JP3722747B2 - 刃物砥ぎ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は基体と、基体に回転可能な研磨材を備え、その研磨材が円錐台の表面形状をした研磨面を有し、刃物を前記両研磨面で挟みながら研ぐ刃物砥ぎ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記刃物砥ぎ装置として、例えば特公平06−061686号に記載される装置が知られている。
この装置に於いて、前記研磨材は、頂部を互いに整合させた2つの円錐台の形状を有している。前記円錐台の円錐面は研磨面を形成しており、刃物を前記研磨材に接触するように案内するスリットを備えている。このスリットにより、砥いでいる間、刃物を前記研磨面に圧接可能にした。
また、前記研磨材の周辺方向に20〜30°で変化させ、これにより、研磨面の少なくとも一部に小さな円錐角を形成し、また研磨面の少なくとも一部分に広い円錐角を形成し、小さな円錐角を有する部分に、広い円錐角を有する部分よりも粗い加工用の研磨面を設けた。
そして、粗加工用の研磨面が刃先から離れた部分の側面を砥いで、広い円錐角を有する部分が刃先に近い部分の側面を砥ぐようにしていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の装置によれば、良好な切れ味を得るために刃を数多くの回数研ぐ(刃を往復させる回数)必要があった。
そこで、本発明は、少ない砥ぎ回数で良好な切れ味を得ることができる改良された刃物砥ぎ装置を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記従来技術の課題を解決するため請求項1の刃物砥ぎ装置は、基体と、頂部を互いに整合させた2つの円錐台の形状を有し且つ前記基体に対して回転自在に取り付けられた研磨材とからなり、前記円錐台の円錐面が研磨面を形成し、この研磨面を前記研磨材の回転軸を中心とする同心円状に深さ10μm〜200μmの段状に形成したことを特徴とする。
【0005】
かかる構成によれば、前記研磨面に、前記研磨材の回転軸を中心とする同心円状の角エッジが形成され、この角エッジにより刃物の研磨量が大きい。すなわち、被研磨刃物の先端と前記研磨面の接触面積を減少させることで単位面積あたりの荷重が大きくなるので研磨の効率が大きい。
【0006】
また、前記前記同心円状の角エッジは、例えば、放射状に溝を形成した場合の角エッジと比べると、刃物を削る際の刃物の進行方向に対する角度が小さいので、刃物を動かすときの研磨面の回転角度も小さい。したがって、研磨効率が大きくので、刃物先端を非常に効率良く砥ぐことが可能となり、10回程度の少ない砥ぎ回数で良好な切れ味を得ることができる。
【0007】
なお、前記研磨面に備える段差深さが10μm未満の場合、一度に削る被研磨材の厚みが10μm未満となるので研磨効率が悪くなる。また、前記角エッジ以外の研磨面と被研磨刃物との接触面積が増えることにより、前記角エッジにおける単位面積あたりの荷重が相対的に小さくなるので研磨効率が悪くなる。
【0008】
また、前記研磨面に備える段差が200μmを越える場合、前記角エッジの部分の機械的強度が不足気味となり、その部分が砥ぎ作業中に欠損してしまう恐れがある。
【0009】
次に、請求項2の刃物砥ぎ装置は、前記研磨材の回転軸に垂直な平面と、前記研磨面に接する平面との間の円錐角が、前記研磨材の周方向で一定であることを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、作用研磨面の円錐角を変化させないことにより、円錐角が変化しているものに比べて、同じ砥ぎ回数の場合、刃先の部分に接触する時間が長くなり、刃先のみを研ぐため、短時間で刃を鋭くすることができる。また、刃先から離れた部分を研ぐ量が少なく、刃先に連続する面が広くなることにより、刃物でものを切る際の抑えこみ力が大きいので切れ味が鋭くなるとともに、刃先部分の強度も大きい。
