JP3718735B2 - ポリシラン系ブロックコポリマーの製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、ポリシランの優れた特性をさらに改善したポリシラン系ブロックコポリマーの製造方法に関する。
【0002】
【従来技術とその問題点】
ポリシランは、セラミックス前駆体;フォトレジスト、有機感光体、光導波路、光メモリなどの光・電子材料などとして注目されている。
【0003】
ポリシランは、光・電子材料としては、薄膜の形態で使用されるが、主鎖がケイ素のみからなるポリシランの薄膜は、一般に硬くてもろく、機械的強度が低いので、クラックなどの欠陥を生じやすい。また、ポリシランを電子写真感光体(有機感光体)として用いる場合には、印刷後に残余のトナーを電子感光体表面から除去する工程での耐磨耗性が低いので、電子写真感光体としての寿命が短く、実用には供し難い。
【0004】
そこで、ポリシラン薄膜の機械的強度および耐磨耗性を向上させるべく、以下のような方法により、ポリシランブロックコポリマーを製造することが提案されている。
【0005】
(a)ポリシランの吸収最大波長以上の波長の光の照射下に、ビニル系モノマーをポリシランにより光重合開始させて、ポリシランブロックコポリマーを製造する方法(特開平3−292310号公報、特公平6−86506号公報)。
【0006】
(b)マスクされたジシレンのアニオン重合によりポリシランを合成した後、全てのモノマーが消費された後にも活性を保っているシリルアニオン末端にメチルメタクリレートを添加し、ポリシラン−ポリメチルメタクリレートブロックコポリマーを製造する方法(有機合成化学 47, 1051-1059 (1989))。
【0007】
しかしながら、上記(a)の方法は、ポリシランを一旦製造した後、別の重合管にポリシランとビニル系モノマーとを仕込み、加熱しながら光照射を行うので、操作が煩雑であり、特別な装置などを必要とするという点で、生産性が低いという問題がある。
【0008】
また、(b)の方法は、マスクされたジシレンのアニオン重合において複雑なモノマーの合成が必要であり、また合成できるポリシランから構成されるブロックの種類(特に側鎖の種類)が制限されており、さらに、炭素系ポリマーから構成されるブロックとしては、現在のところ、PMMAしか合成されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の主な目的は、薄膜としての機械的強度、耐磨耗性などに優れているポリシラン系ブロックコポリマーを、光照射装置などの特殊な装置を使用することなく、ポリシランを製造する反応器中で簡便に、操作性よく、安価に製造し得る新たなポリシラン系ブロックコポリマーの製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の如き従来技術の現状に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、ハロシランを特定の金属を陽極として用い、特定の溶媒および特定の支持電解質を用いて電極反応に供することによってポリシラン系ポリマーを形成した後、反応系内にビニル基含有化合物をそのまま導入する場合には、従来技術の問題点を実質的に解消乃至大幅に軽減しつつ、ポリシラン系ブロックコポリマーが得られることを見出した。
【0011】
また、ポリシラン系ポリマーとビニル基含有化合物との反応速度が遅い場合には、ビニル基含有モノマーの導入後に再び電極反応を行うことにより、速やか且つ継続的に、制御性良く、ポリシラン系ブロックコポリマーが得られることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、下記のポリシラン系ブロックコポリマーの製造方法を提供するものである:
1.ポリシラン系ブロックコポリマーの製造方法であって、
一般式
【0013】
【化18】
【0014】
(式中mは、1〜3である:Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、シリル基またはアミノ基を表す。m=1の場合には2つのRが、m=2の場合には4つのRが、m=3の場合は6つのRが、それぞれ同一でもあるいは2つ以上が相異なっていてもよい:Xは、ハロゲン原子を表す。)で示されるジハロシランをMgまたはMg系合金を陽極とし、Li塩を支持電解質とし、Al塩、Fe塩、Mg塩、Zn塩、Sn塩、Co塩、Pd塩、V塩、Cu塩またはCa塩を通電助剤として用い、溶媒として非プロトン性溶媒を使用する電極反応に供することにより、直鎖状ポリシランを形成させた後、該直鎖状ポリシランを含む反応系に一般式
【0015】
【化19】
【0016】
(式中R1およびR2は、同一または相異なって、それぞれ水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、エステル基、シリル基、エーテル基、アミノ基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基またはハロゲン原子を表す。)で示されるビニル基含有化合物を添加することにより、一般式
【0017】
【化20】
【0018】
(式中Rは、上記に同じ。nは、10〜10000である。)
で示される構造単位と
一般式
【0019】
【化21】
【0020】
(式中R1およびR2は、上記に同じ。lは、1〜10000である。)
で示される構造単位とからなるポリシラン系ブロックコポリマーを製造する方法。
【0021】
2.一般式(2)で示されるビニル基含有化合物を添加した後、再び電極反応を行う上記項1に記載の方法。
【0022】
3.ポリシラン系ブロックコポリマーの製造方法であって、
一般式
【0023】
【化22】
【0024】
(式中Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、シリル基またはアミノ基を表す:Xは、ハロゲン原子を表す。)で示されるトリハロシランをMgまたはMg系合金を陽極とし、Li塩を支持電解質とし、Al塩、Fe塩、Mg塩、Zn塩、Sn塩、Co塩、Pd塩、V塩、Cu塩またはCa塩を通電助剤として用い、溶媒として非プロトン性溶媒を使用する電極反応に供することにより、シリコンネットワークポリマーを形成させた後、該シリコンネットワークポリマーを含む反応系に一般式
