JP3715968B2 - 急曲線掘削工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シールド機による急曲線掘削工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上下水道等の敷設、地下鉄等の建設のために地中においてトンネルを掘削する際には、一般にシールド機が使用される。
【0003】
このようなシールド機は、円筒状のシールド本体を有しており、このシールド本体の前部には円盤状のカッタヘッドが配され、このカッタヘッドの前面には土砂掘削用のディスクカッタが、またカッタヘッドの外周部には主に余堀りを行うためのコピーカッタがそれぞれ配されている。また、前記シールド本体の内部には、掘進用のシールドジャッキ、円環状のセグメントを組み立てるためのセグメントエレクタ、掘削された土砂を排土するための排土装置等が設けられている。
【0004】
このようなシールド機によれば、以前の掘削過程において既に組み立てられているセグメントの前端面に前記シールドジャッキをあてがい、セグメントからシールド機の進行方向に沿った反力を確保してそのシールドジャッキを伸長させ、シールドジャッキ1ストローク分の長さのトンネルを掘削し、その後前記セグメントエレクタを用いてシールド機のテール部内部で新たなセグメントを組み立て、再びそのセグメントにシールドジャッキをあてがい伸長させるという工程を繰り返し行うことによって、直線状のトンネルを除々に掘削するようにされている。
【0005】
前記セグメントは、前述のようにシールド機のテール部内部において組み立てられるものであるから、そのシールド機が前方に掘進した後には、地山に掘られたトンネルと、シールド機よりも後方に位置するセグメントの外面との間に、シールド機の外殻の厚みと、シールド機のテール部の内周部とセグメントの外周部との間の隙間の間隔を合計した厚みの隙間(テールボイド部)が形成されることになる。このようなテールボイド部をそのまま放置した場合、地山の肌落ち、ひいては地盤沈下を誘発する恐れがあるため、速やかに裏込め材をそのテールボイド部に注入して各セグメントを保護するとともに地山の肌落ち・地盤沈下を防止するようにされている。
【0006】
ところで、近年の施工においては、特に都市部の施工において、急曲線に沿うような掘削、すなわち急曲線掘削を行う施工が多く要求されている。このような急曲線掘削を行うに際しては、シールド機に付設されるコピーカッタを用いてそのシールド機の外周部を余堀りし、シールド機の方向転換を行うのに必要なスペース(余堀部)を確保する必要があり、加えて、セグメントの軸線方向に沿った反力(シールドジャッキの伸長に対する反力)および地山からセグメントにかかる反力(地盤反力)を確保する必要がある。そこで、地上から薬液を注入して硬化させ余堀部を保護して肌落ちおよび地盤沈下を防止するとともに、地盤反力を確保するという薬液注入工法が採用されている。しかし、このような工法によれば、地上から薬液注入を行う関係上、地上にスペースを確保する必要があり、コストも手間もかかるという問題点があるので、地上工事を行うことなく、坑内工事のみで急曲線施工を行うことが求められている。
【0007】
坑内工事のみで急曲線掘削を行うために試みに行われる工法としては、シールド機が通過した後に生じるテールボイド部に対して、セグメントの適所から、速硬性の注入材を注入した膨出袋を張り出させ、その膨出袋内部の注入材の強度を利用して、前記セグメントを地山の坑の内部に、坑とセグメントの軸線が略一致するように支持して、シールド機の急曲線掘削に必要な地盤反力を確保するとともに、そのテールボイド部の残り部分に速硬性の裏込め材を注入して、地山の肌落ち・地盤沈下を防止するという方法が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、硬化しないという性質を示す充填材と、セグメントの全周を覆うようなドーナツ状の袋体が付設された袋付きセグメントとを利用した急曲線の掘削方法も試みられている。袋付きセグメントと充填材を用いた方法によれば、前記余堀部に充填材を充填し、前記シールド機がその余堀部を通過する際に、前記袋付きセグメントを順次組み立てて地盤反力を確保し、加えて、これら袋付きセグメントの袋体への速硬性の注入材の注入を所定個数毎に行い、袋体−袋体間の空間に充填材が存在する状態にした後、その充填材と裏込め材との置き換えを行い、地山の肌落ち・地盤沈下を防止するようにされている。また、充填材と裏込め材との置き換え工程を省くために、前記充填材の代わりに遅硬性の裏込め材を用いるという方法も提案されている。
