JP3718014B2 - 板状物搬送装置及び非接触搬送ライン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、板状物搬送装置及び非接触搬送ラインに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、気体の噴出によりウエハ等の板状物を浮上させて非接触状態に保ちながら所定方向へ搬送する搬送装置は公知である。
【0003】
例えば、特開平7−228342号公報においては、複数の気体噴出孔を穿設したノズル板の各気体噴出孔に連結されている気体供給管路夫々に弁を装着し、各弁の開閉及び気体噴出量の調節により、板状物を浮上させて非接触状態に保ちながら所定方向へ搬送する装置が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この公知の搬送装置は、気体噴出孔の穿設密度や穿設方向によって気体の噴出状態が決定されてしまうものであるから、装置構成上、特に寸法的な制約があり例えば、微小な板状物を搬送する場合においてそれが顕著であった。
【0005】
すなわち、かかる気体噴出孔は、一般には、機械加工により穿設されるが、それでは、搬送力を出す為の傾斜角度がつけ難く、従って、必要以上の気体を供給しなければならないと共に、穿設ピッチ等も制限されて微小な板状物の搬送に好適なノズル板が得られず、かつ、コストも高くなるといった諸々の欠点を有していた。
【0006】
本発明は、このような欠点に鑑みて発明されたものであって、複数の気体噴出孔を穿設したノズル板と、気体噴出孔から同一軸方向の一方向へ噴出せしめたり或いは二方向へ噴出せしめたりし得るように各気体噴出孔に対応してノズル板の上面側に装着された弁体とを備えたセルを気体供給室の上方に配した搬送装置を用い、これを所定個数連設して所定の搬送ラインを形成すればよいことを見い出し、本発明を完成したものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明に係る板状物搬送装置の一つは、請求項1に記載するように、気体の噴出により板状物を浮上させて非接触状態に保ちながら所定方向へ搬送する板状物搬送装置であって、複数の気体供給室を形成したセルフレームと、前記気体供給室の夫々の上方に配されるように前記セルフレームに装着された複数のセルと、前記板状物の有無を検出する検出手段とを備えていると共に、前記セルが、複数の気体噴出孔を穿設したノズル板と、気体供給室からの気体を前記気体噴出孔から同一軸方向の一方向へ噴出せしめたり或いは二方向へ噴出せしめたりし得るように各気体噴出孔に対応して前記ノズル板の上面側に装着された弁体とを備えていることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明に係る板状物搬送装置の他の一つは、請求項2に記載するように、請求項1に記載の板状物搬送装置において、検出手段が、セルフレームに装着されていることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明に係る板状物搬送装置の他の一つは、請求項3に記載するように、請求項1又は2に記載の板状物搬送装置において、セルフレームが、その上端に、弁体より上方へ突出せしめるように非浮上状態の板状物を支持する複数のワーク受けを形成していることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明に係る板状物搬送装置の他の一つは、請求項4に記載するように、請求項3に記載の板状物搬送装置において、セルフレームが、少なくとも、ワーク受けに支持されている非浮上状態の板状物を吸引保持する為の吸気孔のみを穿設していることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明に係る板状物搬送装置の他の一つは、請求項5に記載するように、請求項4に記載の板状物搬送装置において、検出手段が、吸気孔から吸気した際の負圧の大小により板状物が存在するか否かを検出し得るように設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明に係る板状物搬送装置の他の一つは、請求項6に記載するように、請求項4に記載の板状物搬送装置において、検出手段が、吸気孔とは別にセルフレームに穿設されている検出孔から噴出される気体の背圧の大小により板状物が存在するか否かを検出し得るように設けられていることを特徴とするものである。 