【0025】
【化23】
【0026】
(式中R1およびR2は、同一または相異なって、それぞれ水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、エステル基、シリル基、エーテル基、アミノ基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基またはハロゲン原子を表す。)で示されるビニル基含有化合物を添加することにより、一般式
【0027】
【化24】
【0028】
(式中Rは、上記に同じ。nは、10〜10000である。)
で示される構造単位と
一般式
【0029】
【化25】
【0030】
(式中R1およびR2は、上記に同じ。lは、1〜10000である。)
で示される構造単位とからなるポリシラン系ブロックコポリマーを製造する方法。
【0031】
4.一般式(2)で示されるビニル基含有化合物を添加した後、再び電極反応を行う上記項3に記載の方法。
【0032】
5.ポリシラン系ブロックコポリマーの製造方法であって、
一般式
【0033】
【化26】
【0034】
(式中mは、1〜3である:Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、シリル基またはアミノ基を表す。m=1の場合には2つのRが、m=2の場合には4つのRが、m=3の場合は6つのRが、それぞれ同一でもあるいは2つ以上が相異なっていてもよい:Xは、ハロゲン原子を表す。)
で示されるジハロシランと
一般式
【0035】
【化27】
【0036】
(式中Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、シリル基またはアミノ基を表す:Xは、ハロゲン原子を表す。)
で示されるトリハロシランと
一般式
【0037】
【化28】
【0038】
(式中Xは、ハロゲン原子を表す。)で示されるテトラハロシランの少なくとも2種をMgまたはMg系合金を陽極とし、Li塩を支持電解質とし、Al塩、Fe塩、Mg塩、Zn塩、Sn塩、Co塩、Pd塩、V塩、Cu塩またはCa塩を通電助剤として用い、溶媒として非プロトン性溶媒を使用する電極反応に供することにより、一般式
【0039】
【化29】
【0040】
(式中Rは、上記に同じ。)
で示される構造単位と
一般式
【0041】
【化30】
【0042】
(式中Rは、上記に同じ。)
で示される構造単位と
一般式
【0043】
【化31】
【0044】
で示される構造単位とからなるSi−Si結合を骨格とする網目状ポリマーを形成させた後、該網目状ポリマーを含む反応系に
一般式
【0045】
【化32】
【0046】
(式中R1およびR2は、同一または相異なって、それぞれ水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、エステル基、シリル基、エーテル基、アミノ基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基またはハロゲン原子を表す。)で示されるビニル基含有化合物を添加することにより、一般式
【0047】
【化33】
【0048】
(式中Rは、上記に同じ。r、sおよびtの2つ以上は正の整数であり、r+s+tは、10〜10000である。)
で示される構造単位と
一般式
【0049】
【化34】
【0050】
(式中R1およびR2は、上記に同じ。lは、1〜10000である。)
で示される構造単位とからなるポリシラン系ブロックコポリマーを製造する方法。
【0051】
6.一般式(2)で示されるビニル基含有化合物を添加した後、再び電極反応を行う上記項5に記載の方法。
【0052】
以下において、請求項1〜6に記載されたそれぞれの発明を、順に、本願第1〜第6発明といい、すべての発明を総括して単に本発明という。
【0053】
1.本願第1発明
本願第1発明において、出発原料として使用するハロシランは、一般式
【0054】
【化35】
【0055】
(式中、mは、1〜3である:Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、シリル基またはアミノ基を表す。m=1の場合には2つのRが、m=2の場合には4つのRが、m=3の場合は6つのRが、それぞれ同一でもあるいは2つ以上が相異なっていてもよい:Xはハロゲン原子を表す。)
で示されるジハロシランである。
【0056】
一般式(1)で示されるジハロシランにおいて、mは、1〜3であり、Rで示される水素原子、アミノ基および有機置換基(アルキル基、アリール基、アルコキシ基、シリル基、アミノ基)は、それぞれが同一であってもよく、2つ以上が相異なっていても良い。より具体的には、m=1の場合には2つのRが、m=2の場合には4つのRが、m=3の場合には6つのRが、それぞれ同一であっても或いは2つ以上が相異なっていても良い。
【0057】
一般式(1)で表される化合物としては、mが1または2であることが、より好ましい。アルキル基としては、炭素数1〜10程度のものが挙げられ、これらの中でも炭素数1〜6のものがより好ましい。アリール基としては、フェニル基、炭素数1〜6個のアルキル基を1つ以上置換基として有するフェニル基、p−アルコキシフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。アルコキシ基としては、炭素数1〜10程度のものが挙げられ、これらの中でも炭素数1〜6のものがより好ましい。Rが上記のシリル基、アミノ基および有機置換基である場合には、その水素原子の少なくとも1つが、他のアルキル基、アリール基、アルコキシ基などの官能基により置換されていても良い。この様な官能基としては、上記と同様なものが挙げられる。
【0058】