【0009】
【特許文献1】
特公昭63−6719号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特許文献1に記載の工法においては、シールド機が通過すると同時に、あるいは通過した直後にテールボイド部に裏込め材を注入した場合、この裏込め材がシールド機の側方から余堀部に回り込んで凝結・硬化してその余堀部を閉塞してしまい、以降の曲線掘削が行えなくなる恐れがある。昨今では、急曲線掘削の需要増加に伴ないシールド本体の前半部が後半部に対して屈折可能にされた中折れ式のシールド機が多用され、前記余堀部が飛躍的に小スペース化されることから、裏込め材の回り込みが発生し難くされてはいるものの、根本的な問題解決には至っていない。また、このような問題点は、シールド機の通過から所定時間の経過後、このシールド機のはるか後方においてテールボイド部への裏込め材の注入を行うことによって回避することができるが、こうした方法を採った場合、シールド機の通過から裏込め材の注入までに間隔が空いてしまうことから、地山の肌落ち、ひいては地盤沈下の危険性を高めてしまうという問題点がある。
【0011】
また、袋付きセグメントと充填材を用いる方法によれば、充填材と裏込め材との置き換えを行う必要があるが、それら充填材および裏込め材は共に極めて高い粘性を有しているため、両者の置き換えを完全に行うのは実質には不可能である。そのため、充填材がテールボイド部の内部に単独かつ塊として残留するケースが多く、地山の肌落ちや地盤沈下を誘発してしまうという問題点がある。また、充填材の代わりに遅硬性裏込め材を使用すれば充填材の残留による肌落ち・地盤沈下が発生することはないが、前記シールド機が何らかのトラブルが原因で運転を停止した際に、余堀部に注入された裏込め材が硬化し、この余堀部を閉塞させてしまった場合には、以降の曲線掘削が不可能になるという新たな問題点が発生する。
【0012】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、地山の肌落ちおよび地盤沈下の危険性が極めて低く、余堀部を閉塞させることもなく、しかも地上工事が不要である急曲線掘削工法を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段および作用・効果】
前記目的を達成するために本発明による急曲線掘削工法は、
シールド機を用いて急曲線に沿ったトンネルを掘削する急曲線掘削工法において、
前記シールド機の掘進中に、外周部に形成される余堀部に高粘性の非硬化性充填材をシールド機の機内から充填するとともに、後方に形成されるテールボイド部に遅硬性裏込め材を注入してシールド機周辺の地山の緩みを抑制し、次いで前記シールド機の停止時に、前記テールボイド部において速硬性注入材を膨出袋に注入することによりその膨出袋を突出させてシールドジャッキの反力を確保することを特徴とすることを特徴とするものである。
【0014】
本発明によれば、余堀部に高粘度の非硬化性充填材を充填することで、余堀部を保護して肌落ちおよび地盤沈下を防止するという従来の効果を奏しつつ、余堀部における充填材の硬化およびそれに伴う余堀部閉塞を防止することができる。そのため、シールド機に何らかのトラブルが発生し、運転を停止した場合であっても、何等問題無く急曲線掘削を再開することができる。
【0015】
また、本発明においては、テールボイド部に高粘度の遅硬性裏込め材が注入されるため、シールド機外周部の余堀部に回り込む可能性が低く、例え、回り込んだとしても、長時間未硬化の状態が継続されるため、前記余堀部で凝結・硬化して、その余堀部を閉塞させることがない。そのため、余堀部への回り込みおよび余堀部の閉塞を気にすることなく、テールボイド部が新たに形成されると略同時に遅硬性裏込め材の注入を行うことができる。したがって、地山の肌落ち、ひいては地盤沈下の可能性を極めて小さいものにすることができる。
【0016】
