JP3719576B2 - ハイドロフォーム加工時における孔明け方法 - Google Patents

ハイドロフォーム加工時における孔明け方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、上型と下型との間に挟み込んだ中空状のワークの中空部に液圧を加えてハイドロフォーム加工を行った後に、そのままの状態でワークに孔を明けるのに用いられるハイドロフォーム加工時における孔明け方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来において、ハイドロフォーム加工を行った後に、液圧を加えた状態でワークに孔を明けるに際しては、例えば、図5に示すように、上型51と下型52との間に中空状のワークwを挟み込んで型締めした後、ワークwの中空部waに液圧pを加えてハイドロフォーム加工を行い、これと同時に、上型51に保持されるピアスパンチ53に対して、その先端切刃53aがワークwを介して受ける液圧pによる抗力とワークwを打ち抜いて孔whを明けるのに必要な剪断力との合力以上の力を図外の油圧シリンダから付与して、ピアスパンチ53を上型51側から下型52に向けて移動させることにより、ワークwに孔whを明けるようにしており、打ち抜かれた部分は、端材wkとしてワークwの中空部waに落下したり、仮想線で示す端材wk´として孔whの内側に折り曲げられたりするようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来におけるハイドロフォーム加工時における孔明け方法において、平板の打ち抜きに用いられる下型切刃(ボタンダイ)に相当するものがワークwの中空部waに加えられる液圧pであることから、すなわち、孔whの周縁wsの下方を剛体によって支持できないことから、図6にも示すように、孔whの周縁wsがだれてしまううえ、この周縁wsのだれ量が一定せずに液圧pの大きさによって変化してしまい、孔whを利用してワークwと他のワークとの締結を行う際には、緩みが発生して完全な締結をなし得ないことがあり、とくに、だれ量が大きい場合において、周縁wsに先端を係止させるタイプのクリップでは締結不能となってしまうといった事態が起こり兼ねないという問題を有しており、この問題を解決することが従来の課題となっていた。
【0004】
【発明の目的】
本発明は、上述した従来の課題に着目してなされたもので、ハイドロフォーム加工を行った後に、そのままの状態でワークに孔を明けるに際して、ワークと他のワークとの緩みのない締結、および、クリップを用いた締結を支障なく行い得る程度に、孔の周縁のだれ量を抑えることが可能であるハイドロフォーム加工時における孔明け方法を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係わるハイドロフォーム加工時における孔明け方法は、上型と下型との間に挟み込んだ中空状のワークの中空部に液圧を加えてハイドロフォーム加工を行った後に、液圧を加えた状態でパンチを上型側から下型に向けて移動させて孔明けを行うに際して、上型と下型との間にワークを挟み込んで型締めしてワークの中空部に液圧を加えてハイドロフォーム加工を行う段階でワークの孔明け位置に孔よりも大きな塑性変形部を形成した後、液圧を加えた状態でパンチを上型側から下型に向けて移動させて塑性変形部の略中心に孔明け加工を行う構成としたことを特徴としており、このハイドロフォーム加工時における孔明け方法の構成を上記した従来の課題を解決するための手段としている。
【0006】
本発明の請求項2に係わるハイドロフォーム加工時における孔明け方法は、塑性変形部を孔と略同心上の円形凹部とした構成とし、本発明の請求項3に係わるハイドロフォーム加工時における孔明け方法は、孔の周縁から円形凹部の周縁までの距離と、孔明け加工を行う際に生じるだれ量との関係に基づいて、円形凹部の直径を設定する構成としている。
【0007】
