JP3716589B2 - 車両用エアバッグ制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の衝突時に回転式シートの車外側部に配設されたエアバッグを展開させることによって乗員を保護する車両用エアバッグ制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば特開平6−234342号公報に示されるように、車両のドア部に側突エアバッグを設け、この側突エアバッグを車両の側突時に展開させることにより、乗員を保護することが行われている。上記のように側突エアバッグを車両のドア部に設置した場合には、シートがシートスライダに沿って車体の前後方向にスライド変位し、あるいはシートバックが車体の後方側に傾動されてリクライニング状態となることにより、乗員の着座位置または着座姿勢が変化しても、これに適合させてエアバッグの展開位置を変化させることができないという問題がある。
【0003】
このため、上記シートバックの外側端部にエアバッグを展開し得るように設置し、このエアバッグを車両の側突時に展開させるように構成することにより、上記シートがスライド変位し、あるいはシートバックが傾動変位して乗員の着座位置または着座姿勢が変化した場合に、これに対応させてエアバッグの展開位置を変化させることができるようにしたものが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようにシートバックの外側端部、つまり車外側の側壁部にエアバッグを展開し得るように設置してなる構成を、例えば特開昭63−154441号公報に開示された車体に設置された回転式シートに採用した場合には、この回転式シートを回転させて車室の内方側に向けると、上記エアバッグが車両進行方向の前方側部に配設されることになる。この状態で、車両の側突事故が発生すると、乗員に作用する衝撃荷重、つまり乗員を車幅方向に移動させようとする慣性力とは関係のない位置においてエアバッグが展開することになり、このエアバッグを展開させるインフレータの駆動力が浪費されるとともに、エアバッグを元の状態に折り畳む等の煩雑な作業が必要になるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑み、車両の衝突時に、回転式シートの車外側部に配設されたエアバッグを適正に展開させて乗員を保護することができる車両用エアバッグ制御装置を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、車体に回転可能に支持された回転式シートと、当該回転式シートが前向き姿勢のときに、この回転式シートの車外側部に展開し得るように配設されたエアバッグと、車両の側突時に上記エアバッグを展開させるように制御するエアバッグ制御手段とを有する車両用エアバッグ制御装置であって、上記回転式シートの向きを検出するシート向き検出手段を備え、このシート向き検出手段の検出信号に応じて回転式シートが車室の車幅方向内方側に向けられていることが確認された場合には、車両の側突時に上記エアバッグが展開するのを禁止するように構成したものである。
【0007】
上記構成によれば、回転式シートが車室の車幅方向内方側に向けられた状態で、車両の側突事故が発生した場合には、上記エアバッグが展開することが禁止されるため、乗員に作用する慣性力と関係のない位置においてエアバッグが展開状態となるのを防止し、インフレータの駆動力が浪費されるのを防ぐことができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、車体に回転可能に支持された回転式シートと、当該回転式シートが前向き姿勢のときに、この回転式シートの外側端部に展開し得るように当該回転式シートに設置されたエアバッグと、車両の側突時に上記エアバッグを展開させるように制御するエアバッグ制御手段とを有する車両用エアバッグ制御装置であって、上記回転式シートの向きを検出するシート向き検出手段を備え、このシート向き検出手段の検出信号に応じて回転式シートが車室の車幅方向内方側に向けられていることが確認された場合には、車両の前突時に上記エアバッグを展開させるように構成したものである。
【0009】
