JP3717202B2 - 電子顕微鏡及びその軸合わせ方法 - Google Patents

電子顕微鏡及びその軸合わせ方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、電子顕微鏡及びその軸合わせ方法に係り、特に電子顕微鏡の電子レンズの真のレンズ軸を検出することができ、該軸に電子線を入射することができる電子顕微鏡及びその軸合わせ方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、電子顕微鏡は像に影響し得るレベルでの軸欠陥をもつ。この原因は、図11に示すように、電子レンズに用いる材質の不均一性、機械加工精度によるものである。
【0003】
ここで、図11(a)はポールピース上下極101a,101b間の偏心を示し、また図11(b)はポールピース102と磁気ヨーク103との偏心、さらに図11(c)はレンズ104と他のレンズ105の磁気ヨーク間の偏心、そして図11(d)は磁気ヨーク106等の材質の不均一性を示している。
【0004】
そのため、不完全な軸を持つレンズ系において、高分解能を得るための電子レンズの軸合わせ法として、様々な方法が提案され、また実用されてきた。
この軸合わせとしては、注目している物点に対して電流軸合わせ(電流軸中心)、電圧軸合わせ(電圧軸中心)、コマフリー軸等の種々の軸合わせが行われている。
【0005】
ここで、電流軸合わせは、電流軸中心、即ち対物レンズの電流値を変えることにより、フォーカスをわずかに変えてみたときの像の不動点を蛍光板の中心に合わせる方法であり、また、電圧軸合わせは、電圧軸中心、即ち電子線の加速電圧をわずかに変えたときの像の不動点を蛍光板の中心に合わせる方法である。
【0006】
また、コマフリー軸合わせは、蛍光板の中心に入射電子線に対してコマ収差が無くなる軌道を合わせる方法である。このコマフリー軸はコマ収差の存在しないレンズにおいては光軸に一致するものである。
【0007】
このように、電子顕微鏡においては、軸合わせとして様々な方法がおこなわれているものの、これらの方法による軸は対物レンズへの特定の入射方向であり、上述のように操作的定義に基づいており、一般には真のレンズ軸には対応していないものである。その理由を以下に説明する。
【0008】
図3に示すように、対物レンズ21、この対物レンズのレンズ軸22、電子線源(光源)からの電子線束を所望の角度で上記対物レンズ21に入射するための2段の前方偏向系23、試料面24及び像面(観測面)25を考える。ここで、試料面24上において、31は試料面24でのレンズ軸22の交点に対応する物点、32,33,34は試料面24でのレンズ軸22外の物点を示し、また像面25面上において、31',32',33', 34'は上記レンズ試料面24での物点の共役の像を示している。
【0009】
一般に像面において注目している像34'(蛍光板上の中心にある)に対応する像34(蛍光板中心の共役像)は対物レンズ21の傾斜、及び上述した軸欠陥による偏向場のために必ずしもレンズ軸22上にはないと考えられる。
しかし、一般に、電子顕微鏡のように近軸光を利用する場合には、レンズ軸外の任意の試料点に対し、試料点とレンズ中心とを結ぶ方向は光軸と考えてよい。
【0010】
一方、上述したようにコマ収差の存在しないレンズにおいては、コマフリー軸は光軸と一致する。
【0011】
しかし、磁界型レンズの場合には理想的な回転対称レンズに対しても回転色収差が存在し、電流軸及び電圧軸は光軸とは一致しない。また、軸欠陥による偏向場が存在する場合には、電流軸と電圧軸は通常一致しない。
【0012】
従って、磁界型レンズを使用した電子顕微鏡において、上記電流軸、上記電圧軸及びコマフリー軸は一致しないものとなる。
【0013】
ところで、高分解能電顕法においては波面収差を良好するという観点からは電子線の入射方向をコマフリー軸に一致させることが重要となる。一方、高分解能電顕法においてはコントラストを良好にするという観点からは電子線の入射方向を電圧軸に一致させることが重要となる。
【0014】
