通孔135aが設けられている。
なお図示しないが、ボビン133の他方側にも係合孔を設けて、線材141の他端(先端)を貫通させてもよい。
【0051】
円形状の係合孔143の径は、円柱状の線材141の外径と同等か若干大きい。線材141の材質としては、SUS等を採用できる。
本実施形態においても、初期状態において、線材141の軸方向延長線上からオフセットした位置でロッキングベース係合部141bをロッキングベース135に固定しておくことが好ましい。すなわち、線材141のボビン133から突出した部分を一度或いは二度屈曲させた状態で、その屈曲部先端のロッキングベース係合部141bをロッキングベース135に固定する。
【0052】
次に、本実施形態のシートベルト用リトラクター130の作動について説明する。
巻取軸12の捩り変形の開始によって、ボビン133とロッキングベース135との間に相対回転が発生する時に、エネルギー吸収手段による衝撃エネルギーの吸収も開始される。
すなわち、ボビン133がウェビング引き出し方向に回転されていくことで、係合孔143の内周面上を線材141の外周面が、所定の摺動抵抗に抗して摺動されていく。
またこの時、第3実施形態のときと同様に(図13(a)、(b)参照)、線材141はボビン133の端面に沿って屈曲されつつボビン133から引き抜かれていく。
こうして、巻取軸12とは別個に、エネルギー吸収手段による衝撃エネルギーの吸収がなされる。
【0053】
以上のようなシートベルト用リトラクター130によれば、係合孔143の内周面と線材141の外周面とが摺接することと、線材141が屈曲変形されることとにより、エネルギー吸収手段による衝撃エネルギーの吸収がなされる。したがって、リトラクター130のコンパクト化を犠牲にすることなく、高いエネルギー吸収荷重を得ることができる。また、本実施形態によれば、ボビン133に新たな部品を付加することなくエネルギー吸収手段の役割の一部を担わせたことで、部品点数の削減と共に、リトラクター130の更なる軽量化及び小型化が可能になる。
【0054】
図15は本発明に係るシートベルト装置に使用されるエネルギー吸収機構付シートベルト用リトラクターの第5実施形態の要部分解斜視図である。
このシートベルト用リトラクター150は、ロッキングベース155とボビン153との間に、エネルギー吸収手段となる環状のエネルギー吸収部材161を収納してなる。
【0055】
エネルギー吸収部材161は、線材としての略円環状の環状部161aと、環状部161aの一部が軸方向に延長されてなる補助線材としての円弧部162とを有している。環状部161の外周面と円弧部162の外周面との間には、切り裂き用の溝162aが設けられている。すなわち、円弧部162が溝162aが形成された範囲にわたって環状部161aに接続されている。なお図示しないが、溝162aは、環状部161の内周面と円弧部162の内周面との間に設けてもよい。
このエネルギー吸収部材161は、プレス加工等によって形成される。ここではプレス加工により、環状部161と円弧部162とは一部材から形成されている。
【0056】
図16は、エネルギー吸収部材161を軸方向に見た図(平面図)である。環状部161aとして、ここでは線材を略C字状に湾曲形成したものが用いられている。すなわち、環状部161aには切欠161cが設けられている。その切欠161cの両側に配置された環状部161aの端部の一方には、前記ボビン153に係合するボビン側フック部161bが設けられている。環状部161aの他方の端部からその環状部161aに沿って円弧部162が設けられている。円弧部162の切欠161c側とは反対側の端部には、前記ロッキングベース155に係合するベース側フック部162bが設けられている。
【0057】
図17は、ロッキングベース155を軸方向反対側から見た斜視図である。ロッキングベース155の前記ボビン153側の面には、エネルギー吸収部材161の一部を収納するための収納凹部155aが設けられている。収納凹部155aは、ボス部158の外周に設けられたリング状溝であり、このリング状溝の外周縁の一部に、エネルギー吸収部材161のベース側フック部162bの形状に対応した形状の係合切欠(係合部)155bが設けられている。
図15に戻る。ボビン153のロッキングベース155側の端面にも、エネルギー吸収部材161の一部を収納するための収納凹部153aが設けられている。収納凹部153aの中央には、前記ロッキングベース155のボス部158を受容する嵌合凹部159が設けられている。そして、嵌合凹部159の周縁部の一部に、エネルギー吸収部材161のボビン側フック部161bの形状に対応した形状の係合切欠(係合部)163が設けられている。