上記構成によれば、回転式シートが車室の車幅方向内方側に向けられてその外側端部に設置されたエアバッグが車両進行方向の前方側に位置した状態で、車両の前突事故が発生した場合には、上記エアバッグが展開することになるため、上記前突時に作用する慣性力に応じて車体の前方側に移動しようとする乗員の体が上記エアバックにより効果的に保護されることになる。
【0010】
請求項3に係る発明は、上記請求項2記載の車両用エアバッグ制御装置において、回転式シートの前方側に位置する前部シートのシートバックは、回転式シートが車室の幅方向内方側に向けられた状態で上記エアバックが展開した場合に、このエアバッグの前方移動を規制するように構成されたものである。
【0011】
上記構成によれば、回転式シートが車室の車幅方向内方側に向けられてその外側端部に設置されたエアバッグが車両進行方向の前方側に位置した状態で、車両の前突事故が発生した場合には、上記エアバッグが展開するとともに、このエアバッグが前部シートのシートシートバックにより支持されてその前方移動が規制されるため、車両の前突時に作用する慣性力に応じて前方側に移動しようとする乗員の体が上記エアバックおよび前部シートのシートシートバックにより効果的に保護されることになる。
【0012】
請求項4に係る発明は、上記請求項3記載の車両用エアバッグ制御装置において、車室の車幅方向内方側に向けられた回転式シートのエアバッグ設置部と、回転式シートの前方側に配設された前部シートのシートバッグとの間に、展開状態となったエアバッグの厚みよりも大きな間隙を設けたものである。
【0013】
上記構成によれば、回転式シートが車室の車幅方向内方側に向けられてその外側端部に設置されたエアバッグが車両進行方向の前方側に位置した状態で、車両の前突事故が発生した場合には、上記エアバッグが回転式シートと前部シートのシートバッグとの間においてスムーズに展開するとともに、このエアバッグが前部シートのシートバッグにより安定して支持されることになるため、車両の前突時に作用する慣性力に応じて前方側に移動する乗員の体が上記エアバックおよび前部シートのシートバックにより効果的に保護されることになる。
【0014】
請求項5に係る発明は、上記請求項2〜4のいずれか1項に記載の車両用エアバッグ制御装置において、シート向き検出手段の検出信号に応じて回転式シートが車室の車幅方向内方側に向けられていることが確認された場合には、車両の側突時にエアバッグが展開するのを禁止するように構成したものである。
【0015】
上記構成によれば、回転式シートが車室の車幅方向内方側に向けられてその外側端部に設置されたエアバッグが車両進行方向の前方側に位置した状態で、車両の側突事故が発生しても、上記エアバッグが展開することが禁止されるため、乗員に作用する慣性力と関係のない位置においてエアバッグが展開状態となるのを防止し、インフレータの駆動力が浪費されるのを防ぐことができる。また、回転式シートが車室の車幅方向内方側に向けられた状態で、車両の前突事故が発生した場合には、上記エアバッグが展開することになるため、車体の前方側に作用する慣性力に応じて前方側に移動しようとする乗員の体が上記エアバックにより効果的に保護されることになる。
【0016】
請求項6に係る発明は、車体に回転可能に支持された回転式シートと、車体に回転可能に支持された回転式シートと、当該回転式シートが前向き姿勢のときに、この回転式シートが車室の前方側に向けられた状態でその車外側部のみに展開し得るように当該回転式シートに配設されたエアバッグと、車両の側突時に上記エアバッグを展開させるように制御するエアバッグ制御手段とを有する車両用エアバッグ制御装置であって、上記回転式シートの向きを検出するシート向き検出手段を備え、このシート向き検出手段の検出信号に応じて回転式シートが車室の前方側とは異なる方向に向いていることが確認された場合には、車両の側突時に上記エアバッグが展開するのを禁止するように構成したものである。
【0017】
上記構成によれば、回転式シートが車室の前方側(前向き姿勢)以外に向けられた状態で、車両の側突事故が発生した場合には、上記エアバッグが展開することが禁止されるため、乗員に作用する慣性力と関係のない位置においてエアバッグが展開状態となるのを防止し、インフレータの駆動力が浪費されるのを防ぐことができる。
【0018】