そこで、コマフリー軸と電圧軸中心とを一致させる方法が提案されている(谷中、代田、ICEM、1974)。これはコマ収差は対物レンズのみによって支配されることに対して、電圧軸中心は他のレンズにも支配されることに注目するものである。
また、任意の1点から対物レンズに向かって電子線が出ていくとき、必ずコマ収差がなくなる軌道が存在することは計算上で確認されている。そこで対物レンズに対してコマフリー軸を合わせる。
【0015】
次に、コマ収差は電子線束の開き角の二乗に比例する収差であり、開き角はレンズの倍率に逆比例する。例えば、2つのコマ収差の係数が同じで、対物レンズの倍率を100倍とすれば、中間レンズのコマ収差の大きさは対物レンズの1/10,000となり、通常は対物レンズのコマ収差のみに注目すれば良い。
【0016】
これに対して、電圧軸中心に関連する倍率色収差・回転色収差はいずれも電子線の開き角には関係しないため、中間レンズ以降でも大きな値を作ることができる。そこで、対物レンズ像画に偏向装置を配置させて、中間レンズ以降に入射する電子線の方位を変えて電圧軸中心を合わせば、像の移動(コマフリー軸の移動)がなく、2つの軸のずれを補正することができるというものであり、実験的にも確認されている(石塚、代田、電子顕微鏡学会、MSA、1994)。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した磁界型レンズを使用した電子顕微鏡における軸合わせ方法にあっては、現在の通常の磁界型レンズを使用した電子顕微鏡が所有していない偏向装置を特別な位置に配置する必要があるという問題点がある。さらに、中間レンズ以降の軸は大きく外れた軌道をとるため、倍率を変えるときに像は著しく移動し、容易に視野からなくなってしまう。また、倍率を変えても対物レンズの収差条件は殆ど不変なことに対し、中間レンズ以降の色収差条件は大幅に変るため、定められた倍率1点1点に対して対物レンズ像面に置かれる偏向装置の条件を設定し直さなければならないなど、電子顕微鏡の操作性を著しく犠牲にしなければならない。そのため、現状ではその適用範囲は狭いものである。
【0018】
そこで本発明は、現在使用されている磁界型レンズを使用した電子顕微鏡において、特別な偏向装置等を設けることなく、かつ操作性の犠牲もなく、真のレンズ軸を見いだし、このレンズ軸に電子線を入射することにより、コマフリー軸と電圧軸中心または電流センターとを同時に満足させる条件を見いだし見いだした条件を電子顕微鏡に設定することにより、前述のような操作性を犠牲にすることなく撮影条件を最適化することを課題とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明において、上記の課題を解決するための第1の手段は、図1に示すように、電子銃1、集束レンズ2、対物レンズ3及び投影レンズ4を備えると共に、上記集束レンズ2と上記対物レンズ3との間に設けられ電子線を2段にわたって偏向する前方偏向装置5及び上記対物レンズ3と上記投影レンズ4との間に設けられ電子線を偏向する後方偏向装置6を備え、さらに結像面に設けられ、電子線像から画像情報を検出する画像検出手段7を備えた電子光学系8と、上記電子銃1からの照射される電子の加速電圧、上記集束レンズ2、上記対物レンズ3並びに上記投影レンズ4の焦点距離、及び、上記前方偏向装置5の各段及び後方偏向装置6の偏向強度を制御する顕微鏡制御手段9と、上記顕微鏡制御手段9に対して、注目する試料15上の任意の一点を物点として設定する物点変更設定手段10、上記画像検出手段7から得た複数の像の情報から特定の物点に対するコマフリー軸を決定するコマフリー軸決定手段11、上記特定の物点における加速電圧又はレンズ電流に対する色収差の大きさを決定する色収差量決定手段12、及び上記複数の物点におけるコマフリー条件における入射電子線の方向及び大きさに対する色収差の大きさから、コマフリー軸と電圧軸中心または電流軸中心とが一致するレンズ軸を算出するレンズ軸決定手段13を備えたレンズ軸合わせ制御部16とを備えたことを特徴とする電子顕微鏡である。
【0020】
また、本発明において、上記の課題を解決するための第2の手段は、図1に示すように、予め算出しておいた、当該電子顕微鏡固有のコマフリー軸と電圧軸中心または電流軸中心とを一致させるための上記後方偏向装置の最適偏向量を、設定値として格納する設定値格納手段17を備えたことを特徴とする電子顕微鏡である。