【0011】
また、請求項3の刃物砥ぎ装置は、前記円錐角が30°〜40°であることを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、作用研磨面と平行にかかる力が減少し、作用研磨面に垂直にかかる力が大きくなるため、研磨力が向上し、研磨効率が向上する。
【0013】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図を用いて説明する。
図1ないし図2に刃物砥ぎ装置の概略図を示す。基体としてのケース1は、好ましくはプラスチックで造られ、研磨材2は、好ましくはアルミナ、ジルコニア、長石質磁器、強化磁器のようなセラミックまたはタングステン若しくは金属で造られる。
前記研磨材2は、頂部を互いに整合させた2つの円錐台の形状を有し且つケース1に対して回転自在に取り付けられている。また、研磨材2の前記円錐台の円錐面が研磨面3を形成し、図3および図4に示すように、この研磨面3は、前記研磨材2の回転軸5を中心として同心円状に且つこの回転軸5と平行な方向の深さが10μm〜200μmの段状に形成されている。
ここで前記深さとは、段差壁7の高さh(前記回転軸5と平行な方向の高さ)を意味する。
各段差壁7と段底面8の稜線は角エッジ9となっており、前記研磨面3は前記回転軸5を中心として多数の段底面8と角エッジ9を同心円状に配置する。
なお、前記段差壁7、段底面8、角エッジ9は、前記研磨材2を成形するための金型の円錐面をエンドミルで段状に切削加工することで形成した。また、前記段差壁7の高さhは触針式表面粗さ測定装置で確認することができる。
図1に示すように、研磨材2の回転軸5はケースの横軸線に関して傾斜され、その結果刃物は、研磨面3の一方と接しかつ反対側で研磨面3の他方と接する。研磨材2が配置される部分は、プラスチックの蓋4で被われ、蓋4には刃物を案内するための案内スリット6が設けられている。案内スリット6は通常の厚さの刃物がその中に挿入される幅である。図2に示すように、案内スリット6の端は、好ましくは、研磨材の回転軸5の水平面より上の位置に配置する。
なお、これら図1および図2において、説明の便宜上、前記蓋4を透視して前記研磨材2を図中に示している。
本実施例では、図4に示した研磨材2の円錐角(α)を20°〜45°で5°間隔で変え、周方向に変化があるものとないものを所定の角度で作製し、所定の段深さで研磨面を同心円状に形成したものを作製した。これら刃物を用いて以下の切れ味テストを行った。
上記刃物砥ぎ装置にてステンレス三徳包丁(関の包丁、濃州正宗本舗製)を所定回数研いだ後、所定寸法(50mm×100mm×20mm)の発泡スチロールを電子天秤に固定し、この発泡スチロールを完全に切断する時にかかる最大加圧重量で評価した。切れ味(最大加圧重量)に対する段深さとの関係を図5に、切れ味と円錐角の関係を図6、図7に示す。
図5に示すように、段深さ(段差壁7の高さh)を10μm以上とすることで、10回の砥ぎ回数における前記最大加圧重量が著しく低下し、切れ味が大きく向上することが判る。
図6に示すように、前記円錐角を周方向に30〜40°、30〜35°に変化させたものに対して、35°で一定としたものの方が10回の砥ぎ回数における切れ味が良好であった。
図7に示すように、前記円錐角を一定とした場合、円錐角が30°〜40°の範囲のときに、10回の砥ぎ回数において、非常に良好な切れ味となっていた。すなわち、円錐角を30°以上にすることにより、同じ力で刃を研ぐ場合、作用研磨面と平行にかかる力が減少し、作用研磨面に垂直にかかる力が大きくなるため、研磨力が向上し、その結果、円錐角が30°未満のもので研ぐよりも切れ味が向上する。すなわち、円錐角が30°未満では作用研磨面と平行にかかる力が大きくなり、作用研磨面に垂直にかかる力が小さくなるため、短時間では刃先を完全に研ぐことが困難である。しかも円錐角が30°以上と比較的大きいことから、刃先の角度が比較的大きくなり、耐久性に優れた刃を形成することができる。また、円錐角を40°以下にすることにより、研いだ刃物で物を切断する場合の抵抗を抑えて切れ味を向上させることができる。円錐角が40°を超えると、刃先の角度が大きくなるため、物を切断する場合の抵抗が大きくなり、切れ味が低下する。