【0058】
図18は、本第5実施形態のシートベルト用リトラクターの正面縦断面図である。エネルギー吸収部材161は、ボビン153とロッキングベース155との間に区画された収納空間152内に収納されている。
【0059】
次に、本実施形態のシートベルト用リトラクター150の作動について説明する。
緊急ロック手段60の作動によりロッキングベース155の回転が阻止されて、ボビン153とロッキングベース155との間に相対回転が発生する時に、エネルギー吸収部材161による衝撃エネルギーの吸収も開始される。
図19(a)に、初期状態におけるボビン153の端面を示す。先ず、ロッキングベースの回転が阻止されることで、エネルギー吸収部材161の円弧部162のベース側フック部162bが不動となる。
次に、ボビン153がロッキングベースに対して相対回転するのに伴って、図19(b)に示すように、ボビン側フック部161bが回転(周方向に移動)されていく。この時、ベース側フック部162bが設けられた側を始点として、円弧部162が溝162a(図15参照)に沿って環状部161aから切り裂かれていく。すなわち、円弧部162が折り返されていく。円弧部162の折り返された部分では、初期状態において内周面だった部分が外周面となっていく。
そして、ベース側フック部162bとボビン側フック部161bとが軸方向に見て重なった状態を経て、ついには図19(c)に示すように、円弧部162が環状部161aから完全に切り離される。この時、エネルギー吸収部材161によるエネルギー吸収は終了する。図19(c)に示す状態において、円弧部162の初期状態において内周面だった部分が全て、外周面となっている。
【0060】
以上のようなシートベルト用リトラクター150によれば、エネルギー吸収部材161の円弧部162の長さを変更すること等により、エネルギー吸収域を容易に変更できる。また、エネルギー吸収部材161の硬さ、厚さ、材質、溝の深さ等の変更により、エネルギー吸収荷重の設定も容易に変更できる。したがって、車種毎に最適なエネルギー吸収特性を容易に提供できる。
【0061】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜な変形、改良等が可能である。
例えば、第1、第2実施形態では線材係合部として、係合ピンをボビンに一体的に突設していたが、別体の係合ピンを後付けしてもよい。係合ピンをロッキングベースに設けてもよい。係合ピンの代わりに、回転トルクが所定値以上になったときに回転する係合ローラを線材係合部として用いてもよい。
また、第2実施形態では、O字状に湾曲した長い線材を用いることでエネルギー吸収手段40によるエネルギー吸収域A2を広くしていたが、より長い線材を用いてエネルギー吸収域を拡大することも可能である。例えば、係合ピンをボビン内周側に配置して、その係合ピンとボビン外周縁との間に線材の余長部分を配置するようにしてもよい。例えば、線材を、折り曲げた状態で収納空間内に配設してもよい。
【0062】
また、第3実施形態では、管部材を塑性変形させていたが、塑性変形をさせずに管部材の管路内で管路拡大部を摺動させることのみによってエネルギー吸収を行ってもよい。
第3、第4実施形態において、ボビンから引き出した線材にその線材の摺動を許容しつつ当接する係合ピンをボビンに設けてもよい。すなわち、これら実施形態と第1実施形態とを組み合せてもよい。
また、第5実施形態では、環状部をC字状としていたが、切欠を有しない完全に環状のものを用いてもよい。
【0063】
【発明の効果】
本発明のエネルギー吸収機構付シートベルト用リトラクターを備えたシートベルト装置によれば、線材の長さの変更等により、エネルギー吸収手段のエネルギー吸収域の増減を容易に調整できる。また、高いエネルギー吸収荷重の確保が容易になる。したがって、車種毎に最適なエネルギー吸収特性を提供できる。また、リトラクターが大型化することもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るシートベルト装置に使用されるエネルギー吸収機構付シートベルト用リトラクターの第1実施形態の正面縦断面図である。
【図2】図1に示したシートベルト用リトラクターの要部分解斜視図である。