【0021】
さらに本発明の第3の手段は、図2に示すように、電子銃1、集束レンズ2、対物レンズ3並びに投影レンズ4を備えると共に、上記集束レンズ2と上記対物レンズ3との間に設けられ電子線を2段にわたって偏向する前方偏向装置5、上記対物レンズ3と上記投影レンズ4との間に設けられ電子線を偏向する後方偏向装置6を備え、さらに結像面に設けられ、電子線像から画像情報を検出する画像検出手段7とを備えた電子顕微鏡の軸合わせ方法において、試料15上の一点を注目する物点として設定して(S1)、この設定した物点に対して、上記前方偏向装置5を制御して、上記画像検出手段7の画像情報に基づいてコマフリー軸を求める(S2)と共に、上記設定した物点に対して、コマフリー条件における入射電子線の方向及び大きさに対する色収差の大きさを求める処理を行い(S3)、複数の物点に対して上記処理(S1〜S3)を行ない(S4)、上記複数の物点におけるコマフリー条件における入射電子線の方向及び大きさに対する色収差量から同一の物点におけるコマフリー軸と電圧軸中心または電流軸中心とが一致する位置を算出し(S5)、像を上記コマフリー軸と電圧軸中心または電流軸中心とが一致するレンズ軸上の物点に設定する(S6)ことを特徴とする電子顕微鏡の軸合わせ方法である。
【0022】
本発明の第4の手段は、請求項3に記載の方法で予め算出しておいた、当該電子顕微鏡固有のコマフリー軸と電圧軸中心または電流軸中心とを一致させるための上記後方偏向装置の最適偏向量を、各電子顕微鏡に設定値として設定することを特徴とする電子顕微鏡の軸合わせ方法である。
【0023】
【作用】
以下、本発明に係る磁界型レンズを使用した電子顕微鏡及びその軸合わせ方法の作動の原理を説明する。
【0024】
ここで、レンズ軸上の物点を見つける原理を図3を参照して説明する。
先ず、レンズ場にコマ収差が無い場合、コマフリー軸は光軸と一致する。
また、軸欠陥による偏向場の偏向色収差が無い場合には、レンズ軸22上の物点31に対するコマフリー軸(光軸)は、電圧軸、電流軸に一致する。
【0025】
ところで、レンズ中心を通過する電子線の入射方向はコマフリー軸である。よって、レンズ軸外の物点32、物点33に対しては図3に示すコマフリー軸が存在する。しかし、これらのコマフリー軸(光軸)に対しては、回転色収差が存在する。すなわち、像点32'、像点33'は像点31'を中心に回転する(図2参照)。
【0026】
ここで、回転色収差の大きさは注目している物点とレンズ軸上の点との距離に比例し、方向は注目している物点とレンズ軸上の点を結ぶベクトルに垂直となる。
【0027】
次に、軸欠陥による偏向場の影響を考慮する。
先ず、軸欠陥による偏向場がある場合には偏向色収差が回転色収差に重畳される。この偏向色収差の大きさは物点とレンズ軸上の点を結ぶベクトルに比例する。
【0028】
このとき、レンズ後方の偏向系26により注目する物点を移動すれば、上記軸欠陥による偏向場の偏向色収差に後方偏向系の偏向場の偏向色収差が重畳される。そして、後方偏向系により軸欠陥による偏向場を相殺した場合には、加速電圧の変動による重畳された偏向色収差は消滅する。
【0029】
ところで、後方偏向系により軸欠陥による偏向場を相殺しても、レンズ電流の変動による偏向色収差の大きさは変化しない。しかし注目する物点を移動することにより偏向色収差を回転色収差により相殺することが可能である。
【0030】
次に、本発明の作用を、軸欠陥による偏向場のある場合について、その作動の手順と共に説明する。
先ず注目している物点を設定する(観測点を設定する)。
このためには、図5に示すようにレンズ後方の後方偏向系26を制御し観測点を移動させる。
【0031】
そして、注目している物点に対して、レンズ上部の2段の前方偏向系23を制御して電子線の入射方向をコマフリー軸に設定する。コマフリー軸を求める方法の一例としては、複数の入射方向から電子線を入射したときの非晶質試料の像をフーリエ変換し、観測された焦点はずれ量や非点収差量をもとに、コマの無い方向を計算機により自動的に推定する方法が確立されている(Ishizuka,1994,Ultramicroscopy) 。