また、一般式(1)において、Xは、ハロゲン原子(Cl、F、Br、I)を表す。ハロゲン原子としては、Clがより好ましい。
【0059】
本願第1発明においては、一般式(1)で表されるジハロシランの1種を単独で使用しても良く、或いは2種を混合使用しても良い。ジハロシランは、できるだけ高純度のものであることが好ましく、例えば、液体のジハロシランについては、水素化カルシウムにより乾燥し、蒸留して使用することが好ましく、また、固体のジハロシランについては、再結晶法により、精製し、使用することが好ましい。
【0060】
反応に際しては、ジハロシランを溶媒に溶解して使用する。溶媒としては、非プロトン性溶媒が広く使用でき、より具体的には、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサン、塩化メチレンなどの溶媒が例示される。これらの溶媒は、単独でも、或いは2種以上の混合物としても使用できる。溶媒としては、テトラヒドロフランおよび1,2−ジメトキシエタンがより好ましい。溶媒中のジハロシランの濃度は、低すぎる場合には、電流効率が低下するのに対し、高すぎる場合には、支持電解質が溶解しないことがある。従って、溶媒中のジハロシランの濃度は、通常0.05〜20mol/l程度であり、より好ましくは0.2〜15mol/l程度であり、特に好ましくは0.3〜13mol/l程度である。
【0061】
本願第1発明で使用する支持電解質としては、LiCl、LiClO4、LiBr、LiI、LiNO3、Li2CO3などの安価なリチウム塩が例示される。これらの支持電解質は、単独で使用しても良く、或いは2種以上を併用しても良い。これらの支持電解質の中でも、LiClおよびLiClO4がより好ましく、LiClが最も好ましい。
【0062】
支持電解質の濃度は、低すぎる場合には、通電が困難乃至不可能となって反応が進行しないのに対し、高すぎる場合には、還元されて析出したリチウムの量が多すぎて、所望の生成物であるポリシランのSi−Si主鎖結合が開裂して、その分子量が低下する。従って、溶媒中の支持電解質の濃度は、通常0.05〜5mol/l程度であり、より好ましくは0.1〜3mol/l程度であり、特に好ましくは0.15〜2.0mol/l程度である。
【0063】
本発明においては、電極反応をより効率的に行うために、支持電解質に加えて通電助剤を併用することにより、通電性の向上を図ることができる。
【0064】
通電助剤としては、AlCl3、Al(OEt)3などのAl塩;FeCl2、FeCl3などのFe塩;MgCl2などのMg塩;ZnCl2などのZn塩;SnCl2などのSn塩;CoCl2などのCo塩;PdCl2などのPd塩;VCl3などのV塩;CuCl2などのCu塩;CaCl2などのCa塩などが好ましいものとして例示される。これらの通電助剤は、単独で使用しても良く、或いは2種以上を併用しても良い。これら通電助剤の中でも、AlCl3、FeCl2、FeCl3、CoCl2、CuCl2などがより好ましい。溶媒中の通電助剤の濃度は、低すぎる場合には、通電性の向上が十分に達成されず、一方、高すぎる場合には、通電助剤が還元されて、反応に関与しなくなる。従って、溶媒中の通電助剤の濃度は、通常0.01〜6mol/l程度であり、より好ましくは0.03〜4mol/l程度であり、特に好ましくは0.05〜3mol/l程度である。このような通電助剤の添加により、反応時間が大幅に短縮され、効率的なポリシランの製造が可能となる。反応時間の短縮の程度は、通電助剤の濃度、支持電解質および原料ジハロシランの濃度などにより異なるが、通常、通電助剤を用いない場合の1/4〜3/4程度となる。
【0065】
本願第1発明においては、陽極として、MgまたはMgを主成分とする合金を使用する。Mgを主成分とする合金としては、例えばAlを3〜10%程度含有するものが挙げられる。また、JIS H 6125−1961に規定されている1種(MGA1)、2種(MGA2、通称AZ63)、3種(MGA3)などが挙げられる。陰極としては、電流を通じ得る物質であれば特に限定されないが、SUS304、316などのステンレス鋼;Mg、Cu、Zn、Sn、Al、Ni、Coなどの各種金属類;炭素材料などが例示される。電極の形状は、通電を安定して行いうる限り特に限定されないが、棒状、板状、筒状、円錐状、円盤状、球状体またはペレットをバスケットに収容したもの、板状体をコイル状に巻いたものなどが好ましい。電極表面の酸化被膜は、必要ならば、予め除去しておく。電極からの酸化被膜の除去は、任意の方法で行えばよく、例えば、電極を酸により洗浄した後、エタノールおよびエーテルなどにより洗浄し、減圧下に乾燥する方法、窒素雰囲気下に電極を研磨する方法、或いはこれらの方法を組み合わせた方法などにより行うことができる。
【0066】
本願第1発明は、例えば、(a)陽極および陰極を設置した密閉可能な反応容器に一般式(1)で表されるジハロシランおよび支持電解質を溶媒とともに収容し、好ましくは機械的もしくは時期的に攪拌しつつ、所定量の電流を通電することにより電極反応を行わせる方法、(b)陽極および陰極を設置した電解槽、反応液貯槽、ポンプ、配管などから構成される流動式電極反応装置を用いて、反応液貯槽に投入したハロシラン、支持電解質および溶媒からなる反応溶液をポンプにより電極反応装置内を循環させつつ、所定量の電流を通電することにより、電解槽内で電極反応を行わせる方法などにより行うことができる。
【0067】
電解槽の構造乃至形状は、特に限定されないが、反応の進行に伴って反応溶液中に溶け出して消耗する陽極を簡便に補給する形式の構造とすることが出来る。より具体的には、例えば、図1に斜面図として概要を示す様に、陽極をバスケット乃至かご状容器1に収容した小さな球状体乃至ペレット3により構成し、その消耗に従って、上部から球状体乃至ペレットを補給し得るものとし、これを電解槽23内に設置する(図4参照)。円筒型容器からなる電解槽23の外壁は、陰極21を兼ねている。電極反応は、この様な電解槽23、反応液貯槽(図示しない)、反応液循環ポンプ(図示しない)、配管類(図示しない)などを主要構成要素とする流動式電解反応装置を用いて行うことができる。