【図3】図2のロッキングベース15を軸方向反対側から見た斜視図である。
【図4】図2のボビン13に線材21を配設した様子を示す側面図である。
【図5】図4に示した初期状態からのエネルギー吸収手段の作動を説明する図である。
【図6】図4に示した初期状態からのエネルギー吸収手段の作動を説明する図である。
【図7】(a)は図1に示したシートベルト用リトラクターのエネルギー吸収特性図、(b)はエネルギー吸収機構として巻取軸のみが装備されたシートベルト用リトラクターのエネルギー吸収特性図である。
【図8】本発明に係るエネルギー吸収機構付シートベルト用リトラクターの第2実施形態の要部を示す側面図である。
【図9】第2実施形態のエネルギー吸収特性図である。
【図10】本発明に係るシートベルト装置に使用されるエネルギー吸収機構付シートベルト用リトラクターの第3実施形態の要部斜視図である。
【図11】第3実施形態のシートベルト用リトラクターの正面縦断面図である。
【図12】第3実施形態のシートベルト用リトラクターの作動を説明する図である。
【図13】第3実施形態のシートベルト用リトラクターの作動を説明する図である。
【図14】本発明に係るシートベルト装置に使用されるエネルギー吸収機構付シートベルト用リトラクターの第4実施形態の要部斜視図である。
【図15】本発明に係るシートベルト装置に使用されるエネルギー吸収機構付シートベルト用リトラクターの第5実施形態の要部斜視図である。
【図16】第5実施形態のエネルギー吸収部材を示す平面図である。
【図17】第5実施形態のロッキングベースを示す斜視図である。
【図18】第5実施形態の正面縦断面図である。
【図19】第5実施形態のシートベルト用リトラクターの作動を説明する図である。
【符号の説明】
10,110,130,150
エネルギー吸収機構付シートベルト用リトラクター
11 リトラクターベース
12 巻取軸(トーションバー)
13,113,133,153 ボビン
15,115,135,155 ロッキングベース
20,40 エネルギー吸収手段
21,41 線材
23,43 線材係合部
121,141 線材
122 管部材(線材係合部)
143 係合孔(線材係合部)
161 エネルギー吸収部材(線材)
Claims (4)
- ウェビングが巻装されるボビンと、該ボビンの中心を挿通すると共に一端側が前記ボビンに一体的に結合されてリトラクターベースに回転自在に支持される巻取軸と、前記ボビンに隣接する状態で前記巻取軸の他端側に一体的に結合されるロッキングベースと、車両緊急時に前記ロッキングベースを前記リトラクターベースに係合させて前記ボビンのウェビング引き出し方向への回転を阻止する緊急ロック手段とを備え、
前記緊急ロック手段の作動時に前記ボビンに作用するウェビング引き出し方向の荷重が所定量以上になると、前記巻取軸が捩り変形を起こすことで前記ボビンのウェビング引き出し方向の回転を許容して衝撃エネルギーの吸収を行うエネルギー吸収機構付シートベルト用リトラクターを備えたシートベルト装置であって、
前記ボビン及びロッキングベースの少なくとも一方の対向面に、前記巻取軸の回転方向に湾曲した線材を受容する収納凹部が区画され、前記収納凹部に臨む前記ボビンまたはロッキングベースの一方には複数の線材係合部を有し、前記線材は、前記線材係合部の間を蛇行するように配設されるとともに、その一端が前記ボビンまたはロッキングベースの他方に結合され、前記ボビンと前記ロッキングベースとが相対回転するとき、前記線材は、結合された前記ボビンまたはロッキングベースの回転に伴って、前記線材係合部に摺接しながら蛇行して進行することにより摺接抵抗を発生し、前記線材が、前記線材係合部との係合が外れるまで、エネルギーを吸収するエネルギー吸収手段として作用することを特徴とするシートベルト装置。 - 請求項1に記載のシートベルト装置であって、前記線材の前記一端は、前記巻取軸の軸線方向に折り曲げられ、前記収納凹部に臨む前記ボビンまたはロッキングベースの一方に設けられる係合孔に挿入され、前記ボビンまたはロッキングベースに結合されるシートベルト装置。
- 請求項 1 に記載のシートベルト装置であって、前記収納凹部に配設される前記線材がC字状に湾曲しているシートベルト装置。
- 請求項 1 に記載のシートベルト装置であって、前記収納凹部に配設された前記線材が前記巻取軸の周りを 1 周以上取り巻いているシートベルト装置。
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