【0032】
次に、コマフリー軸に対して、加速電圧又はレンズ電流を変動させ、色収差の方向と大きさを求める。
ここで、コマフリー軸に対する回転色収差の方向と大きさとは、各物点に対するコマフリー軸について、印加された電圧の変動により像が移動し、それに伴い変化する色収差の方向と大きさのことを示す。
【0033】
このためには、
(1)像面での像の移動量より色収差の方向と大きさを求める、または、
(2)電圧軸中心又は電流軸中心を達成するために必要な前方偏向系23の偏向量の方向と大きさとを求める、
のいずれかの方法によればよい。
上記(2)の方法では、電子線の入射方向をレンズ中心から外すことにより色収差を補償している。このための電子線の入射方向の変更量の方向と大きさとは色収差の方向と大きさに比例する。
そして上記の各手順を複数の物点に対して行い、各物点に対するコマフリー軸と、当該コマフリー軸に対する回転色収差の方向と大きさを求める。
【0034】
さらに、この手順により得た各物点に対応する像面での電圧または電流の変化に基づく色収差の方向と大きさをもとに、以下の数式に従い軸上の点31を求める。
【0035】
ここで試料面24において、求める軸上の点31を(x,y)、軸外の点、例えば32を(xn ,yn )とし、軸上の点31から軸外の点32へのベクトルをrn とする。また上記軸外の点32での色収差を補償するビーム傾斜角ベクトルtnを(tn x, tn y )とすると、ビーム傾斜角ベクトルtn は色収差ベクトルに比例する。ところで電圧変動に対する回転色収差および偏向色収差の大きさはベクトルrnに比例するので、
【0036】
【数1】
式1:|tn2=c'{(xn−x)2+(yn−y)2
【0037】
ここで、c'は比例係数であるから、複数測定することにより、c'を消去して軸上の点(x,y)を求めることができる。
【0038】
また、予め比例係数c'を実験的に求めることができる、この比例定数c'を予め求めておけば、3か所の物点の測定で求める軸上の点(x,y)を求めることができる。
【0039】
この場合には、非線形の関係式になるが、次の式2のように、座標系の回転を考慮する必要がないという利点を持つ。
【0040】
すなわち、上述したとおり、電圧変動に対する回転色収差及び偏向色収差の大きさはベクトルrn の大きさに比例するので、色収差ベクトルはベクトルrnに対して一定の角度をなす。この角度補正を行い、ベクトルrn に対して垂直に描いた色収差ベクトルをVn (Vn x,Vn y )とすると
【0041】
【数2】
式2:Vn x=+c(yn−y)
n y=−c(xn−x)
【0042】
ここで、複数測定することにより、角度補正及び比例係数cを消去して、求める軸上の点(x,y)を求めることができる。
【0043】
また、予め角度補正及び比例係数cを実験的に求めることができ、この角度補正及び比例定数cを予め求めておけば2か所の物点の測定で求める軸上の点(x,y)を求めることができる。
【0044】
ここで、上記レンズ軸合わせの手順において、上述したコマフリー軸と色収差の測定の手順を逆として、まず注目している物点に対して、色収差を補償する方向をレンズ上部の2段偏向系を制御して求めることにより、色収差の方向と大きさを求める。
【0045】
次に、レンズ上部の2段偏向系を制御して、コマフリー軸との格差を求めるようにすることができる。
【0046】
【実施例】
以下、本発明にかかる磁界型レンズを使用した電子顕微鏡及びその軸合わせ方法の実施例を説明する。
なお、この実施例で使用される電子顕微鏡の各レンズは磁界型レンズを使用するものとし、各レンズの名称は「磁界型」の文字を略して表示するものとする。
【0047】
本実施例において、電子顕微鏡は、図6に示すように、電子光学系、撮影装置等を格納した電子顕微鏡本体51と、電子顕微鏡本体51の電子レンズ、偏向装置、その他の各種装置の制御を行う電子顕微鏡制御装置52と、上記第1の手段のレンズ軸合わせ制御部に相当し、上記電子顕微鏡制御装置に接続された計算機53とからなる。この計算機53は、電子顕微鏡制御装置52にI/Oインタフェース54を介して接続され、バス62にCPU55、RAM56、ROM57を接続し、さらにI/Oインタフェース58を介して磁気ディスク装置等の外部記憶装置59、CRT等の表示装置60、キーボード等の入力手段61を接続した構成のものである。