本発明の請求項4に係わるハイドロフォーム加工時における孔明け方法は、上型と下型との間に挟み込んだ中空状のワークの中空部に液圧を加えてハイドロフォーム加工を行った後に、液圧を加えた状態でパンチを上型側から下型に向けて移動させて孔明けを行うに際して、上型と下型との間にワークを挟み込んで型締めしてワークの中空部に液圧を加えてハイドロフォーム加工を行う段階でワークの孔明け位置に孔よりも大きく且つ孔と略同心上の円形凸部を形成した後、液圧を加えた状態で先端切刃及びこの先端切刃と軸方向にワークの肉厚以上の間隔をおいて形成した環状押圧面を備えた孔明けパンチを上型側から下型に向けて移動させて円形凸部の略中心に孔を明けるのに続いて、孔明けパンチの環状押圧面で孔の周縁と円形凸部の周縁との間を下型に向けて押圧する構成としている。
【0009】
【発明の作用】
本発明の請求項1に係わるハイドロフォーム加工時における孔明け方法では、ワークの孔明け位置に孔よりも大きな塑性変形部を形成したことで、孔の周縁部分の面剛性が強められることから、孔明け時における孔の周縁のだれ量が大幅に減ることとなる。
【0010】
本発明の請求項2に係わるハイドロフォーム加工時における孔明け方法では、上記した構成としたため、孔の周縁部分の面剛性がほぼ均一に強められることとなって、孔の周縁のだれ量が一様に少なくなり、本発明の請求項3に係わるハイドロフォーム加工時における孔明け方法では、上記した構成としたから、円形凹部を大きく設定し過ぎることによるだれ量の増加を阻止し得ることとなる。
【0011】
本発明の請求項4に係わるハイドロフォーム加工時における孔明け方法では、円形凸部の略中心に孔を明けた時点において、孔の周縁はだれることなく上型側に盛り上がっているので、この盛り上がった状態の孔の周縁と円形凸部の周縁との間を下型に向けて押圧すると、孔の周縁は孔明け位置の周囲とほぼ同じ高さに押し下げられ、だれのない平らな面が得られることとなる。
【0012】
とくに、このハイドロフォーム加工時における孔明け方法で、パンチの先端切刃による孔明けに連続して、パンチの環状押圧面が盛り上がった状態の孔の周縁と円形凸部の周縁との間を下型に向けて押圧するので、孔の周縁にだれを生じさせない孔明け加工をなし得ることとなる。
【0013】
【発明の効果】
本発明の請求項1に係わるハイドロフォーム加工時における孔明け方法では、上記した構成としていることから、孔明け時における孔の周縁のだれ量を格段に少なくすることができ、その結果、ワークと他のワークとの緩みのない締結を実現すると共に、クリップによる締結が不能となるのを防ぐことが可能であるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0014】
また、本発明の請求項2に係わるハイドロフォーム加工時における孔明け方法では、上記した構成としているので、孔の周縁のだれ量をほぼ均一に少なくすることができ、本発明の請求項3に係わるハイドロフォーム加工時における孔明け方法では、上記した構成としたから、円形凹部を大きく設定し過ぎることによってだれ量が増加してしまうのを防止することが可能であるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0015】
さらに、本発明の請求項4に係わるハイドロフォーム加工時における孔明け方法では、上記した構成としたため、孔の周縁にだれが生じるのを阻止して、孔の周縁を孔明け位置の周囲とほぼ同じ高さの平らな面とすることが可能であるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0016】
とくに、本発明の請求項4に係わるハイドロフォーム加工時における孔明け方法で、先端切刃及びこの先端切刃と軸方向にワークの肉厚以上の間隔をおいて形成した環状押圧面を備えた孔明けパンチを用いたから、孔の周縁にだれを生じさせることのない孔明け加工を行うことことが可能であるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1および図2は、本発明に係わるハイドロフォーム加工時における孔明け方法の一実施例を示している。
【0019】