【0068】
或いは、図2に示す様に、特開昭62−56589号公報に示された“鉛筆削り型電解槽”に準じて、陰極シート5内に陽極ブロック7を積層する形式の電解槽としても良い。この様な連続補給型の陽極を備えた電解槽を使用する場合には、消耗する陽極を1回或いは数回の反応毎に交換する必要がなくなるので、長期にわたる繰り返し反応が可能となり、陽極交換に要する経費が軽減され、ポリシラン系ブロックコポリマーの製造コストが低下する。
【0069】
反応容器あるいは反応装置内は、乾燥雰囲気であればよいが、乾燥した窒素または不活性ガス雰囲気であることがより好ましく、さらに脱酸素し、乾燥した窒素雰囲気或いは不活性ガス雰囲気であることが特に好ましい。
【0070】
通電量については、通電量を調整することにより、分子量の制御が可能となり、ジハロシラン中のハロゲンを基準として、0.5F/mol以上あれば良く、1F/mol程度以上がより好ましい。反応時間は、原料ジハロシランの量、支持電解質の量などに関係する電解液の抵抗などにより異なり得るので、適宜定めればよい。反応時の温度は、通常−20℃から使用する溶媒の沸点までの温度範囲内にあり、より好ましくは−5〜30℃程度の範囲内にあり、最も好ましくは0〜25℃程度の範囲内にある。本願第1発明においては、通常の電極還元反応においては必須とされている隔膜は、使用してもよいが、必須ではないので、操作が簡便となり、実用上有利である。
【0071】
本願第1発明では、上記のようにして得られた直鎖状ポリシランを含む反応系に一般式
【0072】
【化36】
【0073】
(式中R1およびR2は、同一または相異なって、それぞれ水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、エステル基、シリル基、エーテル基、アミノ基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基またはハロゲン原子を表す。)で示されるビニル基を有する化合物である。
【0074】
一般式(1)で示されるビニル基含有化合物において、アルキル基としては、メチル基、エチル基などの炭素数1〜10程度のものが挙げられ、これらの中でも炭素数1〜6のものがより好ましい。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などの炭素数2〜10程度のものが挙げられ、これらの中でも炭素数2〜6のものがより好ましい。アリール基としては、フェニル基などの炭化水素系芳香族基の他に、ピリジニル基などのヘテロ原子を環内に有するものでも良い。R1およびR2 がアルキル基、アルケニル基、アリール基、エステル基、シリル基、エーテル基、アミノ基或いはカルボキシル基である場合には、その基を構成する水素原子の1つ以上が、他の官能基により置換されていても良い。この様な官能基としては、上記と同様なものが挙げられる。
【0075】
ビニル基を有する化合物の中で好ましいものの例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−アセトキシスチレン、1−ビニルナフタレンなどのスチレン系化合物;アクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−オクチルなどのアクリル系化合物;メチルトリビニルシラン、テトラビニルシラン、ジエチルメチルビニルシラン、ジメチルフェニルビニルシラン、ジフェニルメチルビニルシラン、トリメチルビニルシランなどのビニルシラン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなどのカルボン酸ビニル系化合物;ドデシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールビニルエーテルなどのビニルエーテル系化合物;ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどのブタジエン系化合物;その他として、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン、エチレン、ブテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ジアリルフタレート、ビニルピリジン、ニトロエチレン、メチレンマロン酸ジメチル、α−シアノアクリル酸エチル、シアン化ビニリデン、1−ビニルフェノールなどが挙げられる。
【0076】
本願第1発明では、一般式(2)で示されるビニル基含有化合物の1種を単独で使用しても良く、或いは2種以上を混合使用しても良い。
【0077】
市販のビニル基含有化合物を使用する場合には、重合禁止剤を含有していることがあるので、予め蒸留精製する必要がある。
【0078】
ビニル基含有化合物の添加量は、所望のポリシラン系ブロックコポリマーのポリシランブロックとビニル基に由来する炭素系ブロックとの比率により、規定される。反応系におけるビニル基を有する化合物の濃度が、ポリシランの濃度(=仕込み原料であるハロシランの濃度)よりも著しく高い場合には、得られるポリシラン系ブロックコポリマーのポリシランとしての光・電子物性が低下することになる。一方、ビニル基を有する化合物の濃度が、ポリシランの濃度に比して著しく低い場合には、ポリシラン系ブロックコポリマーの機械的強度、耐磨耗性などの物性の改善が十分には行われない。従って、反応系におけるビニル基含有化合物の濃度は、通常、ポリシランを形成するために仕込んだハロシランの濃度の0.01〜100倍程度であり、好ましくは0.05〜10倍程度であり、特に好ましくは0.1〜7倍程度である。
【0079】
本願第1発明では、直鎖状ポリシランを含む反応系に所定量のビニル基含有化合物を添加した後、通常0.01〜100時間程度、好ましくは0.03〜70時間程度、より好ましくは0.1〜10時間程度撹拌する。反応速度を制御するために、必要ならば、反応系を加熱もしくは冷却しても良い。
【0080】
2.本願第2発明