さらに本発明においては、前記遅硬性裏込め材が注入されるテールボイド部に対して、内部に速硬性の注入材を注入した膨出袋を突出させているが、この膨出袋は、テールボイドに突出した後、内部の注入材が速やかに凝結して一定の強度を発揮するため、前記シールド機の後方位置のセグメントを地山に掘削された坑内にしっかりと支持することができる。そのため、シールド機の急曲線掘削に必要な、地山からセグメントの外周面への地盤反力を確実に確保することができる。
【0017】
なお、前記余堀部において充填された非硬化性充填材は、シールド機が通過した後、前記テールボイド部に順次注入される遅硬性裏込め材によって、前方に押し出されるか、あるいは、地山の土砂と土砂との間の隙間に入り込むため、急曲線施工の終了後、その充填材がセグメントと地山に掘削された坑との間に単独でかつ塊として残留することがない。よって、充填材が残留することによる地山の肌落ちや地盤沈下を防ぐこともできる。さらに、前記充填材の充填、遅硬性裏込め材の注入、膨出袋ならびに内部の注入材の張り出しは、全て坑内(シールド機またはセグメント)にて行うことができるため、地上工事を完全に省略することができ、手間ならびにコストを削減することができる。
【0018】
前記非硬化性充填材は、所定の圧力を保って余堀部に充填されるのが好ましい。こうすることによって、遅硬性裏込め材をシールド機の後方のテールボイド部に押し出すことができるため、遅硬性裏込め材が余堀部にて硬化して急曲線掘削の妨げになるのをより良好に防止することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、本発明による急曲線掘削工法の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1には、本発明の一実施形態に係る急曲線掘削工法に使用される中折れ式後胴支持型シールド機の概略図が、図2にはセグメントに固定されるセグメント支持装置の要部断面図が、図3には、膨出袋が張り出された際における、地山の断面図が、図4には、曲線掘削の過程を示す説明図がそれぞれ示されている。
【0021】
本実施形態において使用される中折れ式後胴支持型シールド機1(以下単に「シールド機1」という。)は、図1に示されるように、前胴部2aおよび後胴部2bからなるシールド本体2を備えており、前記前胴部2aの前部には地山Aの掘削用のカッタヘッド3が配されている。また、前記後胴部2bの内部にはシールド機1推進用の複数個のシールドジャッキ4が支持されるとともに環状セグメント(以下、単に「セグメント」という。)を組み立てるためのセグメントエレクタ(図示省略)等が配されている。また、前記前胴部2aおよび後胴部2bは、それら前胴部2a、後胴部2bの内部に配される図示されない複数個のアーティキュレートジャッキによって接続されており、それら複数個のアーティキュレートジャッキの収縮を制御することによって、前記前胴部2aを後胴部2bに対して所定の方向に所定の角度だけ屈折できるようにされている。
【0022】
前記カッタヘッド3の外周部には、シールド機1の外周部を余堀りして、このシールド機1の屈折および方向転換用スペース(以後「余堀部B」という)を確保するためのコピーカッタ5が出退自在に付設されている。また、前胴部2aの外周部には、前記コピーカッタ5によって余堀される余堀部Bに、非硬化性の充填材(後述)を充填するための複数個の充填口6が設けられており、前記前胴部2aの内部でその充填口6の近傍には、充填材の原料である後述の粘土・ベントナイト液および水ガラスを混合するとともに、その混合物を充填口から余堀部Bに供給するミキシングノズル8が配されている。さらに、前記後胴部2bの外周部には、シールド機1の通過後、そのシールド機1より後方におけるセグメント10の外面と、地山Aに掘削された坑Cの内面との間に形成される隙間(以下「テールボイド部D」という)に対し、二液混合型の遅硬性裏込め材(後述)を注入する注入管7が設けられており、前記注入管7内部の後端部近傍にも、後述のモルタルおよび水ガラスを混合して、その混合物を注入管の後端部からテールボイド部に注入するミキシングノズル9が配されている。
【0023】
前記後胴部2bのテール部内部および、シールド機1の後方には、以前の掘削工程にて組み立て済みのセグメント10、10、10…が連続配置されており、これら各セグメント10、10、10…には、該セグメントの内周部側にのみネジ部11'を有する複数個の孔11、11、11…が穿設されている(図2参照)。また、これら孔11、11、11には、前記セグメント10を地山Aに掘削された坑Cの内部に、両者の軸線を略一致させて支持するためのセグメント支持装置12が固定されている。