図1はハイドロフォーム加工装置を示しており、このハイドロフォーム加工装置1は、上型2と、この上型2とともに中空状のワークWを挟み込んで型締めする下型3と、上型2に摺動可能に保持されたピアスパンチ4を備えている。
【0020】
このハイドロフォーム加工装置1により、ハイドロフォーム加工時にワークWに孔WHを明けるに際しては、上型2と下型3との間にワークWを挟み込んで型締めして、ワークWの中空部WAに液圧Pを加えてハイドロフォーム加工を行った後、液圧Pを加えたままの状態で、ピアスパンチ4に対して、その先端切刃4aがワークWを介して受ける液圧Pによる抗力とワークWを打ち抜いて孔WHを明けるのに必要な剪断力との合力以上の力を図外の油圧シリンダから付与して、ピアスパンチ4を上型2側から下型3に向けて移動させることにより、ワークWに孔WHを明けるようにしている。
【0021】
この場合、ワークWの孔明け位置には、孔明けに先立って孔WHよりも大きな円形凹部(塑性変形部)WBが孔WHと略同心上に形成されるようにしてあって、この円形凹部WBの直径Dは、図2のグラフに示す孔WHの周縁から円形凹部WBの周縁までの距離dと、孔明け加工を行う際に生じるだれ量δとの関係に基づいて設定するようにしている。
【0022】
つまり、肉厚tが2mmのワークWに深さHが2〜2.5mmの円形凹部WBを形成する場合には、だれ量δが許容限界値以下(0.5mm以下)の0.4mm程度になるように、図2のグラフに基づいて距離dを約4mmに規定し、ピアスパンチ4の先端切刃4aの直径Dpに2d(約8mm)を加えて円形凹部WBの直径Dを設定するようにしている。
【0023】
また、肉厚tが1.4mmのワークWに深さHが1〜1.5mmの円形凹部WBを形成する場合には、上記と同じくだれ量δが許容限界値以下(0.5mm以下)の0.4mm程度になるように、図2のグラフに基づいて距離dを約5mmに規定し、ピアスパンチ4の先端切刃4aの直径Dpに2d(約10mm)を加えて円形凹部WBの直径Dを設定する。
【0024】
したがって、上記したハイドロフォーム加工時における孔明け方法では、ワークWの孔明け位置に、孔明けに先立って孔WHよりも大きな円形凹部WBを形成するようにしているので、孔WHの周縁部分の面剛性が強められることから、孔明け時における孔WHの周縁のだれ量δが大幅に減少することとなる。
【0025】
また、上記したハイドロフォーム加工時における孔明け方法では、円形凹部WBが孔WHと略同心上に形成されるようにしているため、孔WHの周縁部分の面剛性がほぼ均一に強められることとなって、孔WHの周縁のだれ量δが一様に少なくなり、この際、円形凹部WBの直径Dを図2のグラフに示す孔WHの周縁から円形凹部WBの周縁までの距離dと、孔明け加工を行う際に生じるだれ量δとの関係に基づいて設定するようにしていることから、円形凹部WBを大きく設定し過ぎることで生じるだれ量δの増加を阻止し得ることとなる。
【0026】
図3および図4は、本発明に係わるハイドロフォーム加工時における孔明け方法の他の実施例およびこの孔明け方法に採用される孔明けパンチの一実施例を示している。
【0027】
図3に示すように、この実施例では、ハイドロフォーム加工時における孔明けに先立って、ワークWの孔明け位置に、孔WHよりも大きな円形凸部(塑性変形部)WCが孔WHと略同心上に形成されるようにしており、この円形凸部WCの直径D´は、平板に孔明け加工を施す際に生じる図2(a)の液圧とだれ量δとの関係に基づいて設定され、円形凸部WCの高さhは、平板に孔明け加工を施す際に生じるだれ量δを0.2〜0.3mm上回る大きさに設定されている。
【0028】
また、この孔明け方法において採用されるピアスパンチ5は、先端切刃5aと、この先端切刃5aと軸方向にワークWの肉厚以上の間隔をおいて形成された環状押圧面5bを備えており、この環状押圧面5bは、図4に示すように、ハイドロフォーム加工時において先端切刃5aにより円形凸部WCの略中心に孔WHを明けた後、孔WHの周縁と円形凸部WCの周縁との間を下型3に向けて押圧するようになっている。
【0029】