請求項7に係る発明は、上記請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両用エアバッグ制御装置において、展開時に乗員の頭部を保護する頭部保護部を上記エアバッグに設けたものである。
【0019】
上記構成によれば、車両の衝突時に、上記エアバッグが展開すると、このエアバックの頭部保護部によって乗員頭部が効果的に保護されることになる。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係る車両用エアバッグ制御装置の実施形態を示している。この車両用エアバッグ制御装置は、車体に回転可能に支持された左右一対の回転式シート1,2と、この回転式シート1,2のシートバック3にそれぞれ設置されたエアバッグ4と、このエアバッグ4を展開させるインフレータ5と、上記回転式シート1の向きを検出するシートセンサ6からなるシート向き検出手段と、車体の前後方向に作用する加減速度を検出する第1Gセンサ7と、車体の左右方向に作用する加減速度を検出する第2Gセンサ8と、車両の衝突時に必要に応じて上記エアバッグ4を展開させるように制御する制御ユニット9とを有している。
【0021】
上記回転式シート1,2は、それぞれ運転席10および助手席11からなる前部シートの後方側に配設されるとともに、車体に設けられた回転支持部12によって回転可能に支持されている。そして、車室の前方側に向けられた状態(前向き姿勢にある状態)で係止された上記回転式シート1,2のロックを解除することにより、この回転式シート1,2を回動操作して車室の車幅方向内方側に向けた状態、つまり対面状態に移行させることができるようになっている。
【0022】
上記エアバッグ4は、シートバック3の外側端部、つまり助手席11の後方側に配設された回転式シート2においては、図2に示すように、シートバック3の左側端部に配設されたケーシング13内に、折り畳み状態で格納されている。そして、車両の衝突時に、上記ケーシング13内に配設されたインフレータ5が作動することによって発生するガスの圧力に応じ、上記エアバッグ4が膨張してケーシング13の蓋体14が開放され、回転式シート2の左側面部を覆うようにエアバッグ4が展開することになる。
【0023】
このエアバッグ4は、上記のように回転式シート1,2が車室の車幅方向内方側に向けられた状態で展開した場合に、車両進行方向の前方側に移動することが、その前方側に位置する運転席10および助手席11からなる前部席のシートバック15によって規制されるように構成されている。すなわち、上記車室の内方側に向けられた回転式シート1,2の外側端部(エアバッグ4の設置部)と、上記前部席のシートバック15との間には、展開状態となったエアバッグ4の厚みよりも大きな間隙Wが設けられ、この間隙Wにおいて上記エアバッグ4がスムーズに展開するとともに、このエアバッグ4の車両進行方向の前方側部が上記前部席のシートバック15により支持されるようになっている。また、上記エアバッグ4には、図3に示すように、回転式シート1,2に着座した乗員の側面部を覆う本体部4aと、乗員の頭部を保護する頭部保護部4bとが設けられている。
【0024】
シートセンサ6は、上記回転式シート1,2の回転角度を検出するロータリエンコーダまたはロータリスイッチ等からなり、上記回転角度の検出信号を制御ユニット9に出力するように構成されている。この制御ユニット9には、図4に示すように、上記第1,第2Gセンサ7,8から出力される検出信号に応じて車両の衝突状態を判別する衝突状態判別手段16と、この衝突状態判別手段16および上記シートセンサ6の出力信号に応じて上記エアバッグ4を展開させるか否かを判定し、このエアバッグ4を展開させる際にインフレータ5に作動指令信号を出力するエアバッグ制御手段17とが設けられている。
【0025】
衝突状態判別手段16は、上記第1検出手段7の検出信号に応じて車体の前後方向に大きな減速度が作用する車両の前突事故が発生したか否かを判別するとともに、第2検出手段8の検出信号に応じて車体の左右方向に大きな加速度が作用する車両の側突事故が発生したか否かを判別し、かつ上記インフレータ5を作動させるか否かの判別基準となるしきい値、エアバッグ4の展開圧力およびインフレータ5の作動タイミングを設定し、さらに衝突前の所定時点から衝突時点までの間における乗員の頭部の移動速度および移動距離を演算によって求めるように構成されている。