また、本発明に係る板状物搬送装置の他の一つは、請求項7に記載するように、請求項5又は6に記載の板状物搬送装置において、弁体群が、X軸方向に気体を噴出し得るように装着されたものとY軸方向に気体を噴出し得るように装着されたものとで構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明に係る非接触搬送ラインは、請求項8に記載するように、請求項7に記載の板状物搬送装置を複数個連設せしめると共に、それらの板状物搬送装置の少なくとも一つを移動し得るように装着したことを特徴とするものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
平面図である図1において、この搬送ラインは、複数の板状物搬送装置1を連設せしめて十字状に形成されている。なお、板状物搬送装置1群中の1aは、その連設方向(Y軸方向)へ移動し得るように装着されていると共に、板状物搬送装置1群の夫々に気体供給管路2が装着されている。
【0015】
また、かかる板状物搬送装置1は、図2において、その平面視姿が拡大されて示されていると共に、図3において図2のA−A断面姿が、更に、図4において図2のB−B断面姿が夫々示されているように、セルフレーム3に複数のセル4及び検出手段5等を装着して構成されている。
【0016】
なお、セルフレーム3は、隣接せしめられた複数の気体供給室6を形成しているが、この気体供給室6は円形に設けられ、かつ、それらの気体供給室6の夫々の上方にセル4が装着されている。
【0017】
加えて、セル4及び気体供給室6は、X,Y軸方向に複数列に配設されていると共に、Y軸方向の気体供給室6同士が通路7で連通され、そして、通路7が連通されている気体供給ヘッダー8(図1参照)に気体供給管路2が開口されている。
【0018】
その為、気体供給管路2から供給される加圧気体、例えば、一般には、空気が、また、必要に応じて窒素ガス等の不活性ガスが、通路7を経て気体供給室6に流入し、ここからセル4の方へと流れる。その際、セルフレーム3の室形成体9に装着されているノズル板受け10に穿設の複数の供給孔11(図5参照)を経て流れる。
【0019】
なお、セルフレーム3は、ベースプレート12に室形成体9を固着して構成されていると共に図示されていない移動装置(例えば、Yテーブル)上に所定高さに位置されて設けられている。
【0020】
一方、セル4は、セルフレーム3に対して着脱し得るように装着されているが、固着してもよく、かつ、かかるノズル板受け10と、このノズル板受け10で支持されて補強されているシリコン製のノズル板13と、このノズル板13の上面側に装着された弁体14等を備えている。
【0021】
そして、ノズル板13には、所定ピッチに複数の気体噴出孔15が穿設されていると共に各気体噴出孔15夫々に弁体14が装着されている。また、弁体14は、柔らかい有機物材であるポリイミド製のものであって、電極16を内蔵しており、静電引力による変形を介して気体噴出孔15の開閉を行うことができるように装着されている。
【0022】
図6,7において、その為の回路17が示されているが、図中、18はスイッチ、19は電源を夫々示している。図7においては、左側のスイッチ18が入れられて、静電引力により弁体14がノズル板13に対して接触されて気体噴出孔15を閉塞している姿が示されている。
【0023】
なお、気体噴出孔15の開閉制御は、気体噴出孔15を完全に閉塞せしめるように行なえることは勿論のこと、同一軸方向(X軸方向又はY軸方向)の一方向へ噴出せしめたり或いは二方向へ噴出せしめたりするように行うこともできる。
【0024】
すなわち、図8においては、X軸方向の左右二方向へ噴出せしめている姿が示されていると共に図9においては、Y軸方向の前後二方向へ噴出せしめている姿が夫々示されているが、図7において示されているように、X軸方向の左右二方向のうちのどちらか一方向(右方向又は左方向)だけから噴出せしめることができると共に、Y軸方向の前後二方向のうちのどちらか一方向(前方向又は後方向)だけから噴出せしめることもできる。
【0025】
また、各セル4において、弁体14群は、図2において示されているように、X軸方向へ噴出し得る一対の弁体14aとY軸方向へ噴出し得る一対の弁体14bとを、正方形を描く各線上であってその中間地点に位置せしめ、これを一単位として複数単位、配設されている。
【0026】