本願第2発明は、反応の第1段階で形成された直鎖状ポリシランを含む反応系に所定量のビニル基含有化合物を添加した後、ポリシラン系ブロックコポリマーの形成反応を促進するために、再び電極反応を行う以外の点では、本願第1発明と実質的に異なるところはない。すなわち、電極反応を再び行うことにより、未反応のハロシラン部位から活性種を発生させて反応開始点を増加させることができるので、反応を制御しつつ、迅速に且つ継続的にポリシラン系ブロックコポリマーの形成を行うことが可能となる。
【0081】
再び電極反応を行う際の通電量は、ビニル基を有する化合物の反応速度により適宜定めればよいが、原料中のハロゲンを基準として、通常0.1F/mol程度以上であればよい。
【0082】
3.本願第3発明
本願第3発明においては、出発原料として、本願第1発明の一般式(1)で示されるジハロシランに代えて、一般式
【0083】
【化37】
【0084】
(式中Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、シリル基またはアミノ基を表す:Xは、ハロゲン原子を表す)で示されるトリハロシランを使用することおよび、得られるポリシラン系ブロックコポリマーが一般式
【0085】
【化38】
【0086】
(式中Rは、上記に同じ:nは、10〜10000である)で示される構造単位と、一般式
【0087】
【化39】
【0088】
(式中R1およびR2は、上記に同じ。lは、1〜10000である。)
で示される構造単位とからなっていること以外の点では、本願第1発明と実質的に異なるところはない。すなわち、一般式(5)で示されるトリハロシランを原料として、本願第1発明と同様の電極還元反応を行うことにより、シリコンネットワークポリマーを形成させた後、反応系に一般式(2)で示されるビニル基含有化合物を導入することにより、一般式(6)で示される構造単位と一般式(4)で示される構造単位とからなるポリシラン系ブロックコポリマーを製造する。
【0089】
4.本願第4発明
本願第4発明は、反応の第1段階で形成されたシリコンネットワークポリマーを含む反応系に所定量のビニル基含有化合物を添加した後、ポリシラン系ブロックコポリマーの形成反応を促進するために、再び電極反応を行う以外の点では、本願第3発明と実質的に異なるところはない。
【0090】
再び電極反応を行う際の通電量は、本願第2発明の場合と同様でよい。
【0091】
5.本願第5発明
本願第5発明と本願第1発明との相違点は、出発原料として、一般式(1)で示されるジハロシランと一般式(5)で示されるトリハロシランと一般式
【0092】
【化40】
【0093】
(式中Xは、ハロゲン原子を表す)で示されるテトラハロシランの2種以上を使用すること、および、それに対応して生成物が、一般式
【0094】
【化41】
【0095】
(式中、Rは、出発原料に応じて上記に同じ:r、sおよびtの2つ以上は、正の整数であって、r+s+tは、10〜10000である)で示される構造単位と一般式(4)で示される構造単位とからなるポリシラン系ブロックコポリマーであること以外の点では、本願第1発明と実質的に異なるところはない。
【0096】
6.本願第6発明
本願第6発明は、反応の第1段階で形成されたSi−Si結合を骨格とする網目状ポリマーを含む反応系に所定量のビニル基含有化合物を添加した後、ポリシラン系ブロックコポリマーの形成反応を促進するために、再び電極反応を行う以外の点では、本願第5発明と実質的に異なるところはない。
【0097】
再び電極反応を行う際の通電量は、本願第2発明の場合と同様でよい。
【0098】
【発明の効果】
本発明によれば、下記のような顕著な効果が達成される。
【0099】
(a)薄膜としても、成膜性、機械的強度、耐磨耗性、他の有機系ポリマーとの相溶性などに優れたポリシラン系ブロックコポリマーが製造できる。
【0100】
(b)光照射器などの特殊な装置を使用することなく、電極反応の反応器にビニル基含有化合物を添加するという簡便な操作により、ポリシラン系ブロックコポリマーが製造できる。
【0101】
(c)原料を適宜選択することにより、種々の構造を有するポリシラン系ブロックコポリマーを製造することができる。
【0102】
(d)ビニル基含有化合物を添加した後、再び電極反応を行うことにより、反応速度が遅い場合にも、反応時間を大幅に短縮することができる。
【0103】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明の特徴とするところをより一層明確にする。
【0104】
参考例1
三方コックおよびMg製陽極(直径1cm×5cm)およびステンレス鋼(SUS304)製陰極(1cm×1cm×5cm)を装着した内容積30mlの3つ口フラスコ(以下反応器という)に無水塩化リチウム(LiCl)0.4gを収容し、50℃で1mmHgに加熱減圧して、LiClを乾燥した後、脱酸素した乾燥窒素を反応器内に導入し、さらに予めナトリウム−ベンゾフェノンケチルで乾燥したテトラヒドロフラン15mlを加えた。これに予め蒸留により精製したメチルフェニルジクロロシラン1.6ml(10mmol)をシリンジで加え、マグネティックスターラーにより反応溶液を攪拌しながら、ウォーターバスにより反応器を室温に保持しつつ、定電流電源により通電した。通電は、メチルフェニルジクロロシラン中の塩素を基準として1.8F/molの通電量となるよう約31時間行った。
【0105】
次いで、ビニル基含有化合物として、予め蒸留により精製したスチレン1.12ml(10mmol)をシリンジで加え、1時間撹拌しながら放置した。
【0106】
反応終了後、反応溶液に1N塩酸20mlを加えて、さらに蒸留水80mlを加え、エーテル100mlで抽出し、貧溶媒エタノール80ml、良溶媒テトラヒドロフラン4mlを用いて再沈した。
【0107】
その結果、重量平均分子量14300のメチルフェニルポリシラン−ポリスチレンブロックコポリマー1.38gが得られた。
【0108】
得られたポリシラン系ブロックコポリマーの30%トルエン溶液を調製し、Al基板上にキャスト法により塗布し、減圧下50℃に加熱して乾燥し、ポリシラン薄膜を得た。