この実施例によるハイドロフォーム加工時における孔明け方法および孔明けパンチにおいて、ハイドロフォーム加工時に図外の油圧シリンダの作動によりピアスパンチ5を降下させると、その先端切刃5aによって円形凸部WCの略中心に孔WHが明けられる。
【0030】
この時点では、孔WHの周縁はだれることなく上型2側に盛り上がった状態で残っており、続いてピアスパンチ5をさらに降下させてその環状押圧面5bによって盛り上がった状態で残存している孔WHの周縁と円形凸部WCの周縁との間を下型3に向けて押圧すると、孔WHの周縁は孔明け位置の周囲とほぼ同じ高さに押し下げられることから、だれのない平らな面が得られることとなる。
【0031】
本発明に係わるハイドロフォーム加工時における孔明け方法および孔明けパンチの詳細な構成は、上記した実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例によるハイドロフォーム加工時における孔明け方法によってワークに孔を明けた状態を示す断面説明図である。
【図2】 (a) 図3の孔明け方法に採用される円形凸部の直径および高さを設定するのに用いる平板を孔明けする際の液圧とだれ量との関係を示すグラフである。
(b) 図1の孔明け方法に採用される円形凹部(塑性変形部)の直径を設定するのに用いる孔の周縁から円形凹部の周縁までの距離と孔明け加工を行う際に生じるだれ量との関係を示すグラフである。
【図3】 本発明の他の実施例によるハイドロフォーム加工時における孔明け方法およびこの孔明け方法に採用されるパンチを示すワークに孔を明ける直前の断面説明図である。
【図4】 図3の孔明け方法およびパンチによってワークに孔を明けた状態を示す断面説明図である。
【図5】 従来のハイドロフォーム加工時における孔明け方法によってワークに孔を明けた状態を示す断面説明図である。
【図6】 図5のA−A線位置での断面説明図である。
【符号の説明】
2 上型
3 下型
4,5 ピアスパンチ(孔明けパンチ)
5a 先端切刃
5b 環状押圧面
D 円形凹部の直径
D´ 円形凸部の直径
d 孔の周縁から円形凹部の周縁までの距離
P 液圧
W ワーク
WA ワークの中空部
WB 円形凹部(塑性変形部)
WC 円形凸
H 孔
δ だれ量

Claims (4)

  1. 上型と下型との間に挟み込んだ中空状のワークの中空部に液圧を加えてハイドロフォーム加工を行った後に、液圧を加えた状態でパンチを上型側から下型に向けて移動させて孔明けを行うに際して、上型と下型との間にワークを挟み込んで型締めしてワークの中空部に液圧を加えてハイドロフォーム加工を行う段階でワークの孔明け位置に孔よりも大きな塑性変形部を形成した後、液圧を加えた状態でパンチを上型側から下型に向けて移動させて塑性変形部の略中心に孔明け加工を行うことを特徴とするハイドロフォーム加工時における孔明け方法。
  2. 塑性変形部を孔と略同心上の円形凹部とした請求項1に記載のハイドロフォーム加工時における孔明け方法。
  3. 孔の周縁から円形凹部の周縁までの距離と、孔明け加工を行う際に生じるだれ量との関係に基づいて、円形凹部の直径を設定する請求項2に記載のハイドロフォーム加工時における孔明け方法。
  4. 上型と下型との間に挟み込んだ中空状のワークの中空部に液圧を加えてハイドロフォーム加工を行った後に、液圧を加えた状態でパンチを上型側から下型に向けて移動させて孔明けを行うに際して、上型と下型との間にワークを挟み込んで型締めしてワークの中空部に液圧を加えてハイドロフォーム加工を行う段階でワークの孔明け位置に孔よりも大きく且つ孔と略同心上の円形凸部を形成した後、液圧を加えた状態で先端切刃及びこの先端切刃と軸方向にワークの肉厚以上の間隔をおいて形成した環状押圧面を備えた孔明けパンチを上型側から下型に向けて移動させて円形凸部の略中心に孔を明けるのに続いて、孔明けパンチの環状押圧面で孔の周縁と円形凸部の周縁との間を下型に向けて押圧することを特徴とするハイドロフォーム加工時における孔明け方法。
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