その為、図矢印C1 〜C4 で示されているように時計回りに気体を噴出することもできる。また、隣接する各セル4の気体噴出方向を制御することにより、板状物25を回転させることも可能である。いずれの場合においても、各気体噴出孔15に対して、その開口上端に接近せしめ手弁体14を装着しているので、気体の流路内圧力損失を小さくすることができる。
【0027】
なお、図5〜7において示されているように、気体噴出孔15は、ノズル板13の下面側から上面側に向って拡開するテーパー状に設けられていると共にノズル板受け10の供給孔11は、ノズル板受け10の上面側から下面側に向って拡開するテーパー状に設けられているが、これらの孔11,15は、ノズル板受け10の下面又はノズル板13の上面に対して直角方向に穿設されている為、その穿設が容易である。
【0028】
更に、セルフレーム3に、複数のワーク受け21が突設されていると共に複数の吸気孔22が穿設されているが、ワーク受け21は、室形成体9の上端面23に固着されていると共に吸気孔22は、室形成体9及びベースプレート12を貫通して設けられている。
【0029】
なお、ワーク受け21の上端24は、気体噴出孔15を開口せしめている状態の弁体14、すなわち、図6において示されているように、最も上方へ移動された弁体14よりも、少し上方に位置され、かつ、ノズル板13の上端面と室形成体9の上端面23とが同一レベルに設けられている。
【0030】
その為、ワーク受け21の上端24で板状物25を支持したときに、板状物25が弁体14に接触するのが防止される。加えて、吸気孔22の開口下端22aに、図示されていない真空ポンプに連結されている管路の一端が連結されていると共に、かかる管路に検出手段5が装着されている。
【0031】
従って、真空ポンプを運転して吸気孔22から吸気することにより、ワーク受け21で支持されている非浮上状態の支持板状物25を吸引保持することができるが、その際、検出手段5により、板状物25が存在するか否かを検出することもできる。
【0032】
すなわち、板状物25がワーク受け21で支持されていない場合と、それが支持されている場合とにおいては、吸気孔22から吸気した際の負圧が異なるので、それに基いて板状物25が存在するか否かを検出することができ、よって、この検出信号に基いて所定位置の弁体14の開閉制御を行い、板状物25を浮上せしめて非接触状態に保ちながら所定位置へ搬送することができる。
【0033】
このように、共通の吸気孔22を利用して、板状物25の吸引保持と板状物25の有無とを検出し得るように設けている。しかし、板状物の検出手段は、これ以外の形態に設けてもよい。
【0034】
例えば、吸気孔22と、この吸気孔22とは別にセルフレーム3に複数の検出孔(図示されていない)を穿設し、この検出孔から噴出される気体の背圧の大小により、板状物25が存在するか否かを検出し得るように設けてもよい。
【0035】
この検出孔を利用しての検出は、浮遊状態の板状物25の存在及び不存在を検出する為に行う。その際、検出孔から噴出される気体は、一般には、空気が用いられるが、必要に応じて、窒素ガス等の不活性ガスを用いることができ、かつ、それらは所定に加圧されて供給される。
【0036】
また、搬送する板状物は、非常に薄い物や微小で、しかも、汚染や損傷が生じないように搬送する必要のある物、例えば、シリコンウエハ、ガラス基板、生体試料片等が好適である。以上述べたように、板状物25の浮上及び多方向への搬送に加えて、停止、吸着も行うことができ、更に、板状物の有無の検出を非接触に気流のみで行うことができるので、クリーン度の保持が容易であって、板状物を正確に搬送することができる。
【0037】
なお、図1において示されているように、セルフレーム3の端部にワーク落下防止板28を装着しているので、何らかの原因により、弁体の故障が発生した場合において板状物が装置外へ転落するのを防止することができる。
【0038】
また、板状物搬送装置1群中の1aを、その連設方向(Y軸方向)へ移動し得るように装着しているのは、ここに搬送されて来た板状物を、吸着状態で静止させたまま他の加工又は処理箇所へ移動させる為である。
【0039】
この移動装置は、Yテーブルに限定されず、必要に応じて、Xテーブル或いはXYテーブル等で構成してもよく、更に、ねじ軸送り機構やシリンダー等を介してセルフレーム3を移動せしめる形態に設けてもよく、かつ、必要ならば、板状物搬送装置1を上下動し得るように設けてもよい。
【0040】