【0109】
この薄膜をピンオンディスク法(摺動子ZrO2)により機械的強度を評価したところ、メチルフェニルポリシラン(重量平均分子量18100)の薄膜と比較して、損傷までに要する時間が約4.9倍となり、機械的強度が大幅に向上していることが確認された。
【0110】
また、得られたブロックコポリマーをレーザービームプリンターの感光ドラムに塗布し、乾燥して、印刷を繰り返したところ、塗布したポリマーの重量が磨耗により1/2になるまでに印刷できる枚数(A4サイズ紙)は、上記メチルフェニルポリシランを同様に塗布した場合に比して、約3.4倍となり、耐磨耗性も大幅に向上していることが確認された。
【0111】
実施例2
支持電解質に加えて、通電助剤として塩化第一鉄(FeCl2)0.24gを加えて電極反応を行う以外は、参考例1と同様にして反応を行った。
【0112】
その結果、重量平均分子量29100のメチルフェニルポリシラン−ポリスチレンブロックコポリマー1.41gが得られた。
【0113】
得られたポリシラン系ブロックコポリマーの30%トルエン溶液を調製し、Al基板上にキャスト法により塗布し、減圧下50℃に加熱して乾燥し、ポリシラン薄膜を得た。
【0114】
この薄膜をピンオンディスク法(摺動子ZrO2)により機械的強度を評価したところ、メチルフェニルポリシラン(重量平均分子量30100)の薄膜と比較して、損傷までに要する時間が約5.3倍となり、機械的強度が大幅に向上していることが確認された。
【0115】
また、得られたブロックコポリマーをレーザービームプリンターの感光ドラムに塗布し、乾燥して、印刷を繰り返したところ、塗布したポリマーの重量が磨耗により1/2になるまでに印刷できる枚数(A4サイズ紙)は、上記メチルフェニルポリシランを同様に塗布した場合に比して、約3.8倍となり、耐磨耗性も大幅に向上していることが確認された。
【0116】
実施例3
スチレンを加えた後、原料として使用したメチルフェニルジクロロシラン中の塩素を基準として0.3F/molの通電量となるよう5時間通電を行う以外は実施例2と同様にして反応を行った。
【0117】
反応終了後参考例1と同様にして後処理を行ったところ、重量平均分子量33900のメチルフェニルポリシラン−ポリスチレンブロックコポリマー1.56gが得られた。
【0118】
得られたポリシラン系ブロックコポリマーの30%トルエン溶液を調製し、Al基板上にキャスト法により塗布し、減圧下50℃に加熱して乾燥し、ポリシラン薄膜を得た。
【0119】
この薄膜をピンオンディスク法(摺動子ZrO2)により機械的強度を評価したところ、メチルフェニルポリシラン(重量平均分子量32100)の薄膜と比較して、損傷までに要する時間が約5.5倍となり、機械的強度が大幅に向上していることが確認された。
【0120】
また、得られたブロックコポリマーをレーザービームプリンターの感光ドラムに塗布し、乾燥して、印刷を繰り返したところ、塗布したポリマーの重量が磨耗により1/2になるまでに印刷できる枚数(A4サイズ紙)は、上記メチルフェニルポリシランを同様に塗布した場合に比して、約3.9倍となり、耐磨耗性も大幅に向上していることが確認された。
【0121】
実施例4
添加するスチレンの量を2.25ml(20mmol)とする以外は実施例3と同様にして反応を行った。
【0122】
反応終了後参考例1と同様にして後処理を行ったところ、重量平均分子量39300のメチルフェニルポリシラン−ポリスチレンブロックコポリマー2.03gが得られた。
【0123】
次いで、参考例1と同様にして、ポリシラン系ブロックコポリマーの薄膜を作製し、その機械的強度および耐磨耗性を評価したところ、メチルフェニルポリシラン(重量平均分子量38300)薄膜と比較して、大幅に向上していることが確認された。
【0124】
実施例5
一般式(1)で示されるジハロシランとして、蒸留法で精製したシクロヘキシルメチルジクロロシラン1.9mlを使用する以外は、実施例4と同様にして反応を行った。
【0125】
反応終了後、反応溶液に1N塩酸20mlを加えて、さらに蒸留水80mlを加え、n−ヘキサン100mlで抽出し、貧溶媒アセトン80ml、良溶媒n−ヘキサン4mlを用いて再沈した。
【0126】
その結果、重量平均分子量30100のシクロヘキシルメチルポリシラン−ポリスチレンブロックコポリマー1.98gが得られた。
【0127】
参考例1と同様にして、得られたポリシラン系ブロックコポリマーの薄膜を作製し、その機械的強度および耐磨耗性を評価したところ、シクロヘキシルメチルポリシラン(重量平均分子量34000)薄膜と比較して、大幅に向上していることが確認された。
【0128】
実施例6
一般式(1)で示されるジハロシランとして、蒸留法で精製したn−ヘキシルメチルジクロロシラン2.0mlを使用する以外は実施例4と同様にして反応を行った。
【0129】
反応終了後、反応溶液に1N塩酸20mlを加えて、さらに蒸留水80mlを加え、エーテル100mlで抽出し、貧溶媒アセトン80ml、良溶媒n−ヘキサン4mlを用いて再沈した。
【0130】
その結果、重量平均分子量36500のn−ヘキシルメチルポリシラン−ポリスチレンブロックコポリマー2.11gが得られた。
【0131】
参考例1と同様にして、得られたポリシラン系ブロックコポリマーの薄膜を作製し、その機械的強度および耐磨耗性を評価したところ、n−ヘキシルメチルポリシラン(重量平均分子量37100)薄膜と比較して、大幅に向上していることが確認された。
【0132】
実施例7
一般式(1)で示されるジハロシランとして、蒸留法で精製したメトキシメチルジクロロシラン1.5mlを使用する以外は実施例4と同様にして反応を行った。
【0133】
反応終了後、反応溶液に1N塩酸20mlを加えて、さらに蒸留水80mlを加え、エーテル100mlで抽出し、貧溶媒エタノール80ml、良溶媒テトラヒドロフラン(THF)4mlを用いて再沈した。
【0134】
その結果、重量平均分子量9100のメトキシメチルポリシラン−ポリスチレンブロックコポリマー1.11gが得られた。
【0135】