【0026】
また、エアバッグ制御手段17は、上記シートセンサ6および衝突状態判別手段16の出力信号に応じ、上記回転式シート1,2が車室の前方側に向けられた状態(前向き姿勢にある状態)で、車両の側突事故が発生したことが確認された場合に、上記インフレータ5を作動させてエアバッグ4を展開させ、かつ上記回転式シート1,2が車室の車幅方向内方側に向けられた状態で、車両の前突事故が発生したことが確認された場合に、上記インフレータ5を作動させてエアバッグ4を展開させるように構成されている。また、上記シートセンサ6の出力信号に応じ、上記回転式シート1,2が車室の車幅方向内方側に向けられていることが確認された場合には、車両の側突時に上記インフレータ5が非作動状態に維持されてエアバッグ4の展開が禁止されるようになっている。
【0027】
上記制御ユニット9において実行されるエアバッグ制御動作を、図5および図6に示すフローチャートに基づいて説明する。上記制御動作がスタートすると、まず上記各センサの検出値を入力した後(ステップS1)、上記シートセンサ6の検出信号に基づいて回転式シート1,2が車室の車幅方向内方側に向けられているか否かを判定する(ステップS2)。このステップS2でNOと判定され、回転式シート1,2が車室の前方側に向けられていることが確認された場合には、上記第2Gセンサ7によって検出された車幅方向の加速度Gbが、予め設定された3g(gは重力加速度)程度の衝突判定値以上となった側突状態にあるか否かを判定し(ステップS3)、NOと判定された場合には、上記エアバッグ4の展開制御を実行する必要がないと判断してリターンする。
【0028】
また、上記ステップS3でYESと判定され、車幅方向に3g以上の上記加速度Gbが作用したこと、つまり車両の衝突事故が発生したことが確認された場合には、上記各センサの検出値等に基づき、エアバッグ4を展開させるか否かの判定基準となるしきい値Vs,Lsと、上記エアバッグ4の展開圧力Psと、インフレータ5の作動タイミングTsとを設定する(ステップS4)。例えば、予め記憶手段に記憶されたマップのデータと、上記各センサの検出値とに基づき、乗員の頭部の移動速度に対応したしきい値V1および同移動距離に対応したしきい値Lsと、上記展開圧力Psと、作動タイミングTsとを読み出して設定する。
【0029】
次いで、上記加速度Gbの検出値に基づき、乗員の頭部の移動速度Vと同移動距離Lとを演算する(ステップS5)。すなわち、車両が側突状態となったことが確認された現時点よりも所定時間だけ前(例えば1秒前)から現時点までの時間内において上記加速度Gbの値を積分することにより上記頭部の移動速度V{=∫Gbdt,(t=−1〜0)}を求めるとともに、同時間内において上記移動速度Vの値を積分することにより上記頭部の移動距離L{=∫Vdt,(t=−1〜0)}を求める。
【0030】
その後、上記頭部の移動速度Vおよび移動距離Lの演算値が、ステップS4で設定された上記しきい値Vs,Ls以上であるか否かをそれぞれ判定し(ステップS5,S6)、この両ステップS5,S6のいずれかでNOと判定された場合には、乗員に作用する慣性力が小さいために、上記エアバッグ4の展開制御を実行する必要がないと判断してステップS1にリターンする。そして、上記ステップS5,S6でそれぞれYESと判定された場合には、上記ステップS4で設定された展開圧力Psおよび作動タイミングTsでエアバッグ4を展開させるように制御する(ステップS8)。
【0031】
また、上記ステップS2でYESと判定され、回転式シート1,2が車室の車幅方向内方側に向けられていることが確認された場合には、上記第1Gセンサ7によって検出された車体前後方向の減速度Gaが、予め設定された3g(gは重力加速度)程度の衝突判定値以上となった前突状態にあるか否かを判定し(ステップS9)、NOと判定された場合には、上記エアバッグ4の展開制御を実行する必要がないと判断してリターンする。
【0032】
また、上記ステップS9でYESと判定され、車体の前後方向に3g以上の上記減速度Gaが作用したこと、つまり車両の前突事故が発生したことが確認された場合には、上記各センサの検出値等に基づき、エアバッグ4を展開させるか否かの判定基準となるしきい値V1,L1と、上記エアバッグ4の展開圧力P1と、インフレータ5の作動タイミングT1とを設定する(ステップS10)。