【0048】
そして、本実施例では、外部記憶手段である外部記憶装置59からRAM56に転送したプログラムに基づきCPU55が各種の処理を行い、上記第1の手段の物点変更設定手段10、コマフリー軸決定手段11、レンズ軸決定手段13の作用をなす。またROM57または外部記憶装置59は上記第2の手段の設定値格納手段17として作用する。
【0049】
本実施例において、電子顕微鏡本体51の電子光学系は図7に示すように、電子銃1、集束レンズ2、2段の構成とした前方偏向装置5、対物レンズ3、後方偏向装置6及び投影レンズ4からなり、電子銃1には電子銃の加速電圧を調整する電子銃制御手段41が、集束レンズ2には集束レンズ2の焦点距離を調節する集束レンズ制御手段42が、対物レンズ3には対物レンズ3の焦点距離を調整する対物レンズ制御手段44が、投影レンズ4には投影レンズ4の焦点距離を調節する投影レンズ制御手段46が接続されている。
【0050】
また、前方偏向装置5には2段に設けられた偏向装置の、それぞれの偏向条件を設定する前方偏向装置制御手段43が、後方偏向装置6には後方偏向装置6の偏向条件を設定する後方偏向装置制御手段45が接続されている。
【0051】
そして、これらの各制御手段41、42、43、44、45、46には制御値設定手段を介して、上記計算機33が接続されて、各制御手段の制御値を計算機53に指定することにより任意に設定できるものとしている。
【0052】
そして、本実施例では、投影レンズ4下方の結像面には、蛍光板またはフィルムを配置できるようにしているほか、この結像面の画像からコマフリー軸を計算するための画像信号発生手段としてのTVカメラ72を設けるものとしている。
【0053】
さらにこのTVカメラ72の信号は上計算機に入力され、上記計算機53のコマフリー軸決定手段11でコマフリー軸が、色収差量決定手段12で電圧中心又は電流中心が決定される。
【0054】
そして、物点変更設定手段10で複数個所の物点を設定して、上記コマフリー軸及び電圧軸中心を算出して、レンズ軸決定手段13が上述した式1または式2に従って、レンズ軸を決定して設定値を算出して、物点変更設定手段10で観測点をそのレンズ軸の位置に設定することにより、軸合わせは終了する。
【0055】
ここで、この設定値を予め設定値格納手段17に格納しておけば、一々上記軸合わせを行うことなく、設定値に基づいて各制御値を設定することにより、電子顕微鏡の軸合わせを行うことができる。
【0056】
次に本発明にかかる磁界型レンズを使用した電子顕微鏡の作動を説明する。
磁界型レンズを使用した電子顕微鏡は一般的な電子顕微鏡と同様に、電子銃1から放出される電子線は集束レンズ2を通って試料15を照射する。試料15を透過した電子線は、対物レンズ3によりに拡大像を作る。投影レンズ4またはそれ以降のレンズ群はこの像をさらに拡大し、画像検出手段7上に拡大像を作る。
【0057】
そして、実際の軸合わせにおいては、図8に示すように、先ず試料15上の一点を注目する物点として設定する(SA1)。
この物点の設定は、本実施例では、物点変更設定装置10が後方偏向装置制御手段45を介して、対物レンズ3後方の後方偏向装置6を制御して、観測点が所望の点になるようにする。
【0058】
そして、次にコマフリー軸決定手段11でコマフリー軸を決定し、制御値設定手段47により前方偏向装置制御手段43を介し、前方偏向装置5を制御し、コマフリー軸の設定を行なう(SA2)。
本実施例では、コマフリー軸の決定は、上記計算機33が前方偏向装置5を制御し、TVカメラ72により計測された4つの電子線入射方向での非晶質炭素薄膜の像のフーリエ変換を行いコマフリー軸決定手段11がそのフーリエ変換像から焦点はずれ量を決定し、それらの値からコマフリー軸の検出を自動的に行なうものである(Ishizuka,1994,Ultramicroscopy) 。
【0059】