【0024】
前記セグメント支持装置12は、図2に示されるように、先端部外周部にネジ部13'を有し、前記孔11のネジ部11'と螺合可能にされた外筒13を備えており、この外筒13の内部には、内筒14が外筒13の内周部と殆ど内接するように配されている。前記内筒14は、外筒13よりもやや長めに形成されており、この外筒13のネジ部13'と孔11のネジ部11'が螺合した際に、先端部が孔11の内周部(ネジ部11'より、外寄りの位置)に臨むようにされている。この内筒14の内部には、膨出袋15が折り畳まれた状態で収納されており、この膨出袋15の内部には、セグメント10内部より供給される速硬性の注入材(後述)を、その膨出袋15の内部に注入するための注入筒16が配されている。このように構成されるセグメント支持装置12によれば、前記セグメント10内部から注入筒16を介して前記膨出袋15内部に速硬性の注入材を注入した際、注入材の注入圧によって前記膨出袋15および膨出袋15内の注入材がテールボイド部D内に膨出して張り出し(図3参照。)、これによって、セグメント10を地山Aに掘削された坑Cの内部に、坑Cの軸線と略一致させて支持することができる。ここで、符号17が付されるのはキャップである。
【0025】
なお、前記シールド機1の内部には、周知のように、運転席、カッタヘッド3を回転させるための回転装置、カッタヘッドの回転にて削り落とされた土砂を取り込むカッタヘッドチャンバ、カッタヘッドチャンバに取り込まれた土砂を後流側へ搬出するための排土装置、前記シールドジャッキ、アーティキュレートジャッキの駆動制御装置、前記セグメント10のパーツを後方から運搬するための運搬装置、セグメントのパーツをセグメントエレクタに搬送する搬送装置、動力源等が配されているが、本発明と直接関係無いため、図示とその詳細な説明とを省略する。
【0026】
本実施形態において、前記余堀部Bに充填される充填材(非硬化性充填材)としては、直径1〜2cmの小石を約10cm上方からその充填材に落とした際に、その小石が充填材の中に沈まない程度の粘性を有するものが好ましく、また注入施工性を良好にするために二液混合型であるのが好ましい。具体的には、岡山県和気郡吉永町あるいは笠岡市にて産する粘土にベントナイトを加えたものをスラリー状にしてなる粘土・ベントナイト液と、塑性強度調整剤である水ガラス5%とを混合し、ビスコテスターで20000〜30000CP以上の粘性になるように調整されたものが好適である。このようにして調整された充填材は、混合後即座に粘性が上昇するものの、硬化はしないという特性を示すため、前記ミキシングノズル8から充填口6を介して前記余堀部Bに注入されたとしても、余堀部Bにて硬化することがなく、前記シールド機1の急曲線掘削の妨げになることがない。また、シールド機1のチャンバー内に土砂と共に取り込まれた場合であっても、掘削作業に悪影響を及ぼすことはない。
【0027】
前記テールボイド部に注入口7を介して注入される遅硬性裏込め材としては、モルタルおよび水ガラスの混合比率を、通常の裏込め材の10:1から10:0.5程度に変更したものが好適である。このような遅硬性裏込め材は、塑性強度調整剤である水ガラスの比率が通常の裏込め材に比して低く抑えられていることから、高い粘性を有するものの硬化するまでの時間が長い(少なくとも6時間以上は硬化しない。)という特徴を示す。
【0028】
さらに、前記膨出袋15内に注入され、その膨出袋15と共にテールボイド部D内に張り出される速硬性の注入材としては、ゲル化までの時間を早めるために塩化化合物等が添加されたモルタルと、塑性強度調整剤である水ガラスとを、10:1.2〜10:1.3の比率で混合したものが好適である。このような注入材は、モルタルにゲルタイムを早めるための塩化化合物等が添加され、加えて、塑性強度調整剤である水ガラスの混合比率が通常の裏込め材より高くされたことから、速やかに凝結を開始するという特性を示す。そのため、前記速硬性の注入材が前記膨出袋15の内部に注入され、その膨出袋15がテールボイド部D内部に張り出された際には、既に相当の強度を発揮した状態にあることから、前記セグメント10を地山Aに掘削された坑Cの軸線と略一致するように支持することができ、それによって、シールド機1による急曲線掘削に必要な地盤反力(地山からセグメント10にかかる反力)を確保することができる。