【0033】
次いで、上記第1Gセンサ7によって検出された減速度Gaに基づいて、乗員の頭部の移動速度V{=∫Gadt,(t=−1〜0)}と、乗員の頭部の移動距離L{=∫Vdt,(t=−1〜0)}とを演算した後(ステップS11)、この頭部の移動速度Vおよび移動距離Lの演算値が、ステップS10で設定された上記しきい値V1,L1以上であるか否かをそれぞれ判定し(ステップS12,S13)、この両ステップS12,S13のいずれかでNOと判定された場合には、乗員に作用する慣性力が小さいために、上記エアバッグ4の展開制御を実行する必要がないと判断してステップS1にリターンする。そして、上記ステップS12,S13でそれぞれYESと判定された場合には、上記ステップS10で設定された展開圧力P1および作動タイミングT1で上記エアバッグ4を展開させるように制御する(ステップS14)。
【0034】
この結果、回転式シート1,2が車室の車幅方向内方側に向けられていることが確認された場合には、上記第1Gセンサ7の検出信号に応じて車両の前突事故が発生したことが確認されたときにだけ、上記エアバッグ4を展開させる制御が実行され、上記第2Gセンサ8の検出信号に応じて車両の側突事故が発生したことが確認されたときでも、上記エアバッグ4が非展開状態に維持されてその展開が禁止されることになる。
【0035】
このように車体に回転可能に支持された回転式シート1,2と、当該回転式シート1,2が前向き姿勢のときに、この回転式シート1,2の外側端部に展開し得るように設置されたエアバッグ4と、車両の側突時に上記エアバッグ4を展開させるように制御するエアバッグ制御手段17とを有する車両用エアバッグ制御装置において、上記回転式シート1,2の向きを検出するシートセンサ6からなるシート向き検出手段の検出信号に応じ、回転式シート1,2が車室の車幅方向内方側に向けられていることが確認された場合には、車両の側突時に上記エアバッグ4が展開するのを禁止するように構成したため、エアバッグ4の不必要な展開を防止してインフレータ5の駆動力が浪費されるのを防ぐことができるとともに、展開したエアバッグ4を元の状態に折り畳む等の煩雑な作業が必要となるのを防ぐことができる。
【0036】
例えば図1に示すように、車室の左側に位置する回転式シート2が車室の車幅方向内方側に向けられている場合には、そのシートバック3の外側端部に設置されたエアバッグ4が車両進行方向の前方側、つまり車室の前方側に移動しようとする乗員を保護する位置に配設されることになる。したがって、この状態で車両の側突事故が発生したときに、上記回転式シート2のエアバッグ4を展開させたとしても、乗員を保護する機能が十分に得られないため、上記のようにエアバッグ4の展開を禁止することにより、上記インフレータ5の駆動力が浪費されること等を防止することができる。なお、上記エアバッグ4を車両のドア部に配設した場合においても、同様の作用効果が得られることになる。
【0037】
また、上記のように回転式シート1,2のシートバック3内において、当該回転式シート1,2が前向き姿勢のときに、その外側端部に展開し得るように設置されたエアバッグ4と、車両の側突時に上記エアバッグ4を展開させるように制御するエアバッグ制御手段17とを有する車両用エアバッグ制御装置において、シートセンサ6からなるシート向き検出手段の検出信号に応じて回転式シート1,2が車室の車幅方向内方側に向けられていることが確認された場合には、車両の前突時に上記エアバッグ4を展開させるように構成することにより、前突時に作用する慣性力に応じて車体の前方側に移動しようとする乗員の体を上記エアバッグ4によって効果的に保護することができる。
【0038】
特に、上記実施形態に示すように、回転式シート1,2が車室の車幅方向内方側に向けられた状態で上記エアバッグ4が展開した場合に、このエアバッグ4が車両進行方向の前方側に移動するのを前部席のシートバック15によって規制するように構成した場合には、前突時に作用する慣性力に応じて車体の前方側に移動しようとする乗員の体を上記エアバッグ4および前部席のシートバック15によって安定して支持することができるため、簡単な構成でさらに効果的に上記乗員を保護することができる。