【発明の効果】
上述の如く、請求項1に記載の発明によると、板状物搬送装置に関し、傾斜せしめて気体噴出孔を穿設したノズル板を用いないで、板状物を所定方向へ浮上搬送することができ、しかも、板状物の停止、吸着も行うことができると共に板状物の有無検出を行うことができ、従って、板状物を正確に、かつ、多方向へ搬送することができる。
【0041】
また、請求項2に記載の発明によると、請求項1に記載の発明による効果に加えて、装置の小型化を図ることができる。
【0042】
また、請求項3に記載の発明によると、請求項1又は2に記載の発明による効果に加えて、弁体に対する板状物の接触を防止することができる。
【0043】
また、請求項4に記載の発明によると、請求項3に記載の発明による効果に加えて、搬送停止中の非浮上状態の板状物が移動するのを確実に防止することができる。
【0044】
また、請求項5,6に記載の発明によると、請求項4に記載の発明による効果に加えて、板状物の有無を確実に検出することができる。
【0045】
また、請求項7に記載の発明によると、請求項5又は6に記載の発明による効果に加えて、板状物をより一層、多方向へ搬送することができる。
【0046】
また、請求項8に記載の発明によると、非接触搬送ラインに関し、必要に応じて各種長さの搬送ラインが得られると共に板状物を吸着状態で静止させたまま他の加工又は処理箇所へ移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】複数の板状物搬送装置で形成した非接触搬送ラインの平面図である。
【図2】板状物搬送装置の平面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図2のB−B断面図である。
【図5】セルの縦断面図である。
【図6】弁体の開閉制御の一形態を示す図である。
【図7】弁体の開閉制御の他の形態を示す図である。
【図8】弁体の配設方向の一形態を示す図である。
【図9】弁体の配設方向の他の形態を示す図である。
【符号の説明】
1 板状物搬送装置
2 気体供給管路
3 セルフレーム
4 セル
5 検出手段
6 気体供給室
7 通路
9 室形成体
10 ノズル板受け
11 供給孔
13 ノズル板
14,14a,14b 弁体
15 気体噴出孔
22 吸気孔
25 板状物
Claims (8)
- 気体の噴出により板状物を浮上させて非接触状態に保ちながら所定方向へ搬送する板状物搬送装置であって、複数の気体供給室を形成したセルフレームと、前記気体供給室の夫々の上方に配されるように前記セルフレームに装着された複数のセルと、前記板状物の有無を検出する検出手段とを備えていると共に、前記セルが、複数の気体噴出孔を穿設したノズル板と、気体供給室からの気体を前記気体噴出孔から同一軸方向の一方向へ噴出せしめたり或いは二方向へ噴出せしめたりし得るように各気体噴出孔に対応して前記ノズル板の上面側に装着された弁体とを備えていることを特徴とする板状物搬送装置。
- 検出手段が、セルフレームに装着されていることを特徴とする請求項1に記載の板状物搬送装置。
- セルフレームが、その上端に、弁体より上方へ突出せしめるように非浮上状態の板状物を支持する複数のワーク受けを形成していることを特徴とする請求項1又は2に記載の板状物搬送装置。
- セルフレームが、少なくとも、ワーク受けに支持されている非浮上状態の板状物を吸引保持する為の吸気孔のみを穿設していることを特徴とする請求項3に記載の板状物搬送装置。
- 検出手段が、吸気孔から吸気した際の負圧の大小により板状物が存在するか否かを検出し得るように設けられていることを特徴とする請求項4に記載の板状物搬送装置。
- 検出手段が、吸気孔とは別にセルフレームに穿設されている検出孔から噴出される気体の背圧の大小により板状物が存在するか否かを検出し得るように設けられていることを特徴とする請求項4に記載の板状物搬送装置。
- 弁体群が、X軸方向に気体を噴出し得るように装着されたものとY軸方向に気体を噴出し得るように装着されたものとで構成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の板状物搬送装置。
- 請求項7に記載の板状物搬送装置を複数個連設せしめると共に、それらの板状物搬送装置の少なくとも一つを移動し得るように装着したことを特徴とする非接触搬送ライン。
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