【0029】
次に、前記シールド機1を用いた急曲線掘削工法を図4によって説明する。先ず、前記シールド機1の掘進中に、このシールド機の外周部を前記コピーカッタ5を用いて余堀りし、次工程におけるシールド機1の屈折および掘進のスペース(余堀部B)を確保するとともに、前記前胴部2a内部のミキシングノズル8にて粘土・ベントナイト液と水ガラスを供給して混合した後、前記充填口6を介してその粘土・ベントナイト液と水ガラスの混合物(充填材)を所定の圧力を保ちつつ前記余堀部Bに供給し(図1、図4(a)の矢印E参照)、それによって、その余堀部Bの緩みを防止して、余堀部Bの肌落ちを防止する。
【0030】
同時に、前記注入管7から、後方のテールボイド部Dに遅硬性裏込め材を、そのテールボイド部Dが形成されると略同時に注入する。このような遅硬性裏込め材は、図1、図4(a)の矢印Fに示されるように、セグメント10の上方から両側に向け流動し、最終的にセグメント10の下方にまで回り込んで、前記セグメント10の全周をくまなく覆うように前記テールボイド部Dに注入されるので、前記セグメントの外表面を保護することができ、地山Aの肌落ちおよび地盤沈下の発生を防止することもできる。
【0031】
前記シールド機1の掘進終了後、シールド機1のテール部より後方に押出されたセグメント10に取り付けられるセグメント支持装置12の膨出袋15内に、セグメント10の内部から速硬性の注入材を注入し、それによって、その膨出袋15を、遅硬性裏込め材が注入されたテールボイド部Dに突出させる。このようにしてテールボイド部Dに突出した膨出袋15は、テールボイド部D内における未硬化状態の遅硬性裏込め材を押しのけつつ、その外面が坑Cの内面に達するまで膨出して、前記テールボイド部D内に張り出した状態となった後、内部の速硬性の注入材が速やかに凝結して所定以上の強度を発揮した状態となる。そして、前記セグメント10を、前記膨出袋15を介して、坑Cの内部に(部分的ではあるが)支持し(図3参照)、それによって、急曲線掘削で必要な地山Aからセグメント10の外表面にかかる地盤反力を確保する。また、シールド機1の停止時には、前記シールドジャッキ4、4の収縮と、前記シールド機1のテール部内部における新たなセグメント10の組み立てと、新たに組み立てられるセグメント10へのセグメント支持装置12のセットも併せて行う。
【0032】
次に、所定のアーティキュレートジャッキを伸長させ、シールド機1の前胴部2aを所定の方向に所定の角度だけ屈折させてシールド機1の姿勢を定めた後、その姿勢を維持しつつ前記各シールドジャッキ4、4の端面を新たに組み立てられたセグメント10の前端面にあてがい伸長させ、セグメント10の軸線方向に沿った反力(図4(a)の矢印α参照)および、地山からセグメント10の外表面にかかる地盤反力(図4(a)の矢印β参照。)を確保して、前記シールド機1をやや斜め前方に掘進させる(図4(b)参照。)。そして、この掘進中に、前記コピーカッタ5を用いてシールド機1外周部に新たな余堀部Bを形成し、その余堀部Bに対して非硬化性の充填材の充填を行うとともに、後方に新たに形成されるテールボイド部Dに対する遅硬性裏込め材の注入を行う。
【0033】
以降、前述のシールド機1の停止時における工程(セグメント10の組み立て、セグメント支持装置12の取り付け、テールボイド部Dへの膨出袋15の突出・張り出し、アーティキュレートジャッキによるシールド機1の姿勢の変更(場合による))と、シールド機1の掘進およびそれに伴う工程(余堀部Bの形成、余堀部Bに対する充填材の供給、テールボイド部Dに対する遅硬性裏込め材の注入)を繰り返し、急曲線に沿ったトンネルを掘削する(図4(c)参照。)。
【0034】
本実施形態においては、余堀部Bに充填材を充填して余堀部Bの肌落ちを防止するとともに、テールボイド部Dに遅硬性裏込め材を注入して、セグメント10の保護および、地山の肌落ち・地盤沈下を防止することができる。また、テールボイド部Dに張り出された膨出袋15内の速硬性注入材によって、セグメント10を坑C内部に支持するとともに、シールド機1の急曲線掘削に必要な地山Aからセグメント10にかかる地盤反力を確保することができる。
【0035】