【0039】
また、上記実施形態では、車室の車幅方向内方側に向けられた回転式シート1,2のエアバッグ設置部と、上記前部席のシートバック15との間に、展開状態となったエアバッグ4の厚みよりも大きな間隙Wを設けたため、この間隙W内においてエアバッグ4をスムーズに展開させることができるとともに、前突時に作用する慣性力に応じて車体の前方側に移動しようとする乗員の体を上記エアバッグ4および前部席のシートバック15によって効果的に支持することができる。なお、上記前部席のシートバック15に代え、回転式シート1,2が車室の内方側に向けられた状態でエアバッグ4が展開した場合に、その前方移動を規制する別体の規制部材を設けた構造としてもよい。
【0040】
さらに上記実施形態では、展開時に乗員の頭部を保護する頭部保護部4bを上記エアバッグ4に設けたため、例えば回転式シート1,2が車室の前方側に向けられた状態において車両の側突時に作用する慣性力に応じ、車室の側方側に移動しようとする乗員の頭部を上記エアバッグ4の頭部保護部4bにより安定して支持し、乗員を効果的に保護することができる。また、回転式シート1,2が車室の車幅方向内方側に向けられた状態で、車両の前突事故が発生した場合においても、その慣性力に応じて車室の前方側に移動しようとする乗員の頭部を上記エアバッグ4の頭部保護部4bにより安定して支持することができる。
【0041】
なお、上記実施形態では、シートセンサ6からなるシート向き検出手段の検出信号に応じ、回転式シート1,2が車室の車幅方向内方側に向けられていることが確認された場合には、車体の前後方向に作用する加減速度を検出する第1Gセンサ7の検出信号に応じて車両が前突状態にあることが確認されたときにのみ、上記シートバック4を展開状態とすることにより、車両の側突時に、シートバック4が展開状態となるのを禁止するようにした例について説明したが、回転式シート1,2が車室の車幅方向内方側に向けられていることが確認された場合には、車両の衝突状態に如何に拘らず上記インフレータ5を非作動状態に維持することにより、エアバッグ4の展開を禁止するように構成してもよい。
【0042】
また、車体に回転可能に支持された回転式シート1,2が車室の前方側に向けられた状態(前向き姿勢にある状態)でその車外側部に展開し得るように配設されたエアバッグ4と、車両の側突時に上記エアバッグ4を展開させるように制御するエアバッグ制御手段9とを有する車両用エアバッグ制御装置において、上記回転式シート1,2の向きを検出するシートセンサ6からなるシート向き検出手段の検出信号に応じて回転式シート1,2が車室の車幅方向内方側に向けられている場合に限らず、例えば車室の後方側または斜め内方側等の車室の前方側とは異なる方向に向けられていることが確認された場合には、車両の側突時に上記エアバッグが展開するのを禁止するように構成してもよい。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、車体に回転可能に支持された回転式シートと、当該回転式シートが前向き姿勢のときに、この回転式シートの車外側部に展開し得るように配設されたエアバッグと、車両の側突時に上記エアバッグを展開させるように制御するエアバッグ制御手段と、上記回転式シートの向きを検出するシート向き検出手段とを備え、このシート向き検出手段の検出信号に応じて回転式シートが車室の車幅方向内方側方向に向けられていること、あるいは車室の前方側とは異なる方向に向けられていることが確認された場合には、車両の側突時に上記エアバッグが展開するのを禁止するように構成したため、エアバッグの不必要な展開を防止してインフレータの駆動力が浪費されるのを防ぐことができるとともに、展開したエアバッグを元の状態に折り畳む等の煩雑な作業が必要となるのを防ぐことができる。
【0044】
また、本発明は、車体に回転可能に支持された回転式シートと、当該回転式シートが前向き姿勢のときに、この回転式シートの外側端部に展開し得るように設置されたエアバッグと、車両の側突時に上記エアバッグを展開させるように制御するエアバッグ制御手段と、上記回転式シートの向きを検出するシート向き検出手段とを備え、このシート向き検出手段の検出信号に応じて回転式シートが車室の車幅方向内方側に向けられていることが確認された場合には、車両の前突時に上記エアバッグを展開させるように構成したため、前突時に作用する慣性力に応じて車体の前方側に移動しようとする乗員の体を上記エアバッグによって効果的に保護できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るエアバッグ制御装置の実施形態を示す説明図である。