参考例1と同様にして、得られたポリシラン系ブロックコポリマーの薄膜を作製し、その機械的強度および耐磨耗性を評価したところ、メトキシメチルポリシラン(重量平均分子量10100)薄膜と比較して、大幅に向上していることが確認された。
【0136】
実施例8
一般式(1)で示されるジハロシラン原料として、蒸留法で精製したp−アニシルメチルジクロロシラン1.9mlを使用する以外は実施例4と同様にして反応を行った。
【0137】
反応終了後、反応溶液に1N塩酸20mlを加えて、さらに蒸留水80mlを加え、エーテル100mlで抽出し、貧溶媒エタノール80ml、良溶媒THF4mlを用いて再沈した。
【0138】
その結果、重量平均分子量12300のp−アニシルメチルポリシラン−ポリスチレンブロックコポリマー1.41gが得られた。
【0139】
参考例1と同様にして、得られたポリシラン系ブロックコポリマーの薄膜を作製し、その機械的強度および耐磨耗性を評価したところ、p−アニシルメチルポリシラン(重量平均分子量9900)薄膜と比較して、大幅に向上していることが確認された。
【0140】
実施例9
一般式(1)で示されるジハロシラン原料として、蒸留法で精製したフェニル(トリメチルシリル)ジクロロシラン1.7mlを使用する以外は実施例4と同様にして反応を行った。
【0141】
反応終了後、反応溶液に1N塩酸20mlを加えて、さらに蒸留水80mlを加え、エーテル100mlで抽出し、貧溶媒エタノール80ml、良溶媒テトラヒドロフラン(THF)4mlを用いて再沈した。
【0142】
その結果、重量平均分子量11500のフェニル(トリメチルシリル)ジクロロポリシラン−ポリスチレンブロックコポリマー1.3gが得られた。
【0143】
参考例1と同様にして、得られたポリシラン系ブロックコポリマーの薄膜を作製し、その機械的強度および耐磨耗性を評価したところ、フェニル(トリメチルシリル)ポリシラン(重量平均分子量10200)薄膜と比較して、大幅に向上していることが確認された。
【0144】
実施例10
陽極としてMg合金(Mg90%、Al9%、Zn1%:1cm×1cm×5cm)を使用する以外は実施例4と同様にして、反応を行った。
【0145】
その結果、重量平均分子量29300のメチルフェニルポリシラン−ポリスチレンブロックコポリマー1.34gが得られた。
【0146】
実施例11
陰極としてグラッシーカーボン(1cm×0.1cm×5cm)を使用する以外は実施例4と同様にして、反応を行った。
【0147】
その結果、高分子量のメチルフェニルポリシラン−ポリスチレンブロックコポリマーが得られた。
【0148】
実施例12
支持電解質として過塩素酸リチウム1.0gを使用する以外は実施例4と同様にして反応を行った。
【0149】
その結果、高分子量のメチルフェニルポリシラン−ポリスチレンブロックコポリマーが得られた。
【0150】
実施例13
支持電解質として硝酸リチウム0.65gを使用する以外は実施例4と同様にして反応を行った。
【0151】
その結果、高分子量のメチルフェニルポリシラン−ポリスチレンブロックコポリマーが得られた。
【0152】
実施例14
通電助剤として、FeCl2に代えて無水塩化アルミニウム(AlCl3)0.25gを使用する以外は実施例4と同様にして反応を行った。
【0153】
その結果、重量平均分子量31300のメチルフェニルポリシラン−ポリスチレンブロックコポリマー2.00gが得られた。
【0154】
実施例15
通電助剤として、FeCl2に代えてFeCl30.31gを使用する以外は実施例4と同様にして反応を行った。
【0155】
その結果、重量平均分子量32900のメチルフェニルポリシラン−ポリスチレンブロックコポリマー1.95gが得られた。
【0156】
実施例16
通電助剤として、FeCl2に代えてVCl30.29gを使用する以外は実施例4と同様にして反応を行った。
【0157】
その結果、重量平均分子量27900のメチルフェニルポリシラン−ポリスチレンブロックコポリマー1.89gが得られた。
【0158】
実施例17
非極性溶媒として、テトラヒドロフランに代えて1,2−ジメトキシエタン15mlを使用する以外は実施例4と同様にして反応を行った。
【0159】
その結果、重量平均分子量20500のメチルフェニルポリシラン−ポリスチレンブロックコポリマー1.65gが得られた。
【0160】
実施例18
ビニル基含有化合物として、スチレンに代えてα−メチルスチレン2.60mlを使用する以外は実施例4と同様にして反応を行った。
【0161】
その結果、高分子量のポリシラン系ブロックコポリマーが得られた。
【0162】
実施例19
ビニル基含有化合物として、スチレンに代えてp−メチルスチレン2.62mlを使用する以外は実施例4と同様にして反応を行った。
【0163】
その結果、高分子量のポリシラン系ブロックコポリマーが得られた。
【0164】
実施例20
ビニル基含有化合物として、スチレンに代えてアクリル酸メチル1.79mlを使用する以外は実施例4と同様にして反応を行った。
【0165】
その結果、高分子量のポリシラン系ブロックコポリマーが得られた。
【0166】
実施例21
ビニル基含有化合物として、スチレンに代えてアクリル酸n−ブチル2.85mlを使用する以外は実施例4と同様にして反応を行った。
【0167】
その結果、高分子量のポリシラン系ブロックコポリマーが得られた。
【0168】
実施例22
ビニル基含有化合物として、スチレンに代えてメタクリル酸メチル2.13mlを使用する以外は実施例4と同様にして反応を行った。
【0169】
その結果、高分子量のポリシラン系ブロックコポリマーが得られた。
【0170】
実施例23
ビニル基含有化合物として、スチレンに代えてメチルトリビニルシラン3.23mlを使用する以外は実施例4と同様にして反応を行った。
【0171】
その結果、高分子量のポリシラン系ブロックコポリマーが得られた。
【0172】
実施例24
ビニル基含有化合物として、スチレンに代えてジメチルフェニルビニルシラン3.63mlを使用する以外は実施例4と同様にして反応を行った。