【0014】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものでなく、発明の目的を逸脱しない限り、任意の形態とすることができることは云うまでもない。
【0015】
例えば、前記段差面3は、すくなくとも刃物の砥ぎに関与する部分をを段状に形成しておけばよい。また、隣接する段底間8間に幅狭のテーパー面が存在していても構わない。
【0016】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、基体と、頂部を互いに整合させた2つの円錐台の形状を有し且つ前記基体に対して回転自在に取り付けられた研磨材とからなり、前記円錐台の円錐面が研磨面を形成し、この研磨面を前記研磨材の回転軸を中心とする同心円状に深さ10μm〜200μmの段状に形成したことにより、前記研磨面に、前記研磨材の回転軸を中心とする同心円状の角エッジが形成され、この角エッジにより研磨量が大きい。すなわち、被研磨刃物の先端との接触面積を減少させることで単位面積あたりの荷重が大きくり、また、刃物を削る際の刃物の進行方向に対する角度が小さいので、刃物を動かすときの研磨面の回転角度も小さいので、刃物先端を非常に効率良く研ぐことが可能となり、10回程度の少ない砥ぎ回数で良好な切れ味を得ることができる。
【0017】
また、本発明の刃物砥ぎ装置において、前記研磨材の回転軸に垂直な平面と、前記研磨面に接する平面との間の円錐角を前記研磨材の周方向で一定とした場合、作用研磨面の円錐角を変化させないことにより、円錐角が変化しているものに比べて、同じ砥ぎ回数の場合、刃先の部分に接触する時間が長くなり、刃先のみを研ぐため、短時間で刃を鋭くすることができる。さらに、刃先から離れた部分を研ぐ量が少なく、刃先に連続する面が広くなることにより、刃物でものを切る際の抑えこみ力が大きいので切れ味が鋭くなるとともに、刃先部分の強度も大きい。
【0018】
また、前記円錐角を30°〜40°の範囲内で研磨面の周方向に一定とした場合、作用研磨面と平行にかかる力が減少し、作用研磨面に垂直にかかる力が大きくなるため、研磨力が向上し、研磨効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の刃物砥ぎ装置の平面図である。
【図2】図1の装置の側面図である。
【図3】図1の装置を構成する研磨材の平面図である。
【図4】図3の研磨材の表面形態についての説明図である。
【図5】実施例における溝の深さと切れ味の関係を示す線図である。
【図6】実施例における円錐角と切れ味の関係を示す線図である。
【図7】実施例における円錐角と切れ味の関係を示す線図である。
【符号の説明】
1 ケース(基体)
2 研磨材
3 研磨面
4 蓋
5 回転軸
6 スリット
7 段差壁
8 段底面
9 角エッジ
h 段差壁の高さ(段深さ)

Claims (3)

  1. 基体と、頂部を互いに整合させた2つの円錐台の形状を有し且つ前記基体に対して回転自在に取り付けられた研磨材とからなり、前記円錐台の円錐面が研磨面を形成し、この研磨面を前記研磨材の回転軸を中心とする同心円状に深さ10μm〜200μmの段状に形成したことを特徴とする刃物砥ぎ装置。
  2. 前記研磨材の回転軸に垂直な平面と、前記研磨面に接する平面との間の円錐角が、前記研磨材の周方向で一定であることを特徴とする請求項1記載の刃物砥ぎ装置。
  3. 前記円錐角が30°〜40°であることを特徴とする請求項2記載の刃物砥ぎ装置。
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