本実施形態において、前記テールボイド部Dに注入される遅硬性裏込め材は、高い粘性を有していることから前記シールド機1の側方から余堀部Bに回り込むことがほとんどなく、万が一シールド機1の側方に回り込んだとしても長時間硬化せず、しかも、余堀部Bに供給される充填材も硬化しないという性質を備えていることから、前記充填材および/または遅硬性裏込め材が余堀部Bで硬化してその余堀部Bを閉塞させ、シールド機1の急曲線掘削を阻害することがない。そのため、仮に前記シールド機1が急曲線掘削中に掘進を停止した場合であっても問題無く掘進を再開することができる。また、テールボイド部Dに注入される遅硬性裏込め材は、時間経過に伴い硬化するので、急曲線掘削施工の完了後に地山が緩むことがなく、それによる肌落ちあるいは地盤沈下が生じることもない。
【0036】
また、前記余堀部Bに充填されその余堀部Bを保護する充填材は、前記注入管7よりテールボイド部Dに次々に注入される遅硬性裏込め材の注入圧によって、順次前方に押し出されシールド機1の前面から土砂と共にシールド機1内に取り込まれて排土されるか、あるいは地山Aの内面において土砂と土砂との間に入り込みその地山Aの一部になる。そのため、前記充填材がセグメント10の外面と地山Aとの隙間に単独かつ塊として存在することがなく、充填材が残留することによる肌落ち・地盤沈下が発生することもない。また、従来、充填材を使用した工法の際に行っていた充填材と裏込め材との置き換え工程を省略することができるので、急曲線掘削の工程を簡素化することもできる。
【0037】
さらに、本実施形態においては、余堀部Bへの充填材の供給、テールボイド部Dへの遅硬性裏込め材の注入、テールボイド部Dからの膨出袋15ならびに内部の速硬性の注入材の張り出しが、前述のように全て坑内(シールド機1に設けられる充填口6、注入管7およびセグメント10に配されるセグメント支持装置12)にて行われるため、地上工事を完全に省略することができる。そのため、施工コストを安く抑えることができ、手間も省くことができる。
【0038】
本実施形態においては、一個の注入管が上部に配されるシールド機1について説明したが、掘削するトンネルの規模に合わせ、複数個の注入管7をシールド機1に所定のパターンで設けるようにしても良い。
【0039】
また、本実施形態においては、モルタルおよび水ガラス5%を10:0.5程度の混合比率にて混合してなる遅硬性裏込め材を用いたが、前記充填材の粘土・ベントナイト液と、モルタルとを、5:1程度に攪拌混合したものを遅硬性裏込め材としてテールボイド部に注入することもできる。
【0040】
本実施形態においては、複数個の膨出袋15をテールボイド部Dに張り出すようにされているが、例えば、地盤反力が特に強く作用する部位に多くの膨出袋15を張り出し、その他の部位への配置数をやや少なくする等、坑Cの曲率に応じて個数ならびに配置方法を変更することができる。また、余堀部Bに充填する非硬化性充填材は、シールド機1の後胴部2bから注入するようにしても良い。さらに、シールド機1の注入管7より注入される遅硬性裏込め材と同様のものを、一部の孔11からテールボイド部D内に注入するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は、本実施形態に使用される、中折れ式後胴支持型のシールド機の概略説明図である。
【図2】図2は、セグメント支持装置の要部断面図である。
【図3】図3は、膨出袋が張り出された際における、地山の断面図である。
【図4】図4(a)〜(c)は、曲線掘削の過程を示す説明図である。
【符号の説明】
1 シールド機
2a 前胴部
2b 後胴部
4 シールドジャッキ
5 コピーカッタ
6 充填口
7 注入管
10 セグメント
15 膨出袋
Claims (2)
- シールド機を用いて急曲線に沿ったトンネルを掘削する急曲線掘削工法において、
前記シールド機の掘進中に、外周部に形成される余堀部に高粘性の非硬化充填材をシールド機の機内から充填するとともに、後方に形成されるテールボイド部に遅硬性裏込め材を注入してシールド機周辺の地山の緩みを抑制し、次いで前記シールド機の停止時に、前記テールボイド部において速硬性注入材を膨出袋に注入することによりその膨出袋を突出させてシールドジャッキの反力を確保することを特徴とする急曲線掘削工法。 - 前記非硬化性充填材は、所定の圧力を保って余堀部に充填される請求項1に記載の急曲線掘削工法。
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