【0173】
その結果、高分子量のポリシラン系ブロックコポリマーが得られた。
【0174】
実施例25
ビニル基含有化合物として、スチレンに代えてドデシルビニルエーテル5.20mlを使用する以外は実施例4と同様にして反応を行った。
【0175】
その結果、高分子量のポリシラン系ブロックコポリマーが得られた。
【0176】
実施例26
ビニル基含有化合物として、スチレンに代えて1,4−シクロヘキサンジメタノールビニルエーテル4.20mlを使用する以外は実施例4と同様にして反応を行った。
【0177】
その結果、高分子量のポリシラン系ブロックコポリマーが得られた。
【0178】
実施例27
ビニル基含有化合物として、スチレンに代えてN−ビニルカルバゾール3.87mlを使用する以外は実施例4と同様にして反応を行った。
【0179】
その結果、高分子量のポリシラン系ブロックコポリマーが得られた。
【0180】
実施例28
ビニル基含有化合物として、スチレンに代えて酢酸ビニル1.85mlを使用する以外は実施例4と同様にして反応を行った。
【0181】
その結果、高分子量のポリシラン系ブロックコポリマーが得られた。
【0182】
実施例29
ビニル基含有化合物として、スチレンに代えてイソプレン2.00mlを使用する以外は実施例4と同様にして反応を行った。
【0183】
その結果、高分子量のポリシラン系ブロックコポリマーが得られた。
【0184】
実施例30
ビニル基含有化合物として、スチレンに代えてアクリロニトリル1.06mlを使用する以外は実施例4と同様にして反応を行った。
【0185】
その結果、高分子量のポリシラン系ブロックコポリマーが得られた。
【0186】
実施例31
ビニル基含有化合物として、スチレンに代えて4−ビニルピリジン2.13mlを使用する以外は実施例4と同様にして反応を行った。
【0187】
その結果、高分子量のポリシラン系ブロックコポリマーが得られた。
【0188】
実施例32
ビニル基含有化合物として、スチレンに代えてスチレン1.68mlとメタクリル酸メチル1.60mlとを使用する以外は実施例4と同様にして反応を行った。
【0189】
その結果、高分子量のポリシラン系ブロックコポリマーが得られた。
【0190】
実施例33
原料ハロシランとして、蒸留法で精製したフェニルトリクロロシラン1.59mlを使用する以外は実施例4と同様にして反応を行った。通電は、原料中の塩素を基準として、通電量が2.0mol/lとなるよう行った。
【0191】
その結果、フェニル基を有するシリコンネットワークポリマーとスチレンとのブロックコポリマー(重量平均分子量22000)が得られた。
【0192】
実施例34
原料ハロシランとして、蒸留法で精製したメチルフェニルジクロロシラン1.60ml、フェニルトリクロロシラン0.16mlおよびテトラクロロシラン0.06mlを使用する以外は実施例4と同様にして、反応を行った。
【0193】
その結果、重量平均分子量16800のポリシラン系ブロックコポリマー1.88gが得られた。
【0194】
実施例35
図3に示す鉛筆削り型電解槽を使用して、本発明を実施した。すなわち、円錐部11(高さ105cm×直径22cm)と円柱部13(直径22cm×45cm;但し、15cmのブロック3枚により構成)とからなるMg積層体を陽極とし、陽極円錐部11と5mmの間隔で配置されたSUS304製シート15を陰極(電解槽の外壁を兼ねる)とする鉛筆削り型電解槽17、容量20lの反応液貯槽(図示せず)、反応液循環ポンプ(図示せず)、配管類(図示せず)などを主要構成要素として備えた流動式電極反応装置に無水塩化リチウム(LiCl)400gと無水塩化第一鉄(FeCl2)250gとを収容し、50℃、1mmHgに加熱減圧して、LiClおよびFeCl2を乾燥した後、脱酸素した乾燥窒素を反応装置内に導入し、さらに乾燥したテトラヒドロフラン15lを加えた。これにメチルフェニルジクロロシラン1.5kgを加え、反応液循環ポンプにより、反応溶液を矢印の方向に循環させながら(電極間の中間点を通過する際の線速度は、20cm/秒)、冷却器により反応温度を室温に保持しつつ、電流値34Aで定電流電解を行った。通電は、原料中の塩素を基準として1.8F/molの通電量となる様、約22時間行った。
【0195】
次いで、ビニル基含有化合物として、予め蒸留により精製したスチレン1.6kgを加え、さらに原料中の塩素を基準として、0.3F/molを通電した。
【0196】
反応終了後、反応溶液を常法に従って洗浄し、抽出し、再沈したところ、高分子量のメチルフェニルポリシラン−スチレンブロックコポリマーが得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】陽極を構成するMgまたはMg合金の球状体をかご状容器乃至バスケットに収容して使用する本発明方法の大要を示す斜面図である。
【図2】本発明で使用する電解槽を鉛筆削り型電解槽とした場合の概要を示す模式的な断面図である。
【図3】本発明の実施例で使用する鉛筆削り型電解槽の概要を示す模式的な断面図である。
【図4】Mg球状体をバスケットに収容して消耗陽極として使用する電解槽の概要を示す模式的な断面図である。
【符号の説明】
1…かご状容器乃至バスケット
3…金属球状体乃至ペレット
5…陰極
7…ブロック状陽極
11…陽極の円錐部
13…陽極の円柱部
15…陰極
17…電解槽
21…陰極
23…電解槽
Claims (6)
- ポリシラン系ブロックコポリマーの製造方法であって、一般式
- 一般式(2)で示されるビニル基含有化合物を添加した後、再び電極反応を行う請求項1に記載の方法。
- ポリシラン系ブロックコポリマーの製造方法であって、一般式
- 一般式(2)で示されるビニル基含有化合物を添加した後、再び電極反応を行う請求項3に記載の方法。
- ポリシラン系ブロックコポリマーの製造方法であって、一般式
- 一般式(2)で示されるビニル基含有化合物を添加した後、再び電極反応を行う請求項5に記載の方法。
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