そして、この注目する物点において、色収差量決定手段12で電圧軸中心を求める(SA3)。
本実施例では、色収差量決定手段12が電子銃制御手段41を介して加速電圧を周期的に変化させる。この状態で、前方偏向装置5を前方偏向装置制御手段43が制御し、TVカメラ72の信号に基づいて、注目する物点の移動が最小となる電子線入射角度を見いだす。
【0060】
そして、この物点でのコマフリー軸と電圧軸中心との差tnを求める(SA4)。
【0061】
次に、物点変更設定手段10で他の複数の物点を設定し(SA5)、各点で上記SA2,SA3の手順を再び実行して(SA6,SA7)、各点でのコマフリー軸と電圧軸中心との差tnを求める(SA8)。
【0062】
そして、これらのn個のベクトルtnから上記式2に基づいて、軸上の点(x,y)の値を求め、設定値を決定して(SA9)、この設定値設定値格納手段17に格納すると共に(SA10)、物点変更設定手段10で観測点を当該軸上の点となるように後方偏向装置制御手段45を介して後方偏向装置6を設定して、レンズの軸合わせは終了する(SA11)。
ここで、設定値とは、下記に記載するように、後方偏向装置の最適な設定量である最適偏向量であり、詳しくは励磁電流値又は電圧値である。
【0063】
この後方偏向装置の最適偏向量(設定値)の設定条件下において、上記前方偏向装置を調整してコマフリー軸合わせを行なうことにより、電圧軸中心とコマフリー軸とが一致した状態となり、高分解能の画像を得ることができる。
【0064】
図9は、加速電圧200kV、球面収差係数0.4mmの電子顕微鏡での実験結果を示している。ここでは、各物点a〜w(すなわち後方偏向装置6への制御の大きさ)における、コマフリー軸と電圧軸中心との差tnが示されている。ここで、角度補正に伴う角度を30°とすると、各ベクトルの垂線が図9に示した○印を通過することが判る。この○印の中心はこれらの観測結果をもとに上記式2に基づいて最小自乗法により求めたレンズ軸上の物点の位置である。
【0065】
また、上記のコマフリー条件における入射電子線の方向及び大きさに対する色収差の量の測定は、図10に示すように、上記コマフリー軸と電圧軸中心の差を求めるに際しては上述したコマフリー軸と色収差の測定の順を逆として、まず注目している物点に対して、レンズ上部の2段偏向系を制御して色収差を補償する入射方向(電圧軸中心)を求め(SB2,SB6)、次にレンズ上部の2段偏向系を制御して、コマフリー軸との格差を求める(SB3,SB7)のようにすることができる。
【0066】
更に、上記実施例では、角度補正に伴う角度を推定し、式2により計算を行なうものとしたが、色収差を補償するビーム傾斜角tnを利用して計算するものとしてもよい。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る電子顕微鏡及びその軸合わせ方法によれば、現在使用されている磁界型レンズを使用した電子顕微鏡において、特別な偏向装置等を設けることなく、かつ電子顕微鏡としての操作性を犠牲とすることなく、真のレンズ軸を見出し、このレンズ軸に電子線を入射することにより、コマフリー軸と電圧軸中心又は電流センターとを同時に満足させる条件を見いだし、この条件を電子顕微鏡に設定することにより、撮影条件を最適化することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る電子顕微鏡の構成を示すブロック図である。
【図2】 本発明に係る電子顕微鏡の軸合わせ方法を示すフローチャートである。
【図3】 本発明に係る電子顕微鏡の軸合わせ方法の作用を説明する概念図である。
【図4】 本発明に係る電子顕微鏡の軸合わせ方法の作用を説明する、コマフリー軸と色収差との差を示す図である。
【図5】 本発明に係る電子顕微鏡の軸合わせ方法の軸欠陥による偏向場が存在する場合の作用を説明する概念図である。
【図6】 本発明に係る電子顕微鏡の実施例の構成を示す概念図である。
【図7】 本発明に係る電子顕微鏡の実施例の構成を示すブロック図である。
【図8】 図7に示した電子顕微鏡の軸合わせの作動を示すフローチャートである。