【図2】 エアバッグの具体的構成を示す断面図である。
【図3】 エアバッグの展開状態を示す説明図である。
【図4】 エアバッグ制御装置の具体的構成を示すブロック図である。
【図5】 エアバッグ制御手段による制御動作の第1行程を示すフローチャートである。
【図6】 エアバッグ制御手段による制御動作の第2行程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1,2 回転式シート
4 エアバッグ
4a 頭部保護部
6 シートセンサ(シート向き検出手段)
15 前部席のシートバック
17 エアバッグ制御手段
W 間隙
Claims (7)
- 車体に回転可能に支持された回転式シートと、当該回転式シートが前向き姿勢のときに、この回転式シートの車外側部に展開し得るように配設されたエアバッグと、車両の側突時に上記エアバッグを展開させるように制御するエアバッグ制御手段とを有する車両用エアバッグ制御装置であって、上記回転式シートの向きを検出するシート向き検出手段を備え、このシート向き検出手段の検出信号に応じて回転式シートが車室の車幅方向内方側に向けられていることが確認された場合には、車両の側突時に上記エアバッグが展開するのを禁止するように構成したことを特徴とする車両用エアバッグ制御装置。
- 車体に回転可能に支持された回転式シートと、当該回転式シートが前向き姿勢のときに、この回転式シートの外側端部に展開し得るように当該回転式シートに設置されたエアバッグと、車両の側突時に上記エアバッグを展開させるように制御するエアバッグ制御手段とを有する車両用エアバッグ制御装置であって、上記回転式シートの向きを検出するシート向き検出手段を備え、このシート向き検出手段の検出信号に応じて回転式シートが車室の車幅方向内方側に向けられていることが確認された場合には、車両の前突時に上記エアバッグを展開させるように構成したことを特徴とする車両用エアバッグ制御装置。
- 回転式シートの前方側に位置する前部シートのシートバックは、回転式シートが車室の幅方向内方側に向けられた状態で上記エアバックが展開した場合に、このエアバッグの前方移動を規制するように構成されたことを特徴とする請求項2記載の車両用エアバッグ制御装置。
- 車室の車幅方向内方側に向けられた回転式シートのエアバッグ設置部と、回転式シートの前方側に配設された前部シートのシートバッグとの間に、展開状態となったエアバッグの厚みよりも大きな間隙を設けたことを特徴とする請求項3記載の車両用エアバッグ制御装置。
- シート向き検出手段の検出信号に応じて回転式シートが車室の車幅方向内方側に向けられていることが確認された場合には、車両の側突時にエアバッグが展開するのを禁止するように構成したことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の車両用エアバッグ制御装置。
- 車体に回転可能に支持された回転式シートと、当該回転式シートが前向き姿勢のときに、この回転式シートが車室の前方側に向けられた状態でその車外側部のみに展開し得るように当該回転式シートに配設されたエアバッグと、車両の側突時に上記エアバッグを展開させるように制御するエアバッグ制御手段とを有する車両用エアバッグ制御装置であって、上記回転式シートの向きを検出するシート向き検出手段を備え、このシート向き検出手段の検出信号に応じて回転式シートが車室の前方側とは異なる方向に向いていることが確認された場合には、車両の側突時に上記エアバッグが展開するのを禁止するように構成したことを特徴とする車両用エアバッグ制御装置。
- 展開時に乗員の頭部を保護する頭部保護部をエアバッグに設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両用エアバッグ制御装置。
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