【図9】 実施例に係る電子顕微鏡の軸合わせ方法の作用を説明する、コマフリー軸と電圧軸中心との差の一例を示す図である。
【図10】 他の実施例に係る電子顕微鏡の軸合わせの作動を示すフローチャートである。
【図11】 電子顕微鏡において軸欠陥が発生する要因を説明するための電子レンズの部分断面図である。
【符号の説明】
1 電子銃
2 (磁界型)集束レンズ
3 (磁界型)対物レンズ
4 (磁界型)投影レンズ
5 前方偏向装置
6 後方偏向装置
7 画像検出手段
8 電子光学系
9 顕微鏡制御手段
10 物点変更設定手段
11 コマフリー軸決定手段
12 色収差量決定手段
13 レンズ軸決定手段
15 試料
16 レンズ軸合わせ制御部
17 設定値格納手段

Claims (4)

  1. 電子銃(1)、集束レンズ(2)、対物レンズ(3)及び投影レンズ(4)を備えると共に、上記集束レンズ(2)と上記対物レンズ(3)との間に設けられ電子線を2段にわたって偏向する前方偏向装置(5)及び上記対物レンズ(3)と上記投影レンズ(4)との間に設けられ電子線を偏向する後方偏向装置(6)を備え、さらに結像面に設けられ、電子線像から画像情報を検出する画像検出手段(7)を備えた電子光学系(8)と、上記電子銃(1)からの照射される電子の加速電圧、上記集束レンズ(2)、上記対物レンズ(3)並びに上記投影レンズ(4)の焦点距離、及び、上記前方偏向装置(5)の各段及び後方偏向装置(6)の偏向強度を制御する顕微鏡制御手段(9)と、
    上記顕微鏡制御手段(9)に対して、注目する試料(15)上の任意の一点を物点として設定する物点変更設定手段(10)、上記画像検出手段(7)から得た複数の像の情報から特定の物点に対するコマフリー軸を決定するコマフリー軸決定手段(11)、上記特定の物点における加速電圧又はレンズ電流に対する色収差の大きさを決定する色収差量決定手段(12)、及び上記複数の物点におけるコマフリー条件における入射電子線の方向及び大きさに対する色収差の大きさから、コマフリー軸と電圧軸中心または電流軸中心とが一致するレンズ軸を算出するレンズ軸決定手段(13)を備えたレンズ軸合わせ制御部(16)と
    を備えたことを特徴とする電子顕微鏡。
  2. 予め算出しておいた、当該電子顕微鏡固有のコマフリー軸と電圧軸中心または電流軸中心とを一致させるための上記後方偏向装置の最適偏向量を、設定値として格納する設定値格納手段(17)を備えたことを特徴とする請求項1記載の電子顕微鏡。
  3. 電子銃(1)、集束レンズ(2)、対物レンズ(3)並びに投影レンズ(4)を備えると共に、上記集束レンズ(2)と上記対物レンズ(3)との間に設けられ電子線を2段にわたって偏向する前方偏向装置(5)、上記対物レンズ(3)と上記投影レンズ(4)との間に設けられ電子線を偏向する後方偏向装置(6)を備え、さらに結像面に設けられ、電子線像から画像情報を検出する画像検出手段(7)とを備えた電子顕微鏡の軸合わせ方法において、
    試料(15)上の一点を注目する物点として設定して(S1)、
    この設定した物点に対して、上記前方偏向装置(5)を制御して、上記画像検出手段(7)の画像情報に基づいてコマフリー軸を求める(S2)と共に、上記設定した物点に対して、コマフリー条件における入射電子線の方向及び大きさに対する色収差の大きさを求める処理を行い(S3)、
    複数の物点に対して上記処理(S1〜S3)を行ない(S4)、
    上記複数の物点におけるコマフリー条件における入射電子線の方向及び大きさに対する色収差量から同一の物点におけるコマフリー軸と電圧軸中心または電流軸中心とが一致する位置を算出し(S5)、
    像を上記コマフリー軸と電圧軸中心または電流軸中心とが一致するレンズ軸上の物点に設定する(S6)
    ことを特徴とする電子顕微鏡の軸合わせ方法。
  4. 請求項3に記載の方法で予め算出しておいた、当該電子顕微鏡固有のコマフリー軸と電圧軸中心または電流軸中心とを一致させるための上記後方偏向装置の最適偏向量を、各電子顕微鏡に設定値として設定することを特徴とする電子顕微鏡の軸合わせ方法。
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